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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ビームライン圧力制御による粒子生成量
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
H01J37/317 C
H01J37/317 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023505458
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021040482
(87)【国際公開番号】W WO2022026130
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】63/057,640
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/351,842
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シューアー, ジェイ ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ハーマンソン, エリック ディー.
(72)【発明者】
【氏名】クー, ボン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】シェ, ツェ-ジェン
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-214261(JP,A)
【文献】特開平07-296764(JP,A)
【文献】特開平08-077959(JP,A)
【文献】特開平11-186185(JP,A)
【文献】特開2000-003881(JP,A)
【文献】特開2001-332208(JP,A)
【文献】特開2012-185953(JP,A)
【文献】特開2016-048665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームラインイオン注入装置を動作させる方法であって、
前記ビームラインイオン注入装置のプロセスチャンバ内で、基板の第1のセットに対して、第1の時間期間中にイオン注入手順を実施することと、
しきい値を超えたときに、
ビームラインの下流部分の圧力を分離すること、および
第2の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、既定の圧力に到達するように既定のガスを導入すること
によって、前記第2の時間期間中に、第1の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に基板の第2のセットに対して前記イオン注入手順を実施することと、
を含み、
前記しきい値は、
前記第1の時間期間中に前記ビームラインイオン注入装置内に蓄積する膜の膜厚の測定値、
前記ビームラインイオン注入装置の静電フィルタの電極で測定される容量しきい値、
前記静電フィルタの電極の電流測定の値、
前記第1の時間期間の持続時間、または
前記第1の時間期間中に注入される合計イオン注入ドーズ
を含む、方法。
【請求項2】
前記既定のガスは、窒素、Ar、Kr、Xe、H、空気、水蒸気、反応性ガス、CH、CH、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の圧力制御ルーチンを実施することは、前記既定のガスを前記プロセスチャンバ内に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記しきい値は、1E19/cmから5E20/cmの合計イオン注入ドーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の圧力制御ルーチンを実施することは、
前記しきい値に達したとき、および前記既定のガスを導入する前に、前記ビームラインの前記下流部分の圧力を分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の時間期間の後、
第4の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、前記既定の圧力に到達するように前記既定のガスを導入することによって、第2の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第2の圧力制御ルーチンの完了後、第5の時間期間中に基板の第3のセットに対して前記イオン注入手順を実施することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ビームラインイオン注入装置を動作させる方法であって、
前記ビームラインイオン注入装置のプロセスチャンバ内で、基板の第1のセットに対して、第1の時間期間中にイオン注入手順を実施することと、
第2の時間期間にわたってビームラインの少なくとも下流部分内へ、既定の圧力に到達するように既定のガスを導入することによって、前記第2の時間期間中に、第1の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に基板の第2のセットに対して前記イオン注入手順を実施することと、
第4の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、前記既定の圧力に到達するように前記既定のガスを導入することによって、前記第3の時間期間の後に、第2の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第2の圧力制御ルーチンの完了後、第5の時間期間中に基板の第3のセットに対して前記イオン注入手順を実施することと、
