(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 1/16 20230101AFI20241113BHJP
H04H 20/24 20080101ALI20241113BHJP
H04H 20/51 20080101ALI20241113BHJP
H04H 40/18 20080101ALI20241113BHJP
H04H 60/04 20080101ALI20241113BHJP
H04H 60/82 20080101ALI20241113BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20241113BHJP
H04L 1/22 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H04L1/16
H04H20/24
H04H20/51
H04H40/18
H04H60/04
H04H60/82
H04L1/00 B
H04L1/22
(21)【出願番号】P 2020082704
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】横畑 和典
(72)【発明者】
【氏名】筋誡 久
(72)【発明者】
【氏名】高田 政幸
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/080020(WO,A1)
【文献】特開2011-146942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/16
H04H 20/24
H04H 20/51
H04H 40/18
H04H 60/04
H04H 60/82
H04L 1/00
H04L 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し、放送伝送路を介してデジタル変調された当該符号化データを受信装置に送信する送信装置から、当該符号化データの所定時間分を保存しIP(Internet Protocol)網経由で受信装置に送信可能とする送信サーバであって、
前記送信装置で生成された符号化データを順次入力し、前記誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームのフレーム番号又は時刻情報に基づく同期信号により時系列に管理し、時系列に管理された前記符号化データの所定時間分を更新しながら保存する保存部と、
IP網経由で、前記受信装置にて前記誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに生成される再送要求パケットを受信し、前記受信装置に向けて再送要求に係る符号化データの再送を行うよう制御する際に、当該再送要求パケットに格納される前記受信装置で当該送信サーバとの通信を基に計測した通信品質情報と、再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報とを抽出し、前記通信品質情報を基に予め定められた符号化率変更基準に従って前記送信装置で生成された符号化データのブロック符号の符号化率を変更して再送するか否かを判定し、その判定結果に応じて前記再送要求情報を基に、前記保存部から再送要求に係る符号化データを読み出して、適応的に符号化率を変更した符号化データを構成し、前記受信装置に向けて該符号化データの再送を行うよう制御する再送要求処理部と、
前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データのブロック符号の符号化率を変更する場合と変更しない場合の切り替えを行い、該符号化率を変更する場合に、前記送信装置で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ前記送信装置で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した前記送信装置で生成された符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して符号化率を変更する誤り訂正符号化処理を行う符号化率適応変更部と、
前記再送要求処理部による制御を経て構成した再送要求に係る符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網を経て前記受信装置に向けて送信するIPパケット生成部と、を備え、
前記再送要求処理部は、前記通信品質情報として、前記受信装置によって所定期間単位で計測された通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を基に、前記予め定められた符号化率変更基準に従って前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定することを特徴とする送信サーバ。
【請求項2】
前記符号化率適応変更部は、前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更する際、
変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合には、変更する符号化率に応じて該符号化データの情報ビットに前記受信装置側で既知とするパディングビットを付加し、前記誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、前記送信装置で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ前記パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成し、
変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には、該符号化データの情報ビットを送受信間で予め定めた分割法で分割し、変更する符号化率に応じて分割したそれぞれの当該情報ビットに前記受信装置側で既知とするパディングビットを付加し、前記誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、前記送信装置で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ前記パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の送信サーバ。
【請求項3】
前記符号化率適応変更部は、前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更する場合に、前記ブロック符号の符号化率の変更に加えて、前記符号化率の変更後の誤り訂正符号フレームのフレーム長を維持したまま、前記ブロック符号に連接する誤り訂正符号の訂正能力を変更する手段を更に有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信サーバ。
【請求項4】
前記IPパケット生成部は、前記複数の誤り訂正符号フレームを用いてインターリーブフレームを構成し、各誤り訂正符号フレームに対して縦断するようにインターリーブを施して得られるペイロードに、当該インターリーブフレームを識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号と、符号化データパケットのヘッダであるIPヘッダを付加してIPパケット列の符号化データパケットを生成するインターリーブ部を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の送信サーバ。
【請求項5】
デジタル放送に係る送信装置であって、
請求項1から4のいずれか一項に記載の送信サーバを装置内部に備えることを特徴とする送信装置。
【請求項6】
送信装置によりデジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して送信された変調波信号を受信する受信装置であって、
前記変調波信号を受信して復調する復調部と、
復調して得られる前記符号化データから前記誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し前記誤り訂正符号に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする誤り訂正復号部と、
前記誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに対応する符号化データの再送を要求するための再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報を含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、請求項1から4のいずれか一項に記載の送信サーバに向けて送信する再送要求パケット生成部と、
当該再送要求パケットに応じて前記送信サーバから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して前記再送要求に応じて再送された符号化データを抽出するIPパケット受信部と、
前記送信サーバとの通信に係る遅延と、前記送信サーバとの通信に係るパケットロスの発生量に基づくパケットロス率のうちいずれか一方、又は双方を所定期間単位で計測して更新保持するとともに、逐次、前記通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む通信品質情報を前記再送要求パケットに含めるように前記再送要求パケット生成部に出力する通信品質計測部と、を備え、
前記誤り訂正復号部は、
前記送信装置から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、当該符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合に前記再送要求パケットを生成させる復号可否判定部と、
前記再送要求に応じて再送された符号化データについて、符号化率が変更されていないときは復調して得られる前記符号化データの符号化率で、符号化率が変更されているときは符号化率に応じたパディングビットを付加し、復号に必要な尤度比の置き換えに関する補完処理を経て復号処理を試み、所定時間内に復号できるまで対応する符号化データの再送の要求を繰り返す符号化データ補完部と、
再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割されているときは、分割されている復号後の情報ビットを前記送信サーバとの間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成するデータ結合部と、
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項7】
前記誤り訂正符号は、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号からなり、前記復号可否判定部は、前記送信装置から得られた符号化データについて、前記BCH符号の復号処理でエラーフリーにならなかったときに、当該符号化データのビット誤りが訂正できなかったと判定することを特徴とする、請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
受信した前記変調波信号についての受信品質を計測する受信品質計測部を更に備え、
前記受信品質計測部は、
前記誤り訂正復号部により復号できた符号化データを基に受信データを生成した時点の受信経路がIP網経由でなく放送受信する受信経路であるときは、放送受信する受信経路を維持し、
前記誤り訂正復号部により復号できた符号化データを基に受信データを生成した時点の受信経路がIP網経由であるときは、前記受信品質が所定値以上であるか否かを判定し、前記受信品質が所定値以上であれば放送受信する受信経路に切り替え、前記受信品質が所定値未満であればIP網経由の受信経路を維持して、前記誤り訂正復号部に対し符号化データについての再送要求後も継続して、IP網経由で次の符号化データを再送要求して取得するよう指示する手段を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記IPパケット受信部は、当該再送要求パケットに応じて前記送信サーバから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、前記送信サーバによるインターリーブの逆処理を行って前記再送要求に応じて再送された符号化データを抽出するデインターリーブ部を有することを特徴とする、
請求項6から8のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の送信サーバとして機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項6から9のいずれか一項に記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送及び地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、放送と通信を連携し、通信を利用して受信側からの再送要求に応じてデータ再送を可能とする送信サーバ、デジタル放送に係る送信装置及び受信装置、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送及び地上放送のデジタル放送方式では、白色雑音下での伝送性能を向上させる技術として、誤り訂正符号が用いられる。例えば高度広帯域衛星デジタル放送では、信号対雑音比に対する利用効率の理論的な上限値であるシャノン限界に迫る性能を有する強力な誤り訂正符号であるLDPC(Low Density Parity Check)符号が利用される(例えば、非特許文献1,2参照)。しかし、衛星デジタル放送では降雨による減衰、地上デジタル放送ではフェージングなど、デジタル放送では、誤り訂正符号のみでは信号を復旧できないほど伝送条件が悪化する場合がある。
【0003】
一方、デジタル無線通信では、誤り訂正符号以外のデータ補償技術としてARQ(Automatic Repeat reQuest)によるデータ再送制御が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。デジタル無線通信において、誤り訂正符号とARQを組み合わせたHybrid ARQを用いることで伝送性能の向上を実現することができ、ARQのみを利用するよりも少ない再送回数、且つ誤り訂正符号のみでは補償できない条件でのデータ伝送が可能となる。ただし、Hybrid ARQを用いる従来の先行技術は、FPUや携帯電話の基地局通信など双方向の通信に限られており、放送のような片方向のブロードキャストにおいて通信と連携し、Hybrid ARQでデータを補償する技法は確立されていない。
【0004】
尚、Hybrid ARQを構成するものではないが、デジタル放送の伝送条件が悪化した際、双方向の通信が可能な通信路であるIP(Internet Protocol)網を経て受信側から送信側に向けてARQを行い、送信側からデータを再送する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
一般的なIP網は、回線が混雑しているなどの何らかの障害により情報が消失する消失通信路(PEC:Packet Erasure Channel)が想定される。そこで、デジタル無線通信におけるHybrid ARQでは、データ補償を行う誤り訂正符号として、LDPC-CC(Convolutional Codes)(例えば、特許文献4参照)やLDGM(Low-Density Generator Matrix)符号(例えば、特許文献5参照)などの消失通信路であるIP通信専用の誤り訂正符号が用いられる。これらのLDPC-CCやLDGM符号は、高度広帯域衛星デジタル放送などと同じくLDPC符号を基にした誤り訂正符号ではあるが、消失通信路であるIP通信のみを考慮して設計された符号であり、IP通信専用の誤り訂正符号の符号化器及び復号器を用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-050034号公報
【文献】国際公開第2007/069406号
【文献】国際公開第2015/048569号
【文献】国際公開第2010/001610号
【文献】国際公開第2015/022910号
【非特許文献】
【0007】
【文献】R. G. Gallager, “Low-Density Parity-Check Codes,” in Research Monograph series Cambridge, MIT Press, 1963年12月
【文献】“高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB-S3) 標準規格 ARIB STD-B44 2.1版”、[online]、平成28年3月25日改定、ARIB、[令和2年4月13日検索]、インターネット<URL:https://www.arib.or.jp/kikaku/kikaku_hoso/std-b44.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、デジタル無線通信において、誤り訂正符号とARQを組み合わせたHybrid ARQを用いることで伝送性能の向上を実現することができ、ARQのみを利用するよりも少ない再送回数、且つ誤り訂正符号のみでは補償できない条件でのデータ伝送が可能となる。
【0009】
しかし、放送のような片方向のブロードキャストにおいて通信と連携し、Hybrid ARQでデータを補償する技法は確立されていない。
【0010】
そこで、デジタル放送においても、通信と連携し、誤り訂正符号とARQを組み合わせたデジタル放送と通信の融合によるHybrid ARQでデータを補償する技法が望まれる。例えば、デジタル放送の伝送条件が悪化した際、双方向の通信が可能な通信路であるIP網を経て受信側から送信側にARQを行い、送信側からデータ再送する伝送システムを構築することで、伝送性能を向上させることができる。つまり、現行のデジタル放送では誤り訂正符号によるデータ補償しか想定していないため、Hybrid ARQでデジタル放送に係るデータを補償することにより、誤り訂正符号では訂正しきれない伝送条件の悪化にも対応できる。また、IP通信のみでARQシステムを構成する場合も、放送に係る誤り訂正符号と通信とを組み合わせたHybrid ARQを構成することで、ARQに係る再送回数を削減可能である。
【0011】
しかし、放送と通信の融合によるHybrid ARQを用いた伝送システムを構築するために、特許文献3に開示されるARQを用いたシステムに、特許文献4,5等に開示されるIP通信専用の誤り訂正符号を適用して構成すると、デジタル放送用の誤り訂正符号の符号化器及び復号器と、IP通信用の符号化器及び復号器をそれぞれ用意し、且つ協働させる仕組みが必要になり、設備規模が増大する。
【0012】
このため、「デジタル放送で利用する誤り訂正符号」とARQとを効率的に組み合わせた上で、放送と通信の融合によるHybrid ARQを用いた伝送システムを構築することが要望される。
【0013】
つまり、デジタル放送に係る送信装置の符号化器、及び受信装置の復号器を増大させずに、デジタル放送とIP網による通信を連携させ、例えばLDPC符号及びBCH符号の誤り訂正の連接符号とIP通信を利用した再送要求を組み合わせたHybrid ARQを実現する伝送システムを構成することにより、デジタル放送に係る誤り訂正能力を向上させることが要望される。
