(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】積層光学フィルムの製造方法、印字装置及び積層光学フィルムの製造装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241114BHJP
G01N 21/892 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G02B5/30
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2020192409
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿和
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243911(JP,A)
【文献】特開2011-064482(JP,A)
【文献】特開2013-117380(JP,A)
【文献】特開2010-085209(JP,A)
【文献】特開2018-146581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0321582(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2019-0061149(KR,A)
【文献】特開2005-062165(JP,A)
【文献】特開2006-053030(JP,A)
【文献】特開2009-244064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学フィルムと前記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出工程と、
前記端部領域検出工程で検出された前記端部領域内に前記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字工程と、
を備え、
前記第2光学フィルムは、前記端部領域において、前記第2光学フィルム側からみて前記第1光学フィルムが露出するように、前記第1光学フィルムに積層されており、
前記端部領域検出工程は、
前記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する照射工程と、
前記積層光学フィルムによって反射した前記照明光である反射光を検出する光検出工程と、
前記反射光の検出結果に基づいて前記端部領域を特定する端部領域特定工程と、
を有し、
前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムは光学的に透明である、
積層光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記縞パターンは周期的に複数のパターンに変化し、
前記端部領域特定工程では、前記複数のパターンに対応する検出結果に基づいて前記端部領域を特定する、
請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記縞パターンは、第1パターンと第2パターンとの間で周期的に変化し、
前記第2パターンにおける前記明部及び前記暗部の延在方向は、前記第1パターンにおける前記明部及び前記暗部の延在方向に直交する、
請求項2に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記明部及び前記暗部の少なくとも一方の幅が周期的に変化する、
請求項2又は3に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
第1光学フィルムと前記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出工程と、
前記端部領域検出工程で検出された前記端部領域内に前記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字工程と、
を備え、
前記第2光学フィルムは、前記端部領域において、前記第2光学フィルム側からみて前記第1光学フィルムが露出するように、前記第1光学フィルムに積層されており、
前記端部領域検出工程は、
前記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する照射工程と、
前記積層光学フィルムによって反射した前記照明光である反射光を検出する光検出工程と、
前記反射光の検出結果に基づいて前記端部領域を特定する端部領域特定工程と、
を有し、
前記縞パターンは、前記明部または前記暗部の幅が周期的に変化することによって、周期的に複数のパターンに変化し、
前記端部領域特定工程では、前記複数のパターンに対応する検出結果に基づいて前記端部領域を特定する、
積層光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記縞パターンは、第1パターンと第2パターンとの間で周期的に変化し、
前記第2パターンにおける前記明部及び前記暗部の延在方向は、前記第1パターンにおける前記明部及び前記暗部の延在方向に直交する、
請求項
5に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記端部領域特定工程では、前記反射光の検出結果に基づいて、前記幅方向における前記端部領域の両端を規定する前記第1光学フィルムの端部および前記第2光学フィルムの端部の位置情報を取得することによって、前記端部領域を特定する、
請求項1~6の何れか一項に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1光学フィルムが偏光フィルムであり、
前記第2光学フィルムが表面保護フィルムである、
請求項1~7の何れか一項に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムである偏光子と、酢酸セルロース、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムであり前記偏光子に貼合されている保護フィルムとを有し、
