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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】粘着フィルム、及び表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241112BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241112BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241112BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
G02B5/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023110682
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2022071581の分割
【原出願日】2017-05-15
(65)【公開番号】P2023139030
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002116(JP,A)
【文献】特開2013-100386(JP,A)
【文献】特開2013-224431(JP,A)
【文献】特開2013-108031(JP,A)
【文献】特開2016-210911(JP,A)
【文献】特開2015-098560(JP,A)
【文献】特開2015-030768(JP,A)
【文献】特開2016-084475(JP,A)
【文献】特開2009-173722(JP,A)
【文献】特開平01-271472(JP,A)
【文献】Donatas Satas編著,「粘着技術ハンドブック」,初版,日刊工業新聞社,1997年03月31日,pp.436-441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの片面に、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
前記粘着剤組成物が帯電防止剤と、架橋剤とを含有し、
前記粘着剤組成物が、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、
(B)水酸基を含有してカルボキシル基を含有しない共重合可能なモノマーと、
(C)カルボキシル基を含有して水酸基を含有しない共重合可能なモノマーと、
を共重合させた酸価が0.1~1.0の共重合体のアクリル系ポリマーを含有し、
前記アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを70重量部以上の割合で含有してなり、
前記アクリル系ポリマーのガラス転移温度が0℃以下であり、
前記架橋剤が、(D)3官能以上のイソシアネート化合物であり、
前記帯電防止剤が、フッ素原子の数がF7以上であるアニオンを有する、カチオンとアニオンとからなる融点25~50℃のイオン性化合物であり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(E)架橋遅延剤と、(F)架橋触媒として錫化合物以外の架橋触媒と、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物とを含有してなることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている請求項1に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及び表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、液晶ディスプレイを構成する偏光板に貼着することにより、偏光板の表面を保護するために使用される表面保護フィルム用の、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた帯電防止性能を有する粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板などの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このように光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されている。光学部材に貼合するまで、その粘着剤層を保護するための離形処理された離形フィルムが、粘着剤層の上に貼合されている。
また、偏光板などの光学部材は、表面保護フィルムを貼合された状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を受ける。このため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物、及び粘着剤組成物の低分子量成分が付着していないこと、即ち、耐汚染性を有することが求められている。
また、偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体から剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念される。このため、粘着剤層が、優れた帯電防止性能を有することが求められている。
さらに、近年では、偏光板の偏光子の保護層(保護フィルムと呼ばれることもある。)として、従来のトリアセチルセルロース(TAC)以外に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー、ポリカーボネートなどの、偏光板の表面保護フィルムを剥がす時に、剥離帯電を起こし易い材料の採用が拡大している。このため、偏光板の表面保護フィルム用の粘着剤層に求められる帯電防止性能が、従来に比べて優れていることが必要とされている。
また、最終的に偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性を有すること、(3)優れた帯電防止性能などが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能である、これら(1)~(3)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)~(3)の全ての要求性能を、同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性を有すること、及び、(3)優れた帯電防止性能については、次のような提案が知られている。
【0006】
(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることに関しては、炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間接着した場合に粘着剤が被着体側へ移着し、また被着体に対する接着力の経時上昇性が大きいという問題があった。これを回避するため、炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコール性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、上記と同様の共重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものなどが提案されている。しかし、これらは、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じる問題や、手作業領域である高速での剥離時の再剥離性に劣るという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解決するため、a)炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1~15重量部と、c)炭素数が1~5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3~100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物では、加工時や保存時において、浮きなどの剥離現象を生じることがなく、その上、接着力の経時上昇性が小さくて再剥離性に優れており、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際被着体上に糊残りを生じず、また高速剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
【0008】
また、(2)耐汚染性を有することについては、0質量部以上0.5質量部未満のカルボキシル基含有モノマー、0.6~9質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.4~90.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり、重量平均分子量が10万以上100万未満である(メタ)アクリル系共重合体100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤0.1~5質量部を含む粘着剤組成物が開示されている(特許文献3)。
特許文献3に記載の粘着剤組成物では、特定組成の(メタ)アクリル系共重合体の架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を使用することを特徴とする。これにより、粘着剤層に、オートクレーブ処理時の圧力及び温度による収縮に追従しうる架橋構造を提供できる。このため、粘着剤組成物を使用して形成された粘着剤層は、高温・高圧条件下(オートクレーブ処理時)であっても発泡を抑制・防止でき、耐被着体汚染性に優れ、また、透明性にも優れるとしている。