【0014】
また、一般的なIP網は、回線が混雑しているなど、使用する時間帯や回線等によってパケットの消失する確率、消失する様子などが変動する。そのため、設備規模を増大させずにデジタル放送と通信網でのHybrid ARQを実現する際に、デジタル放送に用いられる誤り訂正符号のうちブロック符号に注目し、IP網経由で再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網の通信品質に応じた可変制御を実現して、IP網経由の伝送効率を高める工夫が求められる。
【0015】
従って、デジタル放送に係る送信装置の符号化器、及び受信装置の復号器を増大させずに、デジタル放送とIP網による通信を連携させ、例えばLDPC符号及びBCH符号の誤り訂正の連接符号等によるブロック符号と、IP通信を利用した再送要求に対しIP網の通信品質に応じた再送を組み合わせたHybrid ARQを実現する伝送システムを構成することにより、デジタル放送に係る誤り訂正能力を向上させ、尚且つ、効率的なHybrid ARQを実現する技法が望まれる。
【0016】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、デジタル放送で利用する誤り訂正符号の符号化データを基に、効率的に、通信を利用して受信側からの再送要求に対しIP網の通信品質に応じたデータ再送を可能とする送信サーバ、デジタル放送に係る送信装置及び受信装置、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の送信サーバは、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し、放送伝送路を介してデジタル変調された当該符号化データを受信装置に送信する送信装置から、当該符号化データの所定時間分を保存しIP(Internet Protocol)網経由で受信装置に送信可能とする送信サーバであって、前記送信装置で生成された符号化データを順次入力し、前記誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームのフレーム番号又は時刻情報に基づく同期信号により時系列に管理し、時系列に管理された前記符号化データの所定時間分を更新しながら保存する保存部と、IP網経由で、前記受信装置にて前記誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに生成される再送要求パケットを受信し、前記受信装置に向けて再送要求に係る符号化データの再送を行うよう制御する際に、当該再送要求パケットに格納される前記受信装置で当該送信サーバとの通信を基に計測した通信品質情報と、再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報とを抽出し、前記通信品質情報を基に予め定められた符号化率変更基準に従って前記送信装置で生成された符号化データのブロック符号の符号化率を変更して再送するか否かを判定し、その判定結果に応じて前記再送要求情報を基に、前記保存部から再送要求に係る符号化データを読み出して、適応的に符号化率を変更した符号化データを構成し、前記受信装置に向けて該符号化データの再送を行うよう制御する再送要求処理部と、前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データのブロック符号の符号化率を変更する場合と変更しない場合の切り替えを行い、該符号化率を変更する場合に、前記送信装置で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ前記送信装置で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した前記送信装置で生成された符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して符号化率を変更する誤り訂正符号化処理を行う符号化率適応変更部と、前記再送要求処理部による制御を経て構成した再送要求に係る符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網を経て前記受信装置に向けて送信するIPパケット生成部と、を備え、前記再送要求処理部は、前記通信品質情報として、前記受信装置によって所定期間単位で計測された通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を基に、前記予め定められた符号化率変更基準に従って前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の送信サーバにおいて、前記符号化率適応変更部は、前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更する際、変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合には、変更する符号化率に応じて該符号化データの情報ビットに前記受信装置側で既知とするパディングビットを付加し、前記誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、前記送信装置で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ前記パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成し、変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には、該符号化データの情報ビットを送受信間で予め定めた分割法で分割し、変更する符号化率に応じて分割したそれぞれの当該情報ビットに前記受信装置側で既知とするパディングビットを付加し、前記誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、前記送信装置で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ前記パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の送信サーバにおいて、前記符号化率適応変更部は、前記再送要求処理部の制御により、前記送信装置で生成された符号化データの符号化率を変更する場合に、前記ブロック符号の符号化率の変更に加えて、前記符号化率の変更後の誤り訂正符号フレームのフレーム長を維持したまま、前記ブロック符号に連接する誤り訂正符号の訂正能力を変更する手段を更に有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の送信サーバにおいて、前記IPパケット生成部は、前記複数の誤り訂正符号フレームを用いてインターリーブフレームを構成し、各誤り訂正符号フレームに対して縦断するようにインターリーブを施して得られるペイロードに、当該インターリーブフレームを識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号と、符号化データパケットのヘッダであるIPヘッダを付加してIPパケット列の符号化データパケットを生成するインターリーブ部を有することを特徴とする。
【0023】
更に、本発明の送信装置は、デジタル放送に係る送信装置であって、本発明の送信サーバを装置内部に備えることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明の受信装置は、送信装置によりデジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して送信された変調波信号を受信する受信装置であって、前記変調波信号を受信して復調する復調部と、復調して得られる前記符号化データから前記誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し前記誤り訂正符号に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする誤り訂正復号部と、前記誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに対応する符号化データの再送を要求するための再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報を含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、本発明の送信サーバに向けて送信する再送要求パケット生成部と、当該再送要求パケットに応じて前記送信サーバから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して前記再送要求に応じて再送された符号化データを抽出するIPパケット受信部と、前記送信サーバとの通信に係る遅延と、前記送信サーバとの通信に係るパケットロスの発生量に基づくパケットロス率のうちいずれか一方、又は双方を所定期間単位で計測して更新保持するとともに、逐次、前記通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む通信品質情報を前記再送要求パケットに含めるように前記再送要求パケット生成部に出力する通信品質計測部と、を備え、前記誤り訂正復号部は、前記送信装置から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、当該符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合に前記再送要求パケットを生成させる復号可否判定部と、前記再送要求に応じて再送された符号化データについて、符号化率が変更されていないときは復調して得られる前記符号化データの符号化率で、符号化率が変更されているときは符号化率に応じたパディングビットを付加し、復号に必要な尤度比の置き換えに関する補完処理を経て復号処理を試み、所定時間内に復号できるまで対応する符号化データの再送の要求を繰り返す符号化データ補完部と、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割(詳細に後述する例では2等分に分割)されているときは、分割されている復号後の情報ビットを前記送信サーバとの間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成するデータ結合部と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の受信装置において、前記誤り訂正符号は、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号からなり、前記復号可否判定部は、前記送信装置から得られた符号化データについて、前記BCH符号の復号処理でエラーフリーにならなかったときに、当該符号化データのビット誤りが訂正できなかったと判定することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の受信装置において、受信した前記変調波信号についての受信品質を計測する受信品質計測部を更に備え、前記受信品質計測部は、前記誤り訂正復号部により復号できた符号化データを基に受信データを生成した時点の受信経路がIP網経由でなく放送受信する受信経路であるときは、放送受信する受信経路を維持し、前記誤り訂正復号部により復号できた符号化データを基に受信データを生成した時点の受信経路がIP網経由であるときは、前記受信品質が所定値以上であるか否かを判定し、前記受信品質が所定値以上であれば放送受信する受信経路に切り替え、前記受信品質が所定値未満であればIP網経由の受信経路を維持して、前記誤り訂正復号部に対し符号化データについての再送要求後も継続して、IP網経由で次の符号化データを再送要求して取得するよう指示する手段を有することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の受信装置において、前記IPパケット受信部は、当該再送要求パケットに応じて前記送信サーバから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、前記送信サーバによるインターリーブの逆処理を行って前記再送要求に応じて再送された符号化データを抽出するデインターリーブ部を有することを特徴とする。
【0028】
更に、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の送信サーバとして機能させるためのプログラムとして構成する。
【0029】
更に、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の受信装置として機能させるためのプログラムとして構成する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、放送受信だけでは防げないデータの損失について、IP網を経て受信側から送信側へ再送要求を実施し、送信側からデータ再送を可能とすることで、受信側でデータを補完することができる。特に、IP網を経て送信側が再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網経由の伝送効率を向上させることや、パケットロスに対する耐性を強化することができる。また、放送受信による誤り訂正符号とIP網経由の伝送で利用する誤り訂正符号の双方を放送規格で規格された誤り訂正符号の符号形式と同一にすることで、受信側では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による一実施形態の送信サーバ、送信装置及び受信装置を備える伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明による一実施形態の送信サーバ及び送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明による一実施形態の送信サーバと受信装置との間の再送要求パケットに係る制御フローを示すフローチャートである。
【
図4】(a)乃至(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバにおける符号化率適応変更部による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより高い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【
図5】(a)乃至(e)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバにおける符号化率適応変更部による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【
図6】本発明による一実施形態の送信サーバにおけるIPパケット生成部のインターリーブ処理に関する説明図である。
【
図7】本発明による一実施形態の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明による一実施形態の受信装置における受信制御フローを示すフローチャートである。
【
図9】本発明による一実施例の送信サーバ、送信装置及び受信装置を備える伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明による一実施例の高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置における受信制御フローを示すフローチャートである。
【
図11】(a)乃至(e)は、それぞれ本発明による一実施例の送信サーバにおける符号化率適応変更部による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【
図12】本発明による一実施例の送信サーバにおけるIPパケット生成部のインターリーブ処理に関する説明図である。
【
図13】(a)乃至(f)は、それぞれ本発明による応用例の送信サーバにおける符号化率適応変更部による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【
図14】本発明による変形例の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明による変形例の受信装置における受信制御フローを示すフローチャートである。
【
図16】本発明による一実施例の送信サーバにより再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更した符号化データパケットを受信装置に送信するときの動作概要を例示説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔伝送システム〕
図1は、本発明による一実施形態の送信サーバ6、送信装置2,3及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示す伝送システム1は、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6、及び、複数台の送信サーバ6を構成するときに設けられる負荷分散装置7を備える。
【0033】
送信装置2は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む衛星放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置2は、高度広帯域衛星デジタル放送の送信装置とすることができる。また、送信装置2は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、ローカルエリアネットワーク経由で、1台又は複数台の送信サーバ6に送信する機能を有する。
【0034】
送信装置3は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ3aを介して地上放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置3は、現行又は次世代の地上デジタル放送の送信装置とすることができる。また、送信装置3は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、ローカルエリアネットワーク経由で、1台又は複数台の送信サーバ6に送信する機能を有する。
【0035】
受信装置5は、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能、及び、受信アンテナ5bを介して送信装置3から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し送信装置3における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能を有する装置である。
【0036】
