(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01N35/02 G
(21)【出願番号】P 2023166039
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2022184786の分割
【原出願日】2018-10-29
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017241191
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】圷 正志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩気
(72)【発明者】
【氏名】安居 晃啓
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-050241(JP,A)
【文献】国際公開第2001/051929(WO,A1)
【文献】特開2008-209338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342465(US,A1)
【文献】特開2008-281453(JP,A)
【文献】特開2011-242154(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035418(WO,A1)
【文献】特許第4122768(JP,B2)
【文献】特開平10-019899(JP,A)
【文献】特開2007-309743(JP,A)
【文献】特開2008-039554(JP,A)
【文献】特開2000-088860(JP,A)
【文献】特開平07-167866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分析を行う複数の分析ユニットと当該複数の分析ユニットに対して共通に設けられた検体容器バッファ部との間で前記検体容器バッファ部に保持された検体容器を受け渡しする搬送装置であって、
前記搬送装置は、それぞれ接続される前記複数の分析ユニットのうち、最も分析サイクルの短い分析ユニットと同じサイクルで動作し、
前記複数の分析ユニットに前記検体容器を受け渡しする際に、前記複数の分析ユニットの全てに対して異なるタイミングで同期信号を出力するとともに、当該動作する1のサイクルの中で、前記複数の分析ユニットの全てに対して異なるタイミングで同期信号を出力する制御部を有している
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記制御部は、1運転サイクル中、前記複数の分析ユニットに対して出力する同期信号の出力タイミングを、接続される分析ユニット数分の1だけずらす
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記制御部は、1運転サイクル中、前記同期信号を前記最も分析サイクルの短い分析ユニットに対して最初に出力し、前記最も分析サイクルの短い分析ユニット以外の他の分析ユニットに対しては、前記検体容器の受け渡し処理に要する時間の経過後に速やかに前記同期信号を順次出力する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記検体容器バッファ部はローター構造であり、前記検体容器を同心円上に放射的に保持する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、
前記搬送装置に対して前記複数の分析ユニットを90度間隔で配置する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記検体容器バッファ部は、前記搬送装置内に配置された
ことを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の生体試料(以下検体と記載)の定量、定性分析を行う自動分析装置に好適な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトラインが迂回や延長をしても大型化せず、シンプルで低コストの検体搬送装置の一例として、特許文献1には、親検体より使用分析装置別、即ち分析計を行先とする検体ラックC1と、異なる分析計を行先とする検体ラックC2に分けて分注され、ラック合流装置によって検体ラックC1,C2が主搬送ライン上に合流され、主搬送ラインを搬送されてきた検体ラックC1と検体ラックC2はその使用分析装置別に設けられた分析装置用搬送ラインD1又は分析装置用搬送ラインD2にラック分岐装置によって振り分ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液や尿の如き検体の定量、定性分析を自動で行う自動分析装置は、多くの患者検体を短時間で処理する必要のある大学病院、臨床検査センターを中心に普及が著しく、処理能力により、大型、中型、小型の各種の自動分析装置が開発されている。
