(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ブラストガン、ブラスト装置、促進摩耗試験装置及び促進摩耗試験方法
(51)【国際特許分類】
B24C 5/04 20060101AFI20241115BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20241115BHJP
B24C 7/00 20060101ALI20241115BHJP
G01N 3/56 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C5/02 A
B24C7/00 A
G01N3/56 D
(21)【出願番号】P 2021005253
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】金森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川邉 翔平
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-121660(JP,U)
【文献】米国特許第06383062(US,B1)
【文献】特開平05-069327(JP,A)
【文献】特開2003-236756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/04
B24C 5/02
B24C 7/00
G01N 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材を噴射するノズルと、
前記ノズルの連結口と圧縮空気導入口と研磨材導入口とを有する連結部とを備え、
前記連結部は、その内部に、前記圧縮空気導入口から圧縮空気の流入方向に延伸
し、前記圧縮空気導入口から前記ノズルの連結口まで貫通するチューブを備えて
おり、
前記圧縮空気は、前記チューブの内部を通って前記圧縮空気導入口から前記ノズルの連結口へ流れることを特徴とするブラストガン。
【請求項2】
研磨材を収容するタンクを前記研磨材導入口に直接接続する接続継手をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のブラストガン。
【請求項3】
前記ノズルの連結口に前記ノズルを接続する接続継手と、前記圧縮空気導入口に圧縮空気発生装置を接続する接続継手とをさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラストガン。
【請求項4】
前記チューブが樹脂製であることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載のブラストガン。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のブラストガンと、
研磨材を収容するタンクと、
を備えていることを特徴とするブラスト装置。
【請求項6】
前記タンクは、前記研磨材導入口に直接接続されていることを特徴とする請求項
5に記載のブラスト装置。
【請求項7】
請求項
5又は6に記載のブラスト装置を備えた、促進摩耗試験装置。
【請求項8】
粒径が1mm以下の研磨材が前記タンク内に収容されていることを特徴とする請求項
7に記載の促進摩耗試験装置。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の促進摩耗試験装置を用いて、供試体を研磨材により促進摩耗させる工程を包含することを特徴とする促進摩耗試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラストガン、ブラスト装置、促進摩耗試験装置及び促進摩耗試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業水利施設では、長期供用に伴う施設の劣化や性能低下が深刻化しており、その対策として、農林水産省では、補修及び補強による長寿命化に取り組んでいる。特に、補修事例の多いコンクリート製開水路では、劣化した躯体コンクリートにモルタル系材料を被覆して表面を保護する無機系表面被覆工法(以下、被覆工)が適用されることが多い。
【0003】
開水路は、砂礫を含む流水による摩耗作用を絶えず受ける。よって、被覆工に用いる補修材は、所要の耐摩耗性を有している必要があり、事前にその耐摩耗性を照査することが必須である。
【0004】