を含み、
前記第1の圧力制御ルーチンは、第1のしきい値に達したときに実施され、前記第2の圧力制御ルーチンは、第2のしきい値に達した後に実施され、前記第2のしきい値は、前記第1のしきい値よりも小さい、方法。
【請求項8】
前記第1のしきい値および前記第2のしきい値は、前記イオン注入手順の合計持続時間、前記イオン注入手順中に注入が行われる基板の総数、前記イオン注入手順中に実施される合計イオンドーズ、または前記イオン注入手順中の前記ビームラインイオン注入装置内の測定された欠陥レベルに基づく、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のしきい値および前記第2のしきい値は、
前記ビームラインイオン注入装置内に蓄積する膜の膜厚の測定値、
前記ビームラインイオン注入装置の静電フィルタの電極で測定される容量しきい値、または
前記静電フィルタの電極の電流測定の値
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ビームラインの前記下流部分は、エネルギーフィルタを備え、前記方法は、前記エネルギーフィルタの近位にプラズマを生成するために、プラズマフラッドガンまたは遠隔プラズマ源を使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマは、前記プロセスチャンバの壁、前記エネルギーフィルタの内面、またはそれらの組み合わせに蓄積される膜堆積物を変更するために、前記プロセスチャンバの壁、前記エネルギーフィルタの内面、またはそれらの組み合わせに衝突する複数のメタステーブル、ラジカル種、または分子種を生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ビームラインイオン注入装置であって、
イオン注入手順に従ってイオンビームを生成するためのイオン源と、
前記イオンビームをビームラインに沿ってプロセスチャンバへと導くための構成要素のセットと、
前記ビームラインの下流部分を前記ビームラインの上流部分から分離するための分離弁、既定のガスを前記ビームラインの前記下流部分内へと導くための、前記分離弁の下流に配設された少なくとも1つの流入口、および制御器を備える、圧力制御システムと
を備え、
前記制御器は、前記ビームラインイオン注入装置に圧力制御サイクルを実施するように指示するように構成され、前記圧力制御サイクルは、
前記プロセスチャンバ内で、第1の複数の基板に対して、第1の時間期間中に前記イオン注入手順を実施することと、
しきい値を超えたときに、
前記分離弁を動作させて、前記ビームラインの前記下流部分の圧力を分離すること、および
第2の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、既定の圧力に到達するように既定のガスを導入するこ
よって、第2の時間期間中に、第1の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に第2の複数の基板に対して前記イオン注入手順を実施することと
を含み、
前記しきい値は、
前記第1の時間期間中に前記ビームラインイオン注入装置内に蓄積する膜の膜厚の測定値、
前記ビームラインイオン注入装置の静電フィルタの電極で測定される容量しきい値、
前記静電フィルタの電極の電流測定の値、
前記第1の時間期間の持続時間、または
前記第1の時間期間中に注入される合計イオン注入ドーズ
を含む、ビームラインイオン注入装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの流入口は、プロセスチャンバ流入口、コリメータ流入口、またはエネルギーフィルタに結合されたエネルギーフィルタ流入口である、請求項12に記載のビームラインイオン注入装置。
【請求項14】
前記既定のガスは、窒素、空気、Ar、Kr、Xe、H、水蒸気、反応性ガス、CH、CH、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載のビームラインイオン注入装置。
【請求項15】
ビームラインイオン注入装置であって、
イオン注入手順に従ってイオンビームを生成するためのイオン源と、
前記イオンビームをビームラインに沿ってプロセスチャンバへと導くための構成要素のセットと、
前記ビームラインの下流部分を前記ビームラインの上流部分から分離するための分離弁、既定のガスを前記ビームラインの前記下流部分内へと導くための、前記分離弁の下流に配設された少なくとも1つの流入口、および制御器を備える、圧力制御システムと
を備え、
前記制御器は、前記ビームラインイオン注入装置に圧力制御サイクルを実施するように指示するように構成され、前記圧力制御サイクルは、
前記プロセスチャンバ内で、第1の複数の基板に対して、第1の時間期間中に前記イオン注入手順を実施することと、
第2の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、既定の圧力に到達するように既定のガスを導入することによって、第2の時間期間中に、第1の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に第2の複数の基板に対して前記イオン注入手順を実施することと、
前記第3の時間期間の後、第4の時間期間にわたって前記ビームラインの少なくとも前記下流部分内へ、前記既定の圧力に到達するように前記既定のガスを導入することによって、第2の圧力制御ルーチンを実施することと、
前記第2の圧力制御ルーチンの完了後、第5の時間期間中に第3の複数の基板に対して前記イオン注入手順を実施すること
含み、
前記第1の圧力制御ルーチンは、第1のしきい値に達したときに実施され、前記第2の圧力制御ルーチンは、第2のしきい値に達した後に実施され、前記第2のしきい値は、前記第1のしきい値よりも小さい、ビームラインイオン注入装置。
