(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】麺帯圧延装置
(51)【国際特許分類】
A21C 3/02 20060101AFI20241114BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A21C3/02 B
A21C3/02 C
A23L7/109 B
(21)【出願番号】P 2022092007
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018063002の分割
【原出願日】2018-03-28
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤村 要
(72)【発明者】
【氏名】中島 寿一
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩介
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148036(JP,A)
【文献】実開平05-063290(JP,U)
【文献】特開昭56-096650(JP,A)
【文献】特開2004-097145(JP,A)
【文献】特表2015-521049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23L 7/109-7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧延ロール機を5台~10台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延方法において、下流側の最終の圧延ロール機のロール径が200mm以上である麺帯圧延方法であって、
前記麺帯圧延方法における最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度が24m/分~100m/分である麺帯圧延方法。
【請求項2】
前記圧延ロール機のロール幅が600mm以上である請求項1に記載の麺帯圧延方法。
【請求項3】
前記圧延ロール機が弛み制御機構を備えた請求項1又は2に記載の麺帯圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺等の生産等において必要とされる製麺において複合後の麺帯を圧延する麺帯圧延装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺帯圧延装置は、製麺工業の分野で種々利用されている。特に大量生産を目的とする即席麺メーカーにおいても汎用されるものである。製麺工程は小麦粉、でん粉等に練水を加えて混練することによってドウを形成し、当該ドウを複合した後、得られる麺帯を複数の圧延ロール間を通過させることにより厚みを薄くする。そして、得られた薄くされた麺帯を切刃ロールによって切り出すことによって麺線群に調製する。得られた麺線群は必要に応じて加工され各種麺製品となる。例えば、即席麺であると麺線群をα化した後、カット・乾燥することによって即席麺を得ることができる。
ここで、圧延工程とは、複合後の麺帯を複数の圧延ロール機を通過させて麺帯の厚みを薄くする工程をいう。
【0003】
麺帯の圧延工程における問題点は、複合後の柔軟性をある麺帯を連続的に徐々に麺厚を減らせていくために複数の圧延ロールを通過させるが、最終的に所定の麺厚の麺帯を得るために各圧延ロールに微妙な調整が必要となることである。
すなわち、複合後の麺帯の硬さや弾力の物性は当該麺帯の水分含量や配合の違いによって異なってくるため、最終的に所定の麺厚の麺帯を得るために種々の調整が必要となっていた。特に、生産性を重視する最近の工場設備から観点からは高速で麺帯を押し出すことも必要なってきている。
【0004】
そして、麺帯の厚みに加えて各圧延ロール間及び麺帯の幅方向における麺厚のバランス、圧延ロールと次の圧延ロール間において垂れ下がった麺帯の弛み状態も調整する必要がある。このように、麺帯の圧延工程は、複数の調整を必要とする製麺における一工程である。
麺帯の圧延の工程においては、複合後の麺帯を上流側から下流側に向って徐々に圧延され厚みが減少した麺帯が移送されていくため、徐々に麺帯の送りのスピードをアップさせる必要がある。また、下流に移送されるに従って、麺厚が薄くなっていくため、下流に向うほど圧延の際において、圧延ロールに対する負荷も少なくなると考えられていた。このため、コストの面等からも圧延ロールのロール径は上流から下流側に行くに従って、小さくなるのが一般的であった。この点は以下の特許文献にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
