(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】芳香族アミド重合体及びその製造方法、並びに当該芳香族アミド重合体を含有した樹脂組成物、プリプレグ及び成形物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/62 20060101AFI20241113BHJP
C08G 59/22 20060101ALI20241113BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241113BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C08G59/62
C08G59/22
C08L63/00 Z
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2020161065
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】梶 正史
(72)【発明者】
【氏名】大神 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 智美
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-232220(JP,A)
【文献】特開平02-275872(JP,A)
【文献】特開2012-197366(JP,A)
【文献】米国特許第05364912(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/62
C08G 59/22
C08L 63/00
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、
【化1】
(式中、Aはアミド結合、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、nは1~3の数を示す。)で表されるユニットの割合が10~100モル%であり、かつ重量平均分子量が5,000以上であ
り、結晶性を有し、昇温速度10℃/分で測定した示差走査熱量分析における結晶の融解に伴う吸熱曲線のピーク温度が100℃~350℃の範囲にあり、一般式(1)で表されるユニットの割合が10~50.0モル%の範囲である熱可塑性の芳香族アミド重合体。
【請求項2】
一般式(1)において、ベンゼン環が1,4-フェニレン構造を有し、R
1、R
2がいずれも水素原子であり、nが1であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族アミド重合体。
【請求項3】
下記一般式(6)で表わされるユニットを含有する請求項1または2に記載の芳香族アミド重合体。
【化2】
〔式中、nは0~3の数を表し、R
3
、R
4
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、Xは、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH
3
)-、-CH
2
-、-CH(CH
3
)-、-C(CH
3
)
2
-、-φ-、-CH
2
-φ-CH
2
-、-CH(CH
3
)-φ-CH(CH
3
)-、-C(CH
3
)
2
-φ-C(CH
3
)
2
-、-CH
2
-φ-φ-CH
2
-、-CH(CH
3
)-φ-φ-CH(CH
3
)-、-C(CH
3
)
2
-φ-φ-C(CH
3
)
2
-又は9,9-フルオレニル基を示す。ここでφはフェニレン基を示す。〕
【請求項4】
芳香族アミド重合体が結晶性を有し、昇温速度10℃/分で測定した示差走査熱量分析における結晶の融解に伴う吸熱ピーク曲線の積分値が5ジュール/g以上である請求項1~3のいずれかに記載の芳香族アミド重合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族アミド重合体を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族アミド重合体を製造する方法であって、
下記一般式(2)、
【化3】
(式中、Aはアミド結合、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、nは1~3の数を示す。)で表されるジグリシジル化合物と、下記一般式(3)、
【化4】
〔式中、mは0~3の数を示し、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、Xは、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH
3)-、-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-φ-、-CH
2-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-C(CH
3)
2-、-CH
2-φ-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-φ-C(CH
3)
2-又は9,9-フルオレニル基を示す。ここでφはフェニレン基を示す。〕で表されるビスフェノール化合物とを反応させることを特徴とする芳香族アミド重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族アミド重合体を製造する方法であって、
下記一般式(4)、
【化5】
〔式中、mは0~3の数を表し、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、Xは、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH
3)-、-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-φ-、-CH
2-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-C(CH
3)
2-、-CH
2-φ-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-φ-C(CH