【請求項16】
前記第1のしきい値および前記第2のしきい値は、前記イオン注入手順の合計持続時間、前記イオン注入手順中に注入が行われる基板の総数、前記イオン注入手順中に実施される合計イオンドーズ、または前記イオン注入手順中の前記ビームラインイオン注入装置内の測定された欠陥レベルに基づく、請求項15に記載のビームラインイオン注入装置。
【請求項17】
前記第1のしきい値および前記第2のしきい値は、
前記ビームラインイオン注入装置内に蓄積する膜の膜厚の測定値、
前記ビームラインイオン注入装置の静電フィルタの電極で測定される容量しきい値、または
前記静電フィルタの電極の電流測定の値
を含む、請求項15に記載のビームラインイオン注入装置。
【請求項18】
前記ビームラインの前記下流部分は、エネルギーフィルタを備え、前記第1の圧力制御ルーチンを実施することは、前記プロセスチャンバの近位、前記エネルギーフィルタの近位、または両方の近位にプラズマを生成するために、プラズマフラッドガンまたは遠隔プラズマ源を使用することをさらに含む、請求項12または15に記載のビームラインイオン注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年7月28日に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる“IMPROVING PARTICLE YIELD VIA BEAM-LINE PRESSURE CONTROL”という表題の米国仮出願第63/057,640号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、概して、基板に注入するための装置および技術、ならびにより詳細には、改善されたビームラインイオン注入装置粒子生成量に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、衝撃によりドーパントまたは不純物を基板内に導入するプロセスである。半導体製造において、ドーパントは、電気的、光学的、または機械的性質を変えるために導入される。
【0004】
イオン注入システムは、イオン源および一連のビームライン構成要素を備え得る。イオン源は、チャンバを備え得、ここでイオンが生成される。イオン源はまた、チャンバの近くに配設された電源および引き出し電極アセンブリを備え得る。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器、第1の加速または減速ステージ、コリメータ、および第2の加速または減速ステージを含み得る。光ビームを操作する一連の光学レンズのように、ビームライン構成要素は、特定の種、形状、エネルギー、および/または他の品質を有するイオンまたはイオンビームをフィルタリングすること、集束させること、および操作することができる。イオンビームは、ビームライン構成要素を通過し、プラテンまたはクランプに取り付けられた基板の方へ向けられ得る。基板は、時としてロプラット(roplat)と称される装置によって、1つまたは複数の次元において移動され得る(例えば、平行移動、回転、および傾斜する)。
【0005】
多くのイオン注入装置において、下流静電モジュールは、イオンビームエネルギー、イオンビーム形状、およびイオンビームサイズを制御するために静電レンズとして機能し得る。静電モジュールは、イオンビームの方向を変えながら、イオンビームを最終エネルギーへと加速または減速させ得る。イオンビームの方向を変えることによって、エネルギー中性物質が排除され得、結果として、明確に定義されたエネルギーを有する最終ビームをもたらす。
【0006】
既知の静電モジュールは、例えば、対に配置される7つの上方および下方電極などの複数の電極対を採用し得、電極は、そこを通って進むイオンビームを束ねて誘導する。電極は、イオンビームから等距離で離間されたロッドとして配置され得る。ロッド/電極電位は、静電モジュール内に電場を作成して、イオンビームを減速、偏向、および集束させるように設定される。
【0007】
いくつかのビームライン注入装置は、高スループットのために設計され、すなわち、比較的より高いビーム電流が、基板内へのイオンのターゲットドーズの注入を迅速に実施するために使用される。生産性の目的のため、より多くの数の基板が、保守または他の計画されたダウンタイム間に注入のターゲットとされ得る。例えば、数千または数万の基板が、計画された保守の期間の間に注入され得る。
【0008】
高電流注入装置などのビームラインイオン注入装置の動作中の主な懸念のうちの1つは、注入される半導体ウエハなどの基板上で高いデバイス生成量を生成する動作条件を維持する能力である。1つの現行の課題は、注入後の基板上の粒子または微粒子欠陥の出現である。洗浄のための必要なダウンタイムに起因する生産性の損失を犠牲に、ビームラインの定期的または非定期的洗浄が、粒子汚染を低減するために実施され得る。
【0009】
これらおよび他の懸念事項に関連して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0010】
1つの実施形態において、ビームラインイオン注入装置を動作させる方法が提供される。本方法は、イオン注入装置のプロセスチャンバ内で、基板の第1のセットに対して第1の時間期間中にイオン注入手順を実施することを含み得る。本方法は、第2の時間期間にわたってビームラインの少なくとも下流部分内へ既定の圧力に到達するように既定のガスを導入することによって、第2の時間期間中に第1の圧力制御ルーチンを実施することをさらに含み得る。本方法はまた、第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に基板の第2のセットに対してイオン注入手順を実施することを含み得る。