また、受信装置5は、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には対応する符号化データの再送を要求するIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、この再送要求パケットに通信品質情報を含めて、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する機能を有する。さらに、受信装置5は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6から再送要求に応じて再送された符号化データ(送信サーバ6側で通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して再構成される。)を格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に応じて再送された符号化データを抽出し復号処理に用いるよう符号化率に応じた補完を行い、所定時間内に当該復号処理により復号できるまで、対応する符号化データの再送の要求を繰り返す機能、及び、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割(詳細に後述する例では2等分に分割)されているときは、分割されている復号後の情報ビットを送信サーバ6との間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成する機能を有する。尚、受信装置5は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
【0037】
1台又は複数台の送信サーバ6の各々は、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して受信装置5に送信する送信装置2(又は送信装置3)から当該符号化データの所定時間分を保存し、受信装置5から再送要求された符号化データについて、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して符号化データを再構成し、本例ではインターリーブ処理を施したIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成される。
【0038】
即ち、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データを当該ローカルエリアネットワーク経由で順次入力し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームのフレーム番号又は時刻情報に基づく同期信号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能、IP網8を経て、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに通信品質情報とともに当該符号化データに関する再送要求パケットを受信し、当該受信装置5に向けて通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して該符号化データの再送を行うよう制御する機能、及び、再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ当該符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレームの誤り訂正符号フレームを当該再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データと同一の符号化率で形成してインターリーブフレームを構築し、当該インターリーブフレームをmフレームの誤り訂正符号フレームに対して直交する方向にインターリーブ処理を施してIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8経由で当該受信装置5に向けて送信する機能を有する。
【0039】
特に、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率を変更して再送する際、変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合には、変更する符号化率に応じて該符号化データの情報ビットに受信装置5側で既知とするパディングビットを付加し、誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ当該パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成する機能を有する。また、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率を変更して再送する際、変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には、該符号化データの情報ビットを送受信間(送信サーバ6及び受信装置5間)で予め定めた分割法で分割(詳細に後述する例では2等分に分割)し、変更する符号化率に応じて分割したそれぞれの当該情報ビットに受信装置5側で既知とするパディングビットを付加し、誤り訂正符号化処理を行って得られる符号化率を変更したブロック符号のパリティを、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて付加し、且つ当該パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成する機能を有する。
【0040】
尚、
図1に例示する伝送システム1では、送信装置2及び送信装置3を備えるとして説明したが、送信装置2と送信装置3のいずれか一方のみとしてもよい。
図1に例示する伝送システム1では、送信装置2(又は送信装置3)と送信サーバ6とを別体として説明したが、送信装置2(又は送信装置3)が送信サーバ6を備える形態とし、1台又は複数台の送信装置2(又は送信装置3)として、ローカルエリアネットワークで接続する代わりに、単純な信号ケーブルで接続する構成としてもよい。
【0041】
負荷分散装置7は、複数台の送信サーバ6を構成するときに、当該複数台の送信サーバ6とIP網8との間に設けられ、IP網8を経て多くの受信装置5から再送要求パケットを受信した場合に、複数台の送信サーバ6の各処理負荷を分散させ、再送要求に係る符号化データパケットを分割送信する装置である。
図1に示す伝送システムでは、予めユーザ登録された複数台の受信装置5を対象とし、負荷分散装置7を介在させることで、ユーザ登録数が多くなる場合でも送信サーバ6を追加するだけでよいものとなる。ただし、予め許容するユーザ登録数に対応した送信サーバ6を個別に配設するときは、負荷分散装置7の設置を省略し、送信サーバ6とIP網8とを直接的に接続する形態としてもよい。
【0042】
以下、より具体的に、送信装置2(又は送信装置3)、送信サーバ6、受信装置5について順に説明する。
【0043】
〔送信装置〕
図2は、本発明による一実施形態の送信サーバ6及び送信装置2(又は送信装置3)の概略構成を示すブロック図である。尚、
図2に示す送信装置2(又は送信装置3)は、本発明に係る主要な構成要素のみを図示しており、エネルギー(電力)拡散処理等のその他の構成要素の説明は省略する。
【0044】
送信装置2及び送信装置3は、それぞれの放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)に適した誤り訂正符号化処理及び変調方式が採用されるが、
図2に示すように、誤り訂正符号化部21、及び変調部22を備えるとして包括して説明する。
【0045】
誤り訂正符号化部21は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、変調部22に出力する符号化器である。また、誤り訂正符号化部21は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、ローカルエリアネットワーク経由で送信サーバ6に送信する機能を有する。
【0046】
変調部22は、誤り訂正符号化部21から得られる符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、放送伝送路経由でデジタル放送に係る電波を放射する。
【0047】
デジタル放送に係る送信データは、例えば地上放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B31に記載され地上デジタル放送で使用されるMPEG2-TSとすることができ、例えば衛星放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B44に記載され高度広帯域衛星デジタル放送で使用されるTLV(Type Length Value)形式のデータとすることができる。
【0048】
尚、現行の地上デジタル放送では、内符号として畳み込み符号、外符号としてリードソロモン符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。次世代の地上デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理を行うことが検討されている。また、高度広帯域衛星デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。
【0049】
〔送信サーバ〕
図2に示す送信サーバ6は、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して受信装置5に送信する送信装置2(又は送信装置3)から順次入力し、所定時間分を更新しながら保存し、当該符号化データのうち受信装置5から再送要求された符号化データについて、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して再構成し、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成され、保存部61、IPパケット生成部62、再送要求処理部63、符号化率適応変更部64、及び通信品質管理部65を備える。
【0050】
保存部61は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データを当該ローカルエリアネットワーク経由で、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を基に順次入力し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能部である。尚、送信装置2(又は送信装置3)から得られる符号化データには、放送伝送路で用いるデジタル放送内の制御信号であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号にて識別されるフレーム番号又は時刻情報が同期信号として付されている。例えば、保存部61は、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、誤り訂正符号フレーム単位の符号化データに併せて伝送されるTMCC信号内に含まれる時刻情報(主信号内にも時刻情報を埋め込むこともある。)も受信することで、送信装置2(又は送信装置3)から逐次得られる誤り訂正符号フレーム単位の符号化データを、時刻情報に関連付けたフレーム番号を同期信号とし、その同期信号で管理することができる。また、保存部61により同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で時系列に管理する符号化データは、デジタル放送中に受信する間、送信サーバ6からIP網8経由で通知する形態としてもよい。即ち、
図1に示す伝送システム1において、TMCC信号又は主信号内に含まれる時刻情報やフレーム番号を同期信号として利用することで、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6、及び、複数台の送信サーバ6を構成するときに設けられる負荷分散装置7の同期を確保することができる。
【0051】
IPパケット生成部62は、受信装置5からの再送要求に係る符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能部である。この符号化データパケットは、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できないと判定されたときに生成される。尚、詳細は後述するが、IPパケット生成部62は、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号を付与した上で、再送要求に係る符号化データのビットが所定値以上離れるようにする所定規則に基づいて、各誤り訂正符号フレームを縦断するようにビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行するインターリーブ部621を有する。
【0052】
再送要求処理部63は、受信装置5からIP網8を経て再送要求パケットを受信したときに、当該再送要求パケットに格納される受信装置5で計測した通信品質情報と、再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報とを抽出する。そして、再送要求処理部63は、今回受信した通信品質情報を基に、通信品質管理部65において管理する予め定められた符号化率変更基準に従って、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定する。そして、再送要求処理部63は、その判定結果に応じて、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して該符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームを読み出し、符号化率適応変更部64に出力させるよう保存部61を制御するとともに、適応的に当該読み出した符号化データの符号化率を変更して再構成し、IPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。この再送要求処理部63に係る制御例については、
図3を参照して後述する。
【0053】
符号化率適応変更部64は、再送要求処理部63によって制御され、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率を変更する場合と変更しない場合の切り替えを行う切替部641,642と、当該符号化率を変更する場合に、送信装置2(又は送信装置3)で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した当該送信装置で生成された符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して符号化率を変更する誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化部643と、を備える。
【0054】
より具体的には、切替部641,642は、保存部61から読み出した再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更せずに再送するときは、そのままIPパケット生成部62に出力し、符号化率を変更して再送するときは、誤り訂正符号化部643により符号化率を変更し再構成した符号化データをIPパケット生成部62に出力するように切り替えを行う機能部である。
【0055】
例えば、放送伝送路経由の伝送とIP綱8経由の伝送の符号化率が同じであるときは、符号化率適応変更部64は、保存部61から読み出される送信装置2(又は送信装置3)で伝送した該当する誤り訂正符号フレームの符号化データを、そのままIPパケット生成部62へ出力する。
【0056】
一方、符号化率適応変更部64は、放送伝送路経由の伝送から符号化率を変更した符号化データを再送するときには、誤り訂正符号化部643により符号化率を変更する。
【0057】
誤り訂正符号化部643は、再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更して再送するときに、保存部61から当該符号化データ内の所定のパリティを除く情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを読み出す。続いて、誤り訂正符号化部643は、変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合には符号化データの情報ビットをそのまま用い、変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には符号化データの情報ビットを送受信間で予め定めた分割法で2分割したものを用いて、変更する符号化率に応じて、送信サーバ6及び受信装置5間で既知のビット(全て“0”又は“1”のビット、或いは“0”と“1”の規則的なビットパターン)からなるパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に付加する。そして、誤り訂正符号化部643は、このパディングビットを付加した当該所定の情報ビットに対して、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする放送伝送路で伝送した符号化率とは異なる符号化率で誤り訂正符号化処理を行う。最終的には、誤り訂正符号化部643は、放送伝送路で伝送した符号化データについて符号化率を変更したブロック符号のパリティを、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて当該情報ビットに付加し、且つパディングビットを除去した再送用の符号化データを生成する。符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643による符号化率変更時の符号化データの生成法については、
図4及び
図5を参照して後述する。
【0058】
通信品質管理部65は、再送要求処理部63によって制御され、受信装置5から受信した再送要求パケットに格納される通信品質情報に応じた符号化率を決定するのに用いる予め定められた符号化率変更基準を情報として保持して管理する機能部である。尚、符号化率変更基準については、幾つかの例を挙げて後述する。また、この通信品質情報は、受信装置5によって生成され、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む。
【0059】
通信回線の遅延情報は、受信装置5から送信サーバ6に向けて送信した再送要求パケットの送信時刻と、これに対応して送信サーバ6から再送された符号化データパケットの受信時刻との時間差で推定される伝送遅延を示す情報である。
【0060】
パケットロス率情報は、再送要求パケットの送信時刻から所定時間経過しても送信サーバ6から対応する符号化データパケットの受信ができなかった場合にパケットロスが生じたとみなし、所定期間単位の送信サーバ6との通信実績を基に計測したパケットロス率を示す情報である。
【0061】
(再送要求パケットに係る制御フロー)
図3は、本発明による一実施形態の送信サーバ6と受信装置5との間の再送要求パケットに係る制御フローを示すフローチャートである。
【0062】
まず、送信サーバ6は、保存部61により、放送伝送路で伝送した符号化データについて所定時間分を更新しながら保存する(ステップS50)。放送伝送路で伝送した符号化データは、誤り訂正符号化済みのデータであり、ARIB STD-B44に記載されるLDPC符号などのブロック符号の誤り訂正符号フレームで構成される。
【0063】
