(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】抑草土嚢
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20241115BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20241115BHJP
A01N 59/14 20060101ALI20241115BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20241115BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20241115BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20241115BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20241115BHJP
A01M 21/04 20060101ALI20241115BHJP
E02B 3/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A01N59/00 C
A01P21/00
A01N59/14
A01N59/06 Z
A01N59/20 Z
A01N59/16 Z
A01N25/08
A01M21/04 Z
A01M21/04 C
E02B3/04 301
(21)【出願番号】P 2020138821
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋田 慎之介
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-061555(JP,A)
【文献】特開2001-032281(JP,A)
【文献】特開平10-136776(JP,A)
【文献】特開平06-193070(JP,A)
【文献】特開2010-252766(JP,A)
【文献】特開2016-220636(JP,A)
【文献】特開2017-000077(JP,A)
【文献】特開2020-090442(JP,A)
【文献】特開2005-029472(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006388(WO,A1)
【文献】実開平07-035520(JP,U)
【文献】特開2013-194339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01P 21/00
A01N 59/14
A01N 59/06
A01N 59/20
A01N 59/16
A01N 25/08
A01M 21/04
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤を土嚢袋に収容し、
前記土嚢袋には、栽培資材が収容され、
前記金属元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含
み、
前記土嚢袋には、抑制剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、
前記流出阻止手段は、
前記土嚢袋の内面に備えられ、前記抑制剤を吸着する多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナンからなる吸着手段である
ことを特徴とする抑草土嚢。
【請求項2】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤を土嚢袋に収容し、
前記土嚢袋には、栽培資材が収容され、
前記金属元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含
み、
前記土嚢袋には、前記抑制剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、
前記流出阻止手段は、
前記土嚢袋をキレート繊維からなる吸着性繊維で形成した
ことを特徴とする抑草土嚢。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の抑草土嚢において、
前記抑制剤は石炭灰を含む
ことを特徴とする抑草土嚢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を調節(抑制)する抑制剤が収容された抑草土嚢に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の敷地、河川堤防、道路法面、中央分離帯、空港着陸帯等では、浸食防止、安全確保、景観確保、基盤浸食防止、飛び砂防止等のために、植物を植えて緑化が図られることがある。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞があるため、定期的に草刈等のメンテナンスが必要になっている。しかし、このような緑化の場所は、人が入りにくい場所であるため、メンテナンスには多大な労職と時間、費用がかかるのが現状であった。
【0003】
このため、従来から、定期的な草刈作業に代えて、除草剤等を用いて植物を枯らせることで植物が成長しないようにし、植物の必要以上の成長による悪影響を無くしている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示された技術は、除草剤に成長を抑制する剤を混ぜて、除草の負担を軽減する技術となっている。
【0004】
緑化を行う地域は、植物の量が減少しても存在し続けることが、環境イメージの点等において重要であるが、特許文献1の技術を用いた場合、除草を行う技術であるため、除草を行った後は、緑化の地域に植物が生えていない状態になってしまう。緑化の地域で除草を行い、植物を無くした状態にすると、見栄えや安全性に対する印象を含めた景観を損なうことになり、緑化の地域では除草を実施することは得策ではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、極めて簡単な施工により、任意の範囲で植物の形態を維持する(制御する)ことができる抑草土嚢を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の抑草土嚢は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤を土嚢袋に収容し、前記土嚢袋には、栽培資材が収容され、前記金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含み、前記土嚢袋には、抑制剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、前記流出阻止手段は、前記土嚢袋の内面に備えられ、前記抑制剤を吸着する多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナンからなる吸着手段であることを特徴とする。
