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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20241118BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20241118BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20241118BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241118BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20241118BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 129/16 20060101ALN20241118BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20241118BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
C10M163/00 ZHV
C10M159/24
C10M159/22
C10N10:12
C10N10:04
C10N30:06
C10N40:25
C10M135/18
C10M133/06
C10M137/10 A
C10M129/16
C10M139/00 Z
C10N30:04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021567644
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048567
(87)【国際公開番号】W WO2021132518
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019239443
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 翔一郎
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/212340(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/212339(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/099052(WO,A1)
【文献】特開2017-149830(JP,A)
【文献】特開2020-164688(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含み、
前記モリブデン化合物(D)に由来するMo原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
前記カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.12質量%以上であり、
前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.03質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
【請求項2】
ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む無灰摩擦調整剤(C)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記潤滑油組成物が前記アミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、前記アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%超であり、
前記モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
前記カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.12質量%以上であり、
前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.03質量%以上であり、
前記カルシウム系清浄剤(B1)と前記マグネシウム系清浄剤(B2)との含有比率[(B1)/(B2)]が、質量比で、2.0~9.5であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
【請求項3】
前記アミン系摩擦調整剤(C1)と前記エーテル系摩擦調整剤(C2)との含有比率[(C1)/(C2)]が、質量比で、0.20~1.00である、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上を含む、請求項2又は3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記カルシウム系清浄剤(B1)に由来するCa原子の含有量が、0.20質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するMg原子の含有量が、0.07質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記カルシウム系清浄剤(B1)と前記マグネシウム系清浄剤(B2)との含有比率[(B1)/(B2)]が、質量比で、3.0~9.0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記カルシウム系清浄剤(B1)が、カルシウムサリチレートを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境規制の強化に伴い、自動車等の車両の内燃機関に用いられる潤滑油組成物には、高い省燃費性が要求されている。かかる要求に応える方法の一つとして、潤滑油組成物に摩擦調整剤を配合して摩擦係数を低減する方法が各種検討されている。
例えば、潤滑油組成物中に摩擦調整剤として特定のモリブデン化合物を配合して、摩擦係数を低減する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-010177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ハイブリッド機構やアイドリングストップ機構を搭載した車両が普及しつつある。これらの機構を搭載した車両の普及に伴い、走行時のエンジン油温は低下する傾向にあるため、潤滑油組成物には低温領域での省燃費性も求められつつある。しかしながら、モリブデン化合物は、比較的高温の領域(以下、単に「高温領域」ともいう)において摩擦係数を低減する効果を発揮するものの、低温領域においては摩擦係数を低減する効果を発揮し難い。
また、近年、環境規制等による省燃費化の要求が、より一層高まりつつある。そのため、潤滑油組成物の更なる低粘度化が検討されている。しかし、低粘度化された潤滑油組成物は、境界潤滑領域に移行しやすく、摩耗の問題が生じやすい。
したがって、潤滑油組成物において、低粘度化しつつも、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減することは、従来困難であった。
【0005】
また、潤滑油組成物には、ロングドレインの確保の観点から、所定の初期塩基価が確保されていることも要求される。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しながらも、所定の初期塩基価を確保することができ、しかも低粘度化された潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者等は鋭意検討を重ね、本発明の完成に至った。
本発明は、下記[1]~[2]に関する。
[1] ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含み、
前記モリブデン化合物(D)に由来するMo原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.050質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
[2] ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む無灰摩擦調整剤(C)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記潤滑油組成物が前記アミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、前記アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%超であり、
前記モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しながらも、所定の初期塩基価を確保することができ、しかも低粘度化された潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることができる。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0010】
本明細書において、「HTHS粘度」は、「高温高せん断粘度」を意味する。
また、本明細書において、「100℃における動粘度」のことを、単に「100℃動粘度」ともいう。
【0011】
本明細書において、「高温領域」とは、油温が80℃以上となる温度領域を意味する。
また、本明細書において、「低温領域」とは、油温が30℃~60℃となる温度領域を意味する。
【0012】
[第一実施形態にかかる潤滑油組成物の態様]
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む無灰摩擦調整剤(C)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記潤滑油組成物が前記アミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、前記アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.10質量%以上であり、
前記モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物である。
【0013】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、特定の金属系清浄剤の併用、特定の無灰摩擦調整剤の使用、モリブデン化合物由来のモリブデン原子含有量の調整、及び塩基価の調整によって、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満と低粘度であっても、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減することを可能としている。また、所定の初期塩基価を確保することも可能としている。
【0014】
なお、以降の説明では、「基油(A)」、「金属系清浄剤(B)」、「無灰摩擦調整剤(C)」、及び「モリブデン化合物(D)」を、それぞれ「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」、及び「成分(D)」ともいう。
