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7587954研磨用組成物、基板の製造方法および研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】研磨用組成物、基板の製造方法および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20241114BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241114BHJP
   B82B 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20241114BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241114BHJP
【FI】
G11B5/84 A
C09K3/14 550D
B82B1/00 ZNM
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020165691
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057432
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】大島 嵩弘
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179217(JP,A)
【文献】特開2019-006935(JP,A)
【文献】特開2017-102990(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
21/00-39/06
B82B1/00-3/00
C06B21/00-49/00
C06C5/00-15/00
C06D3/00-7/00
C06F1/00-5/04
C09F1/00-11/00
C09G1/00-3/00
C09K3/14
C10F5/00-7/08
C10H1/00-21/16
G11B5/84-5/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク基板研磨用組成物であって、
砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水を含み、
前記シリカ粒子は、
BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1)が20nm以上70nm以下であり、
SEM画像解析による体積基準の平均粒子径(D2)が180nm未満であり、
SEM画像解析による前記D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比が1.10以上1.50以下であり、かつ
前記D1に対する前記D2の比(D2/D1)が2.0以上5.5以下である、研磨用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程(1)を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の研磨用組成物を研磨対象基板に供給して該研磨対象基板を研磨する工程(1)を含む、基板の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物、基板の製造方法および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な表面が要求される磁気ディスク基板の製造プロセスには、研磨液を用いて該基板の原材料である研磨対象物を研磨する工程が含まれる。例えば、ニッケルリンめっきが施されたディスク基板(以下、Ni-P基板ともいう。)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨(仕上げ研磨)とが行われている。磁気ディスク基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する技術文献として特許文献1および2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-102990号公報
【文献】特開2019-029044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ディスク基板の研磨では、記録容量増大のため、基板表面の品質向上の取組みが継続的に行われている。近年においては、仕上げ研磨後の基板表面をより高品質なものとするため、一次研磨の段階から、アルミナ砥粒に代えてシリカ砥粒が用いられている。シリカ砥粒を用いた研磨は、アルミナ砥粒を用いた研磨と比べて、砥粒の基板への突き刺さりがなく、スクラッチ等の欠陥低減性に優れ、高い面品質を得やすい。その反面、シリカ砥粒を用いた研磨は、アルミナ砥粒含有スラリーのような加工力を得にくく、加工力の維持や向上が課題となる。また、かかる加工力の維持や向上に加えて、研磨後の基板における微小うねりも課題となっている。上述の研磨において、高い加工性と低微小うねりの維持とは、一方を改善しようとすれば他方が悪化してしまう相反関係にあり、その両立は容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、磁気ディスク基板の研磨において、微小うねり増大を抑制しつつ、高い加工性を発揮し得る研磨用組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、上記研磨用組成物を用いた基板の製造方法および研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によると、磁気ディスク基板研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水を含む。そして、上記シリカ粒子は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1)が20nm以上70nm以下であり、SEM画像解析による上記D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比が1.10以上1.50以下であり、かつ上記D1に対するSEM画像解析による体積基準の平均粒子径(D2)の比(D2/D1)が2.0以上5.5以下である。上記の研磨用組成物によると、磁気ディスク基板の研磨において、微小うねり増大を抑制しつつ、高い加工性を実現することができる。
