(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241118BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241118BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H01L21/304 622W
B24B41/06 L
B24B7/04 A
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020149877
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165771(JP,A)
【文献】特開2020-009955(JP,A)
【文献】特開2005-294623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 41/06
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成された、又は形成される予定のデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を表面に有する板状の被加工物の該表面とは反対側の裏面を、スピンドルに装着された研削砥石で研削する研削方法であって、
該デバイス領域よりも大きな表面を有する支持部材の該表面を該被加工物の該裏面に固定する固定ステップと、
該被加工物の該表面に保護部材を貼付する貼付ステップと、
該支持部材が固定された該被加工物に貼付されている該保護部材をチャックテーブルで保持する保持ステップと、
該保護部材を介して該被加工物及び該支持部材が該チャックテーブルに保持された状態で、該支持部材の該デバイス領域に対応する領域を該支持部材の該表面とは反対側の裏面から研削して該支持部材を該裏面から該表面まで貫通させることにより、環状の補強部材を形成し、更に、該被加工物の該デバイス領域に対応する領域を該被加工物の該裏面から研削して該デバイス領域に対応する領域を仕上げ厚さまで薄くすることにより、該デバイス領域に対応する薄板部と、該薄板部を囲み該補強部材が固定された厚板部と、を形成する研削ステップと、を含
み、
該固定ステップの前に、複数の該デバイスを該デバイス領域に形成するデバイス形成ステップを更に含むことを特徴とする研削方法。
【請求項2】
該研削ステップの前に、該支持部材の該裏面の全体を研削して該支持部材を薄くする支持部材全体研削ステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を研削する際に用いられる研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量なデバイスチップを実現するために、集積回路等のデバイスが表面側に設けられたウェーハを薄く加工する機会が増えている。例えば、ウェーハの表面をチャックテーブルで保持し、研削ホイールと呼ばれる砥石工具と、チャックテーブルと、をともに回転させて、純水等の液体を供給しながらウェーハの裏面に研削ホイールを押し当てることにより、このウェーハを研削して薄くできる。
【0003】
ところで、上述のような方法でウェーハを薄くすると、このウェーハの剛性は大幅に低下して、後工程でのウェーハの取り扱いが難しくなる。そこで、デバイスが設けられたウェーハの中央側の領域のみを研削し、外周側の領域をそのまま残すことで、研削後のウェーハの剛性をある程度に保つ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような技術でウェーハの外周側の領域の厚さを保ったとしても、研削後のウェーハの剛性を十分に確保できるとは限らない。特に、直径が約300mm(12インチ)以上にもなる大口径のウェーハを薄くする場合には、研削後のウェーハの剛性が不足しがちであった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェーハのような板状の被加工物を研削する際に、研削後の被加工物に高い剛性を付与できる新たな研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、複数のデバイスが形成された、又は形成される予定のデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を表面に有する板状の被加工物の該表面とは反対側の裏面を、スピンドルに装着された研削砥石で研削する研削方法であって、該デバイス領域よりも大きな表面を有する支持部材の該表面を該被加工物の該裏面に固定する固定ステップと、該被加工物の該表面に保護部材を貼付する貼付ステップと、該支持部材が固定された該被加工物に貼付されている該保護部材をチャックテーブルで保持する保持ステップと、該保護部材を介して該被加工物及び該支持部材が該チャックテーブルに保持された状態で、該支持部材の該デバイス領域に対応する領域を該支持部材の該表面とは反対側の裏面から研削して該支持部材を該裏面から該表面まで貫通させることにより、環状の補強部材を形成し、更に、該被加工物の該デバイス領域に対応する領域を該被加工物の該裏面から研削して該デバイス領域に対応する領域を仕上げ厚さまで薄くすることにより、該デバイス領域に対応する薄板部と、該薄板部を囲み該補強部材が固定された厚板部と、を形成する研削ステップと、を含み、該固定ステップの前に、複数の該デバイスを該デバイス領域に形成するデバイス形成ステップを更に含む研削方法が提供される。
【0008】
