(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】研削ホイール収容ケース
(51)【国際特許分類】
B23Q 13/00 20060101AFI20241118BHJP
B24D 7/00 20060101ALI20241118BHJP
B25H 3/02 20060101ALI20241118BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B23Q13/00
B24D7/00 Z
B25H3/02
B65D85/00 321
(21)【出願番号】P 2021076520
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
(72)【発明者】
【氏名】清野 敦志
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064686(JP,A)
【文献】特開2010-247857(JP,A)
【文献】特開2009-095908(JP,A)
【文献】特開2007-217030(JP,A)
【文献】特開2002-087474(JP,A)
【文献】実開平04-070483(JP,U)
【文献】実開昭54-155698(JP,U)
【文献】実公昭49-001520(JP,Y1)
【文献】実公昭46-003435(JP,Y1)
【文献】米国特許第05018315(US,A)
【文献】中国実用新案第213796441(CN,U)
【文献】中国実用新案第211491445(CN,U)
【文献】中国実用新案第211491444(CN,U)
【文献】中国実用新案第208645273(CN,U)
【文献】中国実用新案第207344411(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
B24D 3/00-99/00
B25H 1/00-5/00
B65D 21/02
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に形成された開口部を有する環状のホイール基台と、該ホイール基台の一方の面に環状に配設された砥石と、を備えた研削ホイールを収容する研削ホイール収容ケースであって、
本体と、蓋体と、を有し、
該本体は、
該ホイール基台の他方の面が載置される底板部と、
該底板部の外周に立設された筒状の本体外壁部と、
該本体外壁部の上部に形成された係止部と、を備え、
該蓋体は、
該係止部に係止する被係止部が下端に形成された筒状の蓋体外壁部と、
エアーが通る連通口が中央に設けられ、筒状の該蓋体外壁部の上端を塞ぐ蓋部と、を備え、
該本体外壁部と、該蓋体外壁部と、該蓋部と、のうち一つ以上に、該連通口を通るエアーの通過経路となる開口が形成され、
該係止部と、該被係止部と、を係止することで、該本体及び該蓋体に囲まれたホイール収容空間を内部に形成できることを特徴とする研削ホイール収容ケース。
【請求項2】
該蓋部の該連通口には、エアー供給源またはエアー吸引源を接続可能であることを特徴とする請求項1に記載の研削ホイール収容ケース。
【請求項3】
該連通口を通るエアーの進行経路を該本体外壁部及び該蓋体外壁部に向かって放射状に分散させる分散部を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研削ホイール収容ケース。
【請求項4】
該本体の該底板部の中央に、開閉可能な開閉口を更に備え、
他の研削ホイール収容ケースの上に重ね置かれたときに該開閉口が開き、該開閉口が該他の研削ホイール収容ケースの連通口と連通
し、
他の研削ホイール収容ケースの上に重ね置かれないときに該開閉口が少なくとも部分的に閉塞されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の研削ホイール収容ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部に形成された開口部を有するホイール基台と、該ホイール基台に環状に配設された砥石と、を備える研削ホイールを収容する研削ホイール収容ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を一方の面側から研削して該被加工物を所望の厚さに薄化する研削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。研削装置は、概ね鉛直方向に沿ったスピンドルと、スピンドルの下端に固定されたホイールマウントと、スピンドルの上端に接続された回転駆動源と、を備える。このホイールマウントには、研削ホイールが装着される。
【0003】