受信装置5は、放送伝送路で伝送されたデジタル放送を受信して復調し、符号化データのビット誤りが訂正できるか否かを試みる。伝送環境がよく、誤りなく受信できた場合や、白色雑音等の影響が誤り訂正符号により復号できる範囲であった場合、そのまま誤り訂正復号した受信データを再生可能に出力する。降雨減衰が起きるなど伝送環境が悪く、放送伝送路経由で受信した符号化データのビット誤りが訂正できない場合、受信装置5は、IP網8を通じて該当する符号化データについて再送要求パケットを生成し、送信サーバ6に再送要求を行う(ステップS51)。この再送要求パケットには、上述したように、再送要求情報、及び、通信品質情報が含まれる。
【0064】
そこで、送信サーバ6は、再送要求処理部63により、受信装置5から再送要求パケットを受信すると(ステップS52)、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出する(ステップS53)。
【0065】
続いて、再送要求処理部63は、今回受信した通信品質情報を基に、通信品質管理部65において管理する予め定められた符号化率変更基準に従って、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定する(ステップS54)。尚、符号化率変更基準については、幾つかの例を挙げて後述する。
【0066】
そして、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更せずに再送すると判定したとき(ステップS54:No)、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して読み出し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率と同じ符号化率で再送するよう、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御する(ステップS55)。
【0067】
一方、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送すると判定したとき(ステップS54:Yes)、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して、当該符号化データ内の所定のパリティを除く情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを読み出す。そして、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して、符号化率を変更する。つまり、再送要求処理部63は、変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合には符号化データの情報ビットをそのまま用い、変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には符号化データの情報ビットを送受信間で予め定めた分割法で2分割したものを用いる。つまり、更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合には、当該情報ビット数が変更後の符号化率に対する情報ビット数より多くなるため、当該情報ビットを2分割して、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号形式と同一のものを適用できるように処理する。その後、変更前の符号化率よりも高い符号化率に変換する場合に非分割、変更前の符号化率よりも低い符号化率に変換する場合に2分割したそれぞれの当該情報ビットを用いて受信装置5側で既知とするパディングビットを付加し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率から符号化率を変更したブロック符号のパリティを付加した後、パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成するよう、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御する(ステップS56)。
【0068】
最終的に、送信サーバ6は、IPパケット生成部62により、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを用いてインターリーブフレームを構成し、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを縦断(直交)する方向にインターリーブ処理してIPパケット列(符号化データパケット)を生成し、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する(ステップS57)。尚、送信サーバ6は、符号化率情報を含めて、符号化データパケットを構成し、受信装置5に向けて送信する形態とすることもできる。本例では、符号化データパケットの伝送効率を高めるために、受信装置5に対し、符号化率を変更したときに、その旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを事前通知する形態としている。
【0069】
また、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの送信を複数回行う構成としてもよいし、或いは、符号化率変更通知パケットの受信確認応答を得る構成とし、受信装置5から受信確認応答を受信するまで、符号化率変更通知パケットの送信を繰り返し行う構成としてもよい。尚、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略してもよいが、符号化率変更の有無に関わらず、符号化データパケットの再送の度に、符号化率変更通知パケットの送信を行ってもよい。
【0070】
ここで、受信装置5から取得した通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれており、これらの情報を基に、どの符号化率に変更するかについては、通信品質管理部65にて管理する予め定められた符号化率変更基準に従って行う。
【0071】
符号化率変更基準は、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して、符号化率を変更するように定めている。
【0072】
例えば、符号化率変更基準として、以下の(1)乃至(9)のいずれかとすることができる。
(1)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは任意の遅延に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で該当する遅延に対応する符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは任意の遅延に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で該当する遅延に対応する符号化率に変更して当該遅延に起因するパケットロスに対する耐性を事前に防ぐようにする。
(2)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
(3)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超え、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
(4)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で所定段(例えば1段)低い符号化率に変更して当該遅延に起因するパケットロスに対する耐性を事前に防ぐようにする。
(5)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で所定段(例えば1段)低い符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
(6)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高くする範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超え、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より低くする範囲内で所定段(例えば1段)低い符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
(7)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最大値の符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最小値の符号化率に変更して当該遅延に起因するパケットロスに対する耐性を事前に防ぐようにする。
(8)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最大値の符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最小値の符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
(9)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲内、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲内のときは放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲未満のときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最大値の符号化率に変更して伝送効率を高め、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超え、且つ受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値の所定範囲を超えるときは放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最小値の符号化率に変更してパケットロスに対する耐性を高めるようにする。
【0073】
(符号化率変更時の符号化データの生成法:より高い符号化率に変更時)
図4を参照して、再送要求に係る符号化データをより高い符号化率に変更時に、再送要求処理部63が上述に例示した符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、符号化率変更時の符号化データを生成する例を説明する。
図4(a)乃至
図4(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6における符号化率適応変更部64による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより高い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【0074】
まず、
図4(a)は、放送伝送路で伝送した符号化データを示すブロック符号の誤り訂正符号フレームの構成を示す図である。通常、デジタル放送では選択可能な符号化率について複種類が予め規定されている。例えばARIB STD-B44ではブロック符号であるLDPC符号のうち、41/120(≒1/3)、49/120(≒2/5)、61/120(≒1/2)、73/120(≒3/5)、81/120(≒2/3)、89/120(≒3/4)、93/120(≒7/9)、97/120(≒4/5)、101/120(≒5/6)、105/120(≒7/8)、及び、109/120(≒9/10)の11種類の符号化率が規定されている。
【0075】
尚、放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率の情報については、通常、デジタル放送内の伝送制御信号であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号で伝送されるが、送信サーバ6からIP網8経由で、事前通知する構成としてもよい。また、上述したように、再送要求に応じて再送する符号化データの符号化率の情報については、送信サーバ6は、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、又は符号化率情報を含めて、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。ここで、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略してもよい。
【0076】
図4(a)に示すように、放送伝送路で伝送した符号長Nビットのブロック符号における符号化データの符号化率をF
bとすると、その符号化データの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)はN×F
bビット、パリティはN×(1-F
b)ビットで構成される。通常、放送伝送路でブロック符号を用いる場合、放送伝送路で扱いやすいよう符号化率によらず誤り訂正符号フレームの符号長のビット数は一定であることが多い。例えばARIB STD-B44ではブロック符号であるLDPC符号の符号長Nは、LDPC符号化率に依らずN=44880ビットで一定である。ここで、IP網8経由で再送する符号化データの符号化率をF
iとすると、IP綱8経由で再送する符号化データの符号化率F
iとして放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率より高く変更する場合、その放送伝送路で伝送した情報ビットをそのまま用いて、符号化率F
iに変換する。
【0077】
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
【0078】
そして、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率F
bから符号化率F
iに変更すると判断したときは(F
b<F
i)、まずは、
図4(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データのうちN×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを、保存部61から読み出させる(
図4(b)参照)。
【0079】
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出したN×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)に対して、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×(F
i-F
b)ビット分をパディングビットとして送受間で既知とする挿入位置に付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率F
iとなる誤り訂正符号化処理を施して、N×(1-F
i)ビットのパリティを生成する(
図4(c)参照)。例えば、誤り訂正符号化部643は、符号化率F
iとして、N×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を用いながら、符号化率F
bから送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最大値の符号化率へと変更する。尚、本例では、情報ビットの後段にパディングビットを付加するとして図示しているが、情報ビットの前段にパディングビットを付加してもよく、即ち、パディングビットの挿入位置は、変更後の符号化率F
iの値によって送受間で既知とするように予め定めておけばよい。
【0080】
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、N×F
bビットの情報ビットにN×(1-F
i)ビットのパリティを付加した再送用の符号化データを再構成し、IPパケット生成部62に出力する(
図4(d)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長は、元の符号長Nビットよりも短くなるため、符号長Nビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
【0081】
(符号化率変更時の符号化データの生成法:より低い符号化率に変更時)
次に、
図5を参照して、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時に、再送要求処理部63が上述に例示した符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、符号化率変更時の符号化データを生成する例を説明する。
図5(a)乃至
図5(e)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6における符号化率適応変更部64による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。
【0082】
図5(a)に示すように、放送伝送路で伝送した符号長Nビットのブロック符号における符号化データの符号化率をF
bとすると、その符号化データの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)はN×F
bビット、パリティはN×(1-F
b)ビットで構成される。通常、放送伝送路でブロック符号を用いる場合、放送伝送路で扱いやすいよう符号化率によらず誤り訂正符号フレームの符号長のビット数は一定であることが多い。例えばARIB STD-B44ではブロック符号であるLDPC符号の符号長Nは、LDPC符号化率に依らずN=44880ビットで一定である。ここで、IP網8経由で再送する符号化データの符号化率をF
iとすると、通常であれば符号化率F
iの情報ビットはN×F
i、パリティは、N×(1-F
i)ビットとなるが、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号化長に対して過多となるため、本実施形態ではIP綱8経由で再送する符号化データの符号化率F
iを放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率F
b未満に変更する場合、元の情報ビットを2等分することで、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号化長に収めてから符号化し直し、符号化データを再構成するようにする。
【0083】
より具体的には、まず、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
【0084】
例えば上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま変更なしと判断し(F
b=F
i)、
図5(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
【0085】