本発明の一側面において、該研削ステップの前に、該支持部材の該裏面の全体を研削して該支持部材を薄くする支持部材全体研削ステップを更に含むことがある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面にかかる研削方法では、支持部材の表面を被加工物の裏面に固定した上で、支持部材のデバイス領域に対応する領域を支持部材の裏面から研削して環状の補強部材を形成するとともに、被加工物のデバイス領域に対応する領域を被加工物の裏面から研削して、デバイス領域に対応する薄板部と、薄板部を囲み補強部材が固定された厚板部と、を形成するので、研削後の被加工物は、環状の補強部材により補強された状態となる。よって、研削後の被加工物に高い剛性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、被加工物に支持部材が固定される様子を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物に保護部材が貼付される様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、被加工物に貼付されている保護部材がチャックテーブルにより保持される様子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、支持部材が研削される様子を示す断面図である。
【
図5】
図5は、環状の補強部材が形成される様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、被加工物が研削される様子を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1変形例にかかる研削方法において、支持部材の裏面の全体が研削される様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例にかかる研削方法において、被加工物に支持部材が固定される様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の研削方法において、被加工物11に支持部材21が固定される様子を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、円形状の表面(第1面)11aと、表面11aとは反対側の円形状の裏面(第2面)11bと、を含む。
【0012】
この被加工物11の表面11aは、その直径の方向において中央側に位置するデバイス領域11cと、デバイス領域11cを囲む環状の外周余剰領域11dと、に分けられる。デバイス領域11cは、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13(
図2参照)によって、後に、複数の小領域に区画され、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15(
図2参照)が形成される。つまり、このデバイス領域11cは、後に複数のデバイス15が形成される予定の領域である。
【0013】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。
【0014】
本実施形態にかかる研削方法では、まず、上述した被加工物11の裏面11bに、支持部材21を固定する(固定ステップ)。
図1に示すように、支持部材21は、例えば、被加工物11と同様に構成された円盤状のウェーハであり、概ね平坦な円形状の表面(第1面)21aと、表面21aとは反対側の円形状の裏面(第2面)21bと、を含む。つまり、支持部材21は、被加工物11のデバイス領域11cよりも大きな表面21a及び裏面21bを有している。
【0015】
被加工物11に対する支持部材21の固定には、例えば、被加工物11と支持部材21とが接触する領域に熱酸化による酸化膜を形成する酸化膜結合と呼ばれる方法が用いられる。この場合には、被加工物11(裏面11b)と支持部材21(表面11a)とを接触させた状態で、これらを炉に投入し、1000℃以上(例えば、1200℃)で1時間以上(例えば、3時間)の熱処理を行う。これにより、被加工物11と支持部材21との界面に熱酸化による酸化膜を形成し、支持部材21の表面21aを被加工物11の裏面11bに強く固定できる。
【0016】
なお、被加工物11に対する支持部材21の固定には、酸化膜結合以外の方法が用いられても良い。具体的には、例えば、分子間力によって支持部材21(表面21a)を被加工物11(裏面11b)に接合する方法や、樹脂等の接着剤によって支持部材21(表面21a)を被加工物11(裏面11b)に接着する方法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、酸化膜結合に比べて低い温度で支持部材21を被加工物11に固定できる。
【0017】
支持部材21の表面21aを被加工物11の裏面11bに固定した後には、被加工物11の露出した表面11aにIC等のデバイス15を形成する(デバイス形成ステップ)。例えば、フォトリソグラフィやエッチング等の方法を利用することにより、被加工物11の表面11a側を加工してデバイス15を形成できる。なお、この被加工物11に形成されるデバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。
【0018】
被加工物11の表面11aにデバイス15を形成した後には、この被加工物11の表面11aに保護部材を貼付する(貼付ステップ)。
図2は、被加工物11に保護部材31が貼付される様子を示す斜視図である。保護部材31は、代表的には、円形状のテープ(フィルム)、樹脂基板、被加工物11と同種又は異種のウェーハ等であり、被加工物11の表面11aと概ね同じ直径を持つ円形状の表面(第1面)31aと、表面31aとは反対側の円形状の裏面(第2面)31bと、を含む。
【0019】
