(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】融合タンパク質及びその利用
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20240101AFI20241114BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241114BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241114BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241114BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241114BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241114BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241114BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20241114BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
A01K67/027
C12N15/63 Z
C07K19/00 ZNA
C12Q1/02
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/62 Z
C07K14/46
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020550350
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037829
(87)【国際公開番号】W WO2020071230
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2018186569
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和秀
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩一
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/165293(WO,A1)
【文献】特開2018-117638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
tardp遺伝子、及びtardpl遺伝子の発現が抑制若しくは喪失している、又は、Tardbpタンパク質、及び、Tardbplタンパク質の機能が抑制若しくは喪失しているゼブラフィッシュであって、
以下の(A)~(C)のいずれか一つのタンパク質と刺激に応じて二量体化又は多量体化するタグタンパク質を含む融合タンパク質を含む、ゼブラフィッシュ。
(A)配列番号
1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号
1で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質;
(C)配列番号
1で表されるアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質
【請求項2】
前記融合タンパク質は、更に標識タンパク質を含む請求項1に記載の、ゼブラフィッシュ。
【請求項3】
前記融合タンパク質は、運動ニューロン特異的に発現する、請求項1又は2に記載の、ゼブラフィッシュ。
【請求項4】
前記融合タンパク質は、脊髄運動ニューロン特異的に発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載の、ゼブラフィッシュ。
【請求項5】
前記タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、A315Tの変異を有するアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の、ゼブラフィッシュ。
【請求項6】
刺激の存在下で、請求項1~5のいずれか一項に記載のゼブラフィッシュに、被検物質を接触させ、又は投与し、TDP-43タンパク質変性症の予防又は治療に有用な候補物質を選択する、スクリーニング方法。
【請求項7】
候補物質の選択において、軸索の伸長阻害、軸索側枝の枝数、及び浮き袋の形成不全からなる群から選ばれる少なくとも一つを評価する、請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゼブラフィッシュを含む、TDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニングキット。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゼブラフィッシュと、これらのいずれかを含むウェルプレートと、光照射装置と、を備えた、TDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合タンパク質及びその利用に関する。
本願は、2018年10月1日に、日本に出願された特願2018-186569号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSともいう。)や前頭側頭葉変性症(以下、FTLDともいう。)では、変性によって失われる脳や脊髄の神経細胞の細胞質に、凝集したRNA結合タンパク質TDP-43(TAR DNA-binding protein of 43kDa)を主成分とする封入体が蓄積することが知られている。ALSやFTLDといった疾患群は、TDP-43タンパク質変性症と総称されている。
