(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】光送信装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/548 20130101AFI20241113BHJP
H04L 27/20 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H04B10/548
H04L27/20 Z
(21)【出願番号】P 2023543551
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031145
(87)【国際公開番号】W WO2023026396
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮武 遼
(72)【発明者】
【氏名】下羽 利明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智暁
(72)【発明者】
【氏名】深田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 暁弘
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-019198(JP,A)
【文献】特開2010-041706(JP,A)
【文献】下羽 利明 他,FM一括変換方式を用いた光映像配信技術,電子情報通信学会技術研究報告 [online],日本,電子情報通信学会,Vol.119, No.324,pp.97-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/548
H04L 27/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数多重された入力信号を複数の帯域の信号に分割する分割部と、
前記分割部により分割された複数の帯域に割り当てられ、割り当てられた帯域の信号に対して位相変調を行う複数の位相変調器と、
複数の前記位相変調器により
位相変調された各々の信号を同期加算する同期加算部と、
を備えた光送信装置。
【請求項2】
前記入力信号は、多チャンネル映像信号である、請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
複数の前記位相変調器の各々に、同一のレーザーダイオードからの出力が入力される、請求項1または請求項2に記載の光送信装置。
【請求項4】
前記同期加算部により同期加算された信号を強度変調する強度変調器を備えた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記複数の帯域は、帯域ごとのひずみ特性に応じて定められる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光送信装置。
【請求項6】
前記同期加算部により同期加算された信号は、前
記同期加算された信号を受信した受信装置が復調可能である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光送信装置。
【請求項7】
光送信装置の制御方法であって、
周波数多重された入力信号を複数の帯域の信号に分割する分割ステップと、
前記分割ステップにより分割された複数の帯域に割り当てられ、割り当てられた帯域の信号に対して位相変調を行う複数の位相変調ステップと、
複数の前記位相変調ステップにより
位相変調された各々の信号を同期加算する同期加算ステップと、
を備えた制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信装置、および制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
FM一括変換方式を用いた光送信装置がある(非特許文献1参照)。非特許文献1に開示された光送信装置における信号生成方法を、
図12を用いて説明する。
図12は、光送信装置の構成を示す図である。入力信号Aは、例えば、BS/CS右旋IF信号と、BS/CS左旋IF信号(1.0~3.2GHz)とである。入力信号Bは、例えば、CATV信号(90~770MHz)である。
図13は、位相変調器に入力される信号とその周波数とを示す図である。
【0003】
図12に示されるように、光送信装置は、加算器と、2個の狭線幅LD(Laser Diode)と、位相変調器と、PD(Photo Diode)と、LDと、強度変調器とで構成される。入力信号AおよびBは、加算器で加算され、位相変調器に入力される。位相変調器の前段には、1個目の狭線幅LDが設けられる。位相変調器の後段と2個目の狭線幅LDの後段とには、PDが設けられる。強度変調器の前段には、PDおよびLDが設けられる。
【0004】
図14は、光送信装置の処理の流れを示すフローチャートである。光送信装置に信号が入力されると(ステップS1:YES)、位相変調器は、位相変調を行う(ステップS2)。その後、2個の狭線幅LDからの光信号を一括してPDで受信することで、広帯域FM信号が生成される(ステップS3)。広帯域FM信号は強度変調器により強度変調され、強度変調された結果が光送信装置の外部に送信される(ステップS4)。光送信装置に信号が入力されるたびに、
図14に示される処理が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】下羽 利明,外4名, “全チャンネル位相変調によるFM一括変換方式を用いた広帯域RF信号伝送システムの検討,”2021年電子情報通信学会 総合大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光送信装置に入力される多チャンネル映像信号のチャンネル数が増大した場合、各チャンネル信号における時間軸上での波形の同相合成の頻度が上がり、位相変調器における入力信号の瞬時電力の最大値が増大する。
【0007】
例えば、
図12において、130本のチャンネル数の信号が帯域幅3.2GHzで位相変調器に入力される場合と、400本のチャンネル数の信号が帯域幅10GHzで位相変調器に入力される場合とでは、位相変調器に入力される信号の瞬時電力の最大値は後者の方がはるかに大きくなる。
