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特許7588339無電解メッキ繊維材料並びにその製造方法及び製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】無電解メッキ繊維材料並びにその製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20241115BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20241115BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C23C18/30
C23C18/31 A
D06M10/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020114102
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012323
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518019248
【氏名又は名称】浅野繊維工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179362
【氏名又は名称】株式会社ヤマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 美樹
(72)【発明者】
【氏名】小原 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝男
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-173636(JP,A)
【文献】特開2015-214735(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060342(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/060341(WO,A1)
【文献】特開2011-236512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210302(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0349034(US,A1)
【文献】特開昭59-039361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
D06M 10/00-11/84
B05B 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒前駆体を含有する触媒溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている繊維材料に静電噴霧し、かつ前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧し、これによって、前記繊維材料に触媒が付与された触媒付与繊維材料を得る触媒化工程と、
金属イオンを含有する金属イオン溶液と、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液とを、前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液がともに正電位又は前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液がともに負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料に静電噴霧し、これによって、前記触媒付与繊維材料にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料を得る無電解メッキ工程と
を含み、
前記無電解メッキ工程における静電噴霧が、前記金属イオン溶液と前記第2還元剤溶液とが、互いに向き合わせた状態を維持して前記触媒付与繊維材料に噴霧される、
無電解メッキ繊維材料の製造方法。
【請求項2】
前記繊維材料と、前記触媒付与繊維材料と、前記無電解メッキ繊維材料とが、前記触媒化工程の実施位置から前記無電解メッキ工程の実施位置に向かって延びるように一体化した状態で前記触媒化工程の実施位置から前記無電解メッキ工程の実施位置に向かって搬送される、請求項1に記載の無電解メッキ繊維材料の製造方法。
【請求項3】
繊維材料に触媒が付与された触媒付与繊維材料を得るように構成される触媒化装置と、
前記触媒付与繊維材料にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料を得るように構成される無電解メッキ装置と
を備え、
前記触媒化装置が、触媒前駆体を含有する触媒溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧するように構成される触媒用ノズルと、前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧するように構成される第1還元剤用ノズルとを有し、
前記無電解メッキ装置が、金属イオンを含有する金属イオン溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料に静電噴霧するように構成される金属イオン用ノズルと、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液を、前記金属イオン溶液が正電位の場合には正電位に、前記金属イオン溶液が負電位の場合には負電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料に静電噴霧するように構成される第2還元剤用ノズルとを有し、
前記無電解メッキ装置が、前記金属イオン用ノズルの吐出口と、前記第2還元剤用ノズルの吐出口を、前記触媒付与繊維材料に向けながら、互いに向き合わせた状態を維持するように構成されている、無電解メッキ繊維材料の製造システム。
【請求項4】
前記繊維材料と、前記触媒付与繊維材料と、前記無電解メッキ繊維材料とを前記触媒化装置から前記無電解メッキ装置に向かって延びるように一体化した状態で前記触媒化装置から前記無電解メッキ装置に向けて搬送可能に構成される搬送装置を備える請求項に記載の無電解メッキ繊維材料の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンを含有する溶液と、還元剤を含有する溶液とを用いて繊維材料に無電解メッキ処理を施す工程を含む無電解メッキ繊維材料の製造方法に関する。本発明は、このような製造方法によって製造される無電解メッキ繊維材料に関する。本発明はまた、金属イオンを含有する溶液と、還元剤を含有する溶液とを用いて繊維材料に無電解メッキ処理を施すように構成される無電解メッキ装置を有する無電解メッキ繊維材料の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を有する繊維材料を作製すること等を目的として、繊維材料に無電解メッキ処理が施されることがある。無電解メッキ処理においては、還元剤を用いて金属イオンを還元することによって金属を析出させたメッキ皮膜を繊維材料に形成する。無電解メッキ繊維材料の製造技術における一例としては、繊維材料をメッキ溶液に浸漬する無電解メッキ処理工程を含むものが挙げられる。(例えば、特許文献1~3を参照。)
【0003】
また、無電解メッキ繊維材料の製造技術における別の一例としては、還元剤を含有する繊維材料に、金属イオンを含有する溶液をエレクトロスプレーによって噴霧し、これによって、金属イオンと還元剤との反応によって金属粒子を繊維材料中に生成する無電解メッキ処理工程を含むものが挙げられる。(例えば、特許文献4を参照。)
【0004】
無電解メッキ繊維材料の製造技術におけるさらなる別の一例としては、繊維材料に、金属イオンを含有する溶液をエレクトロスプレーによって正電位及び負電位の一方に帯電した状態で噴霧し、かつ還元剤を含有する溶液をエレクトロスプレーによって正電位及び負電位の他方に帯電した状態で噴霧し、これによって、金属イオンと還元剤との反応によって金属粒子を繊維材料中に生成する無電解メッキ処理工程を含むものが挙げられる。(例えば、特許文献5を参照。)
【0005】
また、無電解メッキ繊維材料の製造技術における一例、別の一例、及びさらなる一例では、無電解メッキ処理工程の前に、繊維材料を洗浄液に浸漬するクリーニング処理工程、繊維材料とメッキ被膜との密着性を高めるために繊維材料をタンニン酸溶液に浸漬するタンニン酸処理工程、繊維材料に触媒を付着させるために繊維材料を触媒化処理液に浸漬する触媒化処理工程等のような準備工程が行われる。(例えば、特許文献1~5を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3877965号明細書
【文献】特開平7-173636号公報
【文献】特開2003-105552号公報
【文献】国際公開第2015/060341号
【文献】国際公開第2015/060342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記無電解メッキ繊維材料の製造技術における一例の無電解メッキ処理工程、並びに上記無電解メッキ繊維材料の製造技術における一例及び別の一例の準備工程では、槽等に大量に貯められた各種加工溶液に繊維材料を浸漬する必要がある。しかしながら、加工溶液は貴金属を含むことがあり、このような加工溶液を大量に用いることは製造コストを増大させる。また、使用後の溶液は環境負荷物質を含んでおり、このような溶液を環境規制に適合するように廃棄処理するためには高いコストが掛かる。繊維材料を加工溶液に浸漬するときには、溶液を貯めた槽等においてバッチ処理を行うことが必要となる。バッチ処理を行うための装置を用いることもまた製造コストを増大させる要因となる。さらに、これらのことは無電解メッキ繊維材料の製造効率を低下させる要因になる。
【0008】
無電解メッキ繊維材料においては、その品質を高めることについての改善の余地がある。例えば、無電解メッキ繊維材料の導電性を高めること、無電解メッキ繊維材料のメッキ被膜の厚さを抑えること等が望まれている。
【0009】
このような実情を鑑みると、無電解メッキ繊維材料の製造方法においては、使用される加工溶液の量を低減すること、製造される無電解メッキ繊維材料の品質を高めることが望まれる。ひいては、無電解メッキ繊維材料の製造方法においては、製造される無電解メッキ繊維材料の導電性を高めること、製造される無電解メッキ繊維材料のメッキ被膜の厚さを低減すること、無電解メッキ繊維材料の製造コストを低減すること、環境負荷を低減すること、無電解メッキ繊維材料の製造効率を向上させることが望まれる。
【0010】
無電解メッキ繊維材料においては、製造時に使用される加工溶液の量を低減すること、品質を高めることが望まれる。ひいては、無電解メッキ繊維材料においては、導電性を高めること、メッキ被膜の厚さを低減すること、製造コストを低減すること、製造時に起こり得る環境負荷を低減すること、製造効率を向上させることが望まれる。
【0011】
無電解メッキ繊維材料の製造システムにおいては、使用される加工溶液の量を低減すること、製造される無電解メッキ繊維材料の品質を高めることが望まれる。ひいては、無電解メッキ繊維材料の製造システムにおいては、製造される無電解メッキ繊維材料の導電性を高めること、製造される無電解メッキ繊維材料のメッキ被膜の厚さを低減すること、製造コストを低減すること、環境負荷を低減すること、無電解メッキ繊維材料の製造効率を向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法は、触媒前駆体を含有する触媒溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている繊維材料に静電噴霧し、かつ前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧し、これによって、前記繊維材料に触媒が付与された触媒付与繊維材料を得る触媒化工程と、金属イオンを含有する金属イオン溶液と、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液とを、それぞれ同じように正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料に、前記触媒付与繊維材料にて同一の電場内で反応させるようにそれぞれ静電噴霧し、これによって、前記触媒付与繊維材料にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料を得る無電解メッキ工程とを含む。