【0011】
別の実施形態において、ビームラインイオン注入装置が提供される。イオン注入装置は、イオン注入手順に従ってイオンビームを生成するためのイオン源を含み得る。イオン注入装置は、イオンビームをビームラインに沿ってプロセスチャンバへと導くための構成要素のセットを含み得る。イオン注入装置はまた、既定のガスをビームラインの下流部分内へと導くための、分離弁および分離弁の下流に配設された少なくとも1つの流入口、ならびに制御器を備える、圧力制御システムを含み得、制御器は、ビームラインイオン注入装置に圧力制御サイクルを実施するように指示するように構成される。圧力制御サイクルは、プロセスチャンバ内で、第1の複数の基板に対して第1の時間期間中にイオン注入手順を実施することと、第2の時間期間にわたってビームラインの少なくとも下流部分内へ既定の圧力に到達するように既定のガスを導入することによって、第2の時間期間中に第1の圧力制御ルーチンを実施することと、を含み得る。圧力制御サイクルは、第1の圧力制御ルーチンの完了後、第3の時間期間中に第2の複数の基板に対してイオン注入手順を実施することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態によるイオン注入システムを実証する例示的な実施形態を示す図である。
図2A】専用モードにおけるウエハ数の関数としての注入されたウエハの欠陥挙動を説明する図である。
図2B】本開示の実施形態によるイオン注入装置の動作のためのウエハ数の関数としての注入されたウエハの欠陥挙動を説明する図である。
図2C】本開示の実施形態による圧力制御サイクルの適用の原理を説明する概略図である。
図2D】イオン注入装置のための基準保守サイクルを説明する概略図である。
図3】例示的なプロセスフローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は、必ずしも縮尺通りではない。図面は、表象にすぎず、本開示の特定のパラメータを表現することは意図されない。図面は、本開示の例示的な実施形態を描写することが意図され、したがって、範囲を制限するものと解釈されるべきではない。図面において、同じ数字は同じ要素を表す。
【0014】
本開示によるシステムおよび方法は、これより、本システムおよび方法の実施形態が示される添付の図面を参照して以後より充分に説明されるものとする。本システムおよび方法は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態が提供されることにより、本開示は、徹底的かつ全面的となり、また本システムおよび方法の範囲を当業者に充分に伝える。
【0015】
簡便性および明白性の目的のため、「上部」、「下部」、「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」、「横」、および「縦」などの用語は、図面に登場する際の半導体製造デバイスの構成要素の幾何形状および配向に関して、これらの構成要素およびそれらの構成部品の相対的な配置および配向を説明するために本明細書では使用されるものとする。用語は、具体的に述べられた言葉、それらの派生語、および同様の趣旨の言葉を含むものとする。
【0016】
本明細書で使用される場合、単数形で述べられ、「a(1つの)」または「an(1つの)」という言葉が先行する要素または動作は、潜在的には複数の要素または動作を同様に含むものと理解される。さらには、本開示の「1つの実施形態」への言及は、述べられた特徴を同じく組み込む追加の実施形態の存在を除外するものと解釈されることは意図されない。
【0017】
本明細書に提供されるのは、イオン注入装置内で処理される基板における改善された動作および低減された欠陥のための手法である。
【0018】
これより図1を参照すると、システム10を実証する例示的な実施形態が示され、システム10は、本開示によるイオン注入のための、ビームラインイオン注入装置、または「イオン注入装置」として使用され得る。一般的には、本実施形態によるビームラインイオン注入装置は、イオン源、およびイオンビームをビームラインに沿ってプロセスチャンバへと導くための構成要素のセットを含むことになる。図1の例では、システム10は、数ある構成要素の中でも、リボンビームまたはスポットビームなどのイオンビーム18を生成するためのイオン源14、および一連のビームライン構成要素を含む。イオン源14は、イオンを生成するためにガス24の流れを受け入れるためのチャンバを備え得る。イオン源14はまた、チャンバの近くに配設された電源および引き出し電極アセンブリを備え得る。いくつかの非限定的な実施形態において、ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器34、質量分解スリット(MRS)チャンバ36、およびエネルギーフィルタ40の上流に配設されたコリメータ38を含み得、このフィルタは、イオンビーム18の減速および/または加速をもたらし得る。
【0019】
例示的な実施形態において、ビームライン16の構成要素は、ある種、形状、エネルギー、および/または他の品質を有するようにイオンまたはイオンビーム18をフィルタリングすること、集束させること、および操作することができる。ビームライン16を通過するイオンビーム18は、プロセスチャンバ46内のプラテンもしくはクランプに取り付けられた基板15、またはエンドステーションの方へ向けられ得る。基板15は、1つまたは複数の次元において移動され得る(例えば、平行移動、回転、および傾斜する)。
【0020】