【0005】
特に、多数の検体を分析処理する大型の分析装置の場合には、検体の入った検体容器を検体ラックと呼称されるホルダーに保持した状態で搬送ライン(搬送装置)を介して複数の分析ユニットに搬送することで、検査技師が検体ラック投入口にラックを投入するだけで分析装置の出力まで自動で実行することを実現している。
【0006】
近年においては、接続される分析ユニットも多用化し、血中のコレステロール等を測定する生化学分析装置と、感染症等を測定する免疫分析装置などもあり、これら異種の分析ユニットが複数接続される分析装置もある。
【0007】
これによって、大量の検体を測定するだけであったものから、多種項目の測定をするような流れになっている。また、自動分析装置の集約化が可能となったため、従来は大型が主流であった搬送ラインで接続するという形態が、中型、小型の自動分析装置へも適用され、中規模の病院などへも普及が進んできている。
【0008】
一般的に、分析装置は複数の分析工程をパイプライン処理化して平行して実現することにより処理能力の向上を実現している。つまり、一定の分析サイクルを繰り返し動作している。
【0009】
このための機構の制御として、定められた時間に、同じ動作を繰り返すようなタイムチャート方式により機構の制御を行っている。
【0010】
しかし、前述のような生化学分析装置と免疫分析装置とでは分析工程が異なるため、お互いに異なる分析サイクルで定義されたタイムチャート上で機構を制御して分析を行っており、お互いに異なる時間周期で平行して分析処理を行っている。
【0011】
異なる分析サイクルの分析ユニットを接続して一体のシステムとして運用する場合、この分析サイクルの違いを吸収する必要が生じる。
【0012】
ここで、搬送ラインは分析ユニットに接続されているが、一方の分析ユニットを優先的に動作させると、もう一方の分析ユニットの動作に支障が生じてしまう。つまり、お互いの分析ユニットと搬送ラインの間で何らかの同期を取りながら、もう一方の分析ユニットの動作に支障をきたさないように制御する必要がある。
【0013】
これらの解決策として、分析ユニットに専用の搬送ラインを設け、ここをお互いの処理能力干渉用のバッファとして運用することが一般的であった。しかし、こういった専用の搬送ラインを設けることは、複雑な機構を設けることになり、生産上のコスト上昇、機構調整の難易度を高めてしまうのと同時に、緊急で測定しなければならない患者検体の測定の迅速性の低下を招くという懸念がある。
【0014】
また、バッファリングされる数を制御することで、処理能力の低下を招かないようにする仕組みも検討されている。しかし、通常の病院の運用において、朝は入院患者の検体測定との大量の検体の処理、昼ごろからは外来患者の検体測定、夕方以降はまばらに到着する緊急患者の検体測定と、日中の時間帯において到着する検体数もばらばらである。また、その際に求められる緊急度合いや検査項目等が異なってくるので、安易な設定による制御では実運用上に合わないのが現実である。
【0015】
従って、一方の分析ユニットが忙しいときにもう一方の分析ユニットに検体を搬送することが出来ればいいのだが、これを安易には実現することも出来ない。忙しくなかった一方の分析ユニットへの搬送中に、忙しかったもう一方の分析ユニットが忙しくなくなってしまう可能性もあるためである。
【0016】
本発明は、専用の搬送ラインを各々に設けることなく、かつ分析ユニットの動作に影響を与えることなく複数の分析ユニットへ検体容器を搬送することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体の分析を行う複数の分析ユニットと当該複数の分析ユニットに対して共通に設けられた検体容器バッファ部との間で前記検体容器バッファ部に保持された検体容器を受け渡しする搬送装置であって、前記搬送装置は、それぞれ接続される前記複数の分析ユニットのうち、最も分析サイクルの短い分析ユニットと同じサイクルで動作し、前記複数の分析ユニットに前記検体容器を受け渡しする際に、前記複数の分析ユニットの全てに対して異なるタイミングで同期信号を出力するとともに、当該動作する1のサイクルの中で、前記複数の分析ユニットの全てに対して異なるタイミングで同期信号を出力する制御部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、専用の搬送ラインを各々に設けることなく、かつ分析ユニットの動作に影響を与えることなく複数の分析ユニットへ検体容器を搬送することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の自動分析装置の一実施例を示した図である。