【0013】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料は、触媒前駆体を含有する触媒溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている繊維材料に静電噴霧し、かつ前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧し、これによって、前記繊維材料に触媒が付与された触媒付与繊維材料を得る触媒化工程と、金属イオンを含有する金属イオン溶液と、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液とを、それぞれ同じように正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料に、前記触媒付与繊維材料にて同一の電場内で反応させるようにそれぞれ静電噴霧し、これによって、前記触媒付与繊維材料にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料を得る無電解メッキ工程とを含む製造方法によって製造される。
【0014】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造システムは、繊維材料に触媒が付与された触媒付与繊維材料を得るように構成される触媒化装置と、前記触媒付与繊維材料にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料を得るように構成される無電解メッキ装置と、前記触媒化装置に送られる繊維材料とを備え、前記触媒化装置が、触媒前駆体を含有する触媒溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧するように構成される触媒用ノズルと、前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料に静電噴霧するように構成される第1還元剤用ノズルとを有し、前記無電解メッキ装置が、金属イオンを含有する金属イオン溶液を正電位又は負電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料に静電噴霧するように構成される金属イオン用ノズルと、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液を前記金属イオン溶液と同じ電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料に静電噴霧するように構成される第2還元剤用ノズルとを有し、前記無電解メッキ装置が、前記金属イオン用ノズルから静電噴霧された金属イオン溶液と、前記第2還元剤用ノズルから静電噴霧された第2還元剤溶液とを、接地されるか又は前記金属イオン溶液及び前記第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料にて同一の電場内で反応させるように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法においては、使用される加工溶液の量を低減でき、製造される無電解メッキ繊維材料の品質を高めることができる。ひいては、一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法においては、製造される無電解メッキ繊維材料の導電性を高めることができ、製造される無電解メッキ繊維材料のメッキ被膜の厚さを低減でき、無電解メッキ繊維材料の製造コストを低減でき、環境負荷を低減でき、無電解メッキ繊維材料の製造効率を向上させることができる。
【0016】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料においては、製造時に使用される加工溶液の量を低減でき、品質を高めることができる。ひいては、一態様に係る無電解メッキ繊維材料においては、導電性を高めることができ、メッキ被膜の厚さを低減でき、製造コストを低減でき、製造時に起こり得る環境負荷を低減でき、製造効率を向上させることができる。
【0017】
一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造システムにおいては、使用される加工溶液の量を低減でき、製造される無電解メッキ繊維材料の品質を高めることができる。ひいては、一態様に係る無電解メッキ繊維材料の製造システムにおいては、製造される無電解メッキ繊維材料の導電性を高めることができ、製造される無電解メッキ繊維材料のメッキ被膜の厚さを低減でき、製造コストを低減でき、環境負荷を低減でき、無電解メッキ繊維材料の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図2図2は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法の触媒化工程に用いられる触媒化装置を、繊維材料を支持する支持装置と共に模式的に示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法の無電解メッキ工程に用いられる無電解メッキ装置を支持装置と共に模式的に示す正面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法の脱脂工程に用いられる脱脂装置を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法の前処理工程に用いられる前処理装置を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造方法の前、中、及び後洗浄工程のそれぞれに用いられる洗浄装置を支持装置と共に模式的に示す正面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る無電解メッキ繊維材料の製造システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1及び第2実施形態のそれぞれに係る無電解メッキ繊維材料並びにその製造方法及び製造システムについて以下に説明する。第1及び第2実施形態に係る製造方法及び製造システムのそれぞれにおいては、無電解メッキ処理によって金属を析出させたメッキ皮膜を有する繊維材料、すなわち、無電解メッキ繊維材料を作製する。
【0020】
「第1実施形態」
第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料並びにその製造方法及び製造システムについて説明する。
【0021】
「無電解メッキ繊維材料及びその製造方法の概略」
図1図3を参照して、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4及びその製造方法の概略について説明する。図1に示すように、無電解メッキ繊維材料A4の製造方法は、概略的には、触媒化工程S5(詳細を図2に示す)と、無電解メッキ工程S7(詳細を図3に示す)とを含む。
【0022】
このような製造方法においては、図2に示すように、触媒化工程S5にて、後述する繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、触媒前駆体を含有する溶液である触媒溶液Bを正電位(符号+により示す)に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧する。しかしながら、触媒化工程にて、繊維材料を接地する代わりに、繊維材料を触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電させることができる。また、触媒溶液を負電位に帯電した状態で繊維材料に静電噴霧することもできる。
【0023】
また、触媒化工程S5にて、繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、触媒前駆体の還元剤を含有する溶液である第1還元剤溶液Cを正電位(符号+により示す)に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧する。触媒溶液Bの電位と、第1還元剤溶液Cの電位とは同じになっている。
【0024】
しかしながら、触媒化工程にて、繊維材料を接地する代わりに、繊維材料を第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電させることができる。また、第1還元剤溶液を負電位に帯電した状態で繊維材料に静電噴霧することもできる。第1還元剤溶液の電位を、触媒溶液の電位と異ならせることもできる。
【0025】
このような触媒化工程S5においては、繊維材料A2に触媒が付与された触媒付与繊維材料A3が得られる。なお、以下においては、必要に応じて、触媒付与繊維材料A3を単に繊維材料A3と呼ぶ。
【0026】
図3に示すように、無電解メッキ工程S7においては、触媒付与繊維材料A3を接地し、かつこの繊維材料A3に水分を付与しながら、金属イオンを含有する溶液である金属イオン溶液Dと、金属イオンの還元剤を含有する溶液である第2還元剤溶液Eとを、それぞれ正電位(符号+により示す)に帯電した状態で、繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧する。金属イオン溶液Dの電位と、第2還元剤溶液Eの電位とは同じになっている。金属イオン溶液D及び第2還元剤溶液Eの電位はまた、触媒溶液B及び第1還元剤溶液Cの電位と同じになっている。
【0027】
しかしながら、無電解メッキ工程にて、繊維材料を接地する代わりに、繊維材料を金属イオン溶液及び第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電させることができる。また、金属イオン溶液及び第2還元剤溶液を負電位に帯電した状態で繊維材料に静電噴霧することもできる。金属イオン溶液及び第2還元剤溶液の電位を、触媒溶液及び第1還元剤溶液の電位の一方又は両方と異ならせることもできる。
【0028】
このような無電解メッキ工程S7においては、繊維材料A3にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料A4が得られる。なお、以下においては、必要に応じて、無電解メッキ繊維材料A4を単に繊維材料A4と呼ぶ。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4は、概略的には、このような製造方法によって製造することができる。
【0029】
「無電解メッキ繊維材料及びその製造方法の詳細」
図1図6を参照して、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4及びその製造方法の詳細について説明する。図1に示すように、無電解メッキ繊維材料A4の製造方法はまた、詳細には、脱脂工程S1(詳細を図4に示す)と、前乾燥工程S2と、前処理工程S3(詳細を図5に示す)と、前洗浄工程S4(詳細を図6に示す)と、触媒化工程S5(詳細を図2に示す)と、中洗浄工程S6(詳細を図6に示す)と、無電解メッキ工程S7(詳細を図3に示す)と、後洗浄工程S8(詳細を図6に示す)と、後乾燥工程S9とを含むことができる。
【0030】
このような製造方法においては、図4に示すように、脱脂工程S1にて、繊維材料A1を脱脂する。特に明確に図示はしないが、脱脂工程S1後に、前乾燥工程S2において繊維材料A1を乾燥させる。なお、脱脂液Fが揮発性である場合は、前乾燥工程S2を省略することもできる。
【0031】
図5に示すように、前処理工程S3において、次に述べる前処理繊維材料A2とメッキ被膜との密着性を高めるべく、前乾燥工程S2にて乾燥された繊維材料A1を負電荷に帯電させるように前処理を施す。前処理工程S3においては、繊維材料A1に前処理を施した前処理繊維材料A2が得られる。なお、以下においては、必要に応じて、前処理繊維材料A2を単に繊維材料A2と呼ぶ。しかしながら、上述のように触媒化工程及び無電解メッキ処理工程の一方又は両方が、負電位に帯電された溶液を繊維材料に静電噴霧する作業を含む場合、前処理工程を省略することもできる。