3)
2-又は9,9-フルオレニル基を示す。ここでφはフェニレン基を示す。〕で表されるジグリシジル化合物と、下記一般式(5)、
【化6】
(式中、Aはアミド結合、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基、又はハロゲン原子を示し、nは1~3の数を表す。)で表されるビスフェノール化合物とを反応させることを特徴とする芳香族アミド重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族アミド重合体がシート状の繊維基材に含浸されてなるプリプレグ。
【請求項10】
請求項9のプリプレグを加熱成形して成る成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アミド骨格を含む新規な重合体、その製造方法、この重合体を使用した樹脂組成物及びプリプレグ、並びにそれらを成形して得られる成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、フィルム状又はシート状のエポキシ樹脂成形物を得る際に用いるエポキシ樹脂としては、フェノキシ樹脂に代表される高分子量エポキシ樹脂が必須成分として用いられている。フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFを主骨格としたものが広く使用されてきているが、耐熱性、低熱膨張性、高熱伝導性等に問題があった。例えば、特許文献1には、ビスフェノールA型の高分子エポキシ樹脂を使用した接着剤付き銅箔についての記載があるが、この方法で製造された多層プリント配線板は、従来技術で製造された多層プリント配線板に比較し、ガラス転移点が低いため耐熱性、低熱膨張性が劣るという欠点があった。また、例えば特許文献2には、熱接着性、耐熱変形性に優れた自己融着絶縁電線の提供のために、ビスフェノールAとビスフェノールS(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン)から製造されるフェノキシ樹脂が開示されている。しかし、これは分子量が同程度のフェノキシ樹脂と比べて、粘度が高く、樹脂単体としてのハンドリング性に問題があるとともに、耐熱性の点でも依然不十分であった。更には、フェノキシ樹脂はトルエンやメチルエチルケトン等の一般的溶剤にはほとんど溶解せず、取り扱い性に欠点があった。また、これまでに知られたフェノキシ樹脂は、殆どが結晶性を持たない不定形の固体であり、ガラス転移点以上で大きく物性が低下する問題があった。また、特許文献3にはアミド構造を有するエポキシ樹脂が開示され、三次元硬化物にできることが示されているが、フィルム性を有していない。
【0003】
耐熱性を改善したものとして、特許文献4には、アミド構造を有するエポキシ樹脂組成物をシート状にすることが開示されているが、三次元硬化された硬化物をあたえるものであり、二次加工性がなく賦形性に劣ることに加えて、成形物が結晶性を有するものではなく、熱伝導性、低熱膨張性等の物性改善効果が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-202418号公報
【文献】特開平2-45575号公報
【文献】特開平2-282375号公報
【文献】特開2010-195851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フィルム状又はシート状のエポキシ樹脂硬化物やガラス繊維、炭素繊維等の繊維強化複合材料用の樹脂組成物の調製に好適に使用され、成形後の二次加工性を有するとともに、耐熱性、高熱伝導性、及び低熱膨張性に優れた重合体、その製造方法、この重合体を使用した樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを成形して得られる成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)、
【化1】
(式中、Aはアミド結合、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、nは1~3の数を示す。)で表されるユニットの割合が10~100モル%であり、かつ重量平均分子量が5,000以上である熱可塑性の芳香族アミド重合体である。
【0007】
また、上記芳香族アミド重合体は、次のいずれか1以上を満足することが望ましい。
a) 一般式(1)において、ベンゼン環が1,4-フェニレン構造を有し、R1、R2がいずれも水素原子であり、nが1であること。
b) 結晶性を有し、昇温速度10℃/分で測定した示差走査熱量分析における結晶の融解に伴う吸熱曲線のピーク温度が100℃~350℃の範囲にあること。
c) 結晶性を有し、昇温速度10℃/分で測定した示差走査熱量分析における結晶の融解に伴う吸熱曲線ピークの積分値が5ジュール/g以上であること。
【0008】
また、本発明は、上記芳香族アミド重合体を含有した樹脂組成物であるか、または、繊維基材に含浸してなるプリプレグであり、これらを加熱成形して得られる成形物である。
【0009】
また、本発明の芳香族アミド重合体の製造方法は、次のいずれかの方法である。
i) 下記一般式(2)、
【化2】
(式中、Aはアミド結合、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、nは1~3の数を示す。)で表されるジグリシジル化合物と、下記一般式(3)、
【化3】
(式中、mは0~3の数を示し、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、Xは、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH
3)-、-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-φ-、-CH
2-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-C(CH
3)
2-、-CH
2-φ-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-φ-C(CH
3)