前記表面保護フィルムは、ポリエチレン
フィルム、ポリプロピレンフィルムまたはポリエステルフィルムである、
請求項8に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
複数の搬送ローラを用いて、前記積層光学フィルムを長尺方向に搬送しながら前記端部領域検出工程および印字工程を実施する、
請求項1~9の何れか一項に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記照射工程では、前記複数の搬送ローラの少なくとも一つの搬送ローラ上に位置する前記積層光学フィルムに前記照明光を照射する、
請求項10に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記照射工程では、前記複数の搬送ローラのうち、隣接する2つの搬送ローラ間に位置する前記積層光学フィルムに前記照明光を照射する、
請求項10に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
第1光学フィルムと前記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出部と、
前記端部領域検出部で検出された前記端部領域内に前記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字部と、
を備え、
前記端部領域検出部は、
前記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する光源部と、
前記積層光学フィルムによって反射した前記照明光である反射光を検出する光検出部と、
前記反射光の検出結果に基づいて前記端部領域を特定する端部領域特定部と、
を有し、
前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムは光学的に透明である、
印字装置。
【請求項14】
第1光学フィルムと前記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出部と、
前記端部領域検出部で検出された前記端部領域内に前記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字部と、
を備え、
前記端部領域検出部は、
前記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する光源部と、
前記積層光学フィルムによって反射した前記照明光である反射光を検出する光検出部と、
前記反射光の検出結果に基づいて前記端部領域を特定する端部領域特定部と、
を有し、
前記光源部は、前記明部または前記暗部の幅が周期的に変化することによって、前記縞パターンが周期的に複数のパターンに変化するように構成されており、
前記端部領域特定部は、前記複数のパターンに対応する検出結果に基づいて前記端部領域を特定する、
印字装置。
【請求項15】
前記第1光学フィルムが偏光フィルムであり、
前記第2光学フィルムが表面保護フィルムである、
請求項13または14に記載の印字装置。
【請求項16】
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムである偏光子と、酢酸セルロース、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムであり前記偏光子に貼合されている保護フィルムとを有し、
前記表面保護フィルムは、ポリエチレン
フィルム、ポリプロピレンフィルムまたはポリエステルフィルムである、
請求項15に記載の印字装置。
【請求項17】
前記積層光学フィルムを長尺方向に搬送する搬送機構を更に備え、
前記端部領域検出部および前記印字部は、前記搬送機構による前記積層光学フィルムの搬送経路に沿って配置されている、
請求項13~16の何れか一項に記載の印字装置。
【請求項18】
請求項13~17の何れか一項に記載の印字装置を備える、
積層光学フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層光学フィルムの製造方法、印字装置及び積層光学フィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムとして、表面保護フィルム付き偏光フィルムのように、第1光学フィルム(たとえば偏光フィルム)に他の第2光学フィルム(たとえば表面保護フィルム)が積層された積層光学フィルムがある。このような積層光学フィルムは、たとえば、長尺の第1光学フィルムに第2光学フィルムを積層した長尺の積層光学フィルムを準備し、その積層光学フィルムから所望サイズ(たとえば製品サイズ)の積層光学フィルムを切り出すことで製造されえる。
【0003】
長尺の積層光学フィルムを製造する過程において、積層光学フィルムに生じた欠陥の位置を把握するために、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1では、積層光学フィルムの製造過程において欠陥検査を実施し、欠陥検査を行って得られた欠陥位置データを、長尺状の積層光学フィルムの幅方向端部に欠陥位置情報を示す識別コード(情報コード)を印字し、その識別コードを読み取って欠陥位置にマーキングを施す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、長尺状の積層光学フィルムの幅方向端部に欠陥位置情報を示す識別コードを印字する場合、その印字すべき領域は、長尺の積層光学フィルムから枚葉状の積層光学フィルム(たとえば、製品サイズの積層光学フィルム)を切り出す領域としては使用できない。そのため、第1光学フィルム上に第2光学フィルムを積層する際に、予め第2光学フィルムの端部を第1光学フィルムの端部の位置からズラして非使用領域(端部領域)を確保しておき、その非使用領域に識別コードを印字することが考えられる。しかしながら、長尺状の積層光学フィルムの搬送時の蛇行により非使用領域の位置が搬送過程で設計上の位置からズレる場合がある。