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  • 特許-参照画像生成方法及びパターン検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】参照画像生成方法及びパターン検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021090088
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182497
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086590(JP,A)
【文献】特開2006-266747(JP,A)
【文献】特開2007-147475(JP,A)
【文献】特開2004-087820(JP,A)
【文献】特開2006-208084(JP,A)
【文献】特開平08-247738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84-G01N21/958
G01N23/00-G01N23/2276
G01B 9/00-G01B11/30
G01B15/00-G01B15/08
H01L21/64-H01L21/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計データから展開画像を生成する工程と、
表面にパターンが設けられている試料の検査に対応する第1検査パラメータを、過去の検査に対応する第2検査パラメータと比較する工程と、
前記第1検査パラメータの少なくとも一部が、前記第2検査パラメータと一致する場合、表面にパターンが設けられている記試料の検査の第1フィルタ係数として前記過去の検査の第2フィルタ係数を設定する工程と、
前記第2フィルタ係数を用いて、前記展開画像から参照画像を作成する工程と、
を備える、
参照画像生成方法。
【請求項2】
前記第1検査パラメータの前記少なくとも一部が、前記第2検査パラメータと一致しない場合、前記第1フィルタ係数を算出する工程を更に備える、
請求項1に記載の参照画像生成方法。
【請求項3】
前記第1検査パラメータの前記少なくとも一部は、表面にパターンが設けられている記試料に形成された前記パターンの種類及び最小寸法である、
請求項1または2に記載の参照画像生成方法。
【請求項4】
前記第2フィルタ係数を用いて、前記展開画像から作成された前記参照画像と、表面にパターンが設けられている記試料の検査画像との階調値差が、予め設定された閾値以上である場合、前記第1フィルタ係数を算出する工程を更に備える、
請求項1に記載の参照画像生成方法。
【請求項5】
撮像機構と、
設計データから展開画像を生成する展開回路と、
表面にパターンが設けられている試料の検査の第1検査パラメータと、過去の検査の第2検査パラメータとを比較し、前記第1検査パラメータの少なくとも一部が前記第2検査パラメータと一致する場合、表面にパターンが設けられている記試料の検査の第1フィルタ係数として前記過去の検査の第2フィルタ係数を設定する検索回路と、
前記第1検査パラメータの前記少なくとも一部が前記第2検査パラメータと一致しない場合、前記第1フィルタ係数を算出するフィルタ係数生成回路と、
前記検索回路及びフィルタ係数生成回路の少なくとも一方のフィルタ係数を用いて、前記展開画像から参照画像を作成する参照回路と、
前記撮像機構が撮像した表面にパターンが設けられている記試料の検査画像と前記参照画像とを比較する比較回路と
を備える、
パターン検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上に形成されたパターンの検査に用いられる参照画像生成方法及びパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程では、露光装置(「ステッパ―」または「スキャナー」とも呼ばれる)を用いた縮小露光により、回路パターンが半導体基板上に転写される。露光装置では、設計データに基づく原画パターン(以下、「パターン」とも表記する)が形成されたマスク(「レチクル」とも呼ばれる)が用いられる。
【0003】
半導体デバイスの高集積化に伴い、回路パターンの微細化が進んでいる。回路パターンの微細化に伴い、マスクのパターンは、光近接効果補正(OPC:Optical Proximity Correction)等の適用による複雑化が進んでいる。このため、パターン検査装置には、複雑なパターンに対応した高い検査性能が求められる。
【0004】
パターン検査方式の1つとして、パターン検査装置において撮像された検査画像と、設計データに基づく参照画像とを比較するD-DB(Die to Database)方式がある。
