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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/245 20060101AFI20241114BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K31/135
A61K31/167
A61K31/19
A61K31/355
A61K45/00
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020101676
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195324
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直子
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-033311(JP,A)
【文献】特開2012-136491(JP,A)
【文献】特開2019-099500(JP,A)
【文献】ケアノキュア ニュースリリース,2018年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマート(B)リドカイン及び/又はその塩、(C)グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の誘導体、及び/又はそれらの塩、(D)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(E)トコフェロール及び/又はその誘導体、並びに(F)抗菌又は殺菌剤を含み、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる、外用組成物。
【請求項2】
下腹部、外陰部、及び/又は肛門部における皮膚の炎症に適用される、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
痒みを伴わない炎症に適用される、請求項1又は2に記載の外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の美容に対する意識の高まりから、体毛の除去処理が幅広い層において行われている。体毛を除去処理する方法としては、通常、脱毛、剃毛及び除毛であり、脱毛に関しては、専門機関(医療機関及び美容サロン)が専門の機器を用いて行うことも広く浸透している。
【0003】
一方で、未だ最も多くの比率を占める処理方法が、自己処理による剃毛である。自己処理でも家電製品、毛抜き、除毛用化粧料等を用いて脱毛や除毛が行われることもあるものの、剃毛の手軽さは他の方法を圧倒している。更に、デリケートゾーン(下腹部、外陰部、肛門部)の自己処理には実質的に剃毛しか手段がないのが実情である。
【0004】
剃毛時、皮膚は、剃毛治具の刃が接触したり、刃のガード材等の保護具による摩擦に晒されたりといった接触刺激を受けるため、剃毛後に炎症を起こしやすい。更に、剃毛後の体毛の先端には角があるとともに、すぐに伸びることで周りの皮膚をさらに傷つきやすくすることも、炎症の原因となる。一般に腕や足等の皮膚では、剃毛による皮膚の炎症は比較的少ない(非特許文献1)が、特に陰部の皮膚は、他の部位の皮膚より薄く過敏である上に、体毛が他の部位よりも太く、剃毛治具のハンドリングが困難で刺激を与えやすく、且つ、剃毛後は下着で圧迫され常に蒸れた過酷な環境に晒されることから、剃毛による炎症リスクは極端に高い。このため、自己処理での剃毛によるトラブルは後を絶たない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 44 (4) 298-303 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ウフェナマートとリドカイン類とを配合した外用組成物が、剃毛後における皮膚の炎症の改善に優れた効果を示すことを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ウフェナマート及び(B)リドカイン及び/又はその塩を含み、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる、外用組成物。
項2. 下腹部、外陰部、及び/又は肛門部における皮膚の炎症に適用される、項1に記載の外用組成物。
項3. 痒みを伴わない炎症に適用される、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. (C)グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の誘導体、及び/又はそれらの塩、(D)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(E)トコフェロール及び/又はその誘導体、並びに/若しくは(F)抗菌又は殺菌剤を更に含有する、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる外用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の外用組成物は、(A)ウフェナマート(以下において、「(A)成分」とも記載する)並びに(B)リドカイン及び/又はその塩(以下において、「(B)成分」又は「リドカイン類」とも記載する)を含有し、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられることを特徴とする。また、本発明の外用組成物は、更に、(C)グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の誘導体、及び/又はそれらの塩(以下において、「(C)成分」又は「グリチルレチン酸類」とも記載する)、(D)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩(以下において、「(D)成分」又は「ジフェンヒドラミン類」とも記載する)、(E)トコフェロール及び/又はその誘導体(以下において、「(E)成分」又は「トコフェロール類」とも記載する)並びに/若しくは(F)第四級アンモニウム系抗菌剤(以下において、「(F)成分」とも記載する)を含有していてもよい。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、本発明の外用組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、及び(F)成分を含むことが好ましい。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0011】
(A)ウフェナマート
本発明の外用組成物は、(A)成分としてウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも呼ばれ、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の薬剤である。(A)成分は、単独では剃毛後における皮膚の炎症を改善する効果があまりないが、本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症に対する優れた改善効果を発揮することが可能である。
【0012】
本発明の外用組成物において、(A)成分の含有量については、発揮させるべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば1~20重量%が挙げられる。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、本発明の外用組成物における(A)成分の含有量として、好ましくは3~6重量%、更に好ましくは4.5~5.5重量%が挙げられる。
【0013】
(B)リドカイン類
本発明の外用組成物は、(B)成分として、リドカイン及び/又はその塩を含有する。リドカインは、キシロカインとも称され、局所麻酔効果を有することが知られている公知の薬剤である。(B)成分は局所麻酔剤であって、それ自体は炎症を改善するものではないが、(A)成分と組み合わされることによって、剃毛後における皮膚の炎症に対する改善効果を飛躍的に向上させる。
【0014】
リドカインの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩等の無機酸塩が挙げられる。
【0015】
本発明の外用組成物において、リドカイン及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。リドカイン及びその塩の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくはリドカインが挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物における(B)成分の含有量については、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の総量で、0.1~5重量%、好ましくは0.2~2重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%が挙げられる。