その結果、識別コードが使用領域に印字されたり、積層光学フィルムの範囲を超えて識別コードが欠けてしまうなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、情報コードを印字するための領域以外の領域をより多く確保しながら、確実に読み取り可能な情報コードが印字された積層光学フィルムの製造方法、印字装置および積層光学フィルムの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の積層光学フィルムの製造方法は、第1光学フィルムと上記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出工程と、上記端部領域検出工程で検出された上記端部領域内に上記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字工程と、を備え、上記第2光学フィルムは、上記端部領域において、上記第2光学フィルム側からみて上記第1光学フィルムが露出するように、上記第1光学フィルムに積層されており、上記端部領域検出工程は、上記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する照射工程と、上記積層光学フィルムによって反射した上記照明光である反射光を検出する光検出工程と、上記反射光の検出結果に基づいて上記端部領域を特定する端部領域特定工程と、を有する。
【0008】
上述した積層光学フィルムの製造方法では、端部領域検出工程によって端部領域を検出する。この際、積層光学フィルムに縞パターンを有する照明光を照射する。縞パターンを有する照明光では、端部領域を確実に検出できるので、端部領域を正確に検出可能である。上記製造方法では、端部領域検出工程での端部領域の検出結果に基づいて印字部が、端部領域に情報コードを印字する。そのため、積層光学フィルムにおける情報コードを印字するための端部領域以外の領域をより多く確保しながら、読み取り可能な状態で情報コードを端部領域に印字できる。
【0009】
上記端部領域特定工程では、上記反射光の検出結果に基づいて、上記幅方向における上記端部領域の両端を規定する上記第1光学フィルムの端部および上記第2光学フィルムの端部の位置情報を取得することによって、上記端部領域を特定してもよい。
【0010】
上記縞パターンは周期的に複数のパターンに変化し、上記端部領域特定工程では、上記複数のパターンに対応する検出結果に基づいて上記端部領域を特定してもよい。この場合、縞パターンが周期的に複数のパターンに変化することから、より多くの光学的情報を取得できる。その結果、上記端部領域を正確に特定し易い。
【0011】
上記縞パターンは、第1パターンと第2パターンとの間で周期的に変化し、上記第2パターンにおける上記明部及び上記暗部の延在方向は、上記第1パターンにおける上記明部及び上記暗部の延在方向に直交していてもよい。上記明部及び上記暗部の少なくとも一方の幅が周期的に変化してもよい。
【0012】
複数の搬送ローラを用いて、上記積層光学フィルムを長尺方向に搬送しながら上記端部領域検出工程および印字工程を実施してもよい。このよう積層光学フィルムを搬送しても、端部領域検出工程を実施することで、印字工程で、端部領域内に情報コードを印字可能である。
【0013】
上記照射工程では、上記複数の搬送ローラの少なくとも一つの搬送ローラ上に位置する上記積層光学フィルムに上記照明光を照射してもよい。縞パターンは明部と暗部を有するため、多方向から照明を点灯させた複数枚の画像を撮像することが可能である。したがって、得られた画像を解析し、凹凸画像やテクスチャ画像を生成させられるので、表面状態や測定環境に依存されることなく、安定して端部領域を検出可能である。
【0014】
上記照射工程では、上記複数の搬送ローラのうち、隣接する2つの搬送ローラ間に位置する上記積層光学フィルムに上記照明光を照射してもよい。
【0015】
本発明の他の側面に係る印字装置は、第1光学フィルムと上記第1光学フィルム上に積層された第2光学フィルムを有する長尺の積層光学フィルムの幅方向における端部領域を検出する端部領域検出部と、上記端部領域検出部で検出された上記端部領域内に上記積層光学フィルムの情報を記録した情報コードを印字する印字部と、を備え、上記端部領域検出部は、上記積層光学フィルムに、明部と暗部とが交互に配置された縞パターンを有する照明光を照射する光源部と、上記積層光学フィルムによって反射した上記照明光である反射光を検出する光検出部と、上記反射光の検出結果に基づいて上記端部領域を特定する端部領域特定部と、を有する。
【0016】
上記印字装置は、端部領域検出部によって端部領域を検出する。端部領域検出部が有する光源部は、積層光学フィルムに縞パターンを有する照明光を照射する。縞パターンを有する照明光では、端部領域を確実に検出できるので、端部領域を正確に検出可能である。 上記印字装置では、端部領域検出部での端部領域の検出結果に基づいて印字部が、端部領域に情報コードを印字する。そのため、積層光学フィルムにおける情報コードを印字するための端部領域以外の領域をより多く確保しながら、読み取り可能な状態で情報コードを端部領域に印字できる。
【0017】
一実施形態に係る印字装置は、上記積層光学フィルムを長尺方向に搬送する搬送機構を更に備え、上記端部領域検出部および上記印字部は、上記搬送機構による上記積層光学フィルムの搬送経路に沿って配置されていてもよい。このよう積層光学フィルムを搬送しても、端部領域検出部を備えることで、印字部で、端部領域内に情報コードを印字可能である。
【0018】
本発明の更に他の側面に係る積層光学フィルムの製造装置は、上記印字装置を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、情報コードを印字するための領域以外の領域をより多く確保しながら、確実に読み取り可能な情報コードが印字された積層光学フィルムの製造方法、印字装置および積層光学フィルムの製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態の積層光学フィルムの製造方法で製造される積層光学フィルムの構成を説明する図面である。