また、「カルシウム系清浄剤(B1)」及び「マグネシウム系清浄剤(B2)」を、それぞれ「成分(B1)」及び「成分(B2)」ともいう。
さらに、「アミン系摩擦調整剤(C1)」及び「エーテル系摩擦調整剤(C2)」を、それぞれ「成分(C1)」及び「成分(C2)」ともいう。
【0015】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
【0016】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の合計含有量の上限値は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤の含有量との関係で調整すればよく、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
【0017】
以下、第一実施形態にかかる潤滑油組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0018】
<基油(A)>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、基油(A)を含有する。
基油(A)としては、従来、潤滑油の基油として用いられている鉱油及び合成油から選択される1種以上を、特に制限なく使用することができる。
【0019】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;等が挙げられる。
【0020】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体及びα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル及び二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(ガストゥリキッド(GTL)ワックス)を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
【0021】
基油(A)は、米国石油協会(API)の基油カテゴリーにおけるグループ2、3、又は4に分類される基油が好ましい。
【0022】
基油(A)は、鉱油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよいし、合成油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよい。また、1種以上の鉱油と1種以上の合成油とを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
基油(A)の100℃動粘度は、好ましくは2.0mm/s~6.0mm/s、より好ましくは2.5mm/s~5.5mm/s、更に好ましくは3.0~5.0mm/sである。
基油(A)の100℃動粘度が2.0mm/s以上であると、潤滑油組成物の蒸発損失を抑制しやすい。
また、基油(A)の100℃動粘度が6.0mm/s以下であると、潤滑油組成物の粘性抵抗による動力損失を抑えやすく、燃費改善効果が得られやすい。
【0024】
基油(A)の粘度指数は、温度変化による粘度変化を抑えると共に、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上、より更に好ましくは130以上である。
【0025】
なお、基油(A)が2種以上の基油を含有する混合基油である場合、当該混合基油の100℃動粘度及び粘度指数が上記範囲内であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、100℃動粘度及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
【0027】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、基油(A)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、95質量%以下であることが好ましい。基油(A)の含有量を95質量%以下とすることによって、金属系清浄剤(B)、無灰摩擦調整剤(C)、及びモリブデン化合物(D)の使用量を十分に確保することができ、本発明の効果を発揮させやすいものとできる。
なお、基油(A)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは75~95質量%、より好ましくは80~93質量%、更に好ましくは85~92質量%である。
【0028】
<金属系清浄剤(B)>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、金属系清浄剤(B)を含有する。
金属系清浄剤(B)は、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む。
第一実施形態にかかる潤滑油組成物が、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)のいずれか一方又は双方を含有しない場合、潤滑油組成物の初期塩基価を所定の値以上にすることができず、本発明の効果が奏されない。
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害することのない範囲で、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)以外の金属系清浄剤を含んでいてもよい。但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)の合計含有量が、金属系清浄剤(B)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0029】
以下、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)について詳述する。
【0030】
(カルシウム系清浄剤(B1))
カルシウム系清浄剤(B1)としては、例えば、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、及びカルシウムサリチレート等のカルシウム塩が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、カルシウム系清浄剤(B1)は、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性を良好なものとする観点から、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、及びカルシウムサリチレートから選択される1種以上であることが好ましく、カルシウムサリチレートであることがより好ましい。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムサリチレートを含む場合、カルシウムサリチレートの含有量は、カルシウム系清浄剤(B1)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0031】
カルシウムスルホネートとしては、下記一般式(b1-1)で表される化合物が挙げられる。
カルシウムサリチレートとしては、下記一般式(b1-2)で表される化合物が挙げられる。
カルシウムフェネートとしては、下記一般式(b1-3)で表される化合物が挙げられる。
カルシウム系清浄剤(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
【化1】

【0033】
上記一般式(b1-1)~(b1-3)中、Rb1は、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。qは、0以上の整数であり、好ましくは0~3の整数である。
b1として選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルケニル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0034】
カルシウム系清浄剤(B1)は、中性、塩基性、又は過塩基性のいずれであってもよいが、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性をより向上させやすくする観点から、塩基性又は過塩基性のものが好ましく、過塩基性のものがより好ましい。
【0035】
なお、本明細書では、塩基価が50mgKOH/g未満の金属系清浄剤を「中性」、塩基価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g未満の金属系清浄剤を「塩基性」、塩基価が150mgKOH/g以上の金属系清浄剤を「過塩基性」と定義する。
本明細書において、金属系清浄剤(B)の塩基価は、JIS K2501:2003の9に準拠して、電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)により測定した値を意味する。
【0036】
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムスルホネートである場合、カルシウムスルホネートの塩基価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムサリチレートである場合、カルシウムサリチレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
カルシウム系清浄剤(B1)がカルシウムフェネートである場合、カルシウムフェネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
【0037】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しやすくする観点から、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.17質量%以下、更に好ましくは0.15質量%以下である。また、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.11質量%以上、更に好ましくは0.12質量%以上である。
【0038】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、カルシウム系清浄剤(B1)の含有量は、カルシウム系清浄剤(B1)に由来するカルシウム原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、カルシウム系清浄剤(B1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは1.2~2.5質量%、より好ましくは1.4~2.2質量%、更に好ましくは1.6~2.0質量%である。
【0039】
(マグネシウム系清浄剤(B2))