【0005】
検査画像のパターンは、マスクのパターンに対して、パターンのコーナーの丸み、パターンの寸法シフト、及びフォーカスずれによるパターンのエッジのぼかし等が生じる。これらの影響により、検査画像と参照画像との比較において擬似欠陥が検出される場合がある。
【0006】
上述のようなパターンの疑似欠陥を低減するため、D-DB方式では、フィルタ係数を用いた演算により、検査画像に合わせ込んだ参照画像が生成される。フィルタ係数は、パターンのコーナー丸め量、寸法シフト量、及びエッジのぼかし量等に基づいて算出される。
【0007】
例えば、特許文献1には、過去に学習に使用した実画像と設計画像とを用いて、参照画像の生成に用いるパラメータを計算する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2006/049243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パターンの複雑化が進むとフィルタ係数の算出時間が長くなる。このため、参照画像の生成時間が長くなる。すなわち、パターン検査のセットアップ時間が長くなり、パターン検査装置の処理能力が低下する。
【0010】
本発明はこうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、パターン検査装置において、過去に生成したフィルタ係数が使用できる場合、フィルタ係数の演算を省略できる参照画像生成方法及びパターン検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、参照画像生成方法は、設計データから展開画像を生成する工程と、表面にパターンが設けられている試料の検査に対応する第1検査パラメータを、過去の検査に対応する第2検査パラメータと比較する工程と、第1検査パラメータの少なくとも一部が、第2検査パラメータと一致する場合、表面にパターンが設けられている試料の検査の第1フィルタ係数として、過去の検査の第2フィルタ係数を設定する工程と、第2フィルタ係数を用いて、展開画像から参照画像を作成する工程と、を含む。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、参照画像生成方法は、第1検査パラメータの少なくとも一部が、第2検査パラメータと一致しない場合、第1フィルタ係数を算出する工程を更に含むことが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、第1検査パラメータの少なくとも一部は、表面にパターンが設けられている試料に形成されたパターンの種類及び最小寸法であることが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、参照画像生成方法は、第2フィルタ係数を用いて、展開画像から作成された参照画像と、表面にパターンが設けられている試料の検査画像との階調値差が、予め設定された閾値以上である場合、第1フィルタ係数を算出する工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、パターン検査装置は、撮像機構と、設計データから展開画像を生成する展開回路と、表面にパターンが設けられている試料の検査の第1検査パラメータと、過去の検査の第2検査パラメータとを比較し、第1検査パラメータの少なくとも一部が、第2検査パラメータと一致する場合、表面にパターンが設けられている試料の検査の第1フィルタ係数として、過去の検査の第2フィルタ係数を設定する検索回路と、第1検査パラメータの少なくとも一部が第2検査パラメータと一致しない場合、第1フィルタ係数を算出するフィルタ係数生成回路と、検索回路及びフィルタ係数生成回路の少なくとも一方のフィルタ係数を用いて、展開画像から参照画像を作成する参照回路と、撮像機構が撮像した表面にパターンが設けられている試料の検査画像と参照画像とを比較する比較回路と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の参照画像生成方法及びパターン検査装置によれば、参照画像の生成時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るパターン検査装置の全体構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るパターン検査工程のフローチャートである。
図3】一実施形態に係る参照画像生成工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0019】
