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特許7587747蓄電装置、その充電方法、および、その充電制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】蓄電装置、その充電方法、および、その充電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241114BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020174921
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022066025
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】蔀 貴行
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205384(JP,A)
【文献】特表2013-524748(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155986(WO,A1)
【文献】特開2015-100195(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池、前記電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路、および、前記二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段を備えた複数の電池パックと、
前記複数の電池パックを並列接続するにあたり、前記パック制御手段を制御可能な装置制御手段と、を備え、
前記装置制御手段は、前記複数の電池パックを並列接続するにあたり、前記電池パックの間の電位差が所定の第一電位差以上である場合は、比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックのうち最大電流がながれる電池パックにつき、電流が所定の電流未満になった段階又は電圧が所定の電圧を超えた段階で、前記最大電流が流れる電池パックについて比較的出力が大きい出力経路を有効にし、前記電位差が所定の第二電位差未満になった段階で、前記複数の電池パックの他の全てについて比較的出力が大きい出力経路を有効にするよう前記パック制御手段を制御可能である蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記パック制御手段は、前記電池の電圧の監視機能を備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電装置において、
前記電池パックは前記パック制御手段と接続された外部とのインターフェースを備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
電池、前記電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路、および、前記二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段を備えた複数の電池パックと、前記パック制御手段を制御可能な装置制御手段と、を備えた蓄電装置の充電方法であって、
前記複数の電池パックを並列接続して充電するにあたり、前記電池の間の電位差が所定の第一電位差以上である場合、比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックのうち最大電流がながれる電池パックにつき、電流が所定の電流未満になった段階又は電圧が所定の電圧を超えた段階で、前記最大電流が流れる電池パックについて比較的出力が大きい出力経路を有効にし、前記電位差が所定の第二電位差未満になった段階で、前記複数の電池パックの他の全てについて比較的出力が大きい出力経路を有効にする蓄電装置の充電方法。
【請求項5】
電池、前記電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路、および、前記二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段を備えた複数の電池パックと、前記パック制御手段を制御可能な装置制御手段と、を備えた蓄電装置の充電制御プログラムであって、
