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特許7588544アスファルト改質剤及びアスファルト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】アスファルト改質剤及びアスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20241115BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241115BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20241115BHJP
   E01C 7/18 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K5/09
C08L95/00
E01C7/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021067751
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162767
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500464(JP,A)
【文献】特開平11-029665(JP,A)
【文献】特開平08-199073(JP,A)
【文献】特開平01-101369(JP,A)
【文献】米国特許第06117926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/02
C08K 5/09
C08L 95/00
E01C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、
カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、
を含有する混合物の溶融混練物であって、
前記有機化合物の炭素数が6以上20以下であり、
前記有機化合物が飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、アスファルト改質剤。
【請求項2】
前記有機化合物が、ステアリン酸を含む、請求項1に記載のアスファルト改質剤。
【請求項3】
前記添加剤の含有量が、溶融混練される前記混合物の全質量を基準として、0.1~30質量%である、請求項1又は2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項4】
アスファルトと、
請求項1~のいずれか一項に記載のアスファルト改質剤と、
を含有する、アスファルト組成物。
【請求項5】
エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体を含む第一剤と、
カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤を含む第二剤と、
を備える材料セットであって、
前記有機化合物の炭素数が6以上20以下であり、
前記有機化合物が飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、アスファルト改質剤。
【請求項6】
前記有機化合物が、ステアリン酸を含む、請求項に記載のアスファルト改質剤。
【請求項7】
アスファルトと、
エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、
カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、
を含有する混合物の溶融混練物であって、
前記有機化合物の炭素数が6以上20以下であり、
前記有機化合物が飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、アスファルト組成物。
【請求項8】
前記有機化合物が、ステアリン酸を含む、請求項に記載のアスファルト組成物。
【請求項9】
前記添加剤の含有量が、溶融混練される前記混合物の全質量を基準として、0.01~1質量%である、請求項7又は8に記載のアスファルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質剤及びアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトの耐熱性向上及び剥離抑制等を目的として、アスファルトがポリオレフィン系樹脂を含む改質剤で改質されることがある(例えば、特許文献1。)。道路舗装に用いられるアスファルト組成物の場合、アスファルトの剥離を抑制することは、剥離に由来する道路の損傷を低減する上で重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-35839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリオレフィン系樹脂を含む改質剤は、アスファルトとの混練後に、例えば175℃で1週間程度のように、高温で長時間保管されることがある。しかし、高温で長期間の保管により、骨材(例えば硬質砂岩又は石灰岩)に対する剥離防止性能が低下することがある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、高温で長時間保管された後でも、骨材に対する剥離防止性能を維持することができるアスファルト改質剤及びアスファルト組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する混合物の溶融混練物である、アスファルト改質剤である。
【0007】
本発明の他の一側面は、アスファルトと、エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する、アスファルト組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、高温で長時間保管された後でも、骨材に対する剥離防止性能を維持することができるアスファルト改質剤及びアスファルト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の一実施形態は、エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する混合物の溶融混練物である、アスファルト改質剤である。