研削ホイールは、アルミニウムで形成された円環状のホイール基台と、ホイール基台の底面に環状に配設された砥石と、により構成される。ホイールマウントの底面にホイール基台の上面を接触させて該ホイールマウントに該ホイール基台を固定させると、研削ホイールが研削装置に固定される。研削装置では、回転駆動源を作動させてスピンドルを回転させることで研削ホイールを回転させ、環状軌道上を移動する研削砥石を被加工物の被加工面に接触させることで該被加工物の研削が実施される。
【0004】
研削ホイールには複数の種別が存在し、研削装置では被加工物や加工条件に合う種別の研削ホイールがホイールマウントに装着される。研削ホイールは、ホイールマウントに装着されていないときには、研削ホイール収容ケースに収容される(例えば、特許文献2参照)。研削ホイール収容ケースは、収容される研削ホイールの砥石を破損しないように、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-84930号公報
【文献】特開2001-158492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削装置で被加工物を研削する間、研削中に発生する研削屑や加工熱を取り除くために、研削ホイールや被加工物に純水等の研削水が供給される。そのため、研削装置から取り外された研削ホイールは、研削水で濡れている。濡れた研削ホイールを十分に乾燥させずに研削ホイール収容ケースに収容すると、研削水によるホイール基台の腐食が進行する。
【0007】
研削ホイール収容ケースの内部で腐食が進行した研削ホイールを再び研削装置に装着しようとすると、腐食による研削ホイールの膨張、収縮、及び変質により取り付け不良が生じることがある。また、被加工物を研削している間に腐食部が研削ホイールから脱落して砥石と被加工物の間に入り込み、スクラッチが生じて被加工物が破損することもある。しかしながら、濡れた研削ホイールを十分乾燥させてから研削ホイール収容ケースに収容するのでは、待機時間が生じるとともに手間が増えるため問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、収容された研削ホイールを乾燥させて付着していた水分を除去できる研削ホイール収容ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、中央部に形成された開口部を有する環状のホイール基台と、該ホイール基台の一方の面に環状に配設された砥石と、を備えた研削ホイールを収容する研削ホイール収容ケースであって、本体と、蓋体と、を有し、該本体は、該ホイール基台の他方の面が載置される底板部と、該底板部の外周に立設された筒状の本体外壁部と、該本体外壁部の上部に形成された係止部と、を備え、該蓋体は、該係止部に係止する被係止部が下端に形成された筒状の蓋体外壁部と、エアーが通る連通口が中央に設けられ、筒状の該蓋体外壁部の上端を塞ぐ蓋部と、を備え、該本体外壁部と、該蓋体外壁部と、該蓋部と、のうち一つ以上に、該連通口を通るエアーの通過経路となる開口が形成され、該係止部と、該被係止部と、を係止することで、該本体及び該蓋体に囲まれたホイール収容空間を内部に形成できることを特徴とする研削ホイール収容ケースが提供される。
【0010】
好ましくは、該蓋部の該連通口には、エアー供給源またはエアー吸引源を接続可能である。
【0011】
また、好ましくは、該連通口を通るエアーの進行経路を該本体外壁部及び該蓋体外壁部に向かって放射状に分散させる分散部を更に備える。
【0012】
また、好ましくは、該本体の該底板部の中央に、開閉可能な開閉口を更に備え、他の研削ホイール収容ケースの上に重ね置かれたときに該開閉口が開き、該開閉口が該他の研削ホイール収容ケースの連通口と連通し、他の研削ホイール収容ケースの上に重ね置かれないときに該開閉口が少なくとも部分的に閉塞される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様にかかる研削ホイール収容ケースは、本体と、蓋体と、を有する。そして、本体は、該ホイール基台の他方の面が載置される底板部と、該底面の外周に立設された筒状の本体外壁部と、該本体外壁部の上部に形成された係止部と、を備える。該蓋体は、該係止部に係止する被係止部が下端に形成された筒状の蓋体外壁部と、エアーが通る連通口が中央に設けられ、筒状の該蓋体外壁部の上端を塞ぐ蓋部と、を備える。
【0014】
そして、該本体外壁部と、該蓋体外壁部と、該蓋部と、のうち一つ以上に、該連通口を通るエアーの通過経路となる開口が形成され、該係止部と、該被係止部と、を係止することで、該本体及び該蓋体に囲まれたホイール収容空間を内部に形成できる。本発明の一態様に係る研削ホイール収容ケースでは、内部の収容空間に研削ホイールを収容できる。
【0015】