【
図2】本発明の自動分析装置の一実施例において用いられる検体ラック及び検体容器の概略を示した図である。
【
図3】本発明の自動分析装置の一実施例のサンプラ部および分析ユニットの分析サイクルの関係を示す図である。
【
図4】本発明の自動分析装置の一実施例において用いられるサンプラ部の概略を示した図である。
【
図5】従来の自動分析装置において適用される制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【
図6】本発明の自動分析装置の一実施例において適用される制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【
図7】本発明の自動分析装置の一実施例において適用される制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【
図8】本発明の自動分析装置の他の実施例を示した図である。
【
図9】本発明の自動分析装置の他の実施例において適用される制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【
図10】本発明の自動分析装置の他の実施例において適用される制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の自動分析装置の実施例について
図1乃至
図9を用いて説明する。
【0021】
最初に、自動分析装置の概要について
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1は本発明を適用する自動分析装置のブロック図である。
図2は検体ラック及び検体容器を示した図である。
図3はサンプラ部および分析ユニットの分析サイクルの関係を示す図である。
図4はサンプラ部の概略を示した図である。
【0022】
検体を分析する自動分析装置100は、
図1に示すように、検体ラック5を投入,回収するサンプラ部1と、サンプラ部1の一方側の分析ユニット2と、サンプラ部1のもう一方側の分析ユニット3とが配置されている。
【0023】
なお、本実施例の自動分析装置100は、
図2に示すような5個の検体容器7を搭載した検体ラック5を搬送する搬送装置を備えた自動分析装置を想定している。
【0024】
サンプラ部1は、自動分析装置100内に検体ラック5を投入し、バッファ部10に保持された検体ラック5を分析ユニット2,3に受け渡し搬送するためのユニットであり、本発明では、
図3に示すように、それぞれ接続される複数の分析ユニット2,3のうち、分析サイクルの長い分析ユニット3のサイクル93ではなく、分析サイクルの短い分析ユニット2のサイクル92と同じサイクル90で動作するように設定されている。
【0025】
次に
図4を用いて、サンプラ部1の詳細について説明する。
【0026】
図4に示すように、サンプラ部1は、バッファ部10、収納部11、投入部12、緊急ラック投入口13、搬送部14、検体バーコードリーダー15、緊急ラック検出用センサ16、検体有無判定用センサ17、制御部50を備えている。
【0027】
サンプラ部1では、投入部12に設置された検体ラック5は、搬送部14によってバッファ部10に搬送される。搬送部14の途中に、検体有無判定用センサ17があり、検体ラック5上の検体容器7の有無が認識される。ここで検体容器7が存在すると判断されれば、検体バーコードリーダー15によって検体容器7上に貼り付けられた検体バーコード8を読み取り、検体の識別情報を認識する。実際のシステムでは、この識別情報によって、患者を特定する。
【0028】
緊急ラック投入口13は、緊急に測定を実施する必要がある検体が収容された検体容器7を保持する検体ラック5を1つ設置する部分である。緊急に測定を実施する必要がある場合、この緊急ラック投入口13に検体ラック5を設置すると、緊急ラック検出用センサ16により緊急であるとの情報が記録された検体ラックバーコード6を読み込むことでその存在が認識され、投入部12に設置された検体ラック5を追い越して、バッファ部10を介して分析ユニット2,3に搬入することが出来る。
【0029】
バッファ部10は、円軌道をするローター構造であり、外円周上に検体容器7を複数載置する検体ラック5を同心円上に放射的に複数保持するスロットを有している。このスロットをモータによって回転させることで、任意の検体ラック5を要求先に搬入・搬出するように構成されている。このような構造により、必ずしも先に入れられた検体ラック5を順に処理しなくてもよくなっている。つまり、優先度の高いものがあれば、それを先に処理することも出来るようになっている。