【0032】
図6に示すように、前処理工程S3後に、前洗浄工程S4において前処理繊維材料A2を洗浄する。図2に示すように、触媒化工程S5において、前洗浄工程S4にて洗浄された繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、触媒溶液Bを正電位に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧する。また、触媒化工程S5において繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、第1還元剤溶液Cを正電位に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧する。触媒化工程S5において、触媒付与繊維材料A3が得られる。
【0033】
図6に示すように、触媒化工程S5後に、中洗浄工程S6において触媒付与繊維材料A3を洗浄する。図3に示すように、無電解メッキ工程S7にて、中洗浄工程S6にて洗浄された繊維材料A3を接地し、かつこの繊維材料A3に水分を付与しながら、金属イオン溶液Dと、第2還元剤溶液Eとを、それぞれ正電位に帯電した状態で、繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧する。無電解メッキ工程S7において、無電解メッキ繊維材料A4が得られる。
【0034】
図6に示すように、無電解メッキ工程S7後に、後洗浄工程S8において無電解メッキ繊維材料A4を洗浄する。特に明確に図示はしないが、後乾燥工程S9において、後洗浄工程S8にて洗浄された繊維材料A4を乾燥させる。なお、無電解メッキ繊維材料の製造方法は、後乾燥工程の後に、無電解メッキ繊維材料にアニール処理を施すアニール処理工程を含むこともできる。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4は、詳細には、このような製造方法によって製造することができる。
【0035】
「繊維材料の詳細」
繊維材料A1は、詳細には次のようなものとすることができる。繊維材料A1は、高分子化合物を構成成分として含む糸状の材料、又はこれを束ねた材料(綿、織布、不織布、紙等)であれば、具体的な材質、天然繊維・合成繊維の違い、材料の形態等は特に限定されない。例えば、繊維材料の種類としては、麻、木綿等の植物繊維、羊毛、絹等の動物繊維、レーヨン等の再生繊維、ナイロン(ナイロン6,6等)等のポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、アクリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維、ポリオレフィン系合成繊維、ポリウレタン系合成繊維、セルロース系半合成繊維、タンパク質系半合成繊維等が挙げられる。繊維材料は、糸、織布、不織布、編物、紙、又はフィルムがより好ましい。
【0036】
繊維材料が糸である場合、例えば、糸の太さは、約30デニール~約1200デニールとすることができる。さらに、糸の太さは、約30デニール~約300デニールあると好ましい。
【0037】
触媒化工程S5及び無電解メッキ工程S7にて繊維材料A2,A3に水分を付与することを勘案すると、繊維材料A1は親水性であると好ましい。しかしながら、繊維材料は疎水性であってもよく、この場合、繊維材料に親水性をもたらすための処理、例えば、表面改質処理等が、繊維材料に施されるとよい。
【0038】
「脱脂工程の詳細」
図4に示すように、脱脂工程S1は、詳細には次のようなものとすることができる。脱脂工程S1においては、繊維材料A1を脱脂液Fに浸漬し、これによって、繊維材料A1を脱脂する。脱脂工程S1においては、繊維材料A1から原糸油剤、織布油剤、編物油剤、汚れ等を除去できる。
【0039】
脱脂工程S1においては、繊維材料A1を脱脂可能に構成される脱脂装置10が用いられる。脱脂装置10は、脱脂液Fを貯めることができるように構成される槽11を有する。脱脂工程S1において、繊維材料A1の全体が槽11内で脱脂液Fに浸漬される。
【0040】
脱脂液Fとしては、繊維の種類により、当該繊維の脱脂に通常用いられているものを使用することができる。例えば、脱脂液Fは、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノール、クロロホルム、メタノール、キシレン等を含有する有機溶剤とすることができる。脱脂液Fはまた、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、トリポリ燐酸ソーダ、オルソ珪酸ソーダ、メタ珪酸ソーダ、非イオン系界面活性剤等を含有するアルカリ性洗浄剤とすることができる。
【0041】
脱脂工程S1を実施する環境の雰囲気温度、すなわち、脱脂装置10の周囲温度は、室温とすることができる。脱脂液Fの処理温度は、常温(約20℃)~約80℃とすることができる。繊維材料A1を脱脂液Fに浸漬する浸漬時間は、約1分~約10分とすることができる。しかしながら、雰囲気温度、処理温度、及び浸漬時間は、これらに限定されない。雰囲気温度、処理温度、及び浸漬時間は、繊維材料から原糸油剤、織布油剤、編物油剤、汚れ等を効率的に除去可能とするように適宜調節することができる。
【0042】
「前及び後乾燥工程の詳細」
特に明確に図示はしないが、前及び後乾燥工程S2,S9は、次のようなものとすることができる。前乾燥工程S2においては、脱脂工程S1にて脱脂された繊維材料A1を乾燥させるように、この繊維材料A1に温風又は熱風を当てる。後乾燥工程S9においては、後洗浄工程S8にて洗浄された無電解メッキ繊維材料A4を乾燥させるように、この繊維材料A4に温風又は熱風を当てる。
【0043】
前及び後乾燥工程S2,S9のそれぞれにおいては、繊維材料A1,A4に温風又は熱風を当てることができるように構成される乾燥装置(図示せず)が用いられる。しかしながら、前及び及び後乾燥工程のいずれか一方において、繊維材料を自然乾燥させることもできる。
【0044】
「前処理工程の詳細」
図5に示すように、前処理工程S3は、詳細には次のようなものとすることができる。前処理工程S3においては、処理剤を含有する処理液Gに繊維材料A1を浸漬し、これによって、繊維材料A1を負電荷に帯電させる。前処理工程S3によって、前処理繊維材料A2とメッキ被膜との密着性を高めることができる。
【0045】
前処理工程S3においては、繊維材料A2とメッキ被膜との密着性を高めることを可能とする前処理を実施可能に構成される前処理装置20が用いられる。前処理装置20は、処理液Gを貯めることができるように構成される槽21を有する。前処理工程S3において、繊維材料A2の全体が槽21内で処理液Gに浸漬される。
【0046】
処理液Gに含有される処理剤は、タンニン酸、没食子酸、ピロガロール、カテコール等のポリフェノール化合物等のように、繊維材料A1に負電荷を与えることが可能な物質を含む溶液とすることができる。繊維材料A1に負電荷を与え、負に帯電することにより、後続の触媒化工程S5において、触媒前駆体である金属イオンの前処理繊維材料A2への付着性を高めることができる。また、その後に形成されるメッキ被膜と触媒付与繊維材料A3との密着性を高めることができる。処理剤がタンニン酸である場合、処理液Gは、タンニン酸溶液Gと呼ぶこともでき、かつ前処理工程S3は、タンニン酸処理工程S3と呼ぶこともできる。処理液G中の処理剤の濃度は、約0.1質量%~約5.0質量%とすることができる。
【0047】
前処理工程S3を実施する環境の雰囲気温度、すなわち、前処理装置20の周囲温度は、室温とすることができる。処理液Gの処理温度は、常温(約20℃)~約100℃とすることができる。繊維材料A1を処理液Gに浸漬する浸漬時間は、約1分~約10分とすることができる。しかしながら、雰囲気温度、処理温度、及び浸漬時間は、これらに限定されない。雰囲気温度、処理温度、及び浸漬時間は、繊維材料とメッキ被膜との密着性を高めることを可能とするように適宜調節することができる。なお、前処理工程は、繊維材料の種類により、当該繊維の無電解メッキの前処理として通常行われている他の処理であってもよく、処理液を使用した前処理には限定されない。
【0048】
「前、中、及び後洗浄工程の詳細」
図6に示すように、前、中、及び後洗浄工程S4,S6,S8のそれぞれは、詳細には次のようなものとすることができる。前洗浄工程S4においては、洗浄液Hを前処理繊維材料A2に吐出し、これによって、この繊維材料A2を洗浄する。中洗浄工程S6においては、洗浄液Hを触媒付与繊維材料A3に吐出し、これによって、この繊維材料A3を洗浄する。後洗浄工程S8においては、洗浄液Hを無電解メッキ繊維材料A4に吐出し、これによって、この繊維材料A4を洗浄する。前、中、及び後洗浄工程S4,S6,S8のそれぞれにおいては、洗浄液Hを繊維材料A2,A3,A4に吐出可能とする洗浄装置30が用いられる。洗浄装置30は、洗浄液Hを吐出するように構成される吐出口30bを有する洗浄ノズル30aを含む。
【0049】
しかしながら、前、中、及び後洗浄工程のうち少なくとも1つにおいて、繊維材料を洗浄液に浸漬し、これによって、繊維材料を洗浄することもできる。この場合、前、中、及び後洗浄工程のうち少なくとも1つにおいて、洗浄液を貯めることができる槽を有する洗浄装置を用いることができる。
【0050】
洗浄液Hは、水とすることができる。かかる水は、蒸留水、イオン交換水、RO(Reverse Osmosis)水、純水、超純水等の精製水、水道水、天然水等とすることができる。前、中、及び後洗浄工程の洗浄液Hは、互いに同じものとすることができる。しかしながら、洗浄液は、水に限定されない。前、中、及び後洗浄工程S4,S6,S8の洗浄液を互いに異ならせることができる。前、中、及び後洗浄工程の洗浄液のうち1つを残り2つと異ならせることもできる。
【0051】
ここで、図6に示すように、前、中、及び後洗浄工程S4,S6,S8のそれぞれにおいて、繊維材料A2,A3,A4を支持する支持装置40について説明する。支持装置40は、繊維材料A2~A4を架け渡すように互いに間隔を空けて配置される2つの支持部41,42を有する。以下必要に応じて、これら2つの支持部41,42のうち一方の支持部41を第1支持部41と呼び、かつ2つの支持部41,42のうち他方の支持部42を第2支持部42と呼ぶ。
【0052】
支持装置40は、第1及び第2支持部41,42を連結する連結部43を有する。繊維材料A2~A4は、所定の張力を付与された状態で第1及び第2支持部41,42に架け渡されている。このとき、繊維材料A2~A4には、繊維材料A2~A4の径方向の位置をバラつかせる弛みが生じない程度の張力が付与されると好ましい。支持装置40は、繊維材料A2~A4を第1及び第2支持部41,42に固定するように構成されている。しかしながら、支持装置は、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させるように構成することができる。
【0053】
図6においては、第1支持部41は第2支持部42に対して上方に間隔を空けて配置される。繊維材料A2~A4は、実質的に鉛直方向に沿うように第1及び第2支持部41,42に架け渡されている。しかしながら、第1及び第2支持部の配置関係は、これに限定されない。例えば、第1及び第2支持部は、互いに対して水平方向に間隔を空けて配置することができる。この場合、繊維材料は、実質的に水平方向に沿うように第1及び第2支持部に架け渡すことができる。
【0054】
2つの支持部41,42のうち一方又は両方は、導電性を有するように構成され、かつ電気的に接地されている。繊維材料A2~A4は、このような2つの支持部41,42のうち一方又は両方を介して接地されることとなる。図6においては、第2支持部42が、導電性を有し、かつ電気的に接地されている。この場合、第1支持部41は、導電性を有することもでき、かつ導電性を有さないこともできる。しかしながら、第2支持部の代わりに、第1支持部が、導電性を有し、かつ電気的に接地することもできる。また、第1及び第2支持部の両方を接地させることもできる。
【0055】