【0017】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(B)成分の総量として、例えば0.01~1.5重量部、好ましくは0.05~1重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部が挙げられる。
【0018】
(C)グリチルレチン酸類
本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(C)成分として、グリチルレチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩を含有することができる。
【0019】
グリチルレチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0020】
グリチルレチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド等が挙げられる。これらのグリチルレチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
グリチルレチン酸及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の外用組成物は、(C)成分として、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルレチン酸の誘導体、グリチルレチン酸の誘導体の塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
これらの(C)成分の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくは、グリチルレチン酸が挙げられる。
【0024】
本発明の外用組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の総量で、0.05~5重量%が挙げられ、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.2~0.5重量%が挙げられる。
【0025】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分の総量が0.01~0.9重量部が挙げられる。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たり、(C)成分の総量が、好ましくは0.03~0.5重量部、更に好ましくは0.05~0.1重量部が挙げられる。
【0026】
(D)ジフェンヒドラミン類
本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(D)成分としてジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含有することができる。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用があることが知られている公知の薬剤である。(D)成分は、単独では剃毛後における皮膚の炎症を改善する効果がほとんどないが(A)成分及び(B)成分と組み合わされることで、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果を顕著に向上させることが可能である。
【0027】
ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の外用組成物は、(D)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらの(D)成分の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくはジフェンヒドラミンが挙げられる。
【0030】
本発明の外用組成物において、(D)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、(D)成分の総量で、0.1~5重量%が挙げられる。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、本発明の外用組成物における(D)成分の含有量として、好ましくは0.3~2重量%、更に好ましくは0.5~1.5重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(D)成分の比率については、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(D)成分の総量が0.01~1.2重量部が挙げられる。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たり、(D)成分の総量が、好ましくは0.05~0.8重量部、更に好ましくは0.1~0.5重量部が挙げられる。
【0032】
(E)トコフェロール類
本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(E)成分としてトコフェロール及び/又はその誘導体をさらに含有することができる。
【0033】
トコフェロールは、ビタミンEとして知られる公知の化合物である。トコフェロールは、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはdl体が挙げられる。また、トコフェロールは、α体、β体、γ体、δ体のいずれであってもよいが、好ましくはα体が挙げられる。
【0034】
トコフェロールの誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸、ニコチン酸、コハク酸等のカルボン酸とのエステル体、リン酸とのジエステル体等が挙げられる。これらのトコフェロールの誘導体の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくはカルボン酸とのエステル体、更に好ましくは酢酸トコフェロールが挙げられる。
【0035】
また、トコフェロールの誘導体は、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはdl体が挙げられる。更に、トコフェロールの誘導体は、α体、β体、γ体、δ体のいずれであってもよいが、好ましくはα体が挙げられる。
【0036】
本発明の外用組成物において、(E)成分として、トコフェロール及びその誘導体の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(E)成分の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくはトコフェロールの誘導体、より好ましくはトコフェロールのカルボン酸とのエステル体、更に好ましくは酢酸トコフェロール、特に好ましくは酢酸d-α-トコフェロール、酢酸l-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロールが挙げられる。
【0037】
本発明の外用組成物が(E)成分を含む場合における(E)成分の含有量については、特に制限されないが、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(E)成分の総量として、例えば0.05~2重量%、好ましくは0.1~1.3重量%、更に好ましくは0.3~0.8重量%が挙げられる。
【0038】
また、本発明の外用組成物が(E)成分を含む場合において、(A)成分に対する(E)成分の比率については、各成分の前記含有量の範囲に基づいて定まるが、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たり、(E)成分の総量として0.01~1重量部、好ましくは0.03~0.5重量部、更に好ましくは0.05~0.3重量部が挙げられる。
【0039】
(F)抗菌又は殺菌剤
本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(F)成分として抗菌又は殺菌剤をさらに含有することができる。
【0040】
抗菌又は殺菌剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に限定されない。例えば、第四級アンモニウム系抗菌剤、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化リゾチーム、スルファジン等が挙げられる。第四級アンモニウム系抗菌剤としては、具体的には、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。