【0003】
TDP-43を主成分とする封入体の蓄積を主な根拠として、TDP-43がTDP-43タンパク質変性症の発症や進行に密接に関与すると予想されており、TDP-43の機能操作、TDP-43の凝集の阻害、TDP-43凝集体の除去といった観点から、TDP-43タンパク質変性症の治療法が開発できるのではないかと期待されている。
【0004】
上記のとおり、TDP-43タンパク質変性症の病態的特徴として、TDP-43凝集体の蓄積が挙げられ、かかる特徴を反映させた病態モデルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ほとんどのALS においてTDP-43遺伝子内の変異や、TDP-43タンパク質の過剰発現が認められないことから、例えば特許文献1に記載の病態モデルなどにあるように、TDP-43へのアミノ酸置換変異の導入や、それによって作出された変異型TDP-43の過剰発現によって現れる病態モデルの表現型が、必ずしも病態を反映していない懸念があった。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、TDP-43タンパク質変性症の病態を反映したTDP-43タンパク質変性症モデル、係るモデルを作成するための融合タンパク質、遺伝子、ベクター、細胞、非ヒト動物、係るモデルを用いたスクリーニング方法、スクリーニングキット、及びスクリーニング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、TDP-43タンパク質の会合状態や細胞内局在を検討した結果、生体内で、より病態生理学的状態に近い振る舞いを示す改変型TDP-43タンパク質を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]以下の(A)~(C)のいずれか一つのタンパク質と刺激に応じて二量体化又は多量体化するタグタンパク質を含む融合タンパク質。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質;
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質。
[2]更に標識タンパク質を含む[1]に記載の融合タンパク質。
[3][1]又は[2]に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
[4][3]に記載の遺伝子を含むベクター。
[5][1]又は[2]に記載の融合タンパク質、[3]に記載の遺伝子若しくはその転写産物、或いは[4]に記載のベクターを含む細胞。
[6]tardp遺伝子又はそのホモログ、及びtardpl遺伝子又はそのホモログの発現が抑制若しくは喪失している、又は、Tardbpタンパク質又はそのホモログ、及び、Tardbplタンパク質又はそのホモログの機能が抑制若しくは喪失している[5]に記載の細胞。
[7][1]又は[2]に記載の融合タンパク質、[3]に記載の遺伝子若しくはその転写産物、或いは[4]に記載のベクターを含む非ヒト動物。
[8]tardp遺伝子又はそのホモログ、及びtardpl遺伝子又はそのホモログの発現が抑制若しくは喪失している、又は、Tardbpタンパク質又はそのホモログ、及び、Tardbplタンパク質又はそのホモログの機能が抑制若しくは喪失している[7]に記載の非ヒト動物。
[9][5]又は[6]に記載の細胞、或いは、[7]又は[8]に記載の非ヒト動物であり、刺激に応答して前記タンパク質が二量体又は多量体を形成する、TDP-43タンパク質変性症モデル。
[10]筋萎縮性側索硬化症又は前頭側頭葉変性症モデルである[9]に記載のTDP-43タンパク質変性症モデル。
[11]刺激の存在下で、[5]又は[6]に記載の細胞、或いは、[7]又は[8]に記載の非ヒト動物に、被検物質を接触させ、又は投与し、TDP-43タンパク質変性症の予防又は治療に有用な候補物質を選択する、スクリーニング方法。
[12][5]又は[6]に記載の細胞、或いは、[7]又は[8]に記載の非ヒト動物を含む、TDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニングキット。
[13][5]又は[6]に記載の細胞、或いは、[7]又は[8]に記載の非ヒト動物と、これらのいずれかを含むウェルプレートと、光照射装置と、を備えた、TDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニング装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、TDP-43タンパク質変性症の病態を反映したTDP-43タンパク質変性症モデルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のスクリーニング装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の融合タンパク質の一例を示す概略構成図である。
【
図3】野生型ゼブラフィッシュ、並びに、tardp遺伝子及びtardpl遺伝子がノックアウトされたゼブラフィッシュ(tardbp -/-, tardbpl -/-)の写真である。
【
図4】optoTDP-43による、ゼブラフィッシュ(tardbp -/-, tardbpl -/-)の心臓での血液循環の回復を示したグラフである。
【
図5】青色光照射によるTDP-43タンパク質の細胞質への移行の観察結果である。
【
