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  • 特許-測定器における自己診断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】測定器における自己診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20241118BHJP
   G01B 5/06 20060101ALI20241118BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G01B5/00 P
G01B5/06
H01L21/66 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023129794
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2020005530の分割
【原出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2023145773
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102365(JP,A)
【文献】特開2008-73785(JP,A)
【文献】特開2015-172526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する一対の測定器における自己診断装置であって、
一方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記一方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第1の計測手段と、
他方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記他方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第2の計測手段と、
前記第1の計測手段で計測された前記一方の測定器の前記接触子の高さと前記第2の計測手段で計測された前記他方の測定器の前記接触子の高さとの差が予め設定された所定範囲内であるか否かを演算し、前記一対の測定器の何れか一方に異常が生じていないかを診断する制御手段と、
を備えることを特徴とする測定器における自己診断装置。
【請求項2】
往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する測定器における自己診断装置であって、
前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記接触子の移動時間及び高さを計測する計測手段と、
前記計測手段の計測値を予め記憶された前記接触子の移動時間及び前記接触子の高さの関係を示した標準マップと比較して、前記測定器の動作状態を診断する制御手段と、
を備えることを特徴とする測定器における自己診断装置。
【請求項3】
往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する測定器における自己診断装置であって、
前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記接触子の移動時間及び高さを計測する計測手段と、
前記計測手段の計測値を予め記憶された前記測定器の測定動作が正常である場合の前記接触子の移動時間と比較して、前記測定器の動作状態を診断する制御手段と、
を備えることを特徴とする測定器における自己診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器の接触子が当接した測定面の高さを測定する測定器における自己診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造分野では、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)の表面を研削加工するウエハ研削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の研削装置は、インフィールド研削装置(BG、バックグラインダ)技術を適用した研削装置である。この研削装置では、例えば1ロットがスタートする前の始業前点検として、加工前のウエハの板厚、又は加工した後のウエハの板厚を計測する方法が採られ、板厚測定器の接触子を、基板載置台上に配置されているウエハの上面等に当接させて測定している。また、測定器自体の動作が正確に機能しているか否かの診断は、測定器を操作する作業者が目視で確認をしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3510177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定器自体の動作が正確に機能しているか否かの診断を、作業者が目視で確認して行う方法では、作業性が悪く、また良否の診断基準が作業者によって少しずつ異なるために、正確性に欠けるという問題点があった。さらに、診断をするにも、作業者の熟練度を必要とするという問題点等があった。また、接触子にスラッジ等が付着している場合、あるいは、測定器内部のオイルが劣化して正常に動作していないような状態では、測定器自体の動作が正確に機能しているか否かの診断は難しかった。
【0006】