なお、微小うねり増大を抑制するとは、微小うねりを低下させることだけでなく、加工性の増大に対して微小うねりを抑制することを含む。したがって、微小うねり増大を抑制しつつ、高い加工性を発揮するとは、例えば微小うねりに対する加工性としての研磨レートの比、すなわち「研磨レート/微小うねり」比が向上することを含む。
【0007】
いくつかの好ましい態様において、上記D2は180nm未満である。かかる構成によると、ここに開示される技術による効果が好ましく実現される。
【0008】
また、本明細書によると、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。その製造方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程(1)を含む。かかる製造方法によると、高品位な表面を有する磁気ディスク基板を生産性よく製造することができる。いくつかの態様では、上記基板の製造方法は、上記工程(1)の後に、仕上げ研磨用組成物を用いて上記研磨対象基板を研磨する工程(2)をさらに含む。上記仕上げ研磨用組成物は、コロイダルシリカを含むことが好ましい。上記工程(1)の後に上記工程(2)を実施することにより、より高品位な表面を有する磁気ディスク基板が生産性よく製造される。
【0009】
また、本明細書によると、基板の研磨方法が提供される。その研磨方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を研磨対象基板に供給して該研磨対象基板を研磨する工程(1)を含む。かかる研磨方法によると、研磨物の表面品質を効率よく高めることができる。いくつかの態様では、上記基板の研磨方法は、上記工程(1)の後に、仕上げ研磨用組成物を上記研磨対象基板に供給して該研磨対象基板を研磨する工程(2)をさらに含む。上記仕上げ研磨用組成物は、コロイダルシリカを含むことが好ましい。上記工程(1)の後に上記工程(2)を実施することにより、より高品位な基板表面が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0011】
<研磨用組成物>
(シリカ粒子)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒としてシリカ粒子を含む。上記シリカ粒子は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1)が20nm以上70nm以下の範囲内にある。また、上記シリカ粒子は、SEM画像解析による上記D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比(D1以下粒子アスペクト比)が1.10以上1.50以下である。さらに、上記シリカ粒子は、上記D1に対するSEM画像解析による体積基準の平均粒子径(D2)の比(D2/D1)が2.0以上5.5以下である。上記のシリカ粒子を含む研磨用組成物によると、磁気ディスク基板の研磨において、微小うねりを所定のレベルに抑制しつつ、高い加工性を実現することができる。
【0012】
上記の構成とすることにより、ここに開示される技術による効果が達成される理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、以下が考えられる。すなわち、上記比(D2/D1)は、シリカ粒子の会合度合いを表している。上記比(D2/D1)が2.0~5.5以下の範囲内にあることにより、会合粒子は、適度なサイズ、および強度を有する会合状態となり、研磨時にその会合状態が破壊されることなどによる加工エネルギーの損失が少なく、良好な加工性を発揮すると考えられる。さらに、シリカ粒子のD1が20~70nmの範囲内にあることにより、一次粒子が会合してできる二次粒子の粗大化が抑制され、これにより、研磨の際に局所圧力集中が生じにくくなることによって、微小うねりの増大が抑制されると考えられる。
また、従来法で製造された粒子は、アスペクト比が低い小粒子と、会合した結果、小粒子よりもアスペクト比が高く粒子径が大きくなった大粒子と、を含むことが分かっている。その結果、研磨加工の際にはアスペクト比が高く粒子径の大きい大粒子の転動が抑制されることにより圧力集中が生じ、高い加工性が得られる一方で研磨後の微小うねりが高くなる。従来の粒子に含まれる小粒子はサイズや形状の観点から加工性の向上には寄与していないと考えられる。
本開示で使用している粒子において、会合した大粒子および小粒子(D1以下粒子)の双方は、1.10~1.50の範囲の高いアスペクト比を有する。これにより小粒子の転動も抑制され、加工力を向上出来ることを見出した。またこのようなアスペクト比が高い小粒子を含む会合粒子群を使用することにより、微小うねりの増大を抑制しつつ加工性が向上する。なお、上記の説明は、実験結果に基づく本発明者の考察であり、ここに開示される技術は、上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
【0013】
シリカ粒子のD1は、微小うねりを低く維持する観点から、凡そ65nm以下であることが好ましく、より好ましくは凡そ60nm以下、さらに好ましくは凡そ50nm以下、特に好ましくは凡そ40nm以下(例えば凡そ35nm以下)である。このように粒子径が比較的小径の所定範囲に制御されたシリカ粒子を使用することで、微小うねりを所定のレベルに抑制することができる。また、上記D1は、加工性の観点から、好ましくは凡そ24nm以上、より好ましくは27nm以上であり、凡そ30nm以上であってもよい。ここに開示される技術によると、上記のように制限されたD1を有するシリカ粒子を用いる態様で、高い加工力を発揮することができる。