上記目的を達成するための請求項2に係る本発明の抑草土嚢は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤を土嚢袋に収容し、前記土嚢袋には、栽培資材が収容され、前記金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含み、前記土嚢袋には、前記抑制剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、前記流出阻止手段は、前記土嚢袋をキレート繊維からなる吸着性繊維で形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、所望の場所に土嚢を敷き詰めることで、抑草作用を有する金属元素により、植物の成育が阻害されて成長が調節される。即ち、所望の場所に土嚢を設置することで、植物の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が調節されて成長の状態が制御され、極めて簡単な施工により任意の範囲で植物の所望の大きさや色等の状態が維持される。
そして、栽培資材と共に抑制剤を収容することができ、任意の栽培資材(植生土、砂利等)を用いて、使用目的に応じて土嚢の形状等を調整することができ、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
請求項1に係る本発明では、土嚢袋に備えられた流出阻止手段により、抑制剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。このため、内部の抑草成分が溶出することがないようにすることが可能になる。そして、土嚢袋の内面に備えられた吸着手段に抑制剤を吸着させることで、抑制剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。吸着手段としては、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等を用いることができる。
請求項2に係る本発明では、所望の場所に土嚢を敷き詰めることで、抑草作用を有する金属元素により、植物の成育が阻害されて成長が調節される。即ち、所望の場所に土嚢を設置することで、植物の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が調節されて成長の状態が制御され、極めて簡単な施工により任意の範囲で植物の所望の大きさや色等の状態が維持される。
請求項2に係る本発明では、土嚢袋に備えられた流出阻止手段により、抑制剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。このため、内部の抑草成分が溶出することがないようにすることが可能になる。
そして、土嚢袋を形成する繊維に抑制剤を吸着させることで、抑制剤の流出を抑制する(防止する)。吸着性繊維としては、キレート繊維(N-グルカミン型樹脂)等を用いることができる。
【0009】
従って、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、極めて簡単な施工により、任意の範囲で植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の抑草土嚢は、請求項1に記載の抑草土嚢において、抑制剤は石炭灰を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の抑草土嚢において、前記抑制剤は石炭灰を含むことを特徴とする。
請求項3に係る本発明では、抑制剤として石炭灰を用いることができる。
【0014】
また、少なくとも一種類の金属は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)のうちのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の抑草土嚢は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、極めて簡単な施工により、任意の範囲で植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係る抑草土嚢の外観図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る抑草土嚢の概略の概念図である。
【
図3】本発明の他の実施例に係る抑草土嚢の概略の概念図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた送電線の敷地の説明図である。
【
図5】抑制剤としてホウ素(B)を用いた場合の効果の説明図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた太陽光パネル発電設備の敷地の説明図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた給・排水施設の敷地の説明図である。
【
図8】本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた法面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には本発明の一実施例に係る抑草土嚢の外観を示してあり、
図1(a)は抑草土嚢を敷き詰めた状態、
図1(b)は所望の状態に植物が成長している状態である。また、
図2には本発明の一実施例に係る抑草土嚢の概略の断面状況、
図3には本発明の他の実施例に係る抑草土嚢の概略の断面状況を示してある。
【0025】
図1(a)に示すように、所定の大きさ(例えば、40cm×60cm)の土嚢袋1には、土(植生土)や砂利等の栽培資材2と、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤3とが収容される。栽培資材2と抑制剤3との割合は、例えば、7:3の割合に調整される。
【0026】
抑制剤3としては、例えば、石炭灰やスラグが適用され、抑草作用を有する金属元素は、石炭灰やスラグが由来とされる。
図1(b)に示すように、土嚢袋1に栽培資材2と抑制剤3が収容され、口が閉められることで抑草土嚢5が構成される。
【0027】