以下では、パターン検査装置が、検査画像として、受光素子(フォトダイオード)を用いた光学画像を撮像する場合について説明する。なお、パターン検査装置は、これに限定されない。パターン検査装置は、検査画像として、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いた電子線画像を撮像してもよい。また、本実施形態では、検査対象となる試料がマスクである場合について説明するが、試料は、ウェハ(半導体基板)、または液晶表示装置などに使用される基板等、表面にパターンが設けられている試料であればよい。
【0020】
1.パターン検査装置の全体構成
まず、図1を参照して、パターン検査装置1の全体構成の一例について説明する。図1は、パターン検査装置1の全体構成を示す図である。なお、図1の例は、マスク2を反射した光(以下、「反射光」と表記する)による光学画像を取得する構成を示しているが、パターン検査装置1はこれに限定されない。パターン検査装置1は、マスク2を透過した光(以下、「透過光」と表記する)による光学画像を取得する構成であってもよい。また、パターン検査装置1は、反射光による光学画像と透過光による光学画像とを取得する構成であってもよい。
【0021】
図1に示すように、パターン検査装置1は、画像取得機構10と制御機構20とを含む。
【0022】
画像取得機構10は、ステージ100、ステージ駆動部101、照明光源102、ビームスプリッタ103、レンズ104及び105、フォトダイオードアレイ106、センサ回路107、レーザ測長システム108、並びにオートローダ109を含む。
【0023】
ステージ100の上には、試料(マスク)2が載置される。ステージ100は、ステージ100の表面に平行なX方向、ステージ100の表面に平行であり且つX方向と交差するY方向に移動可能である。なお、ステージ100は、表面に垂直なZ方向に移動可能であってもよい。また、ステージ100は、Z方向を回転軸として、回転軸周りに回転可能であってもよい。
【0024】
ステージ駆動部101は、ステージ100を、X方向及びY方向に移動させるための駆動機構を有する。ステージ駆動部101は、X軸モータ110及びY軸モータ111を含む。X軸モータ110は、ステージ100をX方向に駆動させる。Y軸モータ111は、ステージ100をY方向に駆動させる。X軸モータ110及びY軸モータ111には、例えばステッピングモータが用いられてもよい。
【0025】
マスク2の検査領域は、例えば、Y方向に沿って複数のストライブ状に仮想的に分割される。ステージ駆動部101は、光が分割された各検査フレーム(ストライプ)を連続的に走査(スキャン)するように、ステージ100の移動を制御する。
【0026】
照明光源102は、検査用の照明光を射出する。
【0027】
ビームスプリッタ103は、照明光源102から射出された照明光をマスク2に向かって反射させる。また、ビームスプリッタ103は、マスク2を反射した反射光を透過させる。
【0028】
レンズ104は、ビームスプリッタ103を反射した照明光をマスク2上に集光させる。また、レンズ104は、マスク2を反射した反射光をビームスプリッタ103に集光させる。
【0029】
レンズ105は、ビームスプリッタ103を透過した反射光を、フォトダイオードアレイ106の上に結像させる。
【0030】
フォトダイオードアレイ106は、結像された光を光電変換して、電気信号を生成する。フォトダイオードアレイ106は、生成した電気信号をセンサ回路107に送信する。より具体的には、フォトダイオードアレイ106は、図示せぬ画像センサを含む。画像センサとしては、例えば、撮像素子としてのCCDカメラを一列に並べたラインセンサが用いられてもよい。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサがあげられる。例えば、TDIセンサによって、連続的に移動しているステージ100上に載置されたマスク2のパターンが撮像される。
【0031】
センサ回路107は、フォトダイオードアレイ106から受信した電気信号をA/D(アナログ/デジタル)変換する。センサ回路107は、A/D変換した電気信号(デジタル信号)に基づいて、光学画像を生成する。そして、センサ回路107は、光学画像を制御機構20の比較回路210に送信する。光学画像は、マスク2のパターンに基づく。光学画像では、撮像領域をXY平面上に分割した各画素の明るさ(輝度)が階調値で表現される。例えば、階調値が8ビットデータで表される場合、各画素の画素値は、0~255の階調値で表される。
【0032】
レーザ測長システム108は、ステージ100のX方向及びY方向における位置(「ステージ位置」とも表記する)を測定する。レーザ測長システム108は、測定したデータ(ステージ位置)を、制御機構20の位置回路211に送信する。