マグネシウム系清浄剤(B2)としては、例えば、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、及びマグネシウムサリチレート等のマグネシウム塩が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、マグネシウム系清浄剤(B2)は、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性を良好なものとする観点から、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、及びマグネシウムサリチレートから選択される1種以上であることが好ましく、マグネシウムスルホネートであることがより好ましい。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムスルホネートを含む場合、マグネシウムスルホネートの含有量は、マグネシウム系清浄剤(B2)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0040】
マグネシウムスルホネートとしては、下記一般式(b2-1)で表される化合物が挙げられる。
マグネシウムサリチレートとしては、下記一般式(b2-2)で表される化合物が挙げられる。
マグネシウムフェネートとしては、下記一般式(b2-3)で表される化合物が挙げられる。
マグネシウム系清浄剤(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
【化2】

【0042】
上記一般式(b2-1)~(b2-3)中、Rb2は、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。rは、0以上の整数であり、好ましくは0~3の整数である。
b2として選択し得る炭化水素基としては、Rb1として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
マグネシウム系清浄剤(B2)は、中性、塩基性、又は過塩基性のいずれであってもよいが、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性をより向上させやすくする観点から、塩基性又は過塩基性のものが好ましく、過塩基性のものがより好ましい。
【0044】
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムスルホネートである場合、マグネシウムスルホネートの塩基価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは300mgKOH/g以上、より更に好ましくは350mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは650mgKOH/g以下、より好ましくは500mgKOH/g以下、更に好ましくは450mgKOH/g以下である。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムサリチレートである場合、マグネシウムサリチレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上、より更に好ましくは300mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
マグネシウム系清浄剤(B2)がマグネシウムフェネートである場合、マグネシウムフェネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。
【0045】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しやすくする観点から、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.07質量%以下、より好ましくは0.07質量%未満、更に好ましくは0.06質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下、更になお好ましくは0.04質量%以下である。また、初期塩基価を所定の値以上に調整しやすくする観点、及び塩基価維持性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上である。
【0046】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、マグネシウム系清浄剤(B2)の含有量は、マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するマグネシウム原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、マグネシウム系清浄剤(B2)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.1~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.6質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%、より更に好ましくは0.2~0.4質量%である。
【0047】
(カルシウム系清浄剤(B1)とマグネシウム系清浄剤(B2)との含有比率)
第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、カルシウム系清浄剤(B1)とマグネシウム系清浄剤(B2)との含有比率[(B1)/(B2)]は、質量比で、好ましくは1.0~10、より好ましくは2.0~9.5、更に好ましくは3.0~9.0、より更に好ましくは4.0~8.0である。
【0048】
<無灰摩擦調整剤(C)>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、無灰摩擦調整剤(C)を含有する。
無灰摩擦調整剤(C)は、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む。
第一実施形態にかかる潤滑油組成物が、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)のいずれも含有しない場合、低温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されない。
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害することのない範囲で、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)以外の無灰摩擦調整剤を含んでいてもよい。但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上の含有量は、無灰摩擦調整剤(C)の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
【0049】
以下、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)について詳述する。
【0050】
(アミン系摩擦調整剤(C1))
アミン系摩擦調整剤(C1)としては、例えば摩擦調整剤として機能し得るアミン化合物が挙げられ、好ましくは下記一般式(c1)で表されるアミン化合物が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系摩擦調整剤(C1)が、下記一般式(c1)で表されるアミン化合物から選択される1種以上を含む場合、下記一般式(c1)で表されるアミン化合物から選択される1種以上の含有量は、アミン系摩擦調整剤(C1)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0051】
【化3】

【0052】
一般式(c1)中、R11は炭素数1~32の炭化水素基を示し、R12~R19は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18の炭化水素基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含有する酸素含有炭化水素基を示す。a及びbは、それぞれ独立に、1~20の整数を示す。
aが2以上の場合、R12~R15は、それぞれ複数存在するが、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR14は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR15は互いに同一であっても異なっていてもよい。
bが2以上の場合、R16~R19は、それぞれ複数存在するが、複数のR16は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR17は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR18は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR19は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
11が示す炭化水素基の炭素数は、好ましくは8~32、より好ましくは10~24、更に好ましくは12~20である。
11の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
11におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
また、R11におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基,トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基が挙げられるが、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。
【0054】
12~R19の炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、例えば、アルキル基若しくはアルケニル基(二重結合の位置も任意)等の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ブテニル基、ヘキシル基、ヘキセニル基、オクチル基、オクテニル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、デセニル基、ドデシル基、ドデセニル基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデセニル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、リノール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
12~R19が炭化水素基の場合、当該炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、更に好ましくは炭素数1~4、より更に好ましくは炭素数2である。
【0055】