耐摩耗性の照査方法として、水流摩耗試験、水砂噴流摩耗試験、サンドブラスト法等の促進摩耗試験が知られている。水流摩耗試験は、供試体を回転装置部に取り付けて回転させながら、高圧水噴射装置部からの高圧水流により供試体を促進摩耗させる試験方法である。水砂噴流摩耗試験は、水流摩耗試験の試験時間の短縮等を目的とした方法である(非特許文献2)。水砂噴流摩耗試験では、珪砂を混入させた水を供試体に高圧噴射することで、水流摩耗試験よりも短時間で供試体を促進摩耗させることができる。
【0005】
サンドブラスト法は、ブラストガンから研磨材を高圧噴射することにより、供試体を促進摩耗させる方法である。特許文献1~2には、研磨材を高圧噴射させるブラストガンを備えたブラスト装置が記載されている。非特許文献1には、ブラスト装置を用いて研磨材を高圧噴射することによって、供試体の耐摩耗性を評価する試験方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-295267号公報
【文献】特開2001-212761号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】長谷川ら、農業農村工学会論文集、305、I_215-I_220(2017)
【文献】長束ら、農業農村工学会論文集、266、25-31(2010)
【文献】浅野ら、農業農村工学会論文集、310、IV_1-IV_2(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水流摩耗試験及び水砂噴流摩耗試験(非特許文献2及び3)では、供試体の摩耗の進展に長時間を要し、また、使用する試験装置が大型且つ特殊である。また、試験装置が特殊であるため、日本国内で使用可能な装置が少なく、高難度の運転及びメンテナンスが必要である。また、試験装置の持ち運びが困難であるため、供試体の設置場所まで運搬して試験することができず、採取したサンプルを試験場で試験することになる。
【0009】
非特許文献1に記載されたサンドブラスト法は、より短時間で試験可能であるが、試験に使用するサンドブラスト装置は大型であり、供試体の設置場所まで運搬することは困難である。
【0010】
所定の品質規格を満足した補修材であっても、被覆工が施工された地区毎又は水路の部位毎に摩耗速度が大きく異なるような場合もあり、施工した現場においても補修材の耐摩耗性を照査することが求められている。また、施工後の水路でも耐摩耗性をモニタリングする必要がある。しかしながら、非特許文献1及び2で使用する促進摩耗試験装置を施工した現場に運搬して試験することは困難である。
【0011】
また、特許文献1及び2に記載されたブラストガンでは、研磨材を収容する大型のタンクや高圧のエアーを生じさせるための大型のコンプレッサーを、ホース等を介して接続させるため、可搬性に劣る。また、特許文献1及び2に記載されたブラストガンは、内部構造が複雑であり、製造が容易ではない。
【0012】
本発明の一態様は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可搬性に優れ、容易に製造可能なブラストガン及びブラスト装置、並びに、これらを用いた促進摩耗試験を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るブラストガンは、研磨材を噴射するノズルと、前記ノズルの連結口と圧縮空気導入口と研磨材導入口とを有する連結部とを備え、前記連結部は、その内部に、前記圧縮空気導入口から圧縮空気の流入方向に延伸するチューブを備えている。
【0014】
本発明の一態様に係るブラスト装置は、本発明の一態様に係るブラストガンと、研磨材を収容するタンクとを備えている。
【0015】
本発明の一態様に係る促進摩耗試験装置は、本発明の一態様に係るブラスト装置を備えている。
【0016】
本発明の一態様に係る促進摩耗試験方法は、本発明の一態様に係る促進摩耗試験装置を用いて、供試体を研磨材により促進摩耗させる工程を包含する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、可搬性に優れ、容易に製造可能なブラストガン及びブラスト装置、並びに、これらを用いた促進摩耗試験を実現することできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブラスト装置の概略を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るブラストガンの各部材の概略を説明する分解図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るブラスト装置の性能と従来品の性能とを比較した試験の結果を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るブラスト装置による促進摩耗試験方法による吐出時間による摩耗深さの変化の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
