(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20241115BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241115BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241115BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20241115BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20241115BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241115BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L21/316 M
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/455
C23C16/34
C23C16/40
H01L27/04 C
(21)【出願番号】P 2020159694
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中林 肇
(72)【発明者】
【氏名】柿本 明修
(72)【発明者】
【氏名】冠木 伸岳
(72)【発明者】
【氏名】河野 有美子
(72)【発明者】
【氏名】大槻 沙羅
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066819(WO,A1)
【文献】特開2011-080144(JP,A)
【文献】特表2010-510392(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/822
H01L 27/04
C23C 16/34
C23C 16/40
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電膜の上に誘電体膜を成膜する第1の成膜工程と、
前記誘電体膜の上に金属酸化物膜を成膜する第2の成膜工程と、
前記金属酸化物膜の上に第2の導電膜を成膜する第3の成膜工程と
を含み、
前記第2の成膜工程では、
シクロペンタジエニル基が含まれる有機金属化合物の蒸気と、加熱された酸素ガスとを用いて前記金属酸化物膜が成膜される成膜方法。
【請求項2】
第2の成膜工程には、
前記誘電体膜の表面に前記有機金属化合物の蒸気を供給することにより前記誘電体膜の表面に前記有機金属化合物の分子を吸着させる吸着工程と、
前記有機金属化合物の分子が吸着した前記誘電体膜の表面を不活性ガスでパージする第1のパージ工程と、
前記有機金属化合物の分子が吸着した前記誘電体膜の表面に、加熱された酸素ガスを供給することにより、前記誘電体膜の表面に吸着した前記有機金属化合物の分子を酸化させる反応工程と、
前記有機金属化合物の分子が酸化した前記誘電体膜の表面を不活性ガスでパージする第2のパージ工程と
が含まれる請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第2の成膜工程では、
酸素ガスが150℃以上350℃以下の範囲内の温度に加熱される請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記有機金属化合物には、遷移金属が含まれる請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記遷移金属は、ニッケルである請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記誘電体膜は、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、およびチタニウムの少なくともいずれかを含む酸化膜である請求項1から
5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記誘電体膜は、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、および酸化チタニウムの少なくともいずれかの層を含む多層膜であれる請求項
6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第1の導電膜および前記第2の導電膜は、窒化チタン、タングステン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化バナジウム、または金属ルテニウムである請求項1から