エーテル結合又はエステル結合を含有する酸素含有炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のものが挙げられ、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、オクチルオキシメチル基、2-エチルヘキシルオキシメチル基、デシルオキシメチル基、ドデシルオキシメチル基、2-ブチルオクチルオキシメチル基、テトラデシルオキシメチル基、ヘキサデシルオキシメチル基、2-ヘキシルドデシルオキシメチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、1,1-ビスメトキシプロピル基、1,2-ビスメトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2-メトキシエトキシ)プロピル基、(1-メチル-2-メトキシ)プロピル基、アセチルオキシメチル基、プロパノイルオキシメチル基、ブタノイルオキシメチル基、ヘキサノイルオキシメチル基、オクタノイルオキシメチル基、2-エチルヘキサノイルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基、ドデカノイルオキシメチル基、2-ブチルオクタノイルオキシメチル基、テトラデカノイルオキシメチル基、ヘキサデカノイルオキシメチル基、2-ヘキシルドデカノイルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基が挙げられる。
【0056】
12~R19は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子及び炭素数1~18の炭化水素基からなる群より選ばれる1種であり、より好ましくは水素原子である。ここで、低温領域における摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、R12~R19は全てが水素原子であることが好ましい。
【0057】
また、a及びbは、低温領域における摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、それぞれ独立に、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~2、より更に好ましくは1である。
また、a及びbが示す整数の合計は、低温領域における摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは2~20、より好ましくは2~10、更に好ましくは2~4、より更に好ましくは2である。
【0058】
一般式(c1)で表されるアミン化合物を例示すると、オクチルジエタノールアミン、デシルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ヤシ油ジエタノールアミン、パーム油ジエタノールアミン、ナタネ油ジエタノールアミン、牛脂ジエタノールアミン等で例示される2-ヒドロキシアルキル基を2つ有するアミン化合物;ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンヤシ油アミン、ポリオキシエチレンパーム油アミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、エチレンオキシドプロピレンオキシドステアリルアミン等のポリアルキレンオキサイド構造を2つ有するアミン化合物が挙げられる。これらの中でもオレイルジエタノールアミンが好ましい。
【0059】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物がアミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%超であることを要する。アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以下である場合、低温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されないからである。
ここで、低温領域における摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.09質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上である。
また、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量に見合った効果を得る観点から、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下である。
【0060】
(エーテル系摩擦調整剤(C2))
エーテル系摩擦調整剤(C2)としては、例えば、摩擦調整剤として機能し得るエーテル化合物が挙げられ、好ましくは(ポリ)グリセリンエーテル化合物が挙げられ、より好ましくは下記一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エーテル系摩擦調整剤(C2)が、下記一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物から選択される1種以上を含む場合、下記一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物から選択される1種以上の含有量は、エーテル系摩擦調整剤(C2)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
なお、本明細書中、(ポリ)グリセリンエーテル化合物は、グリセリンエーテル又はポリグリセリンエーテルの両方を指す。
【0061】
【化4】
【0062】
一般式(c2)中、R21は炭化水素基を示し、cは1~10の整数を示す。
21が示す炭化水素基としては、例えば、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基が挙げられる。
【0063】
21が示す炭素数1~30のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、16-メチルヘプタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル等の基が挙げられる。
【0064】
21が示す炭素数3~30のアルケニル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。当該アルケニル基としては、具体的には、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0065】
21が示す炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
21が示す炭素数7~30のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基等が挙げられる。
21としては、一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物の性能及び入手の容易さなどの観点から、炭素数8~20のアルキル基及びアルケニル基が好ましい。
【0066】
また、cは、一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物の原料である(ポリ)グリセリンの重合度を示し、1~10の整数を示すが、低温領域における摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは1~3の整数である。
【0067】
一般式(c2)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物を例示すると、グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノテトラデシルエーテル、グリセリンモノヘキサデシルエーテル(「キミルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオクタデシルエーテル(「バチルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオレイルエーテル(「セラキルアルコール」と同じ。)、ジグリセリンモノドデシルエーテル、ジグリセリンモノテトラデシルエーテル、ジグリセリンモノヘキサデシルエーテル、ジグリセリンモノオクタデシルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、トリグリセリンモノドデシルエーテル、トリグリセリンモノテトラデシルエーテル、トリグリセリンモノヘキサデシルエーテル、トリグリセリンモノオクタデシルエーテル、トリグリセリンモノオレイルエーテルが挙げられる。
【0068】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物がエーテル系摩擦調整剤(C2)を含む場合、エーテル系摩擦調整剤(C2)の含有量は、低温領域における摩擦係数の低減効果を発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上、更に好ましくは0.14質量%以上である。
また、エーテル系摩擦調整剤(C2)の含有量に見合った効果を得る観点から、エーテル系摩擦調整剤(C2)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下である。
【0069】
(アミン系摩擦調整剤(C1)とエーテル系摩擦調整剤(C2)との含有比率)
第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、無灰摩擦調整剤(C)として、アミン系摩擦調整剤(C1)とエーテル系摩擦調整剤(C2)との双方を含有することが好ましい。
また、本発明の効果をさらに発揮させやすくする観点から、アミン系摩擦調整剤(C1)とエーテル系摩擦調整剤(C2)との含有比率[(C1)/(C2)]は、質量比で、好ましくは0.20~1.00、より好ましくは0.25~0.80、更に好ましくは0.25~0.75、より更に好ましくは0.30~0.70である。
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物が、アミン系摩擦調整剤(C1)とエーテル系摩擦調整剤(C2)との双方を含有する場合、これらの合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.10~0.60質量%、より好ましくは0.15~0.55質量%、更に好ましくは0.20~0.50質量%である。
【0070】
(エステル系摩擦調整剤)
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、無灰摩擦調整剤(C)として、さらにエステル系摩擦調整剤を含んでいてもよいが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、エステル系摩擦調整剤の含有量は少ないことが好ましい。
具体的には、エステル系摩擦調整剤の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更に好ましくは10質量%未満、より更に好ましくは5質量%未満、更になお好ましくは1質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満、より一層好ましくは0.01質量%未満、更に一層好ましくはエステル系摩擦調整剤を含有しないことである。
エステル系摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸と脂肪族多価アルコールとの反応により得られる部分エステル化合物等から選択される1種以上が挙げられる。
脂肪酸は好ましくは炭素数6~30の直鎖状又は分岐状炭化水素基を有する脂肪酸であり、該炭化水素基の炭素数はより好ましくは8~24、更に好ましくは10~20である。
また、脂肪族多価アルコールは2~6価のアルコールであり、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0071】