【0008】
これにより位相変調器で非線形な変換が発生し、出力信号のひずみが増大するという課題があった。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、ひずみを抑制する技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、周波数多重された入力信号を複数の帯域の信号に分割する分割部と、前記分割部により分割された複数の帯域に割り当てられ、割り当てられた帯域の信号に対して位相変調を行う複数の位相変調器と、複数の前記位相変調器により変調された各々の信号を同期加算する同期加算部と、を備えた光送信装置である。
【0011】
本発明の一態様は、光送信装置の制御方法であって、周波数多重された入力信号を複数の帯域の信号に分割する分割ステップと、前記分割ステップにより分割された複数の帯域に割り当てられ、割り当てられた帯域の信号に対して位相変調を行う複数の位相変調ステップと、複数の前記位相変調ステップにより変調された各々の信号を同期加算する同期加算ステップと、を備えた制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ひずみを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】帯域分割部に入力される信号の周波数を示す図である。
【
図6】分割信号Xの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。
【
図7】分割信号Yの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。
【
図8】分割信号Zの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。
【
図9】光送信装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】従来の光送信装置における信号生成方法を説明するための図である。
【
図13】位相変調器に入力される信号とその周波数を示す図である。
【
図14】従来の光送信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態における光送信装置100の構成を示すブロック図である。光送信装置100は、加算器110と、帯域分割部120と、狭線幅LD(Laser Diode)130および190と、位相変調器140-1、140-2および140-3と、PD(Photo Diode)150-1、150-2および150-3と、同期加算部160と、強度変調器180とを含む。以下では、位相変調器140-1、140-2および140-3のそれぞれを特に区別しない場合には、符号の一部を省略して、「位相変調器140」と表記される。PD150-1、150-2および150-3のそれぞれを特に区別しない場合には、符号の一部を省略して、「PD150」と表記される。
【0015】
光送信装置100には、入力信号AおよびBが入力される。入力信号AおよびBは、例えば、多チャンネル映像信号である。入力信号Aは、帯域90MHz~5.0GHzの信号である。入力信号Bは、帯域5.0GHz~10.0GHzの信号である。加算器110は、入力信号AおよびBを加算した信号を、帯域分割部120に出力する。
図2は、帯域分割部120に入力される信号の周波数を示す図である。
図2には、周波数多重された帯域90MHz~10.0GHzの信号が示されている。このように、帯域分割部120には、帯域幅10GHzの信号が入力される。なお、チャンネル数は、一例として400本である。
【0016】
帯域分割部120は、入力信号を3個の信号ごとに分割する。すなわち、帯域分割部120は、周波数軸上で複数に分割する。本実施形態において、帯域分割部120は、
図3に示されるように、90MHz~3.5GHzまでの分割信号Xと、
図4に示されるように、3.5GHzz~7.0GHzまでの分割信号Yと、
図5に示されるように、7.0GHzz~10.0GHzまでの分割信号Zとに分割する。
【0017】
分割信号Xは、位相変調器140-1に入力される。分割信号Yは、位相変調器140-2に入力される。分割信号Zは、位相変調器140-3に入力される。位相変調器140は、帯域分割部120により分割された複数の帯域ごとに割り当てられた帯域の信号に対して、位相変調を行う。
【0018】
位相変調器140-1には、帯域90MHz~3.5GHzが割り当てられ、分割信号Xが入力される。位相変調器140-2には、帯域3.5GHz~7.0GHzが割り当てられ、分割信号Yが入力される。位相変調器140-3には、帯域7.0GHz~10.0GHzが割り当てられ、分割信号Zが入力される。位相変調器140には、狭線幅LD130(狭線幅のレーザーダイオード)からの出力が入力される。このように、複数の位相変調器140の各々には、同一の狭線幅LD130からの出力が入力される。なお、位相変調器140の対応周波数は、いずれも同一であり、0Hz~10GHzである。
【0019】
位相変調器140-1から出力された光信号は、PD150-1で受光される。位相変調器140-1から出力された光信号と狭線幅LD190からの出力とは一括してPD150-1で受光され、分割信号Xの広帯域FM信号が生成される。位相変調器140-2から出力された光信号と狭線幅LD190からの出力とは一括してPD150-2で受光され、分割信号Yの広帯域FM信号が生成される。位相変調器140-3から出力された光信号と狭線幅LD190からの出力とは一括してPD150-3で受光され、分割信号Zの広帯域FM信号が生成される。
【0020】
PD150は、広帯域FM信号を同期加算部160に出力する。
図6は、PD150-1から出力される分割信号Xの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。
図7は、PD150-2から出力される分割信号Yの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。
