(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241113BHJP
H02M 3/335 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H02M3/28 B
H02M3/28 X
H02M3/335 B
(21)【出願番号】P 2020212971
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-030592(JP,U)
【文献】特開2017-011865(JP,A)
【文献】特開2013-255363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218628(US,A1)
【文献】特開平10-150768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路と、前記スイッチング回路がオンすることで入力電圧が印加する1次巻線、後段の回路が接続される2次巻線及び補助巻線を有するトランスと、前記2次巻線側の出力電圧に応じたフォトカプラ電流を生成するフォトカプラと、前記フォトカプラ電流によって前記スイッチング回路のオン・オフを制御する制御回路と、前記入力電圧が印加される入力ノードと前記制御回路の電源ノードとなる第2のノードとの間に電気的に接続された第1の抵抗素子とを備えたスイッチング電源装置において、
前記補助巻線と第1のノードとの間に電気的に接続された第1の整流回路と、一端が前記第1のノードに電気的に接続された第1の容量素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電気的に接続された第2の整流回路と、一端が前記第2のノードに電気的に接続された第2の容量素子とから構成され、前記補助巻線に発生する電圧を整流平滑する整流平滑回路と、
前記入力ノードと前記第2のノードとの間に前記第1の抵抗素子と並列に電気的に接続され、前記制御回路の起動時に前記第2のノードへ電流を供給する電流供給回路と、
前記電流供給回路と前記第1のノードとの間に電気的に接続された電圧検出回路と、
を備え、
前記電圧検出回路が、前記第1のノードの電圧が第1の閾値以下であることを検出したとき、前記電流供給回路から前記第2のノードへ電流が供給され、前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値を超えたことを検出したとき、前記第2のノードへの電流の供給を停止し、
前記電圧検出回路は、前記電流供給回路と前記第2のノードとの間にさらに電気的に接続され、
前記電流供給回路は、前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値以下であり且つ前記第2のノードの電圧が第2の閾値以上であることが前記電圧検出回路で検出されたことに応じて、前記第2のノードへの電流の供給を開始し、前記第2のノードの電圧が前記第2の閾値より高く且つ前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値を超えたことが前記電圧検出回路で検出されたことに応じて、前記第2のノードへの電流の供給を停止する
スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電流供給回路は、
一端が前記入力ノードに電気的に接続され、前記第1の抵抗素子より抵抗値が小さい第2の抵抗素子と、
前記第2の抵抗素子の他端を前記第2のノードに電気的に接続可能である接続回路と、
を有する
請求項1
に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記接続回路は、
ソースが前記第2の抵抗素子の他端に電気的に接続され、ドレインが前記第2のノードに電気的に接続された第1のトランジスタと、
一端が前記第2の抵抗素子の他端に電気的に接続され、他端が前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続された第3の抵抗素子と、
を有し、
前記電圧検出回路は、
ソースが前記第1のノードに電気的に接続され、ドレインが前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、ゲートが前記第2のノードに電気的に接続された第2のトランジスタを有する
請求項
2に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1次巻線及び2次巻線に磁気的に結合された補助巻線を有するスイッチング電源装置では、制御回路の電源ノードが、補助巻線の一端に電気的に接続されるとともに、起動用の抵抗素子を介して入力ノードに電気的に接続される。スイッチング電源装置では、入力ノードから起動用の抵抗素子を介した電流供給により制御回路の電源ノードが所定の電圧に達すると、制御回路が起動し、1次巻線に接続されたスイッチング回路を制御回路がオン・オフする。これにより、スイッチング電源装置は、1次巻線から2次巻線へ所定範囲の電力が伝達されるようにする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング電源装置では、制御回路が起動するまでの起動時間の短縮が要求されることがある。
【0005】
しかし、単に、起動用の抵抗素子の抵抗値を小さくし、制御回路の電源ノードへ供給する電流を増加させて起動時間の短縮を図ると、定常動作時も大きな電流を流し続け、定常動作の電力効率が低下する可能性があり、起動時間を効率的に短縮することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、定常動作の電力効率を低下させずに起動時間を効率的に短縮できるスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかるスイッチング電源装置は、スイッチング回路と、前記スイッチング回路がオンすることで入力電圧が印加する1次巻線、後段の回路が接続される2次巻線及び補助巻線を有するトランスと、前記2次巻線側の出力電圧に応じたフォトカプラ電流を生成するフォトカプラと、前記フォトカプラ電流によって前記スイッチング回路のオン・オフを制御する制御回路と、前記入力電圧が印加される入力ノードと前記制御回路の電源ノードとなる第2のノードとの間に電気的に接続された第1の抵抗素子とを備えたスイッチング電源装置において、前記補助巻