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のとき、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率F
bから符号化率F
iに変更すると判断し(F
b>F
i)、まずは、
図5(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データのうちN×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを、保存部61から読み出させる(
図5(b)参照)。
【0086】
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出したN×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を送受信間で予め定めた分割法で2分割する((N×F
b)/2)。ここでは、情報ビット位置の前半部、後半部で2等分する例とするが(
図5(c)参照)、奇数ビットと偶数ビットで2分割とするなど、他の分割法であってもよい。
【0087】
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、2分割したそれぞれの情報ビット((N×F
b)/2)に対して、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×F
i-((N×F
b)/2)ビット分をパディングビットとして送受間で既知とする挿入位置に付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率F
iとなる誤り訂正符号化処理を施して、N×(1-F
i)ビットのパリティを生成する(
図5(d)参照)。例えば、誤り訂正符号化部643は、符号化率F
iとして、N×F
bビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を用いながら、符号化率F
bから送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最小値の符号化率へと変更する。尚、本例では、情報ビットの後段にパディングビットを付加するとして図示しているが、情報ビットの前段にパディングビットを付加してもよく、即ち、パディングビットの挿入位置は、変更後の符号化率F
iの値によって送受間で既知とするように予め定めておけばよい。
【0088】
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、(N×F
b)/2ビットの情報ビットにN×(1-F
i)ビットのパリティを付加した再送用の符号化データを再構成し、IPパケット生成部62に出力する(
図5(e)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長は、元の符号長Nビットよりも短くなり、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号化長に対して過多とならず、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更することができ、符号化率を変更せずに再送する場合よりも訂正能力が高くなる。
【0089】
このようにして、送信サーバ6は、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データの符号化率を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する。
【0090】
(符号化データパケットの生成法)
送信サーバ6は、IP網8を通じて受信装置5へ再送要求された符号化データを送信する際に、IP綱8で生じるバースト的なパケット消失にも高い訂正性能を達成するため、IPパケット生成部62により、
図6を参照して後述するn×mのインターリーブフレームを構築し、識別ヘッダ、シーケンス番号、及びIPヘッダを付けたIPパケット列を生成し、シーケンス番号に従いIPパケットの送出順番をインターリーブして符号化データパケットとして受信装置5に向けて送信するのが好適である。
【0091】
より具体的に、
図6を参照して、送信サーバ6におけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法について説明する。
図6(a)乃至
図6(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6におけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。
【0092】
まず、IPパケット生成部62は、符号化率適応変更部64から、それぞれ同一の符号化率Fiにより符号長nビットで構成される、再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームを入力し、n×mインターリーブフレームを構成する。尚、mは、固定値であるが外部から可変設定することができ、送受間で共有する値となっている。また、符号化率Fiの符号長nビットが放送伝送路で用いられた符号化率Fbの符号長Nビットから変更されていないときn=Nであり、符号化率Fbの符号長Nビットから変更されているときn<Nである。
【0093】
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正符号フレームを含むmフレームの誤り訂正符号フレームを縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(
図6(a)参照)。
【0094】
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、mフレームの誤り訂正符号フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長としてmビットのIPペイロードをnパケット分、生成する(
図6(b)参照)。即ち、各誤り訂正符号フレームの1~nビットのうち、それぞれの同一ビット目を1ビットずつ集めmビットとしたものをIPペイロードとする。
【0095】
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、生成したnパケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、nパケット分のIPパケットを生成する(
図6(c)参照)。尚、本例では、分かりやすくシーケンス番号を1~nとして表しているが、各IPパケットを受信装置5にとって誤り訂正符号フレームのどのビットを示すものであれるかを識別可能な表現形態であれば任意である。
【0096】
また、
図6(b)に示すように複数の誤り訂正符号フレームから生成されたnパケット分のIPペイロードで、1つのインターリーブフレームが構成される。そこで、IPパケット生成部62は、或るインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダに例えばID=“1”を割り当てるとすると、次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“2”を、その次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“3”をインクリメントしながら割り当てるようにして、識別ヘッダの値で、属するインターリーブフレームを識別できるようにする。従って、
図6(c)に示すように、識別ヘッダは、1つのインターリーブフレーム内で同じ値を持つように付加される。このため、受信装置5側では、識別ヘッダを参照すれば、受信した符号化データパケットのIPペイロードが、どのインターリーブフレームに属するものであるかを識別できるようになる。
【0097】
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、生成したnパケット分のIPパケットを、シーケンス番号に従いIP網8への送出順番を所定規則に基づいてインターリーブして(例えばシーケンス番号の昇順で送出してもよいし、送受間で定めた別のシーケンス番号の送出順序でもよい。)、符号化データパケットとして受信装置5に向けて送信する。
【0098】
尚、本実施形態におけるIPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正符号フレームを含むm(mは1以上の整数)個の誤り訂正符号フレームが必要であり、換言すればインターリーブ部621はmフレーム分の誤り訂正符号フレームが揃うまでインターリーブ処理を実行することはできない。このためタイムロスが問題となる場合には、再送要求に係るnビットの誤り訂正符号フレームのうちシーケンス番号として所定ビット数分n1(<n)のみを、m(mは1以上の整数)個の誤り訂正符号フレームから抽出して、対応するシーケンス番号を保持したIPパケットの全体数を減らしてもよい。そして、m,nは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとすることで、各IPパケットのパケット長の調整を行うことができる。
【0099】
また、それぞれの誤り訂正符号フレームから1ビットずつ集めることでIPパケットを生成したが、それぞれの誤り訂正符号フレームから複数ビット集めることも可能である。逆に2フレーム分の誤り訂正符号フレームを1フレーム分として扱うことや、mビットのパケットを2n個生成することも可能である。こうして生成したnパケット分のIPペイロードを1つのインターリーブフレームとし、各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、個々のIPペイロードを識別するためのシーケンス番号を付与する。即ち、IP網8におけるパケットロスを予め想定して、これを緩和することができるように、誤り訂正符号フレームの各ビットの送出順を並び替える形態であれば、その他のインターリーブ技法を適用することが可能である。一般的にインターリーブ処理の対象とする期間(信号長)を長くすればするほどバースト的なパケットロスに強くなるため、伝送システム1全体で許容可能な期間内で最適なインターリーブ処理を実行するよう、インターリーブ部621を構成する。
【0100】
〔受信装置〕
図7は、本発明による一実施形態の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、復調部51、誤り訂正復号部52、再送要求パケット生成部53、IPパケット受信部54、切替部55、及び通信品質計測部56を備える。
【0101】
復調部51は、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する。
【0102】
誤り訂正復号部52は、誤り訂正符号の復号処理の事前に、復調部51から得られる符号化データの各ビットの対数尤度比(LLR:Log-likelihood ratio)を算出し、この事前対数尤度比(事前LLR)を用いて、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能に外部出力する復号器である。
【0103】
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521、符号化データ補完部522、及びデータ結合部523を有する。
【0104】
復号可否判定部521は、誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を再送要求パケット生成部53に出力する。尚、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、受信装置5が復調部51経由で逐次受信して得られる誤り訂正符号フレーム単位の符号化データは、併せて伝送されるTMCC信号又は主信号に含まれる時刻情報を基に識別することができ、送信サーバ6と同様に同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で管理することもできるため、同期信号として、この再送要求情報は再送要求する誤り訂正符号フレームを識別可能とする時刻情報を含むものとするか、又はそのフレーム番号も含むものとすればよい。
【0105】
符号化データ補完部522は、再送要求パケット生成部53による当該再送要求パケットの送信に応じて送信サーバ6から受信した符号化データパケットから、再送要求に係る符号化データを抽出して、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する機能部である。
【0106】
そして、誤り訂正復号部52は、符号化データ補完部522の機能により、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データについてIP網8経由で取得した符号化データを補完して、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該誤り訂正符号フレームにおける選択した符号化データの再送の要求を繰り返すように構成される。
【0107】
データ結合部523は、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割されているときは、分割されている復号後の情報ビットを送信サーバ6との間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成する機能部である。
【0108】
尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
【0109】
また、本例では、送信サーバ6が、再送する符号化データの符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。このため、誤り訂正復号部52は、符号化データ補完部522の機能により、符号化率の変更通知の有無を基にIP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定し、符号化率に応じて適宜パディングビットを追加し、復号に必要な尤度比の置き換えに関する補完処理を行う。
【0110】
再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定したときに、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データの再送を送信サーバ6に対して要求するために、当該符号化データを再送要求する旨を示す再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する機能部である。
【0111】
IPパケット受信部54は、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に係る符号化データを取得し、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する機能部である。尚、IPパケット受信部54は、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成するデインターリーブ部541を有する。
【0112】
切替部55は、誤り訂正復号部52による受信経路切替信号によって、符号化データの受信経路が切替制御される。即ち、切替部55は、主として放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように作動する。ただし、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55は、誤り訂正復号部52による受信経路切替信号により制御されて、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、IP網8経由で再送されIPパケット受信部54から得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力する。また、誤り訂正復号部52は、受信経路切替信号により、当該所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できた時点で、又は当該所定時間を経過後に、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御する。
【0113】
通信品質計測部56は、送信サーバ6との通信に係る遅延と、送信サーバ6との通信に係るパケットロスの発生量に基づくパケットロス率のうちいずれか一方、又は双方を所定期間単位で計測して更新保持するとともに、逐次、その通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む通信品質情報を再送要求パケット生成部53に出力する機能部である。
【0114】
上述したように、通信回線の遅延情報は、受信装置5から送信サーバ6に向けて送信した再送要求パケットの送信時刻と、これに対応して送信サーバ6から再送された符号化データパケットの受信時刻との時間差で推定される伝送遅延を示す情報である。
【0115】
また、パケットロス率情報は、再送要求パケットの送信時刻から所定時間経過しても送信サーバ6から対応する符号化データパケットの受信ができなかった場合にパケットロスが生じたとみなし、所定期間単位の通信実績を基に計測したパケットロス率を示す情報である。
【0116】
(受信装置における受信制御フロー)
図8は、本発明による一実施形態の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。
【0117】
まず、受信装置5は、復調部51により、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS1)。尚、切替部55は、上述したように、誤り訂正復号部52によって受信経路が制御される。
【0118】
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復調処理で得られた符号化データの各ビットの事前LLRを算出して誤り訂正符号フレームを再構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を実行する(ステップS2)。
【0119】
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し(ステップS3)、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを再生可能に生成し(ステップS3:No)、現在の受信経路がIP網8経由でないので(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。即ち、誤り訂正復号部52は、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて復号を試みて、ビット誤りがない場合や、ビット誤りが訂正可能な範囲であった場合に、そのまま復号して受信データを再生可能に生成する。
【0120】
一方、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、誤り訂正符号フレームを構成する符号化データを復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を生成し、再送要求パケット生成部53に出力して当該符号化データの再送要求を示す再送要求パケットを生成するよう指示する(ステップS3:Yes)。また、復号可否判定部521は、切替部55を制御して、IP網8経由で符号化データを誤り訂正復号部52に入力する受信経路に切り替えを行う。