図8は、PD150-3から出力される分割信号Zの広帯域FM信号の側波帯を示す図である。これらのように、側波の周波数帯が異なるため、これらの広帯域FM信号の多重化が可能である。
【0021】
同期加算部160は、遅延線等を使用して3個の広帯域FM信号の時刻同期(タイミング同期)を取った状態で、加算を行う。同期加算部160は、加算した信号を強度変調器180に出力する。LD170は、強度変調器180に光信号を出力する。強度変調器180は、加算された広帯域FM信号を強度変調する。強度変調の結果(強度変調信号)は、光送信装置100から出力される。
【0022】
図9は、光送信装置100の処理の流れを示すフローチャートである。光送信装置100は、信号が入力されると(ステップS101:YES)、帯域分割部120は、入力信号を分割する(ステップS102)。帯域分割部120は、分割した分割信号を、それぞれ割り当てられた帯域に対応する位相変調器140に出力する(ステップS103)。
【0023】
位相変調器140は、位相変調を行う(ステップS104)。位相変調器140から出力された光信号と狭線幅LD190からの出力とは一括してPD150で受光され、分割信号の広帯域FM信号が生成される(ステップS105)。同期加算部160は、分割信号の広帯域FM信号を加算する(ステップS107)。強度変調器180は、加算された広帯域FM信号を強度変調する。強度変調器180は、強度変調の結果を光送信装置の外部に出力する(ステップS108)。
【0024】
従来技術のように1個の位相変調器を光送信装置が備える場合と比較して、光送信装置100では、複数の位相変調器ごとに入力されるチャンネル数が少なくなる。その結果、各チャンネル信号における時間軸上での波形の同相合成の頻度が抑制される。また、位相変調器における入力信号の瞬時電力の最大値も抑制されるので、光送信装置100では、従来技術と比較してひずみを抑制することができる。
【0025】
また、PD150で受光後、同期加算部160による同期加算では、独立してFM変換された異なる周波数を持つ信号が加算合成されている。この加算合成により得られた信号がその信号を受信したV-ONU(Video - Optical Network Unit)で復調可能であることは、シミュレーションで確認されている。このシミュレーションにおいて使用された光受信装置(V-ONU)の構成は、参考文献1(下羽 利明,外2名, “FM一括変換方式を用いた光映像配信技術,” 信学技報 IEICE Technical Report CS2019-84, IE2019-64(2019-12).)に記載の光受信装置の構成と同様である。このように、光受信装置で復調できるという特徴が利用されているので、光受信装置は、光送信装置100から送信された信号から、元の信号を復元できる。
【0026】
さらに、光送信装置100では、位相変調器140は複数であるが、同一の狭線幅LD130が共用されている。このため、個別の狭線幅LDが使用された場合において問題となるLDごとの周波数誤差は、光送信装置100では発生しない。各位相変調器140の出力において周波数同期は取れた状態となっている。
【0027】
以上説明した実施形態では、一例として入力信号のチャンネル数を400としているが、チャンネル数は任意でよい。帯域分割部120による帯域の分割数(帯域数)は、一例として3であるが、2以上であればよい。いずれの位相変調器140でも対応周波数(0Hz~10GHz)が同一であるが、各位相変調器の入力信号の帯域は、各位相変調器において対応可能な帯域であればよい。また、位相変調器における対応可能な帯域と、他の位相変調器における対応可能な帯域とは、異なっていてもよい。
【0028】
次に、帯域分割部120により分割される帯域について説明する。
図10、
図11は、分割例を示す図である。なお、
図10、
図11では、分割される帯域数を3としているが、上述したように2以上であればよい。
【0029】
図10および
図11には、分割された帯域P、QおよびRが示されている。
図10に示されるように、帯域P、QおよびRは同一の帯域幅としてもよい。
図11に示されるように、帯域P、QおよびRの帯域幅は異なっていてもよい。
【0030】
例えば、帯域Pの信号が帯域Qの信号よりひずみやすく、かつ、帯域Qの信号が帯域Rの信号よりもひずみやすい場合、
図11に示されるように、信号においてひずみやすい帯域ほど、狭帯域とされる。狭帯域にされるほど、その帯域の信号数は少なくなるので、ひずみがさらに抑制される。このように、複数の帯域は、帯域ごとのひずみ特性に応じて定められてもよい。
【0031】
また、複数の帯域は、帯域ごとのチャンネル数に応じて定められてもよい。チャンネル数が多い帯域ほど狭帯域とされる。これによって、狭帯域となるほどその帯域の信号数は少なくなるので、ひずみをさらに抑制することができる。
【0032】
上述した実施形態において、帯域分割部120、および同期加算部160は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。この場合、帯域分割部120、および同期加算部160は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、帯域分割部120、および同期加算部160として機能する。なお、帯域分割部120、および同期加算部160の各機能の全て又は一部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア(electronic circuit又はcircuitry)を用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的な記録媒体)に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0033】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、多チャンネル信号を送信する光送信装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
100…光送信装置、110…加算器、120…帯域分割部、130…狭線幅LD、140、140-1、140-2、140-3…位相変調器、160…同期加算部、170…LD、180…強度変調器、190…狭線幅LD