線と第1のノードとの間に電気的に接続された第1の整流回路と、一端が前記第1のノードに電気的に接続された第1の容量素子と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電気的に接続された第2の整流回路と、一端が前記第2のノードに電気的に接続された第2の容量素子とから構成され、前記補助巻線に発生する電圧を整流平滑する整流平滑回路と、前記入力ノードと前記第2のノードとの間に前記第1の抵抗素子と並列に電気的に接続され、前記制御回路の起動時に前記第2のノードへ電流を供給する電流供給回路と、前記電流供給回路と前記第1のノードとの間に電気的に接続された電圧検出回路とを有し、前記電圧検出回路が、前記第1のノードの電圧が第1の閾値以下であることを検出したとき、前記電流供給回路から前記第2のノードへ電流が供給され、前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値を超えたことを検出したとき、前記第2のノードへの電流の供給を停止し、前記電圧検出回路は、前記電流供給回路と前記第2のノードとの間にさらに電気的に接続され、前記電流供給回路は、前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値以下であり且つ前記第2のノードの電圧が第2の閾値以上であることが前記電圧検出回路で検出されたことに応じて、前記第2のノードへの電流の供給を開始し、前記第2のノードの電圧が前記第2の閾値より高く且つ前記第1のノードの電圧が前記第1の閾値を超えたことが前記電圧検出回路で検出されたことに応じて、前記第2のノードへの電流の供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定常動作の電力効率を低下させずに起動時間を効率的に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るスイッチング電源装置の詳細構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示す波形図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るスイッチング電源装置の起動時の動作を示す波形図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るスイッチング電源装置の定常時の動作を示す波形図である。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の詳細構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、スイッチング電源装置の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
(実施形態)
実施形態に係るスイッチング電源装置は、絶縁トランスを有する絶縁型の電源装置であり、例えばAC/DCコンバータ又はDC/DCコンバータに適用される。AC/DCコンバータに適用される場合、スイッチング電源装置は、AC電源電圧を受け、AC電源電圧を整流回路で整流してDC電源電圧にし、DC電源電圧を絶縁トランスで所定レベルのDC電源電圧へ変換して出力する。DC/DCコンバータに適用される場合、スイッチング電源装置は、DC電源電圧を受け、DC電源電圧を絶縁トランスで所定レベルのDC電源電圧へ変換して出力する。
【0012】
例えば、スイッチング電源装置1は、
図1に示すように構成され得る。
図1は、スイッチング電源装置1の概略構成を示す図である。
図1では、スイッチング電源装置1がDC/DCコンバータに適用される場合の構成が例示される。
【0013】
スイッチング電源装置1は、絶縁トランスTR、入力回路80、抵抗素子(第1の抵抗素子)RST1、容量素子(第2の容量素子)CSUB2、整流回路(第2の整流回路)40、制御回路60、スイッチング回路50、整流回路70、及び出力回路90を有する。
【0014】
絶縁トランスTRは、1次巻線T1、2次巻線T2、補助巻線T3、及び磁気コアMCを有する。1次巻線T1、2次巻線T2、補助巻線T3は、磁気コアMCを介して互いに磁気的に結合されている。絶縁トランスTRは、フライバック型で構成され得る。
図1に●で示すように、磁気コアMC内の磁力線が通る経路に対して、1次巻線T1、補助巻線T3は、互いに同じ方向に巻き回され、2次巻線T2は、1次巻線T1、補助巻線T3と逆方向に巻き回されている。
【0015】
なお、絶縁トランスTRは、1次巻線T1、2次巻線T2、補助巻線T3が互いに磁気的に結合されていれば、磁気コアMCが省略された構成であってもよい。また、絶縁トランスTRは、1次側に補助巻線T3を有する構成であれば、フライバック型以外の構成として例えばフィードフォワード型であってもよい。
【0016】
1次巻線T1は、一端が電源ラインL1を介して入力ノードNinに電気的に接続され、他端がスイッチング回路50を介して基準電位(例えば、グランド電位)に電気的に接続されている。2次巻線T2は、一端が電源ラインL2を介して出力ノードNoutに電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続されている。補助巻線T3は、一端が制御電源ラインL3を介してノードN2に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続されている。
【0017】
入力回路80は、入力ノードNinと1次巻線T1との間に電気的に接続されている。入力ノードNinには、所定電位(例えば、100V)を有する入力電圧Vinが前段の回路(図示せず)から入力される。入力回路80は、入力電圧Vinを電源ラインL1経由で1次巻線T1へ伝達する。
【0018】
抵抗素子(第1の抵抗素子)RST1は、入力ノードNinと制御回路の電源ノードとなるノードN2(第2のノード)との間に電気的に接続されている。抵抗素子RST1は、一端が入力回路80の出力ノード及び電源ラインL1に電気的に接続され、他端がノードN2に電気的に接続されている。抵抗素子RST1は、起動用の抵抗素子であり、入力ノードNin及びノードN2間の電流経路を形成し、容量素子CSUB2の一端に電荷を伝達可能である。
【0019】
容量素子CSUB2は、一端がノードN2に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続される。容量素子CSUB2は、入力ノードNinから入力回路80、抵抗素子RST1及びノードN2を介して伝達された電荷に応じた制御電源電圧VDDを保持する。