【
図2】
図2は、積層光学フィルムの平面図の一部拡大図である。
【
図3】
図3は、積層光学フィルムの製造方法の一例のフローチャートである。
【
図4】
図4は、積層光学フィルムの製造方法を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、端部領域検出部を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、縞パターンの一例である第1パターンを示す図面である。
【
図7】
図7は、縞パターンの他の例である第2パターンを示す図面である。
【
図8】
図8は、端部領域検出工程の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0022】
図1は、一実施形態の積層光学フィルムの製造方法で製造される積層光学フィルムの構成を説明する図面である。
図2は、積層光学フィルムの平面図の一部拡大図である。
図1および
図2に示した積層光学フィルム10は、長尺のフィルムであり、
図1では、長尺方向に直交する断面を模式的に示している。
【0023】
図1および
図2に示したように、積層光学フィルム10は、偏光フィルム(第1光学フィルム)11に表面保護フィルム(第2光学フィルム)12が積層された表面保護フィルム付き偏光フィルムである。積層光学フィルム10は、所望サイズ(たとえば製品サイズ)としての枚葉状の積層光学フィルムを得るための原反である。
【0024】
説明の便宜のため、積層光学フィルム10の長尺方向をx方向、積層光学フィルム10の長尺方向に直交する方向(幅方向)をy方向、積層光学フィルム10の厚さ方向(偏光フィルム11と表面保護フィルム12の積層方向に相当)をz方向とも称す。
【0025】
偏光フィルム11は、偏光子に保護フィルムが貼合された積層フィルムである。偏光子は、例えば、二色性色素(ヨウ素や二色性染料など)で染色されるとともに延伸されたポリビニルアルコール系フィルムである。偏光子の厚さは、例えば、1μm~150μmである。上記保護フィルムの材料として、たとえば、酢酸セルロース系樹脂(たとえば、トリアセチルセルロース(TAC))、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。偏光特性や耐久性などの点から、保護フィルムの材料としてはトリアセチルセルロースが好ましい。保護フィルムの厚さとしては、たとえば、100μm以下、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。保護フィルムは、偏光子にたとえば接着層または粘着層を介して接合されている。
【0026】
上記接着層の材料は、本開示に関する技術分野において公知の接着剤でよい。接着剤の例は、紫外線(UV)硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化型接着剤、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液等の水系接着剤を含む。上記粘着層の材料は、本開示に関する技術分野において公知の粘着剤でよい。粘着剤の例は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等を主成分とする粘着剤組成物を含む。
【0027】
表面保護フィルム12は、偏光フィルム11の表面を保護するフィルムであり、偏光フィルム11にたとえば粘着層を介して接合されている。この粘着層を形成する粘着剤の例は、偏光子と保護フィルムとの間の粘着層を形成する粘着剤の場合と同様である。表面保護フィルム12の厚さは、たとえば、30μm~100μmである。表面保護フィルム12の材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。
【0028】
図1に示したように、表面保護フィルム12の幅(y方向の長さ)は、偏光フィルム11の幅より短い。表面保護フィルム12は、z方向からみて、偏光フィルム11が一部露出するように偏光フィルム11に積層されている。具体的には、y方向において、偏光フィルム11の端部11aの位置と表面保護フィルム12の端部12a(z方向からみて端部と同じ側の端部)の位置とはズレている。本実施形態では、y方向において、偏光フィルム11の端部11b(端部11aと反対の端部)と表面保護フィルム12の端部12b(端部12aと反対の端部)の位置は一致している。
【0029】
z方向からみて端部11aと端部12aとの間の領域を端部領域10Aと称す。積層光学フィルム10において、端部領域10A以外の領域(偏光フィルム11と表面保護フィルム12とが重なっている領域)は、所望サイズの積層光学フィルム(枚葉の積層光学フィルム)を切り出すために使用される領域(以下、「使用領域10B」と称す)である。
【0030】
端部領域10Aは、積層光学フィルム10を表面保護フィルム12側からからみて偏光フィルム11が露出している領域である。端部領域10Aは、
図2に示したように、積層光学フィルム10に関する情報コード100が印字される領域であり、所望サイズの積層光学フィルム(枚葉の積層光学フィルム)を切り出すためには使用されない非使用領域である。
【0031】
情報コード100が記録している情報は、たとえば、積層光学フィルム10の製造過程において実施された欠陥検査の情報(欠陥情報)、長尺方向における位置情報(先端部からの距離など)等である。本実施形態において、断らない限り、情報コード100は欠陥情報(たとえば欠陥の位置情報)が記録されたコードである。情報コード100は、
図2に示したように、QRコード(登録商標)でもよいし、バーコードでもよい。端部領域10Aは、情報コード100が印字可能であって且つ使用領域10Bを最大限活用可能な大きさに設定されている。情報コード100がQRコードである場合、たとえば、一辺が5.25m
mの正方形のコード自体(情報が記録されている領域)とともに、更に、2mm幅の余白(