7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、酸化ジルコニウム膜および酸化チタン膜が窒化チタンの電極で挟まれた構造のキャパシタが開示されている。下記特許文献1では、前駆体としてTTIP(チタンテトライソプロポキシド:Ti(OCHMe2)4)、酸化ガスとしてオゾンガスを用いて、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜が成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、リーク電流が小さいキャパシタを製造することができる成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、成膜方法であって、第1の成膜工程と、第2の成膜工程と、第3の成膜工程とを含む。第1の成膜工程では、第1の導電膜の上に誘電体膜が成膜される。第2の成膜工程では、誘電体膜の上に金属酸化物膜が成膜される。また、第2の成膜工程では、有機金属化合物の蒸気と、加熱された酸素ガスとを用いて金属酸化物膜が成膜される。第3の成膜工程では、金属酸化物膜の上に第2の導電膜が成膜される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、リーク電流の小さいキャパシタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態における成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、キャパシタの製造過程の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、キャパシタの製造過程の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、キャパシタの製造過程の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、キャパシタの製造過程の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、酸素ガスの温度と金属酸化物膜の膜厚との関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、金属酸化物膜の膜厚とリーク電流の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示される成膜方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される成膜方法が限定されるものではない。
【0009】
ところで、酸化ジルコニウム膜等の誘電体膜の上に酸化チタン膜等の金属酸化物膜を成膜する際に用いられるオゾンガスは、酸化力が強いため、酸化ジルコニウム膜や酸化ジルコニウム膜の下層の導電膜も酸化されてしまう。酸化ジルコニウム膜の下層の導電膜が酸化されると、導電膜の導電性が低下し、キャパシタとしての容量が低下したり、キャパシタとしての機能が失われる場合がある。
【0010】
そこで、本開示は、リーク電流の小さいキャパシタを製造することができる技術を提供する。
【0011】
[成膜方法および成膜装置]
図1は、本開示の一実施形態における成膜方法の一例を示すフローチャートである。
図1のフローチャートに例示された処理は、例えば
図2に示される成膜装置100によって実行される。
図2は、本開示の一実施形態における成膜装置100の一例を示す概略断面図である。
【0012】
本実施形態における成膜装置100は、例えばアルミニウム等により円筒状あるいは箱状に成形された処理容器1を有する。処理容器1内には、基板Wが載置される載置台3が設けられている。載置台3は、グラファイト板あるいはシリコンカーバイドで覆われたグラファイト板等のカーボン素材、窒化アルミニウム等の熱伝導性の良いセラッミクス等により構成されている。
【0013】
載置台3の外周側には、例えばアルミニウム等により載置台3を覆うように略円筒体状に形成されたカバー部材13が設けられている。カバー部材13の上端には、例えばL字状に水平方向に屈曲した屈曲部14が形成されている。載置台3とカバー部材13とで囲まれた空間は、パージ室15を構成する。屈曲部14の上面は、載置台3の上面と実質的に同一の平面上にあり、載置台3の外周から離間している。載置台3と屈曲部14との隙間には、連結棒12が挿通されている。載置台3は、カバー部材13の上部内壁より延びる3本の支持アーム4により支持されている。
図2には、3本の支持アーム4のうち、2本が図示されている。
【0014】
載置台3の下方には、複数本(例えば3本)のL字状のリフタピン5がリング状の支持部材6から上方に突出するように設けられている。
図2には、3本のリフタピン5のうち、2本が図示されている。支持部材6は、処理容器1の底部から貫通して設けられた昇降ロッド7により昇降可能となっている。昇降ロッド7は、処理容器1の下方に設けられたるアクチュエータ10により上下に駆動される。
【0015】
載置台3のリフタピン5に対応する部分には、載置台3を貫通する穴8が設けられている。アクチュエータ10が昇降ロッド7および支持部材6を介してリフタピン5を上昇させることにより、リフタピン5を穴8に挿通させて基板Wを持ち上げることができる。昇降ロッド7の処理容器1への挿入部分は、ベローズ9で覆われており、昇降ロッド7の処理容器1への挿入部分から処理容器1内への外気の侵入が防止される。
【0016】
載置台3の周縁部には、基板Wの周縁部を保持し、基板Wを載置台3側へ固定するため、基板Wの輪郭形状に沿った略リング状のクランプリング11が設けられている。クランプリング11は、例えば窒化アルミニウム等のセラミックスで構成されている。クランプリング11は、連結棒12を介して支持部材6に連結されており、リフタピン5と一体的に昇降するようになっている。リフタピン5や連結棒12等はアルミナ等のセラミックスにより形成されている。