【0014】
また、上記D1以下粒子アスペクト比は、高い加工性と低い微小うねりとの両立の観点から、1.13以上であることが好ましく、より好ましくは1.15以上であり、1.20以上であってもよく、1.25以上でもよい。また、上記D1以下粒子アスペクト比は、1.40以下が適当であり、1.35以下であってもよく、1.30以下でもよい。ここに開示される技術によると、上記D1以下粒子アスペクト比が1.25以下、さらには1.20以下である態様においても、高い加工性と低い微小うねりとの両立を好ましく実現することができる。
【0015】
上記比(D2/D1)は、高加工性と低微小うねりの両立の観点から、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.2以下であり、4.0以下(例えば3.8以下)であってもよい。また、上記比(D2/D1)は、例えば2.0超であってもよく、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.8以上であり、加工性向上の観点から、3.0超であってもよく、3.5以上でもよく、4.0以上でもよい。
【0016】
シリカ粒子のD2(SEM画像解析による体積基準の平均粒子径)は、上記D1および上記比(D2/D1)の範囲に基づき、適切に設定され、特定の範囲に限定されない。シリカ粒子のD2は、凡そ40nm以上であり、凡そ70nm以上であることが適当であり、好ましくは90nm以上、より好ましくは95nm以上であり、例えば100nm以上であってもよく、110nm以上でもよい。また、シリカ粒子のD2は、凡そ385nm以下であり、300nm以下であることが適当である。いくつかの好ましい態様では、シリカ粒子のD2は155nm以下である。そのようなシリカ粒子を使用することで、高い加工性と低い微小うねりとの両立が好ましく実現され得る。上記D2は、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは130nm以下、特に好ましくは120nm以下である。
【0017】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術で使用されるシリカ粒子(一次粒子または二次粒子の形態であり得る。)の平均アスペクト比は、加工性の維持または向上の観点から、好ましくは凡そ1.10以上、より好ましくは凡そ1.15以上、さらに好ましくは凡そ1.20以上である。また、面品質を効率よく高めやすくする観点から、いくつかの態様において、上記平均アスペクト比は2.50以下であることが適当であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.70以下、さらに好ましくは1.50以下であり、1.35以下でもよい。そのような範囲の平均アスペクト比を有するシリカ粒子において、D1、D1粒子アスペクト比および比(D2/D1)を所定の範囲とすることの効果は好ましく発揮される。
【0018】
なお、ここに開示される技術において、シリカ粒子の粒子径(D1)とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、粒子径(D1)nm=6000/(真密度(g/cm)×BET値(m/g))の式により算出される粒子径(BET粒子径)をいう。上記比表面積は、例えば、株式会社マウンテック社製の表面積測定装置、商品名「Macsorb」を用いて測定することができる。後述の実施例についても同様である。
【0019】
また、シリカ粒子のD2、D1以下粒子アスペクト比および平均アスペクト比は、以下の方法により求められる。すなわち、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、測定対象のシリカ粒子(1種類のシリカ粒子であってもよく、2種類以上のシリカ粒子の混合物であってもよい。)の分散液に含まれる1000個以上の粒子を、1視野内に50個以上の粒子を含むSEM画像で観察する。観察倍率は20000~50000倍とする。そして、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。また、各粒子画像の投影面積と等しい面積を有する理想円(真円)の半径rから4πr/3により得られる値を各粒子の体積として算出する。ここで、上記アスペクト比および体積は、一次粒子であるか二次粒子であるかを問わず、シリカ粒子分散液中において独立して分散している粒子を1個の粒子と数えて算出するものとする。D2は、上記所定個数の粒子の体積から、体積基準の粒度分布を得て、その体積基準分布から算出した平均粒子径として求められる。また、D1以下粒子アスペクト比は、以下の方法で求められる。すなわち、上記の測定で求められた各粒子の体積から各粒子の粒子径(体積基準)を得て、その粒子径が、測定対象のシリカ粒子について算出されたD1(BET比表面積換算粒子径)[nm]よりも小さい粒子(粒子群)を抽出する。そして、上記抽出された粒子群の各粒子について求められたアスペクト比を算術平均することにより、D1以下の粒子径を有する粒子群の個数平均アスペクト比(D1以下粒子アスペクト比)を求めることができる。また、シリカ粒子の平均アスペクト比は、シリカ粒子全体の個数基準の平均アスペクト比(個数平均アスペクト比)であり、SEM画像解析による全粒子のアスペクト比を算術平均することにより求めることができる。上記D2、D1以下粒子アスペクト比および平均アスペクト比は、一般的なSEMおよび画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「SU8000」や、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウエア「Mac-View」が用いられる。後述の実施例についても同様である。
【0020】