図2においてQRコードの周囲に破線で示した領域)を確保する必要がある。そのため、上記大きさのQRコードを情報コード100に採用する場合、端部領域10Aの幅(y方向において端部11aと端部12aとの間の距離)は、10mm程度が好ましい。
【0032】
次に、積層光学フィルム10の製造方法の一例を説明する。
図3は、積層光学フィルム10の製造方法の一例のフローチャートである。
【0033】
図3に示したように、積層光学フィルム10の製造方法は、偏光フィルム11と表面保護フィルム12を貼合する工程(貼合工程S10)と、積層光学フィルム10の表面あるいは内部に存在する欠陥(キズや異物、気泡など)の検査を行って欠陥情報(欠陥の位置情報を含む)を得る工程(欠陥検査工程S20)と、端部領域10Aを検出する工程(端部領域検出工程S30)と、欠陥検査工程S20で得られた欠陥情報を含む情報コード100を、端部領域検出工程S30で検出された端部領域10Aに印字する工程(印字工程S40)とを有する。
【0034】
上記貼合工程S10、欠陥検査工程S20、端部領域検出工程S30および印字工程S40は、
図4に示したように、長尺の偏光フィルム11および表面保護フィルム12を長尺方向に搬送しながら実施され得る。
図4を利用して積層光学フィルム10の製造方法の一例を具体的に説明する。
【0035】
長尺の偏光フィルム11および表面保護フィルム12を長尺方向に搬送しながら貼合部21で貼合する(貼合工程S10)。貼合部21は、一対のローラ21A,21Bを有する。一対のローラ21A,21Bの間に偏光フィルム11および表面保護フィルム12を重ねた状態で搬送し、一対のローラ21A,21Bで、偏光フィルム11および表面保護フィルム12が厚さ方向に押圧されることによって、偏光フィルム11および表面保護フィルム12が貼合され、積層光学フィルム10が得られる。
【0036】
一対のローラ21A,21Bの間に偏光フィルム11および表面保護フィルム12が搬送される際には、端部領域10Aが形成されるように、偏光フィルム11および表面保護フィルム12は位置合わせされている。偏光フィルム11および表面保護フィルム12を貼合するために、たとえば、表面保護フィルム12の偏光フィルム11側の面には、前述した粘着層が設けられていてもよい。
【0037】
貼合部21によって偏光フィルム11と表面保護フィルム12が貼合されることによって得られた積層光学フィルム10は、複数の搬送ローラ22を介して巻取部23に向けて搬送される。
図3では模式的に2つの搬送ローラ22を例示しているが、搬送ローラ22の数は、搬送長に応じて適宜設定され得る。
【0038】
積層光学フィルム10の搬送方向において、貼合部21の下流には、欠陥検査装置30が配置されている。欠陥検査装置30によって、積層光学フィルム10の表面あるいは内部に存在する欠陥(キズや異物、気泡など)の検査が行われる(欠陥検査工程S20)。欠陥検査装置30による欠陥検査によって、積層光学フィルム10に生じている欠陥の情報(以下、「欠陥情報」と称す)が得られる。欠陥情報は、欠陥の位置情報(たとえば、積層光学フィルム10の幅方向における欠陥の位置)を含む。
【0039】
図4に示した欠陥検査装置30は、透過型の欠陥検査装置である。欠陥検査装置30では、積層光学フィルム10の一方の面側に配置された光源部31から検査光を出力して積層光学フィルム10を照明しながら、積層光学フィルム10の他方の面側に配置された撮像部32で積層光学フィルム10を撮像する。撮像部32で得られた画像データを図示していない画像処理装置で解析することで、欠陥が検出され得る。
【0040】
上記光源部31が出力する光の波長は、偏光フィルム11及び表面保護フィルム12の材料に応じており、検査光の照射領域の像を取得可能な波長であればよい。光源部31から出力される光の例は、450±30nmにピーク波長を持つ白色光である。上記光源部31は、たとえば、積層光学フィルム10の幅方向の全体にあたって均一な照明を行うことができるものである。光源部31としては、蛍光灯などの管状の発光体、伝送ライトなどの線状の光源を使用できる。伝送ライトは、棒状の導光体の軸方向の端面にメタルハロゲンランプなどの強力な光源を配置し、端面に入射された光を両端面間の側面に導き、棒状の光源として機能する。光源部31は、複数のLED光源が、積層光学フィルム10の幅方向に配置されたものも用いることができる。
【0041】
撮像部32としては、CCDカメラ、CMOSカメラなどのカメラ(二次元センサ)、ラインセンサなどを用いることができる。CCDカメラなどのカメラで積層光学フィルム10を撮像する場合であって、一つのカメラで積層光学フィルム10の幅方向全体を一度に撮像できない場合、撮像部32は、積層光学フィルム10の幅方向に沿って配置された複数のカメラを有すればよい。
【0042】
欠陥検査装置30では、欠陥を感度良く検出するために、検出すべき欠陥に応じて、光源部31と積層光学フィルム10との間に、偏光フィルム11に対してクロスニコルに配置した偏光板を介して積層光学フィルム10を照明する形態を採用してもよいし、偏光フィルム11と撮像部32との間に、偏光フィルム11に対してクロスニコルに配置した偏光板を介して積層光学フィルム10を撮像する形態を採用してもよい。
【0043】
欠陥検査装置30として透過型の欠陥検査装置を説明したが、欠陥検出工程S20では、反射型の欠陥検査装置(すなわち、光源部31と撮像部32が積層光学フィルム10に対して同じ側に配置された形態)を用いてもよい。欠陥検出工程S20では、透過型の欠陥検査装置および反射型の欠陥検査装置の2つの欠陥検査装置を用いてもよい。この場合、透過型の欠陥検査装置で感度良く検出可能な欠陥および反射型の欠陥検査装置で感度良く検出可能な欠陥をそれぞれ検出できるため、積層光学フィルム10に生じている欠陥を確実に検出可能である。
【0044】
積層光学フィルム10の搬送方向において、欠陥検査装置30の下流には、欠陥情報を積層光学フィルム10に印字する印字装置40が配置されている。印字装置40は、端部領域検出部41と、端部領域検出部41の下流に配置された印字部42と、端部領域検出部41および印字部42を制御する制御装置43とを有する。
【0045】