保護部材31の表面31aには、例えば、被加工物11の表面11aに対する接着力を示す接着層が設けられている。そのため、
図2に示すように、保護部材31の表面31a側を被加工物11の表面11a側に密着させることで、保護部材31は、被加工物11に貼付される。被加工物11の表面11a側に保護部材31を貼付することで、被加工物11や支持部材21を研削する際に被加工物11の表面11a側に加わる衝撃を緩和して、デバイス15等を保護できる。
【0020】
被加工物11の表面11aに保護部材31を貼付した後には、この被加工物11の表面11a側をチャックテーブルにより保持する(保持ステップ)。つまり、被加工物11に貼付されている保護部材31をチャックテーブルにより保持する。
図3は、被加工物11に貼付されている保護部材31がチャックテーブル4により保持される様子を示す断面図である。なお、以下の各工程では、
図3等に示す研削装置2が使用される。
【0021】
研削装置2は、被加工物11を保持できるように構成されたチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属を用いて形成された円盤状の枠体6を含む。枠体6の上面側には、円形状の開口を上端に持つ凹部6aが形成されている。この凹部6aには、セラミックス等を用いて多孔質の円盤状に形成された保持板8が固定されている。
【0022】
保持板8の上面8aは、円錐の側面に相当する形状に構成されており、この上面8aに保護部材31の裏面31bが接触する。保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6bや、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持板8の上面8aに保護部材31の裏面31bを接触させて、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させれば、この保護部材31の裏面31bがチャックテーブル4により吸引される。
【0023】
つまり、支持部材21が固定された状態の被加工物11に貼付されている保護部材31を、チャックテーブル4により保持できる。これにより、
図3に示すように、支持部材21の裏面21bが上方に露出した状態になる。なお、
図3等では、保持板8の上面8aを構成する円錐の側面の形状が誇張されているが、実際には、上面8aの最も高い点と最も低い点との高さの差(高低差)が10μm~30μm程度である。
【0024】
枠体6の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル4は、この回転駆動源が生じる力によって、円錐の頂点に相当する上面8aの頂点8bが回転の中心となるように、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。また、枠体6は、移動機構(不図示)によって支持されており、チャックテーブル4は、この移動機構が生じる力によって、水平方向に移動する。
【0025】
被加工物11に貼付されている保護部材31をチャックテーブル4で保持した後には、例えば、鉛直方向から見て被加工物11のデバイス領域11cに重なる支持部材21の領域を研削し、被加工物11に固定された状態の環状の補強部材を形成する(支持部材研削ステップ)。
図4は、支持部材21が研削される様子を示す断面図である。なお、
図4では、説明の便宜上、一部の要素が側面により示されている。
【0026】
図4等に示すように、研削装置2のチャックテーブル4の上方には、研削ユニット(第1研削ユニット)10が配置されている。研削ユニット10は、例えば、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を含む。スピンドルハウジングの内側の空間には、柱状のスピンドル12が収容されている。
【0027】
スピンドル12の下端部には、例えば、被加工物11や支持部材21よりも直径の小さな円盤状のマウント14が設けられている。マウント14の外周部には、このマウント14を厚さの方向に貫通する複数の穴(不図示)が形成されており、各穴には、ボルト16等が挿入される。マウント14の下面には、このマウント14と概ね直径が等しい円盤状の研削ホイール18が、ボルト16等によって固定されている。
【0028】
研削ホイール18は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属を用いて形成された円盤状のホイール基台20を含む。ホイール基台20の下面には、このホイール基台20の周方向に沿って複数の研削砥石22が固定されている。スピンドル12の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール18は、この回転駆動源が生じる力によって、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。
【0029】
研削ホイール18の傍、又は研削ホイール18の内部には、研削砥石22等に対して研削用の液体(代表的には、水)を供給できるように構成されたノズル(不図示)が設けられている。スピンドルハウジングは、例えば、移動機構(不図示)によって支持されており、研削ユニット10は、この移動機構が生じる力によって、鉛直方向に移動する。
【0030】
支持部材21を研削する際には、まず、チャックテーブル4を研削ユニット10の直下に移動させる。具体的には、複数の研削砥石22の全てがデバイス領域11cの直上に配置されるように、チャックテーブル4を移動させる。また、研削ホイール18の直径の方向において最も外側に位置する研削砥石22の端部のいずれかが、デバイス領域11cと外周余剰領域11dとの境界より僅かに内側の位置の直上に配置されるように、チャックテーブル4を移動させる。
【0031】
