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特許7587179情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理プログラム
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  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 7/01 20230101AFI20241113BHJP
【FI】
G06N7/01
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023501969
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007449
(87)【国際公開番号】W WO2022180806
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】山越 恭子
(72)【発明者】
【氏名】関 登志彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 篤
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞人
【審査官】渡辺 順哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-039734(JP,A)
【文献】特開2011-028339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベイジアンネットワークを設計する情報処理装置において、
ベイジアンネットワークの要素として、複数のノードと、前記複数のノードでの親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力する入力部と、
前記入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、
前記重みを基に子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を算出し、前記平均値を有する当該子ノードの確率分布を基に当該子ノードの条件付き確率表を生成する情報処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記重みと親ノードの確率とに応じて子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を変動させ、変動させた平均値を基に当該子ノードの確率分布の偏りを調整する請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
ベイジアンネットワークを設計する情報処理装置で行う情報処理方法において、
ベイジアンネットワークの要素として、複数のノードと、前記複数のノードでの親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力する第1のステップと、
前記入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成する第2のステップと、を行い、
前記第2のステップでは、
前記重みを基に子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を算出し、前記平均値を有する当該子ノードの確率分布を基に当該子ノードの条件付き確率表を生成する情報処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
AIにIT業務で利用するビッグデータ等の各種データを学習させることで、IT業務の自動化、効率化を図るAIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)が知られている。例えば、事象を特定するAI、事象の発生原因を特定するAI、事象への対処方法を検索するAI、事象による影響を特定するAI、事象への対処方法を決定するAIを順次利用するオーケストレータがある。
【0003】
AIOpsでは、AIが判断を誤った場合、故障回復の長時間化によってサービス品質が低下し、実運用に耐えられなくなることが懸念される。また、AIの判断の誤りの是正には、運用スキル、機械学習スキル、数学的知識をもった高度な運用者による複雑な対応が必要となる。それ故、多様なAIの出力結果の妥当性を推論するAIティーチング技術を確立し、故障回復の迅速化による安心・安全な運用や運用者のスキルレス化を実現する技術が必要となる。
【0004】
そこで、ベテラン運用者の臨機応変な判断を模擬したベイジアンネットワークにより、AIの判断を検証し判断理由を説明することで、安全にAIをNWオペレーションに組み込める技術がある。ベイジアンネットワーク・ソフトウェアでは、ベイジアンネットワークの設計・運用をGUIベースで行うことができる。
【0005】
ベイジアンネットワークを設計する場合、判断要素を示すノードとノード間の因果関係を示すエッジ(矢印線)とを設定し、子ノードの確率をCPT(Conditional Probability Table;条件付き確率表)に設定する。例えば、Losesの判断に関するベイジアンネットワークの場合、Sick、Dry、Losesを設定し、SickとDryを接続元、Losesを接続先に設定する。また、Sickのインデックス値又は確率とDryのインデックス値又は確率との組み合わせに対して、Losesの発生確率及び非発生確率を設定する(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】HUGIN EXPERT、“Building a Bayesian Network”、[2021年2月10日検索]、<URL:https://hugin.com/wp-content/uploads/2016/05/Building-a-BN-Tutorial.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベイジアンネットワークでは、ノード、エッジ、CPTによるグラフィカルモデルにより、人の経験を反映した判断モデルを設計可能である。