(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】X線ベースの計測のためのウェハ傾斜の測定及び制御
(51)【国際特許分類】
G01N 23/201 20180101AFI20241113BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20241113BHJP
【FI】
G01N23/201
G01N23/18
(21)【出願番号】P 2022549810
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021018304
(87)【国際公開番号】W WO2021167935
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-30
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレーゼンハイム バリー
(72)【発明者】
【氏名】ディ レゴロ ジョセフ エー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】プレス ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ングイェン フイ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531056(JP,A)
【文献】特表2020-502486(JP,A)
【文献】国際公開第2004/047156(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094130(US,A1)
【文献】特開平6-295855(JP,A)
【文献】特開2007-163260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
H01L 21/64-21/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測システムであって、
X線測定スポットにおいて半導体ウェハに入射する入射X線照明ビームを生成するように構成されたX線照明源、
前記入射X線照明ビームに応じて前記半導体ウェハからのX線放射の量を検出するように構成されたX線検出器、
ウェハ方向測定システムであって、
前記半導体ウェハ上の方向測定スポットに方向付けられた入射光学照明ビームを生成するように構成された光学照明源と、
前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された光を検出するように構成された光学検出器と、
前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された前記光を前記光学検出器上に集束させるように構成された1つ又は複数の集束光学要素であって、前記光学検出器は、前記1つ又は複数の集束光学要素の焦点面に又はその付近に配置されている、1つ又は複数の集束光学要素と、
を備えるウェハ方向測定システム、及び
前記半導体ウェハから反射された前記光の前記光学検出器上での入射位置の変化に基づいて、前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の変化を推定するように構成された計算システム、
を備え、前記X線測定スポットと前記方向測定スポットは、前記半導体ウェハの領域にわたって互いに重なり合い、あるいは500マイクロメートル以内で空間的に分離されており、
前記半導体ウェハは、前記入射X線照明ビームの垂直入射の仮定された方向の周りの一連の方向を通して回転させられ、前記X線検出器で検出された回折パターンがそれについて対称である方向を前記入射X線照明ビームに垂直である前記半導体ウェハの方向角とし、ゼロ角度を前記方向測定スポットにおいて前記ウェハ方向測定システムによって測定されたゼロ角度とする計測システム。
【請求項2】
前記X線照明源及び前記X線検出器は、透過測定モード、反射測定モード、又はそれらの組合せで構成されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の前記変化は、前記半導体ウェハの平坦な表面に垂直な軸に直交する軸の周りに存在する、請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、前記半導体ウェハの領域にわたって一致している、請求項1に記載の計測システム。
【請求項5】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、同時に前記半導体ウェハに入射する、請求項1に記載の計測システム。
【請求項6】
前記光学照明源は、レーザベースである、請求項1に記載の計測システム。
【請求項7】
前記半導体ウェハの平坦な表面に垂直な軸に直交する軸の周りの前記半導体ウェハの方向を能動的に制御するように構成された標本位置決めシステムを更に備え、前記標本位置決めシステムは、前記ウェハ方向測定システムによって測定された、前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の前記変化に基づいて、前記半導体ウェハの前記平坦な表面に垂直な前記軸に直交する前記軸の周りの前記半導体ウェハの前記方向を調整する、請求項1に記載の計測システム。
【請求項8】
前記光学照明源と、前記光学検出器と、前記ウェハ方向測定システム及び前記X線照明源の前記1つ又は複数の集束光学要素とが取り付けられた機械フレームを更に備えている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項9】
前記光学照明源、前記光学検出器、及び前記ウェハ方向測定システムの前記1つ又は複数の集束光学要素が取り付けられた第1機械フレームと、
前記X線照明源が取り付けられた第2機械フレームであって、前記第1機械フレームは、前記第2機械フレームに対して移動する、第2機械フレームと、
を更に備えている請求項1に記載の計測システム。
【請求項10】
前記計算システムは、前記方向測定スポットにおいて前記光学検出器によって生成された信号を、時間的に、空間的に、又はそれらの組合せでフィルタリングするように更に構成されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項11】
前記計算システムは、前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向についての推定値を、時間領域から周波数領域に変換するように更に構成され、前記周波数領域における前記半導体ウェハの前記方向についての前記推定値は、測定中のウェハモーダルダイナミクス及び位置安定性を示す、請求項1に記載の計測システム。
【請求項12】
X線測定スポットにおいて入射X線照明ビームを用いて半導体ウェハを照明するステップと、
前記入射X線照明ビームに応じた前記半導体ウェハからのX線放射の量を検出するステップと、
前記半導体ウェハ上の方向測定スポットにわたって入射光学照明ビームを用いて前記半導体ウェハを照明するステップと、
前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された光の量を光学検出器の感光面上に集束させるステップと、
前記光学検出器の前記感光面において前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された光を検出するステップと、
前記光学検出器の前記感光面上における、前記半導体ウェハから反射された前記光の入射位置の変化に基づいて、前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の変化を推定するステップと、
前記検出されたX線放射の量に基づいて、前記半導体ウェハ上に配設された構造を特徴付ける関心のあるパラメータの値を決定するステップと、
前記半導体ウェハを、前記入射X線照明ビームの垂直入射の仮定された方向の周りの一連の方向を通して回転させるステップと、
前記入射X線照明ビームに応じて前記半導体ウェハからのX線放射の量を検出するように構成されたX線検出器で検出された回折パターンがそれについて対称である方向を前記入射X線照明ビームに垂直である前記半導体ウェハの方向角とし、ゼロ角度を前記方向測定スポットに
おける前記半導体ウェハの方向のゼロ角度とするステップと、
を含み、前記X線測定スポットと前記方向測定スポットは、前記半導体ウェハの領域にわたって互いに重なり合い、あるいは500マイクロメートル以内で空間的に分離されている方法。
【請求項13】
前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の前記変化は、前記半導体ウェハの平坦な表面に垂直な軸に直交する軸の周りに存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、前記半導体ウェハの領域にわたって一致している、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、同時に前記半導体ウェハに入射する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向の前記変化に基づいて、前記半導体ウェハの前記平坦な表面に垂直な軸に直交する前記軸の周りの前記半導体ウェハの前記方向を調整するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記方向測定スポットにおいて前記光学検出器によって生成された信号を時間的に、空間的に、又はそれらの組合せでフィルタリングするステップ
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向についての推定値を時間領域から周波数領域に変換するステップを更に含み、前記周波数領域における前記半導体ウェハの前記方向についての前記推定値は、測定中のウェハモーダルダイナミクス及び位置安定性を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ウェハ方向測定システムであって、
半導体ウェハ上の方向測定スポットに方向付けられた入射光学照明ビームを生成するように構成された光学照明源と、
前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された光を検出するように構成された光学検出器と、
前記入射光学照明ビームに応じて前記半導体ウェハから反射された前記光を前記光学検出器上に集束させるように構成された1つ又は複数の集束光学要素であって、前記光学検出器は、前記1つ又は複数の集束光学要素の焦点面に又はその付近に配置されている、1つ又は複数の集束光学要素と、
前記光学検出器上の前記半導体ウェハから反射された前記光の入射位置の変化に基づいて、前記方向測定スポットにおけるX線照明源に対する前記半導体ウェハの方向の変化を推定するように構成された計算システムであって、前記X線照明源は、X線測定スポットにおいて前記半導体ウェハに入射する入射X線照明ビームを生成するように構成されている、計算システムと、
を備え、前記X線測定スポットと前記方向測定スポットは、前記半導体ウェハの領域にわたって互いに重なり合い、あるいは500マイクロメートル以内で空間的に分離されており、
前記半導体ウェハは、前記入射X線照明ビームの垂直入射の仮定された方向の周りの一連の方向を通して回転させられ、
前記入射X線照明ビームに応じて前記半導体ウェハからのX線放射の量を検出するように構成されたX線検出器で検出された回折パターンがそれについて対称である方向を前記入射X線照明ビームに垂直である前記半導体ウェハの方向角とし、ゼロ角度を前記方向測定スポットにおいて前記ウェハ方向測定システムによって測定されたゼロ角度とするウェハ方向測定システム。
【請求項20】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、前記半導体ウェハの領域にわたって一致している、請求項19に記載のウェハ方向測定システム。
【請求項21】
前記X線測定スポットと前記方向測定スポットとは、同時に前記半導体ウェハの領域にわたって入射する、請求項19に記載のウェハ方向測定システム。
【請求項22】
前記光学照明源は、レーザベースである、請求項19に記載のウェハ方向測定システム。
【請求項23】
前記計算システムは、前記方向測定スポットにおいて前記光学検出器によって生成された信号を時間的に、空間的に、又はそれらの組合せでフィルタリングするように更に構成されている、請求項19に記載のウェハ方向測定システム。
【請求項24】
前記計算システムは、前記方向測定スポットにおける前記半導体ウェハの方向についての推定値を、時間領域から周波数領域に変換するように更に構成されており、前記周波数領域における前記半導体ウェハの前記方向についての前記推定値は、測定中のウェハモーダルダイナミクス及び位置安定性を示す、請求項19に記載のウェハ方向測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記述される実施形態は、X線計測システム及び方法に関し、より具体的には、測定正確度の改善のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/979,274号の米国特許法119条の優先権を主張し、この出願の主題は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
ロジックデバイス及びメモリデバイスのような半導体デバイスは、典型的には、標本に適用される一連の処理ステップによって製造される。半導体デバイスの様々な特徴及び複数の構造レベルは、これらの処理ステップによって形成される。例えば、とりわけリソグラフィは、半導体ウェハ上にパターンを生成することを含む1つの半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスの追加の例は、化学機械的研磨、エッチング、堆積、及びイオン注入が含まれるが、これに限定されない。複数の半導体デバイスが、単一の半導体ウェハ上に作製されてもよく、次いで個々の半導体デバイスに分離されてもよい。
【0004】
計測プロセスは、半導体製造プロセス中に様々なステップにおいて使用されることにより、ウェハ上の欠陥を検出して、より高い収率を促進する。散乱計測及び反射率測定実装を含む多数の計測ベースの技術、並びに関連する分析アルゴリズムが一般に使用されて、ナノスケール構造の限界寸法、膜厚、組成、及び別のパラメータを特徴付ける。
【0005】
従来、散乱計測限界寸法測定は、薄膜及び/又は反復型周期構造からなるターゲットにおいて実行される。デバイス製造中、これらの膜及び周期性構造は、典型的には、実際のデバイスの幾何学的形状及び材料構造又は中間設計を表す。デバイス(例えば、ロジック及びメモリデバイス)がより小さいナノメートルスケールの寸法に向かって変化するにつれて、特徴付けがより困難になる。複雑な3次元幾何学的形状及び多様な物理的特性を有する材料を組み込むデバイスが、特徴付け困難性に寄与する。例えば、最新のメモリ構造は、しばしば、高アスペクト比、光放射が底部層に浸透することを困難にする3次元構造である。赤外光から可視光までを利用する光学計測ツールは、透光性材料多くの層に浸透し得るが、十分な浸透深さを提供するより長い波長は、小さい異常に対して十分な感度を提供しない。それに加えて、複雑な構造(例えば、FinFET)を特徴付けるのに必要とされるパラメータの数が増加すると、パラメータ相関を増大させる。その結果、ターゲットを特徴付けるパラメータは、利用可能な測定値と確実に分離され得ないことが多い。