2-又は9,9-フルオレニル基を示す。ここでφはフェニレン基を示す。)で表されるビスフェノール化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【0010】
ii) 下記一般式(4)、
【化4】
(式中、m、R
3、R
4及びXは、一般式(3)と同じである。)で表されるジグリシジル化合物と、下記一般式(5)、
【化5】
(式中、A、R
1、R
2及びnは、一般式(2)と同じである。)で表されるビスフェノール化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合体は、熱可塑性を有しており、成形材料に適用した場合、二次加工性を有するともに、好適には100℃以上の融点を持つ結晶性を有しており、高耐熱性、高熱伝導性、及び低熱膨張性に優れた特徴が期待され、多層プリント配線板、炭素繊維等の繊維強化複合材料、接着剤、コーティング材料等のフィルム状又はシート状の成形物等として利用される分野に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の重合体は、上記一般式(1)で表されるユニットを含むものであり、その割合が10~100モル%のものであるが、好ましくは40~100モル%、より好ましくは60~100モル%の範囲である。これより少ないと本発明の効果である高耐熱性、低熱膨張性、高熱伝導性が発揮され難い。
【0014】
本発明の重合体に含有され得る一般式(1)で表されるユニット以外の他のユニットとしては、下記一般式(6)で表されるユニットが挙げられる。中でも、結晶化の起こり易さからは、直接結合、酸素原子、メチレン結合を有するユニットが好適に用いられる。
【化6】
〔式中、nは0~3の数を表し、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子を示し、Xは、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH
3)-、-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-φ-、-CH
2-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-C(CH
3)
2-、-CH
2-φ-φ-CH
2-、-CH(CH
3)-φ-φ-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-φ-φ-C(CH
3)
2-又は9,9-フルオレニル基を示す。ここでφはフェニレン基を示す。〕
【0015】
本発明の重合体の重量平均分子量は5,000以上である。当該分子量が5,000未満では、それを用いた樹脂組成物を銅箔、SUS箔、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ガラス板等の基材上に塗布、乾燥した際か、または、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維基材に含侵させて得られる複合材料とした際に、強度が出ないとか、寸法安定性に劣る等の問題が起こりやすい。また、分子量が200,000を超えると、溶剤で希釈溶解しても、一般に工業的に利用されている40重量%から70重量%の濃度では、溶液粘度が高くなり過ぎて、基材に塗布、または繊維基材に含侵させることが困難となる。従って、本発明の重合体の重量平均分子量は、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは、10,000~60,000である。
【0016】
本発明の重合体は、N-メチルピロリドンを溶媒として30℃で測定したときの還元粘度が、0.2~1.2dL/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.8dL/gの範囲である。これより低いとフィルム性が低下し、これより大きいと取り扱い性が低下する。
【0017】
本発明の重合体は、一般式(1)のユニットを必須とするものであって、必ずしも二次元の重合体である必要はなく、分岐構造を有するものであってもよい。分岐構造は、一般式(1)の水酸基とエポキシ基との反応、あるいは3官能以上のエポキシ樹脂、硬化剤を併用した場合に形成し得る。なお、分岐構造を有する重合体においても、熱可塑性を有する必要がある。熱可塑性であることにより、成形物としての耐衝撃強度が向上することに加えて、たとえばシート状に成形後、そのシートを別の形状の成形物とするというような二次加工が可能となる。
【0018】
本発明の重合体は、少なくとも一部分が結晶化しているものが好ましい。結晶化の程度は示差走査熱分析により把握することができる。具体的には、昇温速度10℃/分で測定した示差走査熱分析における結晶の融解に伴う吸熱曲線のピーク(吸熱ピーク)を測定して、その温度を融点とし、また、この吸熱ピーク曲線の積分値から融解熱を求める。ここで、好ましい融解熱は5ジュール/g(以下、「j/g」と表記する場合がある。)以上であり、好ましくは10j/g以上、より好ましくは30j/g以上である。これより低いと結晶性に基づく耐熱性、高熱伝導性、低熱膨張性等の特性が十分でない。また、好ましい融点範囲は、示差走査熱分析装置を用いて昇温速度10℃/分で測定した場合の吸熱ピーク温度が100℃から350℃の範囲にあるものである。これより低いと結晶性に基づく耐熱性、低熱膨張性等の特性が十分でなく、これより高いと取扱い性が低下する。
【0019】
本発明の重合体の結晶化度の調整は、一般的には融点以下の温度でアニーリングを行うことにより行うことができる。アニーリングの条件は、融点よりも10℃から100℃低い温度で5分から12時間の範囲の条件で行われることが好ましい。場合により、溶剤又は低分子量のエポキシ等を添加することにより、結晶化を行うこともできる。
【0020】
本発明の重合体の末端基としては、エポキシ基、水酸基、カルボン酸、アミノ基、ビニル基、メルカプト基及び芳香族基が例示されるが、好ましくはエポキシ基である。
【0021】