【0017】
リング状のクランプリング11の内周側の下面には、周方向に沿って略等間隔で配置された複数の接触突起16が形成されている。基板Wをクランプする際には、接触突起16の下端面が、基板Wの周縁部の上面と当接して基板Wを押圧することにより、基板Wがクランプされる。隣接する接触突起16の間の隙間17は、載置台3の下のパージ室15に連通している。
【0018】
クランプリング11の外周縁部と、カバー部材13の屈曲部14との間の隙間18は、パージ室15に連通している。パージ室15内に供給された不活性ガスは、クランプリング11の隣接する接触突起16の間の隙間17と、クランプリング11と屈曲部14との間の隙間18とから処理空間内へ流れる。
【0019】
処理容器1の底部には、パージ室15内に不活性ガスを供給するガス供給部19が設けられている。ガス供給部19は、ノズル20、ガス供給源21、配管22、MFC(Mass Flow Controller)23、バルブ24、およびバルブ25を有する。ノズル20は、例えばアルゴンガス等の不活性ガスをパージ室15内に供給する。ガス供給源21は、例えばアルゴンガス等の不活性ガスの供給源である。配管22は、ガス供給源21からノズル20に不活性ガスを導く。配管22には、流量制御器としてのMFC23、バルブ24、およびバルブ25が設けられている。不活性ガスとしては、アルゴンガスに代えて窒素ガスやヘリウムガス等の他の希ガスが用いられてもよい。
【0020】
処理容器1の底部の載置台3の直下位置には、石英等によって形成された透過窓30が気密に設けられている。透過窓30の下方には、透過窓30を囲むように箱状の加熱室31が設けられている。加熱室31内には、複数のランプ32が、反射鏡も兼ねる回転台33に取り付けられている。回転台33は、加熱室31の底部に設けられたモータ34により回転される。これにより、ランプ32から放出された熱線が透過窓30を透過して載置台3の下面に照射され、載置台3が加熱される。
【0021】
また、処理容器1の底部の周縁部には、排気口36が設けられ、排気口36には排気管37が接続されている。排気管37には、図示しない真空ポンプ等の排気装置が接続されている。排気口36および排気管37を介して処理容器1内のガスを排気することにより、処理容器1内を予め定められた真空度に維持することができる。また、処理容器1の側壁には、基板Wを搬入および搬出するための開口39が形成されている。開口39は、ゲートバルブ38によって開閉される。
【0022】
また、載置台3と対向する処理容器1の天井部には、ガスを処理容器1内へ導入するためシャワーヘッド40が設けられている。シャワーヘッド40は、例えばアルミニウム等により構成され、内部に空間41aを有する本体41を有する。本体41の天井部にはガス導入口42が設けられている。ガス導入口42には、配管51を介して、成膜の処理に用いられるガスを供給するガス供給部50が接続されている。
【0023】
本体41の底部には、本体41内へ供給されたガスを処理容器1内の処理空間へ放出するための多数のガス穴43が全面に亘って配置されており、基板Wの全面にガスを放出するできるようになっている。また、本体41の空間41a内には、多数の貫通孔45が形成された拡散板44が設けられており、基板Wの表面に、より均等にガスを供給可能な構成となっている。さらに、処理容器1の側壁内、および、シャワーヘッド40の側壁内等には、温度調整のためのヒータ46およびヒータ47が設けられている。ヒータ46およびヒータ47により、処理容器1内に供給されたガスと接触する壁面を予め定められた温度に保持できるようになっている。
【0024】
ガス供給部50は、貯留部53、貯留部54、ガス供給源55、およびガス供給源56を有する。貯留部53は、ニッケル(Ni)原料を貯留する。本実施形態において、ニッケル原料は、例えば(EtCp)2Ni(Bis(ethylcyclopentadienyl)nickel)である。(EtCp)2Niには、遷移金属であるニッケルが含まれている。また、(EtCp)2Niには、シクロペンタジエニル基が含まれている。(EtCp)2Niは、有機金属化合物の一例である。貯留部54は、ジルコニウム(Zr)原料を貯留する。本実施形態において、ジルコニウム原料は、例えばTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)である。ガス供給源55は、処理容器1内に供給されるガスの希釈等に用いられるアルゴンガス等の不活性ガスの供給源である。ガス供給源56は、金属を酸化させるための酸素ガスの供給源である。
【0025】
ガス供給源55は、バルブ62、MFC61、およびバルブ63を介して配管51に接続されている。また、配管51には、配管58を介して貯留部53が接続されている。また、配管51には、配管59を介して貯留部54が接続されている。また、配管51には、配管60を介してガス供給源56が接続されている。配管60には、MFC82、バルブ83、バルブ84、および加熱部88が設けられている。加熱部88は、ガス供給源56から供給される酸素ガスを、例えば150℃以上350℃以下の範囲内の温度に加熱する。
【0026】
