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特許7589242改善された耐候性を有するメラミン-ホルムアルデヒドフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】改善された耐候性を有するメラミン-ホルムアルデヒドフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20241118BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20241118BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20241118BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20241118BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
C08J9/14 CEZ
C08K5/3415
C08K5/54
C08L61/28
C08L83/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022523187
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020078673
(87)【国際公開番号】W WO2021074092
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】19203868.5
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイセ,ゼバスティアン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ファト,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュタインケ,トビアス,ハインツ
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531492(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106800667(CN,A)
【文献】特表2015-527470(JP,A)
【文献】特開昭60-079062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/14
C08K 5/3415
C08K 5/54
C08L 61/28
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペリジノール誘導体から選択される0.2~8質量%の少なくとも1つのUV安定剤、及び0.01~5質量%の少なくとも1つの疎水化剤を含む、メラミン-ホルムアルデヒドフォーム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの疎水化剤が有機修飾シロキサン及びシランから選択される、請求項1に記載のメラミン-ホルムアルデヒドフォーム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのUV安定剤がトリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートである、請求項1又は2に記載のメラミン-ホルムアルデヒドフォーム。
【請求項4】
工程a)マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱及び発泡させる工程であって、前記混合物Mが、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つの発泡剤を含む、工程、及び
工程b)工程a)で生成されたフォームに、ピペリジノール誘導体から選択される少なくとも1つのUV安定剤及び少なくとも1つの疎水化剤を含浸させる工程、
を含む、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造するための方法。
【請求項5】
工程a)メラミン-ホルムアルデヒドフォームを提供する工程、及び工程b)工程a)で提供されたフォームにピペリジノール誘導体から選択される少なくとも1つのUV安定剤及び少なくとも1つの疎水化剤を含浸させる工程、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のメラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造するための方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのUV安定剤がトリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの疎水化剤が有機修飾シロキサン及びシランから選択される、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物Mが、50~90質量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、10~50質量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物を含む界面活性剤混合物を含み、この質量パーセンテージがそれぞれ界面活性剤混合物の総質量に基づくものである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ギ酸を硬化剤として使用する、請求項4または8に記載の方法。
【請求項10】