本発明の重合体の製法は、二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの直接反応によってもよいが、ジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物との付加重合反応による方法が一般的である。本発明の重合体はいずれの製法によるものであってもよいが、重合体の結晶性が低いと過冷却状態となって結晶化度が上がらず、逆に結晶性が強いと重合の進行とともに、低分子量体の状態で既に結晶が析出して重合体の分子量が上がらないという問題がある。従って、目的とする重合体の特性に応じて、望ましい重合方法および重合条件を選択する必要がある。以下にそれぞれの製造方法について示す。
【0022】
二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの直接反応の場合は、二価フェノール化合物として、上記一般式(5)で表されるビスフェノール化合物が用いられるが、一般式(5)のビスフェノール化合物が、使用する全二価フェノール化合物の10モル%以上であることが必要である。10モル%未満では、芳香族アミド骨格導入の効果が十分でなく、耐熱性、高熱伝導性、低熱膨張性に優れた成形物が得られ難い。
【0023】
ジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物との付加重合反応による方法の場合は、上記一般式(3)又は(5)で表される二価フェノール化合物と、上記一般式(2)又は(4)で表されるジグリシジルエーテル化合物とを反応させる方法がある。この場合、一般式(5)で表される二価フェノール化合物又は一般式(2)で表されるジグリシジルエーテル化合物の少なくとも1種は必須である。
【0024】
一般式(1)~(5)において、R1、R2、R3、R4は、独立に水素原子、炭素数1から8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はハロゲン原子より選ばれる置換基を示すが、好ましくは水素原子又はメチル基である。R1、R2、R3、R4がともにα位の炭素原子が2級炭素又は3級炭素原子の場合、水酸基の反応性が低下する問題があり好ましくない。また、一般式(1)~(5)において、ベンゼン環の連結位置としては、1,4-位、1,3-位、1,2-位が挙げられるが、1,4-位が特に好ましい。1,3-位、1,2-位のものは、1,4-位との比較では、得られた重合体の結晶性が低下する傾向にあるため、結晶性に起因する耐熱性、高熱伝導性、低熱膨張性等の物性が低下する傾向にある。
【0025】
また、一般式(3)又は(4)においては、X基は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-、-CH=CH-、-CH=C(CH3)-、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-φ-、-CH2-φ-CH2-、-CH(CH3)-φ-CH(CH3)-、-C(CH3)2-φ-C(CH3)2-、-CH2-φ-φ-CH2-、-CH(CH3)-φ-φ-CH(CH3)-、-C(CH3)2-φ-φ-C(CH3)2-又は9,9-フルオレニル基を示すが(φはフェニレン基を示す)、好ましくは、結晶化のために分子が配向しやすいものであり、立体障害が少なく、対称性のよい直接結合、酸素原子、-CO-、-COO-、-CH2-、-φ-である。
【0026】
ここで、好ましい一般式(3)で表される二価フェノール化合物を例示すると、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィドを挙げることができるが、より好ましくは4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンである。これらの二価フェノール化合物は、混合物として用いることができる。
【0027】
ジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物との付加重合反応による方法の場合、一般式(2)で表されるジグリシジルエーテル化合物を一般式(3)で表される二価フェノール化合物とを反応させる方法、又は、一般式(4)で表されるジグリシジルエーテル化合物を一般式(5)で表される二価フェノール化合物とを反応させる方法より合成させる方法がある。この反応は、アミン系、イミダゾール系、トリフェニルホスフィン、ホスフォニウム塩系等の触媒存在下に行うことができる。ジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物とのモル比は、通常、グリシジルエーテル化合物:二価フェノール化合物=3:1~1:3の範囲であり、好ましくは2:1~1:2、更に好ましくは1.1:1~1:1.1である。ジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物のモル比が1に近づくほど、得られる重合体の分子量は大きくなる。
【0028】
この反応は溶媒を用いずに行うことができるが、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの脂肪族アミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド等があげられる。好ましい有機溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。これらの有機溶媒は、2種以上を選択して混合溶媒として使用してもよい。
【0029】
この反応は、シリカ、アルミナ、炭素粉末、炭素繊維粉末、カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー等のフィラー類を混合した後に反応を行うことができる。さらには、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維基材にジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物に触媒を加えた混合物、またはそれらの予備反応物を含侵させた後に反応を行ってもよい。含侵の方法としては、上記混合物または予備反応物をシート状、またはブロック状にした後に行ってもよいし、粉末状にしたものを用いてもよい。さらには、溶剤に溶解または分散させたものを用いてもよい。
【0030】