【0030】
このバッファ部10の放射状の円周上のある一点に対し、搬送部14が接続されており、検体ラック5の搬入,搬出が行われる。この一点を円周上の0度の位置とすると、搬送部14が接続された位置から円周上の+90度、-90度の位置に後述する分析ユニット2への引き込みライン21、および分析ユニット3への引き込みライン31が接続されており、検体ラック5の搬入,搬出(受け渡し処理)が行われる。
【0031】
それぞれの分析ユニット2,3で分注の終えた検体ラック5は、このバッファ部10内で待機し、測定結果の出力を待機し、必要に応じて自動再検等の処理をすることもできる。また、処理の終えた場合は、搬送部14を介して収納部11に搬送される。
【0032】
分析ユニット2,3やサンプラ部1には、制御用コンピュータ4がネットワーク回線40によって接続されており、表示装置4aや入力装置4b等のユーザインターフェースを介して、各ユニットを操作することが出来る。
【0033】
通常、投入部12に検体容器7を搭載した検体ラック5を設置し、分析を開始すると、検体ラック5は、バッファ部10に引き込まれる。依頼項目に応じて分析ユニット2に対しては引き込みライン21を介して搬送され、もしくは分析ユニット3に対しては引き込みライン31を介して搬送される。
【0034】
その後、分析ユニット検体分注用プローブ22、もしくは分析ユニット検体分注用プローブ32によって検体が吸引される。その後、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、反応液の特性を検出器で測定することで検体の定性、定量分析を実行する。検体の吸引の終えた検体ラック5は、引き込みライン21,31を逆方向に搬送させることで、バッファ部10に戻され、最終的に収納部11に回収される。
【0035】
これらの分析に関する制御については制御用コンピュータ4により実行されるが、本発明では、複数の分析ユニット2,3に検体ラック5を搬入、搬出する受け渡し処理の詳細部分については、サンプラ部1内に設けられた制御部50において実行する。詳細な制御内容については詳しくは後述する。
【0036】
図1に戻り、分析ユニット2は生化学検査用の分析ユニット、分析ユニット3は免疫検査用の分析ユニットであり、検査の目的や処理能力(分析サイクル:単位時間当たりの分析処理能力)は異なる。例えば、本実施例においては、分析ユニット2は450テスト/1時間(8.0秒/1サイクル)、分析ユニット3は120テスト/1時間(30.0秒/1サイクル)とする。
【0037】
このように、分析ユニット2,3は、検体の分析サイクル92,93が全ての分析ユニット2,3で同じでなく、かつ他の分析ユニット2,3の分析サイクル92,93が最も分析サイクル92,93が短い分析ユニット2,3の公倍数となっておらず、複数の分析ユニット2,3の分析サイクル92,93の公倍数となる時間までに実行される予定の分析数が分析ユニット2,3に求められる単位時間当たりの分析数の3%以上と、高いと判断される水準になっている。なお、必ずしも上述のような具体的な数字である必要はなく、装置に求められる能力に応じた設定とすることができることは言うまでもない。
【0038】
これら生化学検査用の分析ユニット2、および免疫検査用の分析ユニット3の構成は公知の構成とすることができる。
【0039】
なお、これら検体の分析を行う複数の分析ユニット2,3の検査の目的や処理能力が異なる場合について説明するが、同じ種類の分析ユニットとすることができる。また、同一検査項目・同一処理能力とすることも可能である。なお、目的(検査項目)や処理能力が異なる場合、更には同一目的、同一処理能力であっても、各分析ユニットが持てる処理能力を最大限維持するものとする。
【0040】
以下、制御部50における制御について
図5ないし
図7を用いて説明する。
図5は従来の自動分析装置における制御のタイムチャートの一例を示す図である。
図6および
図7は本実施例の自動分析装置の制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【0041】
前述のとおり、分析ユニット2は生化学分析用、分析ユニット3は免疫分析用であり、異なる検査項目を測定する分析ユニットを想定している。このような分析ユニット2,3が接続されている場合、一般的に同一の処理能力ということはなく、一方は高く、もう一方は低い処理能力である。
【0042】