エネルギーフィルタ40は、イオンビーム18の偏向、減速、および焦点を独立して制御するように構成されるビームライン構成要素である。いくつかの実施形態において、エネルギーフィルタ40は、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)または静電フィルタEFである。エネルギーフィルタ40は、少なくとも1つの電極構成を規定する電極アセンブリとして配置され得る。電極構成は、エネルギーフィルタ40を通るイオンビーム18を処理するためにビームライン16に沿って連続して配置される複数の電極を含み得る。いくつかの実施形態において、静電フィルタは、イオンビームを導き、イオンビーム18を成形し、基板15に衝突する前にイオンビーム18を加速/減速させるために、イオンビーム18の上に配設された上方電極のセット、およびイオンビーム18の下に配設された下方電極のセットを含み得る。
【0021】
動作中、システム10は、半導体ウエハなどの一連の基板に注入するように動作し得る。基板15は、既知のイオン注入装置にあるような、注入のために連続形式で装填される一連の基板のうちの1つであり得る。高スループットモードの動作では、システム10は、計画されたダウンタイムの間隔の間に数千または数万の基板に注入するように動作し得る。
【0022】
システム10は、高スループット動作中に遭遇する懸念、具体的には、基板15における欠陥を受容可能なレベル以下に維持する能力、に対処する構成要素を含み得る。図1に示されるように、システム10は、分離弁50を含み得、この分離弁50は、質量分解スリット(MRS)チャンバ36とコリメータ38との間など、プロセスチャンバ46の上流に位置する。分離弁50は、ビームライン16の下流部分16Bの真空領域を、ビームライン16の上流部分16Bの真空領域から分離する役割を果たし得る。明示的には示されないが、ビームライン16は、概して1トール未満の動作圧力でイオンビーム18をイオン源14から基板15へと導くように構成される真空中央包囲部または隣接するチャンバのセットを含む。分離弁50は、例えば、下流部分16Bが上流部分16Aとは別個に通気されることを可能にし得る。図1では、分離弁50は、質量分解スリット(MRS)チャンバ36とコリメータ38との間に位置するが、他の実施形態において、分離弁50は、示される場所の上流もしくは下流にシフトされ得るか、または2つ以上の分離弁50、ビームラインに沿って置かれ得る。例えば、分離弁50は、コリメータ38とエネルギーフィルタ40との間、またはエネルギーフィルタ40とプロセスチャンバ46との間に置かれ得る。
【0023】
システム10はまた、ガスをビームライン16の下流部分内へと導くために、分離弁の下流に配置される様々な流入口を含み得る。図1に示されるように、コリメータ流入口52、エネルギーフィルタ流入口54、およびプロセスチャンバ流入口、またはプロセスチャンバ通気口56が提供され、これらの構成要素は、分離弁50の下流の場所の内外へガスを導くために使用され得る。プロセスチャンバ通気口56は、基板15の正面近くに位置するものとして示されるが、いくつかの実施形態において、プロセスチャンバ通気口56`として示されるプロセスチャンバ通気口は、図1にも描写されるように、基板15の裏側に向かって位置する。例えば、好適な例では、イオン注入が発生していないとき、窒素、空気、水蒸気、反応性ガス、または他のガスなどの抽気ガスの所与の圧力は、流入口または通気口のうちの1つまたは複数を通じて提供され得る。1つの例において、エネルギーフィルタ流入口54は、エネルギーフィルタ40の隣、またはエネルギーフィルタ40のチャンバのすぐ下流にあるプラズマフラッドガンの隣に位置し得る(プラズマフラッドガンの場所はPFGによって指定される)。いくつかの例において、プロセスチャンバ通気口56などの1つまたは複数の通気口は、ポンプに結合され得る。そのようなものとして、イオン注入が発生した後の所与の間隔で、ガスは、分離弁50が上流部分16Aを分離するために係合された後、1つまたは複数の場所において下流部分16B内へ抽気され得る。
【0024】
特に、本開示の実施形態によると、以下に詳述されるように、圧力制御ルーチンは、下流部分16B内など、ビームラインの1つまたは複数の場所に適用され得る。圧力制御ルーチンは、ビームラインの所与の部分からのガスの排出および注入条件の再確立の前に、既定の間隔にわたって既定の圧力に到達するようにガスをビームライン内へ導入することを伴い得る。上に記されたように、分離弁50のうちの1つまたは複数は、ビームラインに沿って異なる場所に置かれ得る。この様式では、下流部分16Bの1つまたは複数の構成要素は、ビームラインの他の構成要素から分離され得、その結果として、ターゲット構成要素は、個々に圧力制御ルーチンの対象になり得る。この手順の利点は、後に続く図に関して説明される。
【0025】
いくつかの実施形態において、システム10は、1つまたは複数のガス種を下流部分16B内へ向けるために、ガスマニホールド62を通じてなど、流入口に結合される制御器60を含み得る。制御器60は、下流部分の通気口にさらに結合され得、その結果として、下流部分16B内外への循環ガスは、所望の通りに制御され得る。制御器60は、以下に詳述されるような圧力制御ルーチンを指示するように構成され得る。少なくともその点において、制御器60は、圧力制御ルーチンを実行するための信号を生成、送信、受信するために、メモリ、1つまたは複数のプロセッサ、インターフェースなどの適切なハードウェア構成要素を含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、エネルギー放電源が、例えば、静電エネルギーフィルタ40を含む、下流部分16Bのターゲット領域の内面に衝突するために使用され得る、イオン、メタステーブル種、ラジカル種、または分子種などのプラズマ種を生成するために下流部分16Bに設けられ得る。放電源の例は、エネルギーフィルタ40に隣接して位置付けられる遠隔プラズマ源64として示される。
【0027】