インスタントラーメンのすべて 65ページ(社)日本即席食品工業協会 監修 日本食糧新聞社(平成16年12月20日初版発行)。
【0007】
例えば、6つの圧延ロールを有する大型の麺帯圧延装置においては、ドウを複合後の麺体を上流側からの下流側に向って順にその圧延ロールの径を第一について240mm、第二について200mm、第三について200mm、第四について180mm、第五について150mm、第六(最終)について120mm程度の直径を有する圧延ロール間を通過させることが一般的なタイプの例として挙げられる。
さらに、麺厚の調整の多くは、最終の圧延ロールのロール間を調整することによって麺厚を調整することが多かった。この場合、ロール径が小さい方がロール間の間隔を調整し易いため、下流側の最終付近の圧延ロールの直径は最大でも120mm程度の直径を有する圧延ロールを使用していた。
【0008】
ところで、近年、麺帯の圧延をともなう即席麺の分野においては、より高速化・効率化が求められており、生産のスピードを可能な限りアップすることが求められている。
また、高速に圧延ロールを回転させることによって麺帯を押し出すと、押し出される麺帯の幅方向において両端側がうすく、真ん中の厚みが厚いという問題(軸心たわみによるクラウンの発生によるエッジドロップ)が大きくなるという問題もあった。
このため、従来の圧延ロールにおいては当該圧延ロールの中央側のロール径を両端側のロール径に比べて微妙に大きくする(いわゆる樽状の形状)等の処理を必要とする場合があり、調整が困難な場合も多かった。
麺帯の圧延ロールに関する先行技術においてこのような問題点を解決する先行技術は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明使者らは、所定の麺帯厚を維持しつつ安定して麺帯を調製すること、また高速の麺帯圧延においても対応できる麺帯圧延装置を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らの様々な鋭意研究の結果、従来まで常識と思われていた考え方を覆し、麺帯圧延装置において、下流側の最終側の圧延ロールについて、従来より大きなサイズの圧延ロールを利用することで、高速の麺帯圧延においても麺帯をスムーズに圧延できることを見出し、本発明を完成させたのである。
すなわち、本願第一の発明は、
“複数の圧延ロール機を複数台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延装置において、下流側の最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径が200mm以上である麺帯圧延装置。”、である。
【0011】
次に、本発明においては特に最終の圧延ロールを200mm以上にすることが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“複数の圧延ロール機を複数台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延装置において、下流側の最終の圧延ロール機のロール径が200mm以上である麺帯圧延装置”
、である。
【0012】
さらに、前記の圧延ロールにおいては、最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度が高速の24m/分~100m/分の場合においても好適に利用することができる。 すなわち、本願第三の発明は、
“前記麺帯圧延装置における最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度が24m/分~100m/分である請求項1又は2に記載の麺帯圧延装置。”、である。
次に、本発明においては、最終の圧延ロール機のロール径が、上流側の圧延ロール機のうち、のいずれが最小のロール径よりも小ではないことが好ましい。
すなわち、本願第四の発明は、
“前記最終の圧延ロール機のロール径が、他の圧延ロール機の圧延ロールのいずれか最小のロール径よりも小ではない請求項1~3のいずれかに記載の麺帯圧延装置。”、である。
【0013】
次に、本発明においては、圧延ロール機のロール幅が600mm以上であることが好ましい。すなわち、本願第四の発明は、
“前記圧延ロール機のロール幅が600mm以上である請求項1~4のいずれかに記載の麺帯圧延装置。”、である。
さらに、本発明は、圧延ロール機の間を垂れ下がる麺帯の弛みの制御機構を有することが好ましい。すなわち、本願第五の発明は、