そこで、測定器による測定の正確性を向上させるとともに、測定器自体の診断基準、に熟練を要することなく、また測定器の診断が簡単、かつ、正確に行うことができるようにする測定器における自己診断装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する一対の測定器における自己診断装置であって、一方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記一方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第1の計測手段と、他方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記他方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第2の計測手段と、前記第1の計測手段で計測された前記一方の測定器の前記接触子の高さと前記第2の計測手段で計測された前記他方の測定器の前記接触子の高さとの差が予め設定された所定範囲内であるか否かを演算し、前記一対の測定器の何れか一方に異常が生じていないかを診断する制御手段と、を備える測定器における自己診断装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、制御手段が、第1の計測手段で計測された一方の測定器における接触子の高さと、第2の計測手段で計測された他方の測定器における接触子の高さとの差を、予め設定された所定範囲であるか否かを演算して、一対の測定器の何れか一方に異常が生じていないかを自動的に診断することができる。これにより、一方の測定器における動作状態の可否判断と他方の測定器における動作状態の可否診断を、作業者の手間を煩わすことなく、簡単、かつ、正確に下して、必要な処理を迅速に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する測定器における自己診断装置であって、前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記接触子の移動時間及び高さを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値を予め記憶された前記接触子の移動時間及び前記接触子の高さの関係を示した標準マップと比較して、前記測定器の動作状態を診断する制御手段と、を備える測定器における自己診断装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、制御手段が、検出アーム部材における接触子が基準位置と測定面との間を移動する際に計測手段により計測された接触子の移動時間及び高さの測定値と、予め記憶された接触子の移動時間及び高さの関係を示した標準マップとを比較して、測定器の動作状態を自動的に診断することができる。これにより、測定器における動作状態の可否診断を、作業者の手間を煩わすことなく、簡単、かつ、正確に下して、必要な処理を迅速に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する測定器における自己診断装置であって、前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記接触子の移動時間及び高さを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値を予め記憶された前記測定器の測定動作が正常である場合の前記接触子の移動時間と比較して、前記測定器の動作状態を診断する制御手段と、を備える測定器における自己診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
発明によれば、測定器の接触子が基準位置と測定面との間を移動する際に、基準位置から測定面まで移動するのに要する時間及び高さを計測手段により計測し、計測手段により計測された時間及び高さから測定器による板厚測定移動が正常に行われているか否か等を自動的に診断することができるので、作業者の手間を煩わすことなく、簡単、かつ、正確に下して、必要な処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る接触式板厚測定器における自己診断装置の実施例を模式的に示す図である。
図2】同上接触式板厚測定器の側面図である。
図3】同上自己診断装置の一動作例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、測定器による測定の正確性を向上させるとともに、測定器自体の診断基準に、熟練を要することなく、また測定器の診断が簡単、かつ、正確に行うことができるようにする測定器における自己診断装置を提供するという目的を達成するために、往復移動可能な検出アーム部材に設けた接触子を測定面に当接させて前記測定面の高さを検出する一対の測定器における自己診断装置であって、一方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記一方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第1の計測手段と、他方の測定器の前記検出アーム部材が基準位置と前記測定面との間を移動する際に、前記他方の測定器の前記接触子の移動時間及び高さを計測する第2の計測手段と、前記第1の計測手段で計測された前記一方の測定器の前記接触子の高さと前記第2の計測手段で計測された前記他方の測定器の前記接触子の高さとの差が予め設定された所定範囲内であるか否かを演算し、前記一対の測定器の何れか一方に異常が生じていないかを診断する制御手段と、を備える構成としたことにより実現した。
【実施例