そして、連通口にエアー吸引源またはエアー供給源を接続すると、この収容空間にエアーが流れる。すなわち、連通口と、収容空間と、開口と、を通過経路とするエアーの流れが形成され、このエアーの流れにより研削ホイールに付着した水分が除去され該研削ホイールが乾燥される。そのため、収容された該研削ホイールは、水分により腐食しない。
【0016】
したがって、本発明の一態様によると、収容された研削ホイールを乾燥させて付着していた水分を除去できる研削ホイール収容ケースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】研削ホイールで被加工物を研削する様子を模式的に示す斜視図である。
【
図2】研削ホイール収容ケースを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、研削ホイール収容ケースの蓋体を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、研削ホイール収容ケースの本体を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、蓋体を模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、本体を模式的に示す断面図であり、
図4(C)は、研削ホイールを収容する研削ホイール収容ケースを模式的に示す断面図である。
【
図5】2つの研削ホイール収容ケースを重ねる様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】4つの重ねられた研削ホイール収容ケースを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る研削ホイール収容ケースに収容される研削ホイールについて説明する。
図1は、研削ホイール14で被加工物1を研削する様子を模式的に示す斜視図である。研削ホイール14は、研削装置に装着されて使用される。
【0019】
研削装置2で研削される被加工物1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体材料から形成される略円板状のウェーハである。または、被加工物1は、サファイア、石英、ガラス、セラミックス等の材料からなる板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0020】
例えば、被加工物1の表面には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスが形成されている。該被加工物1には、デバイス間に分割予定ラインが設定される。そして、研削装置2で被加工物1を裏面側から研削して該被加工物1を薄化し、被加工物1を分割予定ラインに沿って分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0021】
研削装置2は、保持面4a上に載せられた被加工物1を吸引保持するチャックテーブル4と、該チャックテーブル4の上方に昇降可能に設けられた研削ユニット6と、を備える。チャックテーブル4は、被加工物1と同等の径の多孔質部材を有する。該多孔質部材は、チャックテーブル4の上面の中央に形成された凹部に収容されており、この多孔質部材の上面が保持面4aとなる。
【0022】
チャックテーブル4は、一端が多孔質部材の底面に達する吸引路を内部に有し、この吸引路の他端に吸引源が接続されている。そして、被加工物1を保持面4a上に載せ、該吸引源を作動させて吸引路及び多孔質部材を介して負圧を被加工物1に作用させると、被加工物1がチャックテーブル4で吸引保持される。
【0023】
研削ユニット6は、チャックテーブル4の保持面4aに概ね垂直なスピンドル8を備え、スピンドル8の下端に円板状のホイールマウント10が固定されている。スピンドル8の上端には図示しないモーター等の回転駆動源が接続されており、この回転駆動源を作動させると、スピンドル8が回転する。
【0024】
研削ホイール14は、ホイールマウント10の底面に固定される。研削ホイール14は、中央部に形成された開口部を有する環状のホイール基台16と、ホイール基台16の一方の面(底面)に環状に配設された砥石18と、を備える。ホイール基台16は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。研削ホイール14がホイールマウント10に装着される際、ホイール基台16の他方の面(上面)がホイールマウント10の底面に対面する。
【0025】