【0033】
オートローダ109には、複数のマスク2がセットされる。オートローダ109は、検査対象のマスク2をステージ100に搬入する。また、オートローダ109は、光学画像の撮像が終了したマスク2をステージ100から搬出させる。
【0034】
制御機構20は、制御計算機200、記憶部201、表示部202、入力部203、通信部204、オートローダ制御回路205、ステージ制御回路206、光源制御回路207、展開回路208、参照回路209、比較回路210、及び位置回路211を含む。これらは、バスラインを介して互いに接続されている。
【0035】
なお、オートローダ制御回路205、ステージ制御回路206、光源制御回路207、展開回路208、参照回路209、比較回路210、及び位置回路211は、制御計算機200が実行するプログラムによって構成されてもよいし、制御計算機200が備えるハードウェアまたはファームウェアによって構成されてもよいし、制御計算機200によって制御される個別の回路によって構成されてもよい。以下では、これらの回路が、制御計算機200によって実行されるプログラムに基づいて、その機能が実現される場合について説明する。
【0036】
制御計算機200は、パターン検査装置1の全体を制御する。より具体的には、制御計算機200は、記憶部201、表示部202、入力部203、通信部204、オートローダ制御回路205、ステージ制御回路206、光源制御回路207、展開回路208、参照回路209、比較回路210、及び位置回路211を制御する。そして、制御計算機200は、画像取得機構10を制御して光学画像を取得する。制御計算機200は、制御機構20を制御して、参照画像を生成する。制御計算機200は、光学画像と参照画像とを比較し、パターンの欠陥等を検出する。制御計算機200は、例えば、図示せぬCPU(Central Processing Unit)を含む。CPUは、例えば、記憶部201内の検査プログラム223を実行する。なお、制御計算機200は、例えば、マイクロプロセッサなどのCPUデバイスであってもよいし、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置であってもよい。また、制御計算機200の少なくとも一部の機能が、特定用途集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Alley)、または、グラフィック処理ユニット(GPU:Graphics Processing Unit)等の他の集積回路によって担われてもよい。
【0037】
記憶部201は、パターン検査に関する情報を記憶する。より具体的には、記憶部201は、設計データ220、検査条件221、検査データ222、及び検査プログラム223等を記憶する。記憶部201は、過去に実行したパターン検査(以下、「過去検査」とも表記する)の検査条件221も記憶する。なお、記憶部201は、外部ストレージとして、磁気ディスク記憶装置(HDD:Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(SSD)等の各種記憶装置を含んでいてもよい。
【0038】
検査条件221は、検査パラメータ224及びフィルタ係数225を含む。なお、検査条件221は、画像取得機構10における撮像条件を含み得る。
【0039】
検査パラメータ224には、例えば、マスク2の品名(マスク名)、マスク2の透過率、検査分解能、検出感度、キャリブレーション条件、アルゴリズム条件、及びパターン条件が含まれる。
【0040】
マスク名は、例えば、シリーズ名及びレイヤ名を含む。シリーズ名は、1つの半導体デバイスの製造に用いられる複数のマスク2のグループ名である。レイヤ名は、マスク2が対応している製造工程(レイヤ)を示す。
【0041】
マスク2の透過率は、露光条件あるいはマスクに形成されているパターンの材質等により異なる。例えば、ArFエキシマレーザーを用いた露光条件とKrFエキシマレーザーを用いた露光条件とでは、マスク2の透過率が異なる。
【0042】
検査分解能は、画素サイズに対応する。例えば、検査分解能を小さくすると、小さい欠陥が拾いやすくなる傾向がある。
【0043】
検出感度は、欠陥を検出する際の感度である。
【0044】
キャリブレーション条件は、光学画像を取得する前に実行されるキャリブレーションの条件である。キャリブレーションにより、光学画像における明るさが調整される。例えば、光学画像において黒及び白の画素値を予め設定された階調値に合わせる。
【0045】