【0011】
エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体(以下、「ポリオレフィン系共重合体A」ともいう)は、例えば、エポキシ基を有するモノマー単位と、エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位とを含むことができる。エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の割合(エチレンから誘導されるモノマー単位及びα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の合計の割合)は、ポリオレフィン系共重合体Aの全質量を基準として、50~99.9質量%であってもよい。エポキシ基を有するモノマー単位の割合は、ポリオレフィン系共重合体Aの質量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよく、50質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。ポリオレフィン系共重合体Aは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0012】
エポキシ基を有するモノマー単位は、例えば、不飽和カルボン酸グリシジルエステルに由来するモノマー単位、又は不飽和基を有するグリシジルエーテルに由来するモノマー単位であってもよい。
【0013】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルは、下記式(1)で表される化合物であってもよい。式(1)中、Rは、炭素原子数2~18のアルケニル基を示し、アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。式(1)で表される化合物の例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びイタコン酸グリシジルエステルが挙げられる。
【0014】
【化1】
【0015】
不飽和基を有するグリシジルエーテルは、下記式(2)で表される化合物であってもよい。式(2)中、Rは、炭素原子数2~18のアルケニル基を示し、アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。Xは、CH2-O(CHがRに結合する)または酸素原子を示す。式(2)で表される化合物の例としては、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、及びスチレン-p-グリシジルエーテルが挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】
ポリオレフィン系共重合体Aは、エポキシ基を有するモノマー単位、エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の他に、エチレン性不飽和化合物から誘導されるその他のモノマー単位を更に含む共重合体であってもよい。その他のモノマー単位の割合は、ポリオレフィン系共重合体Aの全質量を基準として、0~50質量%、又は10~40質量%であってもよい。
【0018】
その他のモノマー単位を誘導するエチレン性不飽和化合物の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレート等のα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びブタン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、及びフェニルビニルエーテル等のビニルエーテル;スチレン、メチルスチレン、及びエチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、類似の化合物においても同様である。
【0019】
ポリオレフィン系共重合体Aの例としては、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルマルプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソブチル(メタ)アクリレート共重合体、及びエチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体は、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体であってもよい。
【0020】
ポリオレフィン系共重合体Aのメルトフローレートは、300g/10分以下であってもよい。メルトフローレートが300g/10分以下であると、ポリオレフィン系共重合体Aの分子量がある程度大きいため、アスファルト改質剤の耐熱性が優れる傾向がある。同様の観点から、ポリオレフィン系共重合体Aのメルトフローレートは、200g/10分以下、100g/10分以下、又は50g/10分以下であってもよい。ポリオレフィン系共重合体Aのメルトフローレートは、アスファルトと混合する際に、アスファルトと同等な粘度を有することで分散効率が優れる観点から、1g/10分以上、又は5g/10分以上であってもよい。ポリオレフィン系共重合体Aのメルトフローレートは、JIS7210-1:2014に基づき、190℃、荷重2.16kgの条件下で、A法(所定の時間で生じた押出物の重量から、10分間当たりのグラム数単位(g/10分)として、押出速度を計算する方法)で測定される値である。
【0021】
ポリオレフィン系共重合体Aの含有量は、アスファルト改質剤を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。
【0022】
アスファルト改質剤は、カルボキシル基を有する有機化合物(以下、「有機化合物B」ともいう)又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤を含有する。有機化合物Bは、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、及び芳香族カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。金属塩は、有機化合物Bのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等であってもよい。アスファルト改質剤は、一種又は複数の有機化合物B又はその金属塩を含む添加剤を含有してもよい。