〔ブラスト装置〕
図1は、本発明の一実施形態に係るブラスト装置100の概略を説明する図である。
図2は、発明の一実施形態に係るブラストガンの各部材の概略を説明する分解図である。ブラスト装置100は、本発明の一実施形態に係るブラストガン10を備えている。
図1に示すようにブラストガン10は、ノズル1、連結部2、及びチューブ3を備えている。ブラスト装置100は、ブラストガン10と、タンク5とを備えている。ブラスト装置100において、ブラストガン10には、圧力弁6を介してコンプレッサー7が接続されている。
【0021】
(ブラストガン10)
ノズル1は、研磨材を噴射する噴射口を有しており、噴射口の反対側の端部が連結部2に接続されている。ノズル1は、接続継手11を介して連結部2に接続されている。接続継手11とノズル1とは一体形成されたものであってもよいし、互いに異なる部材であってもよい。例えば、接続継手11とノズル1とが一体形成されたものとして、市販のホースニップルを用いてもよい。
【0022】
連結部2は、ノズルの連結口23と圧縮空気導入口21と研磨材導入口22とを有する連結具である。連結部2の内部は、ノズルの連結口23、圧縮空気導入口21、及び研磨材導入口22の間で流体流通可能なように貫通している。連結部2は、ノズルの連結口23から圧縮空気導入口21まで延伸する圧縮空気流路と、研磨材導入口22から圧縮空気流路まで延伸する研磨材導入路とを有している。
【0023】
連結部2は、一例として、圧縮空気流路と研磨材導入路とが交差するT字形状である。連結部2は、三方向の分岐に使用する継手である、市販の二方チーズにより構成することができる。圧縮空気導入口21は、例えば、接続継手31及び接続継手32を介して圧力弁6に接続される。研磨材導入口22にはタンク5が接続される。研磨材導入口22とタンク5とはホース等を介して接続されてもよいが、可搬性の観点からホース等を介さずに接続されることが好ましい。
図1に示すように、研磨材導入口22には、接続継手4を介して、タンク5が直接接続されてもよい。ノズルの連結口23には、接続継手11を介してノズル1に接続される。
【0024】
連結部2は、その内部に、圧縮空気導入口21から圧縮空気の流入方向に延伸するチューブ3を備えている。チューブ3は、圧縮空気流路において研磨材導入路と交差する部分を横断するように設けられている。チューブ3は、圧縮空気流路として機能する。
【0025】
研磨材導入口22から連結部2内に導入された研磨材は、チューブ3からノズル1に流入する圧縮空気によりノズル1に運ばれ、ノズル1から圧縮空気とともに噴射される。
【0026】
ノズル1及び連結部2の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス製、真鍮製、樹脂製等である。特にステンレス製であることで、研磨材による部材の摩耗に耐えることができ、部材の消耗が減り、長期間の使用が可能となる。
【0027】
チューブ3は、一例として、連結部2内において、圧縮空気導入口21からノズルの連結口23まで貫通するように設けられている。また、チューブ3は、
図1に示すように、連結部2を貫通し、ノズルの連結口23から突出して、接続継手11まで延伸していてもよい。チューブ3がこのように設けられていることによって、圧縮空気が直接ノズル1まで送られ、連結部2の内部に漏れ出すことを防ぐことができる。これにより、ノズル1から研磨材を好適に吐出させることができる。
【0028】
以下、ノズルの連結口23から突出したチューブ3の長さを突出長と称することがある。突出長は-1mm以上、5mm以下の範囲であってもよく、好適に研磨材を噴射する観点から、3mm以下であることが好ましい。ここで、突出長が「-」の値をとる場合は、チューブ3がノズルの連結口23から突出していない状態を指す。例えば、突出長が-1mmである場合は、ノズルの連結口23の縁から内側に1mm入った部分、すなわち連結部2内でチューブ3の延伸が止まっている状態である。
【0029】
チューブ3は、接続継手31に挿入されていてもよい。このとき、チューブ3の外径は、接続継手31の内径L7と等しいことが好ましい。
【0030】