【0006】
一例では、より長い波長(例えば、近赤外)が使用されることにより、積層内の交互する材料のうちの1つとしてポリシリコンを利用する3DのFLASH(登録商標)装置についての浸透の問題を克服してきた。しかしながら、3DのFLASHのミラー状構造は、本質的に、照明が積層膜の中により深く伝搬するにつれて光強度を減少させる。これが、深さにおける感度損失及び相関問題を生じさせる。このシナリオでは、SCDは、高い感度及び低い相関を有する減少した組の計測寸法をうまく抽出することだけが可能である。
【0007】
別の一例では、不透明な高k材料が、最近の半導体構造にますます使用されてきている。光放射は、しばしば、これらの材料から構成された層に浸透し得ない。その結果、楕円偏光計又は反射率計のような薄膜散乱計測ツールを用いる測定が、ますます困難になっている。
【0008】
これらの課題に応じて、より複雑な光学計測ツールが開発されてきた。例えば、複数の照明角度、より短い照明波長、より広い範囲の照明波長、及び反射信号からのより完全な情報取得(例えば、より従来の反射率又は楕円偏光計信号に加えて複数のミュラー行列要素を測定すること)を有するツールが開発されている。しかしながら、これらのアプローチは、多くの進歩したターゲット(例えば、複雑な3D構造、10nmよりも小さい構造、不透明材料を使用する構造)、及び測定応用(例えば、ラインエッジラフネス及びライン幅ラフネス測定)の測定と関連する基本的な課題を確実には克服していない。
【0009】
原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型トンネル顕微鏡(STM)は、原子分解能を達成し得るが、それらは、標本の表面を探査し得るだけである。それに加えて、AFM及びSTM顕微鏡は、長い走査時間を必要とする。走査型電子顕微鏡(SEM)は、中間解像度レベルを達成するが、十分な深さまで構造に浸透し得ない。このように、高アスペクト比の孔は、十分に特徴付けられない。それに加えて、標本の必要とされる帯電は、結像性能に悪影響を及ぼす。
【0010】
浸透深さ問題を克服するために、TEM、SEM等のような従来の撮像技術は、集束イオンビーム(FIB)機械加工、イオンミリング、ブランケット又は選択的エッチング等のような破壊的試料調製技術と共に利用される。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)は、高解像度レベルを達成し、任意の深さを探査し得るが、TEMは、標本の破壊的な区分を必要とする。材料の除去及び測定のいくつかの反復は、一般に、3次元構造全体にわたって限界計測パラメータを測定するのに必要な情報を提供する。しかし、これらの技術は、試料破壊及び長いプロセス時間を必要とする。これらのタイプの測定を完成するための複雑さ及び時間は、エッチング及び計測ステップの変動に起因する大きい不正確性をもたらす。それに加えて、これらの技術は、位置決め誤差をもたらす多数の反復を必要とする。
【0011】
小角X線散乱計測(SAXS)システムは、挑戦的な測定用途を対象にするのに有望であることを示してきた。SAXS技術を限界寸法(CD-SAXS)及びオーバーレイ(OVL-SAXS)の測定に適用することについての様々な態様が、1)「High-brightness X-ray metrology」と題された、Zhuang及びFieldenへの特許文献1、2)「Model Building And Analysis Engine For Combined X-Ray And Optical Metrology」と題された、Bakeman、Shchegrov、Zhao、及びTanによる特許文献2、3)「Methods and Apparatus For Measuring Semiconductor Device Overlay Using X-Ray Metrology」と題された、Veldman、Bakeman、Shchegrov、及びMieherによる特許文献3、4)「Measurement System Optimization For X-Ray Based Metrology」と題された、Hench、Shchegrov、及びBakemanによる特許文献4、5)「X-ray Metrology For High Aspect Ratio Structures」と題された、Dziura、Gellineau、及びShchegrovによる特許文献5、並びに6)「Full Beam Metrology for X-Ray Scatterometry Systems」と題された、Gellineau、 Dziura、Hench、Veldman、及びZalubovskyによる特許文献6に記載されている。上記特許文献は、KLA-Tencor社(Milpitas、California、米国)に譲渡されている。
【0012】
SAXSはまた、材料及び別の非半導体関連アプリケーションの特徴付けにも適用されている。例示的なシステムは、Xenocs SAS(www.xenocs.com)、Bruker Corporation(www.bruker.com)、及びRigaku Corporation(www.rigaku.com/en)を含むいくつかの会社によって商業化されている。
【0013】
半導体構造のCD-SAXS計測に関する研究はまた、科学文献に記載されている。大部分の研究グループは、非常に大きいサイズ、コスト等のために、半導体製造設備において使用するのに適していない高輝度X線シンクロトロン源を利用してきた。そのようなシステムの一例は、非特許文献1に記載されている。より最近では、National Institute of Standards and Technology(NIST)におけるグループが、特許文献1に記載されたものと同様のコンパクトで明るいX線源を利用する研究を開始している。この研究は、非特許文献2に記載されている。
【0014】
一般に、ターゲットとのX線ビームの相互作用は、有効な測定を保証するために、計測システムによって較正され、それと整列されなければならない。例示的な特徴付けは、X線ビームのピーク強度をターゲット上に正確に配置すること、X線ビーム強度分布を測定すること、あるパーセンテージのビーム束のみが境界の外側にあるようにX線ビームの境界を同定すること、ウェハの傾斜を正確に推定すること等を含む。例示的な整列は、X線ビームの光学的視覚システムとの整列、X線ビームとツールの特定の機械的特徴(例えば、ウェハの回転軸等)との整列、入射X線ビームに対するウェハの角度整列等を含む。
【0015】
測定点でのウェハ傾斜は、X線散乱計測測定に大きく影響する。許容できないX線散乱計測測定誤差は、ウェハ上でのX線照明ビームの入射位置における入射X線ビームに対するウェハの方向の正確な知識がなければ生じる。
【0016】
残念ながら、測定中の半導体ウェハは、通常平坦ではない。半導体ウェハはしばしば、その表面にわたって、異なる厚さで配設された異なる材料を含む。この均質性の欠如は、ウェハ表面にわたる異なる機械的剛性と、ウェハ表面にわたる不均一な曲率と、をもたらす。その結果、300ミリメートルの直径を有する拘束されていないウェハは、しばしば、ボウ又は複雑な形状を有する。いくつかの例では、ウェハの表面は、理想的な平面から1ミリメートル超だけ変化しており、ウェハの表面の方向は、ウェハ表面上での位置に依存して±2度だけ変化することがある。
【0017】
ウェハ傾斜は、真空又は静電アクチュエータを利用するウェハチャックを使用することによって部分的に減少させられることにより、ウェハの裏側表面を機械的に平坦なウェハチャックと接触させてもよい。この制約は、ウェハの表面全体にわたるウェハ傾斜(すなわち、全体的なウェハ平坦度)を大幅に減少させるが、X線照明ビームがウェハに入射する(すなわち、局所的なウェハの平坦度)ところの比較的小さい領域にわたるウェハの平坦度を対象にすることがほとんどない。
【0018】
更に、ウェハの裏側表面にわたってウェハを支持するウェハチャックの使用は、反射型X線散乱計測システムにのみ適している。透過SAXSシステムは、散乱させられたX線が検出器に歪みなく伝搬することを可能にするために、エッジグリップウェハチャックの使用を必要とする。制限されたウェハを拘束する能力を用いて、透過SAXSシステムは、比較的非拘束な状態にあるウェハを測定しなければならない。
【0019】
典型的には、ウェハ傾斜は、距離センサを使用して推定される。距離センサは、ウェハ表面と基準フレームとの間の距離を測定する。ウェハは、距離センサに対して少なくとも3つの異なる位置に移動させられ、距離は、これらの位置のそれぞれにおいて測定される。補間が利用されて、ウェハ上の異なる位置における測定された距離測定値に基づいて、ウェハ表面の方向を推定する最良適合平面を推定する。
【0020】
このアプローチは、いくつかの欠点を有する。第1に、複数の異なる位置で距離をサンプリングすることは、時間がかかる。それぞれの測定は、ツールのスループットを低下させるステージ移動を必要とする。更に、ウェハ傾斜を推定するのに必要な一連のステージ移動は、特定の位置におけるウェハの同時X線測定を妨げる。第2に、最良適合平面によって提供される推定の正確度及び精度は、多くの実際の要因によって悪化させられる。測定中の半導体ウェハは、通常、ウェハ表面上に配設された異なる構造を含む。これらの構造は、理想的な平面(例えば、平均ウェハ表面平面)よりも高いか、又は低い場合がある。異なる高さを有する構造の存在によるウェハの高さの変動は、最良適合平面の方向についての推定値に誤差をもたらす。この誤差源の影響を低減するために、ウェハ表面上のより多くの位置が測定され、これらの点の全てからの距離が使用されて最良適合平面の方向を推定してもよい。十分な点を測定することによって、異なる構造からの高さ変動の影響が、平均化によって効果的に最小化される。しかしながら、より多くの位置において距離測定を行うことは、劇的に及び許容できないほどツールスループットを低下させる。最後に、X線測定点付近の半導体ウェハの実際の形状は、最良適合平面によって正確に推定されない複雑な形状であることが多い。その結果、最良適合平面を使用して特定の位置においてウェハ傾斜を推定することは、許容できない誤差を有するX線散乱計測測定値をもたらす不正確な角度測定値をもたらすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許第7,929,667号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0019097号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0117610号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0202193号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0167862号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0106735号明細書
【非特許文献】
【0022】
【文献】Lemaillet、Germer、Klineら、「Intercomparison between optical and x-ray scatterometry measurements of FinFET structures」、Proc.SPIE、v.8681、p.86810Q(2013)
【文献】「X-ray scattering critical dimensional metrology using a compact x-ray source for next generation semiconductor devices」、J.Micro/Nanolith.MEMS MOEMS 16(1)、014001(Jan-Mar 2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
将来の計測アプリケーションが、ますます小さくなる分解能要件、多重パラメータ相関、高アスペクト比構造を含むますます複雑になる幾何学的構造、及びますます増加する不透明材料の使用に基づく課題を示す。X線散乱計測測定点におけるウェハ方向を推定することについての既存の方法は、時間がかかり、正確度が制限される。従って、X線散乱計測システムにおけるウェハ傾斜の測定改善のための方法及びシステムが、高度な製造拠点の要件を満たすことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
X線散乱計測測定位置における又はその付近におけるウェハの方向を測定するための方法及びシステムが、本明細書に記載されている。
【0025】
一態様では、透過型小角X線散乱計測(T-SAXS)計測ツール100、又は反射型小角X線散乱計測(R-SAXS)計測ツールのようなX線散乱計測ベース計測システムが、ウェハ方向測定システムを含む。ウェハ方向測定システムは、介在するステージ移動によらずに、単一の測定に基づいて測定位置におけるウェハ方向の測定値を生成する。1つの点においてウェハの方向を測定することによって、測定値は、ウェハボウの影響を受けない。
【0026】
いくつかの実施形態では、方向測定スポットは、X線測定スポットと一致する。いくつかの別の実施形態では、方向測定スポットは、X線測定スポットと一致しない。しかし、ウェハ方向測定スポットがX線測定スポットから空間的に分離されるならば、過大な誤差を回避するために合理的に近接していなければならない。一例では、X線測定スポットから空間的に分離されたウェハ方向測定スポットは、X線測定スポットから500マイクロメートル以内に配置されるべきである。別の一例では、X線測定スポットから空間的に分離されたウェハ方向測定スポットは、X線測定スポットから100マイクロメートル以内に配置されるべきである。
【0027】
いくつかの実施形態では、X線散乱計測測定とウェハ方向測定とが、同時に実行される。
【0028】
更なる一態様では、ウェハ方向測定システムによって検出された信号がフィルタリングされて、測定位置におけるウェハ表面の実際の方向の追跡を改善する。いくつかの実施形態では、検出された信号が時間にわたって平均化されることにより、裏側のウェハ欠陥及び信号偏差の影響をフィルタリングで除去する。いくつかの別の実施形態では、検出された信号は、検出器上のスポットの予想された形状に基づいて空間的にフィルタリングされる。
【0029】
いくつかの実施形態では、検出された信号は、時間にわたって収集されて、周波数領域に変換される。周波数成分の振幅は、測定中のウェハの位置安定性を示し、周波数成分自体は、測定中のウェハのモーダル特性を示す。このようにして、ウェハ方向測定システムが利用されて、測定中のウェハモーダルダイナミクス及び位置安定性を監視する。