本開示の実施形態によると、下流部分16B内など、ビームライン16内の圧力は、プラズマフラッドガンの領域PFG、またはプロセスチャンバ46、またはコリメータ38など、基板15に近位の領域内外へ1つまたは複数の指定のガスを定期的に流す様式で制御され得る。本発明者らは、特定の条件下では、基板上の粒子数が、基板内への注入の長期動作中、許容できないレベルまで蓄積し得、ここでは、下流部分16B内のビームライン圧力の制御が、粒子数を減らすことに有益な影響を有し得るということを発見した。
【0028】
この挙動を強調するため、図2Aは、専用注入プロセス中のウエハ数の関数としての注入されたウエハの欠陥挙動を示す。図2Bは、本開示の実施形態によるイオン注入装置の動作のためのウエハ数の関数としてのイオン注入されたウエハの欠陥挙動を示す。これらの例において、高電流注入装置は、同じ注入レシピがすべてのウエハに注入するために使用される専用モードで、一連の基板に注入するように動作される。図2Aにおいて、一連のウエハの注入は、全体的に、合計でおよそ12,000ウエハについて中断なしに進行し、欠陥(アダー(adder))の測定は数百から千のウエハごとの間隔で実施される。欠陥レベルにはいくらかの変動が存在するが、平均欠陥レベルは、概して、ウエハ数の増加と共に単調に増加し、測定値のかなりの割合が許容可能な限界を超える。故に、イオン注入装置の専用使用は、経時的に、許容できないレベルの欠陥を生成し得、したがって、リン系ウエハの高スループット注入に対する課題を提示する。
【0029】
これより図2Bに移ると、図2Aの場合のように、他の注入レシピが使用されない専用イオン注入の「マラソン」の結果が示されている。図2Aのプロトコルとは異なり、図2Bの例においては、特定の間隔でイオン注入は休止され、ビームラインが下へポンピングされ、注入が再開される前に、ビームラインは、窒素ガスで圧力制御される。図2Aの圧力制御ルーチンは、ビームラインの排出および注入条件の再確立が発生する前に、ある間隔にわたって、窒素ガスをビームライン内へ導入することを伴う。いくつかの非限定的な例において、窒素ガスは、下流部分16Bの1つまたは複数の領域などのビームライン内で既定の圧力に到達するように導入され、圧力は、数トール、数百トール、または1気圧まで増加される。この圧力は、本開示の異なる実施形態によると、1分から1時間ほどの持続時間にわたって維持され得る。図2のデータは、圧力制御ルーチンが窒素を1気圧の圧力まで通すことに関与するデータを表す。異なるインスタンスで注入されるウエハの測定値は、図2A内の手順と同様に、最大で合計約16,000ウエハまで取られる。図2Aの場合のように、欠陥生成量は、ウエハ数の増加と共に増加する傾向がある。例えば、20,000のウエハ数から24,000のウエハ数の間では、欠陥生成量は、ウエハ数の増加と共に増加し、その後に、第1の意図的な圧力制御ルーチンが、およそ24,000のウエハ数において、窒素を使用してビームラインに対して実施される。注入が24,000のウエハ数において再開されるとき、粒子性能は、直ちに約2桁改善し、約100から約1へ低下する。粒子数は、次いで、ウエハ数の増加と共に増加し、およそ27,000のウエハ数において100の値を超える。およそ28,000のウエハ数において、第2の意図的な圧力制御手順が、窒素を使用してビームラインに対して実施される。注入が28,000のウエハ数において再開されるとき、粒子性能(欠陥/アダー)は、直ちに再び著しく約2桁改善し、約200から約1へ低下する。再び、欠陥生成量は、最大で35,000のウエハ数までウエハ数の増加と共に増加し、50の許容可能な限界に近づくレベルに達する。しかしながら、ウエハ数の増加に伴う欠陥の全体的な増加は、単調ではなく、むしろ、圧力制御ルーチンの実施の際は、はるかにより低い値に直ちにリセットされる。
【0030】
これらの結果によると、高電流注入装置のビームライン圧力の制御は、注入された基板における欠陥レベルを経時的に制限するために、基板の注入の長期動作中、決定された間隔で提供され得る。図2Aおよび図2Bの例では、高電流専用注入結果が、所与の注入種について示される。しかしながら、他の種の他の高電流注入もまた、経時的に欠陥生成の増加を結果としてもたらし得、ビームラインの下流部分などのビームラインの少なくとも一部分のために圧力制御ルーチンを定期的に実施することから恩恵を受け得る。図2Bの専用注入の例では、圧力制御しきい値は、決定または計算された欠陥レベルが許容可能な限界に近づく時点において注入動作を休止するように設定され得る。故に、図2Bの例において、圧力制御が約4000ウエハごとの間隔で実施されるとき、粒子(欠陥)数は、100以下になることが予期され得る。故に、100の値が許容可能な欠陥限界を表す場合、約4000のウエハ間隔の間隔での圧力制御ルーチンの実施は、許容可能な欠陥限界以下に欠陥レベルを維持し得る。当然ながら、異なる欠陥限界(100より大きいか、100より小さいか、のいずれか)では、連続する圧力制御ルーチンの実施の間に注入されるウエハ間隔のサイズは、増加または減少され得る。
【0031】
本開示の追加の実施形態によると、圧力制御レジームを実施するための間隔は、合計注入ドーズに従って設定され得る。図2Bのデータの場合、各ウエハは、1E15/cmの数倍に等しいドーズで注入され、4000ウエハのための合計注入ドーズは、1E19/cmよりも大きいことを意味する、ということに留意されたい。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、粒子数の増加は、ビームライン内で収集するイオン種からの堆積の量における増加によって少なくとも部分的に引き起こされ得、この堆積の量は、経時的にビームラインを通って導かれる合計イオンドーズに比例する。故に、注入されたウエハの数に基づいて圧力制御ルーチンを実施するためのしきい値を設定する代わりに、いくつかの実施形態において、このしきい値は、合計注入ドーズに従って設定され得る。許容可能な限界に達する欠陥レベルの生成に対応する合計イオンドーズは、注入種により変化し得るが、この範囲は、いくつかの非限定的な実施形態において、1E18/cmから5E20/cmの間、より具体的には、1E19/cmから1E20/cmの間であり得る。故に、特定の実施形態によると、圧力制御ルーチンを実施するためのしきい値は、複数の基板に注入するために生成される合計イオンドーズが、1E18/cmから1E20/cmの間、より具体的には1E19/cmから1E20/cmの間に達するときであり得る。