アルゴリズム条件は、参照画像と光学画像とを比較する際に用いられるアルゴリズムの条件である。例えば、ホールを比較する場合、ラインを比較する場合、あるいは、パターンのCD(Critical Dimension)を比較する場合では、適用されるアルゴリズムが異なる。また、同じアルゴリズムを用いる場合でも、検査分解能あるいは検出感度等によっては、欠陥の判定に用いられる閾値が異なる。
【0046】
パターン条件は、検査対象であるパターンの種類及び最小寸法の情報を含む。より具体的には、パターンの種類としては、ホール及びラインがある。例えば、パターンの種類がホールであれば、最小寸法は、最小のホール径を示す。また、パターンの種類がラインであれば、最小寸法は、最小の線幅、または最小のスペース幅を示す。これらの最小寸法は、例えば、マスクルールチェック用のソフトウェアを用いて、自動で検出されてもよいし、装置使用者(オペレータ)が入力部203を用いて入力してもよい。
【0047】
フィルタ係数225は、参照画像の生成に用いられる。フィルタ係数225は、パターンのコーナー丸め量、寸法シフト量、及びエッジのぼかし量等に基づいて算出される。
【0048】
検査データ222は、参照画像、光学画像、及び検出された欠陥に関するデータ(座標及びサイズ等)を含む。
【0049】
検査プログラム223は、パターン検査を実行するためのプログラムである。記憶部201は、非一時的な記憶媒体として、検査プログラム223を記憶する。
【0050】
表示部202は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示部202は、音声出力装置を含んでいてもよい。
【0051】
入力部203は、キーボード、マウス、タッチパネル、またはボタンスイッチなどの入力装置である。
【0052】
通信部204は、外部装置との間でデータの送受信を行うために、ネットワークに接続するための装置である。通信には、各種の通信規格が用いられ得る。例えば、通信部204は、外部装置から設計データを受信し、パターン検査の結果を外部装置に送信する。
【0053】
オートローダ制御回路205は、オートローダ109の動作を制御する。オートローダ制御回路205は、オートローダ109を操作して、検査対象のマスク2をステージ100に搬入させる。また、オートローダ制御回路205は、オートローダ109を操作して、ステージ100からマスク2を搬出させる。
【0054】
ステージ制御回路206は、ステージ駆動部101を制御する。より具体的には、ステージ制御回路206は、位置回路211を介してレーザ測長システム108が測定したステージ100のステージ位置の情報を取得する。そして、ステージ制御回路206は、取得したステージ位置の情報に基づいて、ステージ駆動部101を制御する。
【0055】
光源制御回路207は、照明光源102を制御する。
【0056】
展開回路208は、例えば、設計データ220を、2値または多値の画像データに展開(変換)する。より具体的には、展開回路208は、例えば、記憶部201に保持されている設計データ220をパターン(図形)毎のデータに展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、展開回路208は、設計データ220を、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、2値または多値の画像(以下、「展開画像」と表記する)に展開する。そして、展開回路208は、展開画像の画素毎に図形が占める占有率を演算する。このようにして、演算された各画素内の図形占有率が展開画像の画素値である。以下では、展開画像の画素値が8ビットの階調値で表される場合について説明する。この場合、各画素の画素値は、0~255の階調値で表される。展開回路208は、参照回路209に、生成した展開画像を送信する。
【0057】
参照回路209は、フィルタ係数を用いて展開画像を演算し、参照画像を生成する。参照回路209は、生成した参照画像を比較回路210に送信する。
【0058】
参照回路209は、検索回路230及びフィルタ係数生成回路231を含む。
【0059】