【0030】
更なる一態様において、ウェハ方向測定システムが較正されて、入射X線ビームに対するウェハの方向を同定する。
【0031】
いくつかの実施形態では、多くの測定部位における測定中のウェハの表側までの距離を測定する距離センサが利用されて、方向測定スポットにおけるウェハの方向を推定する。距離センサによって推定された方向は、方向測定スポットにおいてウェハ方向測定システムの測定された方向として取り扱われる。
【0032】
いくつかの別の実施形態では、X線計測システム自体が利用されて、方向測定スポットにおけるウェハの方向を推定する。ウェハは、仮定された垂直入射の方向の周りでの一連の方向を通して回転させられる。測定された回折パターンが分析されて、回折パターンがそれについて対称である方向を見つける。この方向は、ゼロ角度、すなわち、入射X線照明ビームに垂直であるウェハの方向角として取り扱われる。ゼロ角度は、方向測定スポットにおけるウェハ方向測定システムによって測定されたゼロ角度として取り扱われる。
【0033】
一般に、ウェハ方向測定システムの較正は、ウェハ表面上でのそれぞれの測定部位において、又は1つ又は複数の測定部位において実行されてもよい。
【0034】
別の更なる一態様では、X線ベースの計測システムのウェハ位置決めシステムが、本明細書に記載されたように、ウェハ方向測定システムによって提供された測定値に基づいて、測定中のウェハを位置決めする。
【0035】
いくつかの実施形態では、ウェハ位置決めシステムは、ウェハ方向測定システムによって提供されたウェハ方向測定に基づいて閉ループ方式で制御される。いくつかの実施形態では、ウェハ位置決めシステムは、ウェハ方向測定システムによって提供されるウェハ方向測定値に基づいて、開ループ方式で制御される。一例では、ウェハ上の多くの異なる測定部位におけるウェハの方向についてのマップが、それぞれの異なる測定部位においてウェハ方向測定システムによって実行された方向測定に基づいて生成される。マップが使用されて、それぞれの測定部位において実行されるそれぞれのX線散乱計測測定に利用される方向設定値を補正する。
【0036】
いくつかの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、X線照明源が装着される基準フレームに装着される。これらの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対する方向を直接的に測定する。
【0037】
いくつかの別の実施形態では、ウェハ方向測定システムは、X線照明源に対して移動するステージ基準フレームに装着される。これらの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対する方向を間接的に測定する。
【0038】
本明細書に記載されたようなウェハ方向測定システムは、透過型X線計測システム、反射型X線計測システム、又は反射モード及び透過モードの両方で動作可能なX線散乱計測ベースの計測システムの部分として実装されてもよい。
【0039】
以上は要約であり、それで、必要に応じて、詳細の簡略化、一般化、及び省略を含み、従って、当業者であれば、要約が単に例示的であり、いかなる形であれ限定的ではないことを理解するであろう。本明細書に記載されたデバイス及び/又はプロセスの別の態様、発明的特徴、及び利点が、本明細書に記載された限定的でない詳細な説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】少なくとも1つの新規な態様のウェハ方向測定システム200を含む透過型小角X線散乱計測(T-SAXS)計測ツール100の例示的な図である。
【
図2】1つの構成におけるビーム成形スリット機構の端面図である。
【
図3】別の構成におけるビーム成形スリット機構の端面図である。
【
図4】角度φ及びθによって記述された特定の方向においてウェハに入射するX線照明ビームを示す図である。
【
図5】X線照明ビームがウェハに入射する位置まで移動させられたウェハステージを有する標本位置決めシステムを示す図である。
【
図6】測定中のウェハが方向を変えるときに検出器の感光面における反射された光の入射位置の変化を示す図である。
【
図7】測定中のウェハがz位置を変えるときに検出器の感光面における反射された光の入射位置の鈍感性を示す図である。
【
図8】一実施形態においてウェハ方向測定スポットと一致するX線測定スポットを示す図である。
【
図9】別の一実施形態においてウェハ方向測定スポットと一致するX線測定スポットを示す図である。
【
図10】一実施形態においてウェハ方向測定スポットから空間的に分離されたX線測定スポットを示す図である。
【
図11】少なくとも1つの新規な態様のウェハ方向測定システム200を含む反射型小角X線散乱計測(R-SAXS)計測ツール300の例示的な図である。
【
図12】本明細書に記載された方法に従ってX線散乱計測データに基づいて標本パラメータ値を分解するように構成されたモデル構築及び分析エンジンを示す図である。
【
図13】本明細書に記載されたようなウェハ上の方向測定スポットにおけるウェハの方向を測定する例示的な方法400を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
参照が、ここで本発明の背景の例及びいくつかの実施形態に対して詳細になされ、それらについての例が添付図面に例示されている。
【0042】
X線散乱計測測定位置での又はその近傍でのウェハの方向を迅速で正確に測定するための方法及びシステムが本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、ウェハ表面上の特定の位置での方向測定とX線散乱計測測定とが、同時に実行される。限定的でない例として、本明細書に記載された方向測定システム及び技術は、透過型小角X線散乱計測(T-SAXS)計測システム、又は反射型小角X線散乱計測(R-SAXS)計測システムの部分として利用される。
【0043】
半導体製造環境内での実用的なX線散乱計測測定は、小さいビームスポットサイズ(例えば、有効照明スポットを横切って50~700マイクロメートル)を有する標本(例えば、半導体ウェハ)の表面に対して、入射角及び方向角の広い範囲にわたる測定を必要とする。測定点におけるウェハの方向についての厳密な測定が、正確なX線測定結果を達成するために必要である。それに加えて、入射X線ビームに対してウェハの測定された方向を実際のウェハの方向に正確に関連付ける較正は、入射角及び方向角の全範囲にわたって入射X線ビームに対するウェハ方向を正確に決定するために必要とされる。
【0044】
図1は、少なくとも1つの新規態様のウェハ方向測定システム200を含む、標本の特性を測定するためのT-SAXS測定ツール100の一実施形態を示す。
図1に示すように、システム100は、照明ビームによって照明された標本101のX線測定スポット102にわたってT-SAXS測定を実行するために使用されてもよい。
【0045】
図示された実施形態では、計測ツール100は、X線照明源110と、集束光学系111と、ビーム発散制御スリット112と、中間スリット113と、ビーム成形スリット機構120と、を含むX線照明サブシステム125を含む。X線照明源110は、T-SAXS測定に適したX線放射を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、X線照明源110は、0.01ナノメートル乃至1ナノメートルの波長を生成するように構成されている。一般に、高スループットのインライン計測を可能にするのに十分な磁束レベルで高輝度X線を生成することが可能な任意の好適な高輝度X線照明源が、T-SAXS測定のためのX線照明を供給することが意図されてもよい。いくつかの実施形態では、X線源が、異なる選択可能な波長でX線源がX線放射を送達することを可能にする同調可能モノクロメータを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、15keVを超える光子エネルギを有する放射線を放出する1つ又は複数のX線源が利用されることにより、X線源がデバイス全体及びウェハ基板を通る十分な透過を可能にする波長の光を供給することを保証する。限定的でない例として、粒子加速器源、液体アノード源、回転アノード源、固定固体アノード源、徴小焦点源、徴小焦点回転アノード源、プラズマベース源、及び逆コンプトン源のうちのいずれかが、X線照明源110として利用されてもよい。一例では、Lyncean Technologies社(米国、カリフォルニア州、Palo Alto)から入手可能な逆コンプトン源が考えられてもよい。逆コンプトン源は、光子エネルギの範囲にわたってX線を生成することが可能であり、それによってX線源が異なる選択可能な波長でX線放射を送達することを可能にするという付加的な利点を有する。
【0047】
例示的なX線源が、固体又は液体のターゲットに衝突してX線放射を刺激するように構成された電子ビーム源を含む。高輝度の液体金属X線照明を生成するための方法及びシステムが、2011年4月19日にKLA-Tencor社に発行された米国特許第7,929,667号に記載されており、この特許の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
X線照明源110が、有限の横方向寸法(すなわち、ビーム軸に直交する非ゼロ寸法)を有する源領域にわたってX線放出を生成する。集束光学系111は、標本101上に配置された計測ターゲット上に源放射線を集束させる。有限の横方向源寸法は、源の縁から来る光線117によって画定されるターゲット上の有限のスポットサイズをもたらす。いくつかの実施形態では、集束光学系111は、楕円形状の集束光学要素を含む。
【0049】
ビーム発散制御スリット112は、集束光学系111とビーム成形スリット機構120との間のビーム経路内に配置されている。ビーム発散制御スリット112は、測定中の標本に提供される照明の発散を制限する。追加の中間スリット113が、ビーム発散制御スリット112とビーム成形スリット機構120との間のビーム経路内に配置されている。中間スリット113は、追加のビーム成形を提供する。一般には、しかし、中間スリット113は、任意選択である。
【0050】
ビーム成形スリット機構120は、標本101の直前のビーム経路内に配置されている。一態様では、ビーム成形スリット機構120のスリットは、標本101に密に近接して配置されることにより、有限の源サイズによって画定されたビーム発散による入射ビームスポットサイズの拡張を最小にする。一例では、有限の源サイズによって形成された影によるビームスポットサイズの拡大は、10マイクロメートルのX線源サイズ、及びビーム成形スリットと標本101との間の25ミリメートルの距離に対して約1マイクロメートルである。
【0051】
いくつかの実施形態では、ビーム成形スリット機構120は、複数の独立に作動させられるビーム成形スリットを含む。一実施形態では、ビーム成形スリット機構120は、独立に作動させられる4つのビーム成形スリットを含む。これらの4つのビーム成形スリットは、入射ビーム115の一部分を効果的に遮断し、ボックス形状の照明断面を有する照明ビーム116を生成する。
【0052】
図2及び3は、2つの異なる構成の、
図1に示すビーム成形スリット機構120についての端面図である。
図2及び3に示すように、ビーム軸は、描画ページに垂直である。
図2に示すように、入射ビーム115は大きい断面を有する。いくつかの実施形態では、入射ビーム115は、約1ミリメートルの直径を有する。更に、ビーム成形スリット126~129内の入射ビーム115の位置は、ビームポインティング誤差のために約3ミリメートルの不安定性を有し得る。入射ビームのサイズ及びビーム位置の不安定性に適応するために、それぞれのスリットは、約6ミリメートルの長さLを有する。
図2に示すように、それぞれのスリットは、ビーム軸に垂直な方向に移動可能である。
図2の例示において、スリット126~129は、ビーム軸から最大距離のところに配置されている(すなわち、スリットは、完全に開いており、それらは、ビーム成形スリット機構120を通過する光を制限していない)。
【0053】
図3は、入射ビーム115の一部分を遮蔽する位置にあることにより、測定中の標本に送達される出射ビーム116が縮小されたサイズ及び良好に画定された形状を有するビーム成形スリット機構120のスリット126~129を示している。
図3に示すように、スリット126~129のそれぞれは、ビーム軸に向かって内側に移動することにより、所望の出力ビーム形状を達成する。
【0054】
スリット126~129は、散乱を最小にし、効果的に入射放射を遮蔽する材料から構成されている。例示的な材料には、ゲルマニウム、ガリウム砒素、リン化インジウム等のような単結晶材料が含まれる。典型的には、スリット材料は、鋸で切られるのではなく、結晶学的方向に沿って分割されることにより、構造境界を横切る散乱を最小にする。それに加えて、スリットは、入射ビームに対して方向付けられることにより、入射放射線とスリット材料の内部構造との間の相互作用が最小量の散乱を生成する。結晶は、高密度材料(例えば、タングステン)でできているそれぞれのスリットホルダに取り付けられていることにより、スリットの1つの側においてX線ビームを完全に遮断する。いくつかの実施形態では、それぞれのスリットが、約0.5ミリメートルの幅と、約1~2ミリメートルの高さと、を有する矩形断面を有する。
図2に示すように、スリットの長さLは、約6ミリメートルである。
【0055】
一般に、X線光学系は、X線放射を整形して、これを標本101に方向付ける。いくつかの例では、X線光学系は、標本101に入射しているX線ビームを単色化するためのX線モノクロメータを含む。いくつかの例では、X線光学系は、多層X線光学系を使用して、標本101のX線測定領域102上に1ミリラジアン未満の発散にまでX線ビームをコリメート又は集束させる。これらの例では、多層X線光学系はまた、ビームモノクロメータとして機能する。いくつかの実施形態では、X線光学系は、1つ又は複数のX線コリメートミラー、X線アパーチャ、X線ビームストップ、屈折X線光学系、ゾーンプレート等の回折光学系、モンテル光学系、グレージング入射楕円ミラー等の鏡面X線光学系、中空細管X線導波路等のポリキャピラリ光学系、多層光学系又はシステム、或いはこれらの任意の組合せを含む。更なる詳細が、米国特許出願公開第2015/0110249号に記載されており、その内容は全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0056】
X線検出器119は、標本101から散乱させられたX線放射114を収集し、T-SAXS測定様式に従う入射X線放射に敏感である標本101の特性を示す出力信号135を生成する。いくつかの実施形態では、散乱させられたX線114は、X線検出器119によって収集され、一方、標本位置決めシステム140は、標本101を位置決めして方向付けることにより角度分解された散乱X線を生成する。
【0057】
いくつかの実施形態では、T-SAXSシステムは、高ダイナミックレンジ(例えば、105よりも大きい)を有する1つ又は複数の光子計数検出器を含む。いくつかの実施形態では、単一光子計数検出器は、検出された光子の位置及び数を検出する。