抑草土嚢5には植物の成育を阻害して成長を調節する抑草作用を有する金属元素を含んでいる。このため、抑草作用を有する金属元素により、植物の成育が阻害されて成長が調節される。即ち、植物の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が維持される。
【0028】
従って、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。つまり、抑草土嚢5を必要な場所の必要な範囲に敷き詰めることで、所望の範囲の場所で、植物(葉)の色、大きさ、質感等を場所に応じた状態に維持・制御することができる。
【0029】
図2に示すように、流出阻止手段として、土嚢袋1の内面に抑制剤3の金属元素を吸着する吸着手段としての吸着部材8が備えられている。吸着部材8は、例えば、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等の吸着手段により構成されている。
【0030】
尚、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等の吸着手段を土嚢袋1の内面に直接塗る等して、流出阻止手段を設けることも可能である。
【0031】
土嚢袋1の内面に吸着部材8を備えたことにより、土嚢袋1の内周面近傍の金属元素Mが吸着部材8に吸着される。これにより、金属元素Mが土嚢袋1の外に溶出・拡散することがなく、植物の形態を維持する(制御する)機能の効果範囲を、抑草土嚢5を設置した範囲だけで設定することが可能になる。このため、簡単な土嚢袋1を用いて安全性を確保した状態で、抑制剤3の金属元素の過剰な拡散を防止することが可能になる。
【0032】
図3に示すように、流出阻止手段として、土嚢袋1Aの袋自体が吸着性繊維で作られている。吸着性繊維としては、キレート繊維(N-グルカミン型樹脂)等を用いることができる。
【0033】
土嚢袋1Aの袋自体を吸着性繊維で作成したことにより、土嚢袋1Aの内周面近傍の金属元素Mが袋自体の繊維に吸着される。これにより、金属元素Mが土嚢袋1Aの外に溶出・拡散することがなく、植物の形態を維持する(制御する)機能の効果範囲を、抑草土嚢5を設置した範囲だけで設定することが可能になる。このため、簡単な土嚢袋1Aを用いて安全性を確保した状態で、抑制剤3の金属元素の過剰な拡散を防止することが可能になる。
【0034】
図4には本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた送電線の敷地の状況を示してある。
【0035】
送電線11が張られる鉄塔12は、人が入りにくい場所であることが多い。送電線11の敷地は、景観の観点から緑化が図られる。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞がある。
【0036】
図4(a)に示すように、送電線11の敷地の所望の範囲には、抑草土嚢5が多数敷き詰められている。抑草土嚢5には栽培資材2(
図1参照)と共に抑制剤3(
図1照)が収容されているので、
図4(b)に示すように、植物6の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が維持される。
【0037】
抑草土嚢5を敷き詰めるだけの簡単な施工で、植物6の形態が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が維持される。これにより、植物6の形態(大きさや色、開花時期等)を所定の範囲で維持する(制御する)ことが可能になり、鉄塔12が存在する敷地に対して必要な範囲内で質感等を任意の状態に制御することができる。
【0038】
つまり、立ち入りが困難な場所の植物を長期間低草で維持することができ、景観や設備保護に対して有利となる。また、山間部の鉄塔へのアクセス路に抑草土嚢5を施工し、植物を長期間低草で維持することで、特別なメンテナンスを要することなく、アクセス路を長期間確保することができる。
【0039】
金属元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類が含まれている。少なくとも一種類の金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、のうちのいずれかであることが好ましい。
【0040】
以上の金属元素を用いることで、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
【0041】
同じ敷地の中で、鉄塔12の保護を目的として植物を成長させる場合や、見栄えを優先することを目的として植物を成長させる場合等、場所に応じて抑制剤3(
図1参照)の種類が異なる抑草土嚢5(
図1参照)を設置することができる。
【0042】
これにより、任意の抑草土嚢5(
図1参照)を準備して設置することで、鉄塔12が存在する地域の特性等に応じて、簡単に、しかも、複数の形態の選択肢の状況から任意の目的の緑地、任意の景観の緑地を構築することができる。しかも、抑草土嚢5(
図1参照)を交換することで、簡単に変更することができる。
【0043】
上述した金属元素を用いた場合の植物の形態制御の状況は、土嚢袋1(
図1参照)に収容する抑制剤3(
図1参照)の金属元素の種類、組み合わせ等により、任意の状況を得ることができる。
【0044】
例えば、葉の面積を抑制し、重量はあまり抑制せずに質感は保つ状況に調整したり、葉の面積はあまり抑制せず、重量を抑制して質感を軽くしたり、葉の面積、及び、重量を抑制し、植物全体の見た目、質感ともに軽度の状態にしたりすることができる。
【0045】
図5には、抑制剤3植物の形態制御剤の金属元素として、ホウ素(B)を用いた場合の効果の説明を示してある。
【0046】
図5(a)はホウ素(B)の濃度(mg/l)と緑化の度合いであるクロロフィルの量との関係のグラフ、
図5(b)はホウ素(B)の濃度(mg/l)と葉の重量との関係のグラフ、
図5(c)は基準となる濃度(例えば、10mg/l)での発芽率の経日変化のグラフを示してある。
【0047】
図5(a)に示すように、ホウ素(B)を用いた場合、1(mg/l)、5(mg/l)、10(mg/l)、50(mg/l)、100(mg/l)と濃度が高くなると、緑色の度合いが低くなり、
図5(b)に示すように、濃度が高くなると、重量が軽くなっている。
図5(c)に示すように、例えば、10(mg/l)の濃度において、ほぼ4日まで発芽を続け、4日以降は発芽が止まる。
【0048】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素としてホウ素(B)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことがわかる。