【0023】
飽和脂肪酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。有機化合物Bは、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよく、石灰岩に対する剥離防止性能を維持しやすい観点から、ステアリン酸を含んでもよい。
【0024】
不飽和脂肪酸の例としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸等のモノ不飽和脂肪酸;リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸(α-リノレン酸)、ピノレン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸、アラキドン酸等のテトラ不飽和脂肪酸が挙げられる。不飽和脂肪酸が有する不飽和炭素結合の数は、2以下又は1であってもよい。有機化合物Bは、オレイン酸又はリノレン酸を含んでもよい。
【0025】
芳香族カルボン酸の例としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸が挙げられる。有機化合物Bは、安息香酸を含んでもよい。
【0026】
有機化合物Bが有するカルボキシル基の数は、ポリオレフィン系共重合体Aと有機化合物Bとを混合した際に、ゲル化することを防ぐ観点から、3以下、2以下、又は1以下であってもよい。
【0027】
有機化合物Bの炭素数は、6以上、8以上、10以上、14以上、16以上、又は18以上であってもよく、22以下、20以下、又は18以下であってもよい。
【0028】
添加剤の含有量は、アスファルト改質剤を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってもよく、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。有機化合物Bの含有量は、溶融混練される混合物の全質量を基準として、上記の範囲内であってもよい。有機化合物Bの金属塩の含有量は、溶融混練される混合物の全質量を基準として、上記の範囲内であってもよい。溶融混練の過程で、添加剤の一部又は全部が反応して、ポリオレフィン系共重合体Aと結合したり、他の化合物に転化したりする可能性があるが、本明細書において「添加剤の含有量」は、溶融混練される混合物を形成するために導入される添加剤の量を意味する。
【0029】
添加剤の含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、0.1質量部以上、0.4質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、又は10質量部以上であってもよく、45質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。有機化合物Bの含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、上記の範囲内であってもよい。有機化合物Bの金属塩の含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、上記の範囲内であってもよい。
【0030】
一実施形態に係るアスファルト改質剤は、ポリオレフィン系共重合体A、添加剤以外の成分を更に含有していてもよい。アスファルト改質剤は、例えばスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(以下「SBS共重合体」ともいう)、ポリオレフィン系共重合体A以外のポリオレフィン系共重合体、有機化合物B以外の有機化合物を更に含有していてもよい。
【0031】
アスファルト改質剤は、ポリオレフィン系共重合体AとSBS共重合体とを含有することにより、耐熱性及び剥離抵抗性をより向上させることができる。アスファルト改質剤におけるSBS共重合体の含有量は、例えば、アスファルト改質剤を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は2.0質量%以上であってもよく、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。アスファルト改質剤におけるSBS共重合体の含有量は、例えば、アスファルト改質剤を形成するために溶融混練される混合物中のポリオレフィン系共重合体A及び添加剤の合計100質量部を基準として、0.5質量部以上、10質量部以上、100質量部以上、600質量部以上、1000質量部以上又は1400質量部以上であってもよく、5000質量部以下、4200質量部以下、3800質量部以下又は3400質量部以下であってもよい。
【0032】
アスファルト改質剤を形成するために溶融混練される混合物におけるポリオレフィン系共重合体A及び添加剤の合計の含有量は、溶融混練される混合物の全質量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、実質的に100質量%(溶融混練される混合物が、ポリオレフィン系共重合体A及び添加剤からなる態様)であってもよい。
【0033】
アスファルト改質剤は、ポリオレフィン系共重合体Aと、添加剤と、を含有する混合物を加熱しながらミキサー等により混練することにより得ることができる。すなわち、アスファルト改質剤は、ポリオレフィン系共重合体Aと添加剤とを含有する混合物を溶融混練する工程を含む方法により、製造することができる。アスファルト改質剤を得る際の混合物の加熱温度は、例えば、100~250℃、又は150~200℃であってもよい。
【0034】