【0058】
いくつかの実施形態では、X線検出器は、1つ又は複数のX線光子エネルギを分解して、標本の特性を示すそれぞれのX線エネルギ成分について信号を生成する。いくつかの実施形態では、X線検出器119は、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ比例計数器、ガス充填比例計数器、シンチレータ、又は蛍光物質のうちのいずれかを含む。
【0059】
このようにして、検出器内でのX線光子相互作用は、ピクセル位置及びカウント数に加えて、エネルギによって識別される。いくつかの実施形態では、X線光子相互作用が、X線光子相互作用のエネルギを所定の上側閾値及び所定の下側閾値と比較することによって、識別される。一実施形態では、この情報は、更なる処理及び記憶のために出力信号135を介して計算システム130に通信される。
【0060】
更なる態様において、T-SAXSシステムが利用されて、散乱光の1つ又は複数の回折次数に基づいて、標本の特性(例えば、構造パラメータ値)を決定する。
図1に示すように、計測ツール100は、計算システム130を含み、計算システム130が利用されて、検出器119によって生成された信号135を取得し、及び取得された信号に少なくとも部分的に基づいて標本の特性を決定する。
【0061】
いくつかの例では、T-SAXSに基づく計測は、測定されたデータによって事前に決定された測定モデルの逆解法によって試料の寸法を決定することを含む。測定モデルは、少数の(10のオーダーの)調整可能なパラメータを含み、そして標本の幾何学的形状及び光学特性、並びに測定システムの光学特性を表す。逆解法の方法は、モデルベースの回帰、トモグラフィ、機械学習、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これに限定されない。このようにして、ターゲットプロファイルパラメータが、測定された散乱X線強度とモデル化結果との間の誤差を最小にするパラメータ化された測定モデルの値について解くことによって、推定される。
【0062】
測定されたパラメータ値の精度及び正確度を高めるために、入射角及び方向角の広い範囲において測定を行うことが望ましい。このアプローチは、分析に利用可能なデータセットの数及び多様性を、面方向の範囲外の様々な大きい角度を含むように拡張することによって、パラメータ間の相関を減少させる。例えば、直角方向において、T-SAXSは、特徴の限界寸法を分解することができるが、特徴の側壁角度及び高さに大きく無反応である。しかしながら、平面を外れた広い範囲の角度方向にわたって測定データを収集することによって、特徴の側壁角度及び高さが分解され得る。別の例では、入射角及び方向角の大きい範囲において実行される測定が、深さ全体を通して高アスペクト比構造を特徴付けるのに十分な分解能及び浸透深さを提供する。
【0063】
回折放射の強度の測定値が、ウェハ表面法線に対するX線入射角の関数として収集される。多重回折次数内に含まれる情報は、典型的には、考慮中のそれぞれのモデルパラメータ同士間で一意的である。このように、X線散乱は、小さい誤差及び低減されたパラメータ相関を有する関心のあるパラメータの値についての推定結果をもたらす。
【0064】
半導体ウェハ101の表面法線に対する照射X線ビーム116のそれぞれの方向は、X線照明ビーム115に対するウェハ101の任意の2つの角回転、又はその逆によって記述される。一例では、方向は、ウェハに固定された座標系に関して記述され得る。
図4は、入射角θ及び方向角φによって記述された特定の方向においてウェハ101に入射するX線照明ビーム116を示す。座標フレームXYZは、計測システム(例えば、照明ビーム116)に固定され、座標フレームX’Y’Z’は、ウェハ101に固定されている。Y軸は、ウェハ101の表面と平面内で整列している。X及びZは、ウェハ101の表面と整列していない。Z’は、ウェハ101の表面に垂直な軸と整列しており、X’及びY’は、ウェハ101の表面と整列した平面内にある。
図4に示すように、X線照明ビーム116は、Z軸と整列しており、従ってXZ平面内にある。入射角θは、XZ平面内のウェハの表面法線に対するX線照明ビーム116の方向を記述する。更に、方向角φは、X’Z’平面に対するXZ平面の方向を記述する。それと共に、θ及びφは、ウェハ101の表面に対するX線照明ビーム116の方向を一意的に画定する。この例では、ウェハ101の表面に対するX線照明ビームの方向は、ウェハ101の表面に垂直な軸(すなわち、Z’軸)の周りの回転と、ウェハ101の表面と整列した軸(すなわち、Y軸)の周りの回転と、によって記述される。いくつかの別の例では、ウェハ101の表面に対するX線照明ビームの方向は、ウェハ101の表面と整列した第1軸、及びウェハ101の表面と整列し、第1軸に垂直な別の軸の周りの回転によって記述される。
【0065】
一態様では、計測ツール100は、照明ビーム116に対して標本101を6自由度で能動的に位置決めするように構成された標本位置決めシステム140を含む。それに加えて、標本位置決めシステム101は、照明ビーム116に対して標本101を整列させ、大きい範囲の入射角(例えば、少なくとも70度)及び方向角(例えば、少なくとも190度)にわたって標本101を方向付ける。いくつかの実施形態では、標本位置決めシステム140は、標本101の表面と平面内で整列して、大きい回転角範囲(例えば、少なくとも70度)にわたって標本101を回転させるように構成されている。このようにして、標本101の角分解測定値が、標本101の表面上の任意の数の位置及び方向にわたって計測システム100によって収集される。一例では、計算システム130は、標本101の所望の位置を示すコマンド信号(図示せず)を標本位置決めシステム140に通信する。それに応じて、標本位置決めシステム140は、標本101の所望の位置決めを達成するために、標本位置決めシステム140の様々なアクチュエータへのコマンド信号を生成する。
【0066】
図5は、一実施形態における標本位置決めシステム140を示す。一態様では、標本位置決めシステム140は、重力ベクトルに対してウェハ101を垂直に支持しながら(すなわち、重力ベクトルがウェハ表面とほぼ同一面内にある)、照明ビーム116に対するウェハ101の位置の6自由度の全てにおけるアクティブ制御を提供する。標本位置決めシステム140は、ウェハ101の縁でウェハ101を支持することにより、照明ビーム116が、ウェハ101を再装着することなく、ウェハ101の活性領域の任意の部分にわたってウェハ101を透過することを可能にする。ウェハ101をその縁で垂直に支持することによって、ウェハ101の重力に起因した弛みが、効果的に緩和される。
【0067】
図5に示すように、標本位置決めシステム140は、ベースフレーム141と、横方向整列ステージ142と、ステージ基準フレーム143と、ステージ基準フレーム143に装着されたウェハステージ144と、を含む。基準のために、{X
BF,Y
BF,Z
BF}座標フレームは、ベースフレーム141に取り付けられ、{X
NF,Y
NF,Z
NF}座標フレームは、横方向整列ステージ142に取り付けられ、{X
RF,Y
RF,Z
RF}座標フレームは、ステージ基準フレーム143に取り付けられ、{X
SF,Y
SF,Z
SF}座標フレームは、ウェハステージ144に取り付けられている。ウェハ101は、アクチュエータ150A~Cを含むチップ傾斜Zステージ156によってウェハステージ144上に支持される。チップ傾斜Zステージ156に装着された回転ステージ158は、照明ビーム116に対して方向角φの範囲にわたってウェハ101を方向付ける。示している実施形態では、3つの線形アクチュエータ150A~Cは、ウェハステージ144及び支持回転ステージ158に装着され、順にウェハ101を支持する。
【0068】
アクチュエータ145は、XBF軸に沿ってベースフレーム141に対して横方向整列ステージ142を並進させる。回転アクチュエータ146は、YNF軸と整列した回転軸153の周りに横方向整列ステージ142に対してステージ基準フレーム143を回転させる。回転アクチュエータ146は、照明ビーム116に対して、入射角θの範囲にわたってウェハ101を方向付ける。ウェハステージアクチュエータ147及び148は、XRF軸及びYRF軸に沿ってステージ基準フレーム143に対してウェハステージ144をそれぞれ並進させる。
【0069】
一態様では、ウェハステージ144は、開放アパーチャ、2軸(XY)線形積層ステージである。開放アパーチャは、測定ビームがウェハ(例えば、300ミリメートルのウェハ)全体のうちの任意の部分を透過することを可能にする。ウェハステージ144は、Y軸ステージが回転軸153とほぼ平行な方向に延在するように配列される。更に、Y軸ステージは、重力ベクトルとほぼ整列している方向に延在する。
【0070】
アクチュエータ150A~Cは、ZSF方向にウェハステージ144に対して回転ステージ158及びウェハ101を並進させ、そしてXSF-YSF平面と同一平面の軸の周りにウェハステージ144に対して回転ステージ158及びウェハ101を倒して傾斜させるように協調して動作する。回転ステージ158のアクチュエータ149は、ウェハ101の表面に垂直な軸の周りにウェハ101を回転させる。更なる態様では、回転ステージ158のフレームは、運動学的装着要素157A~Cを含む運動学的装着システムによってアクチュエータ150A~Cにそれぞれ結合されている。一例では、それぞれの運動学的装着要素157A~Cは、対応するアクチュエータに取り付けられた球体と、回転ステージ158に取り付けられたV字形スロットと、を含む。それぞれの球体は、対応するV字形スロットと2点接触する。それぞれの運動学的装着要素は、アクチュエータ150A~Cに対する回転ステージ158の運動を2自由度で集合的に拘束し、3つの運動学的装着要素157A~Cは、アクチュエータ150A~Cに対する回転ステージ158の運動を6自由度で拘束する。それぞれの運動学的結合要素は、球体が常に対応するV字形スロットと接触したままであることを確実にするように前負荷されている。いくつかの実施形態では、前負荷は、重力、機械的ばね機構、又はそれらの組み合わせによって提供される。
【0071】
別の更なる態様では、回転ステージ158は、開放開口の回転ステージである。開放開口は、測定ビームがウェハ(例えば、300mmウェハ)全体のうちの任意の部分を透過することを可能にする。回転ステージ158は、その回転軸が回転軸153に対してほぼ垂直であるように配列されている。更に、回転ステージ158の回転軸は、重力ベクトルにほぼ垂直である。ウェハ101は、エッジグリッパを介して回転ステージ158に固定されることにより、十分なウェハ網羅率に最小のエッジイクスルージョンを提供する。
【0072】
要約すると、標本位置決めシステム140は、照明ビーム116に対して6自由度でウェハ101の位置を能動的に制御することができることにより、照明ビーム116が、ウェハ101の表面上の任意の位置(すなわち、XRF及びYRF方向に少なくとも300ミリメートルの範囲)に入射してもよい。回転アクチュエータ146は、照明ビーム116に対してステージ基準フレーム143を回転させることができることにより、照明ビーム116は、大きい(例えば、2度よりも大きい)範囲の入射角のうちのいずれかでウェハ101の表面に入射してもよい。一実施形態では、回転アクチュエータ146は、少なくとも60度の範囲にわたってステージ基準フレーム143を回転させるように構成されている。ウェハステージ144に装着された回転アクチュエータ158が、照明ビーム116に対してウェハ101を回転させることができることにより、照明ビーム116は、広い範囲(例えば、少なくとも90度の回転範囲)の方向角のうちのいずれかにおいてウェハ101の表面に入射してもよい。いくつかの実施形態では、方向角の範囲は、少なくとも190度の回転範囲である。
【0073】
いくつかの別の実施形態では、横方向整列ステージ142が除去され、ステージ基準フレーム143が回転アクチュエータ146によってベースフレーム141に対して回転させられる。これらの実施形態では、X線照明システムは、X線照明システムの1つ又は複数の光学要素を移動させる1つ又は複数のアクチュエータを含み、該X線照明システムは、X線照明ビーム116にベースフレーム141に対して、例えば、X
BF方向に移動させる。これらの実施形態では、本明細書に記載されるような較正の目的のためのステージ基準ステージ143の移動は、X線照明システムの1つ又は複数の光学要素の移動によって置換されて、例えば、回転軸153に対して所望の位置までX線照明ビームを移動させる。
図1に示す実施形態では、計算システム130は、ベースフレーム141に対してX線放出を再方向付けするためにアクチュエータサブシステム111’にコマンド信号138を通信して、X線照明サブシステム125の1つ又は複数の要素を移動させることによって所望のビーム方向を達成する。図示された実施形態では、アクチュエータサブシステム111’は、集束光学系111を移動させて、ベースフレーム141に対してX線放出を再方向付けし、それで回転軸153に対してX線放出を再配置する。
【0074】
一態様では、
図1に示すT-SAXS計測ツール100又は
図11に示すR-SAXS計測ツール300のようなX線散乱計測ベースの計測システムが、
図1及び11に示すようなウェハ方向測定システム200を含む。ウェハ方向測定システム200は、X線散乱計測測定位置におけるウェハの方向を迅速及び正確に測定する。
【0075】
図1に示すように、ウェハ方向測定システム200は、ウェハ101上のX線測定領域102に方向付けられた照明ビーム202を放出するレーザ照明源201を含む。照明ビーム202に応じてウェハ101から反射された光203は、集束光学系204によって集束され、そして検出器205において検出される。
【0076】
図1に示すように、ウェハ方向測定システム200の照明源は、レーザベースの照明源である。レーザベースの照明源が有利であり、その理由は、レーザベースの照明源によって生成された照明ビーム202が、実質的にコリメートされるからである。このことは、照明源をウェハ上の方向測定位置から相対的に遠く離して配置することを可能にする。このことは、必要がない場合に、ウェハ上のX線測定スポットに極めて近接して配置されなければならないX線散乱測定システムの別の光学構成要素を収容することが望ましい場合が多い。しかしながら、一般に、レーザベースでない照明源がまた、本特許文献の範囲内で意図されてもよい。例えば、LED光源、白熱光源等が利用されてもよい。これらの実施形態では、1つ又は複数の集束光学系が照明ビーム経路内に配置されることにより、照明源によって生成された光をウェハ上の方向測定スポット上に集束させる。
【0077】
図1に示すように、レーザ照明源201は、計算システム130に通信可能に結合されている。計算システム130は、コマンド信号207をレーザ照明源201に通信して、レーザ照明源201の出力を制御する。
【0078】
図1に示すように、照明ビーム202は、ウェハ上の方向測定スポットを照明する。いくつかの実施形態では、方向測定スポットは、最大範囲の方向に500マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、方向測定スポットは、最大範囲の方向に200マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、方向測定スポットは、最大範囲の方向に100マイクロメートル未満である。