ホイールマウント10には、ボルト等の固定具12がスピンドル8に沿った方向に通される複数の貫通孔が設けられており、ホイール基台16の上面にはホイールマウント10に形成された貫通孔に対応する配置で固定穴(不図示)が形成されている。ホイール基台16の上面をホイールマウント10の底面に当て、固定具12をホイールマウント10の貫通孔に通してホイール基台16の固定穴に締め込むと、研削ホイール14を研削ユニット6に固定できる。
【0026】
研削装置2で被加工物1を研削する際には、チャックテーブル4を保持面4aに略垂直な回転軸の周りに回転させるとともに、研削ユニット6のスピンドル8の上端に接続された回転駆動源を作動させてスピンドル8を回転させる。すると、研削ホイール14の砥石18が環状軌道に沿って回転移動する。その後、研削ユニット6を下降させると、砥石18の底面が被加工物1の上面に接触し、被加工物1が研削される。
【0027】
砥石18は、樹脂材料等で形成された結合材と、該結合材中に分散固定されたダイヤモンド等の砥粒と、により構成される。被加工物1の研削が進行する間、結合材が適度に消耗し、新しい砥粒が次々に砥石18の底面に露出するため、研削ホイール14の研削能力が維持される。そして、砥石18の消耗量が所定の程度に達すると、研削ホイール14が交換される。
【0028】
研削ホイール14には様々な種別が存在し、研削装置2では被加工物1の研削に適した種別の研削ホイール14が選択されホイールマウント10に固定される。研削装置2で新たな種別の被加工物1の研削を開始する際には、それまでホイールマウント10に固定されていた研削ホイール14が取り外され、その後に実施される研削に適した種別の研削ホイール14がホイールマウント10に固定される。このとき、古い研削ホイール14の砥石18が完全に消耗していない場合、再使用に備えて該研削ホイール14が保管される。
【0029】
ホイールマウント10から取り外された研削ホイール14は、研削ホイール収容ケースに収容される。研削ホイール収容ケースは、収容される研削ホイール14の砥石18を破損しないように、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成される。
【0030】
ここで、研削装置2で被加工物1を研削する際には、研削中に発生する研削屑や加工熱を取り除くために、研削ホイール14や被加工物1に純水等の研削水が供給される。そのため、研削装置2から取り外された研削ホイール14は、研削水で濡れている。濡れた研削ホイール14を十分に乾燥させずに従来の研削ホイール収容ケースに収容すると、研削水によるホイール基台16の腐食が進行する。
【0031】
研削ホイール収容ケースの内部で腐食が進行した研削ホイール14を再び研削装置2に装着しようとすると、腐食による研削ホイール14の膨張、収縮、及び変質により取り付け不良が生じることがある。また、被加工物1を研削している間に腐食部が研削ホイール14から脱落して砥石18と被加工物1の間に入り込み、スクラッチが生じて被加工物1が破損することもある。
【0032】
そこで、本実施形態に係る研削ホイール収容ケースでは、内部の収容空間に収容された研削ホイール14の乾燥が可能であり、研削ホイール14に付着した水分の除去を可能にした。以下、本実施形態に係るブレード収容ケースについて説明する。
図2は、本実施形態に係る研削ホイール収容ケース20を模式的に示す斜視図である。研削ホイール収容ケース20は、主に本体22と、蓋体42と、により構成され、本体22及び蓋体42は互いに分離可能である。
【0033】
図3(A)は、蓋体42を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、本体22を模式的に示す斜視図である。
図4(A)は、蓋体42を模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、本体22を模式的に示す断面図である。
図4(C)は、研削ホイール14を収容する研削ホイール収容ケース20を模式的に示す断面図である。
【0034】
図3(B)等に示す通り、本体22は、底板部24と、底板部24の外周に立設された筒状の本体外壁部28と、本体外壁部28の上部に形成された係止部32と、を備える。
図4(C)等に示す通り、底板部24には、研削ホイール収容ケース20に収容される研削ホイール14のホイール基台16の砥石18が配設された一方の面(底面)16bとは反対側の他方の面(上面)16aが接触する。
【0035】
底板部24の上面には、ホイール基台16の他方の面16aの形状に対応した形状の環状凹部26が形成されていてもよい。この場合、研削ホイール14が研削ホイール収容ケース20に収容される際に環状凹部26にホイール基台16が収められるため、運搬される研削ホイール収容ケース20の内部で研削ホイール14が大きく動かない。なお、環状凹部26は、ホイール基台16の他方の面16a側の内径以下の内径を有し、他方の面16a側の外径以上の外径を有し、ホイール基台16の厚みよりも小さい深さを有することが好ましい。