【0009】
また、(3)優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示されている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献4)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
【0010】
また、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性粘着剤組成物であって、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、ポリエーテル基を主鎖中に含むポリエーテルエステル系可塑剤に溶解された状態で分散されていることを特徴とする制電性粘着剤組成物が開示されている(特許文献5)。
特許文献5に記載の粘着剤組成物では、可塑剤として飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸と、炭素数1~20の非環式炭化水素基を有するアルコールとから形成されるエステル、あるいは、前記不飽和の非環式炭化水素基中の不飽和基がエポキシ化されたエステルからなる可塑剤を使用することが開示されている。このような飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸は、粘着剤層に使用されるアクリル共重合体を構成するアクリル単量体の炭素数と近い炭素数を有することにより、制電性粘着剤組成物との相溶性が良好になり、可塑剤アクリル系制電性粘着剤組成物中に好適に保持されるため、ブリードアウトが抑制されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭63-225677号公報
【文献】特開平11-256111号公報
【文献】特開2011-122054号公報
【文献】特開平11-070629号公報
【文献】特開2014-118469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、従来技術においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、耐汚染性を有すること、優れた帯電防止性能などが求められてきたが、それぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる全ての要求性能を同時に満たすことはできなかった。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐汚染性を有する、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた帯電防止性能を有する粘着剤組成物及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
帯電防止性能を備えた粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムにおいて、帯電防止性能と、被着体への耐汚染性との関係はトレードオフの関係であり、帯電防止性能を維持したまま、耐汚染性を改善することは極めて困難であった。
ところで、本発明の発明者らは、粘着剤組成物が、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを共重合させた共重合体と、ポリエーテル含有シリコーン化合物と、フッ素原子の数がF7以上のアニオン(例えば、ノナフルオロブタンスルホナートアニオン)を有する融点25℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤と、を含有することを本発明の技術思想とすることにより、この課題を解決することができた。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記粘着剤組成物が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を共重合させた酸価が0.1~1.0の共重合体のアクリル系ポリマーを含有し、前記アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを70重量部以上の割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーのガラス転移温度が0℃以下であり、前記架橋剤が、(D)3官能以上のイソシアネート化合物であり、前記帯電防止剤が、フッ素原子の数がF7以上であるアニオンを有する、カチオンとアニオンとからなる融点25~50℃のイオン性化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、(E)架橋遅延剤と、(F)架橋触媒として錫化合物以外の架橋触媒とを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、偏光板の偏光子の保護層に貼合される表面保護フィルム用の粘着剤組成物であって、前記偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された1種であり、かつ、前記偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種であることが好ましい。
【0017】
前記イオン性化合物のアニオンが、C(CFCOO、C(CFSO 、C(CF、CO(CFSO 、(CCO)、(CCO)、(CSO、(CSO、(COSO、(COSO、(C、CF(CFSO からなる群の中から選択された少なくとも1種以上をアニオンとして含有してなり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることが好ましい。
【0018】
前記イオン性化合物のカチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることが好ましい。
【0019】
前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、前記粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3~+0.3kVの範囲内であり、前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0020】
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを0.1~10重量部の割合で含有してなり、
前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを、0.01~0.5重量部の割合で含有してなることが好ましい。
【0021】
前記(E)架橋遅延剤が、ケトエノール互変異性体の化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(E)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有してなり、前記(F)架橋触媒が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(F)架橋触媒を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、前記(E)/前記(F)の重量部比率が、80~1000であることが好ましい。
【0022】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、HLB値が6~12で重量平均分子量が10000以下であるポリエーテル変性シロキサン化合物を、0.01~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0023】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合させた重量平均分子量が10万超過30万以下の共重合体を、0.1~5.0重量部の割合で含有することが好ましい。
【0024】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上を、前記重量平均分子量が10万超過30万以下の共重合体の100重量部のうち、1~50重量部の割合で含有してなることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0026】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
【0027】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
【0028】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルムを提供する。
【0029】
また、本発明は、前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている上記の粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係わる粘着剤組成物は、従来の表面保護フィルム用の粘着剤組成物と比べて、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する。