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0016】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0017】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0018】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本実施例の接触式板厚測定器の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0019】
図1及び図2は本発明に係る接触式板厚測定器10における自己診断装置11を模式的に示すものであり、図1はその自己診断装置11の平面図、図2は接触式板厚測定器10の側面図である。
【0020】
図1及び図2において、本実施例の自己診断装置11は、半導体製造装置において、例えば被測定基板であるウエハWの、表面を平坦化する化学的機械的研磨(以下、「CMP」と言う)を行うのに適用した場合である。自己診断装置11は、基板載置台101のチャックテーブル102上に載置された、被測定基板であるウエハWの板厚を検出する接触式板厚測定器10の測定動作における維持が、正常になされているか否かの判断を自動的に行う場合を一例としている。しかし、本実施例の自己診断装置11は、ウエハWに限らず、一般的な基板を取り扱う場合にも適用できるものである。
【0021】
また、接触式板厚測定器10は、一対の接触式板厚測定器10A、10Bを有し、自己診断装置11は、その一対の接触式板厚測定器10A、10Bの動作状態を各々診断できる構成となっている。
【0022】
接触式板厚測定器10Aと接触式板厚測定器10Bは、装置基体12上に、互いに平面的に固定配置された測定器本体部13と、測定器本体部13の一端側に各々設けたリンク結合部14を支点として、上下方向に往復移動可能に取り付けられている検出アーム部材15と、を備えている。
【0023】
検出アーム部材15と測定器本体部13との間を結合しているリンク結合部14の外周部分は、例えばゴムや軟質プラスチック等で袋状に形成されたカバーとしてなるブーツ19で覆われている。
【0024】
また、検出アーム部材15の先端側には、接触子16が上下方向に貫通して取り付けられている。
【0025】
そして、図1に示すように、接触式板厚測定器10Aは、検出アーム部材(第2の検出アーム部材)15の接触子16がチャックテーブル102の上面(ベース)と当接可能な位置に配置され、接触式板厚測定器10Bは、検出アーム部材15(第1の検出アーム部材)の接触子16がチャックテーブル102上の載置面に載置されるウエハWの上面(一面)と当接可能な位置に配置されている。
【0026】
また、図2に示すように、接触式板厚測定器10Aにおける検出アーム部材15の初期位置は、チャックテーブル102の上面から接触子16が離れた基準位置Uであり、接触式板厚測定器10Bの検出アーム部材15の初期位置は、ウエハWの上面から接触子16が離れた、接触式板厚測定器10Aにおける検出アーム部材15の基準位置Uと同じ基準位置Uに設定してある。この基準位置Uは変更可能である。そして、接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bが、後述するようにして動作されると、それぞれリンク結合部14を介して接触式板厚測定器10A又は接触式板厚測定器10Bに連結されている検出アーム部材15の接触子16が、各々下方向に回動されて、それぞれの接触子16が対応するチャックテーブル102の上面(ベース)又はウエハWの上面(一面)と当接するように構成されている。
【0027】
接触式板厚測定器10Aの測定器本体部13と接触式板厚測定器10Bの測定器本体部13は、エアの制御で各々駆動されて、検出アーム部材15の上下方向における回動を行わせるようになっている。すなわち、接触式板厚測定器10Aの測定器本体部13と接触式板厚測定器10Bの測定器本体部13は、吸気パイプ17と排気パイプ18に接続されている図示しないエアシリンダを内部に設けている。そして、吸気パイプ17を通してエアシリンダにエアが吹き込まれると、基準位置Uに待機されている検出アーム部材15を、リンク結合部14を支点として下方向へ回動させ、各接触子16を対応するチャックテーブル102の上面又はウエハWの上面に当接させることができるようになっている。また、その後、排気パイプ18を通してエアシリンダ内のエアが抜かれると、検出アーム部材15を、リンク結合部14を支点として上方へ回動させ、基準位置Uまで再び戻して待機させることができる構成になっている。
【0028】
また、接触式板厚測定器10Aの測定器本体部13には、検出アーム部材15が、基準位置Uからチャックテーブル102の上面と当接するまでの時間t1を測定する計測手段(第2の計測手段)20が設けられており、接触式板厚測定器10Bの測定器本体部13には、検出アーム部材15が、基準位置UからウエハWの上面と当接するまでの時間t2及び接触子16の高さを測定する計測手段(第1の計測手段)20が設けられている。そして、これら接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bでは、各検出アーム部材15を同時に基準位置Uから下方に回動させて、接触子16を下降させ、それぞれの接触子16が対応する面と当接するまでの時間t1、t2を計測手段20により各々測定し、この計測手段20により測定された時間情報及び位置情報をリアルタイムに制御手段21へ送るようになっている。また、制御手段21では、計測手段20からの時間情報及び位置情報を基に、ウエハWの板厚を測定する構成となっている。
【0029】
また、制御手段21は、ウエハWの厚みを測定する以外に、接触式板厚測定器10及び自己診断装置11の全体の動作及び診断を制御実行するものであって、例えばマイクロコンピュータで構成されており、マイクロコンピュータに組み込まれているプログラムに従って、必要な演算処理を行いつつ、所定の手順で接触式板厚測定器10及び自己診断装置11を制御する。