図6】脊髄ニューロン特異的に融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射によるTDP-43タンパク質の細胞質への移行の観察結果である。
【
図7】脊髄ニューロン特異的に融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射による軸索の伸長の観察結果である。
【
図8A】脊髄運動ニューロンのみにoptoTDP-43が発現するゼブラフィッシュの軸索側枝の観察結果である。
【
図8B】脊髄運動ニューロンのみにoptoTDP-43が発現するゼブラフィッシュの軸索側枝の枝数を示すグラフである。
【
図8C】脊髄運動ニューロンのみにoptoTDP-43が発現するゼブラフィッシュにおける前シナプス及び後シナプスの局在を示す観察結果である。
【
図9A】ほぼ全ての運動ニューロンにoptoTDP-43を発現するゼブラフィッシュにおける、青色光照射によるoptoTDP-43の細胞質における凝集の誘導を示す観察結果である。
【
図9B】ほぼ全ての運動ニューロンにoptoTDP-43を発現するゼブラフィッシュにおける、青色光照射によるoptoTDP-43及び内在性TDP-43の細胞質における凝集の誘導を示す観察結果である。
【
図10A】ほぼ全ての運動ニューロンにoptoTDP-43
A315Tを発現するゼブラフィッシュにおける、青色光照射による浮き袋の形成不全を示す観察結果である。
【
図10B】ほぼ全ての運動ニューロンにoptoTDP-43
A315Tを発現するゼブラフィッシュにおける、青色光照射による浮き袋の形成不全形成の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<融合タンパク質>>
本発明の融合タンパク質は、以下の(A)~(C)のいずれか一つのタンパク質と刺激に応じて二量体化又は多量体するタグタンパク質を含む。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質;
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ凝集体形成能を有するタンパク質
【0013】
配列番号1で表されるアミノ酸配列は、ゼブラフィッシュTardbpタンパク質のアミノ酸配列である。ゼブラフィッシュTardbpタンパク質は、ヒトTDP-43タンパク質のホモログである。ヒトTDP-43タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2で表される。
ゼブラフィッシュにおいては、TardbpとTardbplの2つのホモログが存在し、ゼブラフィッシュTardbplタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号3で表される。
ゼブラフィッシュTardbpタンパク質とヒトTDP-43タンパク質とのアミノ酸レベルでの同一性は、73%であり、ゼブラフィッシュTardbpタンパク質とゼブラフィッシュTardbplタンパク質とのアミノ酸レベルでの同一性は、78%である。(A)~(C)のいずれか一つのタンパク質には、配列番号1~3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質も含まれる。
【0014】
(B)において、係る同一性としては、75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、85%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。
【0015】
(C)において欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸の数としては、1 ~120個が好ましく、1~60個がより好ましく、1~20個が更に好ましく、1~10個が特に好ましく、1~5個が最も好ましい。
【0016】
本発明において、「凝集体形成能」とは、二量体以上の多量体の形成という中間段階を経て形成されたと予想される、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡を用いて検出可能な不定形の塊状の細胞成分、あるいは細胞抽出物中に不溶画分として検出される細胞成分を形成する能力をいう。
【0017】
刺激に応じて二量体化又は多量体化するタグタンパク質とは、光照射下や化合物存在下で二量体又は多量体を形成するタンパク質の機能ドメインを含むものをいう。
光照射下でヘテロ二量体を形成するタグタンパク質のセットとしては、PhyBとPIFのセット、FKF1とGIのセット、CRY2とCIB1のセット、UVR8とCOP1のセット、VVDとWC1のセット、PhyBとCRY1のセット、RpBphP1とRpPpsR2のセットが挙げられる。
光照射下でホモ二量体を形成するタグタンパク質としては、UVR8、EL222、bPac、RsLOV、PYP、H-NOXA、YtvA、NifL、FixL、RpBphP1、CRY2等が挙げられる。
化合物存在下でヘテロ二量体を形成するタグタンパク質のセットとしては、ラパマイシン存在下におけるFKBP(FK506-binding protein)とFRB(FKBP12-rapamycin associated protein 1 fragment)のセット、ジベレリン(化合物)とその結合タンパク質(GAI/GID1)を用いたシステム、フシコクシン(化合物)とその結合タンパク質(CT52M1/T14-3-3cΔC-M2)を用いたシステム、アブシジン酸(化合物)とその結合タンパク質(PYL/ABI)を用いたシステム、rCD1/FK506(化合物)とその結合タンパク質(FKBP/SNAP)を用いたシステム等が挙げられる。