また、MFC82と加熱部88との間の配管60と、配管51との間には、配管68が設けられている。配管68には、バルブ65、オゾナイザー66、およびバルブ67が設けられている。オゾナイザー66は、ガス供給源56から供給された酸素ガスからオゾンガスを生成する。オゾナイザー66によって生成されたオゾンガスは、バルブ67および配管51を介して処理容器1内に供給される。
【0027】
貯留部53には、配管70を介してアルゴンガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給源69が接続されている。配管70には、MFC71、バルブ72、およびバルブ73が設けられている。貯留部54には、配管75を介してキャリアガスを供給するキャリアガス供給源74が接続されている。配管75には、MFC76、バルブ77、およびバルブ78が設けられている。
【0028】
貯留部53にはヒータ80が設けられており、貯留部53に貯留されたニッケル原料は、ヒータ80によって加熱された状態で、バブリングにより処理容器1に供給されるようになっている。貯留部54にはヒータ81が設けられており、貯留部54に貯留されたジルコニウム原料は、ヒータ81によって加熱された状態で、バブリングにより処理容器1に供給されるようになっている。なお、気化されたニッケル原料やジルコニウム原料が流通する配管、MFC、およびバルブ等も、図示しないヒータにより加熱されている。
【0029】
また、本実施形態では、ニッケル原料およびジルコニウム原料がバブリングにより気化された後にMFCによってその流量が制御されるが、開示の技術はこれに限られない。例えば、ニッケル原料およびジルコニウム原料は、液体の状態でMFCによってその流量が制御され、流量が制御されたニッケル原料およびジルコニウム原料がバブリングにより気化されて処理容器1内に供給されてもよい。また、本実施形態において、ニッケル原料、ジルコニウム原料、および酸素ガスは、配管51を介して処理容器1内に供給されるが、開示の技術はこれに限られない。例えば、ニッケル原料、ジルコニウム原料、および酸素ガスは、それぞれ別々の配管を介して処理容器1内に供給されてもよい。
【0030】
処理容器1の側壁上部には、NF3ガスやClF3ガス等のクリーニングガスを導入するガス導入部85が設けられている。ガス導入部85には、クリーニングガスを供給する配管86が接続されている。配管86には、リモートプラズマ発生部87が設けられている。配管86を介して供給されたクリーニングガスは、リモートプラズマ発生部87によってプラズマ化され、クリーニングガスのプラズマがガス導入部85を介して処理容器1内に供給される。これにより、処理容器1内がクリーニングされる。なお、ガス導入部85を配管51に接続し、クリーニングガスのプラズマをシャワーヘッド40を介して処理容器1内に供給するようにしてもよい。また、クリーニングガスとしては、NF3ガスやClF3ガス以外に、F2ガスを用いることもできる。また、クリーニングガスとしてClF3ガスを用いた場合には、リモートプラズマを使用せず、プラズマレスの熱クリーニングを行ってもよい。
【0031】
成膜装置100はマイクロプロセッサ等を有するプロセスコントローラ90を有しており、成膜装置100の各構成部がプロセスコントローラ90によって制御される。プロセスコントローラ90には、オペレータが成膜装置100の各構成部を管理するためのコマンドを入力するためのキーボードや、成膜装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含むユーザーインターフェース91が接続されている。また、プロセスコントローラ90には、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ90の制御にて実現するための制御プログラムや処理レシピ等を格納する記憶部92が接続されている。
【0032】
プロセスコントローラ90は、ユーザーインターフェース91を介して入力された指示等に応じて、予め記憶部92内に格納された処理レシピ等を読み出す。そして、プロセスコントローラ90は、読み出された処理レシピ等に応じて成膜装置100の各部を制御することにより、成膜装置100に予め定められた処理を実行させる。
【0033】
図1に戻って説明を続ける。まず、ゲートバルブ38が開かれ、例えば
図3に示される第1の導電膜200を有する基板Wが処理容器1内に搬入され、載置台3の上に載置される。本実施形態において、第1の導電膜200は、例えば窒化チタンである。なお、第1の導電膜200は、タングステン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化バナジウム、または金属ルテニウム等であってもよい。そして、ゲートバルブ38が閉じられる。そして、処理容器1内に酸化ジルコニウム膜の成膜に用いられるジルコニウム原料の蒸気が供給される(S10)。
【0034】
ステップS10では、バルブ77およびバルブ78が開かれ、MFC76によって予め定められた流量のキャリアガスが貯留部54内に供給される。これにより、ジルコニウム原料が気化され、MFC76によって流量が制御されたキャリアガスに応じた流量のジルコニウム原料の蒸気が、配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、第1の導電膜200の表面にジルコニウム原料の分子が吸着する。そして、バルブ77およびバルブ78が閉じられる。