しかし、ノード及びエッジについては、知識に基づき直感的に設定可能であるが、CPTに設定される子ノードの確率については、運用データの統計情報を基に人手で算出するため、CPTを生成する際の作業量が多く、統計手法に合わせてデータを整形するための数学的知識、ベイズ推論等の条件付き確率に関する高い数学的知識を要するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、数学的知識を要することなく、ベイジアンネットワークを設計可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の情報処理装置は、ベイジアンネットワークを設計する情報処理装置において、ベイジアンネットワークの要素として、複数のノードと、前記複数のノードでの親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力する入力部と、前記入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成する生成部と、を備える
本発明の一態様の情報処理方法は、ベイジアンネットワークを設計する情報処理装置で行う情報処理方法において、ベイジアンネットワークの要素として、複数のノードと、前記複数のノードでの親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力するステップと、前記入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成するステップと、を行う。
【0010】
本発明の一態様の情報処理プログラムは、上記情報処理装置としてコンピュータを機能させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、数学的知識を要することなく、ベイジアンネットワークを設計可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、情報処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
図2図2は、情報処理装置の処理フローを示す図である。
図3図3は、ベイジアンネットワークの例を示す図である。
図4図4は、子ノードの確率分布の例を示す図である。
図5図5は、子ノードのCPTの例を示す図である。
図6図6は、情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0014】
[発明の概要]
本発明では、ベイジアンネットワークの定義要素として、ノード、エッジ、CPTに加えて、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みを更に入力し、入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成する。つまり、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みを基にベイジアンネットワークを生成するので、数学的知識を要することなく、人の経験を反映したベイジアンネットワークを設計可能となる。
【0015】
また、本発明は、上記重みを基に子ノードのCPTを自動生成する。これにより、CPTを直接設定することなく、重みのパラメータのみで業務知識・業務経験等をベイジアンネットワークに反映できる。その結果、数学的知識を要することなく、人の経験を適切に反映したベイジアンネットワークを設計可能となる。
【0016】
また、本発明は、上記重みと親ノードの確率とに応じて子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を変動させ、変動させた平均値を基に当該子ノードの確率分布の偏りを調整する。これにより、CPTを直接設定することなく、重みのパラメータのみで業務知識・業務経験等をベイジアンネットワークに反映できる。その結果、数学的知識を要することなく、人の経験をより適切に反映したベイジアンネットワークを設計可能となる。
【0017】
[情報処理装置の構成]
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能ブロック構成を示す図である。当該情報処理装置1は、ベイジアンネットワークを設計する装置である。当該情報処理装置1は、入力部11と、生成部12と、表示部13と、を備える。
【0018】
入力部11は、ベイジアンネットワークの定義要素として、判断要素を示す複数のノードと、当該複数のノードにおいて親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジ(矢印線)と、子ノードの確率(例えば、発生確率及び非発生確率)を設定するためのCPTと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力する機能部である。
【0019】
本実施形態では、子ノードの確率として、子ノードの発生確率と非発生確率とを例に用いる。子ノードは、このような2値の他、3値以上を取ることも可能である。親ノードについても2値以上を取ることが可能である。
【0020】
生成部12は、入力された情報を用いてベイジアンネットワークを形成する機能部である。生成部12は、重みを基に子ノードのCPTを生成する機能部である。例えば、生成部12は、重みを基に子ノードの発生確率及び非発生確率を算出してCPTに設定することにより、当該子ノードのCPTを生成する。例えば、生成部12は、重みを基に子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を算出し、当該平均値を有する当該子ノードの確率分布を基に当該子ノードの発生確率及び非発生確率を算出してCPTに設定することにより、当該子ノードのCPTを生成する。子ノードの発生確率及び非発生確率を算出する際、生成部12は、重みと親ノードのインデックス値又は確率変数(例えば、発生確率及び非発生確率)とに応じて子ノードの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値を変動させ、変動させた平均値を基に当該子ノードの確率分布の偏りを調整する。
【0021】
表示部13は、ベイジアンネットワークの定義要素、ベイジアンネットワークの設計図、CPT等を画面に表示する機能部である。
【0022】
[情報処理装置の動作]