“前記圧延ロール機が弛み制御機構を備えた請求項1~5のいずれかに記載の麺帯圧延装置。”である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を利用することで所定の麺帯厚を維持しつつ安定して麺帯を調製することができる。また高速の麺帯圧延においても対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置の全体の側面模式図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置の平面模式図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置を構成する圧延ロール機の側面図で ある。
【
図4】本発明の第一の実施態様の補助コンベアの動作を説明した側面模式図である 。
【
図5】本発明の第一の実施態様の最終圧延ロール機(仕上げ圧延ロール機)の側面 模式図である。
【
図6】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置における麺帯制御のスキームを示し た図である。
【
図7】本発明の第一の実施態様の弛み調整機構を説明した側面模式図である。
【符号の説明】
【0016】
1 第一圧延ロール機
3 第二圧延ロール機
5 第三圧延ロール機
7 第四圧延ロール機
9 第五圧延ロール機
11 第六圧延ロール機
13 第七圧延ロール機(最終圧延ロール機:仕上げ圧延ロール機)
15 サーボモータ
17 下部ロール
19 上部ロール
21 筐体(圧延ロール機の筐体)
25 動力部(モータ部)
27 チェーン
29 補助コンベア
29-1 補助コンベア(下方位置)
29-2 補助コンベア(上方位置)
31 切刃ロール機
37 最終麺厚用センサー(最終圧延ロール後の麺厚測定用)
38 第一麺厚用センサー(第一圧延ロール後の麺厚測定用)
39 第二麺厚用センサー(第二圧延ロール後の麺厚測定用)
41 弛み用センサー(弛み測定用)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の
図1に本願の第一の実施態様について示す。但し、本願発明は第一の実施態様に限定されるものではない。
図1は本発明の麺帯厚測定自動制御装置の全体正面図を示したものである。また、
図2は本発明の麺帯厚測定自動制御装置の平面図を示したものである。
【0018】
図1に示す本発明の第一の実施態様の麺線圧延装置は、左側から複合を経た麺帯MTが導入される上流側を示している。次いで上流側から下流側に向って、第一圧延ロール機1、第二圧延ロール機3、第三圧延ロール機5、第四圧延ロール機7、第五圧延ロール機9、第六圧延ロール機11、第七圧延ロール機(仕上げ圧延ロール機)13の順に配置されている。
【0019】
第一圧延ロール機1の圧延ロール及び第二圧延ロール機の圧延ロールには、当該圧延ロール間の隙間を調整できるように上部側のロール19を上下に移動できるように麺厚調整のためのサーボモータ15が装着されている。これによって圧延ロール間の隙間を自動調整することによって麺厚を調整できるようになっている。また、第三から第七圧延ロールには、手動でロール間を調整できるように構成されている。尚、第一圧延ロールに及び第二圧延ロールについては上述の自動調整以外に手動でロール間を調整できるようにもなっている。自動調整と手動調整は切り替え可能に構成されている。
【0020】
尚、
図1における圧延ロール機の間の麺帯は2状態を示している。すなわち、MT-1又はMT-2の状態に示すように圧延ロール間の中空で保持された状態となる。また、MT-1は比較的弛みの小さい場合、MT-2は比較的弛みの大きい場合の例を示している。さらに、補助コンベア29についても、当該補助コンベアの位置を示すための状態のうち上方に移動した状態(29-2)と、下方に位置する状態(29-1)の2状態を示している。
【0021】
○圧延ロール圧延機
本発明における圧延ロール機による麺帯の圧延とは、
図3に示すように駆動側のロール(下部ロール)17と従動側のロール(上部ロール)19の間に麺帯MTが挟まれながら、ロール間の隙間を通過する際に押圧され、厚みが薄くなっていく工程をいう。
【0022】
当該麺帯MTの圧延プロセスを実現できる圧延ロール機の態様であればいかなる構成でもよいが、本発明の第一の実施態様であると、各ロール圧延機(1、3、5、7、9、11及び13)は所定の筐体21に、下部ロール17と上部ロール19が回転可能に装着されている。当該下部ロール17及び上部ロール19の一端にはスプロケットが装着されており、下部ロールのスプロケットが下方部に備えられた動力部(モータ部)25とチェーン27で連結されており、当該モータ部25による駆動力を下部ロール17に伝達可能に構成されている。
【0023】
さらに、下部ロール17のスプロケットは上部ロールのスプロケットと噛み合っており、下部スプロケット17の回転(下部ロールの回転)と同時に上部スプロケットも回転(上部ロールの回転)するように構成されている。このように、下部ロール17と上部ロール19が同時に回転することで導入される麺帯MTを上下から押圧しながらロール間の排出方向に押出すことで麺帯厚を薄くしながら麺帯を搬送する。上部ロール19と下部ロール17の間の間隔が大きいと麺厚は厚めになり、間隔が小さいと麺帯は薄めになる。