【0018】
上述したタグタンパク質の中で、例えば青色光を吸収して自己会合する活性をもつシロイヌナズナ由来のクリプトクロームCRY2の変異型断片が挙げられる。
クリプトクロームCRY2の変異型断片としては、以下の(D)~(F)のいずれか一つのアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
(D)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(E)配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ、青色光を吸収して自己会合する活性を有するタンパク質;
(F)配列番号4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、青色光を吸収して自己会合する活性を有するタンパク質
【0019】
(E)において、係る同一性としては、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0020】
(F)において欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸の数としては、1 ~100個が好ましく、1~60個がより好ましく、1~20個が更に好ましく、1~10個が特に好ましく、1~5個が最も好ましい。
【0021】
本発明の融合タンパク質は、更に標識タンパク質を含むことが好ましい。標識タンパク質は、細胞内での上記融合タンパク質の発現を確認できるものであれば特に限定されない。例えば、標識タンパク質としては、抗体のエピトープ配列や蛍光タンパク質が挙げられ、細胞を生きたまま観察する観点から、蛍光タンパク質が好ましい。
蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)等が挙げられる。
標識タンパク質を含む融合タンパク質としては、例えば、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
【0022】
<<融合タンパク質をコードする遺伝子>>
本発明の遺伝子は、上記本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子である。
係る遺伝子としては、以下の(G)~(K)のいずれか一つの塩基配列からなり、且つ、かつ凝集体形成能を有するタンパク質をコードする遺伝子と刺激に応じて二量体化又は多量体化するタグタンパク質をコードする遺伝子を含むものが挙げられる。
(G)配列番号6で表される塩基配列、
(H)配列番号6で表される塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されている塩基配列、
(I)配列番号6で表される塩基配列において、同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは、90%以上である塩基配列、
(J)配列番号6で表される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
(K)前記(G)~(J)の塩基配列の縮重異性体
【0023】
(H)において、欠失、置換、挿入、又は付加されてもよい塩基の数としては、1 ~370個が好ましく、1~180個がより好ましく、1~60個が更に好ましく、1~130個が特に好ましく、1~15個が最も好ましい。
【0024】
(J)において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M 塩化ナトリウム,0.3M クエン酸溶液,pH7.0)、0.1重量% N-ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、及び50%フォルムアミドから成るハイブリダイゼーションバッファー中で、55~70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1重量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1重量%SDS含有0.1×SSC溶液である。
【0025】
メチオニンとトリプトファン以外のアミノ酸は、1つのアミノ酸に対して複数のコドンが対応する。このことを遺伝暗号の縮重という。(K)において、塩基配列の縮重異性体とは、ある塩基配列がコードするアミノ酸に対応する他の塩基配列を意味する。
【0026】
刺激に応じて二量体化又は多量体化するタグタンパク質をコードする遺伝子としては、上述したタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。係る遺伝子としては、例えば青色光を吸収して自己会合する活性をもつシロイヌナズナ由来のクリプトクロームをコードする遺伝子の変異型断片が挙げられる。
クリプトクロームをコードする遺伝子の変異型断片としては、以下の(L)~(P)のいずれか一つの塩基配列からなり、且つ、青色光を吸収して自己会合する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
(L)配列番号7で表される塩基配列、
(M)配列番号7で表される塩基配列において、1~数個の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されている塩基配列、
(N)配列番号7で表される塩基配列において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは、95%以上である塩基配列、
(O)配列番号7で表される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