上述のように、第1支持部41が第2支持部42に対して上方に間隔を空けて配置され、かつ繊維材料A2~A4が実質的に鉛直方向に沿って配置される場合において、洗浄装置30の洗浄ノズル30aの吐出口30bは、第1支持部41の上方に配置されている。吐出口30bから吐出される洗浄液Hは、重力に従って、第1支持部41から繊維材料A2~A4に沿って第2支持部42に流れる。このような洗浄液Hによって、繊維材料A2~A4を洗浄することができる。
【0056】
詳細は後述するが、さらに触媒化工程S5及び無電解メッキ工程S7において、支持装置40が繊維材料A2,A3を支持する。後乾燥工程S9においてもまた、支持装置40が繊維材料A4を支持することができる。
【0057】
「触媒化工程の詳細」
図2に示すように、触媒化工程S5は、詳細には次のようなものとすることができる。触媒化工程S5においては、先行して触媒溶液Bを前処理繊維材料A2に静電噴霧し、かつこの触媒溶液Bに後続して第1還元剤溶液Cを同繊維材料A2に静電噴霧する。しかしながら、触媒化工程においては、触媒溶液と第1還元剤溶液とを同時に繊維材料に静電噴霧することもできる。触媒化工程においては、先行して第1還元剤溶液を繊維材料に静電噴霧し、かつこの第1還元剤溶液に後続して触媒溶液を繊維材料に静電噴霧することもできる。
【0058】
触媒化工程S5において、繊維材料A2は支持装置40によって支持される。触媒化工程S5においてはまた、繊維材料A2の表面にて、無電解メッキ反応のための触媒を付与する反応を生じさせるように構成される触媒化装置50が用いられる。
【0059】
触媒化装置50は、触媒溶液Bを静電噴霧可能に構成される触媒用ノズル機構51を有する。触媒用ノズル機構51は、触媒溶液Bを静電噴霧する噴霧口51bを有する触媒用ノズル51aを有する。触媒用ノズル51aは、両側矢印P1により示すように、繊維材料A2の長手方向に沿って移動可能に構成されている。触媒用ノズル51aはまた、繊維材料A2の長手方向に沿って繰り返し往復移動することができる。触媒用ノズル機構51は、触媒用ノズル51aに供給される触媒溶液Bを通過可能とするように構成される触媒用供給管51cを有する。触媒溶液Bを正電位(又は負電位)に帯電させるためには電源(図示せず)を用いることができる。
【0060】
このような触媒用ノズル機構51において、触媒溶液Bは、液滴の状態で、触媒用供給管51cを通って触媒用ノズル51aの噴霧口51bから噴霧される。このとき、エレクトロスプレー現象によって、触媒用ノズル51aと繊維材料A2との間には電場を生じさせることができる。なお、繊維材料を触媒溶液の電位とは逆の電位に帯電させる場合には、電源を用いて繊維材料を逆の電位に帯電させることができる。
【0061】
ここで、エレクトロスプレー現象について説明する。例えば、触媒用ノズル機構51の触媒用ノズル51aと繊維材料A2との間の電場において、電源等を用いることによって触媒用ノズル51a側を正電位とし、かつ接地された繊維材料A2側を約0kV又は負電位とする。このように触媒用ノズル51aと繊維材料A2との間に電位勾配を設けることによって、エレクトロスプレー現象を生じさせることができる。
【0062】
さらに、繊維材料A2が支持装置40の第1及び第2支持部41,42に固定されている構成において、触媒用ノズル51aを繊維材料A2の長手方向に沿って移動させながら、触媒用ノズル51aから触媒溶液Bを噴霧すれば、繊維材料A2全体に触媒溶液Bを吹き付けることができる。しかしながら、上述のように支持装置が、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させる構成においては、触媒用ノズルを一定の位置に固定しても、繊維材料全体に触媒溶液を吹き付けることができる。
【0063】
触媒化装置50は、第1還元剤溶液Cを静電噴霧可能に構成される第1還元剤用ノズル機構52を有する。第1還元剤用ノズル機構52は、第1還元剤溶液Cを静電噴霧する噴霧口52bを有する第1還元剤用ノズル52aを含む。第1還元剤用ノズル52aは、両側矢印P2により示すように、繊維材料A2の長手方向に沿って移動可能に構成されている。第1還元剤用ノズル52aはまた、繊維材料A2の長手方向に沿って繰り返し往復移動することができる。第1還元剤用ノズル機構52は、第1還元剤用ノズル52aに供給される第1還元剤溶液Cを通過可能とするように構成される第1還元剤用供給管52cを有する。第1還元剤溶液Cを正電位(又は負電位)に帯電させるためには電源(図示せず)を用いることができる。
【0064】
このような第1還元剤用ノズル機構52において、第1還元剤溶液Cは、液滴の状態で、第1還元剤用供給管52cを通って第1還元剤用ノズル52aの噴霧口52bから噴霧される。さらに、触媒用ノズル機構51と同様のエレクトロスプレー現象によって、第1還元剤用ノズル52aと繊維材料A2との間には電場を生じさせることができる。なお、繊維材料を第1還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電させる場合には、電源を用いて繊維材料を逆の電位に帯電させることができる。
【0065】
さらに、繊維材料A2が支持装置40の第1及び第2支持部41,42に固定されている構成において、第1還元剤用ノズル52aを繊維材料A2の長手方向に沿って移動させながら、第1還元剤用ノズル52aから第1還元剤溶液Cを噴霧すれば、繊維材料A2全体に第1還元剤溶液Cを吹き付けることができる。しかしながら、上述のように支持装置が、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させる構成においては、第1還元剤用ノズルを一定の位置に固定しても、繊維材料全体に第1還元剤溶液を吹き付けることができる。
【0066】
触媒用ノズル機構51と第1還元剤用ノズル機構52との関係について、触媒用ノズル51aと第1還元剤用ノズル52aとは、繊維材料A2に沿った移動を互いに妨げないように移動可能に構成される。図2においては、触媒用ノズル51aと第1還元剤用ノズル52aとが、互いに対して繊維材料A2の周方向にズレて配置されている。触媒用ノズル51a及び第1還元剤用ノズル52aを、これらの吐出口51b,52bを繊維材料A2に向けながら互いに対向する方向に向くように配置することができる。この場合、触媒用ノズル51a及び第1還元剤用ノズル52aが繊維材料A2の長手方向にて各別に移動することに応じて、これらの吐出口51b,52b間における繊維材料A2の長手方向の距離を変化させることもできる。
【0067】
しかしながら、触媒用ノズルと第1還元剤用ノズルとを、繊維材料の長手方向に間隔を空けるように配置することもできる。触媒用ノズル及び第1還元剤用ノズルを、これらの一方を繊維材料に静電噴霧するために繊維材料に接近した静電噴霧位置に配置するときに、これらの他方を静電噴霧位置から退避させるように互いに入れ替えることもできる。
【0068】
触媒溶液Bは、一例として、白金、金、銀、パラジウム等の一種若しくは複合系の塩、錯体化合物等、又はこれらのうち2種類以上の混合物を溶解した溶液とすることができる。塩は、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩等とすることができる。したがって、触媒溶液Bには、触媒前駆体である、白金、金、銀、パラジウム等の金属イオンが含有されている。
【0069】
特に、触媒用ノズル51aから噴霧される液滴の表面張力を下げるために、触媒溶液Bが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~3の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;又はこれらのうち2種類以上の混合物を含有することができる。また、触媒溶液B中における触媒前駆体の濃度は、適宜調整可能である。例えば、この触媒前駆体の濃度は、約0.01mol/L以上かつ約5mol/L以下の範囲とすることができる。
【0070】
第1還元剤溶液Cに含有される還元剤は、還元される触媒前駆体種に適合するように最適なものを選択することができる。還元剤は、一例として、ヒドロキシメタンスルフィン酸、チオグリコール酸、亜硫酸、若しくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、アスコルビン酸、クエン酸、ハイドロサルファイトナトリウム、チオ尿素、ジチオスレイトール、ヒドラジン類、ホルムアルデヒド類、ホウ素ハイドライド類、又はこれらのうち2種類以上の混合物とすることができる。
【0071】
ヒドラジン類は一例として、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ヒドラジンの塩、ヒドラジンの置換基誘導体又はその塩等とすることができる。具体的には、ヒドラジン水和物、一塩酸ヒドラジン、二塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、臭酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、tert-ブチルヒドラジン塩酸塩、カルボヒドラジド等が例示できる。
【0072】
ホルムアルデヒド類の一例として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等、又はこれらの2種類以上の混合物とすることができる。ホウ素ハイドライド類とは、ホウ素-水素結合を有する還元性の化合物を表し、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、リチウムトリエチルボロハイドライド、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体、ピリジン・ボラン錯体等が例示できる。特に還元剤は、アスコルビン酸又はヒドラジン類であると好ましい。
【0073】
また、第1還元剤溶液Cにおける還元剤の添加量は、還元剤の種類、触媒溶液B中における触媒前駆体の濃度等に対応して適宜調整することができる。例えば、還元剤の添加量は、触媒前駆体の化学当量の1倍~2倍の範囲であることが好ましい。還元剤の添加量が化学当量未満では触媒への還元反応が十分に進まないおそれがある。一方、還元剤の添加量が化学当量の2倍を越えても差し支えないが、コストが高くなる。
【0074】
触媒溶液B及び第1還元剤溶液Cは、互いに相溶する水溶液系又は水溶性であるとよい。一例として、触媒溶液B及び第1還元剤溶液Cのそれぞれに用いられる溶媒は、水、エタノール、DMF(N,N-dimethylformamide)、アセトン、又はこれらのうち2種類以上の混合物とすることができる。特に、触媒溶液B及び第1還元剤溶液Cのそれぞれに用いられる溶媒は、水であるか、又は水とエタノール、DMF、アセトン等の水溶性の溶媒との水溶液であるとよい。また、触媒溶液B及び第1還元剤溶液Cのそれぞれに用いられる溶媒は同種であると好ましい。
【0075】
触媒用ノズル51a及び第1還元剤用ノズル52aのそれぞれにおいて、噴霧口51b,52bの口径は、約0.03mm以上、好ましくは、約0.05mm以上、より好ましくは、約0.1mm以上とすることができ、かつ約1.0mm以下、好ましくは、約0.5mm以下、より好ましくは、約0.3mm以下とすることができる。触媒化工程S5を実施する環境の雰囲気温度、すなわち、触媒化装置50の周囲温度は、室温とすることができる。
【0076】
触媒化工程S5において、触媒用ノズル51aの噴霧口51b及び繊維材料A2間の距離と、第1還元剤用ノズル52aの噴霧口52b及び繊維材料A2間の距離とのそれぞれは、約5mm以上、好ましくは、約7mm以上、より好ましくは、約10mm以上とすることができ、かつ約40mm以下、好ましくは、約30mm以下、より好ましくは、約20mm以下とすることができる。
【0077】
触媒化工程S5において、触媒用ノズル51aからの触媒溶液Bの単位時間あたりの噴霧量と、第1還元剤用ノズル52aからの第1還元剤溶液Cの単位時間あたりの噴霧量とのそれぞれは、約3μL/min以上、好ましくは、約5μL/min以上、より好ましくは、約7μL/min以上とすることができ、かつ約50μL/min以下、好ましくは、約30μL/min以下、より好ましくは、約20μL/min以下とすることができる。触媒化工程S5において、触媒用ノズル51a側の正電位と、第1還元剤用ノズル52a側の正電位とのそれぞれは、約+2.0kV以上、好ましくは、約+3.0kV以上、より好ましくは、約+4.5kV以上とすることができ、かつ約+10.0kV以下、好ましくは、約+8kV以下、より好ましくは、約+7kV以下とすることができる。
【0078】