【0024】
各ロール圧延機(1、3、5、7、9、11及び13)は、所定の間隔を経て載置されており、各ロール圧延機から排出される麺帯MTが次の圧延ロール(17、19)にスムーズに搬送されるように搬送の方向に麺帯を送るように補助搬送コンベア29が備えられている。 本補助搬送コンベア29はロール間を搬送する麺帯MTが次ロールに到達するまでの橋渡し的な役割を有し、ライン稼働時の最初の麺帯先端を送る場合においては、
図3に示すように斜め上方に位置しており、次ロールへ麺帯先端部が到達し、麺帯MTの搬送が安定すると、下方部に斜めスライド移動し、麺帯をロール間において中空状態で保持するように構成されている。
【0025】
当該ロール圧延機は、第1ロール圧延機1から第六ロール圧延機11及び仕上げロール機13のまでの7機が設けられており、各ロール圧延機に対して駆動モータ部25が設けられている。さらに、当該各圧延ロール間に補助搬送コンベア29が設けられている。
上記のロール圧延機のうち、第一ロール圧延機1は、複合工程を経た麺帯MTが導入されるものであり、
図1に示すように複合された麺帯MTを搬送するコンベアから第一ロール圧延機1に複合された麺帯MTが導入される。当該第一ロール圧延機1に導入された麺帯は順次、第二、第三、第四、第五、第六ロール、第七(仕上げロール)(3、5、7、9、11、13)の各圧延ロール機に送られながら受渡しされ、最終の仕上げロール圧延機13より搬出される麺帯MTは、続いて、切刃ロール機31に導入され麺線MSにカットされた状態で次工程(カットやα化)に搬送されることになる。
【0026】
○圧延ロール機の段数(配置数)
本発明の圧延ロールの段数は仕上げロールを含めて、概ね3段~10段程度が可能である。さらに、好ましくは5段~9段程度である。
尚、本発明の実施例1においては、6段+仕上げロールの計7段の場合を示しているが、本発明はこのような7段に限定されるものではないことは勿論である。
【0027】
○圧延ロールの速度
本発明における前記麺帯圧延装置における最終の圧延ロール機13より押出される薄くなった麺帯MTの搬送速度は特に限定されないが概ね10m/分~100m/分である。
また、好ましくは、24m/分~100m/分である。当該最終の圧延ロール機13より押出された麺帯が切刃ロールに入り短冊状にカットされて麺線群となる。
このように、本発明においては即席麺の製造のように比較的高速な麺帯圧延工程を意図している。
【0028】
○本発明によって得られる麺帯の厚み
本発明の圧延ロール装置において最終的に得られる麺帯の厚みは特に限定されない。但し、一般的には最終的な仕上げロールを通過し、切刃に供する麺帯の厚みとして概ね0.6mm~2mmを想定している。
複合後において、麺帯圧延に入る前の麺厚の厚みは通常8mm~15mm程度であり、本発明の麺帯圧延機において、第1段の圧延ロール機で3mm~4mm、第2段の圧延ロール機で1.5mm~2.5mm、第3段の圧延ロール機で1mm~2.0mm、第4段の圧延ロール機で0.9mm~1.6mm、第5段の圧延ロール機で0.7mm~1.6mm、第6段の圧延ロール機で0.6mm~1.6mm)、第7段(仕上げロール)の圧延ロール機で0.6mm~1.6mmの麺帯を得ることを想定している。
【0029】
○ロール圧延機のロール径
本発明の第一の実施態様における、各圧延ロール機の圧延ロール(17、19)のロール径(直径)は、上部ロール19及び下部ロール17も同径を有しており、第一から第六及び仕上げロールまで順に、第一:360mm、第二:240mm、第三:240mm、第四:240mm、第五:240mm、第六:240mm、第七(最終ロール=仕上げロール)240mmの各ロール径を有する。ここで、本発明おいては、最終の圧延ロール機から上流側に向って、最終圧延ロールを含んだ三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径が200mm以上であることを特徴とする。
すなわち、本第一実施態様においては、第七圧延ロール機(最終圧延ロール機)13、第六圧延ロール機11、第五圧延ロール機9の三基の圧延ロール機のロール径(ロール直径Φ)が200mm以上であることを特徴とする。また、好ましくは200mm~400mmである。
【0030】
また、これらの最終圧延ロールを含んだ三基の圧延ロール機のいずれの圧延ロール機のロール径も200mm以上であることが好ましい。
この点従来までの考え方では、このような複数段の麺帯圧延装置においては、下流に向うほど圧延の際の負荷も少ないと考えられていた。このため、コストの面等からも圧力等の圧延ロールのロール径は上流から下流側に行くに従って小さくし、最終の仕上げロール径は100~150mm程度の小さいサイズとするのが通常であった。