【0079】
いくつかの実施形態では、検出器205は、カメラ(例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等)のような2次元撮像デバイスである。
図1に示す例では、照明ビーム202は、ウェハの裏面から反射し、反射された光203は、カメラの感光面上に集束させられる。検出器205の感光面は、集束光学系204の焦点に配置される。いくつかの実施形態では、集束光学系204の焦点距離は、75ミリメートルよりも大きい。
【0080】
検出器205は、計算システム130に通信可能に結合される。検出器205は、検出器205によって検出された画像を示す信号206を通信する。計算システム130は、画像信号206に基づいて検出器205に入射する反射ビームの入射位置を決定する。それに加えて、計算システム130は、反射ビームの入射位置と、レンズ204の焦点距離、検出器205のピクセルサイズ等のような既知のシステムパラメータとに基づいて、ウェハ101の方向を推定する。
【0081】
図6に示すように、ウェハ101が方向を変化させるとき、検出器205の感光面上での反射光203の入射位置が変化する。幾何学的には、ウェハ101の機械方向角の変化θは、入射ビーム202と反射ビーム203との間の光角の変化2θを生じさせ、これは機械角の変化の2倍である。
【0082】
図6は、実線によって示された公称位置にあるウェハ101を示す。反射光203は、検出器205上の特定の位置に入射している。別の一例では、ウェハ101は、公称位置から時計方向に回転させられている。この位置にあるウェハは、ウェハ101”として示され、ウェハ101”から反射された光は、反射光203”として示されている。
図6に示すように、反射光203”の入射位置は、反射光203の入射位置からシフトされている。同様に、別の一例では、ウェハ101は、公称位置から反時計回りに回転させられている。この位置のウェハは、ウェハ101’として示され、ウェハ101’から反射された光は、反射光203’として示されている。
図6に示すように、反射光203’の入射位置は、反射光203”の入射位置のシフトの反対の方向に、反射光203の入射位置からシフトされている。従って、検出器205上の反射光の入射位置の変化は、ウェハ101の方向の変化を示す。較正された場合、検出器205上の反射光の入射位置は、ウェハ101の表面上の測定点におけるウェハ101の方向を示す。
【0083】
図7に示すように、ウェハ101がウェハ101の表面に垂直な方向に並進するとき、検出器205の感光面上の反射光203の入射位置は変化しない。それで、ウェハ方向測定システム200によって提供されるウェハ方向測定は、ウェハ101のz位置(時には焦点位置と呼ばれる)に鈍感である。
図7は、実線によって示す公称位置にあるウェハ101を示す。反射された光203は、検出器205上の特定の位置に入射する。別の一例では、ウェハ101は、描画ページ上に見られるように、公称位置から上方に移動させられる。この位置のウェハは、ウェハ101’として示され、ウェハ101’から反射された光は反射光203’として示されている。
図7に示すように、反射光203’の入射位置は、反射光203の入射位置からシフトされていない。同様に、別の例では、ウェハ101は、描画ページ上で見て公称位置から下方に移動させられる。この位置でのウェハは、ウェハ101’として示され、ウェハ101”から反射された光は、反射光203”として示されている。
図7に示すように、反射光203”の入射位置は、反射光203の入射位置からシフトされていない。ウェハがウェハの表面に垂直な方向に並進するとき、反射されたビームは、焦点レンズを横切って並進する。理想的には、焦点レンズに入る平行光線は、同じスポットに集束させられる。その結果、ウェハ方向システム200は、ウェハ表面に垂直な方向のウェハ位置に鈍感である。実際に、焦点レンズ204は、不完全なものであるけれども、レンズ収差は、ウェハの表面に垂直な方向のウェハ並進に対するウェハ方向システム200の感度が無視できるほど十分に低い。
【0084】
図1に示すように、ウェハ方向測定システム200は、介在するステージ移動によらずに、単一の測定に基づいて測定位置におけるウェハ方向についての測定値を生成する。このようにして、ウェハ方向測定システム200は、過剰な遅延を伴わずにウェハ方向についての測定値を生成する。それに加えて、ウェハ方向測定システム200は、測定位置におけるウェハ方向の測定値がウェハ上の異なる位置での複数の測定値ではなく、その位置での単一の測定値に基づいているので、ウェハボウの影響を受けない。
【0085】
いくつかの実施形態では、方向測定スポットは、X線測定スポットと一致している。換言すれば、X線測定スポットとウェハ方向測定スポットとは、ウェハ表面の領域にわたって空間的に重なっている。これらの実施形態のうちのいくつかでは、X線散乱計測測定とウェハ方向測定とが同時に実行される。
【0086】
図8は、一実施形態でのウェハ方向測定スポットと一致しているX線測定スポットを示す。
図8に示すように、X線測定スポット102は、ウェハ方向測定スポット208よりも大きい。しかし、ウェハの方向測定(すなわち、ウェハ方向測定スポット208)の対象となるウェハ表面の領域は、X線測定スポット102と一致している。いくつかの例では、ウェハ方向測定スポットは、直径が100マイクロメートルであり、X線測定スポット102は、直径が100マイクロメートルよりも大きい。
【0087】
図9は、別の一実施形態におけるウェハ方向測定スポットと一致しているX線測定スポットを示す。
図9に示すように、X線測定スポット102は、ウェハ方向測定スポット208よりも小さい。しかし、X線測定の対象となるウェハ表面の領域(すなわち、X線測定スポット102)は、ウェハ方向測定スポット208と一致している。いくつかの例では、ウェハ方向測定スポットは、直径が100マイクロメートルであり、X線測定スポット102は、直径が100マイクロメートル未満である。
【0088】
いくつかの別の実施形態では、方向測定スポットは、X線測定スポットと一致していない。換言すれば、X線測定スポットとウェハ方向測定スポットとは、ウェハ表面の領域にわたって空間的に重複していない。これらの実施形態のうちのいくつかでは、X線散乱計測測定とウェハ方向測定とが、同時に実行される。
【0089】
図10は、一実施形態での、ウェハ方向測定スポットから空間的に分離されているX線測定スポットを示す。
図10に示すように、4つの異なるウェハ方向測定スポットが、X線測定スポット102を取り囲む異なる位置においてウェハ101上に同時に投影される。一実施形態では、開口(図示せず)が、レーザ照明源201からウェハ101までの照明ビーム経路内に配置されている。開口は、
図10に示すように、照明ビーム202をウェハ101に入射する4つのビームに分割する。これらの4つの位置から反射された光は、検出器205上に集束させられる。検出器205上への4つの反射されたビームの入射位置は、X線測定スポット102におけるウェハ101の方向を推定するために追跡される。一般に、X線測定スポットに極めて近接した任意の数の照明スポットが用いられて、X線測定スポットにおけるウェハ方向を測定してもよい。しかしながら、ウェハ方向測定スポットがX線測定スポットから空間的に分離されている場合、過剰な誤差を回避するために合理的に近接していなければならない。一例では、X線測定スポットから空間的に分離されたウェハ方向測定スポットは、X線測定スポットから500マイクロメートル以内に配置されるべきである。別の一例では、X線測定スポットから空間的に分離されたウェハ方向測定スポットは、X線測定スポットから100マイクロメートル以内に配置されるべきである。
【0090】
更なる一態様では、計算システム130は、検出器205から収集された画像信号をフィルタリングして、測定位置208におけるウェハ表面の実際の方向の追跡を改善するように構成されている。いくつかの実施形態では、計算システム130は、時間にわたって画像信号206を平均化(例えば、移動平均フィルタリング)して、裏側ウェハの欠陥及び信号偏差の影響をフィルタリングで除去する。一般に、ウェハの裏側は、反射光203のスプリアス方向転換及び検出器205上での反射光203の入射位置の移動を生じさせる汚染物質(例えば、ダスト粒子)を含む。検出器205によって収集された画像を時間平均することによって、これらのスプリアス運動が効果的にフィルタリングで除去される。いくつかの別の実施形態では、計算システム130は、画像信号206を空間的にフィルタリングする。一例では、計算システム130は、測定されたスポットの形状を検出器上でのスポットの予想された形状と比較することによって、検出器205上での反射ビームの入射位置を推定する。予想された形状は、ウェハ上に入射する照明ビームの形状、及びウェハ101と検出器205との間の任意の光学要素(例えば、集束光学系204)の既知の特性に基づいて知られる。検出器上でのスポットの予想された形状は、検出器上での実際のスポットに適合し、予想された形状の外側の非ゼロ値ピクセルは、廃棄される。
【0091】
計算システム130は、時間にわたって収集された画像信号を追跡して、時間の関数としてウェハの方向を推定する。更なる一態様では、計算システム130は、時間の関数としてのウェハ方向の推定値を時間領域から周波数領域に変換する。一例では、計算システム130は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて、時系列データの周波数成分を抽出する。周波数成分の振幅は、測定中のウェハの位置安定性を示し、周波数成分自体は、測定中のウェハのモーダル特性を示す。このようにして、ウェハ方向測定システムが用いられて、測定中にウェハモーダルダイナミクス及び位置安定性を監視する。
【0092】
本明細書に記載されているように、ウェハ方向測定システムは、検出器における反射光の入射位置の変化に基づいて、方向測定スポットにおけるウェハの方向の変化を正確に推定する。更なる一態様において、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対するウェハの方向を同定するために較正される。このようにして、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対する方向測定スポットにおけるウェハの方向についての厳密な推定値を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、測定中のウェハの前側までの距離を測定する距離センサが使用されて、方向測定スポットにおけるウェハの方向を推定する。これらの実施形態では、距離測定は、方向測定スポットの周囲の多くの位置で実行され、平面が、距離センサが装着されている基準フレームに対するウェハの方向を推定するために、データセットに適合される。距離センサによって推定された方向は、方向測定スポットにおけるウェハ方向測定システムの測定された方向として取り扱われる。較正された方向からの変化は、本明細書に記載されているように、ウェハ方向測定システムによって測定される。
【0094】
いくつかの別の実施形態では、X線計測システム自体が使用されて、方向測定スポットにおけるウェハの方向を推定する。これらの実施形態では、X線照明ビームは、方向測定スポットにおいてウェハに方向付けられ、回折光は、X線検出器(例えば、検出器119)によって検出される。ウェハは、垂直入射の仮定された方向の周りの一連の方向を通して回転させられる。測定された回折パターンが分析されることにより、回折パターンがそれについて対称である方向を見つける。この方向は、ゼロ角度、すなわち、入射X線照明ビームに垂直であるウェハの方向角として取り扱われる。ゼロ角度は、方向測定スポットにおいてウェハ方向測定システムによって測定されたゼロ角度として取り扱われる。較正されたゼロ角度からの変化は、本明細書に記載されたように、ウェハ方向測定システムによって測定される。
【0095】
一般に、ウェハ方向測定システムの較正は、それぞれの測定部位において、又はウェハ表面上の1つ又は複数の測定部位において実行されてもよい。
【0096】
別の更なる一態様では、X線ベースの計測システムのウェハ位置決めシステムが、本明細書に記載されたように、ウェハ方向測定システムによって提供された測定値に基づいて、測定中のウェハを位置決めする。
【0097】
いくつかの実施形態では、ウェハ位置決めシステムは、ウェハ方向測定システムによって提供されたウェハ方向測定値に基づいて閉ループ方式で制御される。一例では、計算システム130は、X線測定スポット102と一致する方向測定スポット208に基づいてウェハ101の方向を推定する。測定された方向に応じて、計算システム130が、ウェハ位置決めシステム140のアクチュエータに制御コマンドを通信して、測定された方向と所望の方向との間の差に基づいて、所望の方向にあるウェハを位置決めする。
【0098】
いくつかの実施形態では、ウェハ位置決めシステムは、ウェハ方向測定システムによって提供されるウェハ方向測定値に基づいて、開ループ方式で制御される。一例では、ウェハ上のいくつかの異なる測定部位におけるウェハ101の方向についてのマップは、それぞれの異なる測定部位におけるウェハ方向測定システムによって実行された方向測定に基づいて生成される。マップが使用されて、それぞれの測定部位で実行されたそれぞれのX線散乱計測測定に使用される方向設定点を補正する。
【0099】
一例では、Zアクチュエータ150A~Cが制御されて、ウェハ101のZ位置、Rx方向、Ry方向、又はそれらの任意の組合せを調整する。一例では、ウェハ101の方向は、Zアクチュエータ150A~Cによって補正される。傾斜補正は、ウェハ傾斜のマップ、又はウェハ方向測定システム200によって局所的に測定された傾斜の値に基づいてもよい。一般に、ウェハ101の方向は、2つの直交する方向、例えば、Rx及びRy方向において測定されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、X線照明源が装着される基準フレームに装着される。これらの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対する方向を直接的に測定する。
【0101】
別のいくつかの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、X線照明源に対して移動するステージ基準フレームに装着される。これらの実施形態では、ウェハ方向測定システムは、入射X線ビームに対する方向を間接的に測定する。X線照明源に対する方向についての測定値を取得するために、ステージ基準フレームに対する測定された方向は、X線照明源が装着される基準フレームに変換される。この変換は、X線照明源が装着された基準フレームに対するステージ基準フレームの移動の関数である。例えば、
図5は、ステージ基準フレーム143に装着されたウェハ方向測定システム200を示す。示されている実施形態では、ステージ基準フレームは、軸153の周りで回転し、X線照明源が装着された基準フレーム141に対してX