このように異なる処理能力の分析ユニット2,3を接続すると、一方の低い処理能力の分析ユニット3の方にシステムの処理能力は影響を受けてしまう。一つの検体に対する依頼の数に応じてその比率は変動するものであるが、検体に対する項目の依頼数は、その検体によって差が出てくるため、一律の定義は出来ない。
【0043】
このような分析ユニット2,3を接続する装置構成の場合、バッファ部10を介して両分析ユニット2,3を接続しているため、一方の分析ユニット2,3との検体ラック5の受け渡し処理を行っている間は、もう一方の分析ユニット2,3との検体ラック5の受け渡しをすることは出来ない。
【0044】
その結果、
図5に示すように、本来であれば分析処理を行うことが出来る分析ユニット3があったとしても、もう一方の分析ユニット2によって検体ラック5の受け渡しが出来ないため、空サイクルとなってしまい、処理能力の低下を招く恐れがある。
【0045】
そこで、サンプラ部1内には設置された制御部50は、
図6、
図7に示すように、複数の分析ユニット2,3に検体ラック5を受け渡し処理90t1,90t4,90t5,90t6を行う際には、複数の分析ユニット2,3の全てに対して、1運転サイクル中、接続される分析ユニット2,3数分の1だけ出力タイミングをずらした同期信号90s1,90s2,90s3,90s4,90s5,90s6を出力する。
【0046】
より具体的には、制御部50は、1運転サイクル中、受け渡し処理が干渉しない、すなわち同じ分析サイクル中で受け渡し要求が重複して入力されなかったときは、分析ユニット2に対して受け渡し処理を行う場合は、
図6に示すように、同期信号90s1を分析ユニット2に対して最初に出力する。分析ユニット2はこの同期信号90s1の入力を受けて、サンプラ部1のバッファ部10との検体ラック5の受け渡し処理90t1を実行する。
【0047】
次いで、制御部50は、
図6に示すように、分析ユニット3に対しては、検体ラック5の受け渡し処理90t1の後に速やかに同期信号90s2を出力する。しかし、分析ユニット3は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s2を無視する。
【0048】
同様に、分析ユニット3に対してのみ受け渡し処理を実行する場合は、
図6に示すように、制御部50は、同期信号90s3を分析ユニット2に対して最初に出力する。しかし、分析ユニット2は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s3を無視する。
【0049】
次いで、制御部50は、
図6に示すように、分析ユニット3に対して、分析ユニット2への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s4を出力する。分析ユニット3はこの同期信号90s4の入力を受けて、サンプラ部1のバッファ部10との検体ラック5の受け渡し処理90t4を実行する。
【0050】
更に、制御部50は、1運転サイクル中、受け渡し処理が干渉する、すなわち同じ分析サイクル中で受け渡し要求が重複して入力されたときは、
図7に示すように、制御部50は、同期信号90s5を分析ユニット2に対して最初に出力する。分析ユニット2はこの同期信号90s5の入力を受けて、サンプラ部1のバッファ部10との検体ラック5の受け渡し処理90t5を実行する。
【0051】
また、制御部50は、
図7に示すように、分析ユニット3に対しては、検体ラック5の受け渡し処理90t5後に速やかに同期信号90s6を出力する。分析ユニット3はこの同期信号90s6の入力を受けて、サンプラ部1のバッファ部10との検体ラック5の受け渡し処理90t6を実行する。
【0052】
なお、
図7に示すように、サンプラ部1と分析サイクルが同じでない分析ユニット3からの検体ラック5の受け渡し要求が分析サイクルの切れ目に重なることが想定される場合は、制御部50は、受け渡し処理をひとつ前の分析サイクルにおいて同期信号90s7aを出力して受け渡し処理90t7aを実行するよう制御する。もし、受け渡し処理がひとつ前の分析サイクルで実行できない場合は、ひとつ後の分析サイクルにおいて同期信号90s7bを出力して受け渡し処理90t7bを実行するよう制御する。
【0053】
なお、
図1では、2台の分析ユニットが接続される場合を想定したが、異なる位相で接続されるのであれば、これ以外の角度であっても構わない。また接続される分析ユニット数は2つに限られず、例えば、後述するように
図8に示すように3つの分析ユニットを90度間隔で設定することができるし、それ以上であってもよい。
【0054】
以下、3つの分析ユニット2,3,9が接続される場合について
図8乃至
図10を用いて説明する。