さらに、最終(仕上げ)ロールにおいて最終的な麺厚を所定の麺厚とすることが多く、最終(仕上げ)ロールのロール間の間隔において麺厚を制御する必要が多かった。麺厚を制御するためには、圧延ロールのロール間の間隔を調整する必要があり、圧延ロールのロール径が大きいとその重量も大きく、当該ロール間の間隔の調整が迅速に行うことができず作業性においても困難が伴っていた。
【0031】
さらに、最終の仕上げロール機においての制御する麺帯は、麺帯速度も遅い場合でなら可能であったところ、本発明においては、最終圧延ロール機において24m/分~100m/分の速度での麺帯の圧延搬送も想定しているため、従来までの方法では対応が困難であった。
また、高速に圧延ロールを回転させることによって麺帯を押し出すと、押し出される麺帯の幅方向において両端側がうすく、真ん中の厚みが厚いという問題(軸心たわみによるクラウンの発生によるエッジドロップ)が大きくなるという問題があった。
このため、予め圧延ロールの中央側のロール径を両端側のロール径に比べて微妙に大きくする等の処理を必要とする場合があったが、麺帯の種類に応じて対応することができず、調整が困難な場合も多かった。
【0032】
そこで、本発明者らは鋭意、麺帯の搬送速度、麺帯の厚み等を考慮した上で最適な方法を検討し、試行錯誤を繰り返した。
そして、その結果、最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径を従来までのサイズ(通常120mm程度)よりも遥かに大きな直径を有する圧延ロールのサイズ(200mm以上)とすることで、本発明の問題点を解決した。
本発明のように、圧延ロールのサイズ(200mm以上)とすることで、圧延ロールの中央側のロール径を両端側のロール径に比べて微妙に大きくする等の処理も不要となり、圧延ロールに当該処理をすることなく、麺帯の真ん中の厚みが厚いという問題を改善できることを本発明者らは見出した。
【0033】
尚、本発明においては、最終の圧延ロール機から上流側に向って、最終圧延ロールを含んだ三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径が200mm以上であることを特徴とし、特に最終ロールのロール径を200mm以上とすることが好ましいが、当該最終の圧延ロール機のロール径が、上流側の圧延ロール機のいずれか最小のロール径よりも小ではないことが好ましい。すなわち、最終ロール(仕上げロール)ロール径をそれよりも上流のロール径のうちで最小のものよりも大きくするか又は少なくとも同じとすることが好ましい。すなわち、最終ロールのロール径を本発明の圧延装置を構成する複数の圧延ロール機のロール径のうち、最も小さいものとしないことが好ましい。
【0034】
○ロール圧延機のロール幅
本発明の圧延機のロール幅は、特に限定されないが、圧延ロール機のロールの直径が200mm以上であるため、前記圧延ロール機のロール幅が600mm以上であることが好ましい。さらに、700mm以上の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
○補助コンベア
本発明の第一の実施態様においては、補助コンベア29を設けている。これは、麺帯MTの圧延開始時の当該麺帯MT-1の先端部を次のロールに誘導する際の補助にするために設けられているものである。すなわち、
図4に示すように麺帯の先端部MTが搬送されてきた状態では、補助コンベア29は29-2に示すように上方にスライド移動し、次ロール圧延機のロール間に麺帯MTを誘導する。当該誘導が完了し、当該次の圧延ロールにおいて麺体MTの圧延が開始されると、補助コンベア29は斜め下方向にスライドして29-1に示すように下方にスライド移動し、麺帯はMT-1やMT-2の状態に示すように圧延ロール間の中空で保持された状態となる。尚、麺帯はMT-1は比較的弛みの少ない場合、MT-2は比較的弛みの多い場合の例を示している。これらのいずれの状態でも可能である。
【0036】
本補助コンベアは、
図1に示すように各圧延ロールの間に設けることが可能である。
図1に示すように、本発明の第一の実施例においては、第1段及び第2段の間、第2段及び第3段の間、第3段及び第4段の間、第4段及び第5段の間、第5段及び第6段の間、第6段及び第7段(仕上げロール)の間の各間隔の麺帯の搬送を補助するように補助コンベア29が設けられている。
【0037】
○麺厚調整機構
本発明においては、下流側の最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機の圧延ロールのロール径が200mm以上とすることで優れた効果を発揮することができる。さらに可能であれば、最終当該下流側の最終の圧延ロール機より搬出された麺帯MTの厚み(基準麺厚)を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第一及び/又は第二ロールのロール間を自動調整することが好ましい。