<モリブデン化合物(D)>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、モリブデン化合物(D)を含有する。そして、第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であることを要する。モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%未満であると、低温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されない。また、高温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されないこともある。
かかる観点から、モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量は、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上である。また、好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下である。
【0072】
モリブデン化合物(D)としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、モリブデン化合物(D)は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)を含むことが好ましい。
モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)を含む場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)の含有量は、モリブデン化合物(D)の全量基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%である。
また、本発明の効果をさらに発揮させやすくする観点から、モリブデン化合物(D)は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)を含むと共に、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上を含むことが好ましく、ジチオリン酸モリブデン(D2)を含むことがより好ましい。
【0073】
モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を含む場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)の合計含有量は、モリブデン化合物(D)の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
また、モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びジチオリン酸モリブデン(D2)を含む場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びジチオリン酸モリブデン(D2)の合計含有量は、モリブデン化合物(D)の全量基準で、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
【0074】
以下、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)について詳述する。
【0075】
(ジチオカルバミン酸モリブデン(D1))
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)を含有する。
ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)としては、例えば、一分子中に2つのモリブデン原子を含む二核のジチオカルバミン酸モリブデン、及び、一分子中に3つのモリブデン原子を含む三核のジチオカルバミン酸モリブデンが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)は、摩擦係数の低減効果を発揮させやすくする観点から、二核のジチオカルバミン酸モリブデンであることが好ましい。
ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)が、二核のジチオカルバミン酸モリブデンを含む場合、二核のジチオカルバミン酸モリブデンの含有量は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)の全量基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%である。
【0076】
二核のジチオカルバミン酸モリブデンとしては、下記一般式(d1-1)で表される化合物及び下記一般式(d1-2)で表される化合物から選択される1種以上であることが好ましい。
【0077】
【化5】
【0078】
上記一般式(d1-1)及び(d1-2)中、R31~R34は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
11~X18は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、式(d1-1)中のX11~X18の少なくとも二つは硫黄原子である。好ましくは、式(d1-1)中のX11及びX12が酸素原子であり、X13~X18が硫黄原子であることである。
【0079】
上記一般式(d1-1)において、基油(A)に対する溶解性を向上させる観点から、X11~X18中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕は、1/4~4/1であることが好ましく、1/3~3/1であることがより好ましい。
【0080】
また、式(d1-2)中のX11~X14が酸素原子であることが好ましい。
【0081】
31~R34として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~22、より好ましくは7~18、更に好ましくは7~14、より更に好ましくは8~13である。
【0082】
上記一般式(d1-1)及び(d1-2)中のR31~R34として選択し得る、当該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
当該アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等が挙げられる。
当該シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
当該アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、ジメチルナフチル基等が挙げられる。
当該アリールアルキル基としては、例えば、メチルベンジル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0083】
三核のジチオカルバミン酸モリブデンとしては、下記一般式(d1-3)で表される化合物であることが好ましい。
Mo (d1-3)
【0084】
上記一般式(d1-3)中、kは1以上の整数、mは0以上の整数であり、k+mは4~10の整数であり、4~7の整数であることが好ましい。nは1~4の整数、pは0以上の整数である。zは0~5の整数であって、非化学量論の値を含む。
Eは、それぞれ独立に、酸素原子又はセレン原子である。
Lは、それぞれ独立に、炭素原子を含有する有機基を有するアニオン性リガンドであり、各リガンドにおける該有機基の炭素原子の合計が14個以上であり、各リガンドは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
Aは、それぞれ独立に、L以外のアニオンである。
Qは、それぞれ独立に、電子を供与する中性化合物であり、三核モリブデン化合物上における空の配位を満たすために存在する。
【0085】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物がジチオカルバミン酸モリブデン(D1)を含む場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)に由来するモリブデン原子の含有量は、摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上である。また、通常0.15質量%以下であり、より好ましくは0.12質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
【0086】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)の含有量は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)に由来するモリブデン原子の含有量に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.40~2.0質量%、より好ましくは0.45~1.0質量%、更に好ましくは0.50~0.90質量%である。
【0087】
(ジチオリン酸モリブデン(D2))
ジチオリン酸モリブデン(D2)としては、例えば、下記一般式(d2-1)又は一般式(d2-2)で表される、一分子中に2つのモリブデン原子を含むジチオリン酸モリブデンが挙げられる。
【0088】
【化6】
【0089】
上記一般式(d2-1)中のR41~R44、上記一般式(d2-2)中のR51~R54は、それぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基を示し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(d2-1)中のX41~X48、上記一般式(d2-2)中のX51~X54は、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を示す。これらは互いに同一でも異なっていてもよく、X43及びX44、X45及びX46、X47及びX48、X53及びX54の少なくとも一方が硫黄原子である。
【0090】
41~R44、R51~R54の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられ、摩擦係数を低減し、耐銅腐食性を向上させる観点から、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0091】
これと同様の観点から、R41~R44、R51~R54の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下である。
【0092】
式(d2-1)中のX41~X48について、既述のようにその少なくとも二つは硫黄原子であり、好ましくはX41、X42が酸素原子であり、X43~X48が硫黄原子であることが好ましい。
また、式(d2-2)中のX51~X54は酸素原子であることが好ましい。
【0093】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物がジチオリン酸モリブデン(D2)を含む場合、ジチオリン酸モリブデン(D2)に由来するモリブデン原子の含有量は、摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上である。また、潤滑油組成物中のリン原子含有量を抑えて排ガス浄化装置の触媒被毒を抑制する観点から、好ましくは0.10質量%以下であり、より好ましくは0.07質量%以下であり、さらに好ましくは0.04質量%以下である。