(P)前記(L)~(O)の塩基配列の縮重異性体
【0027】
更に標識タンパク質を含む融合タンパク質をコードする遺伝子としては、配列番号8で表される塩基配列からなるものが挙げられる。
【0028】
<<ベクター>>
本発明のベクターは、上記本発明の遺伝子を含む。
ベクターとしては、特に限定されず、プラスミドベクター、ウイルスベクター等、従来公知のものを用いることができる。プラスミドベクターとしては、例えば、CAGロモーター、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウィルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等の動物細胞における発現用のプロモーター等を有するベクターが挙げられる。
ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター等が挙げられる。
【0029】
<<細胞・非ヒト動物>>
本発明の細胞は、上記本発明の融合タンパク質、又は上記本発明の遺伝子若しくはその転写産物、或いは上記本発明のベクターを含む。
【0030】
本発明の細胞の由来となる生物としては、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物が挙げられる。更に、脊椎動物全般が挙げられ、魚類、両生類、鳥類、爬虫類が挙げられる。またショウジョウバエ等の無脊椎動物や、酵母等も挙げられる。
【0031】
本発明の細胞に用いられる宿主としては、グリア細胞、神経細胞、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞等の神経系細胞が挙げられる。
【0032】
また、宿主として幹細胞から分化させた神経系細胞であってもよい。幹細胞とは、自分自身を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞である。幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、がん幹細胞、毛包幹細胞等が挙げられる。
【0033】
宿主への、上記本発明の融合タンパク質、又は上記本発明の遺伝子若しくはその転写産物、或いは上記本発明のベクターの導入方法としては、使用する生細胞に適した方法で行うことができ、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)等の市販のトランスフェクション試薬を用いた方法等を挙げることができる。
【0034】
また、本発明の非ヒト動物は、上記本発明の融合タンパク質、又は上記本発明の遺伝子若しくはその転写産物、或いは上記本発明のベクターを含む。
非ヒト動物としては、哺乳動物又は魚類が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコが挙げられ、マウス、ラット等のげっ歯類が好ましい。魚類としては、ゼブラフィッシュが好ましい。
【0035】
実施例において後述するように、本発明の融合タンパク質は、野生型TDP-43の機能を補完できることが確認されている。そのため、より生理的条件に近いという観点から 本発明の細胞又は非ヒト動物は、tardp遺伝子又はそのホモログ、及びtardpl遺伝子又はそのホモログの発現が抑制若しくは喪失している、又は、Tardbpタンパク質又はそのホモログ、及び、Tardbplタンパク質又はそのホモログの機能が抑制若しくは喪失していることが好ましい。
【0036】
Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質の機能が抑制されているとは、Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質が本来有する機能が部分的に失われている状態のことをいう。
Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質の機能が喪失しているとは、Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質が本来有する機能が完全に失われている状態のことをいう。
【0037】
Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質の機能の抑制又は喪失は、tardp遺伝子及びtardpl遺伝子の発現が抑制されることによって、又は喪失することによっても生じ得る。
【0038】
tardp遺伝子及びtardpl遺伝子の発現が抑制しているとは、本発明の細胞又は動物において、コントロールとなる野生型の細胞又は動物と比較して、tardp遺伝子産物及びtardpl遺伝子産物の量が抑制されていることをいう。
tardp遺伝子及びtardpl遺伝子の発現の抑制は、tardp遺伝子及びtardpl遺伝子に対するRNAi誘導性核酸、アンチセンス核酸、アプタマー若しくはリボザイムなどの発現を生じさせる核酸配列を、細胞又は動物に導入し、遺伝子ノックダウン等により生じさせることができる。
【0039】
tardp遺伝子及びtardpl遺伝子の発現が喪失しているとは、細胞又は動物において、tardp遺伝子産物及びtardpl遺伝子産物が喪失していることをいう。
遺伝子産物である、Tardbpタンパク質及びTardbplタンパク質の機能の喪失は、例えばtardp遺伝子及びtardpl遺伝子に変異を導入し、tardp遺伝子及びtardpl遺伝子を破壊することにより生じさせることができる。