【0032】
さらなる実施形態において、圧力制御手順を実施するための間隔またはインスタンスは、静電フィルタまたはビームラインのエンドステーション内など、注入中に種の堆積からビームライン内に蓄積する膜の膜厚の測定によって決定され得、この膜厚測定は、既知の手段によって実施され得る。さらなる実施形態において、圧力制御ルーチンを実施するためのインスタンスは、静電フィルタ内の、ロッドなどの静電電極の電流測定によってトリガされ得る。故に、電極において集電される電流の差がしきい値に達すると、圧力制御ルーチンが実施され得る。1つの特定の実施形態において、圧力制御ルーチンを実施するためのインスタンスは、静電フィルタのロッド(電極)において実施される容量測定によってトリガされ得、この容量値は、電極に蓄積する膜厚を示すものである。故に、容量がしきい値に達すると、圧力制御ルーチンが開始され得る。
【0033】
図2Cは、本開示の実施形態による、基板処理効率を改善するための圧力制御サイクルの適用の原理を説明する概略図である。いくつかの例において、圧力制御サイクルは、以下に詳述されるように、様々な動作を指示するために少なくとも部分的に制御器60によって制御され得る。図2Cは、ビームラインが予防保守の間に動作している合計時間期間の持続時間を指す、Tprocessingと名付けられるエンティティを示す。予防保守は、TPMとして示され、この予防保守は、ビームラインをシャットダウンすること、ならびに侵食部分を洗浄および/または交換することなど、保守手順のためにビームラインの様々な部分を開けることを必要とする。有用な結果は、エンティティTprocessingの長さを増加することである。図2Cの例において、サイクリングは、第1の時間期間(P1として示される)中に基板の第1のセットに対してイオン注入手順を実施することと、第2の時間期間(P2として示される)中に第1の圧力制御ルーチンを実施することとの間に発生する。
【0034】
1つの例において、最低限、圧力制御サイクルは、第1の時間期間(P1として示される)中に基板の第1のセットに対してイオン注入手順を実施すること、第2の時間期間(P2として示される)中に第1の圧力制御ルーチンを実施すること、および図4内のP3によって表されるような、第3の時間期間において、基板の第2のセットに対してイオン注入を実施することからなり得る。
【0035】
イオン注入手順を実施することと圧力制御ルーチンを実施することとの間のこのサイクリングは、繰り返され続け得、追加のサイクルは、図2Cにおいて、第2の圧力制御ルーチンが実施される第4の時間期間P4、イオン注入手順が基板の第3のセットに対して実施される第5の時間期間P5、および第3の圧力制御ルーチンが実施される第6の時間期間P6などによって表される。本開示の実施形態によると、所与のイオン注入手順の持続時間は、しきい値を満たすか、またはこれを超えるときに決定され得る。
【0036】
前述の例において、しきい値は、処理されている基板(ウエハ)の合計数、いくつかのウエハにわたる合計イオン注入ドーズ、または欠陥レベルを表し得る。故に、いつしきい値条件が満たされるのかは、いくつかの例において、処理されている基板の数など、既定の基準によって確立され得る一方、いくつかの例において、いつしきい値が満たされるのかは、より動的に決定され得る。例えば、合計注入イオンドーズは、同じ注入レシピが各基板について繰り返される場合は特に、処理されている基板の数と相関され得るが、合計注入イオンドーズは、各基板の注入の測定または記録によってより正確に決定され得る。さらには、しきい値の尺度としての欠陥レベルの使用は、プロセスチャンバ内に配設される堆積センサまたは粒子カウンタによってなど、様々な様式で動的に実施され得る。
【0037】
これより図2Cに戻ると、所与の注入期間内に示される一連の曲線は、プロセスチャンバ内の測定された堆積厚さ、基板上の粒子数、または他のパラメータなど、目的のパラメータの増加を概略的に表す。しきい値決定のいくつかの例において、目的のパラメータは、処理される基板の数など、時間と共に線形的に増加し得るが、他の例において、目的のパラメータは、時間と共に非線形的に増加し得る。特定の処理条件下で、本発明者らは、欠陥レベルに関連したパラメータが、時間と共に非線形的に増加し得ること、および実際には、図2Cにおいて示唆されるように、時間の増加と共により急速に増加し得る、ということを観察した。故に、図2Cにおいて、期間P1の終わりに、目的のパラメータは、より急速に増加してしきい値に達し、この時点で、第1の圧力制御ルーチンが開始される。
【0038】
図2Cにおいてさらに示唆されるように、いくつかの例において、連続注入期間(P3、P5など)の持続時間は低減され得る。言い換えると、各連続注入期間中、しきい値条件は、より急速に増加して到達され得る。所与の時点で、少なくとも1つの圧力制御ルーチンが実施された後、注入装置は、シャットダウンされ得、TPMによって示される予防保守期間が計画される。それにもかかわらず、上に説明されるような圧力制御ルーチンの実施は、依然として、予防保守が固定数の基板、もしくは注入時間、または他の基準に基づいて計画され得る今日の手順よりも効率的であり得る。圧力制御ルーチンの持続時間(P2、P4、P6)は、ちょうど1時間またはそれ未満の規模であり得るが、後処理時間を含む予防保守の持続時間は、数時間から12時間の規模であり得、注入期間の持続時間は、20~60時間など、多くの時間または数十時間の規模であり得るということに留意されたい。