さらに、触媒化工程S5においては、水Iを繊維材料A2に吐出し、これによって、繊維材料A2に水分を付与する。繊維材料A2に水分を付与することで、繊維材料A2を確実に接地することができる。触媒化装置50は、繊維材料A2に水Iを供給するように構成される第1水分供給機構53を有する。第1水分供給機構53は、水Iを吐出するように構成される吐出口53bを有する第1水分供給ノズル53aを有する。繊維材料A2への水Iの供給は、触媒化工程S5を実施する間にわたって、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0079】
触媒化工程S5において、繊維材料A2に水分を付与するための水Iは、蒸留水、イオン交換水、RO(Reverse Osmosis)水、純水、超純水等の精製水とすることができる。しかしながら、水は、これに限定されない。
【0080】
上述のように、第1支持部41が第2支持部42に対して上方に間隔を空けて配置され、かつ繊維材料A2が実質的に鉛直方向に沿って配置される場合において、第1水分供給ノズル53aの吐出口53bは、第1支持部41の上方に配置されている。吐出口53bから吐出される水Iは、重力に従って、第1支持部41から繊維材料A2に沿って第2支持部42に流れる。このような水Iによって、繊維材料A2に水分を付与することができる。
【0081】
しかしながら、上述のように支持装置が、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させるように構成される場合、第1水分供給機構を、水を貯めることができるように構成される槽を有するように構成することができる。この場合、繊維材料は、触媒溶液を噴霧される直前と、第1還元剤溶液を噴霧される直前との一方又は両方において、第1水分供給機構の槽内の水を通過することができる。
【0082】
さらに、触媒化工程S5によって、繊維材料A2に、触媒金属被膜、例えば、金属パラジウムや白金の被膜を形成することができる。繊維材料A2に付与される触媒の量は、その後の無電解メッキ工程S7において、所望の電気抵抗値、所望のメッキ金属皮膜の膜厚等を有する無電解メッキ繊維材料A4を得ることができるように、適宜調節することができる。
【0083】
「無電解メッキ工程の詳細」
図3に示すように、無電解メッキ工程S7は、詳細には次のようなものとすることができる。無電解メッキ工程S7においては、金属イオン溶液Dと第2還元剤溶液Eとを、それぞれ正電位に帯電した状態で、触媒付与繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように、同時にこの繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧する。
【0084】
無電解メッキ工程S7において、繊維材料A3は支持装置40によって支持される。無電解メッキ工程S7においてはまた、繊維材料A3に無電解メッキ処理を施すように構成される無電解メッキ装置60が用いられる。
【0085】
無電解メッキ装置60は、金属イオン溶液Dを静電噴霧可能に構成される金属イオン用ノズル機構61を有する。金属イオン用ノズル機構61は、金属イオン溶液Dを静電噴霧する噴霧口61bを有する金属イオン用ノズル61aを有する。金属イオン用ノズル61aは、両側矢印Q1により示すように、繊維材料A3の長手方向に沿って移動可能に構成されている。金属イオン用ノズル機構61は、金属イオン用ノズル61aに供給される金属イオン溶液Dを通過可能とするように構成される金属イオン用供給管61cを有する。金属イオン溶液Dを正電位(又は負電位)に帯電させるためには電源(図示せず)を用いることができる。
【0086】
このような金属イオン用ノズル機構61において、金属イオン溶液Dは、液滴の状態で、金属イオン用供給管61cを通って金属イオン用ノズル61aの噴霧口61bから噴霧される。このとき、上述した触媒用ノズル機構51と同様のエレクトロスプレー現象によって、金属イオン用ノズル61aと繊維材料A3との間には電場を生じさせることができる。なお、繊維材料を金属イオン溶液の電位とは逆の電位に帯電させる場合には、電源を用いて繊維材料を逆の電位に帯電させることができる。
【0087】
さらに、繊維材料A3が支持装置40の第1及び第2支持部41,42に固定されている構成において、金属イオン用ノズル61aを繊維材料A3の長手方向に沿って移動させながら、金属イオン用ノズル61aから金属イオン溶液Dを噴霧すれば、繊維材料A3全体に金属イオン溶液Dを吹き付けることができる。しかしながら、上述のように支持装置が、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させる構成においては、金属イオン用ノズルを一定の位置に固定しても、繊維材料全体に金属イオン溶液を吹き付けることができる。
【0088】
無電解メッキ装置60は、第2還元剤溶液Eを静電噴霧可能に構成される第2還元剤用ノズル機構62を有する。第2還元剤用ノズル機構62は、第1還元剤溶液Cの代わりに、第2還元剤溶液Eを静電噴霧する点を除いて、第1還元剤用ノズル機構52と同様に構成される。第2還元剤用ノズル機構62の第2還元剤用ノズル62a、噴霧口62b、及び第2還元剤用供給管62cは、それぞれ、第1還元剤用ノズル機構52の第1還元剤用ノズル52a、噴霧口52b、及び第1還元剤用供給管52cに相当する。
【0089】
第2還元剤用ノズル62aは、両側矢印Q2により示すように、繊維材料A3の長手方向に沿って移動可能である。第2還元剤溶液Eを正電位(又は負電位)に帯電させるためには電源(図示せず)を用いることができる。なお、繊維材料を第2還元剤溶液の電位とは逆の電位に帯電させる場合には、電源を用いて繊維材料を逆の電位に帯電させることができる。
【0090】
なお、無電解メッキ装置においては、第2還元剤用ノズル機構の代わりに、第1還元剤用ノズル機構を用いることもできる。この場合、第1還元剤用ノズル機構が、触媒化装置及び無電解メッキ装置において共通して用いられることとなる。
【0091】
金属イオン用ノズル機構61と第2還元剤用ノズル機構62との関係について、金属イオン用ノズル61aと第2還元剤用ノズル62aとは、繊維材料A3に沿った移動を互いに妨げないように移動可能に構成される。図3においては、金属イオン用ノズル61aと第2還元剤用ノズル62aとが、互いに対して繊維材料A3の周方向にズレて配置されている。さらに、金属イオン用ノズル61a及び第2還元剤用ノズル62aを、これらの吐出口61b,62bを繊維材料A3に向けながら互いに向き合わせた状態を維持するように配置することができる。
【0092】
金属イオン溶液Dに含有される金属イオンは、繊維材料A3上にメッキする所望の金属のイオンであってよい。したがって、金属イオン溶液Dは、一例として、白金、金、銀、銅、スズ、ニッケル、鉄、パラジウム、亜鉛、鉄、コバルト、タングステン、ルテニウム、インジウム、モリブテン等の一種若しくは複合系の塩、錯体化合物等、又はこれらのうち2種類以上の混合物を適当な溶媒に溶解した溶液とすることができる。塩は、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩等とすることができる。
【0093】
特に、金属イオン用ノズル61aから噴霧される液滴の表面張力を下げるために、金属イオン溶液Dが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~3の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;又はこれらのうち2種類以上の混合物を含有することができる。また、金属イオン溶液D中における金属イオンの濃度は、適宜調整可能である。例えば、この金属イオンの濃度は、0.01mol/L以上かつ5mol/L以下の範囲とすることができる。
【0094】
第2還元剤溶液Eに含有される還元剤は、還元される金属イオン種に適合するように最適なものを選択することができる。第2還元剤溶液Eに含有される還元剤の例としては、第1還元剤溶液Cに含有される還元剤と同様のものを挙げることができる。
【0095】
また、第2還元剤溶液Eにおける還元剤の添加量は、還元剤の種類、金属イオン溶液D中における金属イオンの濃度等に対応して適宜調整することができる。例えば、還元剤の添加量は、金属イオンの化学当量の1倍~2倍の範囲であることが好ましい。還元剤の添加量が化学当量未満では金属イオンへの還元反応が十分に進まないおそれがある。一方、還元剤の添加量が化学当量の2倍を越えても差し支えないが、コストが高くなる。
【0096】
金属イオン溶液D及び第2還元剤溶液Eは、互いに相溶する水溶液系又は水溶性であるとよい。一例として、金属イオン溶液D及び第2還元剤溶液Eのそれぞれに用いられる溶媒は、水、エタノール、DMF、アセトン、又はこれらのうち2種類以上の混合物とすることができる。特に、金属イオン溶液D及び第2還元剤溶液Eのそれぞれに用いられる溶媒は、水であるか、又は水とエタノール、DMF、アセトン等の水溶性の溶媒との水溶液であるとよい。また、金属イオン溶液D及び第2還元剤溶液Eのそれぞれに用いられる溶媒は同種であると好ましい。
【0097】
さらに、無電解メッキ工程S7においては、水Jを繊維材料A3に吐出し、これによって、繊維材料A3に水分を付与する。無電解メッキ装置60は、繊維材料A3に水Jを供給するように構成される第2水分供給機構63を有する。第2水分供給機構63は、水Jを吐出するように構成される吐出口63bを有する第2水分供給ノズル63aを有する。繊維材料A3への水Jの供給は、無電解メッキ工程S7を実施する間にわたって、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0098】
金属イオン用ノズル61a及び第2還元剤用ノズル62aのそれぞれにおいて、噴霧口61b,62bの口径は、約0.03mm以上、好ましくは、約0.05mm以上、より好ましくは、約0.1mm以上とすることができ、かつ約1.0mm以下、好ましくは、約0.5mm以下、より好ましくは、約0.3mm以下とすることができる。無電解メッキ工程S7を実施する環境の雰囲気温度、すなわち、無電解メッキ装置60の周囲温度は、室温とすることができる。
【0099】
無電解メッキ工程S7において、金属イオン用ノズル61aの噴霧口61b及び繊維材料A3間の距離と、第2還元剤用ノズル62aの噴霧口62b及び繊維材料A3間の距離とのそれぞれは、約5mm以上、好ましくは、約7mm以上、より好ましくは、約10mm以上とすることができ、かつ約40mm以下、好ましくは、約30mm以下、より好ましくは、約20mm以下とすることができる。
【0100】
無電解メッキ工程S7において、金属イオン用ノズル61aからの金属イオン溶液Dの単位時間あたりの噴霧量と、第2還元剤用ノズル62aからの第2還元剤溶液Eの単位時間あたりの噴霧量とのそれぞれは、約3μL/min以上、好ましくは、約5μL/min以上、より好ましくは、約7μL/min以上とすることができ、かつ約50μL/min以下、好ましくは、約30μL/min以下、より好ましくは、約20μL/min以下とすることができる。無電解メッキ工程S7において、金属イオン用ノズル61a側の正電位と、第2還元剤用ノズル62a側の正電位とのそれぞれは、約+2.0kV以上、好ましくは、約+3.0kV以上、より好ましくは、約+4.5kV以上とすることができ、かつ約+10.0kV以下、好ましくは、約+8kV以下、より好ましくは、約+7kV以下とすることができる。
【0101】
無電解メッキ工程S7において、繊維材料A3に水分を付与するための水Jは、蒸留水、イオン交換水、RO水、純水、超純水等の精製水とすることができる。無電解メッキ工程S7にて用いられる水Jは、触媒化工程S5にて用いられる水Iと同種とすることができる。また、無電解メッキ工程S7にて用いられる水Jは、触媒化工程S5にて用いられる水Iと異種とすることもできる。しかしながら、水は、これに限定されない。
【0102】
なお、無電解メッキ装置においては、第2水分供給機構の代わりに、第1水分供給機構を用いることもできる。この場合、第1水分供給機構が、触媒化装置及び無電解メッキ装置において共通して用いられることとなる。
【0103】
上述のように、第1支持部41が第2支持部42に対して上方に間隔を空けて配置され、かつ繊維材料A3が実質的に鉛直方向に沿って配置される場合において、第2水分供給ノズル63aの吐出口63bは、第1支持部41の上方に配置されている。吐出口63bから吐出される水Jは、重力に従って、第1支持部41から繊維材料A3に沿って第2支持部42に流れる。このような水Jによって、繊維材料A3に水分を付与することができる。