【0121】
再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定したときに、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データの再送を送信サーバ6に対して要求するために、当該再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する(ステップS4)。ここで、通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれている。
【0122】
そこで、送信サーバ6は、受信装置5から再送要求パケットを受信した場合、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出し、通信品質情報を基に、予め定められた符号化率変更基準に従って、符号化率を変更するか否か、変更する場合にはどの符号化率に変更するかを決定する。上述したように、符号化率変更基準は、送信側の誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して、符号化率を変更するように定めている。また、送信サーバ6は、その再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレームの誤り訂正符号フレームを当該再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データと同一の符号化率で形成してインターリーブフレームを構築し、当該インターリーブフレームをmフレームの誤り訂正符号フレームに対して直交する方向にインターリーブ処理を施してIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信する。また、送信サーバ6は、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを送信する。このため、受信装置5は、IPパケット受信部54及び誤り訂正復号部52により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定することができる。
【0123】
従って、受信装置5は、送信サーバ6に向けて再送要求パケットの送信後、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された復号対象の符号化データを含むmフレーム分の誤り訂正符号フレームの符号化データパケット(IPパケット列)を受信して、デインターリーブ部541により、IPパケットに付与される識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成し、誤り訂正復号部52に出力する(ステップS5)。
【0124】
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52における符号化データ補完部522により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定し(ステップS6)、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合(ステップS6:Yes)、
図4(d)又は
図5(e)に示す符号化率が変更された誤り訂正符号フレームを復元するために、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に追加する(ステップS7)。
【0125】
一方、符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と同じである場合(ステップS6:No)、パディングビットを追加する必要はない。
【0126】
続いて、符号化データ補完部522は、IP網8経由で取得した符号化データを、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する(ステップS8)。より具体的には、誤り訂正復号部52は、ブロック符号の誤り訂正復号器として構成され対数尤度比を用いた復号を実施するため、符号化データ補完部522により、IP網8経由で取得した符号化データについて、ビットの値が0である場合の対数尤度比を+∞(“0”である確からしさとして最大値)、ビットの値が1である場合の対数尤度比を-∞(“1”である確からしさとして最大値)、仮にパケットロスが生じて非達ビットが生じているときは、対数尤度比を0に置き換えることにより補完する。
【0127】
そして、誤り訂正復号部52は、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返し(ステップS2乃至S8)、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替えるよう切替部55の切替制御を行い(ステップS10)、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、ステップS9に移行して、切替部55を制御し、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替える。
【0128】
尚、誤り訂正復号部52は、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割されているときは、分割されている個々の情報ビットの符号化データの双方について、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで放送伝送路で伝送した符号化データの再送の要求を繰り返す。そして、誤り訂正復号部52は、分割されている個々の情報ビットの符号化データの双方について復号できたときは、データ結合部523の機能により、その分割されている復号後の情報ビットを送信サーバ6との間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成する。
【0129】
ところで、再送要求パケットは、IPパケット形式で一般的に用いられる非達通知パケットを利用でき、符号化データパケットは、その非達通知パケットの応答として再送を行うものとして構成される。このため、誤り訂正復号部52では、復調部51から得られる符号化データに対して再送により得られた符号化データを置き換えて、再度、復号を実施することができ、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
【0130】
このように、
図1に示す伝送システム1では、降雨による減衰やフェージングなどにより、誤り訂正符号によるデータ復元が不可能なほど伝送条件が悪化した場合、受信装置5はIP網8を通じて送信サーバ6に該当する符号化データの再送を要求する。送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)により放送伝送路を経て送信したときと同じ誤り訂正符号の符号化器(即ち、誤り訂正符号化部21)により符号化した符号化データについて、通信品質情報に応じて適応的に符号化率を変更し、IP網8経由で受信装置5に伝送する。
【0131】
受信装置5は、電波により受信したときと同じ誤り訂正符号の復号器(即ち、誤り訂正復号部52)により、復号できなかった符号化データに対してIP網8経由で取得した符号ビットを補完して再度の復号を試みて受信データを復元する。電波経由で消失したデータが多いときや、IP網8も消失通信路と考えられ、一部のデータが消失するときでも、受信装置5は、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
【0132】
特に、IP網8を経て送信サーバ6が再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網8経由の伝送効率を向上させることができる。また、放送による誤り訂正符号とIP網8経由の伝送で利用する誤り訂正符号を同一の規格された符号とすることで、受信装置5では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。
【0133】
〈実施例〉
以下、伝送システム1を高度広帯域衛星デジタル放送用に構成した、より具体的な一実施例を説明する。
【0134】
図9は、本発明による一実施例の送信サーバ6、送信装置2及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。尚、同様な構成要素には、同一の参照番号を付して説明する。
【0135】
図9に示す一実施例の伝送システム1は、ARIB STD-B44に記載される高度広帯域衛星デジタル放送を例にした実施例であり、本発明による一実施形態の送信サーバ6、送信装置2及び受信装置5を備える。ここでは、1台の送信サーバ6とし、負荷分散装置7の設置は省略しているが、上述したように、複数台の送信サーバ6とし、負荷分散装置7を経由してIP網8と接続する形態としてもよい。
【0136】
また、
図9に例示する伝送システム1では、送信装置2と送信サーバ6とを別体としてローカルエリアネットワークで接続する例を説明するが、送信装置2が送信サーバ6を備える形態とし、ローカルエリアネットワークで接続する代わりに、単純な信号ケーブルで接続する構成としてもよい。
【0137】
図9に例示する送信装置2は、上述した
図2と同様に構成され、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティ(LDPCパリティ及びBCHパリティ)を付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む高度広帯域衛星デジタル放送の放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する。高度広帯域衛星デジタル放送は、符号化データの1フレーム分のビット数が44880ビットであり、誤り訂正符号化処理として、LDPC符号を内符号として利用し、BCH符号を外符号として利用する。また、送信装置2は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を付与して、送信サーバ6に送信する。
【0138】
図9に例示する受信装置5は、上述した
図7と同様に構成され、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする。
【0139】
また、受信装置5は、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には対応する符号化データの再送を要求するIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、この再送要求パケットに通信品質情報を含めて、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する機能を有する。さらに、受信装置5は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6から再送要求に応じて再送された符号化データ(送信サーバ6側で通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して再構成される。)を格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に応じて再送された符号化データを抽出し復号処理に用いるよう符号化率に応じた補完を行い、所定時間内に当該復号処理により復号できるまで、対応する符号化データの再送の要求を繰り返し、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割されているときは、分割されている復号後の情報ビットを送信サーバ6との間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成する機能を有する。尚、受信装置5は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
【0140】
送信サーバ6は、上述した
図2と同様に構成され、送信装置2で生成された符号化データを順次入力し、誤り訂正符号フレームの同期信号(フレーム番号又は時刻情報)により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能、受信装置5からIP網8を経て受信した再送要求パケットに応じて再送要求に係る当該符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能を有する。
【0141】
従って、本実施例において、送信装置2はデジタル放送に係る送信データに高度広帯域衛星デジタル放送の誤り訂正符号化処理を施した上で変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を経て送信する。受信装置5はまず受信アンテナ5aから受信した高度広帯域衛星デジタル放送の変調波信号を復調し、誤り訂正復号処理で受信データを復元するよう試みる。受信装置5は、伝送環境がよく誤りなく受信できた場合や、白色雑音等の影響が誤り訂正符号により復号できる範囲であった場合、そのまま符号化データから受信データを復元して再生可能にする。受信装置5は、降雨減衰が起きるなど伝送環境が悪く、誤り訂正符号では復号できないほど符号化データが劣化した場合、IP網8を通じて該当する符号化データについて送信装置2と連携動作する送信サーバ6に対し再送要求を行う。
【0142】
受信装置5からIP網8を通じて送信サーバ6に再送要求があった場合、送信サーバ6は誤り訂正符号化処理後の符号化データの符号化率を通信品質情報に応じて可変制御し、IP網8経由で受信装置5に再送する。受信装置5は、IP網8から得られた符号化データを補完した符号化データを生成して誤り訂正復号処理を実行し、受信データを復元して再生可能にする。
【0143】
(実施例:高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置における受信制御フロー)
図10は、
図9に示す一実施例の高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。尚、
図8と同様なステップ番号には同一の番号を付している。
【0144】
まず、受信装置5は、復調部51により、高度広帯域衛星デジタル放送の放送伝送路経由で送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS1)。尚、切替部55は、上述したように、誤り訂正復号部52によって受信経路が制御される。
【0145】
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を実行するため、まず、尤度テーブルから符号化データの各ビットの事前LLRを算出し、誤り訂正符号フレームを再構成する(ステップS2A)。高度広帯域衛星デジタル放送は、符号化データの1フレーム分のビット数が44880ビットであり、誤り訂正符号化処理として、LDPC符号を内符号として利用し、BCH符号を外符号として利用するため、尤度テーブルを用いてビットが“0”である確からしさ、及びビットが“1”である確からしさを示す事前対数尤度比を算出する。
【0146】
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、対数尤度比によるsum-productアルゴリズムを利用したLDPC復号を実施後(ステップS2B)、電力逆拡散処理を経て、BCH符号の復号処理を実施する(ステップS2C)。ARIB STD-B44では外符号のBCH符号の復号処理の際にビット誤りのエラーを訂正しきれず、エラーフリーにならなかった場合、データをヌルパケットに置き換える、エラーありのフラグを付けるなどの処理を規定している。
【0147】
そこで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定するため、BCH符号の復号処理でビット誤りのエラーが訂正しきれなかった、もしくは復号でエラーは訂正できたが所定のBCHエラー数となったか否かを判定する(ステップS3’)。即ち、本実施例では、LDPC符号の訂正能力が不確定であること、またBCH符号の訂正能力が確定的であることに着目し、LDPC符号と連接するBCH符号のエラーフリーの有無を利用して、Hybrid ARQにおける効率的な再送要求を実現するものとしている。
【0148】
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定した結果、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを再生可能に生成し(ステップS3’:No)、現在の受信経路がIP網8経由でないので(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。
【0149】
一方、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、誤り訂正符号フレームを構成する符号化データを復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を生成し、再送要求パケット生成部53に出力して当該符号化データの再送要求を示す再送要求パケットを生成するよう指示する(ステップS3’:Yes)。即ち、誤り訂正復号部52は、伝送条件の悪化などの理由で、符号化データから受信データを復元できなかった場合、ARQにより送信サーバ6に向けて再送要求を行うよう再送要求パケット生成部53に指示する。また、復号可否判定部521は、切替部55を制御して、IP網8経由で符号化データを誤り訂正復号部52に入力する受信経路に切り替えを行う。
【0150】
復号可否判定部521からの指示に応じて、再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定した符号化データについて、その再送を要求する旨を示す再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する(ステップS4)。ここで、通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれている。
【0151】
そこで、送信サーバ6は、受信装置5から再送要求パケットを受信した場合、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出し、通信品質情報を基に、予め定められた符号化率変更基準に従って、符号化率を変更するか否か、変更する場合にはどの符号化率に変更するかを決定する。上述したように、符号化率変更基準は、送信側の誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して、符号化率を変更するように定めている。
【0152】