【0094】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、ジチオリン酸モリブデン(D2)の含有量は、ジチオリン酸モリブデン(D2)に由来するモリブデン原子の含有量に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、ジチオリン酸モリブデン(D2)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.12~1.0質量%、より好ましくは0.15~0.50質量%、更に好ましくは0.18~0.25質量%である。
【0095】
(モリブデン酸ジアルキルアミン(D3))
モリブデン酸ジアルキルアミン(D3)は、6価のモリブデン化合物、例えば三酸化モリブデン及びモリブデン酸から選択される1種以上と、ジアルキルアミンとの反応物である。
6価のモリブデン化合物と反応させるジアルキルアミンは特に制限されず、炭素数1~30のアルキル基を有するジアルキルアミンが挙げられる。
【0096】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物がモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を含む場合、モリブデン酸ジアルキルアミン(D3)に由来するモリブデン原子の含有量は、摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.01質量%以上である。また、通常0.04質量%以下である。
【0097】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、モリブデン酸ジアルキルアミン(D3)の含有量は、モリブデン酸ジアルキルアミン(D3)に由来するモリブデン原子の含有量に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、ジチオリン酸モリブデン(D3)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.06~1.0質量%、より好ましくは0.08~0.50質量%、更に好ましくは0.10~0.20質量%である。
【0098】
<ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)とジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)との含有比率>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを併用することが好ましく、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)とジチオリン酸モリブデン(D2)とを併用することがより好ましい
この場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上との含有比率[(D1)/(D2+D3)]は、質量比で、好ましくは1.0~6.0、より好ましくは1.5~5.0、更に好ましくは2.0~4.0である。更になお好ましくは2.0~3.0である。
【0099】
第一実施形態にかかる潤滑油組成物が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含む場合、これらのモリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量は、摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上である。また、通常0.15質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下である。
【0100】
また、第一実施形態にかかる潤滑油組成物において、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含む場合、これらの合計含有量は、これらのモリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、これらの合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50~3.0質量%、より好ましくは0.60~1.0質量%、更に好ましくは0.65~0.90質量%、より更に好ましくは0.65~0.80質量%、更になお好ましくは0.65~0.75質量%である。
【0101】
<潤滑油用添加剤>
第一実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(B)、成分(C)、及び成分(D)には該当しない、他の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
他の潤滑油用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、無灰系分散剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、耐摩耗剤、極圧剤、防錆剤、消泡剤、金属不活性化剤、及び抗乳化剤等が挙げられる。
これらの各潤滑油用添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
これらの潤滑油用添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれ独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~8質量%、更に好ましくは0.1~6質量%である。
【0103】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用することがより好ましい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、炭素数3~20のアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0104】
(無灰系分散剤)
無灰系分散剤としては、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド等のホウ素非含有コハク酸イミド類、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド等のホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミドを用いることが好ましく、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド及びホウ素含有アルケニルコハク酸イミドを併用することがより好ましい。
【0105】
(流動点降下剤)
流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの粘度指数向上剤の質量平均分子量(Mw)としては、通常500~1,000,000、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは10,000~50,000であるが、重合体の種類に応じて適宜設定される。
本明細書において、各成分の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0107】
(耐摩耗剤又は極圧剤)
耐摩耗剤又は極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が好ましい。
【0108】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
(抗乳化剤)
抗乳化剤としては、例えば、ひまし油の硫酸エステル塩、石油スルフォン酸塩等のアニオン性界面活性剤;第四級アンモニウム塩、イミダゾリン類等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンポリグリコール及びそのジカルボン酸のエステル;アルキルフェノール-ホルムアルデヒド重縮合物のアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
[第二実施形態にかかる潤滑油組成物の態様]
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含み、
前記モリブデン化合物(D)に由来するMo原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物である。
【0113】
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、特定の金属系清浄剤の併用、特定のモリブデン化合物の併用、モリブデン化合物由来のモリブデン原子含有量の調整、及び塩基価の調整によって、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満と低粘度であっても、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しながらも、所定の初期塩基価を確保することを可能としている。
なお、第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、第一実施形態にかかる潤滑油組成物とは異なり、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)を必須の構成成分としていない。第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)を必須の構成成分としていないにもかかわらず、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減することを可能としている。
【0114】
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
【0115】
第二実施形態にかかる潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、第二実施形態にかかる潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)の合計含有量の上限値は、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤の含有量との関係で調整すればよく、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、モリブデン化合物(D)を含有する。そして、第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であることを要する。モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%未満であると、低温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されない。また、高温領域における摩擦係数の低減効果が発揮されない。