【0038】
1)麺帯厚み(基準麺厚)の測定
本第一の実施例の麺帯圧延装置においては、第一ロール機1及び第二ロール機3に麺厚調整機構が装着されている。すなわち、最終ロールを経て移送される麺帯MTの厚みを測定し、当該厚み測定センサーでの測定値をもとに、フィードバックして自動の麺厚調整を実施する。麺厚MTの測定は種々の方法が可能であるが、本発明の第一の実施態様においては、麺帯MTの表面及び裏面に対してセンサー37が設けられており、当該センサー37によってそれぞれの距離を求める方法より麺厚MTを算出する方法を採用している(
図5)。
【0039】
2)麺帯厚みによる制御
麺帯MTの厚みを測定した結果、予め設けられた所定の麺厚値よりも薄い場合には、当該測定値から制御部を通じて、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3の上部に取り付けられた麺厚調整サーボモータ15に信号が送られ、それぞれの圧延ロールの上部圧延ロール19を移動させて、ロール間の隙間を調整できるように構成されている。
具体的には、最終麺厚が設定値(基準麺帯厚値)よりも薄い場合には、第一及び第二圧延ロール機(1、3)に対して、当該各圧延ロール機の上部に装着されたサーボモータ15に対して隙間を大きくするように上方に移動するように制御される。すなわち、上部ロール19がサーボモータによりその位置が移動しロール間の隙間が調整される。
【0040】
尚、当該隙間調整がされた後の麺帯厚を確認的に測定することができるように第一圧延ロールを通過した麺帯の厚みを測定できるように第二圧延ロールの麺帯の圧延ロール間の手前に麺帯厚み(第一麺帯厚値)の検出のための検出装置(センサー)38が設けられている。さらに、第二圧延ロールを通過した麺帯の厚みを確認的に測定できるように第三圧延ロールの麺帯の圧延ロール間の手前に麺帯厚み(第二麺帯厚値)の検出のための検出装置(センサー)39も設けられている。また、検出装置(センサー)38、39は、麺帯の左右を測定できるように一対(2基)設けられている(
図1)。また、38及び39の麺帯厚の測定のためのセンサーについては装着しない場合でも可能であることは勿論である。
【0041】
尚、麺帯MTの厚みは、粉体等の原料や湿度や温度等によって微妙に変化する為、最終麺厚が基準として制御される。
第3~第7圧延ロール機(5、7、9、11及び13)に対するロール間隔の調整は手動で実施可能となっており、必要に応じてこれらのロール間隔も調整することが必要になることは勿論である。
上記の最終圧延後の麺帯厚による、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3のロール間の制御方法は、一例に過ぎないため他の方法であってもよいことは勿論である。尚、上記の制御のスキームを
図6に示す。
【0042】
○弛み調整機構
本発明においては、麺帯MTの弛み調整機構を設けることが好ましい。すなわち、本発明の弛み調整機構は、圧延ロール機の間の麺帯MTの中空における保持状態(弛み状態)を測定する。すなわち、弛みが少なく圧延ロール間で麺帯MTが張りの状態であると、麺帯MTが伸びたり切れるおそれもある。
一方、弛み(垂れ)が大きすぎると、麺帯が接地してしまい麺帯の圧延がスムーズに行われなくなる。このため、適度な弛み状態を維持する必要がある。
当該弛み状態は、圧延ロール間の空間の所定位置から麺帯の距離を測定することによって求めることができる(
図7)。
【0043】
そして、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロールの圧延速度を大きくするか、前の圧延ロールの速度を小さくする。尚、一部の圧延ロールの速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロールの速度を調整する必要がある場合には、適宜これを行うことは勿論である。
【0044】
本発明の第一の実施例においては、
図1に示すように第1圧延ロール機及び第2圧延ロール機の間、第2圧延ロール機及び第3圧延ロール機の間、第3圧延ロール機及び第4圧延ロール機の間、第4圧延ロール機及び第5圧延ロール機の間、第5圧延ロール機及び第6圧延ロール機の間、第6圧延ロール機及び第7圧延ロール機(仕上げロール機)のの間の各間隔の麺帯の弛みを検出できるように検出のためのセンサー41が設けられている。
【0045】
そして、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロールの圧延速度を大きくするか、前の圧延ロールの速度を小さくする。尚、一部の圧延ロールの速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロールの速度を調整する必要がある場合には、適宜これを行うことは勿論である。