ペンタンを発泡剤として使用する、請求項4、8および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
航空機、船舶、鉄道自動車の構造は建物構造における防音及び/又は断熱のために、請求項1から3のいずれか1項に記載のメラミン-ホルムアルデヒドフォームを使用する方法。
【請求項12】
道路、高速道路、及び鉄道線路に沿った防音壁において、請求項1から3のいずれか1項に記載のメラミン-ホルムアルデヒドフォームを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐候性を有するメラミン-ホルムアルデヒドフォーム、その製造方法、及び防音壁におけるその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂に基づく連続気泡弾性フォーム、及び前記フォームの製造方法(熱気、水蒸気又はマイクロ波照射で加熱して発泡させ、発泡剤を含むメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物分散液又は溶液を架橋し、その後乾燥及びアニーリング工程が続く)は既知であり、例えばUS2015/0210814に記載されている。この種類のメラミン-ホルムアルデヒドフォームは一般に、良好な機械的特性、及び良好な防音性及び断熱性、並びに低い可燃性を有する。
【0003】
いくつかの目的のため、さらなる添加剤を添加してよく、所望される場合、メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物に基づいて0.1~20質量%の慣例の添加剤、例えば染料、難燃剤、UV安定剤又は繊維状フィラー、燃焼ガスの毒性を低減するため又は炭化を促進するための薬剤などを、添加してよい。
【0004】
CN106800667Aは、水性メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、乳化剤、発泡剤、硬化剤、着色剤、光安定剤及び添加剤から調製された着色メラミンフォームを開示している。光安定剤として、o-ヒドロキシベンゾフェノン及びベンゾトリアゾール紫外線吸収剤が、具体的に言及されている。
【0005】
WO2018/095760は、マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱及び発泡させることによって、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造する方法を開示しており、前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの発泡剤及び500~10.000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有する少なくとも1つの直鎖状ポリマー、及びOH、NH2又はCOOHから選択される少なくとも2つの官能基を含み、さらに、この方法によって得ることができるメラミン-ホルムアルデヒドフォームとその使用方法も開示している。
【0006】
US2012/292552は、中空微小球を含むメラミン-ホルムアルデヒドフォームに関するものであり、前記中空微小球は、260μm~490μmの範囲の中央粒径(D50、体積平均、Malvem,Fraunhofer回折)を有し、また、これらのメラミン-ホルムアルデヒドフォームの製造方法とその使用方法にも関するものである。
【0007】
連続気泡メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、シリコーン、パラフィン、シリコーン界面活性剤、フルオロ界面活性剤、疎水性炭化水素系界面活性剤、シリコーン及びフルオロカーボンエマルジョン(US2008/0280126及びWO2019/052825)又はステアリル基を含む化合物(US2010/0234480)を含浸させることによって疎水化することができ、フォームマトリックスに適用される。
【0008】
発泡工程で異なる添加剤を組み合わせると、機械的特性が劣るフォームが生じることがあり、又はフォームが崩壊さえすることもある。フォームの含浸を介して適用される添加剤は、含浸用の均質なエマルジョン又は溶液を形成するために適合性がなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US2015/0210814
【文献】CN106800667A
【文献】WO2018/095760
【文献】US2012/292552
【文献】US2008/0280126
【文献】WO2019/052825
【文献】US2010/0234480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の先行技術を考慮して作成されたものであり、そして本発明の目的は、改善された耐候性及び低減された吸水性を有する一方で難燃性を維持している、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するため、本発明は、ベンゾトリアゾール誘導体及びピペリジノール誘導体から選択される、0.2~8質量%の少なくとも1つのUV安定剤、及び0.01~5質量%の少なくとも1つの疎水化剤を含む、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを提供する。
【0012】
好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、1~5質量%の少なくとも1つのUV安定剤を含む。
【0013】