【0104】
しかしながら、上述のように支持装置が、繊維材料を第1及び第2支持部によって支持しながら繊維材料をその長手方向に沿って移動させるように構成される場合、第2水分供給機構を、水を貯めることができるように構成される槽を有するように構成することができる。この場合、繊維材料は、金属イオン溶液及び第2還元剤溶液を噴霧される直前において、第2水分供給機構の槽内の水を通過することができる。
【0105】
無電解メッキ工程S7によって、繊維材料A3に付与された触媒金属被膜上に、所望のメッキ金属被膜を形成することができる。無電解メッキ工程S7によってメッキ金属皮膜形成された無電解メッキ繊維材料A4においては、先行技術と比較して、その電気抵抗値を低くしながら、そのメッキ金属皮膜の膜厚を小さくすることができる。例えば、先行技術としては、電気抵抗値を約2.0Ω/cmとすると共にメッキ金属皮膜の膜厚を約2.1μmとする市販の銀メッキ導電糸が挙げられる。例えば、無電解メッキ繊維材料A4のメッキ金属皮膜においては、電気抵抗値を約2.0Ω/cm以下とし、かつメッキ金属皮膜の膜厚を、約0.4μm以下の範囲に設定することができる。
【0106】
「無電解メッキ繊維材料の製造システム」
図2図6を参照すると、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法を実施可能とする無電解メッキ繊維材料A4の製造システムは、次のように構成される。すなわち、製造システムは、概略的には、触媒化装置50と、無電解メッキ装置60とを有する。触媒化装置50は、触媒化工程S5を実施可能に構成される。無電解メッキ装置60は、無電解メッキ工程S7を実施可能に構成される。
【0107】
さらに、製造システムは、詳細には、脱脂装置10と、前処理装置20と、洗浄装置30と、支持装置40と、上記触媒化装置50と、上記無電解メッキ装置60と、乾燥装置(図示せず)とを有することができる。脱脂装置10は、脱脂工程S1を実施可能に構成される。前処理装置20は、前処理工程S3を実施可能に構成される。洗浄装置30は、前、中、及び後洗浄工程S4,S6,S8を実施可能に構成される。支持装置40は、繊維材料A2~A4を支持可能に構成される。乾燥装置は、前及び後乾燥工程S2,S9を実施可能に構成される。
【0108】
なお、無電解メッキ繊維材料の製造方法がアニール処理工程を含む場合において、無電解メッキ繊維材料の製造システムは、アニール処理工程を実施可能に構成されるアニール処理装置を含むことができる。例えば、アニール処理装置は、繊維材料を加熱可能に構成される加熱機構を有することができる。加熱機構は熱風循環オーブンとすることができる。この場合、アニール処理装置は、乾燥装置を兼ねることもできる。かかる装置を乾燥兼アニール処理装置と呼ぶこともできる。
【0109】
以上、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法は、触媒前躯体を含有する触媒溶液Bを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は触媒溶液Bの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている繊維材料A2に静電噴霧し、かつ前記触媒前躯体の還元剤を含有する第1還元剤溶液Cを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は第1還元剤溶液Cの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料A2に静電噴霧し、これによって、金属イオンを含有する金属イオン溶液Dと、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液Eとを、それぞれ同じように正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記金属イオン溶液D及び前記第2還元剤溶液Eの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料A3に、前記触媒付与繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように前記触媒付与繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧し、これによって、触媒付与繊維材料A3にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料A4を得る無電解メッキ工程S7とを含む。
【0110】
本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4は、触媒前躯体を含有する触媒溶液Bを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は触媒溶液Bの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている繊維材料A2に静電噴霧し、かつ前記触媒前躯体の還元剤を含有する第1還元剤溶液Cを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は第1還元剤溶液Cの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料A2に静電噴霧し、これによって、金属イオンを含有する金属イオン溶液Dと、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液Eとを、それぞれ同じように正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記金属イオン溶液D及び前記第2還元剤溶液Eの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料A3に、前記触媒付与繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように前記触媒付与繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧し、これによって、触媒付与繊維材料A3にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料A4を得る無電解メッキ工程S7とを含む製造方法によって製造される。
【0111】
本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造システムは、繊維材料A2に触媒が付与された触媒付与繊維材料A3を得るように構成される触媒化装置50と、前記触媒付与繊維材料A3にメッキ被膜が形成された無電解メッキ繊維材料A4を得るように構成される無電解メッキ装置60とを備え、前記触媒化装置50が、触媒前駆体を含有する触媒溶液Bを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記触媒溶液Bの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料A2に静電噴霧するように構成される触媒用ノズル51aと、前記触媒前駆体の還元剤を含有する第1還元剤溶液Cを正電位又は負電位に帯電した状態で、接地されるか又は前記第1還元剤溶液Cの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記繊維材料A2に静電噴霧するように構成される第1還元剤用ノズル52aとを有し、前記無電解メッキ装置60が、金属イオンを含有する金属イオン溶液Dを正電位又は負電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料A3に静電噴霧するように構成される金属イオン用ノズル61aと、前記金属イオンの還元剤を含有する第2還元剤溶液Eを前記金属イオン溶液Dと同じ電位に帯電した状態で前記触媒付与繊維材料A3に静電噴霧するように構成される第2還元剤用ノズル62aとを有し、前記無電解メッキ装置60が、前記金属イオン用ノズル61aから静電噴霧された金属イオン溶液Dと、前記第2還元剤用ノズル62aから静電噴霧された第2還元剤溶液Eとを、接地されるか又は前記金属イオン溶液D及び前記第2還元剤溶液Eの電位とは逆の電位に帯電され、かつ水分を付与されている前記触媒付与繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように構成されている。
【0112】
上記無電解メッキ工程S7及び無電解メッキ装置60それぞれにおいては、金属イオン溶液Dと第2還元剤溶液Eとが静電噴霧されたときには同じ電位に帯電している。そのため、金属イオン溶液Dと第2還元剤溶液Eとは、繊維材料A3に到達するまでは互いに衝突しない。その後、金属イオン溶液Dと第2還元剤溶液Eとが、接地された繊維材料A3に到達したときには電荷を失う。このとき、金属イオン溶液Dと第2還元剤溶液Eとが、初めて接触・混合しかつ反応することとなる。そのため、繊維材料A3上にて、第2還元剤溶液Eの還元剤によって金属イオン溶液Dの金属イオンが効率的に還元されて、その結果、繊維材料A3にて、金属を析出させたメッキ皮膜を効率的に形成することができる。特に、このようなメッキ被膜を有する無電解メッキ繊維材料A4は、その導電性を高めることができ、かつメッキ被膜の厚さを低減できる。よって、無電解メッキ繊維材料A4の品質を高めることができる。
【0113】
このような無電解メッキ繊維材料A4並びのその製造方法及び製造システムにおいては、触媒化工程S5及び触媒化装置50それぞれにて、静電噴霧される加工溶液の使用量は、先行技術のように浸漬に用いられる加工溶液の使用量と比較して削減することができる。また、無電解メッキ工程S7及び無電解メッキ装置60それぞれにて、静電噴霧される加工溶液の使用量は、先行技術のように浸漬に用いられる加工溶液の使用量と比較して削減することができる。ひいては、このような加工溶液の使用量の削減によって、製造コストを低減でき、環境負荷を低減でき、無電解メッキ繊維材料A4の製造効率を向上させることができる。従来のメッキ浴を用いたメッキ処理においては、メッキ浴中の物質濃度が経時的に変化するため、メッキ浴の濃度管理が困難であった。本発明においては、加工溶液を静電噴霧するため、メッキ浴の濃度管理に関する問題も解決することができる。
【0114】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る無電解メッキ繊維材料並びにその製造方法及び製造システムについて説明する。本実施形態にて用いられる繊維材料A1は、第1実施形態にて用いられる繊維材料A1と同様である。
【0115】
「無電解メッキ繊維材料及びその製造方法の概略」
図1及び図7を参照して、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4及びその製造方法の概略について説明する。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法は、概略的には、第1実施形態と同様の触媒化工程S5及び無電解メッキ処理工程S7を含む。
【0116】
さらに、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法においては、繊維材料A2と、触媒付与繊維材料A3と、無電解メッキ繊維材料A4とが、触媒化工程S5の実施位置から無電解メッキ処理工程S7の実施位置に向かって延びるように一体化されている。このように一体化された繊維材料A2~A4が、触媒化工程S5の実施位置から無電解メッキ処理工程S7の実施位置に向かって搬送される。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4は、概略的には、このような製造方法によって製造することができる。
【0117】
「無電解メッキ繊維材料及びその製造方法の詳細」
図1及び図7を参照して、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4及びその製造方法の詳細について説明する。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法はまた、詳細には、第1実施形態と同様の脱脂工程S1、前乾燥工程S2、前処理工程S3、前洗浄工程S4、触媒化工程S5、中洗浄工程S6、無電解メッキ工程S7、後洗浄工程S8、及び後乾燥工程S9を含む。なお、脱脂液Fが揮発性である場合は、前乾燥工程S2を省略することもできる。