特に、本発明に係わる表面保護フィルムは、被着体が、光学フィルムの表面に積層された、フッ素化合物を含有する防汚層、又は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層において、従来技術による表面保護フィルムに比べて、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有しており、帯電防止性能と、耐汚染性との両立に、著しい効果がある。
すなわち、本発明に係わる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムは、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を備えているため、産業上の利用価値が極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記粘着剤組成物が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を共重合させた酸価が0.1~1.0の共重合体のアクリル系ポリマーを含有し、前記アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを70重量部以上の割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーのガラス転移温度が0℃以下であり、前記架橋剤が、(D)3官能以上のイソシアネート化合物であり、前記帯電防止剤が、フッ素原子の数がF7以上であるアニオンを有する、カチオンとアニオンとからなる融点25~50℃のイオン性化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、(E)架橋遅延剤と、(F)架橋触媒として錫化合物以外の架橋触媒とを含有してなることを特徴とする。
【0032】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の主剤ポリマーであり、ガラス転移温度が0℃以下である。また、アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とする共重合体が好ましい。
【0033】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0034】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを70重量部以上の割合で含有してなることが好ましい。
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを含有する。(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを、0.1~10重量部の割合で含有することが好ましく、1.6~8.5重量部の割合で含有することがより好ましく、2.1~7.5重量部の割合で含有することが特に好ましい。
【0036】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを含有する。(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸等からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを、0.01~0.5重量部の割合で含有されることが好ましく、0.01~0.45重量部の割合で含有されることがより好ましく、0.01~0.4重量部の割合で含有されることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるアクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。アクリル系ポリマーの共重合体の重量平均分子量は、例えば50~300万が挙げられる。アクリル系ポリマーの酸価は、0.1~1.0であることが好ましい。これにより、耐汚染性を改善することができる。ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0038】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(G)帯電防止剤を含有する。本実施形態の(G)帯電防止剤は、フッ素原子の数がF7以上であるアニオンを有する、カチオンとアニオンとからなるイオン性化合物である。このイオン性化合物は、融点が25~50℃であり、常温(例えば25℃)で固体であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることが好ましい。
また、粘着剤層の帯電防止性能を高めて表面抵抗率の下限値を1.0×10+10Ω/□以下にまで低減させることが必要な場合には、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~15重量部の割合で含有するのがより好ましい。
【0039】
前記イオン性化合物のアニオンとしては、C(CFCOO、C(CFSO 、C(CF、CO(CFSO 、(CCO)、(CCO)、(CSO、(CSO、(COSO、(COSO、(C、CF(CFSO からなる群の中から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。ここで、nは1以上の整数である。
前記イオン性化合物のカチオンとしては、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。
【0040】
(G)帯電防止剤の具体例としては、例えば、メチルトリオクチルアンモニウム トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホニル)メチド塩、3-メチル-1-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム テトラキスペンタフルオロフェニルボレート塩、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホニル)イミド塩等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、架橋剤として、(D)3官能以上のイソシアネート化合物を含有する。(D)3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。(D)3官能以上のイソシアネート化合物の割合としては、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して0.01~5重量部の割合が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(E)架橋遅延剤を含有してもよい。(E)架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性体の化合物であり、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。(E)架橋遅延剤は、ケトエノール互変異性体の化合物であるのが好ましく、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(E)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有することが好ましい。
【0043】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(F)架橋触媒として、錫化合物以外の架橋触媒を含有してもよい。(F)架橋触媒は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記共重合体と架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよい。錫化合物以外の架橋触媒として、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0044】
(F)架橋触媒の金属キレート化合物としては、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0045】
(F)架橋触媒としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(F)架橋触媒を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0046】
(E)架橋遅延剤は、(F)架橋触媒とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(E)架橋遅延剤と(F)架橋触媒との割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、(E)/(F)の重量部比率が、80~1000であることが好ましい。ここで、(E)/(F)の重量部比率とは、(E)の重量部を(F)の重量部で除算して得られた商の値である。
【0047】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、任意成分として、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してもよい。(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。ポリエーテル基を有するシロキサン単位において、ポリエーテル基の末端がOH基(上記一般式においてR=H)であってもよい。