チューブ3の材質は、特に限定されず、例えば、樹脂製、金属製等である。特に樹脂製であることで、溶接が不要となり、加工が容易となるため、好適に利用することができる。一例として、チューブ3は、ABS樹脂製、ポリ塩化ビニル製等である。
【0031】
チューブ3の外径は、連結部2の圧縮空気流路の内径に応じて設定することができ、一例として、4mm以上~11mm以下であり、例えば、5mmである。チューブ3の内径は圧縮空気を流通可能な径であり、一例として、2mm以上~9mm以下であり、例えば、3mmである。
【0032】
接続継手4、接続継手11、接続継手31、及び接続継手32は、径が異なるもの同士を適切に接続するものであり得る。例えば、圧縮空気導入口21と圧力弁6の挿入部の径が異なっている場合に、接続継手31及び接続継手32を介することにより、圧縮空気導入口21と圧力弁6とを適切に接続することができる。なお、接続継手31のみによって、圧縮空気導入口21と圧力弁6とを適切に接続できる場合には、接続継手32は不要である。
【0033】
なお、本実施形態においては、圧力弁6の例として、ボールバルブを示しているが、用途及び使用場所に応じて適宜変更して用いてもよい。例えば、ボールバルブは引き金式のエアダスターガンに付け替えることができる。
【0034】
図2の分解図に示すように、ブラストガン10は、部品毎に分解することが可能である。すなわち、ブラストガン10は、各部品をねじ込み等により連結して組立てられたものであり得る。部材間の接続に管用ねじを用いる場合は、直接接続する部材同士のおねじとめねじが対応するように、部材を選択する。
【0035】
ノズル1の先端の内径L1は、一例として、3mm以上、15mm以下であり、例えば、5mmである。連結部2において、圧縮空気流路の内径L3は、一例として、8mm以上、15mm以下であり、例えば、10mmである。研磨材導入路の内径L4、圧力弁6の内径L9、L10、接続継手11の内径L2、接続継手4の内径L5及び内径L6、接続継手31の内径L7、及び接続継手32の内径L8は、いずれも接続する部材の径、又は研磨材の粒径等に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
ブラストガン10は、連結部2にノズル1等の部品を組み合わせて連結するのみで製造することができるので、容易に製造することが可能である。ブラストガン10を構成する各部品は市販の規格品であってもよく、入手が容易であると共に、部品の交換が容易である。したがって、ブラストガン10は、メンテナンスが容易である。
【0037】
また、ブラストガン10は、接続継手を介してタンク5やコンプレッサー7を接続可能であるので、分解及び組み立てが容易であり、可搬性に優れている。さらに、ブラストガン10は、タンク5を直接接続するので、タンク5の小型化及び軽量化に伴い、ブラスト装置100全体の小型化及び軽量化を実現することができる。
【0038】
さらに、ブラストガン10には、連結部2内の圧縮空気流路と研磨材導入路とが交差する部分を横断するようにチューブ3が設けられているので、圧縮空気はチューブ3内に流入してノズル1まで送られる。したがって、研磨材導入口22に圧縮空気が逆流せず、研磨材を好適にノズル1より噴射することができる。また、チューブ3が圧縮空気導入口21からノズルの連結口23まで貫通するように設けられることによって、研磨材導入口22への圧縮空気の逆流がより確実に防止でき、ノズル1からの研磨材の噴射をより好適に行なうことができる。
【0039】
また、チューブ3が樹脂製であることにより、チューブ3を溶接することなく圧縮空気導入口21や接続継手31に挿入するのみでブラストガン10を組み立てることも可能である。これにより、チューブ3を固定するための構成が不要であり、構成部材の簡略化が可能となる。
【0040】
(タンク5)
タンク5は、内部に研磨材を収容する。タンク5は、研磨材導入口22に直接接続されていてもよい。一例として、タンク5は、ブラストガン10において鉛直方向上側に直接接続されることにより、重力により研磨材がブラストガン10の連結部2内に導入される。すなわち、ブラスト装置100は、重力式のブラスト装置であり得る。これにより、研磨材をコンプレッサーにより吸引する吸引式のブラスト装置と比較して、コンプレッサーの圧力を下げることが可能であり、必要なコンプレッサーのタンク容量を小さくすることができる。
【0041】
タンク5の容量は、ブラスト装置100の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、持ち運んで使用する場合は、可搬性の観点より、ブラストガン10に直接接続可能な大きさであればよい。タンク5の容量は、一例として、2L以下である。