【0035】
ステップS10の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:1Torr
基板Wの温度:250℃
処理時間:5秒
【0036】
次に、基板Wの表面がパージされる(S11)。ステップS11では、バルブ62およびバルブ63が開かれ、MFC61によって予め定められた流量の不活性ガスが配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、第1の導電膜200の表面に過剰に吸着したジルコニウム原料の分子が除去される。そして、バルブ62およびバルブ63が閉じられる。
【0037】
ステップS11の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:1Torr
基板Wの温度:250℃
不活性ガスの流量:500sccm
処理時間:10秒
【0038】
次に、基板Wの表面に酸化ガスが供給される(S12)。ステップS12では、バルブ83、バルブ65、およびバルブ67が開かれ、MFC82によって予め定められた流量の酸素ガスがオゾナイザー66に供給される。オゾナイザー66は、供給された酸素ガスからオゾンガスを生成し、生成されたオゾンガスを配管51を介して処理容器1内に供給する。これにより、第1の導電膜200の表面に吸着したジルコニウム原料の分子が酸化され、第1の導電膜200の表面に酸化ジルコニウム膜が成膜される。そして、バルブ83、バルブ65、およびバルブ67が閉じられる。
【0039】
ステップS12の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:1Torr
基板Wの温度:250℃
酸素ガスの流量:500sccm
オゾンガスの濃度:100g/m3
処理時間:10秒
【0040】
次に、基板Wの表面が再びパージされる(S13)。ステップS13では、バルブ62およびバルブ63が開かれ、MFC61によって予め定められた流量の不活性ガスが配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、第1の導電膜200の表面に過剰に積層された酸化ジルコニウム膜が除去される。そして、バルブ62およびバルブ63が閉じられる。ステップS13の主な条件は、ステップS11の主な条件と同様である。
【0041】
次に、ステップS10~S13が予め定められた回数実行されたか否かが判定される(S14)。ステップS14における予め定められた回数とは、第1の導電膜200の上に予め定められた膜厚の酸化ジルコニウム膜が成膜される回数である。ステップS10~S13が予め定められた回数実行されていない場合(S14:No)、再びステップS10に示された処理が実行される。ステップS10~S14の処理は、第1の成膜工程の一例である。
【0042】
一方、ステップS10~S13が予め定められた回数実行された場合(S14:Yes)、例えば
図4に示されるように、第1の導電膜200の上に予め定められた膜厚の誘電体膜201が成膜される。本実施形態において、誘電体膜201は、例えば酸化ジルコニウム膜である。そして、処理容器1内に酸化ニッケル膜の成膜に用いられるニッケル原料の蒸気が供給される(S15)。
【0043】
ステップS15では、バルブ72およびバルブ73が開かれ、MFC71によって予め定められた流量のキャリアガスが貯留部53内に供給される。これにより、ニッケル原料が気化され、MFC71によって流量が制御されたキャリアガスに応じた流量のニッケル原料の蒸気が、配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、誘電体膜201の表面にニッケル原料の分子が吸着する。ステップS15は、吸着工程の一例である。そして、バルブ72およびバルブ73が閉じられる。
【0044】
ステップS15の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:5Torr
基板Wの温度:245℃
処理時間:30秒
【0045】
次に、基板Wの表面がパージされる(S16)。ステップS16では、バルブ62およびバルブ63が開かれ、MFC61によって予め定められた流量の不活性ガスが配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、誘電体膜201の表面に過剰に吸着したニッケル原料の分子が除去される。ステップS16は、第1のパージ工程の一例である。そして、バルブ62およびバルブ63が閉じられる。
【0046】
ステップS16の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:5Torr
基板Wの温度:245℃
不活性ガスの流量:500sccm
処理時間:30秒
【0047】
次に、基板Wの表面に酸化ガスが供給される(S17)。ステップS17では、バルブ83およびバルブ84が開かれ、MFC82によって予め定められた流量の酸素ガスが加熱部88に供給される。加熱部88に供給された酸素ガスは、加熱部88によって予め定められた温度まで加熱される。そして、加熱された酸素ガスは、配管60および配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、誘電体膜201の表面に吸着したニッケル原料の分子が酸化され、誘電体膜201の表面に酸化ニッケル膜が成膜される。ステップS17は、反応工程の一例である。そして、バルブ83およびバルブ84が閉じられる。