この重合反応において、ジグリシジルエーテル化合物及び二価フェノール化合物は、それぞれ二種類以上の混合物として用いることができるが、一般式(1)で表されるユニットが得られた重合体中において、10モル%以上となるようジグリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物が選択される必要がある。10モル%未満では芳香族アミド骨格導入の効果が十分でなく、耐熱性、低熱膨張性、及び高熱伝導性のある成形物が得られないため好ましくない。
【0031】
このような本発明の芳香族アミド重合体は、後述する成分などを用いて樹脂組成物としたり、或いは、後述するようにシート状の繊維基材に含浸させてプレプリグとすることができる。
ここで、本発明の樹脂組成物やプリプレグにおいては、本発明の重合体として分子量が重量平均分子量で5,000以上のものを用いると、それのみでは成形時の樹脂流れが小さく、回路埋め込み性がやや不足する場合が多い。この場合は、回路埋め込み性を十分なものとするために、更に他の低分子量エポキシ樹脂を加えることができる。この場合の低分子量エポキシ樹脂の分子量は、重量平均分子量で3,000以下、好ましくは1,500以下、更に好ましくは800以下である。
【0032】
この場合の本発明の重合体と低分子量エポキシ樹脂との配合比率は、本発明の重合体100重量部に対して、低分子量エポキシ樹脂を10重量部から90重量部とすることが好ましく、更に好ましくは20重量部から60重量部である。低分子量エポキシ樹脂の配合がこれより少ないと成形時の樹脂の流れ性の改善の程度が小さく、一方で、これより多いと硬化物の耐熱性、耐湿性が低下する。
【0033】
低分子量エポキシ樹脂としては、硬化後の可撓性、耐熱性等の物性を落とさず回路埋め込み性を十分なものとするために、芳香族系で且つエポキシ当量が100g/eqから2,000g/eqのものが良い。エポキシ当量が2,000g/eqを超えると、十分な回路埋め込み性改善の効果を得られず、且つ、架橋密度が低くなり易く耐熱性のある硬化膜が得られ難い。また、エポキシ当量が100g/eq未満では硬化物の架橋密度が高くなり易く、熱可塑性が損なわれて成形物の二次加工性が低下する。このようなことから、低分子量エポキシ樹脂のエポキシ当量は好ましくは、130g/eq~1,500g/eq、より好ましくは150g/eq~1,000g/eqである。好ましい低分子量エポキシ樹脂としては、上記一般式(3)で表される2価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
また本発明の重合体の重量平均分子量は、5,000以上であるが、より十分なフィルム性を持たせるために、更に他の高分子量エポキシ樹脂を加えることができる。
【0035】
この場合の本発明の重合体と高分子量エポキシ樹脂との重量配合比率は、本発明の重合体と高分子量エポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、高分子量エポキシ樹脂を10重量部から90重量部の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは20重量部から60重量部の範囲である。これより少ないと可撓性、耐熱性、低熱膨張性及び高熱伝導性について、添加の効果が見込めない。
【0036】
高分子量エポキシ樹脂の好ましい分子量としては、重量平均分子量で5,000から100,000、より好ましくは10,000~60,000であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0037】
本発明の樹脂組成物やプリプレグは、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ基を含む化合物を含むことが有利である。かかる樹脂は本発明の重合体であることができる。本発明の樹脂組成物やプリプレグ中にエポキシ樹脂又はエポキシ基を含む化合物が含まれる場合、硬化剤を用いることが望ましい。
【0038】
硬化剤としては、一般的に知られる公知の硬化剤が全て使用できる。例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体や、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びその誘導体や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、ナフタレンジオール、ジヒドロキシビフェニル等の2価のフェノール化合物や、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ナフトール、ナフタレンジオール等フェノール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類やケトン類との縮合反応により得られるノボラック型フェノール樹脂や、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ナフトール、ナフタレンジオール等フェノール類とキシリレングリコール類との縮合反応等により得られるアラルキル型フェノール樹脂等のフェノール系化合物類や、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物類や、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合反応等により得られるポリアミドアミン等のアミン系化合物類や、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のヒドラジド類等のような、通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
本発明における樹脂組成物やプリプレグには、基材に塗布する際に適度の粘性を保つために溶剤を用いてもよい。粘度調整用の溶剤としては、80℃~200℃で溶剤を乾燥する時に残存しないものであることが好ましく、具体的には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの溶剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