混合物を溶融混練する過程で、添加剤に含まれる有機化合物B又はその金属塩の少なくとも一部が、ポリオレフィン系共重合体A又はその他の成分と反応して、混合物の流動性を高めるような構造的な変化が溶融混練物(アスファルト改質剤)中に生じると考えられる。ただし、そのような反応の詳細は明らかではなく、溶融混練物(アスファルト改質剤)自体を、その構造又は特性によって直接特定することは困難であり、実際的でない。なお、有機化合物B又はその金属塩の一部が、未反応のまま溶融混練物(アスファルト改質剤)中に残存していてもよい。アスファルト改質剤中のポリオレフィン系共重合体Aが、有機化合物B又はその金属塩との反応によって変性されていてもよい。
【0035】
一実施形態に係るアスファルト改質剤は、ポリオレフィン系共重合体Aを含む第一剤と、有機化合物B又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤を含む第二剤と、を備える材料セットとして保存及び使用してもよい。材料セットの第一剤と第二剤とを混合し、得られる混合物を溶融混練することでアスファルト改質剤を得ることができる。
【0036】
材料セットの第一剤と第二剤とを混合して混合物を得るときの第二剤の添加量は、得られる混合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってもよく、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0037】
材料セットの第一剤と第二剤とを混合して混合物を得るときの第一剤100質量部に対する第二剤の添加量は、0.1質量部以上、0.4質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、又は10質量部以上であってもよく、45質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。
【0038】
一実施形態に係るアスファルト改質剤は、アスファルトと混合することにより、アスファルト改質剤と、アスファルトと、を含有する、アスファルト組成物を得ることができる。また、アスファルト組成物は、アスファルトと、ポリオレフィン系共重合体Aと、有機化合物B又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する混合物の溶融混練物であってもよい。すなわち、本発明の他の一実施形態は、アスファルトと、エポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する混合物の溶融混練物である、アスファルト組成物である。
【0039】
アスファルト組成物に含まれるアスファルトは、特に制限されないが、例えば、舗装用ストレートアスファルト、レークアスファルト等の天然アスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルトで変性されたストレートアスファルト、タール変性されたストレートアスファルト、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
アスファルトの含有量は、アスファルト組成物を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上であってもよく、99.9質量%以下、99.8質量%以下、又は99.7質量%以下であってもよい。
【0041】
ポリオレフィン系共重合体Aの含有量は、アスファルト組成物を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.25質量%以上であってもよく、4.99質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.3質量%以下であってもよい。
【0042】
添加剤の含有量は、アスファルト組成物を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、0.0005質量%以上、0.001質量%以上、0.003質量%以上、0.01質量%以上、0.02質量%以上、又は0.03質量%以上であってもよく、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は0.03質量%以下であってもよい。有機化合物Bの含有量は、溶融混練される混合物の全質量を基準として、上記の範囲内であってもよい。有機化合物Bの金属塩の含有量は、溶融混練される混合物の全質量を基準として、上記の範囲内であってもよい。
【0043】
添加剤の含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、0.1質量部以上、0.4質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、又は10質量部以上であってもよく、45質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。有機化合物Bの含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、上記の範囲内であってもよい。有機化合物Bの金属塩の含有量は、ポリオレフィン系共重合体A100質量部を基準として、上記の範囲内であってもよい。
【0044】
ポリオレフィン系共重合体A及び添加剤の合計の含有量は、アスファルト組成物を形成するために溶融混練される混合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよく、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.3質量%以下であってもよい。
【0045】
アスファルト組成物は、アスファルトと上記のアスファルト改質剤とを含有する混合物を溶融混練することにより得ることができる。また、アスファルト組成物は、アスファルトと、ポリオレフィン系共重合体Aと、有機化合物B又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有する混合物を溶融混練することにより得ることもできる。溶融混練する際の温度は、例えば、100~250℃又は150~200℃であってもよい。溶融混練する時間は、例えば、0.01~6時間であってもよい。
【0046】
アスファルト組成物は、例えば、骨材と混合して用いることができ、アスファルト組成物と骨材とを含有する道路舗装用アスファルト組成物として用いることができる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、アスファルト組成物と、骨材と、を含有する道路舗装用アスファルト組成物である。