上記のD1、D1以下粒子アスペクト比、および比(D2/D1)を有するシリカ粒子は、使用するシリカ粒子種の選択や、シリカ製法の選択や調整、異なる粒子形状を有する2種以上のシリカ粒子の混合等により調節することができる。例えば、本明細書の記載に基づき、適宜技術常識を参酌しながら、特定の粒子径およびアスペクト比を有する1種の粒子群を選別したり、または2種以上の粒子群を選別し、適当な比率で混合することにより、ここに開示されるシリカ粒子を得ることができる。また、本明細書の記載に基づき、技術常識を参酌して、例えば多孔質シリカゲルを適当な条件で解砕して異形粒子を得る方法や、さらには得られた異形粒子を適当な条件(pHや温度条件等)で所定量のケイ酸塩を添加するなどして成長させ、所望の粒子径を有する異形粒子を得る方法を採用することも可能である。そのようにして得られた粒子の1種を単独で、または異なる粒子特性を有する他のシリカ粒子と混合することによって、ここに開示されるシリカ粒子を得ることができる。
【0021】
シリカ粒子としては、所定のD1、D1以下粒子アスペクト比、および比(D2/D1)を満足するかぎり特に限定されず、シリカを主成分とする各種のシリカ粒子を用いることができる。ここでシリカを主成分とするシリカ粒子とは、該粒子の90重量%以上、例えば95重量%以上、典型的には98重量%以上がシリカである粒子をいう。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されず、コロイダルシリカ、凝結粒シリカ、沈降シリカ(沈殿シリカともいう。)、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等が挙げられる。さらに、上記シリカ粒子を原材料として得られたシリカ粒子を用いることもできる。そのようなシリカ粒子の例には、上記原材料のシリカ粒子(以下「原料シリカ」ともいう。)に、加温、乾燥、焼成等の熱処理、オートクレーブ処理等の加圧処理、解砕や粉砕等の機械的処理、表面改質等から選択される1または2以上の処理を適用して得られたシリカ粒子が含まれ得る。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。ここに開示される技術におけるシリカ粒子は、上記のようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。
【0022】
ここに開示される技術において、シリカ粒子は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が会合した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態のシリカ粒子と二次粒子の形態のシリカ粒子とが混在していてもよい。
【0023】
研磨用組成物におけるシリカ粒子の含有量は特に制限されず、例えば0.1重量%以上であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましく、5重量%以上であることが特に好ましい。上記含有量は、複数種類のシリカ粒子を含む場合には、それらの合計含有量である。シリカ粒子の含有量の増大によって、より高い加工性が得られる傾向がある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、上記含有量は、30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0024】
ここに開示される研磨用組成物において、該研磨用組成物に含まれる固形分に占めるシリカ粒子の含有量は、ここに開示される技術による効果をよりよく発揮する観点から、上記固形分全体の90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上であり、例えば99重量%以上である。なお、本明細書において研磨用組成物に含まれる固形分とは、結合水が除去されない程度の温度、例えば60℃で研磨用組成物から水分を蒸発させた後の残留分すなわち不揮発分をいう。
【0025】
ここに開示される研磨用組成物は、アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。アルミナ粒子としては、例えばα-アルミナ粒子が挙げられる。このような研磨用組成物によると、アルミナ粒子の使用に起因する品質低下が防止される。ここでいう品質低下としては、例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、突き刺さり欠陥等が挙げられる。なお、本明細書においてアルミナ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうちアルミナ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいう。アルミナ粒子の割合が0重量%である研磨用組成物、すなわちアルミナ粒子を含まない研磨用組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨用組成物は、α-アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
【0026】
ここに開示される研磨用組成物は、シリカ粒子以外の粒子、すなわち非シリカ粒子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。ここで、非シリカ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち非シリカ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
【0027】
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含む。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。有機酸としては、例えば、炭素原子数が1~18程度、典型的には1~10程度の有機カルボン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
【0029】