そして、送信サーバ6は、その再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレームの誤り訂正符号フレームを当該再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データと同一の符号化率で形成してインターリーブフレームを構築し、当該インターリーブフレームをmフレームの誤り訂正符号フレームに対して直交する方向にインターリーブ処理を施してIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信する。また、送信サーバ6は、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを送信する。このため、受信装置5は、IPパケット受信部54及び誤り訂正復号部52により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定することができる。送信サーバ6による符号化率変更の一例(代表して説明する、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)については、
図11を参照して後述する。また、送信サーバ6によるIPパケット形式の再送要求パケットの生成法の一例(代表して説明する、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)については、
図12を参照して後述する。
【0153】
従って、受信装置5は、送信サーバ6に向けて再送要求パケットの送信後、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された復号対象の符号化データを含むmフレーム分の誤り訂正符号フレームの符号化データパケット(IPパケット列)を受信して、デインターリーブ部541により、IPパケットに付与される識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成し、誤り訂正復号部52に出力する(ステップS5)。
【0154】
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52における符号化データ補完部522により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定し(ステップS6)、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合(ステップS6:Yes)、
図4(d)又は
図5(e)に示す符号化率が変更された誤り訂正符号フレームを復元するために、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に追加する(ステップS7)。
【0155】
一方、符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と同じである場合(ステップS6:No)、パディングビットを追加する必要はない。
【0156】
続いて、符号化データ補完部522は、IP網8経由で取得した符号化データを、当該誤り訂正符号フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する(ステップS8’)。IP網8は消失通信路を想定して、誤り訂正復号部52は、IP網8経由で受信できた符号化データについては正しいビットの値を確定し、IP網8の途中の通信路でパケットロス等により消失したパケットについては正しいビットの値が不明とする。より具体的には、誤り訂正復号部52は、ブロック符号の誤り訂正復号器として構成され対数尤度比を用いた復号を実施するため、符号化データ補完部522により、IP網8経由で取得した符号化データについて、ビットの値が0である場合の対数尤度比を+∞(“0”である確からしさとして最大値)、ビットの値が1である場合の対数尤度比を-∞(“1”である確からしさとして最大値)、仮にパケットロスが生じて非達ビットが生じているときは、対数尤度比を0に置き換えることにより補完する。
【0157】
そして、誤り訂正復号部52は、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返し(ステップS2乃至S8’)、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替えるよう切替部55の切替制御を行い(ステップS10)、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。ここで、誤り訂正復号部52は、BCH符号の復号処理のビット誤りのエラーがなくなるまで繰り返し再送要求を行うことで、受信データを完全に復元する構成とすることもできるが、所定時間内として制限を設けることで無限ループ処理を回避するのが好適である。
【0158】
尚、誤り訂正復号部52は、再送要求に係る符号化データがより低い符号化率に変更され情報ビットが分割されているときは、分割されている個々の情報ビットの符号化データの双方について、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで放送伝送路で伝送した符号化データの再送の要求を繰り返す、そして、誤り訂正復号部52は、分割されている個々の情報ビットの符号化データの双方について復号できたときは、データ結合部523の機能により、その分割されている復号後の情報ビットを送信サーバ6との間で予め定めた分割法に従い再結合して受信データを生成する。
【0159】
ところで、再送要求パケットは、IPパケット形式で一般的に用いられる非達通知パケットを利用でき、符号化データパケットは、その非達通知パケットの応答として再送を行うものとして構成される。このため、誤り訂正復号部52では、復調部51から得られる符号化データに対して再送により得られた符号化データを置き換えて、再度、復号を実施することができ、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
【0160】
(一実施例の符号化率変更時の符号化データの生成法:より低い符号化率に変更時)
図4及び
図5を参照して説明したように、送信サーバ6は、再送要求に係る符号化データについて、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して再構成する。
【0161】
即ち、送信サーバ6が生成する再送要求に係る符号化データについて、より高い符号化率に変更するときは情報ビットを非分割、より低い符号化率に変更するときは情報ビットを分割する違いのみであることから、ここでは、代表して再送要求に係る符号化データについてより低い符号化率に変更するときの例として
図11を参照し、送信サーバ6における再送要求処理部63により、ARIB STD-B44に準拠するLDPC符号化率の種類数の範囲内で、本例では上記(9)の符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、符号化率変更時の符号化データの生成する例を説明する。
【0162】
図11(a)乃至
図11(e)に示す例は、送信サーバ6は、ARIB STD-B44に準拠するLDPC符号化率の種類数の範囲内で最高値のLDPC符号化率(109/120(≒9/10)である符号化データを受信して、保存部61に保持し、受信装置5から電波受信状況が悪化した場合にIP網8経由で再送要求された符号化データについて、その符号化率を61/120(≒1/2)に変更して再送する例である。
【0163】
図11(a)に示すように、ここでは、放送伝送路で伝送した符号長N=44880ビットのLDPC符号における符号化データの符号化率をF
b=109/120(≒9/10)とする。尚、ARIB STD-B44では、1誤り訂正符号フレームは、LDPC符号化率によらず一定の符号長44880ビットであり、集合分割法に基づくスロット単位で構成されるため、LDPC符号の符号化対象となる情報ビットは、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“BCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”が、電力拡散されたものとなっており、LDPC符号のパリティが付加されて1誤り訂正符号フレームが構成される。そして、送信サーバ6における保存部61には、
図11(a)に示す1誤り訂正符号フレーム単位の符号化データが、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を付して時系列に管理されて所定時間分を更新しながら保存される。LDPC符号化率109/120(≒9/10)におけるLDPC符号パリティは、44880×(1-109/120)=4114ビットで構成される。
【0164】
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報に含まれる遅延とパケットロス率の各情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
【0165】
上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率109/120(≒9/10)のまま変更なしと判断し、
図11(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
【0166】
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のとき、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率F
b=109/120(≒9/10)から、LDPC符号化率F
i=61/120(≒1/2)に変更すると判断し(F
b>F
i)、まずは、
図11(a)に示す再送要求に係る符号長44880ビットの符号化データのうちN×F
b=40766ビットのLDPC符号の符号化対象となる情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)のみを、保存部61から読み出させる(
図11(b)参照)。
【0167】
続いて、誤り訂正符号化部643は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出した40766ビットの情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)を送受信間で予め定めた分割法で2分割する((N×F
b)/2 = 20383ビット)。ここでは、情報ビット位置の前半部、後半部で2等分する例とするが(
図11(c)参照)、奇数ビットと偶数ビットで2分割とするなど、他の分割法であってもよい。
【0168】
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、2分割したそれぞれの情報ビットの前半部、後半部に対して、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×F
i-((N×F
b)/2)=2431ビット分をパディングビットとして送受間で既知とする挿入位置に付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率F
i=109/120(≒9/10)となるLDPC符号化処理を施して、N×(1-F
i)=4114ビットのパリティを生成する(
図11(d)参照)。尚、本例では、情報ビットの後段にパディングビットを付加するとして図示しているが、情報ビットの前段にパディングビットを付加してもよく、即ち、パディングビットの挿入位置は、変更後の符号化率F
iの値によって送受間で既知とするように予め定めておけばよい。
【0169】
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、20383ビットの情報ビットに22066ビットのパリティを付加した再送用の符号化データ(42449ビット)を再構成し、IPパケット生成部62に出力する(
図11(e)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長42449ビットは、元の符号長44880ビットよりも短くなり、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号化長に対して過多とならず、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更することができ、符号化率を変更せずに再送する場合よりも訂正能力が高くなる。
【0170】
このようにして、本実施例の送信サーバ6は、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データのLDPC符号化率を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する。
【0171】
(一実施例の送信サーバによるIPパケット形式の符号化データパケットの生成法)
符号化データパケットは1以上のIPパケットを用いて構成され、ここでは、IPパケットのIPヘッダを除いたパケット長を1000バイトとして固定長とする例を説明する。ただし、実際には想定されるIP網8のMTU(Maximum Transmission Unit)を超えない範囲で任意にパケット長を決めた可変長とすることができる。
【0172】
上述したように、送信サーバ6が生成する再送要求に係る符号化データについて、より高い符号化率に変更するときは情報ビットを非分割、より低い符号化率に変更するときは情報ビットを分割する違いのみであることから、ここでは、代表して再送要求に係る符号化データについてより低い符号化率に変更するときの例として
図12を参照し、符号化データについてn×mのインターリーブフレームを構築してから、符号化データパケット(IPパケット列)を生成し、受信装置5に向けて送信する一例を説明する。
【0173】
図12(a)乃至
図12(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6におけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。
【0174】
まず、IPパケット生成部62は、符号化率適応変更部64から、それぞれ同一の符号化率Fiにより符号長nビットで構成される、再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームを入力し、n×mインターリーブフレームを構成する。尚、mは、固定値であるが外部から可変設定することができ、送受間で共有する値となっている。また、符号化率Fiの符号長nビットが放送伝送路で用いられた符号化率Fbの符号長Nビットから変更されていないときn=Nであり、符号化率Fbの符号長Nビットから変更されているときn<Nである。
【0175】
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正符号フレームを含むmフレームの誤り訂正符号フレーム(LDPCフレーム)を縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(
図12(a)参照)。尚、
図12(a)において、IPパケット生成部62は、符号化率適応変更部64から得られる符号化データがより低い符号化率に変更されたLDPCフレームである時は、情報ビットが2分割(本例では、前半部、後半部)されているので、LDPCフレーム♯1(情報ビット前半部)、LDPCフレーム♯2(情報ビット後半部)、LDPCフレーム♯3(情報ビット前半部)、…、LDPCフレーム♯m(情報ビット後半部)のように、情報ビットの前半部と後半部を一組に、縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶することになる。
【0176】
以降、
図6を参照して上述したように、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、mフレームの誤り訂正符号フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長としてmビットのIPペイロードをnパケット分、生成し(
図12(b)参照)、生成したnパケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、nパケット分のIPパケットを生成する(
図12(c)参照)。そして、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、生成したnパケット分のIPパケットを、シーケンス番号に従いIP網8への送出順番を所定規則に基づいてインターリーブして(例えばシーケンス番号の昇順で送出してもよいし、送受間で定めた別のシーケンス番号の送出順序でもよい。)、符号化データパケットとして受信装置5に向けて送信する。
【0177】
このようにインターリーブ処理を施した符号化データのIPパケット列を符号化データパケットとして送信サーバ6から受信装置5に向けて送信することにより、IP網8におけるバースト的なパケットロスに対する耐性が強くなる(即ち、パケット消失訂正能力が向上する)。
【0178】
(応用例:LDPC符号の符号化率の変更、且つBCH符号の訂正能力の変更)
符号化率適応変更部64における誤り訂正符号化部643は、再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更して再送するときに、LDPC符号の符号化率を変更するだけでなく、BCH符号の訂正能力も12ビットから23ビットに強化するよう変更して、符号化データを再構成してもよい。
【0179】
図13(a)乃至
図13(f)は、それぞれ本発明による応用例の送信サーバ6における符号化率適応変更部64による符号化率変更時(再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更時)の符号化データの生成法を示す図である。尚、
図13は、
図11に示す例と対比可能に、送信サーバ6における再送要求処理部63により、ARIB STD-B44に準拠するLDPC符号化率の種類数の範囲内で最高値のLDPC符号化率(109/120(≒9/10)である符号化データを受信して、保存部61に保持し、受信装置5から電波受信状況が悪化した場合にIP網8経由で再送要求された符号化データについて、その符号化率を61/120(≒1/2)に変更して符号化データを生成する例を示している。
【0180】
まず、
図13(a)は、
図11(a)と同様に、放送伝送路で伝送した符号長N=44880ビットのLDPC符号における符号化データの符号化率をF
b=109/120(≒9/10)として示している。上述したように、ARIB STD-B44では、1誤り訂正符号フレームは、LDPC符号化率によらず一定の符号長44880ビットであり、集合分割法に基づくスロット単位で構成されるため、LDPC符号の符号化対象となる情報ビットは、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“BCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”が、電力拡散されたものとなっており、LDPC符号のパリティが付加されて1誤り訂正符号フレームが構成される。そして、送信サーバ6における保存部61には、
図13(a)に示す1誤り訂正符号フレーム単位の符号化データが、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を付して時系列に管理されて所定時間分を更新しながら保存される。LDPC符号化率109/120(≒9/10)におけるLDPC符号パリティは、44880×(1-109/120)=4114ビットで構成される。