印字装置40では、制御装置43に欠陥検査装置30で検出された欠陥の欠陥情報が入力される。印字装置40では、制御装置43が端部領域検出部41を制御し、積層光学フィルム10における端部領域10Aを検出する(端部領域検出工程S30)。その後、制御装置43が印字部42を制御して、端部領域検出部41で検出した端部領域10Aに、欠陥検査装置30で検出された欠陥の欠陥情報を示す情報コード100(たとえばQRコード)を印字する(印字工程S40)。情報コード100は、欠陥検査装置30が有する画像処理装置が予め作成して制御装置43に入力していてもよいし、欠陥検査装置30から入力された欠陥情報に基づいて制御装置43(または印字部42)が作成してもよい。
【0046】
印字部42は、印字位置を調整可能に構成された印字デバイスであり、たとえばレーザー光を用いた印字デバイスである。この場合、レーザー光の照射位置を調整することで印字位置が調整され得る。印字部42としては、QRコード、バーコードなどを印字可能な印字デバイスを使用可能である。印字部42は、積層光学フィルム10の蛇行などの影響が生じない程度に端部領域検出部41の近くに配置され得る。
【0047】
印字装置40で情報コード100が印字された積層光学フィルム10は、巻取部23でロール状に巻き取られる。これにより、情報コード100が印字された積層光学フィルム10(或いは、積層光学フィルム原反)が得られる。
【0048】
図4に示した例では、貼合部21、搬送ローラ22、欠陥検査装置30、印字装置40および巻取部23が、積層光学フィルムの製造装置1を構成している。搬送ローラ22は積層光学フィルム10の搬送に寄与するため、搬送機構20の一部である。同様に、貼合部21および巻取部23も積層光学フィルム10の搬送に寄与するため、搬送機構20の一部でもある。
図4に示した例では、積層光学フィルム10を搬送しながら端部領域検出部41で端部領域10Aを検出し、印字部42で情報コード100を端部領域10Aに印字する。したがって、搬送機構20は、印字装置40の一部でもある。
【0049】
情報コード100が印字された積層光学フィルム10から所望サイズの積層光学フィルム10(枚葉の積層光学フィルム)を得るためには、情報コード100が印字された積層光学フィルム10を所望サイズに個片化する工程を実施すればよい。この場合、個片化工程の前に情報コード100を読み取ることで、情報コード100で示された欠陥を含む所望サイズの積層光学フィルムを特定可能である。
【0050】
次に、印字装置40が有する端部領域検出部41を、
図5を利用して説明する。
図5は、端部領域検出部41を説明するための模式図である。
【0051】
端部領域検出部41は、反射光学系411と、解析装置412とを備える。
【0052】
反射光学系411は、積層光学フィルム10における所定領域の像を取得するための光学系である。
図5に示した例では、上記所定領域は、積層光学フィルム10の端部領域10A近傍(端部領域10Aを含む領域)である。所定領域は、搬送経路によって想定された端部領域10Aの設計位置に対して蛇行などによって生じるズレ量を含む端部領域10Aの変動範囲をカバーできていればよい。反射光学系411は、光源部41Aと撮像部(光検出部)41Bとを有する。
【0053】
光源部41Aは、積層光学フィルム10の所定領域に向けて照明光L1を出力する。光源部41Aは、
図5に示したように、隣接する搬送ローラ22の間に位置する積層光学フィルム10に照明光L1を照射するように配置されている。光源部41Aは、搬送ローラ22上に位置する積層光学フィルム10に照明光L1を照射するように配置されていてもよい。
【0054】
照明光L1の波長は、偏光フィルム11及び表面保護フィルム12の材料に応じており、所定領域の像を取得可能な波長であればよい。光源部41Aの例は、450±30nmにピーク波長を持つ白色の照明光L1を出力可能な白色LED光源である。照明光L1は、例えば、所定領域を面状に照明するように構成されている。
【0055】
図6および
図7を利用して光源部41Aを更に説明する。光源部41Aは、
図6および
図7に示したように、明部44a及び暗部44bが交互に配置された縞パターン44を有する照明光L1を出力する。
図6におけるX方向は、
図6において明部44a及び暗部44bの延在方向を示し、Y方向は、X方向に直交する方向である。
図7におけるX方向及びY方向は、
図6におけるX方向及びY方向と同じ方向である。
図6及び
図7に示したX方向またはY方向は、例えば、積層光学フィルム10の搬送方向に設定され得る。
【0056】
縞パターン44の形状(パターン形状)は周期的に複数のパターンに変化してもよい。例えば、
図6及び
図7において、明部44a(又は暗部44b)が
図6及び
図7の矢印方向に移動してもよいし、明部44a(又は暗部44b)の幅が周期的に変化してもよい。縞パターン44の形状は、たとえば解析装置412(
図5参照)によって制御され得る。この場合、解析装置412は、光源部41Aと撮像部41Bとを同期するように、それらを制御してもよい。
【0057】
光源部41Aは、
図6に示した縞パターン44を第1パターン44Aと称し、
図7に示した縞パターン44を第2パターン44Bと称したときに、第1パターン44Aと第2パターン44Bとの間で周期的に変動するように構成されていてもよい。第2パターン44Bは、第2パターン44Bにおける明部44a及び暗部44bの延在方向が、第1パターン44Aにおける明部44a及び暗部44bの延在方向に直交するパターンである。第1パターン44Aと第2パターン44Bとの間で周期的に変動する場合においても、第1パターン44Aと第2パターン44Bそれぞれにおいて、明部44a(又は暗部44b)が
図6及び
図7の矢印方向に移動してもよいし、明部44a(又は暗部44b)の幅が変動してもよい。
【0058】
光源部41Aは、例えば、複数の点光源(例えばLED)が2次元的に配列された光源と、各LEDの点灯状態を制御する制御装置を備え得る。この場合、制御装置で、複数のLEDの点灯状態を制御することによって、明部44a及び暗部44bを形成できる。更に、明部44a及び暗部44bで形成される縞パターン44を複数のパターンに変動可能である。上記各LEDの点灯状態を制御する機能は、たとえば、解析装置412(または制御装置43)によって実施されてもよい。