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等の有機カルボン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;ニコチン酸;ピクリン酸;ピコリン酸;フィチン酸;1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10-カンファースルホン酸、イセチオン酸、タウリン等の有機スルホン酸等が挙げられる。
【0030】
研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでもリン酸、ホスホン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。
【0031】
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0032】
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
【0033】
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。上記酸は、好ましくは無機酸である。上記酸の塩は、好ましくは無機酸の塩である。
【0034】
研磨用組成物における酸のモル濃度(複数種類の酸を含む場合には、それらの合計モル濃度)は特に限定されず、例えば凡そ0.001mol/L以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.01mol/L以上、より好ましくは凡そ0.05mol/L以上、さらに好ましくは0.07mol/L以上、特に好ましくは0.09mol/L以上である。酸のモル濃度の増大によって、より高い加工性が実現され得る。研磨後の面品質や研磨の安定性等の観点から、上記酸のモル濃度は、凡そ1.2mol/L以下が適当であり、好ましくは凡そ1mol/L以下、より好ましくは凡そ0.8mol/L以下、さらに好ましくは凡そ0.5mol/L以下、特に好ましくは凡そ0.3mol/L以下(例えば0.2mol/L以下)である。
【0035】
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含有する。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0036】
研磨用組成物における酸化剤の含有量は、研磨対象物を酸化する速度、ひいては加工性を考慮して、0.05mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mol/L以上、さらに好ましくは0.15mol/L以上、特に好ましくは0.3mol/L以上である。また、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は、面精度保持の観点から、1mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.8mol/L以下、さらに好ましくは0.6mol/L以下である。
【0037】
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。イオン交換水は、典型的には脱イオン水であり得る。
【0038】
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、その固形分含量が0.5重量%~30.0重量%である形態で好ましく実施され得る。上記固形分含量が1.0重量%~20.0重量%である形態がより好ましい。研磨用組成物は、典型的にはスラリー状の組成物であり得る。
【0039】
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子、分散剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤、塩基性化合物等の、研磨用組成物に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0040】
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤は、典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物であり得る。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、およびこれらの塩等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸;およびこれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、アルキルアミンオキシド型等が挙げられる。
【0041】
界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.0005重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上である。また、加工性等の観点から、上記含有量は、3.0重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
【0042】
ここに開示される研磨用組成物には、水溶性高分子を含有させてもよい。水溶性高分子を含有させることにより、研磨後の面品質が向上し得る。水溶性高分子の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン、キトサン塩類等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