【0042】
タンク5に収容する研磨材は、ブラスト装置100の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、ブラストガン10内で詰まらず、好適に噴射できるものであればよい。
【0043】
研磨材は、ブラストガン10内で詰まることなく適切にノズル1から噴射されるような粒径であればよい。例えば、研磨材の粒径は、1mm以下であることが好ましく、例えば0.5mmである。研磨材の粒径が前記範囲内にあることで、ブラストガン10の内部に研磨材が詰まることなく、好適に噴射させることができる。なお、研磨材の粒径は、重量平均粒径であり、例えば、ふるい分け試験方法やレーザー回折・散乱法によって求めた研磨材の粒度分布における積算値50%での粒径を意味している。
【0044】
また、研磨材の種類は、ブラスト装置100の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、一例として、新モース硬度6以上の材料が挙げられる。このような研磨材の例として、アルミナ、珪砂、ステンレス、スチール、ガラス、セラミック、ガーネット等が挙げられる。
【0045】
(コンプレッサー7)
ブラスト装置100は、圧縮空気発生装置としてコンプレッサー7を備えているが、他の圧縮空気発生装置を用いてもよい。使用するコンプレッサー7の種類は特に限定されないが、例えば、レシプロコンプレッサー、スクリューコンプレッサーが挙げられる。コンプレッサー7は、研磨材の安定した吐出が可能な範囲で適宜選択すればよいが、一例として、0.8MPa以下の範囲で圧力制御できるものである。ブラスト装置100を運搬することを考慮して、コンプレッサー7のタンク容量等の性能を選択すればよい。また、研磨材の安定した吐出の観点より、必要に応じて、圧力弁6とコンプレッサー7との間にバッファータンクを介してもよい。コンプレッサー7及びバッファータンクの合計タンク容量は、研磨材の安定した吐出が可能な範囲で適宜選択すればよいが、一例として、50L以上である。
【0046】
〔促進摩耗試験装置〕
ブラスト装置100は、例えば、コンクリート等を補修する被覆工に用いられる補修材を促進摩耗させる試験装置として用いることができる。促進摩耗試験装置としてのブラスト装置100は、促進摩耗試験に適した材質及び粒径の研磨材がタンク5に収容されている。ブラスト装置100を用いて促進摩耗試験を行う補修材は、例えば、モルタル系の補修材である。促進摩耗試験装置としてのブラスト装置100は、研磨材として、例えば、アルミナ又は珪砂をタンク5内に収容してもよい。また、促進摩耗試験装置としてのブラスト装置100は、粒径が1mm以下の研磨材をタンク5内に収容していてもよい。
【0047】
ブラスト装置100は、補修材の耐摩耗性を照査するサンドブラスト法に好適に使用可能であり、促進摩耗試験装置として好適である。ブラスト装置100は可搬性に優れているため、野外の被覆工が施工された現場においても、好適に促進摩耗試験を行うことができる。
【0048】
〔促進摩耗試験方法〕
以下、本発明の一実施形態に係る促進摩耗試験方法について説明する。促進摩耗試験方法は、供試体を研磨材により促進摩耗させる方法である。促進摩耗試験方法は、ブラスト装置100を用いて、供試体を研磨材により促進摩耗させる工程を包含する。促進摩耗させる工程は、ブラスト装置100から供試体に研磨材を吹き付ける工程である。
【0049】
研磨材を吹き付ける供試体は、例えば、コンクリート等の被覆工に用いられる補修材からなるものである。研磨材のモース硬度等を適宜選択することにより、モルタル系材料、コンクリート材料、有機樹脂材料、金属材料等の供試体の促進摩耗試験に適用できる。促進摩耗試験方法は、供試体がモルタル材料である場合により好適に実施可能である。
【0050】
研磨材を供試体に吹き付ける工程において、ブラスト装置100のノズル1の噴射口から供試体の表面までの距離は、特に制限はないが、一例として、20mm以上、150mm以下であり、より好ましくは、25mm以上、50mm以下である。これにより、供試体を安定的に促進摩耗させることが可能である。
【0051】
研磨材を供試体に吹き付ける工程において、供試体の表面に対する研磨材の噴射角度は、特に制限されないが、より効率的に供試体を摩耗させる観点から、供試体の表面に対して研磨材を垂直に噴射することが最も好ましい。
【0052】