前記複数の電池パックを並列接続して充電するにあたり、前記電池の間の電位差が所定の第一電位差以上である場合、比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックのうち最大電流がながれる電池パックにつき、電流が所定の電流未満になった段階又は電圧が所定の電圧を超えた段階で、前記最大電流が流れる電池パックについて比較的出力が大きい出力経路を有効にし、前記電位差が所定の第二電位差未満になった段階で、前記複数の電池パックの他の全てについて比較的出力が大きい出力経路を有効にする蓄電装置の充電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、その充電方法、および、その充電制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに並列接続される複数の電池と、各電池について設けられ出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路と、二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替える制御手段とを備えた蓄電装置が知られている。
例えば特許文献1に開示の蓄電装置は、複数の電池ブロックを並列接続する充放電メインバスに対し、各電池ブロックとの間に保護抵抗を直列に接続し、その保護抵抗に対しスイッチを並列に配置する。各電池ブロックの間の電圧差が大きい間はスイッチをオフとすることで、保護抵抗を介して各電池ブロックの間に電流が流れる。これによって、電池ブロックを互いに並列接続するときに、各電池ブロックの間に過大な電流が流れることが防止され、緩やかに各電池ブロックの間の電圧差が解消される。ある程度電圧差が小さくなったところでスイッチをオンとすることで、各電池ブロックの間の電圧差を一気にゼロとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、電池ブロックとして、電池と、電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路と、二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段とを一般的に備える電池パックを用いる場合に、コスト軽減の余地が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明に係る蓄電装置は、電池、前記電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路、および、前記二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段を備えた複数の電池パックと、前記複数の電池パックを並列接続するにあたり、前記パック制御手段を制御可能な装置制御手段と、を備え、前記装置制御手段は、前記複数の電池パックを並列接続するにあたり、前記電池パックの間の電位差が所定の第一電位差以上である場合は、比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックのうち最大電流がながれる電池パックにつき、電流が所定の電流未満になった段階又は電圧が所定の電圧を超えた段階で、前記最大電流が流れる電池パックについて比較的出力が大きい出力経路を有効にし、前記電位差が所定の第二電位差未満になった段階で、前記複数の電池パックの他の全てについて比較的出力が大きい出力経路を有効にするよう前記パック制御手段を制御可能である。
【発明の効果】
【0005】
電池と、電池からの出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路と、二以上の出力経路のなかで有効にするものを切り替えるパック制御手段とを備える電池パックを複数備えた蓄電装置のコストを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】電源システムの全体の構成図。
図2】充電時の電源システムにおける電力の流れの説明図。
図3】電池パックによる補助時の電源システムにおける電力の流れの説明図。
図4】電池パックの構成例の説明図。
図5】電池パックをmSWで並列接続した場合の電流の流れの説明図。
図6】電池パックをmSWで並列接続した場合の電圧及び電流の変化の説明図。
図7】電池パックをsSWで並列接続した場合の電流の流れの説明図。
図8】最初にsSWで電池パックを並列接続し、そのあとmSWに切換えた場合の電流及び電圧の変化の説明図。
図9】電池パック間の電流がIth以下に低下後、最大電流が流れている電池パックのmSWをオンに切換えた状態の電流の説明図。
図10】変形例に係る切換方法の電流及び電圧の変化の説明図。
図11】変形例の制御例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を電源システムの補助電源として蓄電装置に適用した実施形態について説明する。図1は、電源システム11の全体の構成図である。この電源システム11では、蓄電装置としての蓄電システム12は、複数の電池パック14を備え、系統電源13から受け取った電力を電池パック14に蓄電しておく。蓄電システム12は、負荷15の消費電力が大きくなった場合に一時的に電池パック14から給電を行うことで、系統電源13にかかる負荷を軽減させる。蓄電システム12は、双方向AC/DC16、双方向DC/DC17及び蓄電システムコントローラ18も備える。この蓄電システムコントローラ18が装置制御手段に相当する。