【0036】
底板部24の上面の中央部には、円筒状の支持体34が立設されている。支持体34は、研削ホイール収容ケース20の内部の空間の高さに対応する高さを有し、上面に開口40が露出した中空構造である。支持体34の側面36には、該支持体34の内部空間に通じた複数の貫通孔38が設けられている。この支持体34の機能については後述する。
【0037】
本体外壁部28の上部には、係止部32が形成される。係止部32は、本体22の上に載せられた蓋体42の後述の被係止部46と係合して蓋体42を係止する構造を有する。この係止部32の構造及び機能について、詳細は後述する。
【0038】
蓋体42は、本体22の係止部32に係止する被係止部46が下端に形成された筒状の蓋体外壁部44と、筒状の蓋体外壁部44の上端を塞ぐ蓋部50と、を備える。
【0039】
筒状の蓋体外壁部44は、本体22の本体外壁部28と同じ形状及び大きさの平面形状を備える。例えば、本体22の本体外壁部28と、蓋体42の蓋体外壁部44と、の平面形状は、同じ大きさの正六角形状である。ただし、これらの平面形状はこれに限定されない。研削ホイール収容ケース20の内部空間に必要な高さが確保されるように、蓋体外壁部44の高さ及び本体外壁部28の高さは、それぞれ、両者を足し合わせたときに該内部空間の高さに相当するように決定される。
【0040】
筒状の蓋体外壁部44の下端に設けられた被係止部46は、本体22の本体外壁部28の上端に設けられた係止部32に係止される構造を有する。係止部32と、被係止部46と、を係止することで、本体22及び蓋体42に囲まれたホイール収容空間60(
図4(C)参照)を内部に形成できる。次に、係止部32及び被係止部46の構造の一例を説明する。
【0041】
本体22の係止部32は、本体外壁部28の上端に全周にわたり設けられた第1の突出部32aと、該本体外壁部28の上端において第1の突出部32aに隣接して該第1の突出部32aを外側から囲む第1の陥没部32bと、により構成される。蓋体42の被係止部46は、蓋体外壁部44の全周にわたり下端に設けられた第2の陥没部46aと、蓋体外壁部44の下端において第2の陥没部46aに隣接して第2の陥没部46aを外側から囲む第2の突出部46bと、により構成される。
【0042】
ここで、第1の突出部32aの幅と、第2の陥没部46aと、の幅は略同一であり、第1の陥没部32bの幅と、第2の突出部46bと、の幅は略同一である。蓋体42を本体22に重ねたとき、第1の突出部32aに第2の陥没部46aが接触し、第1の陥没部32bに第2の突出部46bが接触する。
【0043】
このとき、蓋体42に横方向に向いた力を印加すると、蓋体42の被係止部46の第2の陥没部46a及び第2の突出部46bを接続する壁面が、本体22の係止部32の第1の突出部32a及び第1の陥没部32bを接続する壁面に衝突する。そのため、蓋体42の横方向への移動が制限され、蓋体42が本体22からずれ落ちることがない。このように、本体22に蓋体42を載せると係止部32と、被係止部46と、が係止され本体22及び蓋体42が一体化される。
【0044】
ここで、係止部32と、被係止部46と、の構造及び機能に制限はなく、互いの構造が入れ替えられてもよい。説明の便宜のために係止部32及び被係止部46で呼称を区別しているが、係止に関わる力をどちらがどちらに作用させるかについて区別はなく、両者が互いに該力を作用させてもよい。
【0045】
本体22の本体外壁部28には、本体22の内外に連通する単数または複数の通気口30が形成されている。また、蓋体42の蓋体外壁部44には、蓋体42の内外に連通する単数または複数の通気口48が形成されている。本体22が蓋体42と係止され、研削ホイール収容ケース20が閉じられたとき、この通気口30,48を通して研削ホイール収容ケース20の内外にエアーが移動できる。すなわち、通気口30,48は、エアーの通過経路となる。
【0046】
研削ホイール収容ケース20の内部空間を換気しやすくするためには通気口30,48の総面積が大きいことが好ましいが、この総面積が大きくなりすぎると研削ホイール収容ケース20の機械的強度が低下してしまう。そのため、研削ホイール収容ケース20の必要な機械的強度を確保できる範囲で通気口30,48の数、大きさ、形状、及び配置等が決定されるとよい。
【0047】
なお、蓋体42の蓋部50にも通気口が設けられてもよい。例えば、本体外壁部28と、蓋体外壁部44と、蓋部50と、のうち一つ以上に、エアーの通過経路となる通気口が形成されるとよい。また、蓋体42の蓋部50の中央には、エアーが通る連通口52が設けられる。エアーは、連通口52を通じて蓋体42の内外に移動できる。
【0048】