水溶性高分子を含む態様の研磨用組成物では、研磨用組成物中における該水溶性高分子の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、複数の水溶性高分子を含む態様では、それらの合計含有量である。上記含有量は、研磨後の研磨対象物の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.003重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.007重量%以上である。また、加工性等の観点から、上記含有量は、1.0重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。なお、ここに開示される技術は、加工性の観点から、研磨用組成物が水溶性高分子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0044】
分散剤の例としては、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のポリカルボン酸系分散剤;ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩等のナフタレンスルホン酸系分散剤;アルキルスルホン酸系分散剤;ポリリン酸系分散剤;ポリアルキレンポリアミン系分散剤;第四級アンモニウム系分散剤;アルキルポリアミン系分散剤;アルキレンオキサイド系分散剤;多価アルコールエステル系分散剤;等が挙げられる。分散剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0047】
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(pH)
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されない。研磨用組成物のpHは、例えば、12.0以下、典型的には0.5~12.0とすることができ、10.0以下、典型的には0.5~10.0としてもよい。加工性や面品質等の観点から、研磨用組成物のpHは、7.0以下、例えば0.5~7.0とすることができ、5.0以下、典型的には1.0~5.0とすることがより好ましく、4.0以下、例えば1.0~4.0とすることがさらに好ましい。研磨用組成物のpHは、例えば3.0以下、典型的には1.0~3.0、好ましくは1.0~2.0、より好ましくは1.0~1.8とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、ニッケルリン基板等の磁気ディスク基板の研磨用組成物に好ましく適用され得る。特に一次研磨用の研磨用組成物に好ましく適用され得る。
【0049】
(研磨液)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈して調製されたものであり得る。ここで希釈とは、典型的には水による希釈である。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、例えば2倍~20倍、典型的には2倍~10倍程度の濃縮倍率が適当である。
【0050】
(多剤型研磨用組成物)
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分、典型的には、水以外の成分のうち一部の成分を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。いくつかの好ましい態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むパートAと、砥粒以外の成分を含むパートBとから構成されている。砥粒を含むパートAは、さらに分散剤を含んでもよい。パートBに含まれる砥粒以外の成分としては、例えば酸が挙げられる。また、パートBには、水溶性高分子その他の添加剤が含まれ得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、上記酸化剤が水溶液の形態で供給される場合、当該水溶液は、多剤型研磨用組成物を構成するパートCとなり得る。
【0051】
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ニッケルリン基板、ガラス基板、カーボン製基板等の磁気ディスク基板の研磨に好ましく適用され得る。また、めっき材質として、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するニッケルリンめっき基板用の研磨用組成物として好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0052】
ここに開示される研磨用組成物は、仕上げ研磨工程後において高精度な表面が要求される磁気ディスク基板の製造プロセスにおける予備研磨工程のように、高い研磨効率が要求される用途において特に有意義に使用され得る。仕上げ研磨工程の前工程として複数の予備研磨工程を有する場合は、いずれの予備研磨工程にも使用可能であり、これらの予備研磨工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板の一次研磨工程すなわち最初のポリシング工程に用いられる研磨用組成物として好適である。なかでも、ニッケルリン基板の製造プロセスにおいて、ニッケルリンめっき後の最初の研磨工程すなわち一次研磨工程において好ましく使用され得る。
【0053】
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さが20Å~300Å程度の磁気ディスク基板を研磨して、該磁気ディスク基板を10Å以下の表面粗さに調整する用途に好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。ここでいう表面粗さとは、算術平均粗さ(Ra)のことをいう。
【0054】