【0020】
整流回路40は、制御電源ラインL3上に配され、入力ノードが補助巻線T3の一端に電気的に接続され、出力ノードがノードN2に電気的に接続されている。整流回路40は、補助巻線T3側からノードN2へ向かう方向に電流を整流する。
【0021】
制御回路60は、ノードN2とスイッチング回路50との間に電気的に接続されている。制御回路60は、ノードN2から受ける電源電圧が電圧VSTに達すると起動される。起動されると、制御回路60は、スイッチング回路50を制御する。
【0022】
スイッチング回路50は、1次巻線T1と基準電位と制御回路60との間に電気的に接続され、入力ノードが1次巻線T1の他端に電気的に接続され、出力ノードが基準電位に電気的に接続され、制御ノードが制御回路60に電気的に接続されている。スイッチング回路50は、制御回路60によりオン・オフが制御され、スイッチング回路50がオンすると入力ノードNinに印加される入力電圧が1次巻線T1へ伝達される。
【0023】
整流回路70は、電源ラインL2上に配され、入力ノードが2次巻線T2の一端に電気的に接続され、出力ノードが出力回路90を介して出力ノードNoutに電気的に接続されている。
【0024】
出力回路90は、電源ラインL2上に配され、入力ノードが整流回路70を介して2次巻線T2の一端に電気的に接続され、出力ノードが出力ノードNoutに電気的に接続されている。出力ノードNoutからは、電位V11(例えば、5V)を有する出力電圧Voutが後段の回路(図示せず)へ出力される。出力回路90は、出力電圧Voutに応じたフォトカプラ電流を生成するフォトダイオードを含み、フォトカプラ電流により制御回路60内のフォトトランジスタに出力電圧Voutに応じた信号がフィードバックされる。制御回路60は、フィードバックされた信号に応じて、スイッチング回路50をオン・オフする。
【0025】
スイッチング電源装置1では、入力ノードNinへの入力電圧Vinの供給が開始されると、抵抗素子RST1を介したノードN2への電流供給により容量素子CSUB2が充電され、制御電源電圧VDDが上昇していく。そして、制御電源電圧VDDが電圧VST(例えば、8V)に達すると、制御回路60が起動し、1次巻線T1に接続されたスイッチング回路50を制御回路60がオン・オフする。
【0026】
スイッチング電源装置1では、制御回路60が起動するまでの起動時間の短縮が要求されることがある。起動時間は、入力ノードへの入力電圧Vinの供給が開始されてからノードN2の電圧が電位VSTに達して制御回路60が起動するまでの時間である。
【0027】
例えば、起動用の抵抗素子RST1の抵抗値を小さくして、ノードN2へ供給する電流を増加させて、起動時間の短縮を図ることが考えられる。この場合、定常動作時も抵抗素子RST1を介してノードN2へ大きな電流が流れ続け、抵抗素子RST1による消費電力が増加し、スイッチング電源装置1における定常動作の電力効率が低下する可能性がある。
【0028】
一方、起動用の抵抗素子RST1の抵抗値を大きくすれば、定常動作時に抵抗素子RST1を介してノードN2へ流れる電流を小さくでき、抵抗素子RST1による消費電力を低減できるが、起動時にノードN2へ供給する電流を増加させることが困難になり、起動時間の短縮が困難になる可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、スイッチング電源装置1において、抵抗素子RST1と並列に電流供給回路を設け、制御回路60の起動時に電流供給回路からノードN2へ電流を流すことで、起動時間の短縮と電力効率低下の抑制との両立化を図る。
【0030】
具体的には、起動用の抵抗素子R
ST1の抵抗値は、定常動作時の消費電力を低減することに適した比較的大きな値とする。また、スイッチング電源装置1は、
図1に示すように、電流供給回路10、電圧検出回路20、整流回路(第1の整流回路)30、及び容量素子(第1の容量素子)C
SUB1をさらに有する。
【0031】
補助巻線T3とノードN2(第2のノード)との間には、2段の整流回路30,40が設けられ、整流回路30,40間のノードがノードN1とされる。整流回路30は、補助巻線T3からノードN1(第1のノード)へ向かう方向に整流する。整流回路40は、ノードN1からノードN2へ向かう方向に整流する。整流回路30は、入力ノードが補助巻線T3の一端に電気的に接続され、出力ノードがノードN1に電気的に接続されている。整流回路40は、入力ノードが整流回路30に電気的に接続され、出力ノードがノードN2に電気的に接続されている。
【0032】
補助巻線T3とノードN2との間には、2段の容量素子CSUB1,CSUB2が設けられている。容量素子CSUB1は、一端がノードN1に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続されている。容量素子CSUB2は、一端がノードN2に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続されている。
【0033】
すなわち、2段の整流回路30,40と容量素子CSUB1,CSUB2により、補助巻線T3に発生する電圧を整流平滑して制御回路60の電源電圧である制御電源電圧VDDを生成する整流平滑回路が構成される。本実施形態では、2段の整流回路30,40により制御電源電圧VDDを蓄積すべき容量素子を容量素子CSUB1,CSUB2の2段に分割でき、1段である場合の容量素子の容量値に比べて、容量素子CSUB2の容量値を小さくすることができる。これにより、制御電源電圧VDDが電圧VSTに達するために容量素子CSUB2に蓄積すべき電荷量を低減できる。
【0034】
電流供給回路10は、入力ノードNinとノードN2との間に電気的に接続されている。電流供給回路10は、入力ノードが電源ラインL1に接続され、制御ノードが電圧検出回路20に接続され、出力ノードがノードN2に接続されている。電流供給回路10は、制御回路60の起動時に、ノードN2へ電流を供給する。
【0035】
電圧検出回路20は、電流供給回路10とノードN1との間に電気的に接続される。電圧検出回路20は、ノードN1の電圧が閾値Vth1を超えたか否かを検出し、検出結果を示す信号を電流供給回路10へ供給する。また、電圧検出回路20は、電流供給回路10とノードN2との間に電気的に接続される。電圧検出回路20は、ノードN2の電圧が閾値Vth2を超えたか否かを検出し、検出結果を示す信号を電流供給回路10へ供給する。