かかる観点から、モリブデン化合物(D)由来のモリブデン原子の含有量は、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上である。また、好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下である。
【0116】
ここで、第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、無灰摩擦調整剤(C)を含有していてもよいが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、含有量は少ないことが好ましい。具体的には、第二実施形態にかかる潤滑油組成物において、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上の無灰摩擦調整剤(C)の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.10質量部未満、より好ましくは0.01質量部未満、更に好ましくは0.001質量部未満であり、最も好ましくは無灰摩擦調整剤(C)を含有しないことである。
【0117】
なお、第二実施形態にかかる潤滑油組成物が含有する、成分(A)、成分(B)、成分(D)、及びその他潤滑油用添加剤は、第一実施形態にかかる潤滑油組成物の欄で前述したものと同様であり、その好適な態様も同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、摩擦係数をより低減しやすくする観点から、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びジチオリン酸モリブデン(D2)を組み合わせて用いること、並びに、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせて用いることが好ましく、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0118】
<ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上との含有比率>
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上との含有比率[(D1)/(D2+D3)]が、質量比で、好ましくは1.0~7.5、より好ましくは1.5~6.5、更に好ましくは2.0~5.5である。
【0119】
<ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせる態様>
第二実施形態にかかる潤滑油組成物は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、既述のように、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせて用いることが好ましい。
この場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)とモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)との含有比率[(D1)/(D3)]は、質量比で、好ましくは1.0~7.5、より好ましくは2.0~6.5、更に好ましくは3.0~6.0、より更に好ましくは4.0~6.0、更になお好ましくは5.0~6.0である。
また、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせて用いる場合、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)に由来するモリブデン原子の含有量は、摩擦係数の低減効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上である。また、通常0.15質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.09質量%以下である。
さらに、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)を組み合わせて用いる場合、これらの合計含有量は、これらのモリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲を充足するように調整すればよい。具体的には、これらの合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50~3.0質量%、より好ましくは0.60~2.0質量%、更に好ましくは0.65~1.0質量%、より更に好ましくは0.70~0.95質量%、更になお好ましくは0.75~0.90質量%である。
【0120】
[潤滑油組成物の物性]
以降の説明では、「第一実施形態にかかる潤滑油組成物」及び「第二実施形態にかかる潤滑油組成物」をまとめて、「本実施形態にかかる潤滑油組成物」ともいう。
【0121】
<100℃動粘度>
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、100℃動粘度が、好ましくは3.8mm/s以上8.2mm/s未満、より好ましくは3.8mm/s以上7.1mm/s未満、更に好ましくは3.8mm/s以上6.1mm/s未満である。
【0122】
<150℃におけるHTHS粘度>
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、150℃におけるHTHS粘度が1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である。
本発明の潤滑油組成物のHTHS粘度が1.3mPa・s未満であると、油膜を保持しにくくなり、2.3mPa・s以上であると省燃費性が低下する。
かかる観点から、本実施形態にかかる潤滑油組成物は、150℃におけるHTHS粘度が、好ましくは1.4mPa・s以上2.0mPa・s未満、より好ましくは1.5mPa・s以上1.9mPa・s以下、更に好ましくは1.6mPa・s以上1.9mPa・s以下である。
本明細書において、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度は、ASTM D4683に準拠し、TBS高温粘度計(Tapered Bearing Simulator Viscometer)を用いて、150℃の温度条件下、せん断速度10/sにて測定した値である。
【0123】
<塩基価>
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、塩酸法により測定される塩基価(初期塩基価)が、4.0mgKOH/g以上であることを要する。塩酸法により測定される塩基価が、4.0mgKOH/g未満であると、潤滑油組成物の初期塩基価を所定の値以上にすることができず、潤滑油組成物のロングドレインの確保が困難になる。
かかる観点から、本実施形態にかかる潤滑油組成物は、塩酸法により測定される塩基価が、好ましくは4.5mgKOH/g以上、より好ましくは4.8mgKOH/g以上、更に好ましくは5.0mgKOH/g以上である。
また、潤滑油組成物の摩擦係数を低減しやすくする観点から、好ましくは10.0mgKOH/g以下、より好ましくは8.0mgKOH/g以下、更に好ましくは7.5mgKOH/g以下である。
なお、本明細書において、潤滑油組成物の塩基価(初期塩基価)は、JIS K2501:2003の8に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定した値である。
【0124】
<カルシウム原子含有量、マグネシウム原子含有量、モリブデン原子含有量、リン原子含有量>
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、カルシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.17質量%以下、更に好ましくは0.15質量%以下である。また、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.11質量%以上、更に好ましくは0.12質量%以上である。
【0125】
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、マグネシウム原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.07質量%以下、より好ましくは0.07質量%未満、更に好ましくは0.06質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下、更になお好ましくは0.04質量%以下である。また、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上である。
【0126】
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、モリブデン原子の含有量が、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上である。また、好ましくは0.15質量%以下である。
【0127】
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、リン原子の含有量が、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.09質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下である。また、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.04質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
【0128】
なお、本明細書において、潤滑油組成物のカルウシム原子、マグネシウム原子、モリブデン原子、及びリン原子の含有量は、JIS-5S-38-03に準拠して測定した値である。
【0129】
[潤滑油組成物の製造方法]
本実施形態にかかる潤滑油組成物の製造方法は、特に制限されない。
例えば、第一実施形態にかかる潤滑油組成物の製造方法は、基油(A)と、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む無灰摩擦調整剤(C)と、モリブデン化合物(D)とを含有する潤滑油組成物の調製を行う工程を有する。前記工程では、潤滑油組成物がアミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%超となるように調整され、モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上となるように調整され、塩酸法により測定される潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上となるように調整され、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満となるように調整される。