研磨材を供試体に吹き付ける工程における圧力は、ノズル1の噴射口から供試体の表面までの距離、供試体の材質・物性等に応じて設定することができる。一例として、供試体がモルタル系の材料である場合には、ノズル1の噴射口と供試体の表面までの距離が25mmであれば、コンプレッサー7の圧力を0.15MPaに設定する。また、ノズルの噴射口と供試体の表面までの距離が50mmの場合は、コンプレッサー7の圧力を0.20MPaに設定する。
【0053】
研磨材を供試体に吹き付ける工程においては、ノズル1の噴射口と供試体の表面までの上述した距離において、かつ、供試体の表面に対する研磨材の上述した噴射角度において、ブラスト装置100のブラストガン10を固定して、促進摩耗試験方法を実施することが好ましい。
【0054】
促進摩耗試験方法において、研磨材を吹き付ける摩耗時間は、ノズル1の噴射口から供試体の表面までの距離、吹き付ける工程における圧力、供試体の材質・物性等に応じて設定することができる。
【0055】
促進摩耗試験方法においては、供試体が摩耗した量を摩耗深さ等により、定量することができる。摩耗深さの計測方法としては、例えば、レーザー変位計を用いる方法、デプスゲージを用いる方法等が挙げられる。一般に、レーザー変位計を用いる方法では、精密な評価が可能となる一方、用いる機材の設定が必要であり、時間がかかる。一方、デプスゲージを用いる方法は、計測位置の影響を受けやすいものの、即座に行うことができる。
【0056】
ブラスト装置100は小型でハンドリングがしやすいため、促進摩耗試験方法の研磨材を供試体に吹き付ける工程において、吹き付け条件を柔軟に設定できる。なお、吹き付け条件とは、例えば、ブラスト装置100のノズル1の噴射口から供試体の表面までの距離、供試体の表面に対する研磨材の噴射角度等を指す。従来のブラスト装置では大型であること等の理由から吹き付け条件が制限されていたが、ブラスト装置100を使用することにより、促進摩耗試験方法における吹き付け条件の自由度を高めることができる。
【0057】
〔まとめ〕
本発明を、以下のように表現することもできる。
【0058】
本態様1に係るブラストガンは、研磨材を噴射するノズルと、ノズルの連結口と圧縮空気導入口と研磨材導入口とを有する連結部とを備え、連結部は、その内部に、圧縮空気導入口から圧縮空気の流入方向に延伸するチューブを備えている。この構成により圧縮空気の逆流を防ぐことができるため、研磨材を好適に噴射することができる。
【0059】
本態様2に係るブラストガンは、前記態様1において、研磨材を収容するタンクを前記研磨材導入口に直接接続する接続継手をさらに備えている。この構成により、タンクをブラストガンに直接連結することができるため、ブラストガンの可搬性を向上させることができる。
【0060】
本態様3に係るブラストガンは、前記態様1又は2において、前記ノズルの連結口に前記ノズルを接続する接続継手と、前記圧縮空気導入口に圧縮空気発生装置を接続する接続継手とをさらに備えている。この構成により、部材同士をつなぎ合わせて用いることができるため、ブラストガンを組み立て式とすることができる。
【0061】
本態様4に係るブラストガンは、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記チューブは、前記連結部内において、前記圧縮空気導入口から前記ノズルの連結口まで貫通するように設けられている。この構成により、さらに好適に連結部内での圧縮空気の逆流を防止できる。
【0062】
本態様5に係るブラストガンは、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記チューブが樹脂製である。この構成により、チューブの溶接が不要となり、圧縮空気導入口に挿入することで容易に組み立てることができる。
【0063】
本態様6に係るブラスト装置は、前記態様1~5のいずれかに記載のブラストガンと、研磨材を収容するタンクとを備えている。この構成により、可搬性に優れるブラスト装置を実現することができる。
【0064】
本態様7に係るブラスト装置は、前記態様6において、前記タンクは前記研磨材導入口に直接接続されている。この構成により、タンクとブラストガンとを接続するホース等が不要であり、ブラスト装置を小型化できる。また、タンクをブラストガンにおける鉛直方向上側に直接接続して重力式のブラスト装置とすることにより、コンプレッサーの圧力を下げることが可能であり、必要なコンプレッサーのタンク容量を小さくすることができる。
【0065】
本態様8に係る促進摩耗試験装置は、前記態様6又は7のブラスト装置を備えている。この構成により、野外で促進摩耗試験を行う際の促進摩耗試験装置として好適に使用することができる。
【0066】