【0036】
電流供給回路10は、ノードN1の電圧が閾値Vth1より小さいことが電圧検出回路20で検出されたことに応じて、ノードN2へ電流を供給する。すなわち、電流供給回路10は、ノードN1の電圧が閾値Vth1より小さく且つノードN2の電圧が閾値Vth2を超えたことが電圧検出回路20で検出されたことに応じて、ノードN2への電流の供給を開始する。これにより、制御回路60の起動時にノードN2への供給電流を増加させることができ、起動時間を短縮できる。
【0037】
電流供給回路10は、ノードN1の電圧が閾値Vth1を超えたことが電圧検出回路20で検出されたことに応じて、ノードN2への電流の供給を停止する。電流供給回路10は、ノードN2の電圧が閾値Vth2より高く且つノードN1の電圧が閾値Vth1を超えたことが電圧検出回路20で検出されたことに応じて、ノードN2への電流の供給を停止する。これにより、制御回路60の定常動作時に、ノードN2への供給電流は抵抗素子RST1に流れる電流のみに低減でき、定常動作の電力効率の低下を抑制できる。
【0038】
より具体的には、スイッチング電源装置1は、
図2に示すように構成され得る。
図2は、スイッチング電源装置1の詳細構成を示す図である。
【0039】
入力回路80は、容量素子CINを有する。容量素子CINは、入力ノードNinに入力された入力電圧Vinを保持する。容量素子CINは、一端が電源ラインL1を介して入力ノードNinに電気的に接続され、他端が基準ノードNrefin及び基準電位に電気的に接続されている。
【0040】
整流回路30は、ダイオードDSUB1及び抵抗素子RSUBを有する。ダイオードDSUB1は、アノードが抵抗素子RSUBに電気的に接続され、カソードがノードN1に電気的に接続される。抵抗素子RSUBは、一端がダイオードDSUB1に電気的に接続され、他端が補助巻線T3に電気的に接続される。なお、入力回路80は、容量素子CIN以外の構成として、例えばチョークコイルフィルタであってもよい。
【0041】
整流回路40は、ダイオードDSUB2及び抵抗素子RBを有する。ダイオードDSUB2は、アノードがノードN1に電気的に接続され、カソードがノードN2に電気的に接続される。抵抗素子RBは、一端がノードN1に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続される。
【0042】
電流供給回路10は、抵抗素子(第2の抵抗素子)RST2及び接続回路11を有する。抵抗素子RST2は、一端が電源ラインL1を介して入力ノードNinに電気的に接続され、他端が接続回路11に電気的に接続される。抵抗素子RST2の抵抗値は、抵抗素子RST1の抵抗値より小さい。接続回路11は、抵抗素子RST2の他端をノードN2に電気的に接続可能である。
【0043】
接続回路11は、トランジスタ(第1のトランジスタ)MST1及び抵抗素子(第3の抵抗素子)RAを有する。トランジスタMST1は、例えばPMOSトランジスタであり、ソースが抵抗素子RST2に電気的に接続され、ドレインがノードN2に電気的に接続され、ゲートが抵抗素子RA及び電圧検出回路20に電気的に接続されている。抵抗素子RAは、一端が抵抗素子RST2の他端に電気的に接続され、他端がトランジスタMST1のゲートに電気的に接続される。
【0044】
電圧検出回路20は、トランジスタ(第2のトランジスタ)MST2を有する。トランジスタMST2は、例えばNMOSトランジスタであり、ソースがノードN1に電気的に接続され、ドレインがトランジスタMST1のゲートに電気的に接続され、ゲートがノードN2に電気的に接続される。
【0045】
制御回路60は、制御回路61及びフォトトランジスタ62を有する。制御回路61の電源ノード61aは、ノードN2に電気的に接続されている。制御回路61の制御ノード61bは、フォトトランジスタ62に電気的に接続されている。制御回路61の出力ノード61c,61dは、スイッチング回路50に電気的に接続されている(
図1においては、制御回路61の出力ノード61c,61dを、スイッチング回路50を制御する一つの制御ラインとして図示している)。フォトトランジスタ62は、例えばNPN型バイポーラトランジスタであり、コレクタが制御回路61に電気的に接続され、エミッタが基準電位に電気的に接続される。
【0046】
スイッチング回路50は、スイッチング素子51及び抵抗素子R1を有する。スイッチング素子51は、例えばNMOSトランジスタMPW及び寄生ダイオードDPWを有する。NMOSトランジスタMPWは、ゲートが制御回路61に接続され、ソースが抵抗素子R1に接続され、ドレインが1次巻線T1に接続されている。抵抗素子R1は、一端がスイッチング素子51に接続され、他端が基準電位に接続されている。
【0047】
整流回路70は、ダイオードD2を有する。ダイオードD2は、アノードが2次巻線T2の一端に電気的に接続され、カソードが出力回路90を介して出力ノードNoutに電気的に接続される。
【0048】
出力回路90は、容量素子COUT、抵抗素子R2、出力電圧フィードバック回路91及びフォトダイオード92を有する。容量素子COUTは、出力ノードNoutに出力されるべき出力電圧Voutを保持する。容量素子COUTは、一端が電源ラインL2を介して出力ノードNoutに電気的に接続され、他端が基準ノードNrefout及び基準電位に電気的に接続されている。出力電圧フィードバック回路91の入力ノードは、電源ラインL2に電気的に接続されている。出力電圧フィードバック回路91の出力ノードは、フォトダイオード92に電気的に接続され、出力電圧Voutに比例した電流をフォトダイオード92に流す。抵抗素子R2は、一端が電源ラインL2に電気的に接続され、他端がフォトダイオード92に電気的に接続されている。フォトダイオード92は、アノードが抵抗素子R2に電気的に接続され、カソードが出力電圧フィードバック回路91に電気的に接続されている。
【0049】
なお、フォトダイオード92は、フォトトランジスタ62とフォトカプラを構成する。フォトダイオード92は、電流が流れた際に発光する。フォトトランジスタ62は、フォトダイオード92から出射された光を受光可能に構成されている。フォトトランジスタ62は、受けた光の強度が所定量以上になるとオンする。これにより、出力電圧Voutのレベルに応じた信号が出力回路90から制御回路60へフィードバックされ、制御回路60は、フィードバックされた信号に応じて、スイッチング回路50をオン・オフして1次巻線T1に流れる電流をチョッパ制御し、2次巻線T2側の電圧が所定の値に収まるように制御する。このため、スイッチング電源装置1は、1次巻線T1から2次巻線T2へ所定範囲の電力が伝達されるようにすることができる。