そして、
図4に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール18とをそれぞれ回転させて、ノズルから液体を供給しながら研削ユニット10(スピンドル12、研削ホイール18)を下降させる。研削ユニット10の下降の速度は、支持部材21に対して研削砥石22が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、支持部材21のデバイス領域11cに対応する領域を裏面21bから研削できる。
【0032】
より具体的には、チャックテーブル4の回転数を、100rpm~600rpm、代表的には、300rpmに設定し、研削ホイール18の回転数を、1000rpm~7000rpm、代表的には、4000rpmに設定し、研削ユニット10の下降の速度を、0.2μm/s~10μm/s、代表的には、0.6μm/sに設定すると良い。これにより、支持部材21を適切に研削できる。
【0033】
支持部材21の研削は、この支持部材21が裏面21bから表面21aまで貫通されて環状の補強部材が完成するまで続けられる。
図5は、環状の補強部材23が形成される様子を示す断面図である。なお、
図5では、説明の便宜上、一部の要素が側面により示されている。
【0034】
図5に示すように、環状の補強部材23は、支持部材21のデバイス領域11cに対応する領域が除去されてなる貫通穴23aを有している。つまり、貫通穴23aは、支持部材21のデバイス領域11cに対応する位置に形成される。よって、この支持部材21の研削によって、被加工物11の外周余剰領域11dの裏面11b側に固定された状態の環状の補強部材23が形成される。
【0035】
支持部材21の研削が終了した後には、引き続いて、被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域を裏面11bから研削して仕上げ厚さまで薄くする(被加工物研削ステップ)。
図6は、被加工物11が研削される様子を示す断面図である。なお、
図6では、説明の便宜上、一部の要素が側面により示されている。
【0036】
被加工物11を研削する際には、支持部材21を研削する場合と同様に、チャックテーブル4と研削ホイール18とをそれぞれ回転させた状態で、ノズルから液体を供給しながら研削ユニット10(スピンドル12、研削ホイール18)を下降させる。研削ユニット10の下降の速度は、被加工物11に対して研削砥石22が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域を裏面11bから研削できる。
【0037】
なお、本実施形態では、この被加工物11の研削と、上述した支持部材21の研削と、が同等の条件で連続的に行われる。つまり、被加工物11を研削する際にも、チャックテーブル4の回転数を、100rpm~600rpm、代表的には、300rpmに設定し、研削ホイール18の回転数を、1000rpm~7000rpm、代表的には、4000rpmに設定し、研削ユニット10の下降の速度を、0.2μm/s~10μm/s、代表的には、0.6μm/sに設定すると良い。
【0038】
なお、上述した研削の条件を途中で変更することもできる。例えば、被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域がある程度に薄くなった段階で、研削ユニット10の下降の速度を下げることにより、研削による被加工物11へのダメージを軽減できる。この場合には、研削ユニット10の下降の速度を、0.1μm/s~0.5μm/s、代表的には、0.3μm/sに設定すると良い。
【0039】
被加工物11の研削は、この被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域が仕上げ厚さまで薄くなり、デバイス領域11cに対応する薄板部11eと、薄板部11eを囲み環状の補強部材23が固定された厚板部11fと、が完成するまで続けられる。被加工物11の研削が終了すると、本実施形態の研削方法も終了する。
【0040】
以上のように、本実施形態の研削方法では、支持部材21の表面21aを被加工物11の裏面11bに固定した上で、支持部材21のデバイス領域11cに対応する領域を支持部材21の裏面21bから研削して環状の補強部材23を形成するとともに、被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域を被加工物11の裏面11bから研削して、デバイス領域11cに対応する薄板部11eと、薄板部11eを囲み補強部材23が固定された厚板部11fと、を形成するので、研削後の被加工物11は、環状の補強部材23により補強された状態となる。よって、研削後の被加工物11に高い剛性を付与できる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、支持部材21の研削(支持部材研削ステップ)と、被加工物11の研削(被加工物研削ステップ)と、を同等の条件で連続的に行っているが、支持部材21の研削(支持部材研削ステップ)と、被加工物11の研削(被加工物研削ステップ)と、を異なる条件で断続的に行っても良い。
【0042】
また、支持部材21や被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域を研削する前に、支持部材21の裏面21bの全体を研削して支持部材21を全体的に薄くしても良い(支持部材全体研削ステップ)。
図7は、変形例にかかる研削方法において、支持部材21の裏面21bの全体が研削される様子を示す断面図である。なお、
図7では、説明の便宜上、一部の要素が側面により示されている。
【0043】