この樹脂組成物やプリプレグには、耐熱性及び難燃性の付与、低熱膨張率化、高熱伝導率化等のために、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、マイカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭素粉末、炭素繊維粉末、カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー等を、また、接着力改善の為にエポキシシランカップリング剤や、ゴム成分等を、成形物の物性を落とさない程度に加えてもよい。
【0041】
この樹脂組成物やプリプレグには、必要に応じて硬化促進剤を用いてもよい。例えば、アミン系、イミダゾール系、トリフェニルホスフィン、ホスフォニウム塩系等の公知の種々の硬化促進剤が使用できるが、特にこれらに限定されるわけではない。硬化促進剤を使用する場合は、樹脂成分に対し0.01wt%~10wt%の範囲が好ましい。10wt%を超えると、貯蔵安定性が悪化する懸念があり好ましくない。
【0042】
この樹脂組成物は、トランスファー成形、圧縮成形、あるいは溶剤に溶解または分散させた樹脂溶液を金属箔上にキャストして成形するか、もしくは樹脂溶液をガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等のシート状の基材に含浸させてプリプレグとしたものをプレス成形させることにより樹脂成形物として得ることができるが、通常、基材上にキャスト成形または、プリプレグとしてプレス成形することが望ましい。特に、本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である場合は、例えば、先に示した溶剤で15Pa・s以下望ましくは10Pa・s以下の粘度に調整し、一定の硬化時間を持つように適量の硬化剤を加え、更に場合により硬化促進剤を加えてワニス化し、基材に塗布し100℃~160℃で溶剤を揮発させプリプレグとし、得られたプリプレグを加熱することにより成形物とすることができる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。本発明はこの具体例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
実施例中に示した物性の評価方法は、次の通りである。
【0044】
(1)加水分解性塩素:試料である後述のエポキシ樹脂A 0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N-KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加えたものを、0.002N-AgNO3水溶液で電位差滴定を行うことにより測定した。
(2)融点および融解熱:示差熱分析装置を用いて昇温速度10℃/分で得られた吸熱曲線のピーク温度を融点とし、吸熱ピークの積分値を融解熱とした値。
(3)GPC測定:日本ウォーターズ(株)製、515A型装置を使用してカラム;TSK-GEL2000×3本およびTSK-GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1ml/min、温度;38℃、検出器;RIの条件に従って測定した。
(4)ガラス転移点及び線膨張係数の測定:セイコーインスツルメント(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で測定した。
(5)熱伝導率:NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて非定常熱線法により測定した。
【0045】
参考例1
(4,4’-ジヒドロキシベンズアニリドの合成)
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン300gにエタノール900mLを加えて溶解させた。その後、ヒドロキシル塩酸アミン147.6g、酢酸ナトリウム172.2gを蒸留水210mLに溶解させた溶液を添加し、ついでのエタノール300mLを加えた。75℃で4時間加熱した後、室温に冷却し濾過した。濾液中に含まれるエタノールと水を蒸発し濃縮した。ついで、この溶液を蒸留水2500mLに滴下し、生成した白色結晶を濾過により回収した。これを乾燥して白色粉体284.0gを得た。これは、1H-NMR測定により、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンオキシムであることを確認した。得られた4,4-ジヒドロキシベンゾフェノンオキシム234.4gに、酢酸1200mL、トルエンスルホン酸一水和物18.64gを加えて、反応混合物を80℃に昇温し3時間反応させた後、1000mLの蒸留水を添加し、生成物を濾過にて回収した。蒸留水にて洗浄後、乾燥させて淡黄色結晶200.2gを得た(ビスフェノール化合物A)。融点は273℃であった。
【0046】
参考例2
4,4’-ジヒドロキシベンズアニリド(ビスフェノール化合物A)50gをエピクロルヒドリン550g、N-メチルピロリドン(NMP)500mLに溶解し、145gの12%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して75℃で1.5時間反応した。反応液から減圧下、水とエピクロルヒドリンを留去し、不溶物をろ別した後、ろ液を大量の水の中の攪拌しながらゆっくり滴下した。析出した固体をろ過、水洗した後、乾燥し、70.0gの白色粉末状のエポキシ樹脂を得た(エポキシ樹脂A)。融点は242℃であった。エポキシ当量は174g/eq、加水分解性塩素は670ppmであった。得られた樹脂のGPC測定より求められた各成分比は、一般式(2)の構造に於いてR1、R2が水素原子、nが1である化合物が93.6%、その二量体が6.4%であった。
【0047】
参考例3
m-アミノフェノール144gをNMP900mLに溶解させた後、イソフタロイルクロライド64gのテトラヒドロフラン溶液120mLを30分間で滴下した。その後、80℃で3時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、大量の水に滴下し析出物を濾過により回収した。蒸留水にて洗浄後、乾燥し、106.4gの灰白色の粉末状結晶を得た(ビスフェノール化合物B)。融点は281.6℃であった。生成物は、FD-MS、1H-NMR測定により、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,3-ベンゼンカルボキサミドであることを確認した。