【0050】
例えば、スイッチング電源装置1の動作を波形図で示すと、
図3に示すようになる。
図3は、スイッチング電源装置1の動作を示す波形図である。
【0051】
タイミングt1において、入力ノードNinへの入力電圧Vinの供給が開始され、入力電圧Vinが基準電位V0(例えば、0V)から上昇し始める。これに応じて、電源ラインL1から抵抗素子RST1を介してノードN2へ電流が供給され始め、容量素子CSUB2へ電荷が蓄積され始める。容量素子CSUB2の一端の電圧である制御電源電圧VDDが上昇し始める。
【0052】
タイミングt2において、制御電源電圧VDDがトランジスタMST2の閾値Vth2に達すると、トランジスタMST2がオンし、電源ラインL1から抵抗素子RST2、抵抗素子RA、トランジスタMST2のドレイン・ソース経由でノードN1への電流供給が開始される。これに応じて、抵抗素子RAによる電圧降下がトランジスタMST1の閾値電圧より大きくなり、トランジスタMST1がオンする。このとき、制御電源電圧VDDの値は、閾値Vth1より小さい。
【0053】
これにより、電源ラインL1から抵抗素子RST2、トランジスタMST1のソース・ドレイン経由でノードN2への電流供給が開始される。すなわち、電源ラインL1から抵抗素子RST1を介したノードN2への電流供給パスと並行に電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介したノードN2への電流供給パスが形成される。このとき、抵抗素子RST2の抵抗値が抵抗素子RST1の抵抗値より小さいため、電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介したノードN2への電流供給パスにより多くの電流が流れ得る。このため、電源ラインL1からノードN2を介した容量素子CSUB2の一端への電荷の充電を高速に行うことができる。
【0054】
すなわち、電流供給回路10による容量素子CSUB2の一端への急速充電が開始され、抵抗素子RST2に電流が流れる状態になる。等価的には、抵抗素子RST2が電源ラインL1及びノードN2の間に電気的に接続された状態とみなすこともできる。
【0055】
このとき、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2、抵抗素子R
A、トランジスタM
ST2を介したノードN1への電流供給パスも形成されているが、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2及びトランジスタM
ST1を介した電流供給パスに比べると、その流す電流量は、大幅に小さい。このため、電流供給回路10による容量素子C
SUB1への充電量は、容量素子C
SUB1から抵抗素子R
Bを介したグランド電位への放電量以下であり、
図3に点線の波形で示すように、ノードN1の電位は、ほとんど上昇しない。
【0056】
タイミングt3において、入力電圧Vinが電位V1(例えば、100V)に達する。その後、入力電圧Vinのレベルは、おおむね電位V1に維持される。これに応じて、電源ラインL1から抵抗素子RST1を介したノードN2への電流供給が継続され、容量素子CSUB2の一端の電圧である制御電源電圧VDDが上昇し始める。
【0057】
このとき、電流供給回路10による容量素子C
SUB2の一端への急速充電も行われるので、ノードN2の電位である制御電源電圧V
DDは、
図3に急峻な傾きの波形で示されるように、急速に増加していく。
【0058】
タイミングt4において、制御電源電圧V
DDが電圧V
ST(例えば、8V)に達すると、制御回路61が起動する。制御回路61は、スイッチング素子51に対するスイッチング制御を開始し、HレベルV
Hの信号をNMOSトランジスタM
PWのゲートへ供給する。これにより、NMOSトランジスタM
PWがオンし、1次巻線T1に電流が流れると、補助巻線T3の●から整流回路30側へ誘起電流が流れ、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子C
SUB1の一端への充電が開始される。これにより、
図3に点線の波形で示すように、ノードN1の電位が上昇し始める。
【0059】
タイミングt5において、ノードN1の電位が閾値Vth1を超えると、ノードN2の電位とノードN1の電位とがほぼ等電位となる。ノードN2の電位にダイオードDSUB2のオン電圧(例えば、0.7V)を加えたものがノードN1の電位に略等しい状態が維持される。閾値Vth1は、電圧VSTにダイオードDSUB2のオン電圧を加えたものにほぼ等しくてもよい。これにより、トランジスタMST2のゲート・ソース間電圧がトランジスタMST2の閾値電圧を下回り、トランジスタMST2がオフする。トランジスタMST2がオフすると、電源ラインL1から抵抗素子RST2、抵抗素子RA、トランジスタMST2を介したノードN1への電流供給パスが遮断され、抵抗素子RAによる電圧降下が得られなくなる。これにより、トランジスタMST1のゲート電圧が急激に上昇し、トランジスタMST1がオフし、電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介した電流供給パスも遮断される。
【0060】
すなわち、電流供給回路10によるノードN2への電流供給が停止され、抵抗素子RST2に電流が流れない状態になる。等価的には、抵抗素子RST2が電源ラインL1及びノードN2の間から電気的に切断された状態とみなすこともできる。
【0061】
その後、制御電源電圧VDDが電位VPKに達すると、制御電源電圧VDDは、概ね電位VPKに維持される。
【0062】
タイミングt6において、制御回路61は、NMOSトランジスタMPWのゲートへ供給する信号をHレベルVHからLレベルVLにする。これにより、2次巻線T2の●から整流回路70側へ誘起電流が流れ、2次巻線T2から整流回路70経由で出力回路90へ電力が伝達され、伝達された電力に応じて出力電圧Voutが出力回路90から出力される。それととともに、補助巻線T3の●は2次側の誘起電流が流れている状態において負電圧となる。これにより、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子CSUB1への充電が停止し、ノードN1の電位が緩やかに減少し始める。これに伴い、ノードN2の電位である制御電源電圧VDDが電位VPKから緩やかに減少し始める。