変異は、tardp遺伝子及びtardpl遺伝子、又はこれら遺伝子の発現調節領域における一部又は全部の欠失、置換、任意の配列の挿入等により生じさせることができる。これらの変異の導入は、例えば、変異原性物質による処理、紫外線照射、相同組み換え技術等による遺伝子ターゲッティング、遺伝子ノックアウト、Cre-loxP系等による条件的ノックアウト等の手法を用いて行うことができる。また、遺伝子ターゲティング、遺伝子ノックアウトについては、ゲノム編集技術を用いてもよい。
【0040】
本発明の細胞又は非ヒト動物は、刺激に応答して前記タンパク質が二量体又は多量体を形成し、細胞質で凝集体を形成するため、TDP-43タンパク質変性症モデルとして有用である。TDP-43タンパク質変性症モデルとしては、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭葉変性症モデル、パーキンソン病モデル、アルツハイマー病モデルが挙げられ、筋萎縮性側索硬化症又は前頭側頭葉変性症モデルが好ましい。
【0041】
<<スクリーニング方法>>
本発明のスクリーニング方法は、刺激の存在下で、本発明の細胞、又は、本発明の非ヒト動物に、被検物質を接触させ、又は投与し、TDP-43タンパク質変性症の予防又は治療に有用な候補物質を選択する方法である。
【0042】
例えば、化合物ライブラリを培地に添加し、細胞又はゼブラフィッシュに青色光を照射し、細胞の増殖、又はゼブラフィッシュの生育に対する影響を検討することが挙げられる。より具体的には、例えば、ウェルプレートに本発明の細胞を播種し、又は本発明の非ヒト動物としてゼブラフィッシュを導入し、青色光の照射下、TDP-43タンパク質の二量体形成を促進させつつ、化合物ライブラリの存在下で1~10日間程度培養、又は飼育する。その後、細胞については、例えばテトラゾリウム塩の還元による発色により生細胞数を解析する。テトラゾリウム塩としては、市販の3-[4,5-ジメチルチアゾル-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)等を利用することができる。ゼブラフィッシュについては、ゼブラフィッシュの生死や活動状態を確認することが挙げられる。TDP-43タンパク質の二量体形成により、徐々に細胞毒性が生じるところ、細胞の増殖を維持又は増強する化合物は、TDP-43タンパク質変性症予防剤又は治療剤の候補である。
【0043】
<<スクリーニングキット>>
本発明のTDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニングキットは、本発明の細胞、又は、本発明の非ヒト動物を含むキットである。
本発明のキットは、本発明の細胞、又は、本発明の非ヒト動物に加えて、マルチウェルプレート等、スクリーニングに必要なものを含んでいてもよい。
【0044】
<<スクリーニング装置>>
本発明のTDP-43タンパク質変性症の予防薬又は治療薬スクリーニング装置は、本発明の細胞、又は、本発明の非ヒト動物と、これらのいずれかを含むウェルプレートと、光照射装置と、を備えた装置である。
【0045】
図1は、本実施形態のスクリーニング装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態のスクリーニング装置の各構成について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すスクリーニング装置100は、TDP-43タンパク質変性症モデルゼブラフィッシュ1(以下、ゼブラフィッシュ1)と、ウェルプレート2と、制御部3と、光照射装置4とを備える。
ゼブラフィッシュ1は、青色光を吸収して自己会合する活性をもつシロイヌナズナ由来のクリプトクロームCRY2の変異型断片と、ゼブラフィッシュTardbpタンパク質とを含む融合タンパク質を、体内で発現している。
ウェルプレート2の各ウェルには、化合物ライブラリ由来の化合物が含まれており、延長3mmのゼブラフィッシュ1が、ウェルに満たされた水中を泳いでいる。
光照射装置4は、制御部3からの指令に基づいて青色光をウェルに照射する。
青色光の照射下、ゼブラフィッシュ1内のTardbpタンパク質の二量体形成を促進させつつ、化合物ライブラリの存在下で1~10日間程度飼育する。
Tardbpタンパク質の二量体又は多量体の形成により、徐々に神経毒性が生じるところ、活動に影響の無いゼブラフィッシュ1が生育しているウェル中に存在する化合物は、TDP-43タンパク質変性症予防剤又は治療剤の候補である。
【0046】
また、図示していないが、スクリーニング装置100は、ゼブラフィッシュ1の観察用に顕微鏡を備えていてもよい。
また、別の実施形態として、ゼブラフィッシュの代わりにTDP-43タンパク質変性症モデル培養細胞を用いてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
[融合タンパク質発現系の構築]
青色光を吸収すると自己会合する活性を有する、シロイヌナズナ由来のクリプトームの変異型断片(CRY2olig)と、赤色蛍光タンパク質(mRFP1)を、ゼブラフィッシュ由来のTDP-43(Tardbp)タンパク質に付加した融合タンパク質を発現する遺伝子コンストラクトを作製した(
図2参照。)。この融合タンパク質をoptoTDP-43と称する。optoTDP-43のアミノ酸配列は、配列番号5で表され、optoTDP-43をコードする遺伝子の塩基配列は、配列番号8で表される。
【0049】
[融合タンパク質の機能検定]