適したUV安定剤は、有機又は無機UV吸収剤、例えば芳香族又は芳香族複素環式化合物、好ましくはベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、オキサラニリド、フェニルトリアジン及びそれらの誘導体、又は酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化鉄顔料である。さらに、脂肪族複素環式化合物の塩、例えばピペリジノール誘導体、又はヒンダードアミン光安定剤(HALS)、例えばテトラメチルピペリジンをUV安定剤として使用してよい。好ましくは、UV安定剤はトリブチルシトレートを含有しない。
【0014】
少なくとも1つのUV安定剤は、好ましくは、ベンゾトリアゾール誘導体及びピペリジノール誘導体から選択される。好ましくは、UV安定剤は、さらなる添加剤、例えばトリブチルシトレートを含有しない。最も好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、ベンゼンスルホン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-(1-メチルプロピル)-、一ナトリウム塩(BASF SE社からTinogard(登録商標)HSとして市販されている)、又は(トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレート(BASF SE社からTinogard(登録商標)Qとして市販されている)を、UV安定剤として含む。
【0015】
UV安定剤に加えて、メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%の少なくとも1つの疎水化剤を含む。
【0016】
より好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、0.2~8質量%の少なくとも1つのUV安定剤及び0.1~2質量%の少なくとも1つの疎水化剤、最も好ましくは1~5質量%の少なくとも1つのUV安定剤及び0.1~2質量%の少なくとも1つの疎水化剤を含む。
【0017】
メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、疎水化剤としてフルオロカーボン樹脂又はシリコーン樹脂を含んでよい。好ましくは、少なくとも1つの疎水化剤は、有機修飾シロキサン及びシランから選択される。
【0018】
好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒドフォームの密度は、8~12kg/mの範囲であり、より好ましくは9~11kg/mである。
【0019】
本発明の主題はさらに、上記の改善された耐候性を有するメラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造するための方法である。メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、US2015/0210814に記載の方法によって調製してよい。UV安定剤は、発泡前に他の成分に添加することによって、又はメラミン-ホルムアルデヒドフォームにUV安定剤を含む溶液又はエマルジョンを含浸させることによって、メラミン-ホルムアルデヒドフォームに組み込んでよい。任意の疎水化剤は、好ましくは、疎水化剤を含む溶液又はエマルジョンを含浸させることによって添加される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施形態において、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造するための方法は、工程a)マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱及び発泡させる工程を含み、前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの発泡剤及び少なくとも1つのUV安定剤を含む。
【0021】
第1の実施形態において、少なくとも1つのUV安定剤は、ベンゾトリアゾール誘導体から選択される。最も好ましくは、ベンゼンスルホン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-(1-メチルプロピル)-、一ナトリウム塩(BASF SE社からTinogard(登録商標)HSとして市販されている)を使用する。
【0022】
工程a)でUV安定剤を含有するメラミン-ホルムアルデヒドフォームを調製した後、得られたフォームに、工程b)で少なくとも1つの疎水化剤を含浸させてよい。
【0023】
第2の実施形態において、メラミン-ホルムアルデヒドフォームを製造するための方法は、工程a)マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱及び発泡させる工程(前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤及び少なくとも1つの発泡剤を含む)、及び工程b)工程a)で生成されたフォームに少なくとも1つのUV安定剤及び少なくとも疎水化剤を含浸させる工程、を含む。
【0024】
第2の実施形態において、少なくとも1つのUV安定剤は、好ましくはピペリジノール誘導体から選択される。最も好ましくは、(トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレート(BASF SE社からTinogard(登録商標)Qとして市販されている)を使用する。
【0025】
第3の実施形態において、任意の市販のメラミン-ホルムアルデヒドフォーム、例えばBasotect(登録商標)を工程a)で提供し、工程b)で少なくとも1つのUV安定剤及び少なくとも疎水化剤を含浸させてよい。
【0026】
あらゆる実施形態において、UV安定剤及び疎水化剤は、指定された量で上記のメラミン-ホルムアルデヒドフォームに使用される。
【0027】