【0063】
タイミングt7において、制御回路61は、NMOSトランジスタMPWのゲートへ供給する信号をLレベルVLからHレベルVHにする。これにより、NMOSトランジスタMPWがオンし、1次巻線T1に電流が流れると、補助巻線T3の●から整流回路30側へ誘起電流が流れ、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子CSUB1の一端への充電が行われる。
【0064】
その後、制御電源電圧VDDが電位VPKに達すると、制御電源電圧VDDは、概ね電位VPKに維持される。
【0065】
タイミングt8において、制御回路61は、NMOSトランジスタMPWのゲートへ供給する信号をHレベルVHからLレベルVLにする。これにより、2次巻線T2の●から整流回路70側へ誘起電流が流れ、2次巻線T2から整流回路70経由で出力回路90へ電力が伝達され、伝達された電力に応じて出力電圧Voutが出力回路90から出力される。それととともに、補助巻線T3の●は2次側の誘起電流が流れている状態において負電圧となる。これにより、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子CSUB1への充電が停止し、ノードN1の電位が緩やかに減少し始める。これに伴い、ノードN2の電位である制御電源電圧VDDが電位VPKから緩やかに減少し始める。
【0066】
タイミングt9,t10において、タイミングt7,t8と同様の動作が行われる。
【0067】
タイミングt11において、制御電源電圧VDDが電圧VSTまで下がり、ノードN1の電位が閾値Vth1まで下がったことに応じて、NMOSトランジスタMST2のゲート・ソース間電圧が閾値電圧以上となり、NMOSトランジスタMST2がオンする。NMOSトランジスタMST2がオンすると、PMOSトランジスタMST1のゲートがLレベル側へ引き下げられるので、PMOSトランジスタMST1がオンする。
【0068】
これにより、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2、トランジスタM
ST1のソース・ドレイン経由でノードN2への電流供給が開始される。すなわち、電源ラインL1から抵抗素子R
ST1を介したノードN2への電流供給パスと並行に電源ラインL1から抵抗素子R
ST2及びトランジスタM
ST1を介したノードN2への電流供給パスが形成される。このとき、抵抗素子R
ST2の抵抗値が抵抗素子R
ST1の抵抗値より小さいため、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2及びトランジスタM
ST1を介したノードN2への電流供給パスにより多くの電流が流れ得る。このため、
図3に実線の波形で示すように、電流供給回路10による容量素子C
SUB2の一端への急速充電が行われ、ノードN2の電位が急峻に増加する。
【0069】
このとき、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2、抵抗素子R
A、トランジスタM
ST2を介したノードN1への電流供給パスも形成されているが、電源ラインL1から抵抗素子R
ST2及びトランジスタM
ST1を介した電流供給パスに比べると、その流す電流量は、非常に小さい。このため、電流供給回路10による容量素子C
SUB1への充電量は、容量素子C
SUB1から抵抗素子R
Bを介したグランド電位への放電量以下であり、
図3に点線の波形で示すように、ノードN1の電位は、ほとんど上昇しないか若干低下する。
【0070】
タイミングt12において、制御回路61は、NMOSトランジスタM
PWのゲートへ供給する信号をLレベルV
LからHレベルV
Hにする。これにより、NMOSトランジスタM
PWがオンし、1次巻線T1に電流が流れると、補助巻線T3の●から整流回路30側へ誘起電流が流れ、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子C
SUB1の一端への充電が行われる。これにより、
図3に点線の波形で示すように、ノードN1の電位が上昇し始める。
【0071】
その後、ノードN1の電位が閾値Vth1を超えると、トランジスタMST2のゲート・ソース間電圧がトランジスタMST2の閾値電圧を下回り、トランジスタMST2がオフする。トランジスタMST2がオフすると、電源ラインL1から抵抗素子RST2、抵抗素子RA、トランジスタMST2を介したノードN1への電流供給パスが遮断され、抵抗素子RAによる電圧降下が得られなくなる。これにより、トランジスタMST1のゲート電圧が急激に上昇し、トランジスタMST1がオフし、電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介した電流供給パスも遮断される。すなわち、電流供給回路10によるノードN2への電流供給が停止される。
【0072】
その後、制御電源電圧VDDが電位VPKに達すると、制御電源電圧VDDは、概ね電位VPKに維持される。
【0073】
タイミングt13において、制御回路61は、NMOSトランジスタMPWのゲートへ供給する信号をHレベルVHからLレベルVLにする。これにより、2次巻線T2の●から整流回路70側へ誘起電流が流れ、2次巻線T2から整流回路70経由で出力回路90へ電力が伝達され、伝達された電力に応じて出力電圧Voutが出力回路90から出力される。それととともに、補助巻線T3の●は2次側の誘起電流が流れている状態において負電圧となる。これにより、補助巻線T3から整流回路30を介した容量素子CSUB1への充電が停止し、ノードN1の電位が緩やかに減少し始める。これに伴い、ノードN2の電位である制御電源電圧VDDが電位VPKから緩やかに減少し始める。
【0074】
タイミングt14,t15において、タイミングt7,t8と同様の動作が行われ得る。
【0075】
図3に示すスイッチング電源装置1の動作において、タイミングt1~t4の時間が起動時間である。スイッチング電源装置1は、タイミングt4以降において、定常動作を継続的に行っている。
【0076】
ここで、スイッチング電源装置1から電流供給回路10及び電圧検出回路20が省略された構成(第1の構成とする)を考える。第1の構成では、制御回路60の起動時に、