【0049】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素としてアルミニウム(Al)を用いた場合、濃度が高くなっても、緑色の度合いはあまり変化せず、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0050】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素として銅(Cu)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量も軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0051】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素としてモリブデン(Mo)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量も大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0052】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素として鉄(Fe)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0053】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素としてリチウム(Li)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量が大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0054】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素としてコバルト(Co)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量が大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0055】
抑制剤3(
図1参照)の金属元素として亜鉛(Zn)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさが小さくなり、重量も軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0056】
上述したように、土嚢袋1に収容する抑制剤3(
図1参照)の金属元素として、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうちのいずれか、もしくは、適宜を組み合わせたものを用いることで、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
【0057】
図6から
図8に基づいて抑草土嚢5の適用例を説明する。
【0058】
図6には本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた太陽光発電設備の敷地の概略状況を示してある。
【0059】
図6に示した例は、太陽光発電設備15の敷地の太陽光パネル16の下面側の地面に抑草土嚢5を敷き詰めた状況である。太陽光パネル16の下面側は広い敷地であるが高さが低く、雑草等が生えると除草作業をすることが困難な場所となっている。また、電力線17等が存在するため、電力線17を損傷しないように草刈り作業(除草作業)を行う必要がある。
【0060】
抑草土嚢5を敷き詰めたことで、雑草などの植物6を所望の状態に維持することができ、狭い空間での除草作業を不要にすることができる。
【0061】
抑草土嚢5を敷き詰めるだけの簡単な施工で、太陽光発電設備15の敷地(太陽光パネル16の下面側)の植物6の形態が調節されて成長の状態が制御され、電力線17等を損傷する虞がある草刈り等の除草作業が不要になる。このため、太陽光発電設備15の機器を保護することができる。また、太陽光パネル16の周囲の植物6の成長を抑制して緑を維持することで、景観を損ねることなく、防犯上の対策を施すことができる。
【0062】
図7には本発明の一実施例に係る抑草土嚢を用いた給・排水施設の敷地の概略状況を示してある。
【0063】
図7に示した例は、給水管21、排水管22が設置された給・排水施設23の給水管21、及び、排水管22の下側面に抑草土嚢5を敷き詰めた状況である。給水管21、及び、排水管22の下面側は地面との間が極めて狭く、雑草等が生えると除草作業をすることが困難な場所となっている。また、給水管21、及び、排水管22を損傷しないように草刈り作業(除草作業)を行う必要がある。
【0064】
抑草土嚢5を敷き詰めるだけの簡単な施工で、給・排水施設23の給水管21、及び、排水管22の下側面の植物6の形態が調節されて成長の状態が制御され、給水管21、及び、排水管22を損傷する虞がある狭い場所での草刈り等の除草作業が不要になる。また、給水管21、及び、排水管22の周囲の植物6の成長を抑制して緑を維持することで、景観を損ねることなく、防犯上の対策を施すことができる。
【0065】
図8には本発明の一実施例に係る抑草土嚢を道路の法面に用いた状態の概略状況を示してある。
【0066】
図8に示した例は、例えば、高速道路等の法面25に抑草土嚢5を敷き詰めた状況である。法面25は傾斜地(斜面)で、道路に対して高い場所にあるため、雑草等が生えると危険で大掛かりな除草作業をする必要がある場所となっている。
【0067】
抑草土嚢5を敷き詰めるだけの簡単な施工で、傾斜地(斜面)となっている法面25の植物6の形態が調節されて成長の状態が制御され、危険で大掛かりな作業での草刈り等の除草作業が不要になる。また、植物6が根を張ることにより、土砂流亡を防ぐことができる。
【0068】
本発明の抑草土嚢5は、上記実施例の他に、植物6の形態が調節されて成長の状態を制御することに適しているあらゆる場所に適用することができる。例えば、休耕田や畑の一時的な植生管理(病害虫発生防除等)が必要な土地に敷き詰めることで、植物の成長の状態を所望の状態に制御することができる。原状復帰を行う場合、除草剤等を使用した場合と異なり、土壌の入れ替えを行うことなく抑草土嚢5を取り除くだけで良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は抑草土嚢の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、1A 土嚢袋
2 栽培資材
3 抑制剤
5 抑草土嚢
6 植物
8 吸着部材
11 送電線
12 鉄塔
15 太陽光発電設備
16 太陽光パネル
17 電力線
21 給水管
22 排水管
23 給・排水施設
25 法面
M 金属元素