【0008】
図2は、蓄電システム12の電池パック14への充電時の電源システム11における電力の流れについて説明図である。図3は、系統電源13を電池パック14からの放電電力で補助しながら負荷15へ給電する時の電源システム11における電力の流れについての説明図である。蓄電システム12は電池パック14を複数並列に接続した状態で外部回路により複数の電池パックに対し充放電を行うものといえる。
【0009】
双方向AC/DC16は、電池パック14への充電動作時は図2に示すように系統電源13から交流電力を直流に変換し双方向DC/DC17へ出力する。双方向AC/DC16は、電池パック14からの放電動作時は図3に示すように双方向DC/DC17から出力された直流電力を交流へ変換し負荷15へ給電する。
【0010】
双方向DC/DC17は、電池パック14への充電動作時は図2に示すように双方向AC/DC16から出力された直流電力を直流のまま電池パック14の電圧値まで電圧変換を行う。双方向DC/DC17は、電池パック14からの放電動作時は図3に示すように電池パック14からの直流電力を双方向AC/DC16に適した電圧値まで変圧し出力する。
【0011】
電池パック14は、EV、PHV、HEVなどで利用されていたリユース品の電池パックであり、複数のリチウムイオンバッテリー、もしくはニッケル水素電池からなる組電池を内蔵する。電池パック14は、リユース品ではなく新品の電池パックでもよい。また、電池パック14は、組電池を制御するための制御回路や電池の出力を外部回路へ接続するためのスイッチ回路、パック内部を冷却するための冷却用ファンなども内蔵する。電池パック14は並列接続で集約され双方向DC/DC17へ接続される。以下、図示の例のように4つの電池パック14を備える構成で説明を行うが、電池パック14の数量に制約はない。
【0012】
図4は電池パック14の構成例の説明図である。電池パック14は、複数の蓄電池20が直列に接続された組電池21を備える。蓄電池20はリチウムイオンバッテリーやニッケル水素電池などである。各蓄電池20には電池パックコントローラ22が接続されている。この電池パックコントローラ22が、各蓄電池20の電圧監視や電圧調整などを行なう。つまり、電池パックコントローラ22は、電圧監視機能や電圧調整機能を有する。電池パック14は、組電池21の出力側に電流センサ23を備える。この電流センサ23は組電池21からの電流値を計測する。
【0013】
組電池21の出力側には、大電流を流すための第一経路24と出力電流を制限して小さい電流を流すための第二経路25の二つ経路がある。第二経路25は電流制限用の制限抵抗26を有する。第一経路24が比較的出力が大きい出力経路に相当し、第二経路25が比較的出力が小さい出力経路に相当する。前者は比較的大電流の大電流経路であり、後者が比較的小電流の小電流経路ともいえる。
【0014】
第一経路24は開閉のためのMainSW(以下、mSW)27を有し、第二経路25は開閉のためのSubSW(以下、sSW)28を有する。これらの二経路と両スイッチはスイッチ回路29を構成している。以下、mSW27を閉じて第一経路24を有効にすることをmSW27を有効にするという。同様に、sSW28を閉じれば第二経路25を有効にすることをsSW28を有効にするという。mSW27とsSW28の開閉は、電池パックコントローラ22で行う。つまり、電池パックコントローラ22がパック制御手段に相当する。
【0015】
電池パック14は、パック内部を冷却するための冷却ファン30も備えている。電池パック14内の装置は、インターフェースI/F31経由で電池パック14外の蓄電システムコントローラ18から制御される。
【0016】
図5は、電池パック14をmSW27で並列接続した場合の電流の流れの説明図である。各電池パック14などを区別するため電池パック14はPn、電池の電圧はVn、電池パックの内部抵抗はrn、制限抵抗26はRn、mSW27はmSWn、sSW28はsSWn、流れる電流はInで示す。添え字n[1~4]が同じものは、同じ電池パック14についてのものである。
【0017】
電池パック14は蓄電池20の劣化や周辺回路の故障が発生した場合、交換作業が必要となる。電池パック14を交換した場合、交換によって装着された電池パック14の電圧が、もともと並列接続されて動作していたその他の電池パック14の電圧と異なるという問題がある。ここでは、電池パック14が故障により新しい電池パック14に交換され、新しい電池パック14がその他の電池パック14よりも低い電圧であった場合について説明する。便宜上、各パラメータを以下の値として説明を行うが、他の値の場合も基本的な考え方は同じである。
【0018】
電池パック電圧V1~V4・・・V1、V3、V4=200V、V2=150V
組電池内部抵抗r・・・r=0.5Ω
制限抵抗R1~R4・・・R1、R2、R3、R4=40Ω
【0019】