【0048】
ステップS17の主な条件は、以下の通りである。
処理容器1内の圧力:5Torr
基板Wの温度:245℃
酸素ガスの流量:500sccm
酸素ガスの温度:150℃~350℃
処理時間:60秒
【0049】
ここで、オゾンガスを用いて、誘電体膜201の表面に吸着したニッケル原料の分子が酸化されるとすれば、オゾンガスは、酸素ガスよりも酸化力が強いため、誘電体膜201の下層の第1の導電膜200も酸化させてしまう場合がある。第1の導電膜200が酸化すると、第1の導電膜200の導電性が低下し、キャパシタとしての容量が低下したり、キャパシタとしての機能が失われる場合がある。
【0050】
これに対し、本実施形態では、ステップS17において、オゾンガスではなく加熱された酸素ガスを用いて、誘電体膜201の表面に吸着したニッケル原料の分子が酸化される。これにより、誘電体膜201の下層の第1の導電膜200を酸化させてしまうことなく、誘電体膜201の表面に吸着したニッケル原料の分子を酸化させることができる。なお、酸素ガスを加熱することにより、酸化力を高めることができ、誘電体膜201の表面に吸着したニッケル原料の分子をより短時間で酸化させることができる。
【0051】
なお、誘電体膜201の成膜におけるステップS12において、オゾンガスが用いられるが、ステップS12の処理時間は短いため、第1の導電膜200はほとんど酸化されない。
【0052】
次に、基板Wの表面が再びパージされる(S18)。ステップS18では、バルブ62およびバルブ63が開かれ、MFC61によって予め定められた流量の不活性ガスが配管51を介して処理容器1内に供給される。これにより、誘電体膜201の表面に過剰に積層された酸化ニッケル膜が除去される。ステップS18は、第2のパージ工程の一例である。そして、バルブ62およびバルブ63が閉じられる。ステップS18の主な条件は、ステップS16の主な条件と同様である。
【0053】
次に、ステップS15~S18が予め定められた回数実行されたか否かが判定される(S19)。ステップS15~S18が予め定められた回数実行されていない場合(S19:No)、再びステップS15に示された処理が実行される。ステップS15~S19の処理は、第2の成膜工程の一例である。
【0054】
一方、ステップS15~S18が予め定められた回数実行された場合(S19:Yes)、例えば
図5に示されるように、誘電体膜201の上に予め定められた膜厚の金属酸化物膜202が成膜される。本実施形態において、金属酸化物膜202は、例えば酸化ニッケル膜である。そして、ゲートバルブ38が開けられ、処理容器1内から基板Wが搬出される。
【0055】
次に、基板Wは、導電膜を成膜するための図示しない成膜装置内に搬入され、例えば
図6に示されるように、金属酸化物膜202の上に、第2の導電膜203が成膜される(S20)。ステップS20は、第3の成膜工程の一例である。本実施形態において、第2の導電膜203は、例えば窒化チタンである。なお、第2の導電膜203は、タングステン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化バナジウム、または金属ルテニウム等であってもよい。そして、本フローチャートに示された成膜方法が終了する。
【0056】
[成膜レート]
図7は、酸素ガスの温度と金属酸化物膜の膜厚との関係の一例を示す図である。
図7の横軸は、
図1のステップS15~S18の処理の繰り返しの回数(サイクル)を示しており、縦軸は、金属酸化物膜202の膜厚を示している。例えば
図7に示されるように、酸素ガスを120℃以上に加熱することにより、酸素ガスを用いても金属酸化物膜202を成膜することができる。
【0057】
ただし、酸素ガスの温度が120℃の場合、ステップS15~S18の処理の繰り返しが200サイクル実行されてても、金属酸化物膜202が4Åしか成膜されない。そのため、金属酸化物膜202の成膜におけるスループット向上の観点では、酸素ガスの温度は、150℃以上に加熱されることが好ましい。
【0058】
また、
図7の結果から明らかなように、酸素ガスの温度が高くなるほど金属酸化物膜202の成膜レートが増加する。しかし、ニッケル原料は350℃よりも高い温度で分解してしまい、誘電体膜201の表面に吸着し難くなる。これにより、酸素ガスが350℃よりも高い温度に加熱されると、金属酸化物膜202の成膜レートが逆に低下してしまう。従って、酸素ガスは、150℃以上かつ350℃以下の範囲内の温度に加熱されることが好ましい。
【0059】
[リーク電流]
図8は、金属酸化物膜202の膜厚とリーク電流の関係の一例を図である。
図8には、本実施形態の成膜方法により150℃に加熱された酸素ガスを用いて金属酸化物膜202が成膜されたキャパシタのリーク電流の値が示されている。また、
図8には、比較例として、第1の導電膜200と第2の導電膜203の間に誘電体膜201のみが積層され、金属酸化物膜202(NiO層)を有さないキャパシタのリーク電流の値が示されている。また、
図8には、比較例として、オゾンガスを用いて金属酸化物膜202が成膜された場合のキャパシタのリーク電流の値が示されている。
【0060】