図4(a)に示すような動作が行われる。
図4(a)は、第1の構成の起動時の動作を示す波形図である。
【0077】
第1の構成では、タイミングt101に入力電圧Vinの供給が開始される。起動用の抵抗素子R
ST1の抵抗値が大きな値とされているので、電源ラインL1から抵抗素子R
ST1を介したノードN2への電流供給パスに小さな電流が流れる。これにより、ノードN2の電位である制御電源電圧V
DDは、
図4(a)に緩やかな傾きの波形で示されるように、ゆっくりと増加していき、タイミングt104で制御電源電圧V
DDが電圧V
STに達する。
【0078】
このため、タイミングt101からタイミングt104までの時間である起動時間ΔtST100は、長時間化しやすい。
【0079】
それに対して、本実施形態のスイッチング電源装置1によれば、制御回路60の起動時に、
図4(b)に示すような動作が行われる。
図4(b)は、スイッチング電源装置1の起動時の動作を示す波形図である。
【0080】
スイッチング電源装置1では、タイミングt1に入力電圧Vinの供給が開始されると、タイミングt2に電流供給回路10によるノードN2(容量素子CSUB2の一端)への急速充電が開始される。そして、制御電源電圧VDDが電圧VSTに達して制御回路61が起動するタイミングt4より後のタイミングt5に電流供給回路10によるノードN2への急速充電が停止される。
【0081】
このため、タイミングt1~t4までの時間である起動時間ΔtSTを起動時間ΔtST100に比べて大幅に短縮できる。
【0082】
また、第1の構成では、定常時に、
図5(a)に示すような動作が行われ得る。
図5(a)は、第1の構成の定常時の動作を示す波形図である。
【0083】
第1の構成では、タイミングt111の直前において、制御回路60の消費電流が増加したりスイッチング素子51のオフ時間が長くなったりすることなどより、制御電源電圧VDDが低下していく。
【0084】
タイミングt111において、制御電源電圧VDDが電圧VSTまで下がると、制御回路61は、部分的に内部の素子をオフさせて、スタンバイ状態になる。起動用の抵抗素子RST1の抵抗値が大きな値とされているので、容量素子CSUB2の一端の電荷について、電源ラインL1から抵抗素子RST1を介したノードN2への電流供給パスによる充電量が制御回路60による放電量より少なくなり得る。これにより、制御電源電圧VDDがさらに低下していく。
【0085】
タイミングt112において、制御電源電圧VDDが電圧VENを下回ると、制御回路61は、再起動を行う。制御回路61は、すべての内部の素子をオフさせ、休止状態になる。制御回路61は、制御電源電圧VDDが電圧VSTに回復するまで待機する。
【0086】
タイミングt113において、制御電源電圧VDDが電圧VSTに達すると、制御回路61が起動する。制御回路61は、スイッチング素子51に対するスイッチング制御を再開する。
【0087】
図5(a)では、タイミングt111~t113までの時間Δt
downは、スイッチング制御ができないダウンタイムとなっている。このため、出力電圧Voutが低下する要因になる。
【0088】
それに対して、本実施形態のスイッチング電源装置1によれば、タイミングt11に、制御電源電圧VDDが電圧VSTまで下がり、ノードN1の電位が閾値Vth1まで下がったことに応じて、電流供給回路10によるノードN2への急速充電を開始し、タイミングt12まで、ノードN2を介した容量素子CSUB2の一端への急速充電を行う。これにより、制御電源電圧VDDが電圧VSTより高い値へ上昇し得る。また、制御回路61のスイッチング制御動作に伴い、ノードN1の電位が閾値Vth1を超えると、電流供給回路10によるノードN2への急速充電が停止される。
【0089】
図5(b)では、一時的に制御電源電圧V
DDが減衰するタイミングt11~t12においても、電流供給回路10によりノードN2への急速充電が行われることで、制御回路60によるスイッチング制御が継続されている。すなわち、スイッチング制御ができないダウンタイムが存在しないので、制御電源電圧V
DDのレベルを所望範囲に収めるように安定化させることができ、出力電圧Voutを正常に保つことができる。
【0090】
以上のように、本実施形態では、スイッチング電源装置1において、入力ノードNinとノードN2との間で抵抗素子RST1と並列に電流供給回路10を設ける。スイッチング電源装置1は、制御回路60の起動時に、電流供給回路10からノードN2へ電流を流しノードN2への急速充電を行い、制御回路60の起動が完了すると、電流供給回路10によるノードN2への急速充電を停止する。これにより、制御回路60の起動時に、起動時間を短縮でき、定常時に、起動用の素子で消費される電力を低減できる。この結果、起動時間の短縮と電力効率低下の抑制とを両立化できる。
【0091】
また、本実施形態では、スイッチング電源装置1は、定常時に、一時的に制御電源電圧VDDが減衰することに応じて、電流供給回路10からノードN2へ電流を流しノードN2への急速充電を行い、制御電源電圧VDDが回復することに応じて、電流供給回路10によるノードN2への急速充電を停止する。これにより、定常時におけるスイッチング制御ができないダウンタイムの発生を抑制できるので、制御電源電圧VDDのレベルを所望範囲に収めるように安定化させることができ、出力電圧Voutを正常に保つ制御とすることができる。
【0092】
なお、スイッチング電源装置1は、抵抗素子R
ST1が省略された構成であってもよい。例えば、
図2では、トランジスタM
ST1がノーマリーオフ型で例示されているが、トランジスタM
ST1をノーマリーオン型に変更してもよい。このとき、抵抗素子R
ST2の抵抗値と定常時のゲート電圧に対するトランジスタM
ST1のオン抵抗との合成抵抗値を抵抗素子R
ST1の抵抗値に相当する値になるように、トランジスタM
ST1のディメンジョン(=W/L、W:ゲート幅、L:ゲート長)を調整してもよい。これにより、抵抗素子R
ST1が省略された構成において、定常時に電流供給回路10が抵抗素子R
ST1として機能するようにすることができる。
【0093】
あるいは、
図6に示すように、スイッチング電源装置101における電圧検出回路120は、電流供給回路10とノードN2との間に電気的に接続されない構成であってもよい。
図6は、実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置101の概略構成を示す図である。