<研磨方法>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、磁気ディスク基板を研磨対象物とする研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な態様につき説明する。以下では、研磨対象物を研磨対象基板ともいう。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。濃度調整としては、例えば希釈が挙げられる。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0055】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面すなわち研磨対象面に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動させる。上記移動は、例えば回転移動であり得る。このような研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
【0056】
使用し得る研磨パッドは特に限定されない。例えば、硬質発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。スウェードタイプは、バフパッドであってもよく、典型的には、表面をバフ加工していないノンバフ状態にある研磨パッド(いわゆるノンバフパッド)であってもよい。そのようなスウェードタイプの研磨パッド(典型的にはポリウレタン製研磨パッド)は、加工性に優れ、また基板表面の高品質化を実現しやすい。なお、ここに開示される技術で用いられる研磨パッドは砥粒を含まない。
【0057】
研磨後(具体的には、磁気ディスク基板の一次研磨後)、基板を洗浄することが好ましい(洗浄工程)。洗浄工程は、典型的には洗浄機を用いて実施される。洗浄工程では、洗浄液を用いてもよく、洗浄液を用いず流水のみの洗浄としてもよい。洗浄液または水に浸漬した基板に超音波を付与する超音波処理を行ってもよい。このような洗浄工程を実施することにより、研磨後、基板上に残存するシリカは効率よく除去され得る。
【0058】
研磨工程に使用する研磨装置は、研磨対象物の両面を同時に研磨する両面研磨装置であってもよく、研磨対象物の片面のみを研磨する片面研磨装置であってもよい。上記研磨工程が予備研磨工程である場合、いくつかの態様において、該研磨工程を行う研磨装置として両面研磨装置を好ましく採用し得る。一次研磨工程の後に仕上げ研磨工程を行う場合、該仕上げ研磨工程を行う研磨装置としては、片面研磨装置を好ましく採用し得る。
【0059】
上述のような研磨工程は、磁気ディスク基板、例えばニッケルリン基板の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む磁気ディスク基板の製造方法および研磨方法が提供される。
【0060】
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物の予備研磨工程、例えば一次研磨工程に好ましく使用され得る。この明細書によると、上述したいずれかの研磨用組成物を用いて予備研磨を行う工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法および研磨方法が提供される。上記方法は、ここに開示される研磨用組成物を研磨対象物に供給して該研磨対象物を研磨する工程(1)を含む。上記方法は、上記予備研磨工程の後に仕上げ研磨工程を含み得る。仕上げ研磨工程に使用する研磨用組成物は特に限定されない。したがって、この明細書により開示される事項には、ここに開示される砥粒を含む研磨用組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、工程(1)で用いられる研磨用組成物とは異なる研磨用組成物(例えば仕上げ研磨用組成物)で研磨対象物を研磨する工程(2)とをこの順で含む、磁気ディスク基板の製造方法および研磨方法が含まれる。かかる製造方法によると、磁気ディスク基板を効率よく製造することができる。
【0061】
工程(2)で使用される砥粒としては、特に限定されず、例えばコロイダルシリカが好ましく用いられる。コロイダルシリカを用いることにより、面精度の高い研磨物を効率よく製造することができる。コロイダルシリカの粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよいが、球形のコロイダルシリカが好ましく用いられる。
【0062】
また、工程(2)で使用され得る仕上げ研磨用組成物は、例えば砥粒の他に水を含む。その他、仕上げ研磨用組成物には、上述した研磨用組成物と同様の成分(酸、酸化剤、塩基性化合物、各種添加剤等)を必要に応じて含有させることができる。
【実施例
【0063】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0064】
<実施例1~12および比較例1~11>
[研磨用組成物の調製]
シリカ砥粒と、リン酸と、31%過酸化水素水と、脱イオン水とを混合して、各例に係る研磨用組成物を調製した。上記研磨用組成物のpHは1.5であった。シリカ砥粒としては、粒子径、粒度分布およびアスペクト比が異なる複数種類のシリカ粒子を用意し、当該シリカ粒子を単独で、または組み合わせて含ませることにより、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1)、SEM画像解析による上記D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比(D1以下粒子アスペクト比)、および、上記D1に対するSEM画像解析による体積基準の平均粒子径(D2)の比(D2/D1)が表1に示す値となる砥粒を用いた。なお、使用したシリカ砥粒のD2および平均アスペクト比(SEM画像解析による体積基準の累積0~100%の粒子群の平均アスペクト比)も表1に示す。研磨用組成物中のシリカ粒子の濃度は7重量%、リン酸濃度は0.1mol/L、過酸化水素濃度は0.4mol/Lとした。
【0065】
[ディスクの研磨]
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、下記の条件で、研磨対象物の研磨を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。上記研磨対象物(研磨対象基板)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.75mmであり、研磨前における表面粗さRa(Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定したニッケルリンめっき層の算術平均粗さ)は130Åであった。