【0181】
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、上述した
図11を参照して説明した実施例と同様に、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報に含まれる遅延とパケットロス率の各情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
【0182】
上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率109/120(≒9/10)のまま変更なしと判断し、
図13(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
【0183】
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のとき、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率F
b=109/120(≒9/10)から、LDPC符号化率F
i=61/120(≒1/2)に変更すると判断し(F
b>F
i)、まずは、
図13(a)に示す再送要求に係る符号長44880ビットの符号化データのうちN×F
b=40766ビットのLDPC符号の符号化対象となる情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)のみを、保存部61から読み出させる(
図13(b)参照)。
【0184】
続いて、本応用例では、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出した40766ビットの情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)について、一旦、電力逆拡散処理を施して、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“12ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列に復元し、その“スロットヘッダ”を削除して、その削除したビット領域分をBCH符号パリティに割り当てる(
図13(c)参照)。従って、全体の情報ビット長を変えることなく、“主信号(伝送対象のデータ)”、“23ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列になる。これにより、ARIB STD-B44に記載される12ビット訂正用のBCH符号から、LDPC符号化率の変更後の誤り訂正符号フレームのフレーム長を維持したまま、23ビット訂正用のBCH符号へと訂正能力を強化する構成とすることができる(23ビットの訂正能力を持つBCH符号については、例えば「鈴木陽一,橋本明記,松崎敬文,田中祥次,木村武史,土田健一,“LDPC符号とBCH符号の連接符号を適用する集合分割8PSK符号化変調の性能改善,”電子情報通信学会論文誌B, V0l.97, no.8, PP.648-659, 2014月8月1日」参照)。
【0185】
続いて、誤り訂正符号化部643は、
図13(c)に示す“信号(伝送対象のデータ)”、“23ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列の情報ビットに対して再度の電力拡散処理を施した後、上述した
図11を参照して説明した実施例と同様に、情報ビットを送受信間で予め定めた分割法で2分割する((N×F
b)/2 = 20383ビット)。ここでは、情報ビット位置の前半部、後半部で2等分する例とするが(
図13(d)参照)、奇数ビットと偶数ビットで2分割とするなど、他の分割法であってもよい。
【0186】
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、2分割したそれぞれの情報ビットの前半部、後半部に対して、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×F
i-(N×F
b)=2431ビット分をパディングビットとして付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率F
i=61/120(≒1/2)となるLDPC符号化処理を施して、N×(1-F
i)=22066ビットのパリティを生成する(
図13(e)参照)。尚、本例では、情報ビットの後段にパディングビットを付加するとして図示しているが、情報ビットの前段にパディングビットを付加してもよく、即ち、パディングビットの挿入位置は、変更後の符号化率F
iの値によって送受間で既知とするように予め定めておけばよい。
【0187】
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、20383ビットの情報ビットに22066ビットのパリティを付加した再送用の符号化データ(42449ビット)を再構成し、IPパケット生成部62に出力する(
図13(f)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長42449ビットは、元の符号長44880ビットよりも短くなり、放送規格で規格された誤り訂正符号の符号化長に対して過多とならず、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更することができ、符号化率を変更せずに再送する場合よりも訂正能力が高くなる。
【0188】
また、BCH符号の訂正能力を向上させることで、IP網8でのパケットロス耐性を向上させることができる。このBCH符号の変更についてはLDPC符号化率の変更時は必ずBCH符号の訂正能力も変更するとして送受間で予め定めておくか、或いは、遅延とパケットロス率のいずれか一方又は双方に応じてBCH符号の訂正能力を切り替えるように、随意定めたBCH符号の訂正能力変更の基準を上述した符号化率変更基準に加えて、符号化率変更の通知と同時に、再送する符号化データの送信前に、受信装置5へ事前通知するようにしてもよい。
【0189】
このようにして、本応用例の送信サーバ6は、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データのLDPC符号化率とBCH符号の訂正能力を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する構成とすることもできる。
【0190】
以上のように、本実施形態の伝送システム1によれば、放送受信だけでは防げないデータの損失について、IP網8を経て受信装置5側から送信サーバ6側へ再送要求を実施し、送信サーバ6側からデータ再送を可能とすることで、受信装置5側でデータを補完することができる。特に、IP網8を経て送信サーバ6が再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網経由の伝送効率を向上させることができる。また、放送受信による誤り訂正符号とIP網経由の伝送で利用する誤り訂正符号の双方を放送規格で規格された誤り訂正符号の符号形式と同一にすることで、受信装置5では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。
【0191】
(変形例)
図14は、本発明による変形例の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。
図14において、
図7に示すものと同様な構成要素には、同一の参照番号を付している。
図14に示す変形例の受信装置5は、
図7に示すものと比較して、受信品質計測部57を更に備え、切替部55が、誤り訂正符号化部52からの第1受信経路切替信号と、受信品質計測部57からの第2受信経路切替信号によって、受信経路が切り替えられるように制御される点で相違しており、その他の構成は同様である。
【0192】
切替部55は、上述した実施形態と同様に、主として放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように作動する。ただし、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55は、誤り訂正復号部52による第1受信経路切替信号により制御されて、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、IP網8経由で再送されIPパケット受信部54から得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力する。
【0193】
また、本変形例における切替部55は、一旦、受信経路がIP網8経由に切替制御されると、受信品質計測部57から第2受信経路切替信号により制御されない限り、IP網8経由の受信経路を維持して、符号化データについての再送要求後も継続して、IP網8経由で再送要求した符号化データに続く次の符号化データを受信するように作動する。
【0194】
受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質(例えば、MER(Modulation Error Ratio))を計測し、受信品質が所定値以上であるか否かを判定して、切替部55及び誤り訂正復号部52を制御する。
【0195】
より具体的には、受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに、第2受信経路切替信号により、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御する。
【0196】
また、受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値未満であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに、切替部55の受信経路をIP網8経由としたままとするべく切替部55の切替制御は行わずに、継続指示信号により、誤り訂正復号部52に対し符号化データについての再送要求後も継続して、IP網8経由で次の符号化データを再送要求して取得するよう指示する。
【0197】
(変形例の受信装置における受信制御フロー)
図15は、本発明による変形例の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。尚、
図8と同様なステップ番号には同一の番号を付している。
【0198】
図15に示すステップS1乃至S8までは、
図8に示すステップS1乃至S8までと同様であり、更なる説明は省略する。
【0199】
即ち、本変形例の受信装置5においても、放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に入力し、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55を切替制御してIP網8経由で符号化データを再送要求して取得し、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返す(ステップS1乃至S8)。
【0200】
そして、本変形例の受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由でなく放送受信する受信経路であれば(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。
【0201】
一方、本変形例の受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、受信品質計測部57により、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS10A)。
【0202】
受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに(ステップS10A:Yes)、第2受信経路切替信号により、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御し、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する(ステップS10B)。
【0203】
ただし、受信品質計測部57は、受信品質が所定値未満であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに(ステップS10A:No)、切替部55の受信経路をIP網8経由としたままとするべく切替部55の切替制御は行わずに、継続指示信号により、誤り訂正復号部52に対し符号化データについての再送要求後も継続してIP網8経由で符号化データを再送要求して取得するよう指示し(ステップS10C)、ステップS4に移行して、以後、同様に動作する。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、ステップS9に移行する。
【0204】
従って、
図14及び
図15に示す本変形例の受信装置5は、一旦、受信経路をIP網8経由に切り替えると、受信した変調波信号についての受信品質が所定値未満であれば、今後誤り訂正復号処理によりビット誤りを訂正しきれないほど受信状況が悪化することが継続すると予測して、受信品質が所定値以上となるまで、誤り訂正復号部52による符号対象の符号化データについてIP網8経由で符号化データを再送要求して取得する。
【0205】
従って、本変形例の受信装置5を備える伝送システム1においても、上述した実施形態の利点を全て包含し、これに加えて、受信した変調波信号についての受信品質を考慮した動作となるため、安定したデジタルデータの受信が可能となる。
【0206】
〔再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更し再送する場合の動作概要〕
より理解を高めるために、
図16を参照して、上述した
図1乃至
図15に示す一実施例及び一変形例を含む一実施形態の伝送システム1において、再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更し再送する場合の動作概要を説明する。
【0207】
図16は、本発明による一実施例の送信サーバ6により再送要求に係る符号化データをより低い符号化率に変更した符号化データパケットを受信装置5に送信するときの動作概要を例示説明する図である。
【0208】
例えば、再送要求に係る符号化データとして、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率(LDPC符号化率)が、ARIB STD-B44に準拠する符号化率9/10 (109/120)であるとする(
図16(a)参照)。
【0209】
まず、送信サーバ6は、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率よりも高くするか低くするかを区別して適応的に符号化率を変更して符号化データを再構成する。ここでは、再送要求に係る符号化データの符号化率9/10をより低い符号化率1/2に変更する例を説明する。
【0210】
送信サーバ6は、再送要求に係る符号化データの符号化率9/10をより低い符号化率1/2に変更する際に、再送要求に係る符号化データの情報ビットを、送受間(送信サーバ6及び受信装置5)間で予め定めた分割法に従い2分割(ここでは、前半部と後半部で2等分に分割)する(
図16(b)参照)。
【0211】
続いて、送信サーバ6は、パディングビットを用いて符号化率1/2に変更する再符号化を行い、符号化率1/2のパリティビットを付与した符号化データを一旦生成する(
図16(c)参照)。
【0212】
そして、送信サーバ6は、パリティビットを付与した符号化データからパディングビットを削除した符号化データの誤り訂正符号フレーム(LDPCフレーム)を生成した後、インターリーブフレームを組み、インターリーブした符号化データパケット(IPパケット列)を形成し、IP網8経由で受信装置5に送信する(
図16(d)参照)。
【0213】
受信装置5は、その符号化データパケットを受信後、送信サーバ6側の逆処理としてデインターリーブを行い、パディングビットを追加後、符号化率1/2で符号化データを復号することにより、パケット消失訂正を行う(
図16(e)参照)。
【0214】
そして、受信装置5は、誤り訂正符号フレーム♯1の復号した情報ビットの前半部、誤り訂正符号フレーム♯2の復号した情報ビットの後半部を連結することにより、再送要求した符号化データに係る情報ビットを復元した受信データを生成することができる(
図16(f)参照)。
【0215】
従って、本発明に係る伝送システム1によれば、放送受信だけでは防げないデータの損失について、IP網8を経て受信装置5から送信サーバ6へ再送要求を実施し、送信サーバ6からデータ再送を可能とすることで、受信装置5側でデータを補完することができる。特に、IP網8を経て送信サーバ6が再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網8経由の伝送効率を向上させることや、パケットロスに対する耐性を強化することができる。また、放送受信による誤り訂正符号とIP網8経由の伝送で利用する誤り訂正符号の双方を放送規格で規格された誤り訂正符号の符号形式と同一にすることで、受信装置5側では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。
【0216】
上述した実施例に関して、送信サーバ6として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。また、受信装置5として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0217】
上述した一実施形態の実施例、応用例、変形例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)から直接的に符号化データを入力する例を説明したが、中継放送等では、送信装置2(又は送信装置3)から一旦、受信機により変調波を受信して復調し、この復調して得られる符号化データを入力する形態としてもよい。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明によれば、デジタル放送で利用する誤り訂正符号と再送要求とを効率的に組み合わせることができるので、デジタル放送に係るデータ補償を行う用途に有用である。
【符号の説明】
【0219】
1 伝送システム
2 衛星放送伝送路用の送信装置
2a 衛星放送伝送路用の送信アンテナ
3 地上放送伝送路用の送信装置
3a 地上放送伝送路用の送信アンテナ
4 放送衛星
5 受信装置
5a 衛星放送伝送路用の受信アンテナ
5b 地上放送伝送路用の受信アンテナ
6 送信サーバ
7 負荷分散装置
8 IP網
21 誤り訂正符号化部
22 変調部
51 復調部
52 誤り訂正復号部
53 再送要求パケット生成部
54 IPパケット受信部
55 切替部
56 通信品質計測部
57 受信品質計測部
61 保存部
62 IPパケット生成部
63 再送要求処理部
64 符号化率適応変更部
521 復号可否判定部
522 符号化データ補完部
523 データ結合部
541 デインターリーブ部
621 インターリーブ部
641,642 切替部
643 誤り訂正符号化部