tardp遺伝子及びtardpl遺伝子がノックアウトされたゼブラフィッシュ(tardbp -/-, tardbpl -/-)を作製し、血液循環が損なわれる表現型を示すことを確認した。このダブルノックアウトゼブラフィッシュに、ゼブラフィッシュ由来のTDP-43(Tardbp)タンパク質をコードする遺伝子のmRNA及びoptoTDP-43をコードする遺伝子のmRNAをそれぞれインジェクションした。TDP-43(Tardbp)をコードする遺伝子のmRNAを導入したゼブラフィッシュ、及び、optoTDP-43をコードする遺伝子のmRNAを導入し、暗闇下で飼育されたゼブラフィッシュでは、血液循環の回復が観察された。しかしながら、optoTDP-43をコードする遺伝子のmRNAを導入し、青色光照射下で飼育されたゼブラフィッシュでは、心臓での血液循環の回復が観察されなかった(
図4参照。)。このことから、構築したoptoTDP-43がTDP-43としての機能を備えており、青色光照射の有無により、その機能を制御可能なことが確認された。
【0050】
[青色光照射によるTDP-43タンパク質の細胞質への移行の観察]
上記ダブルノックアウトゼブラフィッシュ(tardbp -/-, tardbpl -/-)に、optoTDP-43をコードする遺伝子のmRNAを導入したゼブラフィッシュに青色光を照射し続け、mRFP1の蛍光を指標に、筋肉細胞でのoptoTDP-43の細胞内局在を観察した。
図5に示すように、時間依存的に細胞質へのoptoTDP-43の移行が確認された。更に、細胞質では赤色蛍光がドット状を示していることから、optoTDP-43が凝集体を形成していることが確認された。
【0051】
[脊髄運動ニューロン特異的に融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射によるTDP-43タンパク質の細胞質への移行、及び、軸索の伸長の観察]
野生型に対して、mnr2b遺伝子のプロモーター下にoptoTDP-43を組み込んだBacterial artificialchromosome (BAC)を遺伝子導入することで、脊髄運動ニューロンのみにoptoTDP-43が発現するゼブラフィッシュを構築した(Protocadherin-Mediated Cell Repulsion Controls the Central Topography and Efferent Projections of the Abducens Nucleus. Asakawa K, Kawakami K. Cell Reports. 2018 24:p1562-1572.参照。)。このゼブラフィッシュに、青色光を照射し続け、mRFP1の蛍光を指標に、脊髄運動ニューロンでのoptoTDP-43の移行を観察した。
図6に示すように、時間依存的に、核に局在するoptoTDP-43の量が減り、optoTDP-43が細胞質へ移行していることが確認された。
この青色光の照射によってoptoTDP-43の細胞質への移行を促進したゼブラフィッシュを、再び暗条件下で飼育し、その後の軸索の伸長を観察したところ、軸索の伸長が阻害されていた(
図7参照)。したがって、optoTDP-43の細胞質への移行を一過的に促進することが、脊髄運動ニューロンに毒性をもたらすことが確認された。
【0052】
[脊髄運動ニューロン特異的に融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射による、一旦形成された神経筋シナプスの観察]
更に、脊髄運動ニューロンのみにoptoTDP-43が発現するゼブラフィッシュを用いて、運動ニューロンの側枝が形成された受精後56時間の稚魚に対して、3時間青色光を照射し、その後、13時間暗所で飼育し、軸索側枝、及び神経筋シナプスの変化を観察した。
図8Aに示すように、軸索側枝の数を計測した。その結果を
図8Bに示す。
【0053】
図8Bに示すように、optoTDP-43の光刺激を経験した運動ニューロンは、軸索の末端数が減少する割合が増加することが確認された。また、前シナプスと後シナプスの局在を確認したところ、神経筋接シナプスの崩壊も促進されていることが確認された(
図8C参照。)。
【0054】
[運動ニューロン特異的に融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射による、optoTDP-43及びTDP-43の凝集の観察]
上述したoptoTDP-43を組み込んだBAC系統を用いて、ほぼ全ての運動ニューロンにoptoTDP-43を発現するゼブラフィッシュ系統を構築し、これを青色LED光パネルの上で飼育し、optoTDP-43及びTDP-43の凝集を観察した。
図9Aに示すように、長期の光刺激によって、optoTDP-43の細胞質における凝集の誘導が確認された。
図9Bに示すように、この時、内在性のTDP-43も凝集に巻き込まれており、凝集の伝播性が確認された。
【0055】
[運動ニューロン特異的に変異型(A315T)融合タンパク質を発現させたゼブラフィッシュにおける、青色光照射による、運動障害誘発の観察]
家族性ALSに見出されたA315T変異を導入したoptoTDP-43
A315Tをほぼ全ての運動ニューロンで発現する系統を樹立し、青色光照射による運動能の変化を観察した。
図10Aに示すように、A315T変異の導入によって、浮き袋の形成不全が確認された。
図10Bに示すように、optoTDP-43と比較して、optoTDP-43
A315Tにおいて、浮き袋の形成不全の増加が確認された。浮き袋の形成には正常な運動能の発達が必要であることから、光照射によって運動障害が誘発されているといえる。
【0056】
このように、optoTDP-43が、培養細胞から非ヒト動物に至るまで幅広く利用されることで、時間的空間的に制御された病態の再現やTDP-43毒性を緩和する薬剤の開発に応用可能なことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、TDP-43タンパク質変性症の病態を反映したTDP-43タンパク質変性症モデルを提供できる。
【配列表】