NF方向に並進する。
【0102】
本明細書に記載されたようなウェハ方向測定システムは、透過型X線計測システム、反射型X線計測システム、又は反射モード及び透過モードの両方で動作可能なX線散乱計測ベースの計測システムの部分として実装されてもよい。
【0103】
図11は、本明細書に記載されたようなウェハ方向位置決めシステムを含む反射型小角X線散乱計測(RSAXS)計測システムを示す。
【0104】
いくつかの実施形態では、半導体ウェハのRSAXS測定値は、小さいビームスポットサイズを有する波長、入射角、及び方向角の範囲にわたって実行される。一態様では、RSAXS測定は、5~20度の範囲内のかすめ入射角で軟X線(SXR)領域(すなわち、80~3000eV)内のX線放射を用いて実行される。特定の測定アプリケーションのためのかすめ角が、測定中の構造内への所望の浸透を達成するように選択され、そして小さいビームスポットサイズ(例えば、50マイクロメートル未満)を用いて測定情報量を最大にする。
【0105】
図11に示すように、RSAXSシステム300は、入射照明ビームスポットによって照明された標本301のX線測定領域302にわたってRSAXS測定を実行する。更に、RSAXSシステム300は、上述したように、方向測定スポットにおけるウェハ301の方向を測定するウェハ方向測定システム200を含む。
【0106】
示されている実施形態では、計測ツール300は、X線照明源310と、集束光学系311と、ビーム発散制御スリット312と、スリット313と、を含む。X線照明源310は、RSAXS測定に適したSXR放射を生成するように構成されている。X線照明源310は、多色、高輝度、大エタンデュ光源である。いくつかの実施形態では、X線照明源310は、80~3000電子ボルトの範囲内のX線放射を生成するように構成されている。一般に、高スループットのインライン計測を可能にするのに十分な磁束レベルで高輝度SXRを生成することができる任意の適切な高輝度X線照明源により、RSAXS測定のためのX線照明を供給することが考えられてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、X線源は、異なる選択可能な波長でX線源がX線放射を送達することを可能にする同調可能モノクロメータを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のX線源が使用されて、測定中の標本への十分な浸透を可能にする波長でX線源が光を供給することを保証する。
【0108】
いくつかの実施形態では、照明源310は、高調波発生(HHG)X線源である。いくつかの別の実施形態では、照明源310は、ウィグラ/アンジュレータシンクロトロン放射源(SRS)である。例示的なウィグラ/アンジュレータSRSが、米国特許第8,941,336号及び同第8,749,179号に記載されており、これらの内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0109】
いくつかの別の実施形態では、照明源310は、レーザ生成プラズマ(LPP)光源である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、LPP光源は、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、及び窒素放出材料のうちのいずれかを含む。一般に、適切なLPPターゲット材料の選択は、共振SXR領域内の輝度に対して最適化される。例えば、クリプトンによって放出されるプラズマは、シリコンKエッジにおいて高輝度を提供する。別の一例では、キセノンによって放出されたプラズマは、(80~3000eV)のSXR領域全体にわたって高い輝度を提供する。このように、キセノンは、広帯域SXR照明が望まれる場合には、放出材料の良好な選択である。
【0110】
LPPターゲット材料選択はまた、信頼性が高く、長寿命の光源動作に対して最適化されてもよい。キセノン、クリプトン、及びアルゴンのような希ガスターゲット材料は、不活性であり、そして最小の除染処理しか有しないか、又は除染処理を全く有しない閉ループ動作で再使用されてもよい。例示的なSXR照明源は、米国特許出願第15/867,633号に記載されており、その内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
更なる態様では、照明源(例えば、照明源310)によって放出される波長は、選択可能である。いくつかの実施形態では、照明源310は、LPP光源であって、該LPP光源は、計算システム330によって制御されて、1つ又は複数の選択されたスペクトル領域における磁束を最大にする。ターゲット材料におけるレーザピーク強度は、プラズマ温度、したがって放出された放射のスペクトル領域を制御する。レーザピーク強度は、パルスエネルギー、パルス幅、又はその両方を調整することによって変化させられる。一例では、100ピコ秒のパルス幅が、SXR放射を生成するのに適している。
図11に示すように、計算システム330は、照明源310にコマンド信号336を通信し、該コマンド信号は、照明源310に照明源310から放出された波長のスペクトル範囲を調整させる。一例では、照明源310は、LPP光源であり、LPP光源は、パルス持続時間、パルス周波数、及びターゲット材料組成のうちのいずれかを調整することにより、LPP光源から放出された波長の所望のスペクトル範囲を実現する。
【0112】
非限定的な例として、粒子加速源、液体アノード源、回転アノード源、固定固体アノード源、マイクロフォーカス源、マイクロフォーカス回転アノード源、プラズマベース源、及び逆コンプトン源のうちのいずれかが、X線照明源310として使用されてもよい。
【0113】
例示的なX線源は、固体又は液体ターゲットに衝突してX線放射を刺激するように構成された電子ビーム源を含む。高輝度の液体金属X線照明を生成するための方法及びシステムが、2011年4月19日に、KLA-Tencor社に発行された米国特許第7,929,667号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
X線照明源310は、有限の横方向寸法(すなわち、ビーム軸に直交する非ゼロ寸法)を有する源領域にわたってX線放出を生成する。一態様では、照明源110の源領域は、20マイクロメートル未満の横方向寸法によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、源領域は、10マイクロメートル以下の横方向寸法によって特徴付けられる。小さい源サイズが、標本上の小さいターゲット領域を高輝度で照明することを可能にし、したがって、測定精度、正確度、及びスループットを改善する。
【0115】
一般に、X線光学系は、X線放射を成形して、それを標本301に方向付ける。いくつかの実施形態では、X線光学系は、多層X線光学系を用いて1ミリラジアン発散未満まで、標本301のX線測定領域302上にX線ビームをコリメート又は集束させる。いくつかの例では、X線光学系は、1つ又は複数のX線コリメートミラー、X線アパーチャ、X線ビームストップ、屈折X線光学要素、ゾーンプレート等の回折光学系、Schwarzschild光学系、Kirkpatrick-Baez光学系、Montel光学系、Wolter光学系、楕円面鏡等の鏡面X線光学系、中空細管X線導波路等のポリキャピラリ光学系、多層光学系若しくはシステム、又はこれらの任意の組み合わせを含む。更なる詳細は、米国特許出願公開第2015/0110249号に記載されており、その内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
図11に示すように、集束光学系311は、標本301上に配置された計測ターゲット上に源放射線を集束させる。有限の横方向源寸法は、源のエッジから来る放射線316と、ビームスリット312及び313によって提供される任意のビーム成形とによって画定されたターゲット上の有限X線測定スポット302をもたらす。
【0117】
いくつかの実施形態では、集束光学系311は、楕円形状の集束光学要素を含む。
図11に示す実施形態では、楕円の中心における集束光学系311の倍率は、約1倍である。その結果、標本301の表面上に投影された照明スポットサイズは、照明源とほぼ同じサイズであり、公称かすめ入射角(例えば、5~20度)によるビーム広がりに対して調整される。
【0118】
更なる態様では、集束光学系311は、源放射を収集し、1つ又は複数の離散波長又はスペクトル帯域を選択し、選択された光を5~20度の範囲内のかすめ入射角で標本301上に集束させる。
【0119】
公称かすめ入射角は、計測ターゲットの所望の浸透を達成するように選択されることにより、計測ターゲット境界内に残っている間に信号情報量を最大化する。硬X線の臨界角は非常に小さいが、軟X線の臨界角は著しく大きい。この結果として、追加の測定柔軟性RSAXS測定は、かすめ入射角の厳密な値に対してより感度の低い構造内に、より深く探査する。
【0120】
いくつかの実施形態では、集束光学系311は、標本301上に投影するために所望の波長又は波長範囲を選択する段階的な多層を含む。いくつかの例では、集束光学系311は、1つの波長を選択し、そして選択された波長を入射角の範囲にわたって標本301上に投影する段階的な多層構造(例えば、層又はコーティング)を含む。いくつかの例では、集束光学系311は、波長の範囲を選択し、そして選択された波長を1つの入射角にわたって標本301上に投影する段階的な多層構造を含む。いくつかの例では、集束光学系311は、波長の範囲を選択し、そして選択された波長を入射角の範囲にわたって標本301上に投影する段階的な多層構造を含む。
【0121】
段階的な多層光学系は、単一の層格子構造が深すぎるときに生じる光の損失を最小にするのに好ましい。一般に、多層光学系は、反射波長を選択する。選択された波長のスペクトル帯域幅は、標本301に提供される磁束、測定された回折次数における情報量を最適化し、そして検出器での角度分散及び回折ピーク重複による信号の劣化を防止する。それに加えて、段階的な多層光学系が使用されて、発散を制御する。それぞれの波長における角発散は、磁束に対して最適化され、検出器における空間的重複を最小にする。
【0122】
いくつかの例では、段階的な多層光学系が波長を選択することにより、特定の材料界面又は構造寸法からの回折信号のコントラスト及び情報量を向上させる。例えば、選択される波長は、要素固有の共振領域(例えば、シリコンK-エッジ、窒素、酸素K-エッジ等)を跨るように選択されてもよい。それに加えて、これらの例では、照明源はまた、選択されたスペクトル領域(例えば、HHGスペクトル同調、LPPレーザ同調等)において磁束を最大にするように調整されてもよい。
【0123】
いくつかの別の例では、前の構造情報は、ほとんど測定時に利用可能ではない。これらの例では、複数(例えば、3~4)の波長が、吸収エッジを横切る回折パターンの測定を可能にするために選択される。測定された信号は、例えば、多重波長異常回折技術を用いて、測定中の構造の元素組成を除いた前の情報によらずに構造特性についてのモデルフリー測定を可能にする。モデルフリー測定に基づいて構造特性を推定した後に、パラメータ推定が、モデルベースの測定技術を用いて更に改良されてもよい。
【0124】
いくつかの例では、測定中の計測ターゲットの異常散乱因子(すなわち、散乱特性)は、先験的には既知ではない。これらの例では、フィルム多層反射率は、多重共振波長で測定される。ブラッグピークの角偏位は、異常な散乱要因を抽出するのに十分な情報を提供する。
【0125】
いくつかの例では、非共振X線反射率測定は、モデルベースの測定の適合を改善する、多層周期及び界面粗さパラメータについての独立した推定を提供する。いくつかの実施形態では、結合計測ツールは、本明細書に記載されたような多重波長SXR回折サブシステムと、測定スループットを改善するためのX線反射測定サブシステムと、を含む。一実施形態では、多重波長SXR回折サブシステム及びX線反射測定サブシステムは、入射直交平面を使用し、該入射直交平面は、測定中の標本、又は光学測定サブシステムのうちのいずれかを移動させることなく、同時測定又は連続測定を可能にする。いくつかの実施形態では、SXR多層ミラーによって提供されるAOI範囲がX線反射測定には小さすぎる場合には、ウェハの回転、検出器の回転、又はその両方が使用されて、入射角の範囲を拡張してもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、集束光学系311は、楕円表面形状をそれぞれが有する複数の反射光学要素を含む。それぞれの反射光学要素は、基板と、異なる波長又は波長範囲を反射するように同調された多層コーティングと、を含む。いくつかの実施形態では、異なる波長又は波長範囲をそれぞれが反射する複数(例えば、1~5)の反射光学要素が、それぞれの入射角に配列される。更なる実施形態では、異なる波長又は波長範囲をそれぞれ反射する複数(例えば、2~5)の組の反射光学要素が、異なる入射角で組ごとにそれぞれ配列されている。いくつかの実施形態では、複数の組の反射光学要素は、測定中に照明光を標本301上に同時に投影する。いくつかの別の実施形態では、複数の組の反射光学要素は、測定中に標本301上に照明光を連続して投影する。これらの実施形態では、アクティブシャッター又はアパーチャが使用されて、標本301上に投影された照明光を制御する。
【0127】
更なる態様では、同じ計測領域上に投影された波長、AOI、方位、又はそれらの任意の組合せの範囲は、焦点光学系の1つ又は複数のミラー要素を能動的に位置決めすることによって調整される。
図11に示すように、計算システム330は、アクチュエータシステム315にコマンド信号を通信し、該コマンド信号は、アクチュエータシステム315に、集束光学系311の光学要素のうちの1つ又は複数の位置、整列、若しくはその両方を調整させることにより、標本301上に投影された波長、AOI、方位、又はそれらの任意の組み合わせの所望の範囲を達成する。
【0128】
一般に、入射角は、それぞれの波長に対して選択されることにより、測定中の計測ターゲットによって照明光の透過及び吸収を最適化する。多くの例では、複数の層構造が測定され、入射角が、関心のある所望の層と関連する信号情報を最大化するように選択される。オーバーレイ計測の例では、1つ又は複数の入射波長及び1つ又は複数の入射角は、前の層からの散乱と現在の層からの散乱との間の干渉から生じる信号情報を最大化するように選択される。それに加えて、方向角はまた、信号情報量を最適化するように選択される。それに加えて、方向角は、検出器における回折ピークの角度分離を確実にするように選択される。
【0129】
更なる態様において、RSAX計測システム(例えば、計測ツール300)は、標本301に入射する照明ビーム314を成形し、そうでなければ測定中の計測ターゲットを照明することになる照明光の一部を選択的に遮蔽するための1つ又は複数のビームスリット又はアパーチャを含む。1つ又は複数のビームスリットは、X線照明スポットが測定中の計測ターゲットの領域内に収まるようにビームサイズ及び形状を画定する。それに加えて、1つ又は複数のビームスリットは、検出器上の回折次数のオーバーラップを最小にするように照明ビームの発散を画定する。