【0047】
骨材の種類及びその含有量は、道路舗装の分野において一般に採用されている範囲で、適宜調整することができる。骨材の例としては、砕石、砕砂であってよく、堆積岩(例えば、硬質砂岩、石灰岩)の砕石、砕砂であってよい。骨材の含有量は、例えば、アスファルト組成物100質量部に対して、1000~10000質量部であってもよい。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
1.原材料
(1)アスファルト
・ストレートアスファルト(以下「StAs」ともいう):StAs、ENEOS株式会社製、針入度:60~80°
(2)樹脂
・樹脂A:エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(以下「EGMA共重合体」ともいう。住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量19質量%、MFR7g/10分(190℃、2.16kg荷重)
・樹脂B:エチレン/メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、N1525、メタクリル酸変性率:15重量%、MFR25g/10分(190℃、2.16kg荷重))
・樹脂C:エチレン/メチルアクリレート/オクタデシルアクリレート共重合体
(3)添加剤
・ステアリン酸(東京化成工業株式会社製)
・ステアリルアルコール(東京化成工業株式会社製)
・安息香酸(東京化成工業株式会社製)
・オレイン酸(東京化成工業株式会社製)
・カプリン酸(東京化成工業株式会社製)
・ミリスチン酸(東京化成工業株式会社製)
・ベヘン酸(東京化成工業株式会社製)
・α-リノレン酸(東京化成工業株式会社製)
・ステアリルアルコール(東京化成工業株式会社製)
・ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製)
・ポリリン酸(Aldrich社製)
・カプリル酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0050】
2.アスファルト改質剤の調製
容量100mLの小型ミキサーを取り付けた東洋精機株式会社製のラボプラストミルに、表1に示す量の樹脂と添加剤とを投入して、混合物を150℃、80rpm、5分間溶融混練することで、実施例1~3のアスファルト改質剤を得た。
【0051】
3.アスファルト組成物の調製
実施例1~3
StAs400gを180℃のオーブンで30分間加熱した。加熱することで軟化したStAsに、ホモミクサーMARKII2.5型の攪拌部を差し込み、攪拌部の回転数を徐々に上げながら、実施例1~3のアスファルト改質剤を投入して得られた混合物を、180℃に加熱しながら回転数7000rpmで1時間、溶融混練した。形成された溶融混練物を1昼夜かけて室温まで冷却して、アスファルト組成物を得た。アスファルト改質剤の投入量を、アスファルト改質剤を調製するために用いられた樹脂及び添加剤の量が、表1に示す含有量(単位:質量部)となるように調整した。表1に示される含有量は、アスファルト、樹脂及び添加剤の合計を100質量部とする値である。
【0052】
実施例4~17、比較例1~9
StAs400gを180℃のオーブンで30分間加熱した。加熱することで軟化したStAsに、ホモミクサーMARKII2.5型の攪拌部を差し込み、攪拌部の回転数を徐々に上げながら、樹脂及び添加剤を投入して得られた混合物を、180℃に加熱しながら回転数7000rpmで1時間、溶融混練した。形成された溶融混練物を1昼夜かけて室温まで冷却して、アスファルト組成物を得た。樹脂及び改質剤の投入量を、アスファルト改質剤を調製するために用いられた樹脂及び添加剤の量が、表1~3に示す含有量(単位:質量部)となるように調整した。表1~3に示される含有量は、アスファルト、樹脂及び添加剤の合計を100質量部とする値である。
【0053】
4.評価
作製したアスファルト組成物を160mLのアルミ缶に約150g入れ、175℃のオーブンにて1日間又は7日間貯蔵した。貯蔵後、アスファルト組成物を回収し、JPI-5S-27-86「アスファルト被膜のはく離性試験方法」に準じた以下の試験によって、貯蔵日数が0日、1日、及び7日のアスファルト組成物の剥離性を評価した。貯蔵日数が0日のアスファルト組成物は、作製した直後のアスファルト組成物とした。
【0054】
まず、6号砕石(硬質砂岩又は石灰岩)を13mmの篩及び10mmの篩を用いて分級し、粒径10~13mmの骨材を準備した。骨材は、水洗してから、150℃に設定した熱風乾燥器中で、一定の重量になるまで乾燥した。乾燥した骨材に、アスファルト組成物の軟化点より80℃高い温度よりも低い温度に加熱したアスファルト組成物を塗布し、骨材の表面をアスファルト組成物で完全に被覆した。骨材100gに対するアスファルト組成物の比率を5.5±0.2gとした。得られたアスファルト被覆サンプルをガラス板上に広げ、80℃の温水に1週間浸漬した。1週間80℃の温水に浸漬させた後、アスファルト組成物が剥離していない部分の面積の割合を測定した。測定結果を表1~3に示す。なお表中の「-」は、未測定であることを意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1~3より、実施例1~17と比較例1~7との比較から、アスファルト組成物がエポキシ基を有するポリオレフィン系共重合体と、カルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤と、を含有することにより、高温で長時間保管された後でも、骨材に対する剥離防止性能を維持することができた。また、実施例1~17と比較例8との比較から、アスファルト組成物がカルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩のうち少なくとも一方を含む添加剤を含有しない場合、高温で長時間保管された後では、骨材に対する剥離防止性能を維持することができなかった。また、実施例1~17と比較例9との比較から、アスファルト組成物がカルボキシル基を有する有機化合物又はその金属塩の代わりに無機酸成分を含有する場合、高温で保管するとゲル化したため、剥離性を評価できず、骨材に対する剥離防止性能を維持することができなかった。