あらゆる実施形態において、フルオロカーボン樹脂又はシリコーン樹脂を少なくとも1つの疎水化剤として使用してよい。好ましくは、疎水化剤は、水中のエマルジョンの形態で、又はメタノール、エタノール、アセトン又はペンタンなどの揮発性有機溶媒中の溶液として使用される。不燃性及び労働安全面の理由から、好ましくは、少なくとも1つの疎水化剤は水中のエマルジョンの形態で使用される。
【0028】
あらゆる実施形態において、少なくとも1つの疎水化剤は、好ましくは、有機修飾シロキサン及びシランから選択される。疎水化剤として適した、反応性有機修飾シロキサン及びシランをベースにした無溶媒エマルジョンは、Evonik社からTegosivin(登録商標)HE328として市販されている。
【0029】
工程a)
メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物は、別々に調製してよく、又は市販されている、メラミン及びホルムアルデヒドの2つの成分の予備縮合物を使用してもよい。好ましくは、メラミンのホルムアルデヒドに対するモル比が、5:1~1.3:1、より好ましくは3.5:1~1.5~1の範囲であるメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物が使用される。好ましくは、数平均分子量Mは、200g/モル~1000g/モルの範囲である。修飾されていないメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物が好ましい。
【0030】
アニオン性、カチオン性及び非イオン性界面活性剤、並びにそれらの混合物も、分散剤/乳化剤として使用することができる。
【0031】
有用なアニオン性界面活性剤には、例えば、ジフェニレンオキシドスルホネート、アルカン及びアルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、脂肪アルコールサルフェート、エーテルサルフェート、α-スルホ脂肪酸エステル、アシルアミノアルカンスルホネート、アシルイセチオネート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、アルキル及びアルキルエーテルホスフェートが含まれる。有用な非イオン性界面活性剤には、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、アミンオキシド、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンエステル及びアルキルポリグリコシドが含まれる。有用なカチオン性乳化剤には、例えば、アルキルトリアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩及びアルキルピリジニウム塩が含まれる。
【0032】
分散剤/乳化剤は、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に基づいて、0.2質量%~5質量%の量で添加することができる。
【0033】
好ましくは、混合物Mは、50~90質量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、10~50質量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物を含む界面活性剤混合物を含み、この質量パーセンテージはそれぞれ、界面活性剤混合物の総質量に基づくものである。
【0034】
硬化剤として、メラミン樹脂のさらなる縮合を触媒する酸性化合物を使用することが可能である。これらの硬化剤の量は一般に、0.01質量%~20質量%の範囲、及び好ましくは0.05質量%~5質量%の範囲である(すべて予備縮合物に基づく)。有用な酸性化合物には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸、アミドスルホン酸、酸無水物及びそれらの混合物からなる群から選択される有機及び無機酸が含まれる。好ましくは、ギ酸が硬化剤として使用される。
【0035】
メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物の選択に応じて、混合物は発泡剤を含む。混合物中の発泡剤の量は一般に、フォームに所望される密度に依存する。好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に対する量は、フォームの密度が8~12kg/m、より好ましくは9~11kg/mである量で選択される。
【0036】
原則として、本発明の方法では、物理的及び化学的発泡剤の両方を使用することができる。
【0037】
有用な物理的発泡剤には、例えば炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ハロゲン化、より具体的には塩素化及び/又はフッ素化された、炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、アルコール、例えばメタノール、エタノール、nプロパノール又はイソプロパノール、エーテル、ケトン及びエステル、例えば、液体形態のギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル又は酢酸エチル、又はガスとしての空気、窒素又は二酸化炭素が含まれる。
【0038】
有用な化学的発泡剤には、例えば、活性発泡剤として二酸化炭素を放出する、水と混合したイソシアネートが含まれる。さらに、酸と混合した炭酸塩及び重炭酸塩を使用することも可能であり、その場合、やはり二酸化炭素が生成される。アゾ化合物、例えばアゾジカルボンアミドも適している。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、混合物は、少なくとも1つの発泡剤をさらに含む。この発泡剤は、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に基づいて、0.5質量%~60質量%、好ましくは1質量%~40質量%、及びより好ましくは1.5質量%~30質量%の量で混合物中に存在する。沸点が0~80℃の物理的発泡剤を添加することが好ましい。好ましくは、ペンタンが発泡剤として使用される。