電池パック14の交換後に特別な対応を行わずmSW27で並列接続した場合、電池パック14間の電位差により電池パック14内を電流(I1~I4)が流れる。図6は、電池パック14をmSW27で並列接続した場合の電圧及び電流の変化の説明図である。パック内を流れる電流Inは電池パック14間の電位差と組電池21の内部抵抗rで決定される。
【0020】
各パラメータを上記とした場合、電池パックP1、P3、P4には25A、電池パックP2には75Aもの電流が瞬間的に流れることとなる。このような25Aや75Aといった大電流は、蓄電池20や周辺回路の破損を引き起こす可能性がある。
【0021】
本実施形態では、電池パック14の並列接続時にまずsSW28を有効にし、電池パック14間の電位差が十分小さくなった段階でmSW27を有効にする。図7は、電池パック14をsSW28で並列接続した場合の電流の流れの説明図である。図8は、最初にsSW28で電池パック14を並列接続し、そのあとmSW27に切換えた場合の電流及び電圧の変化の説明図である。
【0022】
図7に示すように、sSW28を有効にした場合、直列に接続されている制限抵抗26(R1~R4)にて電池パック14間を流れる電流は大幅に制限される。制限抵抗26を40Ωとした場合、電池パックP1、P3、P4には0.3A、電池パックP2には0.9Aとなる。この状態を維持することで、図8に示すように、緩やかに各電池パック14間の充放電が行われ徐々に電池パック14間の電位差が小さくなる。電池パック14間の電位差が十分小さくなった段階で、mSW27を有効にすることで簡単かつ安全に電池パック14の並列接続が行える。このようなsSW28やmSW27の切り替え制御を、蓄電システムコントローラ18が各電池パック14の電池パックコントローラ22を介して行う。つまり、蓄電システムコントローラ18が各電池パック14の電池パックコントローラ22を制御可能である。
【0023】
以上、本実施形態では、装置制御手段としての蓄電システムコントローラ18が、複数の電池パック14を並列接続するにあたり、パック制御手段としての電池パックコントローラ22を制御可能である。つまり、蓄電システムコントローラ18が、電池パックコントローラ22を介して、電池パック14内にある出力が互いに異なるものとなる二以上の出力経路である第一経路24と第二経路25との中で有効にするものを切り替え可能である。よって、電池パック14の比較的出力が小さい経路を有効にすることで、この経路を介しての充放電により、複数の電池パック14を並列接続するにあたっての電池パック間の電位差を小さくできる。このため、蓄電システム12における電池パック14以外の本体部分に、複数の電池パック14を並列接続するにあたっての電池パック間の電位差を小さくするための回路部分を設ける必要がなく、その分、コストを抑えることができる。
【0024】
複数の電池パックを並列接続するにあたっての出力経路の切り替えは、種々のやり方があり得る。電池パックを並列接続するにあたり、電池パック間の電位差によらずに、まず比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックにつき、一度に、または、順次、比較的出力が大きい出力経路を有効にするという切り替え方法を採用できる。
【0025】
また、次のような切り替え方法を採用することもできる。電池パックを並列接続するにあたり、電池パックの間の電位差が所定の第一電位差以上である場合は、比較的出力が小さい出力経路を有効にし、その後、前記複数の電池パックにつき、一度に、または、順次、比較的出力が大きい出力経路を有効にする。この比較的出力が大きい出力経路を有効にするタイミングは、所定の第一電位差未満になった段階でもよいし、所定の第一電位差とは異なる所定の電位差未満になった段階でもよい。つまり、所定の第二電差は所定の第一電位差と同じでもよいし、異なっていてもよい。電池パックを並列接続するにあたり、電池パックの間の電位差が所定の第一電位差未満である場合は、最初から複数の電池パックにつき、一度に、または、順次、比較的出力が大きい出力経路を有効にする。
【0026】
電池パック間の電位差は、蓄電システムコントローラ18が、電池パックコントローラ22による各蓄電池20の電圧監視結果を用いて各電池パックの電位情報を取得し、この電位情報から求めることができる。所定の第一電位差などとの比較も、蓄電システムコントローラ18で行う。蓄電システムコントローラ18や電池パックコントローラ22はマイクロコンピュータなどを用いて構成でき、蓄電システムコントローラ18は以上の切り替えの動作制御のプログラムを実行することで、以上の切り替え方法を実行する。
【0027】
以上の蓄電システム12はEVなどの充電に用いられる大量の電力を短時間に必要とする急速充電器の補助電源として好適である。近年EVへ搭載される電池容量の増大に伴い、電力増加の傾向はさらに加速している。そこで系統電源からの電力供給だけではなく、複数の蓄電池を組み合わせた電池パック(補助電源)からの電力を用いることで、系統電源の出力電力を抑えながら急速充電器の最大出力電力を高めることができる。
【0028】
[変形例]