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が6~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01~0.5重量部含まれることが好ましく、0.02~0.35重量部含まれることがより好ましく、0.02~0.25重量部含まれることが特に好ましい。HLB値とは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤層の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、10000以下であることが好ましい。アクリル系ポリマーとの相溶性の観点からは、HLB値が低く、分子量が低い方が相溶性は良好であるが、分子量が低いポリエーテル変性シロキサン化合物であれば、HLB値が比較的高く、ポリマーとの相溶性がやや低くても、優れた帯電防止性が得られる。
【0048】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、任意成分として、アルキル基の炭素数がC1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合させた、重量平均分子量が10万超過30万以下の共重合体(以下、「共重合体B」をいう。)を、帯電防止補助剤として含有してもよい。共重合体Bは、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~5.0重量部の割合で含有されることが好ましく、0.1~3.5重量部の割合で含有されることがより好ましく、0.1~2.5重量部の割合で含有されることが特に好ましい。
【0049】
(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記アクリル系ポリマーに共重合することができる。他の水酸基がOHのままである、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであってもよく、他の水酸基がアルキルエーテルに変換されたアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0050】
ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコールとしては、1種または2種以上のアルキレン基を有するグリコール化合物であればよく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールなどが挙げられる。
【0051】
(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。また、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分は、0.2%以下であることが好ましい。「モノマー中のジエステル分」とは、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
【0052】
(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。前記共重合体Bにおける(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの割合は、前記共重合体Bの100重量部のうち、1~50重量部の割合が好ましく、2~35重量部の割合がより好ましく、2~25重量部の割合が特に好ましい。
【0053】
共重合体Bに共重合される、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーとしては、アルキル基の炭素数がC1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及び、水酸基を含有する共重合可能なモノマー等の少なくとも1種以上が挙げられる。これらのモノマーの具体例としては、それぞれ前記(A)及び(B)等に例示された(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。共重合体Bに共重合されるモノマーは、前記アクリル系ポリマーに共重合されるモノマーと異なってもよい。共重合体Bは、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを共重合していなくてもよい。
【0054】
本実施形態の粘着剤組成物は、上述の添加剤に限らず、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0055】
本実施形態の粘着剤組成物は、偏光板の偏光子の保護層に貼合される表面保護フィルム用の粘着剤組成物として好適である。ここで、偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された1種が挙げられる。ここで、TACはトリアセチルセルロース、PMMAはポリメチルメタクリレート、PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
また、偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0056】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましく、1.0×10+11Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率が大きいと、粘着剤層を被着体から剥離する時に発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体から剥離する時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体に影響することを抑制することができる。
【0057】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3~+0.3kVの範囲内であることが好ましい。低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物等の縮合物が挙げられる。含フッ素共重合体は、フッ素化されたモノマーに加えて、オレフィン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート等の、フッ素化されていないモノマーが共重合されていてもよい。低屈折率層は、高屈折率層等と組み合わせて反射防止層を構成してもよい。
【0058】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましく、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が0.2~1.6N/25mmであることがより好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0059】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層のゲル分率は、95~100%であることが好ましく、97~100%であることがより好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度において、粘着力が過大にならず、共重合体からの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0060】
本実施形態の粘着フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本実施形態の表面保護フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。本実施形態の粘着剤組成物は、優れた帯電防止性能を備え、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐汚染性を有する。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0061】
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する離形フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされていてもよい。帯電防止処理としては、帯電防止剤の塗布や練り込み等が挙げられる。防汚処理としては、シリコーン系、フッ素系の離形剤やコート剤、シリカ微粒子等による処理が挙げられる。離形フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系の離形剤などにより離形処理が施されてもよい。
【0062】
また、光学フィルムの少なくとも一方の面に、本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層することにより、粘着剤層付き光学フィルムを得ることができる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等が挙げられる。
偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルム及び粘着フィルムの場合、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【実施例