【0094】
スイッチング電源装置101は、電圧検出回路20(
図1参照)に代えて、電圧検出回路120を有する。電圧検出回路120は、電流供給回路10とノードN1との間に電気的に接続される。電圧検出回路120は、ノードN1の電圧が閾値Vth1を超えたか否かを検出し、検出結果を示す信号を電流供給回路10へ供給する。
【0095】
なお、電圧検出回路120は、電流供給回路10とノードN2との間に電気的に接続されない。このため、電圧検出回路120は、ノードN2の電圧が閾値Vth2を超えたか否かを検出しない。
【0096】
電流供給回路10は、ノードN1の電圧が閾値Vth1より小さいことが電圧検出回路120で検出されたことに応じて、ノードN2への電流の供給を開始する。これにより、制御回路60の起動時にノードN2への供給電流を増加させることができ、起動時間を短縮できる。
【0097】
電流供給回路10は、ノードN1の電圧が閾値Vth1を超えたことが電圧検出回路120で検出されたことに応じて、ノードN2への電流の供給を停止する。これにより、制御回路60の定常動作時にノードN2への供給電流を低減でき、定常動作の電力効率の低下を抑制できる。
【0098】
より具体的には、スイッチング電源装置101は、
図7に示すように構成され得る。
図7は、実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置101の詳細構成を示す図である。
【0099】
スイッチング電源装置101において、電圧検出回路120は、トランジスタMST3、コンパレータCOMP、シャントレギュレータSD、抵抗素子RBIAS、抵抗素子RSD1及び抵抗素子RSD2を有する。
【0100】
トランジスタMST3は、例えばNMOSトランジスタであり、ソースが基準電位に電気的に接続され、ドレインがトランジスタMST1のゲートに電気的に接続され、ゲートがコンパレータCOMPに電気的に接続される。コンパレータCOMPは、出力ノードがトランジスタMST3に接続され、非反転入力ノード(+)がシャントレギュレータSD及び抵抗素子RBIASに接続され、反転入力ノード(-)が抵抗素子RSD1及び抵抗素子RSD2に接続され、電源ノードがノードN2に接続されている。シャントレギュレータSDは、入力ノードが基準電位に接続され、出力ノードが参照ノード、コンパレータCOMPの非反転入力ノード(+)、抵抗素子RBIASの一端に接続されている。抵抗素子RBIASの他端は、ノードN2、コンパレータCOMPの電源ノードに接続されている。抵抗素子RSD1は、一端がコンパレータCOMPの反転入力ノード(-)、抵抗素子RSD2の一端に接続されている。抵抗素子RSD2の他端は、基準電位に接続されている。
【0101】
シャントレギュレータSDは、予め設定された閾値Vth1を有する。シャントレギュレータSDは、その参照ノードで受ける出力ノードの電圧が閾値Vth1に等しくなるまでは、オフしており、Hレベル(≒閾値Vth1)を出力する。シャントレギュレータSDは、定電圧源として機能し得る。参照ノードで受ける出力ノードの電圧が閾値Vth1に等しくなると、シャントレギュレータSDは、オンし、Lレベル(≒グランド電位)を出力する。
【0102】
図7に示す電圧検出回路120において、ノードN2の電圧が抵抗素子R
BIASの両端電圧とシャントレギュレータSDの出力ノードの電圧とに分圧される。
【0103】
例えば、入力ノードNinへの入力電圧Vinの供給が開始され、入力電圧Vinが基準電位V0(例えば、0V)から上昇し始める。これに応じて、電源ラインL1から抵抗素子RST1を介してノードN2へ電流が供給され始め、容量素子CSUB2へ電荷が蓄積され始める。容量素子CSUB2の一端の電圧である制御電源電圧VDDが上昇し始める。また、コンパレータCOMPが動作可能になる。このとき、抵抗素子RSD1を介して伝達されるノードN1の電位が閾値Vth1より低いので、コンパレータCOMPは、比較結果としてHレベルを出力する。これにより、トランジスタMST3がオンして、トランジスタMST1のゲートをLレベル側に引き下げるので、トランジスタMST1がオンする。このため、電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介したノードN2への電流パスが形成され、電流供給回路10によるノードN2の急速充電が行われ得る。
【0104】
制御回路60が起動し、抵抗素子RSD1を介して伝達されるノードN1の電位が閾値Vth1より高くなると、コンパレータCOMPは、比較結果としてLレベルを出力する。これにより、トランジスタMST3がオフして、トランジスタMST1のゲートがHレベル側へ上がるので、トランジスタMST1がオフする。このため、電源ラインL1から抵抗素子RST2及びトランジスタMST1を介したノードN2への電流パスが遮断され、電流供給回路10によるノードN2の急速充電が停止される。
【0105】
なお、参照ノードで受ける出力ノードの電圧が閾値Vth1に等しくなると、シャントレギュレータSDは、オンし、Lレベル(≒グランド電位)を出力してしまう。そのため、シャントレギュレータSDの出力ノードの電圧が閾値Vth1まで下がらないように、抵抗素子R
BIASの抵抗値が決められ得る。また、
図7では、整流回路40の構成として、抵抗素子R
Bが省略された構成が例示されているが、整流回路40は、実施形態と同様に動作し得る。
【0106】
このように、実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置101は、制御回路60の起動時に、電流供給回路10からノードN2へ電流を流しノードN2への急速充電を行い、制御回路60の起動が完了すると、電流供給回路10によるノードN2への急速充電を停止する。このような構成によっても、制御回路60の起動時に、起動時間を短縮でき、定常時に、起動用の素子で消費される電力を低減できる。この結果、起動時間の短縮と電力効率低下の抑制とを両立化できる。
【0107】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1,101 スイッチング電源装置
10 電流供給回路
11 接続回路
20,120 電圧検出回路
30,40 整流回路
50 スイッチング回路
60 制御回路
70 整流回路
80 入力回路
90 出力回路
CSUB1,CSUB2 容量素子
T1 1次巻線
T2 2次巻線
T3 補助巻線