【0048】
実施例1
4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルエーテル(エポキシ樹脂B;日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、エポキシ当量164g/eq.、融点82℃)72部、参考例1で合成した4,4’-ジヒドロキシベンズアニリド(ビスフェノール化合物A)50部を150℃で溶融混合させたものに、トリフェニルホスフィン0.8部を加えて混合させた後、素早く冷却してエポキシ樹脂組成物を得た。これを加圧成形機にて175℃で5分間プレス成形を行い、淡黄色の不透明な結晶性のシート状の成形物を得た。示差熱分析装置を用いて昇温速度10℃/分で測定した結果、成形物の融点は211℃、融解熱は12J/gであった。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、180℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。テトラヒドロフラン(THF)には完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は8600であった。なお、重合の際の仕込み比率から、得られた重合体の一般式(1)のユニットの割合は,50.0モル%であった。
【0049】
実施例2
エポキシ樹脂B75.4g、ビスフェノール化合物A30g、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(ビスフェノール化合物C)20gを用いて、実施例1と同様に成形し、淡黄色の不透明な結晶性のシート状の成形物を得た。成形物の融点は206℃、融解熱は7J/gであった。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、180℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。THFには完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は10400であった。なお、重合の際の仕込み比率から、得られた重合体の一般式(1)のユニットの割合は,28.3モル%であった。
【0050】
実施例3
エポキシ樹脂B77.4g、ビスフェノール化合物A20部、ビスフェノール化合物C30部を用いて、実施例1と同様に成形し、黄色の不透明なシート状の成形物を得た。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、150℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。THFには完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は12800であった。なお、重合の際の仕込み比率から、得られた重合体の一般式(1)のユニットの割合は,18.5モル%であった。
【0051】
実施例4
エポキシ樹脂A86.1g、ビスフェノール化合物C50gを用いて、実施例1と同様に成形し、淡黄色の不透明な結晶性のシート状の成形物を得た。成形物の融点は204℃、融解熱は32J/gであった。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、180℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。THFには完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は9200であった。なお、重合の際の仕込み比率から、得られた重合体の一般式(1)のユニットの割合は,50.0モル%であった。
【0052】
実施例5
エポキシ樹脂B74.4g、ビスフェノール化合物B10部、ビスフェノール化合物C40部を用いて、実施例1と同様に成形し、黄色の不透明なシート状の成形物を得た。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、150℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。THFには完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は10400であった。なお、重合の際の仕込み比率から、得られた重合体の一般式(1)のユニットの割合は,25.3モル%であった。
【0053】
比較例1
エポキシ樹脂B81.2g、ビスフェノール化合物C50部を用いて、実施例1と同様に成形し、淡黄色の不透明な結晶状のシート状の成形物を得た。成形物の融点は178℃、融解熱は28J/gであった。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、150℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性の重合体であることを確認した。THFには完全に溶解しなかったが、可溶部分をGPC測定の結果、重量平均分子量は9700であった。
【0054】
比較例2
エポキシ樹脂A85.1g、ビスフェノール化合物B30g、フェノ-ルノボラック(硬化剤A:アイカ工業製、BRG-557;OH当量104、軟化点 83℃、ビスフェノール体の含有量18.4%)20gを用いて、実施例1と同様に成形し、淡黄色の透明なシート状の成形物を得た。成形物の物性測定結果を表1に示す。なお、成形物は、180℃に加熱することにより変形可能であり熱可塑性してもゴム弾性を有する二次加工性を持たない硬化物であることを確認した。THFには完全に不溶であった。
【0055】
比較例3
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP-50;日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、重量平均分子量55,000)を用いて、実施例1と同様に成形し、シート状の成形物を得た。成形物の物性測定結果を表1に示す。
【0056】