【0066】
(研磨条件)
研磨装置:システム精工社製の両面研磨機、型式「9.5B-5P」
研磨パッド:FILWEL社製のポリウレタンパッド、商品名「CR200」
研磨対象基板の投入枚数:15枚(3枚/キャリア ×5キャリア)
研磨液の供給レート:135mL/分
研磨荷重:120g/cm
上定盤回転数:27rpm
下定盤回転数:36rpm
サンギヤ(太陽ギヤ)回転数:8rpm
研磨量:各基板の両面の合計で約2.2μmの厚さ
上記研磨量は、下記の計算式に基づいて求めた。
研磨量[μm]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の面積[cm]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm])×10
【0067】
[加工性]
各例に係る研磨用組成物を用いて上記研磨条件で研磨対象基板を研磨したときの両面における研磨レートを算出した。研磨レートは、下記の計算式に基づいて求めた。得られた結果を、比較例1の研磨レートを100%とした相対値に換算して、表1の「研磨レート」の欄に示した。研磨レートの値が大きいほど、高い加工性を有する。
研磨レート[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の面積[cm]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm]×研磨時間[min])×10
【0068】
[微小うねり]
各例に係る研磨用組成物を用いた研磨の後、上記研磨時に各キャリアにセットされていたNi-P基板(研磨後の基板)のなかからランダムに1枚、合計3枚のNi-P基板を抽出した。これら3枚のNi-P基板の表裏、計6面につき、ZYGO社製の非接触表面形状測定機「NEWVIEW5032」を使用して、対物レンズ倍率2.5倍、中間レンズ倍率0.5倍、バンドパスフィルター80~500μmの条件で微小うねりを測定した。測定は、上記6面の各々について、研磨後の基板の中心から径方向外側に37mmの位置に対して、90°間隔の4点で行い、それら24点の平均値を微小うねり(Å)の値とした。得られた値を、比較例1の値を100%とする相対値に換算して、表1の「微小うねり」の欄に示した。値が小さいほど、微小うねりは低減されている。
【0069】
上記微小うねりに対する上記研磨レートの比を算出し、得られた値を、比較例1の値を100%とする相対値に換算して、表1の「研磨レート/微小うねり比」の欄に示した。「研磨レート/微小うねり比」が110%以上であれば、微小うねりを所定のレベルに抑制しつつ、高い加工性を実現したと判定される。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、D1が20nm以上70nm以下であり、該D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比(D1以下粒子アスペクト比)が1.10以上1.50以下であり、かつ比(D2/D1)が2.0以上5.5以下であるシリカ砥粒を含む研磨用組成物を使用した実施例1~12は、比較例1~11と比べて、研磨レート/微小うねり比に優れることが確認された。具体的には、D1が20~70nmであり、かつD1以下粒子アスペクト比が1.10~1.50であるシリカ砥粒を用いた実施例1~12では、D1が20~70nmであったものの、D1以下粒子アスペクト比が1.10未満であるシリカ砥粒を用いた比較例1と比べて、微小うねりを所定の範囲に抑制しつつ、研磨レートが改善した。一方、D1以下粒子アスペクト比が1.10であったものの、D1が70nm超であるシリカ砥粒を用いた比較例2では、研磨レートに対して微小うねりが増大した。D1が70nm超であり、D1以下粒子アスペクト比が1.10未満の比較例3~5でも、同様の傾向、すなわち研磨レートに対して微小うねりが増大する傾向が確認された。その原因としては、大径の一次粒子が会合してできた二次粒子が粗大であるため、局所圧力集中を引き起こし、微小うねりの増大をもたらした可能性が考えられる。また、比較例3~5との対比から、D1以下粒子アスペクト比が1.10以上である場合、そのようなD1以下粒子を含む粒子群(一次粒子または二次粒子の形態であり得る。)は、その異形度や表面状態から、研磨時の転動が抑制され、被研磨面に対して水平方向の加工性が向上することで、研磨レートが向上したことが考えられる。また、D2/D1が5.5よりも大きかった比較例6~9では、研磨レートが低くなる傾向が確認された。その原因としては、研磨時に会合粒子が破砕されて加工エネルギーの損失が発生したことや、所定のアスペクト比を有する会合粒子が短径方向に転動し、加工力を発揮しなかったことが考えられる。比較例10は、会合度(D2/D1)は低いものであったが、粒子径が大きく、研磨レートは向上した。しかし、微小うねりは著しく悪化した。比較例10は、D1以下粒子アスペクト比が1.10~1.50の範囲内であったが、比較例2の場合と同様、微小うねり抑制のためのD1サイズの重要性を示している。また、比較例11では、微小うねりは低減できたが、加工性が大きく低下した。D1以下粒子アスペクト比が1.00と球形であり、会合度(D2/D1)も小さかったためと考えられる。
【0072】
上記の結果から、砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水を含み、シリカ粒子のD1が20nm以上70nm以下であり、該D1以下の粒子径を有する粒子群の平均アスペクト比が1.10以上1.50以下であり、かつ比(D2/D1)が2.0以上5.5以下である研磨用組成物によると、磁気ディスク基板の研磨において、微小うねりを所定のレベルに抑制しつつ、高い加工性を実現し得ることがわかる。
【0073】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。