図8は本発明を適用する自動分析装置のブロック図の他の概要を示す図である。
【0055】
図8に示すように、自動分析装置100Aは、
図1に示す自動分析装置100の構成である検体ラック5を投入,回収するサンプラ部1Aと、サンプラ部1Aの右側に分析ユニット2、サンプラ部1Aの左側に分析ユニット3に加えて、分析ユニット2と分析ユニット3との間のサンプラ部1Aの反対側に分析ユニット9を配置している。
【0056】
分析ユニット9についても、分析ユニット2,3と同様に生化学検査用、あるいは免疫検査用の分析ユニットであり、その処理能力は、例えば、90テスト/1時間(40.0秒/1サイクル)とする。分析ユニット9は、引き込みライン91を有しており、バッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理に用いる。
【0057】
複数の分析ユニット2,3,9は、検体の分析サイクル92,93,99(
図9参照)が全ての分析ユニット2,3,9で同じでない点や、サンプラ部1Aが最も分析サイクルの短い分析ユニット2と同じサイクルで動作する点などは
図1に示す自動分析装置100の場合と同じである。
【0058】
図8に示す自動分析装置100Aにおいても、制御用コンピュータ4により分析を含めた全体処理が実行されるが、複数の分析ユニット2,3,9に検体ラック5を搬入、搬出する受け渡し処理の詳細部分については、制御部50Aにおいて実行する。
【0059】
次に、制御部50Aにおける検体ラック5の受け渡し処理について
図9および
図10を用いて説明する。
図9および
図10は制御部50Aによる制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【0060】
図8に示すような3つの分析ユニット2,3,9が接続された場合であっても、制御部50Aは、複数の分析ユニット2,3,9に対する検体ラック5の受け渡し処理90t8,90t12,90t16,90t17,90t19を実行する際には、複数の分析ユニット2,3,9の全てに対して出力タイミングをずらした同期信号90s8,90s9,90s10,90s11,90s12,90s13,90s14,90s15,90s16,90s17,90s18,90s19を出力する。
【0061】
より具体的には、制御部50Aは、分析ユニット2に対してのみ受け渡し処理を行う場合は、
図9に示すように、同期信号90s8を分析ユニット2に対して最初に出力する。分析ユニット2はこの同期信号90s8の入力を受けて、サンプラ部1Aのバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t8を実行する。
【0062】
次いで、制御部50Aは、
図9に示すように、分析ユニット3に対しては、検体ラック5の受け渡し処理90t8後に速やかに同期信号90s9を出力する。しかし、分析ユニット3は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s9を無視する。
【0063】
更に、制御部50Aは、分析ユニット9に対しては、分析ユニット3への検体ラック5の受け渡し処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s10を出力する。しかし、分析ユニット9は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s10を無視する。
【0064】
同様に、分析ユニット3に対してのみ受け渡し処理を実行する場合は、
図9に示すように、制御部50Aは、同期信号90s11を分析ユニット2に対して最初に出力する。しかし、分析ユニット2は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s11を無視する。
【0065】
次いで、制御部50は、
図9に示すように、分析ユニット3に対して、分析ユニット2への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s12を出力する。分析ユニット3はこの同期信号90s12の入力を受けて、サンプラ部1のバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t12を実行する。
【0066】
次いで、制御部50
Aは、
図9に示すように、分析ユニット3に対して、分析ユニット2への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s12を出力する。分析ユニット3はこの同期信号90s12の入力を受けて、サンプラ部1
Aのバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t12を実行する。
【0067】
更に、制御部50Aは、分析ユニット9に対しては、受け渡し処理90t12が完了するタイミングで同期信号90s13を出力する。しかし、分析ユニット9は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s13を無視する。
【0068】
同様に、分析ユニット9に対してのみ受け渡し処理を実行する場合は、
図9に示すように、制御部50Aは、同期信号90s14を分析ユニット2に対して最初に出力する。しかし、分析ユニット2は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s14を無視する。
【0069】
次いで、制御部50Aは、
図9に示すように、分析ユニット3に対して、分析ユニット2への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s15を出力する。しかし、分析ユニット3は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s15を無視する。
【0070】
更に、制御部50Aは、分析ユニット9に対しては、分析ユニット3への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s16を出力する。分析ユニット9はこの同期信号90s16の入力を受けて、サンプラ部1Aのバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t16を実行する。
【0071】
更に、制御部50Aは、1運転サイクル中、受け渡し処理が干渉する、すなわち分析ユニット2,9から同じ分析サイクル中で受け渡し要求が重複して入力されたときは、
図10に示すように、制御部50Aは、同期信号90s17を分析ユニット2に対して最初に出力する。分析ユニット2はこの同期信号90s17の入力を受けて、サンプラ部1Aのバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t17を実行する。
【0072】
次いで、制御部50Aは、
図10に示すように、分析ユニット3に対しては、検体ラック5の受け渡し処理90t17後に速やかに同期信号90s18を出力する。しかし、分析ユニット3は、検体ラックの受け渡し要求がないため、この同期信号90s18を無視する。
【0073】
また、制御部50Aは、
図10に示すように、分析ユニット9に対しては、分析ユニット3への検体ラック5の受け渡し処理の処理に要すると想定される時間の経過後に速やかに同期信号90s19を出力する。分析ユニット9はこの同期信号90s19の入力を受けて、サンプラ部1Aのバッファ部10Aとの検体ラック5の受け渡し処理90t19を実行する。
【0074】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0075】
上述した本実施例の自動分析装置100,100Aは、検体の分析を行う複数の分析ユニット2,3,9と、検体を保持する検体容器7を載置する検体ラック5を複数保持するバッファ部10,10Aと、バッファ部10,10Aに保持された検体ラック5を分析ユニット2,3,9に搬送するサンプラ部1,1Aと、複数の分析ユニット2,3,9に検体ラック5を受け渡し処理する際に、複数の分析ユニット2,3,9の全てに対して異なるタイミングで同期信号を出力する制御部50,50Aと、を備え、分析ユニット2,3,9は、同期信号を起点として検体ラック5の受け渡し処理を行う。
【0076】
このような制御によって、検体ラック5の受け渡し動作は、サンプラ部1,1Aが発行する同期信号以下の動作で行われるように制御される。すなわち、接続される複数の分析ユニットのうち、同期信号を起点として、同期信号が出力された一つの分析ユニットと同期して検体ラック5の受け渡し処理を行うので、お互いの分析ユニットの時間軸上の衝突が生じることを防止し、あたかも専用のバッファが設けられているように扱うことが出来る。従って、サンプラ部1,1Aの動作サイクル90内に複数の検体ラック5の受け渡し動作が生じたとしても、お互いの分析ユニットの動作を止めることなく制御可能となる。従って、一方の分析ユニットが忙しくても、もう一方の分析ユニットへの処理に影響しない装置を提供することが出来、システム全体の処理能力を最大限に維持することが出来る。
【0077】
このような処理は、異なる処理能力の複数(2~3)の分析ユニットが1つのバッファ部に接続された中型、小型の自動分析装置に特に好適なものとなる。
【0078】