【0059】
図5に戻って、撮像部41Bを説明する。撮像部41Bは、所定領域によって反射した照明光L1である反射光L2を検出する光検出器である。撮像部41Bは、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等の2次元センサである。撮像部41Bは、解析装置412に画像データを入力する。入力方法の例は、有線通信を用いた方法及び無線通信を用いた方法を含む。
【0060】
解析装置(端部領域特定部)412は、撮像部41Bから入力された画像データに基づいて、端部領域10Aを特定するための装置である。解析装置412は、撮像部41Bから入力された画像データを処理して、所定領域の画像を作成し、作成した画像を解析して、端部領域10Aを特定(具体的には、搬送されている積層光学フィルム10の端部領域10Aの位置を特定)する。したがって、解析装置412は、画像処理部と、画像処理部で作成された画像に基づいて端部領域特定部とを有してもよい。
【0061】
たとえば、解析装置412は、端部領域10Aを規定する端部11a及び端部12aの位置情報を取得することによって端部領域10Aを特定する。端部11aおよび端部12aの位置は、積層光学フィルム10の搬送経路の基準位置(たとえば、ローラを支持する台の端など)に対する位置であり得る。このような端部11aおよび端部12aの位置は、撮像部41Bで得られた画像と撮像部41Bの設置位置(または、画像内に映り込んでいる基準部材の位置)から取得可能である。
【0062】
解析装置412は、撮像部41Bの撮像タイミングを制御する機能および光源部41Aの照明光L1の出力を制御する機能の少なくとも一方を有してもよい。
【0063】
解析装置412は、例えば、端部領域10Aを検出するための専用装置でもよいし、パーソナルコンピュータにおいて、上記画像処理を含む端部領域特定機能を実施するためのプログラムを実施し、上記パーソナルコンピュータを解析装置412として機能させてもよい。本実施形態では、解析装置412と制御装置43とを分離して説明しているが、解析装置412は、制御装置43とは同じ装置、すなわち、制御装置43に解析装置412の機能が実装されていてもよい。
【0064】
図8を用いて、端部領域検出工程S30の一例を説明する。
図8は、端部領域検出工程S30の一例のフローチャートである。
【0065】
まず、積層光学フィルム10の所定領域に向けて照明光L1を照射する(照射工程S31)。所定領域から反射した照明光L1である反射光L2を撮像部41Bで検出する(光検出工程S32)。照明光L1が、複数のパターンに周期的に変化する場合(例えば、第1パターン44A及び第2パターン44Bの間で周期的に変動する場合)、縞パターン44の変化の周期及び撮像部41Bの撮像スピードは、積層光学フィルム10の搬送速度を考慮して設定され得る。具体的には、縞パターン44が複数のパターン間で一定の回数変化する間、搬送中の積層光学フィルム10における実質的に同じ領域の画像を取得可能な程度に縞パターン44の変化の周期及び撮像部の撮像スピードが設定され得る。
【0066】
光検出工程S32によって得られた所定領域の画像(検出結果)に基づいて、解析装置412が端部領域10Aを規定する端部11a及び端部12aの位置情報を取得し、端部領域10Aを特定する(端部領域特定工程S33)。上記端部11a及び端部12aの特定は、例えば、解析装置412が、画像におけるエッジ検出技術などに基づいて自動で行えばよい。
【0067】
照明光L1が、複数のパターンに周期的に変化する場合(例えば、第1パターン44A及び第2パターン44Bの間で周期的に変動する場合)、解析装置412は、上記複数のパターン(たとえば第1パターン44A及び第2パターン44B)それぞれの場合の反射光L2に対して得られた画像データ(検出結果)に基づいて、解析装置412が端部11a及び端部12aの位置情報を取得し、端部領域10Aを特定してもよい。解析装置412は、上記複数のパターン(たとえば第1パターン44A及び第2パターン44B)それぞれの場合の反射光L2に対して得られた画像データ(検出結果)を用いて一つの画像を作成し、その画像を利用して端部領域10Aを特定してもよい。上記一つの画像を得るために、解析装置412が、縞パターン44の形状変化のタイミングおよび撮像部41Bの撮像タイミングを制御してもよい。
【0068】
上記端部領域特定工程S33が実施された後、端部領域特定工程S33の情報が制御装置43に入力され、制御装置43が、印字部42を制御して、端部領域特定工程S33で特定された端部領域10Aの所定位置に欠陥情報を印字する(図に示した印字工程S40)。制御装置43は、積層光学フィルム10の搬送速度に応じて、欠陥検査装置30によって検出された欠陥が印字部42の配置位置を通過する際に、印字部42から対応する欠陥の欠陥情報を含む情報コード100を端部領域10Aに印字するように、印字タイミングを制御すればよい。
【0069】
積層光学フィルム10が長尺方向に搬送されている過程の蛇行などによって、端部領域10Aが、搬送経路における設計上の位置からズレる場合が生じる。
【0070】
上述した積層光学フィルム10の製造方法および印字装置40では、端部領域検出工程S30(端部領域検出部41)によって端部領域10Aを、情報コード100を印字する前に検出する。この検出のために、積層光学フィルム10に縞パターン44を有する照明光L1を照射する。縞パターン44を有する照明光L1では、例えば、ライン状の照明光を使用する場合より、端部11a(又は端部12a)の延在方向に対する照明光L1の照射領域の角度依存性を低減でき、端部11a及び端部12aの位置をより確実に検出できる。更に、照明光L1が縞パターン44を有することから、多方向から一つの所定領域を照明した複数枚の画像を効率的に取得することが可能である。そのため、端部11a及び端部12aより確実に検出できる。このように端部11a及び端部12aを適切に検出できることから、端部領域10Aを正確に検出可能である。