図8から明らかなように、本実施形態の成膜方法により成膜されたキャパシタのリーク電流の値は、金属酸化物膜202を有さないキャパシタのリーク電流の値よりも低くなっている。また、本実施形態の成膜方法により成膜されたキャパシタのリーク電流の値は、オゾンガスを用いて成膜された金属酸化物膜202を有するキャパシタのリーク電流の値よりも2桁程度低くなっている。従って、誘電体膜201と第2の導電膜203との間に加熱された酸素ガスを用いて金属酸化物膜202を成膜することにより、キャパシタのリーク電流を抑制することができる。
【0061】
以上、実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における成膜方法は、第1の成膜工程と、第2の成膜工程と、第3の成膜工程とを含む。第1の成膜工程では、第1の導電膜200の上に誘電体膜201が成膜される。第2の成膜工程では、誘電体膜201の上に金属酸化物膜202が成膜される。また、第2の成膜工程では、有機金属化合物の蒸気と、加熱された酸素ガスとを用いて金属酸化物膜202が成膜される。第3の成膜工程では、金属酸化物膜202の上に第2の導電膜203が成膜される。これにより、リーク電流の小さいキャパシタを製造することができる。
【0062】
また、上記した実施形態における第2の成膜工程には、吸着工程と、第1のパージ工程と、反応工程と、第2のパージ工程とが含まれる。吸着工程では、誘電体膜201の表面に有機金属化合物の蒸気を供給することにより誘電体膜201の表面に有機金属化合物の分子が吸着する。第1のパージ工程では、有機金属化合物の分子が吸着した誘電体膜201の表面が不活性ガスでパージされる。反応工程では、有機金属化合物の分子が吸着した誘電体膜201の表面に、加熱された酸素ガスを供給することにより、誘電体膜201の表面に吸着した有機金属化合物の分子が酸化される。第2のパージ工程では、有機金属化合物の分子が酸化された誘電体膜201の表面が不活性ガスでパージされる。これにより、誘電体膜201の上に金属酸化物膜202を成膜することができる。
【0063】
また、上記した実施形態における第2の成膜工程では、酸素ガスが150℃以上350℃以下の範囲内の温度に加熱される。これにより、誘電体膜201の下層の第1の導電膜200を酸化させることなく、誘電体膜201の表面に吸着した有機金属化合物の分子を酸化させることができる。
【0064】
また、上記した実施形態において、有機金属化合物には、シクロペンタジエニル基が含まれる。シクロペンタジエニル基を含む有機金属化合物は一般に分解しにくいが、酸化に用いられる酸素ガスを加熱することにより、分解を進めて金属酸化物膜202を十分酸化させることができる。
【0065】
また、上記した実施形態において、第1の導電膜200および第2の導電膜203は、窒化チタン、タングステン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化バナジウム、または金属ルテニウムである。これにより、リーク電流の小さいキャパシタを製造することができる。
【0066】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0067】
例えば、上記した実施形態において、ステップS15で供給される有機金属化合物には、遷移金属としてニッケルが含まれるが、開示の技術はこれに限られない。ステップS15において供給される有機金属化合物には、コバルト、マンガン、またはイリジウム等の他の遷移金属が含まれていてもよい。
【0068】
また、上記した実施形態において、ステップS15では、有機金属化合物として、(EtCp)2Niの蒸気が供給されるが、開示の技術はこれに限られない。ステップS15では、例えば(EtCp)2Coの蒸気等、シクロペンタジエニル基などの分解しにくい官能基を有する他の有機金属化合物の蒸気が供給されてもよい。
【0069】
また、上記した実施形態において、誘電体膜201は、酸化ジルコニウム膜であるが、開示の技術はこれに限られない。例えば、誘電体膜201は、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、およびチタニウムの少なくともいずれかを含む酸化膜であってもよい。また、誘電体膜201は、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、および酸化チタニウムの少なくともいずれかの層を含む多層膜であってもよい。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
W 基板
100 成膜装置
40 シャワーヘッド
50 ガス供給部
51 配管
53 貯留部
54 貯留部
55 ガス供給源
56 ガス供給源
58 配管
59 配管
60 配管
61 MFC
62 バルブ
63 バルブ
65 バルブ
66 オゾナイザー
67 バルブ
68 配管
69 キャリアガス供給源
70 配管
71 MFC
72 バルブ
73 バルブ
74 キャリアガス供給源
75 配管
76 MFC
77 バルブ
78 バルブ
80 ヒータ
81 ヒータ
82 MFC
83 バルブ
84 バルブ
85 ガス導入部
86 配管
87 リモートプラズマ発生部
88 加熱部
200 第1の導電膜
201 誘電体膜
202 金属酸化物膜
203 第2の導電膜