【0039】
図2Dは、基準保守サイクルに従うイオン注入装置の動作を説明する概略図である。この例では、イオン注入装置は、注入および予防保守(PM)の期間を経てサイクルされるが、本実施形態の圧力制御ルーチンを実施していない。そのようなものとして、所与の注入手順について、イオン注入装置は、注入期間の持続時間が同じままである連続注入期間(T、T、およびTとして示される)を通して動作され得る。注入期間には、示されるように、一連の予防保守期間が点在される。予防保守期間は、曲線によって示されるように、浸食または汚染部分の洗浄および/または交換が汚染物の蓄積に起因していつ必要になり得るかの予測に基づいて計画され得る。図2Dに従うイオン注入装置の動作の顕著な特徴は、注入が発生する期間である注入ON時間の相対デューティサイクルが、図2Cの実施形態についての注入ON時間のデューティサイクルよりも小さいことである。さらには、予防保守が発生している間隔であるPM時間の相対PMデューティサイクルは、図2Dにおいては、図2CのPMデューティサイクルよりも比較的高く、比較的より多くの時間が、図2Dの参考事例において保守を実施することに費やされることを意味する。
【0040】
本開示の他の実施形態において、天然ガスを使用した定期的な圧力制御に加えて、プラズマ源の使用は、粒子レベルを許容可能なレベルにさらに維持するために、静電フィルタ領域を含む基板に近位の領域内の膜を変更する種を生成するために、プラズマを(例えば、mTorrの圧力から大気圧で)生成するために採用され得る。このプラズマ源は、粒子源として作用し得る材料をより効率的に除去するために、圧力制御ルーチンの適用と併せてビームラインの内面に衝突するために使用され得る、イオン、メタステーブル種、ラジカル種、または分子種などのプラズマ種を生成し得る。
【0041】
図3は、プロセスフロー300として示される、例示的なプロセスフローを描写する。ブロック302において、所与の基板「ラン」が開始され、ここで、一連の基板がイオン注入システムのビームラインのエンドステーション(プロセスチャンバ)内で第1の間隔にわたって注入される。いくつかの非限定的な例において、基板は、ボロン、ヒ素、炭素、またはリン注入など、専用レシピを使用して注入されるウエハであり得る。そのようなものとして、欠陥(粒子)レベルは、基板ラン中、増加するウエハ数と共に増加する傾向があり得る。
【0042】
決定ブロック304において、圧力制御しきい値に達したかどうかに関する定期的なチェックがイオン注入システムによって行われ得る。圧力制御しきい値は、既定の数のウエハに対応し得るか、または第1の間隔にわたって実施される合計イオンドーズに対応し得る。圧力制御しきい値は、この値を超えると、粒子レベルが許容可能な限界に達するか、またはこれを超えることが予測される値を表し得る。そうでない場合、フローは、ブロック302へ進み、注入が継続する。
【0043】
圧力制御しきい値に達した場合、フローは、決定ブロック306へと進み、ここで、基板ランが完了するかどうかに関して決定がなされる。そうである場合、フローは終了し、注入が終了する。そうでない場合、フローは、ブロック308へ進む。
【0044】
ブロック308において、ビームラインの下流部分は、分離される。ビームラインの下流部分は、例えば、コリメータのすぐ上流に位置する分離弁に係合することによって、分離され得る。
【0045】
ブロック310において、ビームラインの少なくとも下流部分は、圧力制御される。窒素、空気、水蒸気、反応性ガス、または他のガスなどの抽気ガスの所与の圧力は、下流部分内など、ビームライン内に提供される流入口のうちの1つまたは複数を通じて提供され得る。
【0046】
ブロック312において、注入条件は、専用のボロンまたはリンまたは炭素またはヒ素イオン注入など、注入を再開するようにリセットされる。リセットは、1分から1時間などの特定の間隔の後、抽気ガスを外へポンピングし、次いで注入種をイオン源に提供し、注入を再開することを伴い得る。
【0047】
プロセスフロー300の1つの変異形において、ブロック308の動作は、スキップされ得、ビームラインの圧力制御は、ブロック310内のビームライン全体にわたって発生し得る。
【0048】
本実施形態は、少なくとも以下の利点を提供する。第1の利点は、定期的な圧力制御ルーチンを実施することによって、注入されている基板内の汚染のレベルが、より大量の基板について許容可能な範囲内に維持され得ることである。別の利点は、圧力制御ルーチンがビームラインシャットダウンなしにより低いレベルの欠陥を維持するため、ビームラインの高価かつ時間のかかるシャットダウンおよびビームライン部品の洗浄の頻度が低減され得ることである。
【0049】
本開示は、本明細書に説明される特定の実施形態によって、範囲が制限されないものとする。実際、本明細書に説明されるものに加えて、他の様々な実施形態および本開示に対する修正は、前述の説明および添付の図面から当業者には明白であるものとする。故に、そのような他の実施形態および修正は、本開示の範囲内に入ることが意図される。さらには、本開示は、特定の目的のために特定の環境における特定の実装形態の文脈で本明細書に説明されているが、当業者は、有用性がそれらに限定されないこと、および本開示が任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するものとする。故に、以下に明記される特許請求項は、本明細書に説明される本開示の全範囲および主旨を考慮して解釈されるものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3