【0071】
上記製造方法では、端部領域検出工程S30での端部領域10Aの検出結果に基づいて印字部42が、端部領域10Aの所定位置に情報コード100を印字する。そのため、前述したように、端部領域10Aが、蛇行などによって搬送経路の設計上の位置からズレていても、端部11aから情報コード100の一部がはみ出したり、或いは、端部12aに情報コード100が重なったりすることを防止しながら、端部領域10A内に情報コード100を印字できる。端部領域検出工程S30において端部領域10Aを検出していることから蛇行の影響を低減できる。よって、端部領域10Aの幅のマージンを、蛇行などを考慮した場合より小さくできる。換言すれば、使用領域10Bを最大限確保可能に、端部領域10Aを設定できる。したがって、積層光学フィルムにおける情報コードを印字するための領域以外の領域(使用領域10B)をより多く確保しながら、確実に読み取り可能な情報コード100が印字された積層光学フィルム10を製造できる。
【0072】
上記製造方法では、端部領域10A内に情報コード100を印字可能である。そのため、後工程で情報コード100を確実に読み取ることができる。その結果、情報コード100が印字された積層光学フィルム10(積層光学フィルム原反)から複数の製品用積層光学フィルムを切り出した場合、情報コード100が有する欠陥情報に基づいて複数の製品用積層光学フィルムから欠陥のないフィルムを確実に仕分けることが可能である。
【0073】
縞パターン44を、周期的に複数のパターンに変化させる場合、一つの反射光学系411で、複数の撮像情報を取得可能である。そのため、偏光フィルム11および表面保護フィルム12のように光学的に透明な光学フィルムを撮像しても端部11a及び端部12aの位置をより確実に検出し易い。その結果、端部領域10Aの位置を一層正確に検出可能である。
【0074】
積層光学フィルム10が搬送ローラ22上に配置されている場合、搬送ローラ22の表面によって正反射が生じ易い。例えば、縞パターン44を用いることによって、多方向から照明を点灯させた複数枚の画像を撮像することが可能であることから、搬送ローラ22の表面が例えば鏡面である場合であっても、搬送ローラ22の表面での正反射の影響が低減する。したがって、端部11a及び端部12aを検出し易い。換言すれば、正反射の影響を受けやすい環境でも、端部11a及び端部12aを検出し易い。その結果、端部領域10Aを正確に検出可能である。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、例示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれることが意図されるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0076】
たとえば、第1光学フィルムは、偏光フィルムに対して保護フィルムの他(或いは保護フィルムの代わりに)、位相差フィルムなどの他の光学フィルムが積層されたフィルムでもよい。第2光学フィルムもたとえば位相差フィルムでもよいし、その他の光学的機能を有するフィルムでもよいし、光学的に透明なフィルム状の接着層または粘着層でもよい。
【0077】
積層光学フィルムの幅方向において一方の端部側に端部領域が形成されている場合を説明したが、他方の端部側にも端部領域成されていてもよい。たとえば、たとえば、
図1に示した端部11bと端部12bとがズレており、それらの間に端部領域が形成されていてもよい。積層光学フィルムの幅方向の両端部側に端部領域が形成されている場合、端部領域検出工程では、2つの端部領域それぞれに対して端部領域検出部を配置して、2つの端部領域を検出してもよい。この場合、端部領域検出部が備える解析装置は、2つの端部領域に対して共通の装置であってもよい。積層光学フィルムの幅方向の両端部側に端部領域が形成されている場合、印字部は、2つの端部領域のうち一方に印字してもよいし、欠陥情報に応じては、2つの端部領域にそれぞれ別の欠陥情報を含む情報コードを印字してもよい。
【0078】
図5では、z方向からみて光源部41Aと撮像部41Bはy方向に沿って配置されている。しかしながら、光源部41Aと撮像部41Bの配置状態は
図5の形態に限定されない。光源部41Aと撮像部41Bは、例えばx方向に沿って配置されていてもよい。
【0079】
たとえば、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを製造する過程においてそれらに対して欠陥検査を実施している場合には、その欠陥情報も情報コードとして積層光学フィルムに印字されてもよい。情報コードが記録している情報が欠陥情報以外である場合(たとえば、積層光学フィルムの先端部からの位置情報など)、積層光学フィルムの製造方法(積層光学フィルムの製造装置)は、欠陥検査工程(欠陥検査装置)を有しなくてもよい。
【0080】
図5に示して例では、偏光フィルム(第1光学フィルム)および表面保護フィルム(第2光学フィルム)を貼合する貼合工程(貼合部)を備える場合を説明した。しかしながら、予め第1光学フィルムに第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムが巻かれたロールが存在する場合、積層光学フィルムの製造方法(積層光学フィルムの製造装置)は、貼合工程(貼合部)を有しなくてもよい。
【0081】
以上説明した種々の実施形態及び変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0082】
1…積層光学フィルムの製造装置、10…積層光学フィルム、11…偏光フィルム(第1光学フィルム)、12…表面保護フィルム(第2光学フィルム)、11a…端部、12a…端部、10A…端部領域、20…搬送機構、40…印字装置、41…端部領域検出部、42…印字部、44…縞パターン、44A…第1パターン、44B…第2パターン、44a…明部、44b…暗部、412…解析装置(端部領域特定部)、41A…光源部、41B…撮像部(光検出器)、100…情報コード、L1…照明光、L2…反射光。