蓋体42の中央には該蓋体42を上下に貫通する連通口52が形成されている。そして、蓋体42を本体22に載せて研削ホイール収容ケース20が形成されたとき、蓋体42の底面の中央部は支持体34の上面に接触し、該蓋体42が支持体34に支持される。このとき、連通口52と、本体22の支持体34の開口40と、が接続される。これにより、連通口52を一端とし、通気口30,48を他端とし、支持体34の開口40、貫通孔38、及びホイール収容空間60を経路とする通気路が形成される。
【0049】
図4(C)は、研削ホイール14を収容した研削ホイール収容ケース20を模式的に示す断面図である。研削ホイール収容ケース20に研削ホイール14を収容する際には、まず、蓋体42を持ち上げて本体22から分離する。そして、ホイール基台16の砥石18が配設された一方の面(底面)16bを上方に向け、他方の面(上面)16aを下方に向けた状態で研削ホイール14を本体22の内部に降ろし、環状凹部26にホイール基台16を収容する。
【0050】
その後、蓋体42を本体22に重ね、係止部32及び被係止部46を係止させ、蓋体42及び本体22を一体化させる。すると、本体22及び蓋体42に囲まれたホイール収容空間60が研削ホイール収容ケース20の内部に形成され、研削ホイール収容ケース20のホイール収容空間60に研削ホイール14が収容される。
【0051】
このとき、蓋体42の蓋部50の連通口52には、可撓性のチューブ等を介してエアー供給源(不図示)またはエアー吸引源(不図示)を接続可能である。例えば、連通口52にエアー供給源を接続して作動させると、連通口52から研削ホイール収容ケース20の内部にエアーが供給され、ホイール収容空間60をエアーが通過する。
【0052】
より詳細には、エアー供給源から連通口52に供給されたエアーは、支持体34の開口40を通じて支持体34の内部空間に進み、その後、支持体34の側面36に形成された貫通孔38を通じてホイール収容空間60に進む。そして、エアーが研削ホイール14に接触しながら本体外壁部28及び蓋体外壁部44に向かい、通気口30,48を通して研削ホイール収容ケース20の外部に進む。
【0053】
この過程でエアーが研削ホイール14を乾燥させ、研削ホイール14に付着した水を除去する。また、蓋体42の蓋部50の連通口52にエアー吸引源が接続される場合、エアーの進行経路が逆となるが、研削ホイール14は同様に乾燥される。連通口52にエアー吸引源が接続される場合、研削ホイール14に付着していた水分を取り込んだエアーが研削ホイール収容ケース20の外部に放出されない。そのため、研削ホイール収容ケース20の置かれた環境に予期せぬ影響を与えることもない。
【0054】
このように、本実施形態に係る研削ホイール収容ケース20によると、研削ホイール14を収容させつつ該研削ホイール14を乾燥できる。そのため、研削ホイール14の腐食や該研削ホイール14に付着した水の腐食等を抑制できる。
【0055】
ここで、例えば、研削ホイール収容ケース20が各図に示すように正六角柱形状である場合、研削ホイール収容ケース20の各側面にそれぞれ対向するように複数の貫通孔38が支持体34に形成されているとよい。この場合、連通口52を通るエアーの進行経路が本体外壁部28及び蓋体外壁部44に向かって放射状に分散される。
【0056】
このとき、支持体34がエアーの進行経路を分散させる分散部として機能する。なお、分散部はこれに限定されず、他の形態で研削ホイール収容ケース20に実装されてもよい。研削ホイール収容ケース20に分散部が設けられていると、研削ホイール収容ケース20に収容された研削ホイール14がエアーにより偏りなく乾燥される。
【0057】
なお、本実施形態に係る研削ホイール収容ケースは、縦方向に他の研削ホイール収容ケースが重ね合わせられてもよく、複数の研削ホイール収容ケースの重ね合わせを実現する機構が設けられてもよい。次に、変形例に係る研削ホイール収容ケースについて説明する。
図5は、変形例に係る研削ホイール収容ケース20a,20bを模式的に示す断面図である。なお、上述の研削ホイール収容ケース20から変更のない部分については、説明を省略する。
【0058】
変形例に係る研削ホイール収容ケース20a,20bは、本体22a,22bと、蓋体42a,42bを有する。本体22a,22bの底板部24a,24bの中央には、開閉可能な開閉口56a,56bが形成されている。支持体34a,34bは、開閉口56a,56bの周囲で、底板部24a,24bから立設している。また、蓋体42a,42bの蓋部50a,50bの中央に形成された連通口52a,52bの周囲には、上方に突出した突出部54a,54bが設けられている。
【0059】