本態様9に係る促進摩耗試験装置は、前記態様8において、1mm以下の研磨材が前記タンク内に収容されている。この構成により、促進摩耗試験に適した研磨材の噴射が可能である。
【0067】
本態様10に係る促進摩耗試験方法は、前記態様8又は9の促進摩耗試験装置を用いて、供試体を研磨材により促進摩耗させる工程を包含する。この構成により、野外での促進摩耗試験を行うことが可能となる。
【実施例】
【0068】
<ブラストガン10の作製>
本発明の一実施例について以下に説明する。本実施例に係るブラストガン10は、ノズル1と接続継手11とが一体化したホースニップル、連結部2として二方チーズを、チューブ3としてABS製樹脂製チューブ、接続継手31、接続継手32、圧力弁6としてボールバルブ、及び接続継手4を、
図1に示すように配置して組み立てて、作製した。表1において、各部材のISO規格におけるR及びRc、内径、外径を示す。なお、チューブ3の突出長を変更したブラストガンを作製し、実施例1~6及び、比較例1~3とした。それぞれのブラストガンの突出長は表2に示す。
【0069】
【0070】
<ブラストガン10の性能評価>
(吐出試験1)
実施例1~6及び比較例1~3のブラストガンにタンク5とコンプレッサー7とを接続し、タンク内に5号珪砂を研磨材として収容した。
【0071】
コンプレッサー7の圧力を0.20MPaに設定し、10秒間研磨材を吐出し、研磨材の吐出量を測定した。この実験を各実施例及び比較例において、5回繰り返し、平均吐出量及び標準偏差を求めた。求められた平均吐出量及び標準偏差を表2に示す。
【0072】
また、実施例1~6においては、好適に研磨材を吐出し、突出長が3mmのとき、平均吐出量が最大となることがわかった。比較例1~3においては、十分に研磨材を吐出できず、突出長が7mmのときは、エアーは流出したが、研磨材は吐出されなかった。
【表2】
【0073】
(吐出試験2)
実施例3のブラストガン(以下、ブラストガンA)と既製品であるブラストガンB(Haining Lee-Ding Machinery Co., Ltd製HAND HELD SANDBLASTER)とを用いて、研磨材の1秒あたりの吐出量の評価を行った。コンプレッサーの圧力を0.20MPaに制御し、5号珪砂を研磨材として用いて、吐出時間あたりの吐出量を確認した。結果を
図3に示す。
【0074】
図3に示す通り、吐出時間あたりの珪砂吐出量は、ブラストガンAで13.2g/sec、ブラストガンBで9.1g/secとなっており、ブラストガンAの吐出量はブラストガンBに比して大きい。一方、エラーバーで示す標準偏差に着目すると、両者ともに有意に小さく、ほぼ同程度となっている。以上より、ブラストガンAの吐出量はブラストガンBよりも多く、さらにそのばらつきは小さく安定しており、促進摩耗試験に好適に使用できることが示された。
【0075】
<ブラスト装置100による促進摩耗試験方法の評価>
材齢28日(温度23±2℃、相対湿度50±5℃)のJIS R 5201に準拠して作製されたモルタルを、ブラストガンAを備えたブラスト装置100により研磨材を吐出して促進摩耗試験を行った。ノズル1の噴射口とモルタル表面との間の距離、及び、コンプレッサー7の圧力を表3に示す。表3に示す条件で実施した促進摩耗試験の結果を
図4に示す。なお、
図4には既往の促進摩耗試験である水砂噴流摩耗試験(非特許文献2)の結果も併せて示しており、水砂噴流摩耗試験の結果は非特許文献3の報告にある標準供試体の10時間平均摩耗深さの推定母平均3.62mmを引用したものである。
【0076】
【0077】
水砂噴流摩耗試験で10時間摩耗した場合に相当する摩耗深さが、ブラスト装置100では、条件1において約57秒で得られ、条件2において約70秒で得られることが確認された。また、その促進倍率を試算すると、それぞれ約630倍、510倍であった。よって、ブラスト装置100によれば、従来の水砂噴流摩耗試験と比較して、より効率的に材料を摩耗できることがわかった。さらにこの対応関係によって、過去に蓄積された水砂噴流摩耗試験のデータを互換的に扱うことが可能となり、ブラスト装置100を新たに導入した場合にも、データの連続性を損なうことはない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、被覆材料の耐摩耗性評価に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ノズル
11、31、32、4 接続継手
2 連結部
21 圧縮空気導入口
22 研磨材導入口
23 ノズルの連結口
3 チューブ
5 タンク
6 圧力弁
7 コンプレッサー
10 ブラストガン
100 ブラスト装置