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の処理フローを示す図である。
【0023】
ステップS1;
まず、表示部13は、ベイジアンネットワークの定義要素を設定するためのGUIを画面に表示する。次に、入力部11は、ユーザが当該GUIに入力した、判断要素を示す複数のノードと、当該複数のノードにおいて親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、を入力する。
【0024】
例えば、PollutionのノードXと、SmokerのノードXと、CancerのノードXと、が入力される。また、ノードXを接続元としノードXを接続先とするエッジEと、ノードXを接続元としノードXを接続先とするエッジEと、が入力される。更に、エッジEに対する重みwと、エッジEに対する重みwと、が入力される。
【0025】
重みwと重みwは、親ノードX,X間で子ノードXに対して影響力を大きく持たせたい方の重みを大きくする。例えば、PollutionよりもSmokerの方がCancerを発生させる確率が高い(Smokerの方がCancerへの影響度が強い)と考えられるため、重みwには0.7が入力され、重みwには0.3が入力される。重みwと重みwの合計は1とする。
【0026】
これにより、図3に示すようなベイジアンネットワークが画面に表示される。親ノードX,Xの右側に示した文字及び数字は、親ノードのインデックス値である。0又は1のインデックス値に代えて、親ノードの確率変数(発生確率及び非発生確率)でもよい。
【0027】
ステップS2;
次に、生成部12は、式(1)及び式(2)を用いて、子ノードXの確率分布を算出する。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
式(1)は、子ノードXの確率分布f(z)を定義した式である。式(2)は、ステップS1で入力された重みwを用いて当該確率分布f(z)の平均値μを定義した式である。zは、子ノードXの確率変数である。σは、確率分布f(z)の分散値である。x(j∈1,2,3)は、ノードXのインデックス値又は確率変数である。Mは、親ノードXと親ノードXとのカーディナリティ数の合計値である。式(1)及び式(2)で定義された子ノードXの確率分布f(z)は、図4に示すような正規分布になる。
【0031】
式(2)のように、確率分布f(z)の平均値μを、重みwとノードXのインデックス値又は確率変数との積で求めるので、ノードXのインデックス値又は確率変数が大きいほど、子ノードの確率も高い値が出やすくなるように子ノードXの確率分布f(z)が偏ることになる。また、重みwが大きいエッジの親ノードほど、子ノードの確率も高い値が出やすくなるように子ノードXの確率分布f(z)が偏ることになる。
【0032】
また、式(2)の通り、重みwとノードXのインデックス値又は確率変数との積の総和をMで除算するので、親ノードのカーディナリティ値が大きいほど、子ノードのカーディナリティ値が大きくなる傾向にある場合に、精度の高い初期値の発生確率を得ることになる。
【0033】
式(1)及び式(2)を用いることで、生成部12は、重みwと親ノードXのインデックス値又は確率変数とに応じて子ノードXの取り得る確率値の範囲に応じた確率分布の平均値μを変動させ、変動させた平均値μを基に当該子ノードXの確率分布の偏りf(z)を調整する。
【0034】
次に、生成部12は、式(3)を用いて、子ノードXの確率Pを算出する。
【0035】
【数3】
【0036】
例えば、生成部12は、子ノードXのインデックス値がmax(X3)つまり1の場合、max(X3)から+∞までの範囲で積分した値を子ノードXの発生確率とする。生成部12は、3つノードX~Xの取り得る各インデックス値の全ての組み合わせについて、子ノードXの発生確率及び非発生確率をそれぞれ算出する。
【0037】
最後に、生成部12は、全ての組み合わせの子ノードXの発生確率及び非発生確率をCPTに設定する(図5参照)。これにより、生成部12は、子ノードXのCPTを生成し、ステップS1で入力されていた定義要素と併せて一のベイジアンネットワークを設計する。
【0038】
式(1)~式(3)は、互いに関連しており、重みを基に子ノードのCPTを生成するための式群、重みを基に子ノードの確率分布の平均値を算出し、当該平均値を有する当該子ノードの確率分布を基に当該子ノードのCPTを生成する式群であると言える。
【0039】
[効果]
本実施形態によれば、情報処理装置1が、ベイジアンネットワークの要素として、複数のノードと、複数のノードでの親ノードと子ノード間の因果関係を示すエッジと、親ノードの定義内容が子ノードの確率分布に与える影響度を示す重みと、に関する情報を入力する入力部11と、入力された情報を用いてベイジアンネットワークを生成する生成部12と、を備えるので、数学的知識を要することなく、人の経験を反映したベイジアンネットワークを設計可能となる。
【0040】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0041】
上記説明した本実施形態の情報処理装置1は、例えば、図6に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、情報処理装置1の各機能が実現される。
【0042】
情報処理装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよい。情報処理装置1は、複数のコンピュータで実装されてもよい。情報処理装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。情報処理装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVDなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。情報処理装置1用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1:情報処理装置
11:入力部
12:生成部
13:表示部
901:CPU
902:メモリ
903:ストレージ
904:通信装置
905:入力装置
906:出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6