変形例にかかる研削方法では、被加工物11の表面11a側をチャックテーブル4により保持した後、支持部材21のデバイス領域11cに対応する領域を研削する前に、支持部材21の裏面21bの全体を研削する。この変形例にかかる研削方法で使用される研削装置2は、
図7に示すように、研削ユニット(第1研削ユニット)10とは別の研削ユニット(第2研削ユニット)24をチャックテーブル4の上方に備えている。
【0044】
研削ユニット24の基本的な構造は、研削ユニット10と同じである。すなわち、研削ユニット24は、例えば、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を含む。スピンドルハウジングの内側の空間には、柱状のスピンドル26が収容されている。スピンドル26の下端部には、例えば、被加工物11や支持部材21よりも直径の大きな円盤状のマウント28が設けられている。
【0045】
マウント28の外周部には、このマウント28を貫通する複数の穴(不図示)が形成されており、各穴には、ボルト30等が挿入される。マウント28の下面には、このマウント28と概ね直径が等しい円盤状の研削ホイール32が、マウント28の穴に挿入されたボルト30等によって固定されている。
【0046】
研削ホイール32は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属を用いて形成されたホイール基台34を含む。ホイール基台34の下面には、このホイール基台34の周方向に沿って複数の研削砥石36が固定されている。スピンドル26の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール32は、この回転駆動源が生じる力によって、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。
【0047】
研削ホイール32の傍、又は研削ホイール32の内部には、研削砥石36等に対して研削用の液体(代表的には、水)を供給できるように構成されたノズル(不図示)が設けられている。スピンドルハウジングは、例えば、移動機構(不図示)によって支持されており、研削ユニット24は、この移動機構が生じる力によって、鉛直方向に移動する。
【0048】
支持部材21の裏面21bの全体を研削する際には、まず、チャックテーブル4を研削ユニット24の直下に移動させる。そして、
図7に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール32とをそれぞれ回転させて、ノズルから液体を供給しながら研削ユニット24(スピンドル26、研削ホイール32)を下降させる。研削ユニット24の下降の速度は、支持部材21に対して研削砥石36が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、支持部材21の裏面21bの全体を研削できる。
【0049】
より具体的には、チャックテーブル4の回転数を100rpm~600rpm、代表的には、300rpmに設定し、研削ホイール32の回転数を1000rpm~7000rpm、代表的には、4000rpmに設定し、研削ユニット24の下降の速度を0.2μm/s~10μm/s、代表的には、0.4μm/sに設定すると良い。
【0050】
これにより、支持部材21の全体を適切に研削できる。なお、研削ユニット24による支持部材21の研削は、支持部材21が適切な厚さに薄くなるまで続けられる。支持部材21の全体を研削した後には、支持部材21や被加工物11のデバイス領域11cに対応する領域を上述した研削ユニット10で研削すれば良い。
【0051】
また、被加工物11に支持部材21を固定する前に、複数のデバイス15をデバイス領域11cに形成することもできる。この場合には、複数のデバイス15が形成された状態の被加工物11が支持部材21に固定されることになる。
図8は、第2変形例にかかる研削方法において、被加工物11に支持部材21が固定される様子を示す斜視図である。
【0052】
第2変形例にかかる研削方法では、被加工物11にデバイス15を形成してから支持部材21を固定する。よって、高温での熱処理が必要な酸化膜結合等の方法を用いると、デバイス15が破損する可能性も高くなる。したがって、この第2変形例にかかる研削方法では、分子間力によって支持部材21(表面21a)を被加工物11(裏面11b)に接合する方法や、樹脂等の接着剤によって支持部材21(表面21a)を被加工物11(裏面11b)に接着する方法等を用いることが望ましい。
【0053】
なお、被加工物11に支持部材21を固定した後には、上述した実施形態や第1変形例と同様の手順で被加工物11を研削すれば良い。
【0054】
その他、上述した実施形態及び各変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0055】
11 :被加工物
11a :表面(第1面)
11b :裏面(第2面)
11c :デバイス領域
11d :外周余剰領域
11e :薄板部
11f :厚板部
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
21 :支持部材
21a :表面(第1面)
21b :裏面(第2面)
23 :補強部材
23a :貫通穴
31 :保護部材
31a :表面(第1面)
31b :裏面(第2面)
2 :研削装置
4 :チャックテーブル
6 :枠体
6a :凹部
6b :流路
8 :保持板
8a :上面
8b :頂点
10 :研削ユニット(第1研削ユニット)
12 :スピンドル
14 :マウント
16 :ボルト
18 :研削ホイール
20 :ホイール基台
22 :研削砥石
24 :研削ユニット(第2研削ユニット)
26 :スピンドル
28 :マウント
30 :ボルト
32 :研削ホイール
34 :ホイール基台
36 :研削砥石