【0046】
○本発明の麺厚圧延機を用いた動作について
本発明の第一の実施態様で示した装置の動作を説明する。尚、麺帯の圧延を開始する時(立ち上げ時)においては、人手によって補助しながら複合後の麺帯を各圧延ロールに順次移送されるように麺帯MTを補助しながら移送していくことが必要になる。尚、この際、手動で各圧延ロール機の微調整が必要になることは勿論である。当該立ち上げが終了して、麺帯の圧延プロセスが安定した後において最終圧延後の麺帯厚による、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール3の自動制御が実施されることになる。具体的には以下のようになる。
【0047】
小麦粉、でん粉等の粉体に必要に応じてかんすい、食塩等を混練したドウを調製する。
当該ドウを2枚の麺帯にし、さらに当該麺帯を重ねて圧延することで一枚の麺帯に複合した。当該複合した麺帯を本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置に供する。
当該複合プロセスを経た麺帯MTをコンベアで搬送して、本発明の第一実施態様の麺帯圧延装置に導入する。麺帯MTの先端部を第一圧延ロール機1のロール間に挿入し、圧延及び麺帯MTの移送が開始される。麺帯MTは第一圧延ロール機1の上下ロール(17、19)に挟まれ押圧されながら移送される。
【0048】
第一圧延ロール機1を通過した麺帯MTの先端は、第一及び第二圧延ロール機(1、3)の間を橋渡しする補助コンベア29上に載置・搬送されながら、第二圧延ロール機3のロール間に挿入される。この際、麺厚測定装置38により麺厚が測定されて所定麺厚であるかが確認される。
このようにして、第二圧延ロール機による押圧・移送が進行する。
麺帯MTが第二圧延ロール機3のロール間に挿入され、しばらく押圧・移送された後、第一、第二圧延ロール機1、3の間を橋渡しする補助コンベア29は斜め下の方向にスライドして、麺帯MTは第一及び第二ロール機のロール間を中空保持(下方に垂れ下がった)状態となる。
【0049】
以下、同様に第二圧延ロール機3より排出した麺帯MTは、第二及び第三圧延ロール機(3、5)の間を橋渡しする補助コンベア29上に載置・搬送されながら、第三圧延ロール機5のロール間に挿入される。この際、麺厚測定装置39により麺厚が測定されて所定麺厚であるかが確認される。このようにして第三圧延ロール機5による押圧・移送が進行する。
麺帯MTが第三圧延ロール機5のロール間に挿入され、しばらく圧延・移送された後、第二圧延ロール機3及び第三圧延ロール機5の間を橋渡しする補助コンベア29は斜め下の方向にスライドして、麺帯MTは第二圧延ロール機3及び第三ロール機5のロール間を中空保持(下方に垂れ下がった)状態となる。
【0050】
同様にして、第三、第四、第五、第六の各圧延ロール機(5、7、9及び11)を通過した麺帯MTは、第七圧延ロール機(仕上げロール機)13のロール間に挿入され、当該第七圧延ロール機13において圧延・移送され、切刃ロール機31に近づく、切刃ロール機31に挿入される前に麺帯MTの麺厚(最終麺厚)が測定され、設定値と異なる場合には、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3のロール間の隙間を変化させるように制御される。すなわち、最終麺厚が設定値よりも大きいときは、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3のロール間を狭くするように制御される。また、最終麺厚が設定値よりも小さいときは、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3にロール間を広くするように制御される。
【0051】
尚、麺帯の厚みは、粉体等の原料や湿度や温度等によって微妙に変化し、最終麺厚が基準として制御される。また、上記の制御と平行して、第1段及び第2段の間、第2段及び第3段の間、第3段及び第4段の間、第4段及び第5段の間、第5段及び第6段の間、第6段及び第7段(仕上げロール)の間の各間隔の麺帯MTの弛みを検出できるように弛みセンサー41が設けられており、当該制御が実施される。
すなわち、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロール機の圧延速度を大きくするか、前の圧延ロール機の圧延速度を小さくする。尚、一部の圧延ロール機の速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロール機の速度を調整する必要がある場合には、適宜これが実施される。