例えば、底板部24a,24bの開閉口56a,56bは円形状であり、蓋部50a,50bの突出部54a,54bは円筒形状である。そして、開閉口56a,56bの内径は、突出部54a,54bの外径に対応した大きさである。この場合、第1の研削ホイール収容ケース20aに第2の研削ホイール収容ケース20bを重ね合わせることができる。
【0060】
より詳細には、第1の研削ホイール収容ケース20aの蓋部50aの突出部54aを第2の研削ホイール収容ケース20bの本体22bの開閉口56bに挿入することで両研削ホイール収容ケース20a,20bを重ね合わせられる。突出部54aが開閉口56bに挿入されていると、両研削ホイール収容ケース20a,20bが互いに横方向にずれることがなく、上に載る研削ホイール収容ケース20bが下方に位置する研削ホイール収容ケース20aからずれて落ちることがない。
【0061】
そして、両研削ホイール収容ケース20a,20bを重ね合わせたとき、それぞれの支持体34a,34bの内部空間が接続され、エアーの移動経路が形成される。ここで、研削ホイール収容ケース20a,20bの開閉口56a,56bには、他の研削ホイール収容ケース20a,20bの突出部54a,54bが挿入されていないときに該開閉口56a,56bを閉じる遮蔽部材58a,58bが設けられていてもよい。
【0062】
遮蔽部材58a,58bは、例えば、可撓性を有する樹脂材料やゴムで形成された複数の板状片で構成される。そして、遮蔽部材58a,58bは、開閉口56a,56bに進入する突出部54a,54bにより押されて開かれるとよく、突出部54a,54bが開閉口56a,56bから抜き出されるときに元の形状に戻り開閉口56a,56bを塞ぐとよい。
【0063】
なお、遮蔽部材58a,58bは、開閉口56a,56bを完全に閉塞してエアーの通過を完全に止める必要はなく、遮蔽部材58a,58bを構成する複数の板状片の間に隙間が形成されていてもよい。また、遮蔽部材は、蓋体42a,42bの蓋部50a,50bの連通口52a,52bにも設けられてもよい。
【0064】
変形例に係る研削ホイール収容ケース20a,20bは、2以上の数で互いに重ね合わされてもよい。
図6は、重ね合わされた4つの研削ホイール収容ケース20a,20b,20c,20dを模式的に示す断面図である。それぞれには、研削ホイール14a,14b,14c,14dが収容されている。
図6では、第1の研削ホイール収容ケース20aの遮蔽部材58a以外の遮蔽部材を省略している。
【0065】
第1の研削ホイール収容ケース20aの蓋体42aの上に第2の研削ホイール収容ケース20bの本体22bが載せられ突出部54aが開閉口56bに挿入されたとき、支持体34aの内部空間と支持体34bの内部空間が接続される。第2の研削ホイール収容ケース20bの蓋体42bの上に第3の研削ホイール収容ケース20cの本体22cが載せられ突出部54bが本体22cの開閉口に挿入されたとき、支持体34bの内部空間と支持体34cの内部空間が接続される。
【0066】
そして、第3の研削ホイール収容ケース20cの蓋体42cの上に第4の研削ホイール収容ケース20dの本体22dが載せられ蓋体42cの突出部が本体22dの開閉口に挿入されたとき、支持体34cの内部空間と支持体34dの内部空間が接続される。
【0067】
その後、蓋体42dの突出部54dの内側の連通口52dには、例えば、一端がエアー供給源64に接続されたチューブ状のエアー供給路62が接続される。この状態でエアー供給源64を作動させると、エアーがエアー供給路62を介して連通口52dに供給され、第4の研削ホイール収容ケース20dの支持体34dの内部空間にエアーが進む。
【0068】
そして、支持体34dの内部空間に進むエアーの一部が支持体34dの貫通孔38dからホイール収容空間60dに進み、第4の研削ホイール収容ケース20dの側面からエアーが外部に抜ける。また、ホイール収容空間60dに進まないエアーは、第3の研削ホイール収容ケース20cの支持体34cの内部空間に進む。
【0069】
そして、支持体34cの内部空間に進むエアーの一部が支持体34cの貫通孔38cからホイール収容空間60cに進み、第3の研削ホイール収容ケース20cの側面からエアーが外部に抜ける。また、ホイール収容空間60cに進まないエアーは、第2の研削ホイール収容ケース20bの支持体34bの内部空間に進む。
【0070】
そして、支持体34bの内部空間に進むエアーの一部が支持体34bの貫通孔38bからホイール収容空間60bに進み、第2の研削ホイール収容ケース20bの側面からエアーが外部に抜ける。また、ホイール収容空間60bに進まないエアーは、第1の研削ホイール収容ケース20aの支持体34aの内部空間に進み、支持体34aの貫通孔38aからホイール収容空間60aに進み、第1の研削ホイール収容ケース20aの側面からエアーが外部に抜ける。
【0071】