【0118】
さらに、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法においては、繊維材料A1と、前処理繊維材料A2と、触媒付与繊維材料A3と、無電解メッキ繊維材料A4とが、脱脂工程S1の実施位置から後乾燥工程S9の実施位置に向かって延びるように一体化されている。このように一体化された繊維材料A1~A4が、脱脂工程S1の実施位置から後乾燥工程S9の実施位置に向かって搬送される。本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4は、詳細には、このような製造方法によって製造することができる。
【0119】
「無電解メッキ繊維材料の製造システム」
図7を参照して、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造システムについて説明する。かかる製造システムは、概略的には、触媒化装置150と、無電解メッキ装置170と、搬送装置200とを含む。触媒化装置150は、触媒化工程S5を実施可能に構成される。無電解メッキ装置170は、無電解メッキ工程S7を実施可能に構成される。搬送装置200は、繊維材料A1~A4を搬送可能に構成される。
【0120】
製造システムはまた、詳細には、脱脂装置110と、前乾燥装置120と、前処理装置130と、前洗浄装置140と、上記触媒化装置150と、中洗浄装置160と、上記無電解メッキ装置170と、後洗浄装置180と、後乾燥装置190と、上記搬送装置200とを有することができる。脱脂装置110は、脱脂工程S1を実施可能に構成される。前乾燥装置120は、前乾燥工程S2を実施可能に構成される。前処理装置130は、前処理工程S3を実施可能に構成される。前洗浄装置140は、前洗浄工程S4を実施可能に構成される。中洗浄装置160は、中洗浄工程S6を実施可能に構成される。後洗浄装置180は、後洗浄工程S8を実施可能に構成される。後乾燥装置190は、後乾燥工程S9を実施可能に構成される。搬送装置200は、繊維材料A1~A4を脱脂装置110、前乾燥装置120、前処理装置130、前洗浄装置140、上記触媒化装置150、中洗浄装置160、無電解メッキ装置170、後洗浄装置180、後乾燥装置190の順に通過させるように搬送する。
【0121】
「脱脂装置の詳細」
図7を参照すると、脱脂装置110は、次のように構成することができる。上記製造システムにおいて、脱脂装置110は、脱脂液Fを貯めることができるように構成される槽111を有する。脱脂装置110は、槽111に貯められた脱脂液F内に配置される脱脂用ロール112を有する。繊維材料A1は、脱脂液Fに浸漬されるように、脱脂用ロール112にガイドされながら槽111内を通過する。
【0122】
「前乾燥装置の詳細」
図7を参照すると、前乾燥装置120は、次のように構成することができる。前乾燥装置120は、脱脂装置110を通過した後の繊維材料A1に温風又は熱風を当てることができるように構成される。繊維材料A1は、前乾燥装置120を通過するときに乾燥する。なお、脱脂液Fが揮発性である場合は、前乾燥装置120を省略することもできる。
【0123】
「前処理装置の詳細」
図7を参照すると、前処理装置130は、次のように構成することができる。前処理装置130は、処理液Gを貯めることができるように構成される槽131を有する。前処理装置130は、槽131に貯められた処理液G内に配置される複数の前処理用ロール132を有する。前乾燥装置120を通過した後の繊維材料A1は、処理液Gに浸漬されるべく、処理液G内を周遊するように複数の前処理用ロール132にガイドされながら槽131内を通過する。前処理装置130においては、繊維材料A1に前処理を施した状態である前処理繊維材料A2が得られる。
【0124】
「前洗浄装置の詳細」
図7を参照すると、前洗浄装置140は、次のように構成することができる。前洗浄装置140は、洗浄液Hを貯めることができるように構成される槽141を有する。前洗浄装置140は、槽141に貯められた洗浄液H内に配置される前洗浄用ロール142を有する。前処理装置130を通過した後の前処理繊維材料A2は、洗浄液Hによって洗浄されるように、前洗浄用ロール142にガイドされながら槽141内を通過する。前洗浄装置140においては、繊維材料A2は、槽141の洗浄液Hによって接地され、その結果、後続の触媒化装置150に位置する繊維材料A2もまた接地された状態となる。
【0125】
さらに、前洗浄装置140においては、槽141の洗浄液Hによって、繊維材料A2に水分が付与され、その結果、後続の触媒化装置150に位置する繊維材料A2にもまた水分が付与された状態となる。このような洗浄液Hは、後続する触媒化装置150にて用いられる水Iと同じにすることができる。
【0126】
「触媒化装置の詳細」
図7を参照すると、触媒化装置150は、次のように構成することができる。触媒化装置150は、第1実施形態の触媒用ノズル51aと同様に構成される触媒用ノズル151aを有する。触媒用ノズル151aは、第1実施形態の触媒用ノズル51aの噴霧口51bと同様の噴霧口151bを有する。
【0127】
触媒化装置150は、複数の触媒用ノズル151aを有する触媒用ノズル機構151を含む。触媒用ノズル機構151は、触媒溶液Bを複数の触媒用ノズル151aにそれぞれ送給するように構成される複数の触媒用供給管151cを有する。しかしながら、触媒用ノズル機構は、1つの触媒用ノズルと、これに触媒溶液を送給する1つの触媒用供給管とを有するように構成することもできる。
【0128】
触媒化装置150はまた、第1実施形態の第1還元剤用ノズル52aと同様に構成される第1還元剤用ノズル152aを有する。第1還元剤用ノズル152aは、第1実施形態の第1還元剤用ノズル52aの噴霧口52bと同様の噴霧口152bを有する。
【0129】
触媒化装置150は、複数の第1還元剤用ノズル152aを有する第1還元剤用ノズル機構152を含む。第1還元剤用ノズル機構152は、第1還元剤溶液Cを複数の第1還元剤用ノズル152aにそれぞれ送給するように構成される複数の第1還元剤用供給管152cを有する。しかしながら、第1還元剤用ノズル機構は、1つの第1還元剤用ノズルと、これに第1還元剤溶液を送給する1つの第1還元剤用供給管とを有するように構成することもできる。
【0130】
複数の触媒用ノズル151aと、複数の第1還元剤用ノズル152aとは、触媒化装置150を通過する繊維材料A2の搬送方向にて並んでいる。触媒用ノズル機構151と、第1還元剤用ノズル機構152とは、触媒化装置150を通過する繊維材料A2の搬送方向にて並んでいる。触媒用ノズル機構151は、第1還元剤用ノズル機構152に対して繊維材料A1の搬送方向の上流に位置すると好ましい。触媒用ノズル機構151と、第1還元剤用ノズル機構152とは、固定することもできる。
【0131】
しかしながら、触媒用ノズル機構及び第1還元剤用ノズル機構の位置は、これらに限定されない。触媒用ノズル機構を、第1還元剤用ノズル機構に対して繊維材料の搬送方向の下流に位置させることもできる。触媒用ノズル機構及び第1還元剤用ノズル機構の一方又は両方を可動とすることもできる。
【0132】
前洗浄装置140を通過した後の前処理繊維材料A2は、触媒用ノズル機構151によって触媒溶液Bを静電噴霧され、かつ第1還元剤用ノズル機構152によって第1還元剤溶液Cを静電噴霧される。このとき、触媒化装置150を通過する繊維材料A2は、上述の前洗浄装置140及び後述の中洗浄装置160によって接地されている。さらに、この繊維材料A2は、上述の前洗浄装置140によって水分を付与されている。触媒化装置150においては、繊維材料A2に触媒を付与した状態である触媒付与繊維材料A3が得られる。
【0133】
「中洗浄装置の詳細」
図7を参照すると、中洗浄装置160は、次のように構成することができる。中洗浄装置160は、洗浄液Hを貯めることができるように構成される槽161を有する。中洗浄装置160は、槽161に貯められた洗浄液H内に配置される中洗浄用ロール162を有する。触媒化装置150を通過した後の触媒付与繊維材料A3は、洗浄液Hによって洗浄されるように、中洗浄用ロール162にガイドされながら槽161内を通過する。中洗浄装置160においては、繊維材料A3は、槽161の洗浄液Hによって接地され、その結果、先行する触媒化装置150に位置する繊維材料A2と、後続の無電解メッキ装置170に位置する繊維材料A3もまた接地された状態となる。
【0134】
さらに、中洗浄装置160においては、槽161の洗浄液Hによって、繊維材料A3に水分が付与され、その結果、後続の無電解メッキ装置170に位置する繊維材料A3にもまた水分が付与された状態となる。このような洗浄液Hは、後続する無電解メッキ装置170にて用いられる水Jと同じにすることができる。
【0135】
「無電解メッキ装置の詳細」
図7を参照すると、無電解メッキ装置170は、次のように構成することができる。無電解メッキ装置170は、第1実施形態の金属イオン用ノズル61aと同様に構成される金属イオン用ノズル171aを有する。金属イオン用ノズル171aは、第1実施形態の金属イオン用ノズル61aの噴霧口61bと同様の噴霧口171bを有する。
【0136】
無電解メッキ装置170は、複数の金属イオン用ノズル171aを有する金属イオン用ノズル機構171を含む。金属イオン用ノズル機構171は、金属イオン溶液Dを複数の金属イオン用ノズル171aにそれぞれ送給するように構成される複数の金属イオン用供給管171cを有する。しかしながら、金属イオン用ノズル機構は、1つの金属イオン用ノズルと、これに金属イオン溶液を送給する1つの金属イオン用供給管とを有するように構成することもできる。
【0137】
無電解メッキ装置170は、第1実施形態の第2還元剤用ノズル62aと同様に構成される第2還元剤用ノズル172aを有する。第2還元剤用ノズル172aは、第1実施形態の第2還元剤用ノズル62aの噴霧口62bと同様の噴霧口172bを有する。
【0138】
無電解メッキ装置170は、複数の第2還元剤用ノズル172aを有する第2還元剤用ノズル機構172を含む。第2還元剤用ノズル機構172は、第2還元剤溶液Eを複数の第2還元剤用ノズル172aにそれぞれ送給するように構成される複数の第2還元剤用供給管172cを有する。しかしながら、第2還元剤用ノズル機構は、1つの第2還元剤用ノズルと、これに第2還元剤溶液を送給する1つの第2還元剤用供給管とを有するように構成することもできる。
【0139】
金属イオン用ノズル機構171と第2還元剤用ノズル機構172との関係について、金属イオン用ノズル171aと第2還元剤用ノズル172aとは、固定されている。図7においては、金属イオン用ノズル171aと第2還元剤用ノズル172aとが、互いに対して繊維材料A3の周方向にズレて配置されている。さらに、金属イオン用ノズル171a及び第2還元剤用ノズル172aを、これらの吐出口171b,172bを繊維材料A3に向けながら互いに向き合わせた状態を維持するように配置することができる。
【0140】
中洗浄装置160を通過した後の触媒付与繊維材料A3は、金属イオン用ノズル機構171によって金属イオン溶液Cを静電噴霧され、かつ第2還元剤用ノズル機構172によって第2還元剤溶液Eを静電噴霧される。このとき、無電解メッキ装置170を通過する繊維材料A3は、上述の中洗浄装置160及び後述の後洗浄装置180によって接地されている。さらに、この繊維材料A2は、上述の中洗浄装置160によって水分を付与されている。無電解メッキ装置170においては、繊維材料A3にメッキ被膜を形成した状態である無電解メッキ繊維材料A4が得られる。
【0141】
「後洗浄装置の詳細」
図7を参照すると、後洗浄装置180は、次のように構成することができる。後洗浄装置180は、洗浄液Hを貯めることができるように構成される槽181を有する。後洗浄装置180は、槽181に貯められた洗浄液H内に配置される後洗浄用ロール182を有する。無電解メッキ装置170を通過した後の無電解メッキ繊維材料A4は、洗浄液Hによって洗浄されるように、後洗浄用ロール182にガイドされながら槽181内を通過する。後洗浄装置180においては、繊維材料A4は、槽181の洗浄液Hによって接地され、その結果、先行する無電解メッキ装置170に位置する繊維材料A3が接地された状態となる。