検索回路230は、記憶部201に記憶されている過去検査の検査条件221の中から、今回実行するパターン検査(以下、「今回検査」と表記する)の検査条件221と同一または類似の検査条件221を検索する。より具体的には、検索回路230は、記憶部201に記憶されている過去検査の検査パラメータ224と今回検査の検査パラメータ224とを比較する。そして、過去検査の検査パラメータ224の全項目が今回検査の検査パラメータ224と一致する場合、検索回路230は、過去検査の検査条件221の中に同一の検査条件221があると判断する。また、過去検査の検査パラメータ224の一部の項目が今回検査の検査パラメータ224と一致する場合、過去検査の検査条件221の中に類似の検査条件221があると判断する。検査パラメータ224の一部の項目とは、パターン条件、すなわち、パターンの種類及び最小寸法である。なお、検査パラメータ224の一部の項目に検出感度が含まれてもよい。検索回路230は、同一または類似の検査条件221のフィルタ係数225を、今回検査のフィルタ係数225として設定する。検索回路230は、例えば、類似の検査条件221が複数見つかった場合、類似の検査条件221の中で日付が最も新しい(直近の)検査条件221を選択する。なお、検索回路230は、類似の検査条件が複数見つかった場合、パターン条件以外の項目において一致度の高い検査パラメータ224を有する検査条件221を選択してもよいし、検出された欠陥数の少ない検査条件221を選択してもよい。
【0060】
フィルタ係数生成回路231は、過去検査のフィルタ係数225が使用できない場合、すなわち、同一または類似の検査条件221が見つからなかった場合、今回検査用のフィルタ係数を算出する。より具体的には、フィルタ係数生成回路231は、光学画像内の複数の推定領域の画像データと展開画像とから生成する参照画像を推定する。換言すれば、フィルタ係数生成回路231は、光学画像内の複数の推定領域の画像データと展開画像とから、参照画像を検査画像に合わせ込むためのコーナー丸め量、寸法シフト量、及びぼかし量等を推定する。そして、フィルタ係数生成回路231は、推定したコーナー丸め量、寸法シフト量、及びぼかし量等に基づいて、フィルタ係数を算出する。推定領域は、マスク2の検査領域内に設けられた領域である。推定領域は、フィルタ係数の算出及びフィルタ係数を用いて生成した参照画像の妥当性の確認に用いられる領域である。なお、推定領域には、複数の形状のパターンが混在している領域が設定される方が好ましい。推定領域は、オペレータが設定してもよいし、設計データから例えばクリティカルパターンを含む領域が自動で抽出されてよい。
【0061】
比較回路210は、センサ回路107から受信した光学画像と、参照回路209で生成された参照画像とを、適切なアルゴリズムを用いて比較する。そして、比較回路210は、光学画像と参照画像との階調値差が予め設定された閾値を超えた場合には、対応するマスク2の座標位置(X方向及びY方向におけるステージ位置)に欠陥があると判定する。検査条件221及び検査データ222は、記憶部201に記憶される。
【0062】
位置回路211は、レーザ測長システム108から受信したデータに基づいて、ステージ100のX方向及びY方向における位置データを生成する。
【0063】
2.パターン検査の流れ
次に、図2を参照して、パターン検査の流れの一例について説明する。図2は、パターン検査のフローチャートである。
【0064】
図2に示すように、制御計算機200は、まず、画像取得機構10を制御して、キャリブレーションを実行する(ステップS1)。キャリブレーションにより、センサ回路107において取得される光学画像の画素値(階調値)が調整される。
【0065】
次に、制御計算機200は、マスク2の検査画像(光学画像)を取得する(ステップS2)。取得された光学画像は、比較回路210に送信される。
【0066】
展開回路208は、設計データ220の展開処理を実行する(ステップS3)。より具体的には、展開回路208は、記憶部201に記憶された設計データ220を読み出す。そして、展開回路208は、設計データ220を、例えば8bitの画像データ(展開画像)に展開(変換)する。展開回路208は、生成した展開画像を、参照回路209に送信する。
【0067】
参照回路209は、参照画像を生成する(ステップS4)。参照回路209は、生成した参照画像を比較回路210に送信する。参照画像生成工程の詳細は、後述する。
【0068】
比較回路210は、比較処理を行う(ステップS5)。より具体的には、比較回路210は、まず、光学画像と参照画像とのアライメントを実行し、光学画像内のパターンと、参照画像内のパターンとの位置合わせを行う。次に、比較回路210は、光学画像と参照画像とを比較する。比較回路210は、各画素の画素値(階調値)の差を算出し、階調値差が予め設定された閾値以上である場合、その画素に欠陥があると判定する。
【0069】
制御計算機200は、比較結果(検査データ)を出力する(ステップS6)。制御計算機200は、検査条件221及び検査データ222を、記憶部201に保存する。そして、制御計算機200は、検査データ222を表示部202に表示する。なお、制御計算機200は、検査データ222を、通信部204を介して外部装置(例えば、レビュー装置等)に出力してもよい。
【0070】
3.参照画像生成の流れ