また、サンプラ部1,1Aは、それぞれ接続される複数の分析ユニット2,3,9のうち、最も短い分析サイクル92の分析ユニット2と同じサイクル90で動作するため、最も検体ラック5の受け渡し要求が高いことが想定される分析ユニット2を基準として同期信号を出力し、受け渡し処理を行うように制御することができ、システム全体の処理能力をより容易に最大限に維持することができる。
【0079】
更に、制御部50,50Aは、1運転サイクル中、複数の分析ユニット2,3,9に対して出力する同期信号の出力タイミングを、接続される分析ユニット2,3,9の数分の1だけずらすことで、より確実にお互いの分析ユニットの動作を止めることなく検体ラック5の受け渡し処理を行うことができる。
【0080】
また、制御部50,50Aは、1運転サイクル中、同期信号を最も分析サイクル92の短い分析ユニット2に対して最初に出力し、最も分析サイクル92の短い分析ユニット2以外の他の分析ユニット3,9に対しては、検体ラック5の受け渡し処理に要する時間の経過後に速やかに同期信号を順次出力ことにより、時間に余裕のない分析ユニット2に対して最初に検体ラック5の搬送を行うことができ、安定した検体ラック5の受け渡し処理を実行することができる。
【0081】
更に、複数の分析ユニット2,3,9は、検体ラック5の受け渡し処理の要求がないときに同期信号が入力されたときは、その同期信号を無視することで、不必要な同期信号に対する対処動作を実行する必要がなく、システムの負荷を軽減することができる。
【0082】
また、複数の分析ユニット2,3,9が、検体の分析サイクル92,93,99が同じでない、もしくは検体の分析サイクル92,93,99が全ての分析ユニット2,3,9で同じでなく、かつ他の分析ユニット2,3,9の分析サイクル92,93,99が最も分析サイクル92,93,99が短い分析ユニット2,3,9の公倍数となっていない、あるいは検体の分析サイクル92,93,99が全ての分析ユニット2,3,9で同じでなく、かつ複数の分析ユニット2,3,9の分析サイクル92,93,99の公倍数となる時間までに実行される予定の分析数が分析ユニット2,3,9に求められる単位時間当たりの分析数の3%以上である、自動分析装置であっても、お互いの分析ユニットの動作を止めることなく検体ラック5の受け渡し処理や分析処理を行うことができる。
【0083】
更に、バッファ部10,10Aはローター構造であり、検体ラック5を同心円上に放射的に保持することで、複雑な構造とすることなく、複数の分析ユニット2,3,9に対して任意の検体ラック5を順不同で受け渡し処理することができる。
【0084】
また、複数の分析ユニット2,3,9は、サンプラ部1,1Aに対して90度間隔で配置されることにより、干渉が生じることなく複数の分析ユニット2,3,9を配置することができる。
【0085】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0086】
例えば、上述の実施例では
図2に示すような検体容器7を複数保持する検体ラック5を受け渡し搬送する場合について説明したが、検体容器7を一本保持する検体ホルダーを受け渡し搬送する搬送装置を備える自動分析装置にも本発明を適用することができる。
【0087】
また、制御部50,50Aがサンプラ部1,1Aに配置される場合について説明したが、制御部50,50Aは制御用コンピュータ4内に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1A:サンプラ部(搬送装置)
2,3,9:分析ユニット
4:制御用コンピュータ
4a:表示装置
4b:入力装置
5:検体ラック
6:検体ラックバーコード
7:検体容器
8:検体バーコード
10,10A:バッファ部(検体容器バッファ部)
11:収納部
12:投入部
13:緊急ラック投入口
14:搬送部
15:検体バーコードリーダー
16:緊急ラック検出用センサ
17:検体有無判定用センサ
21,31,91:引き込みライン
22,32:分析ユニット検体分注用プローブ
40:ネットワーク回線
50,50A:制御部
90:サンプラ部1動作サイクル
92:分析ユニット2動作サイクル
93:分析ユニット3動作サイクル
99:分析ユニット9動作サイクル
90t1,90t4,90t5,90t6,90t7a,90t7b,90t8,90t12,90t16,90t17,90t19:受け渡し処理
90s1,90s4,90s5,90s6,90s7a,90s7b,90s8,90s12,90s16,90s17,90s19:同期信号(有効)
90s2,90s3,90s9,90s10,90s11,90s13,90s14,90s15,90s18:同期信号(無効)
100,100A:自動分析装置