sSW28を有効にして電池パック14間の電位差が十分小さくなった段階で全てのmSW27を同時に有効にする場合に比べて、電池パック14間の電位差を軽減させるのに要する時間を短縮できる各スイッチの切り替え制御の一例について説明する。この切り替え制御例は、複数の電池パックを並列接続する場合に、電池パック14間の電位差が許容範囲(以下、Vth)より大きいとき、最初に全sSW28を有効にし、小さい電流で電池パック14間の充放電を開始する。この閾値Vthが所定の第一電位差に相当する。そして、各電池パックに流れる最大電流が所定の電流の値(Ith)以下に下がった段階で、複数の電池パック14のうち最大電流が流れている電池パックの電流経路を大電流経路へ切換える。そして、各電池パックの電位差が所定の値(Vth)以下に下がった段階で全ての電池パックの電流経路を大電流経路に切換える。このときの閾値Vthは所定の第二電位差に相当し、上記許容範囲の閾値と同じでもよく、異なってもよい。同じ値であるほうが好ましい。
【0029】
図9は、電池パック14間の電流がIth以下に低下後、上述の具体例のように、他のよりも電圧が低く最大電流が流れている電池パックP2のsSW2をオフしmSW2をオンに切換えた状態の電流の説明図である。図10は、最初にsSW28で電池パック14を並列接続し、電池パック14の電流値がIth以下に低下後、mSW2のみ有効にし、電池パック14の電位差がVth以下に低下後全mSW27を有効に切換えた場合の電流及び電圧の変化の説明図である。図11は、制御例のフローチャートである。
【0030】
Vthは、電池パック14内の内部抵抗と接続される電池パック14、電池やその他周辺回路の許容電流値から複合的に求められる値である。図6の切り替え方法では電池パック14間の電位差が小さくなるにつれて各電池パック14間に流れる電流値も小さくなるため、電池パック14間の電位差がVth以下に収まるまでに多くの時間が必要となる。
【0031】
そこで、この制御例は、複数の電池パックを並列接続する場合、STEP1で電池パック14間の電位差が許容範囲(以下、Vth)以下であるか否か判断する。Vth以下でないと判断したとき、この制御例はSTEP2で、sSW28で電池パック14を並列接続し、STEP3で、各電池パック14に流れる電流値を計測し、最大の電流が流れる電池パック14の電流が所定値(以下、Ith)以下に低下するのを待つ。最大の電流が流れる電池パック14の電流が所定値(以下、Ith)以下に低下すると、この制御例は、STEP4で、最大の電流が流れていた電池パック14のmSW27を有効に切り替える。
【0032】
これにより、電池パック14間の抵抗値が低下するため、図10に示すように、再び電流が増加し電位差が軽減される時間を短くすることができる。mSW27を切り替える電池パック14は、電流値が最大の電池パック14とすることで切替後に増加する電流値を各パックへ均一化することができる。IthはVthと同様に電池パック14内の内部抵抗と接続される電池パック14、電池やその他周辺回路の許容電流値から複合的に求められる値である。
【0033】
その後、この制御例は、STEP5で電池パック14間の電位差がVth以下になったと判断したら、STEP6で全てのmSW27を有効にすることで電流経路の抵抗成分である制限抵抗26が除去された状態で双方向DC/DC17との並列接続動作が可能となる。電流値は一般的にゼロ点付近ではオフセット成分により測定精度が悪化する。後半のmSW27判定を電流値ではなく電圧値で代用することで、より高精度な判定が可能となる。
【0034】
以上の変形例では、各電池パックに流れる最大電流が所定の電流の値(Ith)以下に下がった段階で、複数の電池パック14のうち最大電流が流れている電池パックの電流経路を大電流経路へ切換えたが、これに代え次のようにしてもよい。すなわち、各電池パックに流れる最大電流が所定の電圧以上に上がった段階で、複数の電池パック14のうち最大電流が流れている電池パックの電流経路を大電流経路へ切換えてもよい。この所定の電圧は、所定の第二電位差に相当し、上記許容範囲の閾値と同じでもよく、異なってもよい。同じ値であるほうが好ましい。なお、過電流防止という目的のためには電流を直接管理したほうが優れている。電圧で管理する場合は、内部抵抗を推測し電流値へ変換して管理することになり精度が低いためである。
【符号の説明】
【0035】
11 :電源システム
12 :蓄電システム
13 :系統電源
14 :電池パック
15 :負荷
18 :蓄電システムコントローラ
20 :蓄電池
21 :組電池
22 :電池パックコントローラ
23 :電流センサ
24 :第一経路
25 :第二経路
26 :制限抵抗
29 :スイッチ回路
30 :冷却ファン
31 :インターフェースI/F
Vth :閾値
r :組電池内部抵抗
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【文献】特許第6004350号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11