【0040】
予備縮合物は一般に、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物の懸濁液を加熱して発泡材料を得ることによって発泡させる。
【0041】
エネルギーの導入は、好ましくは、電磁照射を介して、例えば0.2~100GHz、好ましくは0.5~10GHzの周波数範囲で使用される混合物1kg当たり、5~400kW、好ましくは5~200kW、及びより好ましくは9~120kWの高周波放射を介して行ってよい。マグネトロンは、有用な誘電体放射源であり、1つのマグネトロン又は2つ以上のマグネトロンを同時に使用することができる。
【0042】
生成された発泡材料は最終的に乾燥させ、フォームから残留水分及び発泡剤を除去する。
【0043】
記載の方法は、任意の所望の形状の寸法に切断できる発泡材料のブロック/スラブを提供する。
【0044】
第1の実施形態において、工程a)は、好ましくは、以下の工程:
a1) 100質量部の少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、
2~4質量部、好ましくは2.2~3.8質量部、及びより好ましくは2.7~3.3質量部の少なくとも1つの硬化剤、
0.2~5質量部、好ましくは0.5~3質量部、及びより好ましくは1.25~2.3質量部の界面活性剤混合物、
0.1~5質量部、好ましくは0.5~4質量部、及びより好ましくは1.1~3.6質量部の無機酸の及び/又は有機カルボン酸の少なくとも1つの塩、
1~40質量部、好ましくは10~35質量部、及びより好ましくは15~21質量部の少なくとも1つの発泡剤、
0.2~8質量部、好ましくは1~5質量部の少なくとも1つのUV安定剤、
25~60質量部、好ましくは30~50質量部、及びより好ましくは36~44質量部の水、
を含む水性混合物Mを生成する工程、
a2) マイクロ波放射を使用して前記混合物Mを加熱及び発泡させる工程、
a3) 熱気及び/又は窒素を使用して150℃~290℃の温度範囲でフォームをアニーリングする工程、
からなる。
【0045】
工程b)
フォームの含浸は、任意の好適な方法によって、すなわち、WO2019/052825又はUS2008/0280126に記載のように実施してよい。
【0046】
第1から第3の実施形態において、工程b)は、好ましくは:
b1) 少なくとも1つの疎水化剤、場合により少なくとも1つのUV安定剤、さらなる添加剤及び水を混合する工程、
b2) 工程(b1)の混合物をメラミン-ホルムアルデヒドフォームに適用する工程、
b3) 混合物をフォームの細孔に導入するために、場合によりフォームをポストプレス(post-pressing)する工程、
b4) フォームを乾燥させる工程
からなる。
【0047】
工程b2)におけるフォームへの混合物は、フォームを混合物に浸すことによって、又は針での注入によってフォームに適用してよい。
【0048】
工程b3)における、混合物によるフォームのポストプレスによって、混合物が均一な分布でフォームの細孔に導入される。この目的のため、反対方向に回転する2つのローラーの間にフォームを通過させてよく、ここでローラーの距離は、フォームが一緒にプレスされるように選択する。適用された含浸混合物は、並べて配置された水平ローラーに適用され、その結果その場所で、フォームがローラーを通って動き、液体プールが形成される。ローラーの回転運動とフォームのプレスにより、混合物はプレスされて液体プールからフォームになる。混合物はフォームのウェブの周りに置かれるので、硬化後に閉じた表面を形成する。
【0049】
工程b4)において、乾燥は、好ましくは、乾燥オーブン内で40~200℃の範囲、特に好ましくは100~150℃の温度で、一定質量となるまで行う。
【0050】
本発明はさらに、本発明による方法によって得ることができるメラミン-ホルムアルデヒドフォームに関する。
【0051】
本発明によるメラミン-ホルムアルデヒドフォームは、航空機、船舶、鉄道及び自動車の構造、機械工学又は建物構造における防音及び/又は断熱のために、特に内壁及び外壁、屋根、ファサード、ドア及び床の絶縁に、使用できる。メラミン-ホルムアルデヒドフォームの好ましい用途は、道路、高速道路、及び鉄道線路に沿った防音壁への適用である。
【実施例
【0052】
以下、本発明をより詳細に、具体的には実施例を参照して説明するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0053】
測定方法:
ラム圧力値[N]:
メラミン-ホルムアルデヒドフォームの機械的/弾性特性を評価するためのあらゆるラム圧力値の測定は、次のように行った:直径8mm高さ10cmの円筒形鋼ラムを、直径11cm及び高さ5cmの円筒形フォームの試料に対して、フォーム試料が破壊するまで、直角に押し込んだ。フォーム試料が破壊するまでラムによって加えられた最大力(単位:N)は、以下でラム圧力値とも呼ばれ、フォームの機械的/弾性的品質に関する情報を提供する。ラム圧力値が大きいほど、メラミン-ホルムアルデヒドフォームの機械的/弾性的特性は良好である。
【0054】
吸水性:
疎水性は、DIN EN1609に準拠して、短期間の部分浸漬の吸水率Wとして決定した。次に、試験片(150×150×25mm)を空の水容器に入れ、水を添加する間部分的に水没したままであるようにして装填した。次に、試験片の下側が水位より10mm低くなるまで、水を注意深く容器に追加した。24時間後、試験片を取り出した。滴下時間10分後、再度秤量し、試験片の質量m24を測定した。1平方メートルあたりの1キログラム単位の水の吸収を、m24とmの差を平方メートル単位の試験片Aの下部境界表面で割ることによって計算した。DIN EN13162によると、試験結果は1.0kg/mの吸水率を超えてはならない。
【0055】
耐候性
フォームの試験試料を、ISO4892-2、方法Aに準拠して、Heraeus X450照射装置で照射及び湿度に供した。耐候性を測定するために、試料を1000時間、2000時間、及び3000時間で取り出した。その後、ISO1798に準拠して破断点伸びを決定した。照射前の試料と比較して、照射後に破断点伸びが低減されなかった場合、耐候性は良好であると判定した。
【0056】
燃焼試験
燃焼試験は、EN ISO11925-2(2010年)に準拠して行った。結果は、DIN EN13501-1(2010年)に準拠して事前に分類した。メラミン-ホルムアルデヒドフォームは、EN ISO11925-2(2010年)に準拠した燃焼試験において、150mm以下の炎の高さを有することが好ましい。
【0057】
使用した材料:
MF 平均分子量(数平均)Mが350g/モルであり、メラミン:ホルムアルデヒドのモル比が1:3であるメラミン:ホルムアルデヒド予備縮合物、これは、メラミン以外のさらなる熱硬化性樹脂を含まず、ホルムアルデヒド以外のさらなるアルデヒドを含まず、そして亜硫酸塩基を含まなかった。
【0058】
T1 C12/C14-アルキルサルフェート、ナトリウム塩。
T2 直鎖状の飽和C16/C18脂肪アルコールから作られたアルキルポリエチレングリコールエーテル。
UV1 Tinogard(登録商標)HS(ベンゼンスルホン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-(1-メチルプロピル)-、一ナトリウム塩、BASF SE社製)。
UV2 Tinogard(登録商標)Q(トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレート、BASF SE社製
UV3 Cibafast H(ナトリウム3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-sec-ブチル-4-ヒドロキシベンゼンスルホネート及びトリブチルシトレート)。
HA Tegosivin(登録商標)HE328(反応性有機修飾シロキサン及びシランに基づく無溶媒エマルジョン)
【0059】
比較例C3:
最初の工程において、100質量部のメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、MF、38質量部の水、1.2質量部のアニオン性界面活性剤T1、0.3質量部の非イオン性界面活性剤T2、2.5部のギ酸ナトリウム、3.0部のギ酸、2.5質量部のUV安定剤UV1(Tingogard(登録商標)HS)及び18質量部のペンタンを、20~35℃の温度で互いに混合した。混合物をポリプロピレンの発泡型に導入し、電子レンジでマイクロ波を照射した。マイクロ波照射後に得られたフォーム体を、循環空気オーブン中200℃で20分間アニーリングした。ラム圧力値は30Nであった。
【0060】
比較例C1:
比較例3は、UV安定剤UV1を添加せずに繰り返した。ラム圧力値は29Nであった。
【0061】
比較例C2:
比較例C3を、UV1の代わりに2.5質量部のUV安定剤UV2を添加して繰り返した。ラム圧力値は22Nであった。
【0062】
ラム圧力値からわかるように、UV1を発泡前に混合物に添加することにより、メラミン-ホルムアルデヒドフォームの機械的特性を劣化させることなく、UV安定剤UV1をフォームマトリックスに組み込むことができた。
【0063】
実施例2:
比較例C3のメラミン-ホルムアルデヒドフォームのシート状のブランク(厚さ50mm)を、5質量部の撥水剤Tegosivin(登録商標)HE328と995質量部の水とからなる分散液に浸漬した。続いて、含浸シートを2つの逆回転ローラー(Foulard、Mathis HVF5)の間の間隙に通し、そこから、一定質量が得られるまで、その後の130℃での乾燥に通した。結果を次の表1に示す。
【0064】
実施例3
比較例1のメラミン-ホルムアルデヒドフォームのシート状のブランク(厚さ50mm)を、5質量部の撥水剤Tegosivin(登録商標)HE328と、25質量部のUV安定剤UV2(Tinogard(登録商標)Q)と970質量部の水とからなる分散液に浸漬した。続いて、含浸シートを2つの逆回転ローラー(Foulard、Mathis HVF5)の間の間隙に通し、そこから、一定質量が得られるまで、その後の130℃での乾燥に通した。結果を次の表1に示す。
【0065】
比較例C4:
比較例1のメラミン-ホルムアルデヒドフォームのシート状のブランク(厚さ50mm)を、5質量部の撥水剤Tegosivin(登録商標)HE328と、995質量部の水とからなる分散液に浸漬した。続いて、含浸シートを2つの逆回転ローラー(Foulard、Mathis HVF5)の間の間隙に通し、そこから、一定質量が得られるまで、その後の130℃での乾燥に通した。結果を次の表1に示す。
【0066】
比較例C5
比較例1のメラミン-ホルムアルデヒドフォームのシート状のブランク(厚さ50mm)を、5質量部の撥水剤Tegosivin(登録商標)HE328と、25質量部のUV安定剤UV3(Cibafast(登録商標)H)と970質量部の水とからなる分散液に浸漬した。続いて、含浸シートを2つの逆回転ローラー(Foulard、Mathis HVF5)の間の間隙に通し、そこから、一定質量が得られるまで、その後の130℃での乾燥に通した。結果を次の表1に示す。
【0067】
【表1】