また、第二実施形態にかかる潤滑油組成物の製造方法は、基油(A)と、カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、モリブデン化合物(D)とを含有する潤滑油組成物の調製を行う工程を有する。モリブデン化合物(D)は、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含む。前記工程では、モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上となるように調整され、塩酸法により測定される潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上となるように調整され、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満となるように調整される。
【0130】
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、各成分を配合する工程を有する方法が挙げられる。その際、上記他の潤滑油用添加剤も同時に配合してもよい。また、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
【0131】
[潤滑油組成物の用途]
本実施形態にかかる潤滑油組成物は、低温領域も含めた広範囲な温度領域にて摩擦係数を低減しながらも、初期塩基価を所定の値以上にすることができる。
そのため、本実施形態にかかる潤滑油組成物は、ガソリンエンジン、好ましくは自動車用エンジンとして用いられる。自動車用エンジンの中でも、ハイブリッド機構やアイドリングストップ機構を搭載した自動車用エンジンに用いることがより好ましい。
したがって、本実施形態にかかる潤滑油組成物は、下記(1)~(3)を提供する。
(1)本実施形態にかかる潤滑油組成物を、ガソリンエンジンに用いる、使用方法。
(2)本実施形態にかかる潤滑油組成物を、自動車用エンジンに用いる、使用方法。
(3)本実施形態にかかる潤滑油組成物を、ハイブリッド機構を搭載した自動車用エンジン又はアイドリングストップ機構を搭載した自動車用エンジンに用いる、使用方法。
【0132】
[提供される本発明の態様]
提供される本発明の態様としては、例えば、下記[1]~[8]が挙げられる。
[1] ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)と、ジチオリン酸モリブデン(D2)及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上とを含み、
前記モリブデン化合物(D)に由来するMo原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
[2] ガソリンエンジンに用いられる潤滑油組成物であって、
基油(A)と、
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)を含む金属系清浄剤(B)と、
アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)から選択される1種以上を含む無灰摩擦調整剤(C)と、
モリブデン化合物(D)と、を含有し、
前記潤滑油組成物が前記アミン系摩擦調整剤(C1)を含む場合、前記アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%超であり、
前記モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%以上であり、
塩酸法により測定される、前記潤滑油組成物の塩基価が、4.0mgKOH/g以上であり、
前記潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が、1.3mPa・s以上2.3mPa・s未満である、潤滑油組成物。
[3] 前記アミン系摩擦調整剤(C1)と前記エーテル系摩擦調整剤(C2)との含有比率[(C1)/(C2)]が、質量比で、0.20~1.00である、上記[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記モリブデン化合物(D)が、ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)、ジチオリン酸モリブデン(D2)、及びモリブデン酸ジアルキルアミン(D3)から選択される1種以上を含む、上記[2]又は[3]に記載の潤滑油組成物。
[5] カルシウム系清浄剤(B1)に由来するCa原子の含有量が、0.20質量%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[6] マグネシウム系清浄剤(B2)に由来するMg原子の含有量が、0.07質量%以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 前記カルシウム系清浄剤(B1)と前記マグネシウム系清浄剤(B2)との含有比率[(B1)/(B2)]が、質量比で、1.0~10である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] 前記カルシウム系清浄剤(B1)が、カルシウムサリチレートを含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【実施例
【0133】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0134】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0135】
(1)100℃動粘度
基油の100℃動粘度及び潤滑油組成物の100℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した。
【0136】
(2)150℃におけるHTHS粘度
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度は、ASTM D4683に準拠し、TBS高温粘度計(Tapered Bearing Simulator Viscometer)を用いて、150℃の温度条件下、せん断速度10/sにて測定した。
【0137】
(3)各原子の含有量
潤滑油組成物のカルシム原子、マグネシウム原子、モリブデン原子、及びリン原子の含有量は、JIS-5S-38-03に準拠して測定した。
【0138】
(4)塩基価
カルシウム系清浄剤(B1)及びマグネシウム系清浄剤(B2)の塩基価は、JIS K2501:2003の9に準拠して、電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)により測定した。
潤滑油組成物の塩基価(初期塩基価)は、JIS K2501:2003の8に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定した。
【0139】
[実施例1~12、比較例1~5]
以下に示す基油及び各種添加剤を、表1及び表2に示す配合量(質量%)で十分に混合し、実施例1~12及び比較例1~5の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
実施例1~12及び比較例1~5で用いた基油及び各種添加剤の詳細は、以下に示すとおりである。
【0140】
<基油(A)>
鉱油(100℃動粘度:4.0mm/s、API分類:グループ3)
【0141】
<金属系清浄剤(B)>
(カルシウム系清浄剤(B1))
Caサリチレート(Ca原子含有量:8質量%、塩基価:230mgKOH/g)
(マグネシウム系清浄剤(B2))
Mgスルホネート(Mg原子含有量:9.5質量%、塩基価:400mgKOH/g)
【0142】
<無灰摩擦調整剤(C)>
(アミン系摩擦調整剤(C1))
オレイルジエタノールアミン
(エーテル系摩擦調整剤(C2))
ポリグリセリンエーテル
(エステル系摩擦調整剤)
グリセリンモノオレエート(GMO)
【0143】
<モリブデン化合物(D)>
ジチオカルバミン酸モリブデン(D1)(MoDTC、モリブデン原子含有量:10質量%)
ジチオリン酸モリブデン(D2)(MoDTP、モリブデン原子含有量:8.5質量%、リン原子含有量:5.5質量%)
モリブデン酸ジアルキルアミン(D3)(モリブデン原子含有量:7.9質量%)
【0144】
<その他の潤滑油用添加剤>
コハク酸イミド、酸化防止剤、流動点降下剤、ZnDTP、粘度指数向上剤
【0145】
[評価方法]
以下に説明する、摩擦係数低減効果の評価及びISOT試験による塩基価の減少率の評価を行った。
【0146】
<摩擦係数低減効果の評価>
SRV試験機(Optimol社製)を用い、下記の条件にて、調製した潤滑油組成物を使用した際の摩擦係数を測定した。なお、試験開始5分後から試験終了までの1分間での摩擦係数の平均値を算出した。
・シリンダ:SUJ-2
・ディスク:AISI52100
・振動数:50Hz
・振幅:1.5mm
・荷重:400N
・温度:30℃、40℃、又は80℃
・試験時間:30分間
そして、比較例1の摩擦係数を基準として、下記式(α)により比較例1に対する摩擦係数の減少率(%)を算出し、-5よりも卑側の値のものを摩擦係数低減効果に優れると判断した。また、-5~5の値のものは、比較例1と同等の摩擦係数低減効果を有すると判断した。
摩擦係数の減少率(%)
=[(対象実施例・比較例の摩擦係数)-(比較例1の摩擦係数)]/(比較例1の摩擦係数)×100・・・(α)
なお、比較例1の摩擦係数は以下のとおりである。
30℃における摩擦係数:0.09
40℃における摩擦係数:0.09
80℃における摩擦係数:0.07
【0147】
<ISOT試験による塩基価の減少率の評価>
調製した潤滑油組成物の塩基価(初期塩基価)を測定した。
次に、調製した潤滑油組成物に触媒として銅片と鉄片を入れ、JIS K 2514-1:2013に準拠するISOT試験を、165.5℃で72時間行って、調製した潤滑油組成物を強制劣化し、劣化油とした。そして、その劣化油について、塩基価(劣化後塩基価)を測定し、以下の数式(1)により、ISOT試験による塩基価の減少率を算出し、-85よりもプラス側に大きな値のものを塩基価維持性が確保できていると判断した。
【数1】
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
表1及び表2より、以下のことがわかる。
実施例1~12の潤滑油組成物は、30℃及び40℃における摩擦係数が低く、80℃における摩擦係数も低い値が確保されており、所定の初期塩基価も確保されていることがわかる。また、実施例1~3の潤滑油組成物は、塩基価維持性にも優れていることがわかる。
これに対し、比較例1のように、アミン系摩擦調整剤(C1)及びエーテル系摩擦調整剤(C2)の双方を含まない潤滑油組成物は、30℃及び40℃における摩擦係数が高く、低温領域での摩擦係数低減効果が得られないことがわかる。
また、比較例2のように、マグネシウム系清浄剤(B2)を含まない場合には、塩基価維持率に劣り、塩基価維持性が確保できないことがわかる。
さらに、比較例3のように、アミン系摩擦調整剤(C1)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で0.05質量%以下であると、30℃及び40℃における摩擦係数が高く、低温領域での摩擦係数低減効果が得られないことがわかる。
また、比較例4のように、モリブデン化合物(D)に由来するモリブデン原子の含有量が0.05質量%未満であると、30℃及び40℃における摩擦係数が高く、低温領域での摩擦係数低減効果が得られないことがわかる。
さらに、比較例5のように、モリブデン化合物(D)を含まない場合、30℃、40℃、及び80℃における摩擦係数が高く、摩擦係数低減効果が得られないことがわかる。