このように、複数の研削ホイール収容ケース20a,20b,20c,20dを重ねると、これらを横に並べるよりも小さい占有床面積で研削ホイール14a,14b,14c,14dを保管できる。また、一つのエアー供給源64を使用してすべてのホイール収容空間60a,60b,60c,60dにエアーを供給できる。そして、収容されたすべての研削ホイール14a,14b,14c,14dを乾燥できる。
【0072】
なお、エアー供給路62には、エアー供給源64に代えてエアー吸引源が接続されてもよい。この場合、エアーの進行経路が逆となり、各研削ホイール14a,14b,14c,14dに付着していた水分を含むエアーが外部に放出されない。また、エアー供給路62は、第4の研削ホイール収容ケース20dの連通口52dに代えて第1の研削ホイール収容ケース20aの開閉口56aに接続されてもよい。これらの場合においても、各研削ホイール14a,14b,14c,14dをエアーで乾燥できる。
【0073】
例えば、蓋体42aの蓋部50aの突出部54aと同様の形状の突起を研削ホイールの保管場所の床面に設け、この突起の中央に給排気口を設けてもよい。この場合、この突起に第1の研削ホイール収容ケース20aの本体22aの開閉口56aを挿し入れる。すると、研削ホイール14a,14b,14c,14dの所定の位置への載置と、ホイール収容空間60a,60b,60c,60dへのエアー供給源等の接続と、を同時に実施できて作業効率がよい。
【0074】
以上に説明する通り、本実施形態に係る研削ホイール収容ケース20によると、収容された研削ホイール14を乾燥させて付着していた水分を除去しつつ該研削ホイール14を保管できる。そのため、研削ホイール収容ケース20の内部で研削ホイール14の腐食の進行が抑制される。
【0075】
なお、上記実施形態では、水分が付着した再使用可能な研削ホイール14が研削ホイール収容ケース20に収容される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、研削ホイール収容ケース20には、水分が付着していない研削ホイール14が収容されてもよく、新品の研削ホイール14が収容されてもよく、寿命を迎えた再使用不能な研削ホイール14が収容されてもよい。
【0076】
また、本発明の一態様に係る研削ホイール収容ケース20には、エアー供給源64またはエアー吸引源が常時接続されている必要はなく、収容された研削ホイール14を十分に乾燥できた後はエアー供給源64等が切り離されていてもよい。研削ホイール14の乾燥は、例えば、5分間程度の時間でエアーがホイール収容空間60に供給されることで実施可能である。
【0077】
さらに、研削ホイール収容ケース20には、必ずしもエアー供給源64等が接続される必要はない。研削ホイール収容ケース20には通気口30,48や連通口52が形成されており、収容された研削ホイール14に付着した水が蒸発した水蒸気は研削ホイール収容ケース20の外部に抜けるため、研削ホイール14の自然乾燥も可能である。ただし、エアー供給源64等を接続して能動的にホイール収容空間60を換気する方が、研削ホイール14を強力に乾燥できる。
【0078】
また、上記実施形態では、研削ホイール収容ケース20の本体22の底板部24の中央に支持体34が立設される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。支持体34は、蓋体42の蓋部50の中央底面から垂下して設けられてもよい。または、支持体34は、本体22の底板部24から立設した第1の部分と、蓋体42の蓋部50から垂下した第2の部分と、により構成されてもよい。
【0079】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0080】
1 被加工物
2 研削装置
4 チャックテーブル
4a 保持面
6 研削ユニット
8 スピンドル
10 ホイールマウント
12 固定具
14,14a,14b,14c,14d 研削ホイール
16 ホイール基台
16a,16b 面
18 砥石
20,20a,20b,20c,20d 研削ホイール収容ケース
22,22a,22b,22c,22d 本体
24,24a,24b 底板部
26 環状凹部
28 本体外壁部
30,48 通気口
32 係止部
32a,46b 突出部
32b,46a 陥没部
34,34a,34b,34c,34d 支持体
36 側面
38,38a,38b,38c,38d 貫通孔
40 開口
42,42a,42b,42c,42d 蓋体
44 蓋体外壁部
46 被係止部
50,50a,50b 蓋部
52,52a,52b,52d 連通口
54a,54b,54d 突出部
56a,56b 開閉口
58a,58b 遮蔽部材
60,60a,60b,60c,60d ホイール収容空間
62 エアー供給路
64 エアー供給源