【0130】
図11は、集束光学系311とビーム成形スリット313との間のビーム経路内に配置されたビーム発散制御スリット312を示す。ビーム発散制御スリット312は、測定中の標本に提供される照明の発散を制限する。ビーム成形スリット313は、ビーム発散制御スリット312と標本301との間のビーム経路内に配置されている。ビーム成形スリット313は、更に入射ビーム314を成形し、入射ビーム314の1つ又は複数の照明波長を選択する。ビーム成形スリット313は、標本301の直前のビーム経路内に配置されている。一態様では、ビーム成形スリット313のスリットが標本301に極めて近接して配置されることにより、有限の源サイズによって画定されたビーム発散により、入射ビームスポットサイズの拡大を最小化する。
【0131】
X線検出器319は、標本101から散乱させられたX線放射318を収集し、RSAXS測定様式に従う入射X線放射に敏感である標本301の特性を示す出力信号335を生成する。いくつかの実施形態では、散乱させられたX線318は、X線検出器319によって収集され、一方、標本位置決めシステム340は、標本301を配置及び方向付けして、角度分解された散乱X線を生成する。
【0132】
いくつかの実施形態では、RSAXSシステムは、高ダイナミックレンジ(例えば、105よりも大きい)を有する1つ又は複数の光子計数検出器を含む。いくつかの実施形態では、単一光子計数検出器は、検出された光子の位置及び数を検出する。
【0133】
いくつかの実施形態では、X線検出器は、1つ又は複数のX線光子エネルギを分解し、標本の特性を示すそれぞれのX線エネルギ成分について信号を生成する。いくつかの実施形態では、X線検出器319は、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ比例計数器、ガス充填比例計数器、シンチレータ、又は蛍光材料のうちのいずれかを含む。
【0134】
このようにして、検出器内のX線光子相互作用は、ピクセル位置及びカウント数に加えて、エネルギによって識別される。いくつかの実施形態では、X線光子相互作用は、X線光子相互作用のエネルギを所定の上側閾値及び所定の下側閾値と比較することによって識別される。一実施形態では、この情報は、更なる処理及び記憶のために、出力信号135を介して計算システム330に通信される。
【0135】
複数の照明波長を有する周期性ターゲットの同時照明から生じる回折パターンが、回折での角度分散に基づいて、検出器平面において分離される。これらの実施形態では、積分検出器が使用される。回折パターンは、領域検出器、例えば、真空対応裏面CCD又はハイブリッドピクセルアレイ検出器を使用して測定される。角度サンプリングは、ブラッグのピーク積分のために最適化される。ピクセルレベルモデル適合が利用される場合、角度サンプリングが、信号情報量に対して最適化される。サンプリングレートは、0次信号の飽和を防ぐように選択される。
【0136】
更なる態様では、RSAXSシステムが利用されて、散乱光の1つ又は複数の回折次数に基づいて、標本の特性(例えば、構造パラメータ値)を決定する。
図11に示すように、計測ツール300は、計算システム330を含み、検出器319によって生成された信号335を取得し、そして取得された信号に少なくとも部分的に基づいて標本の特性を決定するために計算システム330を利用する。
【0137】
いくつかの例では、RSAXSに基づく計測は、測定されたデータを用いて事前に決定された測定モデルの逆解によって試料の寸法を決定することを含む。測定モデルは、少数の(10のオーダーの)調整可能なパラメータを含み、そして標本の幾何学的形状及び光学特性、並びに測定システムの光学特性を表す。逆解の方法は、モデルベースの回帰、トモグラフィ、機械学習、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これに限定されない。このようにして、ターゲットプロファイルパラメータが、パラメータ化された測定モデルの値を解くことによって推定され、該測定モデルは、測定された散乱X線強度とモデル化された結果との間の誤差を最小にする。
【0138】
測定されたパラメータ値の精度及び正確度を向上させるために、波長、入射角、及び方向角の広い範囲で測定を実行することが望ましい。このアプローチは、分析に利用可能なデータセットの数及び多様性を拡張することによって、パラメータ同士間の相関を減少させる。
【0139】
ウェハ表面法線に対する照明波長及びX線入射角の関数としての回折放射の強度についての測定値が、収集される。多重回折次数に含まれる情報は、典型的には、考慮中のそれぞれのモデルパラメータ同士間で一意的である。このように、X線散乱は、小さい誤差と減少したパラメータ相関とを有する関心のあるパラメータの値についての推定結果をもたらす。
【0140】
別の更なる一態様では、計算システム130は、標本の測定された構造についての構造モデル(例えば、幾何学的形状モデル、材料モデル、又は幾何学的形状と材料とを結合したモデル)を生成することと、構造モデルから少なくとも1つの幾何学的形状パラメータを含むT-SAXS応答モデルを生成することと、T-SAXS測定データとT-SAXS応答モデルとの適合分析を実行することによって少なくとも1つの標本パラメータ値を解くことと、を行うように構成されている。分析エンジンが使用されることにより、シミュレートされたT-SAXS信号を測定されたデータと比較し、それによって幾何学的形状及び試料の電子密度のような材料特性の決定を可能にする。
図1に示す実施形態では、計算システム130は、本明細書に記載されるような、モデル構築及び分析機能を実装するように構成されたモデル構築及び分析エンジンとして構成されている。
【0141】
図12は、計算システム130によって実装される例示的なモデル構築及び分析エンジン180を示す線図である。
図12に示すように、モデル構築及び分析エンジン180は、標本についての測定された構造の構造モデル182を生成する構造モデル構築モジュール181を含む。いくつかの実施形態では、構造モデル182はまた、標本の材料特性を含む。構造モデル182は、T-SAXS応答関数構築モジュール183への入力として受信される。T-SAXS応答関数構築モジュール183は、構造モデル182に少なくとも部分的に基づいてT-SAXS応答関数モデル184を生成する。いくつかの例では、T-SAXS応答関数モデル184は、X線フォームファクタに基づいており、
【数1】
ここで、Fはフォームファクタであり、qは散乱ベクトルであり、p(r)は球形座標における標本の電子密度である。X線散乱強度は、次に
【数2】
によって与えられる。T-SAXS応答関数モデル184は、適合解析モジュール185への入力として受信される。適合解析モジュール185は、モデル化されたT-SAXS応答を対応する測定データと比較して、標本の幾何学的特性及び材料特性を決定する。
【0142】
いくつかの例では、モデル化されたデータの実験データへの適合は、カイ二乗値を最小にすることによって達成される。例えば、T-SAXS測定値について、カイ二乗値は、
【数3】
として定義され得る。
【0143】
ここで、Sj
SAXS experimentは、「チャネル」jの測定されたT-SAXS信号135であり、ここに、インデックスjは、回折次数、エネルギ、角度座標等の1組のシステムパラメータを記述する。
Sj
SAXS model(V1,...,VL)は、1組の構造(ターゲット)パラメータV1,...,VLについて評価された、「チャネル」jについてのモデル化されたT-SAXS信号Sjであり、ここで、これらのパラメータは、幾何学的(CD、側壁角度、オーバーレイ等)及び材料(電子密度等)を記述する。σSAXS,jは、j番目のチャネルと関連する不確定性である。NSAXSは、X線計測のチャネルの総数である。Lは、計測ターゲットを特徴付けるパラメータの数である。
【0144】
式(3)は、異なるチャネルと関連する不確実性が相関していないことを仮定する。異なるチャネルと関連する不確実性が相関している例では、不確実性同士間の共分散が計算され得る。これらの例では、T-SAXS測定についてのカイ二乗値は、
【数4】
として表され得る。
【0145】
ここで、VSAXSは、SAXSチャネル不確定性の共分散行列であり、Tは転置を示す。
【0146】
いくつかの例では、適合分析モジュール185は、T-SAXS応答モデル184を用いてT-SAXS測定データ135を適合分析することによって、少なくとも1つの標本パラメータ値を解く。いくつかの例では、χ2
SAXSが最適化される。
【0147】
前述したように、T-SAXSデータの適合は、カイ二乗値の最小化によって達成される。しかしながら、一般に、T-SAXSデータの適合は、別の関数によって達成されてもよい。
【0148】
T-SAXS計測データの適合は、関心のある幾何学的及び/又は材料パラメータに対する感度を提供する任意のタイプのT-SAXS技術に有利である。標本パラメータは、標本とのT-SAXSビーム相互作用を記述する適切なモデルが使用される限り、決定論的(例えば、CD、SWA等)であり得るか、又は統計的(例えば、側壁粗さのrms高さ、粗さ相関長さ等)であり得る。
【0149】
一般に、計算システム130は、リアルタイムクリティカルディメンショニング(RTCD)を使用してモデルパラメータにリアルタイムでアクセスするように構成されているか、又は、標本101と関連する少なくとも1つの標本パラメータ値についての値を決定するために予め計算されたモデルのライブラリにアクセスしてもよい。一般に、なんらかの形式のCD-エンジンが使用されて、標本の関連するCDパラメータと、測定された標本に関連するCDパラメータとの間の差を評価してもよい。標本パラメータ値を計算するための例示的な方法及びシステムが、KLA-Tencor社への、2010年11月2日に発行された米国特許第7,862,071号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
いくつかの例では、モデル構築及び分析エンジン180は、フィードサイドウェイ分析、フィードフォワード分析、及び並列分析の任意の組合せによって、測定されたパラメータの正確度を改善する。フィードサイドウェイ分析とは、同一の標本の異なる領域において複数のデータセットを採取することと、第1データセットから決定された共通のパラメータを分析用の第2データセットに渡すことと、を意味する。フィードフォワード分析とは、段階的コピー正確パラメータフィードフォワードアプローチを使用して、異なる標本上のデータセットを採取し、共通のパラメータを後続の分析に前方に渡すことと、を意味する。並列解析とは、適合中に少なくとも1つの共通パラメータが結合される複数のデータセットへの非線形適合方法論の並列又は同時の適用を指す。
【0151】
複数のツール及び構造解析とは、回帰、ルックアップテーブル(すなわち、「ライブラリ」マッチング)、又は複数のデータセットの別の適合手順に基づく、フィードフォワード、フィードサイドウェイ、又は並列解析を指す。複数のツール及び構造分析のための例示的な方法及びシステムは、KLA-Tencor社に、2009年1月13日に発行された米国特許第7,478,019号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
別の更なる一態様では、関心のある1つ又は複数のパラメータの初期推定値は、測定ターゲットに対する入射X線ビームの単一の方向において実行されるT-SAXS測定値に基づいて決定される。初期推定値は、複数の方向でのT-SAXS測定値から収集された測定データを用いて測定モデルの回帰についての関心のあるパラメータの開始値として実施される。このようにして、関心のあるパラメータについての厳密な推定値が、比較的少ない計算量で決定され、そして、この厳密な推定値を、はるかに大きいデータセットにわたる回帰のための開始点として実装することによって、関心のあるパラメータについての改善された推定値がより少ない総計算量で取得される。
【0153】
別の一態様では、計測ツール100は、本明細書に記載されるようなビーム制御機能を実装するように構成された計算システム(例えば、計算システム130)を含む。
図1に示す実施形態では、計算システム130は、入射照明ビーム116の強度、発散、スポットサイズ、偏光、スペクトル、及び位置決めのような照明特性のうちのいずれかを制御するように動作可能なビームコントローラとして構成されている。
【0154】
図1に示すように、計算システム130は、検出器119に通信可能に結合されている。計算システム130は、検出器119から測定データ135を受信するように構成されている。一例では、測定データ135は、標本の測定された応答(すなわち、回折次数の強度)の示度を含む。検出器119の表面上での測定された応答の分布に基づいて、標本101上での照明ビーム116の入射の位置及び領域が、計算システム130によって決定される。一例では、パターン認識技術が、計算システム130によって適用されて、測定データ135に基づいて標本101上での照明ビーム116の入射の位置及び領域を決定する。いくつかの例では、計算システム130は、コマンド信号137をX線照明源110に通信して、所望の照明波長を選択する。いくつかの例では、計算システム130は、アクチュエータサブシステム111’にコマンド信号138を通信することにより、ベースフレーム141に対してX線放射を方向付け直して、所望のビーム方向付けを達成する。いくつかの例では、計算システム130は、ビーム成形スリット機構120にコマンド信号136を通信して、入射照明ビーム116が所望のビームスポットサイズ及び方向を伴って標本101に到達するようにビームスポットサイズを変更する。一例では、コマンド信号136は、
図5に示す回転アクチュエータ122に、ビーム成形スリット機構120を標本101に対して所望の方向に回転させる。別の一例では、コマンド信号136は、スリット126~129のそれぞれと関連するアクチュエータに位置を変更させて、入射ビーム116を所望の形状及び大きさに作り直す。いくつかの別の例では、計算システム130が、入射照明ビーム116が標本101に対して所望の位置及び角度方向に到達するように、標本101を位置決めして方向付けるためのコマンド信号をウェハ位置決めシステム140に通信する。
【0155】
本開示を通じて説明された様々なステップは、コンピュータシステム130及び330のような単一のコンピュータシステム、又は、その代替として複数のコンピュータシステムによって実行されてもよいことが認識されるべきである。更に、標本位置決めシステム140及び340並びにウェハ方向測定システム200のような、計測システム100及び300の様々なサブシステムは、本明細書に記載されたステップの少なくとも一部分を実行するのに適したコンピュータシステムを含んでもよい。そのため、上記の説明は、本発明についての限定としてではなく、単に例示であるとして解釈されるべきである。更に、1つ又は複数の計算システム130及び330は、本明細書に記載された方法実施形態のうちのいずれかの任意の別の1つ又は複数のステップを実行するように構成されてもよい。
【0156】