【0063】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0064】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート90重量部、メチルアクリレート10重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート5.5重量部、アクリル酸0.2重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマーを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)~(C)の記載のようにした以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0065】
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、架橋剤(コロネートHX)2.0重量部、架橋遅延剤(アセチルアセトン)9重量部、架橋触媒(チタニウムトリスアセチルアセトネート)0.1重量部、帯電防止剤(メチルトリオクチルアンモニウム トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホニル)メチド塩)0.9重量部、ポリエーテル変性シロキサン化合物(HLB=7)0.05重量部、共重合体B-1(分子量15万)0.2重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を離形フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)の上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、厚さが20μmの粘着剤層を得た。その後、基材フィルム(一方の面に帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム)の、帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に、離形フィルム付き粘着剤層を転写させ、「基材フィルム/粘着剤層/離形フィルム」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(D)~(H)及び共重合体Bの記載のようにした以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の表面保護フィルムを得た。
【0066】
【表1】
【0067】
表1において、各成分の重量部は、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計を100重量部として求めた。
なお、表1において、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(共重合体B)の各欄では、アクリル系ポリマーを100重量部として、各成分の含有割合(重量部)を括弧( )内の数値で示した。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2~3に示す。表2には、表3に示す共重合体Bの成分モノマーのうち、(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーの略記号の化合物名も含まれている。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140Nは三井化学株式会社の商品名である。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
(G)帯電防止剤のうち、G-1~G-4は、すべてフッ素原子の数がF7以上のアニオンを有し、融点が25℃以上で固体のイオン性化合物である。G-5は、フッ素原子の数がF5のアニオンを有し、融点が25℃以上で固体のイオン性化合物である。
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物のうち、H-1~H-6は、すべて重量平均分子量が10000以下である。
(I)ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのうち、I-1~I-3は、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、I-4は、モノマー中のジエステル分が0.8%である。また、表3の(I)群の欄におけるnは、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数を示す数値である。
【0071】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における表面保護フィルムを、それぞれ23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、以下の試験方法により評価した。
【0072】
<粘着力の試験方法>
離形フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼合し、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。得られた測定試料を、180°方向に引張試験機を用いて低速度(0.3m/min)又は高速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
ここで、前記偏光板の偏光子の保護層は、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択した1種である。
また、LR偏光板、及びAG-LR偏光板は、前記偏光板の偏光子の保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理が施されている。
【0073】
<表面抵抗率の試験方法>
表面保護フィルムをエージングした後、偏光板に貼合する前に、離形フィルムを剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0074】
<剥離帯電圧の試験方法>
離形フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、被着面にフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層を有する偏光板に貼合した。表面保護フィルムを、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、被着体が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0075】
<耐汚染性の試験方法>
ガラス板の片面上に、前記低反射(LR)表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層(両面粘着テープ)を介して貼合した。その後、前記偏光板の表面に、表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合した。23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。耐汚染性の判断基準は、前記偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0076】
表4に、実施例1~6及び比較例1~3における、表面保護フィルムについての評価結果を示す。「表面抵抗率」は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。「偏光板の偏光子の保護層」の欄は、粘着力の試験で用いた偏光板の偏光子の保護層の材質及び表面処理を示す。「表面処理」のPlainは未処理を意味する。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例1~6の表面保護フィルムは、被着体である偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であり、粘着性能が優れていた。
また、実施例1~6の表面保護フィルムは、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3~+0.3kVの範囲内であり、帯電防止性能が優れていた。
さらに、実施例1~6の表面保護フィルムは、3日および30日の期間に渡って保管した後にも被着体である偏光板に対する汚染がなく、耐汚染性にも優れていた。
すなわち、実施例1~6の表面保護フィルムについての、表4に示された評価結果では、本発明の課題を解決できたことが実証されている。
【0079】
比較例1の表面保護フィルムでは、粘着剤組成物に含まれているアクリル系ポリマーにおける、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部のうち、2EHAの割合が50重量部と少なく、かつ、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが共重合されていない。また、比較例1の表面保護フィルムに係わる粘着剤組成物では、帯電防止剤が、フッ素原子の数がF7未満のF5であるアニオンを含有している。このため、比較例1の表面保護フィルムは、粘着剤層の粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性も悪かった。
【0080】
また、比較例2の表面保護フィルムは、粘着剤組成物に含まれているアクリル系ポリマーの酸価が1.0を超えていて、耐汚染性が悪かった。
また、比較例3の表面保護フィルムは、粘着剤組成物に含まれている帯電防止剤が、フッ素原子の数がF7未満のF5であるアニオンを含有していて、耐汚染性が悪かった。
このように、比較例1~3の表面保護フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。