次に、図3を参照して、参照画像生成工程の流れの一例について説明する。図3は、参照画像生成工程のフローチャートである。図3は、図2のステップS4に相当する。
【0071】
図3に示すように、検索回路230は、今回検査の検査パラメータ224と、過去検査の検査パラメータ224とを比較し、同一または類似の検査条件221を検索する(ステップS11)。
【0072】
同一または類似の検査条件221がある場合(ステップS12_Yes)、すなわち検査パラメータ224のうち、少なくともパターン条件(パターンの種類及び最小寸法)が一致している場合、検索回路230は、今回検査のフィルタ係数225として、検出された過去検査のフィルタ係数225を設定する(ステップS13)。
【0073】
参照回路209は、設定したフィルタ係数225の妥当性を確認する。より具体的には、例えば、参照回路209は、フィルタ係数225を用いて、予め設定された推定領域の参照画像を生成する。次に、参照回路209は、推定領域の参照画像と検査画像(光学画像)との階調値差を算出する(ステップS14)。そして、参照回路209は、階調値差の最大値が予め設定された閾値未満か確認する(ステップS15)。
【0074】
ステップS12において、同一または類似の検査条件221がない場合(ステップS12_No)、またはステップS15において、階調値差の最大値が閾値以上である場合(ステップS15_No)、フィルタ係数生成回路231は、今回検査用のフィルタ係数225を算出する(ステップS16)。そして、フィルタ係数生成回路231は、今回検査で使用するフィルタ係数として、算出したフィルタ係数を記憶部に設定する。
【0075】
参照回路209は、設定されたフィルタ係数225を用いて参照画像を生成する(ステップS17)。より具体的には、ステップS15において、階調値差の最大値が閾値未満である場合(ステップS15_Yes)、参照回路209は、過去検査のフィルタ係数225を用いて参照画像を生成する。他方で、ステップS16において、フィルタ係数を算出した場合、参照回路209は、算出されたフィルタ係数を用いて参照画像を生成する。
【0076】
4.本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、今回検査と過去検査の検査パラメータを比較し、同一または類似の検査条件がある場合、該当する過去検査のフィルタ係数を、今回検査のフィルタ係数として設定できる。これにより、フィルタ係数の算出工程を省略できる。よって、参照画像の生成時間を短縮できる。すなわち、パターン検査装置の処理能力を向上できる。
【0077】
また、本実施形態に係る構成であれば、参照画像と検査画像(光学画像)との階調値差が予め設定された閾値以上である場合には、フィルタ係数を算出して、参照画像を生成できる。これにより、過去検査のフィルタ係数を用いることによる参照画像と検査画像(光学画像)とのずれを抑制できる。
【0078】
5.変形例等
図3のステップS12において複数の検査条件221が見つかり、且つステップS15において階調値差の最大値が閾値以上となった場合、パターン検査装置1は、フィルタ係数を算出せずに、ステップS13において選択されなかった他の過去検査のフィルタ係数225を今回検査のフィルタ係数225として、再度設定してもよい。
【0079】
また、図3のステップS16においてフィルタ係数を算出した後、ステップS14に進み、算出したフィルタ係数の妥当性を確認してもよい。そして、ステップS15において、階調値差の最大値が閾値以上である場合、推定領域を変更して再度フィルタ係数を算出してもよい。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合、組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0081】
1…パターン検査装置、2…試料、10…画像取得機構、20…制御機構、100…ステージ、101…ステージ駆動部、102…照明光源、103…ビームスプリッタ、104、105…レンズ、106…フォトダイオードアレイ、107…センサ回路、108…レーザ測長システム、109…オートローダ、110…X軸モータ、111…Y軸モータ、200…制御計算機、201…記憶部、202…表示部、203…入力部、204…通信部、205…オートローダ制御回路、206…ステージ制御回路、207…光源制御回路、208…展開回路、209…参照回路、210…比較回路、211…位置回路、220…設計データ、221…検査条件、222…検査データ、223…検査プログラム、224…検査パラメータ、225…フィルタ係数、230…検索回路、231…フィルタ係数生成回路
図1
図2
図3