それに加えて、コンピュータシステム130及び330は、X線照明源110及び310、照明源201、ビーム成形スリット機構120及び320、標本位置決めシステム140及び340、並びに検出器119、205、及び319に当該技術分野で公知の任意の方式で通信可能に結合されてもよい。例えば、1つ又は複数の計算システム130及び330が、それぞれ、X線照明源110及び310、照明源201、ビーム成形スリット機構120及び320、標本位置決めシステム140及び340、並びに検出器119、205、及び319と関連する計算システムに結合されてもよい。別の一例では、X線照明源110及び310、照明源201、ビーム成形スリット機構120及び320、標本位置決めシステム140及び340、並びに検出器119、205、及び319のうちのいずれかは、それぞれ、コンピュータシステム130及び330に結合された単一のコンピュータシステムによって直接的に制御されてもよい。
【0157】
コンピュータシステム130及び330は、有線及び/又は無線部分を含んでもよい伝送媒体によって、システム(例えば、X線照明源110、201、及び310、ビーム成形スリット機構120及び320、標本位置決めシステム140及び340、検出器119、205、及び319等)のサブシステムからデータ又は情報を受信する及び/又は取得するように構成されてもよい。このようにして、伝送媒体は、コンピュータシステム130及び330と、システム100及び300の別のサブシステムとの間のデータリンクとしてそれぞれ機能してもよい。
【0158】
計測システム100及び300のコンピュータシステム130及び330は、それぞれ、有線及び/又は無線部分を含んでもよい伝送媒体によって、別のシステムからデータ又は情報(例えば、測定結果、モデリング入力、モデリング結果等)を受信及び/又は取得するように構成されてもよい。このようにして、伝送媒体は、コンピュータシステム130と330と別のシステム(例えば、メモリオンボード計測システム100及び300、外部メモリ、又は外部システム)との間のデータリンクとして機能してもよい。例えば、計算システム130は、データリンクを介して記憶媒体(すなわち、メモリ132又は190)からX線測定データ又はウェハ方向測定データ(例えば、信号135)を受信するように構成されてもよい。例えば、検出器119を使用して取得されたスペクトル結果、検出器205を使用して取得されたウェハ方向測定結果、又はその両方は、永久又は半永久メモリデバイス(例えば、メモリ132又は190)に記憶されてもよい。この点に関して、測定結果は、オンボードメモリから、又は外部メモリシステムから読み込まれてもよい。更に、コンピュータシステム130及び330は、伝送媒体を介して別のシステムにデータを送信してもよい。例えば、コンピュータシステム130によって決定された標本パラメータ値186は、永久又は半永久メモリデバイス(例えば、メモリ190)に記憶されてもよい。この点に関して、測定結果は、別のシステムにエクスポートされてもよい。
【0159】
計算システム130及び330は、パーソナルコンピュータシステム、クラウド計算システム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサ、又は当該技術分野で公知の任意の別の装置を含むが、これに限定されない。一般に、「計算システム」という用語は、メモリ媒体からの命令を実行する1つ又は複数のプロセッサを有する任意の装置を含むように広く定義されてもよい。
【0160】
本明細書に記載されたもののような方法を実装するプログラム命令134及び334が、ワイヤ、ケーブル、又は無線伝送リンクのような伝送媒体を介して伝送されてもよい。例えば、
図1に示すように、メモリ132内に記憶されたプログラム命令は、バス133を介してプロセッサ131に伝送される。プログラム命令134は、コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ132)に記憶される。別の一例では、
図11に示すように、メモリ332に記憶されたプログラム命令は、バス333を介してプロセッサ331に伝送される。プログラム命令334は、コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ332)に記憶される。例示的なコンピュータ可読媒体は、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気若しくは光ディスク、又は磁気テープを含む。
【0161】
図13は、本発明の計測装置100及び300による実装に適した方法400を示す。一態様では、方法400のデータ処理ブロックが、計算システム130又は計算システム330の1つ又は複数のプロセッサによって実行される予めプログラミングされたアルゴリズムを介して実行されてもよいことが認識される。以下の説明は、計測システム100及び300の文脈において提示されるが、計測システム100及び300の特定の構造的態様は、限定を表すものではなく、例示的なものとして解釈されるべきである。
【0162】
ブロック401において、半導体ウェハが、X線測定スポットにおいてX線照明ビームを用いて照明される。
【0163】
ブロック402において、ある量のX線放射が、入射X線照明ビームに応じて半導体ウェハから検出される。
【0164】
ブロック403において、半導体ウェハは、半導体ウェハ上の方向測定スポットにわたって光学照明ビームを用いて照明される。
【0165】
ブロック404において、入射光学照明ビームに応じて半導体ウェハから反射されたある量の光が、検出器の感光面上に集束される。
【0166】
ブロック405において、入射光学照明ビームに応じて半導体ウェハから反射された光が、検出器の感光面において検出される。
【0167】
ブロック406において、方向測定スポットにおける半導体ウェハの方向の変化が、検出器の感光面における半導体ウェハから反射された光の入射位置の変化に基づいて推定される。
【0168】
ブロック407において、半導体ウェハ上に配設された構造を特徴付ける関心のあるパラメータの値が、検出されたX線放射の量に基づいて決定される。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたような散乱計測測定は、製造プロセスツールの一部分として実装される。製造プロセスツールの例には、リソグラフィ露光ツール、成膜ツール、インプラントツール、及びエッチングツールが含まれるが、これに限定されない。このようにして、T-SAXS分析の結果が使用されて、製造プロセスを制御する。一例では、1つ又は複数のターゲットから収集されたT-SAXS測定データが、製造プロセスツールに送信される。T-SAXS測定データは、本明細書に記載されたように分析され、結果は、製造プロセスツールの動作を調整するために使用される。
【0170】
本明細書に記載されたような散乱計測測定が使用されて、様々な半導体構造の特性を決定してもよい。例示的な構造には、FinFET、ナノワイヤ若しくはグラフェンのような低次元構造、サブ10nm構造、リソグラフィ構造、基板貫通ビア(TSV)、DRAM、DRAM 4F2、FLASH、MRAMのようなメモリ構造、及び高アスペクト比メモリ構造が含まれるが、これに限定されない。例示的な構造特性には、ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、細孔サイズ、細孔密度、側壁角度、プロファイル、限界寸法、ピッチ、厚さ、オーバーレイのような幾何学的パラメータ、及び電子密度、組成、粒子構造、形態、応力、歪みのような材料パラメータ、並びに元素同定が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、計測ターゲットは、周期構造である。いくつかの別の実施形態では、計測ターゲットは、非周期的である。
【0171】
いくつかの例では、高アスペクト比半導体構造についての限界寸法、厚さ、オーバーレイ、及び材料特性の測定は、本明細書に記載されるように、T-SAXS測定システムを用いて実行され、高アスペクト比半導体構造は、スピン注入メモリ(STT-RAM)、3次元NANDメモリ(3D-NAND)若しくは垂直NANDメモリ(V-NAND)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、3次元フラッシュメモリ(3D-FLASH)、抵抗性ランダムアクセスメモリ(Re-RAM)、及び相変化ランダムアクセスメモリ(PC-RAM)を含むが、これらに限定されない。
【0172】
本明細書に記載されたように、「限界寸法」という用語は、構造(例えば、底部限界寸法、中間限界寸法、上部限界寸法、側壁角度、格子高さ等)、任意の2つ以上の構造間の限界寸法(例えば、2つの構造間の距離)、及び2つ以上の構造間の変位(例えば、オーバーレイ格子構造間のオーバーレイ変位等)のうちの任意の限界寸法を含む。構造は、三次元構造、パターン構造、オーバーレイ構造等を含んでもよい。
【0173】
本明細書に記載されたように、「限界寸法アプリケーション」又は「限界寸法測定アプリケーション」という用語は、任意の限界寸法測定を含む。
【0174】
本明細書に記載されたように、「計測システム」という用語は、任意の態様において標本を特徴付けるために少なくとも部分的に利用される任意のシステムを含み、該システムは、限界寸法アプリケーション及びオーバーレイ計測アプリケーションを含む。しかしながら、このような技術用語は、本明細書に記載されたような「計測システム」という用語の範囲を限定しない。それに加えて、本明細書に記載された計測システムは、パターン化されたウェハ及び/又はパターン化されていないウェハの測定のために構成されてもよい。計測システムは、LED検査ツール、エッジ検査ツール、裏面検査ツール、マクロ検査ツール、又はマルチモード検査ツール(1つ又は複数のプラットフォームからのデータを同時に含む)、及び本明細書に記載された測定技術から利益を得る任意の別の計測又は検査ツールとして構成されてもよい。
【0175】
様々な実施形態が、標本を処理するために使用されてもよい半導体処理システム(例えば、検査システム又はリソグラフィシステム)について本明細書に記載されている。「標本」という用語は、ウェハ、レチクル、又は当該技術分野で公知の手段によって処理(例えば、印刷又は欠陥について検査)されてもよい任意の別の試料を指すために本明細書において使用される。
【0176】
本明細書で使用されたように、「ウェハ」という用語は、一般に、半導体又は非半導体材料から形成された基板を指す。例として、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム、及びリン化インジウムが挙げられるが、これに限定されない。このような基板は、一般に、半導体製造設備において見出され及び/又は処理されてもよい。場合によっては、ウェハは、基板(すなわち、ベアウェハ)のみを含んでもよい。その代替として、ウェハは、基板上に形成された異なる材料の1つ又は複数の層を含んでもよい。ウェハ上に形成された1つ又は複数の層は、「パターン化され」てもよく、又は「パターン化されなく」てもよい。例えば、ウェハは、反復可能なパターン特徴を有する複数のダイを含んでもよい。
【0177】
「レチクル」は、レチクル製造プロセスの任意の段階にあるレチクルであってもよく、又は半導体製造設備において使用するために放出されても、放出されなくてもよい完成したレチクルであってもよい。レチクル又は「マスク」は、実質的に不透明な領域がその上に形成され、そしてあるパターンに構成された実質的に透明な基板として概して定義される。基板は、例えば、非晶質SiO2のようなガラス材料を含んでもよい。レチクルが、リソグラフィプロセスの露光ステップ中に、レジストで覆われたウェハの上方に配設されることにより、レチクル上のパターンがレジストに転写されてもよい。
【0178】
ウェハ上に形成された1つ又は複数の層は、パターン化されてもよく、パターン化されなくてもよい。例えば、ウェハは、それぞれが反復可能なパターン特徴を有する複数のダイを含んでもよい。このような材料の層の形成及び処理は、完成されたデバイスを最終的にもたらしてもよい。多くの異なるタイプのデバイスが、ウェハ上に形成されてもよく、本明細書で使用されるようなウェハという用語は、当該技術分野で公知の任意のタイプのデバイスがその上に製造されるウェハを包含することが意図されている。
【0179】
1つ又は複数の例示的な実施形態において、記述された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組合せで実施されてもよい。ソフトウェアに実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上に記憶されるか、或いはそれを介して1つ又は複数の命令又はコードとして送信されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体、及び1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする任意の媒体を含む通信媒体の両方を含む。記憶媒体は、汎用又は専用コンピュータによってアクセス可能である任意の利用可能な媒体であってもよい。一例としてであって、限定ではなく、このようなコンピュータ可読媒体が、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM又は別の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は別の磁気記憶装置、或いは、命令又はデータ構造の形式の所望のプログラムコード手段を伝える又は記憶するために使用され得る、及び汎用若しくは専用のコンピュータ、又は汎用若しくは専用のプロセッサによってアクセスされ得る任意の別の媒体を含んでもよい。また、任意の接続が、コンピュータ可読媒体と適切に称される。例えば、ソフトウェアは、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、又は赤外線、無線、及びマイクロ波のような無線技術を使用して、ウェブサイト、サーバ、又は別の遠隔ソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、又は赤外線、無線、マイクロ波のような無線技術が、媒体の定義に含まれる。本明細書で使用されるようなディスク(disk)及びディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、XRFディスク、デジタル汎用ディスク(DVD)、フロッピーディスク及びブルーレイディスクを含み、ここで、ディスク(disk)は、通常、データを磁気的に再生し、一方、ディスク(disc)は、レーザを用いて光学的にデータを再生する。上記の組合せはまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0180】
ある特定の実施形態が、説明のために上述されたが、本特許文献の教示は、一般的な適用性を有し、上述された特定の実施形態に限定されない。従って、記載された実施形態の様々な特徴についての様々な変更、適応、及び組合せが、特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく実施され得る。