【0142】
「後乾燥装置の詳細」
図7を参照すると、後乾燥装置190は、次のように構成することができる。後乾燥装置190は、後洗浄装置180を通過した後の繊維材料A4に温風又は熱風を当てることができるように構成される。繊維材料A4は、後乾燥装置190を通過するときに乾燥する。
【0143】
なお、後乾燥装置190は、アニール処理工程もまた実施可能に構成することができる。例えば、後乾燥装置190は、繊維材料A4を加熱可能に構成される加熱機構を有することができる。加熱機構は熱風循環オーブンとすることができる。この場合、かかる装置を乾燥兼アニール処理装置と呼ぶこともできる。しかしながら、後乾燥装置とは別に、アニール処理装置を設けることもできる。
【0144】
「搬送装置の詳細」
図7を参照すると、搬送装置200は、次のように構成することができる。搬送装置200は、繊維材料A1を巻き出すように構成される巻き出しロール201を有する。搬送装置200は、無電解メッキ繊維材料A4を巻き取るように構成される巻き取りロール202を有する。巻き出しロール201と巻き取りロール202との間では、繊維材料A1と、前処理繊維材料A2と、触媒付与繊維材料A3と、無電解メッキ繊維材料A4とが一体になって延びている。
【0145】
巻き出しロール201から巻き出された繊維材料A1は、脱脂装置110から前処理装置130までを通過し、その後に前処理繊維材料A2へと変化する。前処理装置130を通過した後の前処理繊維材料A2は、前洗浄装置140から触媒化装置150までを通過し、その後に触媒付与繊維材料A3へと変化する。触媒化装置150を通過した後の触媒付与繊維材料A3は、中洗浄装置160から無電解メッキ装置170までを通過し、その後に無電解メッキ繊維材料A4へと変化する。無電解メッキ装置170を通過した後の無電解メッキ繊維材料A4は、後洗浄装置180から後乾燥装置190までを通過し、その後に、巻き取りロール202によって巻き取られる。
【0146】
以上、本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法及び製造システムは、第1実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法及び製造システムと同様の効果を得ることができる。このような効果に加えて、本実施形態に係る製造方法及び製造システムにおいては、次のような効果を得ることができる。
【0147】
本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造方法においては、前記繊維材料A2と、前記触媒付与繊維材料A3と、前記無電解メッキ繊維材料A4とが、前記触媒化工程S5の実施位置から前記無電解メッキ工程S7の実施位置に向かって延びるように一体化した状態で前記触媒化工程S5の実施位置から前記無電解メッキ工程S7の実施位置に向かって搬送される。
【0148】
本実施形態に係る無電解メッキ繊維材料A4の製造システムは、前記繊維材料A2と、前記触媒付与繊維材料A3と、前記無電解メッキ繊維材料A4とを前記触媒化装置150から前記無電解メッキ装置170に向かって延びるように一体化した状態で前記触媒化装置150から前記無電解メッキ装置170に向けて搬送可能に構成される搬送装置200を備える。
【0149】
このような製造方法及び製造システムにおいては、繊維材料A2~A4を効率的に搬送することができる。そのため、製造効率を向上させることができる。
【0150】
さらに、繊維材料A1と、前処理繊維材料A2と、触媒付与繊維材料A3と、無電解メッキ繊維材料A4とが、脱脂工程S1の実施位置から後乾燥工程S9の実施位置に向かって延びるように一体化されている。このように一体化された繊維材料A1~A4が、脱脂工程S1の実施位置から後乾燥工程S9の実施位置に向かって搬送される場合、繊維材料A1~A4を効率的に搬送することができる。そのため、製造効率を向上させることができる。
【0151】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【実施例
【0152】
実施例及び比較例について説明する。実施例においては、図2図6に示すように、6,6-ナイロンによって構成される繊維材料A1から、無電解メッキ繊維材料A4を作製した。比較例においても、6,6-ナイロンによって構成される繊維材料から、無電解メッキ繊維材料を作製した。実施例1の繊維材料A1及び比較例の繊維材料の太さそれぞれは、70デニールであった。
【0153】
「実施例」
最初に、実施例について説明する。実施例1においては、第1実施形態に係る製造方法を用いて無電解メッキ繊維材料A4を製造した。具体的には、脱脂工程S1において、繊維材料A1を脱脂液Fに浸漬し、これによって、繊維材料A1を脱脂した。脱脂液Fとしては、アセトン溶液Fを用いた。脱脂工程S1の雰囲気温度は、室温であった。繊維材料A1をアセトン溶液Fに浸漬した浸漬時間は1分であった。前乾燥工程S2において、脱脂工程S1にて脱脂された繊維材料A1に熱風を当てて、これによって、繊維材料A1を乾燥させた。
【0154】
図5に示すように、前処理工程S3において、前乾燥工程S2にて乾燥された繊維材料A1を処理液Gに浸漬し、これによって、この処理後の繊維材料A2とメッキ被膜との密着性を高めるべく、繊維材料A1に負電荷を与えるように前処理を行った。処理液Gとしては、タンニン酸を含有するタンニン酸溶液Gを用いており、前処理工程S3として、タンニン酸処理工程S3を行った。タンニン酸溶液G中におけるタンニン酸の濃度は、5重量%であった。タンニン酸溶液Gの温度は、50℃であった。繊維材料A1をタンニン酸溶液Gに浸漬した浸漬時間は5分であった。
【0155】
図6に示すように、前処理工程S3後に、前洗浄工程S4において前処理繊維材料A2を洗浄液Hによって洗浄した。洗浄液Hとしては、精製水を用いた。
【0156】
図2に示すように、触媒化工程S5において、前洗浄工程S4にて洗浄された繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、触媒溶液Bを正電位に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧した。触媒溶液Bの静電噴霧において、触媒溶液Bは、酢酸パラジウムを溶媒のアセトニトリルに溶解することにより調製した。触媒溶液B中における酢酸パラジウムの濃度は、0.1mol/Lであった。
【0157】
触媒用ノズル51aからの触媒溶液Bの単位時間あたりの噴霧量は、0.03mL/minであり、かかる噴霧量にて5分間、30cmの繊維材料A2に触媒溶液Bを噴霧した。触媒用ノズル51a側の電位は、+5kVであった。触媒用ノズル51aの噴霧口51b及び繊維材料A2間の距離は、1cmであった。繊維材料A2に水分を付与すべく、繊維材料A2には精製水が供給された。
【0158】
さらに、触媒溶液Bの静電噴霧後において繊維材料A2を接地し、かつこの繊維材料A2に水分を付与しながら、第1還元剤溶液Cを正電位に帯電した状態で繊維材料A2に静電噴霧した。第1還元剤溶液Cの静電噴霧において、第1還元剤溶液Cに含まれる触媒としては、ヒドラジンが用いられた。第1還元剤溶液C中におけるヒドラジンの濃度は、1.0mol/Lであった。第1還元剤溶液Cの溶媒として、50%のエタノールと50%の水とから成る溶液が用いられた。
【0159】
第1還元剤用ノズル52aからの第1還元剤溶液Cの単位時間あたりの噴霧量は、0.03mL/minであり、かかる噴霧量にて5分間、30cmの繊維材料A2に第1還元剤溶液Cを噴霧した。第1還元剤用ノズル52a側の電位は、+5kVであった。第1還元剤用ノズル52aの噴霧口52b及び繊維材料A2間の距離は、1cmであった。繊維材料A2に水分を付与すべく、繊維材料A2には精製水が供給された。
【0160】
図6に示すように、触媒化工程S5後に、中洗浄工程S6において触媒付与繊維材料A3を洗浄液Hによって洗浄した。洗浄液Hとしては、精製水を用いた。
【0161】
図3に示すように、無電解メッキ工程S7において、中洗浄工程S6にて洗浄された触媒付与繊維材料A3を接地し、かつこの繊維材料A3に水分を付与しながら、金属イオン溶液Dと、第2還元剤溶液Eとを、それぞれ正電位に帯電した状態で、繊維材料A3にて同一の電場内で反応させるように繊維材料A3にそれぞれ静電噴霧した。金属イオン溶液Dは、硝酸銀をエタノールと水とから成る混合溶媒に溶解することにより調製した。金属イオン溶液D中における硝酸銀の濃度は、0.3mol/Lであった。
【0162】
金属イオン用ノズル61aからの金属イオン溶液Dの単位時間あたりの噴霧量は、0.03mL/minであり、かかる噴霧量にて15分間、30cmの繊維材料A3に金属イオン溶液Dを噴霧した。金属イオン用ノズル61a側の電位は、+5kVであった。金属イオン用ノズル61aの噴霧口61b及び繊維材料A3間の距離は、1cmであった。
【0163】
第2還元剤溶液Eに含まれる還元剤としては、ヒドラジンが用いられた。第2還元剤溶液E中におけるヒドラジンの濃度は、0.5mol/Lであった。第2還元剤溶液Eの溶媒として、エタノールと水とから成る混合溶液が用いられた。
【0164】
第2還元剤用ノズル62aからの第2還元剤溶液Eの単位時間あたりの噴霧量は、0.03mL/minであり、かかる噴霧量にて15分間、30cmの繊維材料A3に第2還元剤溶液Eを噴霧した。第2還元剤用ノズル62a側の電位は、+5kVであった。第2還元剤用ノズル62aの噴霧口62b及び繊維材料A3間の距離は、1cmであった。
【0165】
図6に示すように、無電解メッキ工程S7後に、後洗浄工程S8において無電解メッキ繊維材料A4を洗浄液Hによって洗浄した。洗浄液Hとしては、精製水を用いた。
【0166】
後乾燥工程S9において、後洗浄工程S8にて洗浄された繊維材料A4に熱風を当てて、これによって、繊維材料A4を乾燥させた。その後、複数の無電解メッキ繊維材料A4の電気抵抗を測定した。
【0167】
「比較例」
次に、比較例について説明する。比較例においては、先ずは、実施例と同様の脱脂工程、前乾燥工程、前処理工程、前洗浄工程、触媒化工程、及び中洗浄工程を実施した。その後、中洗浄工程にて洗浄された触媒付与繊維材料を、第2還元剤溶液に浸漬した。第2還元剤溶液に浸漬された触媒付与繊維材料に、エレクトロスプレーを用いて金属イオン溶液を正電位に帯電した状態で静電噴霧し、これによって、無電解メッキ繊維材料を得た。さらに、この無電解メッキ繊維材料に、実施例と同様の後洗浄工程及び後乾燥工程を施した。その後、複数の無電解メッキ繊維材料の電気抵抗を測定した。
【0168】
「実施例と比較例との対比」
比較例において得られた複数の無電解メッキ繊維材料の電気導電率は、実施例において得られた複数の無電解メッキ繊維材料A4の電気導電率よりも著しく劣るものとなった。すなわち、実施例において得られた複数の無電解メッキ繊維材料A4は十分な導電性を示した。その一方で、比較例において、エレクトロスプレーを用いて金属イオン溶液を正電位に帯電した状態で静電噴霧する時間を増加させても、比較例において得られた複数の無電解メッキ繊維材料は、ほとんど導電性を示さなかった。そのため、特に、比較例との対比において、実施例の無電解メッキ工程S7によって十分な導電性を有する無電解メッキ繊維材料A4が得られることが確認できた。
【0169】
さらに、実施例において得られた複数の無電解メッキ繊維材料A4の電気抵抗は、1.0Ω/cm~1.5Ω/cmであった。これに対して、市販品の無電解メッキ繊維材料の電気抵抗が、2.0Ω/cm程度である。よって、実施例において得られた無電解メッキ繊維材料A4は市販品の無電解メッキ繊維材料と同等以上の導電性能を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0170】
A2…前処理繊維材料(繊維材料)
A3…触媒付与繊維材料(繊維材料)
A4…無電解メッキ繊維材料(繊維材料)
B…触媒溶液
C…第1還元剤溶液
D…金属イオン溶液
E…第2還元剤溶液
S5…触媒化工程
S7…無電解メッキ工程
50,150…触媒化装置
51a,151a…触媒用ノズル
52a,152a…第1還元剤用ノズル
60,170…無電解メッキ装置
61a,171a…金属イオン用ノズル
62a,172a…第2還元剤用ノズル
200…搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7