【0041】
これらの抗菌又は殺菌剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
これらの抗菌又は殺菌剤の中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくは、イソプロピルメチルフェノールが挙げられる。
【0043】
本発明の外用組成物が(F)成分を含む場合における(F)成分の含有量については、使用する抗菌又は殺菌剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~1重量%が挙げられる。剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、(C)成分の含有量として、好ましくは0.03~0.5重量%、更に好ましくは0.05~0.3重量%が挙げられる。
【0044】
本発明の外用組成物が(F)成分を含む場合において、(A)成分と(F)成分の比率は、前述するこれらの両成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(F)成分が0.001~0.5重量部、好ましくは0.005~0.1重量部、更に好ましくは0.01~0.05重量部が挙げられる。
【0045】
その他の成分
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤(マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩)、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、清涼化剤(メントール、カンフル等)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。
【0046】
前述する成分の他に、必要に応じて、皮膚外用剤等に通常使用される他の基剤や添加剤を含んでもよい。このような基材や添加剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、低級アルコール(例えば、イソプロパノール)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)等の水性基剤;油類(オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類・ロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル等)、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等)、コレステロール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等の油性基剤;POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)オレイルエーテル、POE(2~50モル)セチルエーテル(セトマクロゴール1000等)、POE(5~50モル)ベヘニルエーテル、POE(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20~100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5~100)、ポリソルベート(20~85)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)、水素添加大豆リン脂質、水素添加ラノリンアルコール等の界面活性剤;清涼化剤(メントール、カンフル、ボルネオール、ハッカ水、ハッカ油等)、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8-シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤(タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カカオ色素、クロロフィル、酸化アルミニウム等)、粘稠剤(カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン等)、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D-ソルビトール液、マクロゴール等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0047】
性状・製剤形態等
本発明の外用組成物の性状としては特に限定されず、水性液状組成物、水性ゲル状組成物、油性ゲル状組成物、乳化組成物等が挙げられる。この中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくは乳化組成物が挙げられる。乳化組成物の乳化状態については、水中油型又は油中水型のいずれであってもよいが、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点から、好ましくは水中油型が挙げられる。
【0048】
本発明の外用組成物の製剤形態については特に制限されず、例えば、ローション剤、乳液剤、軟膏剤、クリーム剤等が挙げられる。この中でも、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより一層向上させる観点及び塗布容易性の観点から、好ましくは、乳液剤、クリーム剤が挙げられる。
【0049】
本発明の外用組成物としては、具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、好ましくは医薬品が挙げられる。
【0050】
用途
本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善に用いられる。適用される炎症部位としては、体毛を剃毛した部位であれば特に限定されないが、本発明の外用組成物は、特に、デリケートゾーンといわれる、下腹部(Vゾーン)、外陰部(Iゾーン)、臀部、及び/又は肛門部(Oゾーン)における皮膚の炎症に好ましく適用される。
【0051】
皮膚の炎症の態様としては特に限定されないが、痛み(ヒリヒリ感)、かぶれ、赤いぶつぶつ等が挙げられる。また、本発明においては、好ましくは、痒みを伴わない炎症に対して適用することができる。
【0052】
本発明の外用組成物は、剃毛後の皮膚炎が生じている皮膚に、1日に1~6回塗布することで適用することができる。また、本発明の外用組成物は、剃毛後における皮膚の炎症の改善効果をより効果的に得るために、例えば5日以上、好ましくは1週間以上塗布することが好ましい。
【実施例
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
試験例
表1に示す組成の外用組成物を、水中油型の乳化組成物(クリーム剤)として調製した。週に1回以上の剃毛によるカミソリ負けで、下腹部(Vゾーン)及び外陰部(Iゾーン)に、かぶれ、赤み、ヒリヒリ感の炎症(いずれも痒みを伴わないもの)を有する被験者(N=15)に対し、調製した外用組成物を患部に1週間(1日3回)塗布させた。1週間後、炎症の改善に関する満足度を5段階のVAS(満足・やや満足・どちらでもない・やや不満・不満)にて評価し、15名中「満足」と回答した被験者の割合(%)を「有効率」として求めた。なお、まず、比較例1、2及び実施例2について試験し、その後、試験前と同程度に剃毛による症状がぶり返した後に、比較例3~5及び実施例2について試験した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示されるとおり、有効成分としてウフェナマートのみを含む比較例1の外用組成物で満足と回答した被験者は少数であり、有効成分としてリドカインのみを含む比較例2の場合にいたってはわずかであったが、ウフェナマートとリドカインとを含む実施例1の外用組成物では、半数を超える被験者が満足と回答するほど炎症を改善する高い効果が認められた。また、ジフェンヒドラミン、グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール、及びイソプロピルメチルフェノールを含む比較例3の外用組成物でも満足と回答した被験者はわずかであり、さらにウフェナマート又はリドカインを配合した比較例4及び5の外用組成物でも、満足と回答した被験者は半数にも満たなかった。一方で、ウフェナマート及びリドカインをジフェンヒドラミン、グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール、及びイソプロピルメチルフェノールと共に含む実施例2の外用組成物では、ほとんどの被験者が満足と回答するほどに、炎症を改善する一層高い効果が認められた。
【0057】
[処方例]
表2に示す処方の外用組成物を、水中油型の乳化組成物(クリーム剤)として調製した。いずれの外用組成物も、剃毛後における皮膚の炎症に対して優れた改善効果を示した。
【0058】
【表2】