【0030】
ところで、本実施例のように、測定器本体部13にリンク結合部14で連結されているとともに、リンク結合部14の外周部分がブーツ19で覆われている接触式板厚測定器10Aと、同じく測定器本体部13にリンク結合部14で連結されているとともに、リンク結合部14の外周部分がブーツ19で覆われている接触式板厚測定器10Bにあっては、リンク結合部14及びブーツ19が摩耗及び劣化により機械疲労を起こすと、接触子16が基準位置Uからチャックテーブル102の上面に当接するまでの時間、又は、基準位置UからウエハWの上面に当接するまでの時間に、誤差が生じて来る。そこで、本実施例では、計測手段20で測定された時間情報及び位置情報から、制御手段21が、接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの動作状態を各々診断して、接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの動作状態の良否の判定を自動的に行うことができるようにしている。
【0031】
次に、計測手段20で測定された時間情報及び位置情報から、制御手段21が、接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの動作状態を診断して、制御手段21が良否判定を自動的に行う一例を、図3に示すグラフを用いて説明する。
【0032】
図3は、縦軸が基準位置Uとチャックテーブル102の上面(載置面)との間を移動する距離、又は、基準位置UとウエハWの上面との間を移動する距離を示す測定値(μm)であり、横軸がチャックテーブル102の上面(ベース)、又は、基準位置UからウエハWの上面(一面)に接触子16が当接するまでに要する測定時間(sec)を示している。また、同図中、曲線(a)は接触式板厚測定器10における検再び正常状態の時に描かれると思われる測定時間毎の値データの一例であり、曲線(b)は接触式板厚測定器10が異常状態の時に描かれる測定時間毎の値データの一例である。なお、曲線(a)は、計測手段20の計測値として予め記憶しておき、接触子16の移動時間及び接触子16の高さの関係を示した標準マップ標準時間マップとして使用する場合もある。
【0033】
接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの測定動作が正常である場合、接触式板厚測定器10Aの測定値又は接触式板厚測定器10Bの測定値は、曲線(a)に略倣う変化を示す。すなわち、測定が開始されると、接触式板厚測定器10A又は接触式板厚測定器10Bの、検出アーム部材15における接触子16は、基準位置Uとチャックテーブル102の載置面との間を移動する際の移動時間又は基準位置UとウエハWの表面との間を移動する際の移動時間は約2~3秒で到達する。しかし、検出アーム部材15の動きが異常である場合は、接触式板厚測定器10Aにおける検出アーム部材15の接触子16が、基準位置Uからチャックテーブル102の上面(載置面)に移動する時間及び高さ、あるいは接触式板厚測定器10Bにおける検出アーム部材15の接触子16が、基準位置UからウエハWの上面に移動する時間及び高さは、曲線(a)以外の例えば曲線(b)のような曲線を描いて到達する。
【0034】
ここで、曲線(a)以外の、例えば曲線(b)のような曲線を描いて、基準位置Uからチャックテーブル102の上面又はウエハWの上面に到達する場合は、接触式板厚測定器10A又は接触式板厚測定器10Bの検出アーム部材15の移動動作は、曲線(a)で描かれる標準時の測定時間に対して時間がかかり過ぎている。そのため、制御手段21は、標準時の測定時間に対して時間がかかり過ぎていて異常であるという判断を下す。この異常の原因は、リンク結合部14やブーツ19等が劣化しているため、あるいは接触子16にスラッジ等が付着しているため、又は測定器本体部13内部のオイルが劣化しているために、正常に動作していない等の原因が考えられる。また、このとき、制御手段21は、制御手段21に接続されている報知手段22から警報を発生させる。これにより、接触式板厚測定器10A又は接触式板厚測定器10Bにおける検出アーム部材の動作状態が異常であると診断されたことを、外部に報知する。これにより、作業者等に、速やかに必要なメンテナンスを促すことができる。
【0035】
したがって、本実施例における自己診断装置11では、検出アーム部材15の接触子16が検出アーム部材15と共に、基準位置UとウエハWの一面との間を移動する際、又は、基準位置Uからチャックテーブル102の載置面との間を移動する際に、検出アーム部材15の接触子16の移動時間及び高さを計測手段20により計測し、計測手段20により計測された計測値と、予め計測して記憶されている接触子16の移動時間及び高さの関係を示した、例えば図3の曲線(a)を標準マップとしてなる測定値とを、制御手段21が演算比較して、接触式板厚測定器10における検出アーム部材15の動作状態を自動的に診断することができる。これにより、検出アーム部材における動作状態の可否診断を、作業者の手間を煩わすことなく、簡単、かつ、正確に下して、必要な処理を迅速に行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施例のような接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの動作状態を各々診断する構成に限定されず、計測手段20で測定された時間情報及び位置情報から、制御手段21が、接触式板厚測定器10A及び接触式板厚測定器10Bの相対的な動作状態に基づいて、接触式板厚測定器10A又は接触式板厚測定器10Bの動作状態の良否判定を行うように構成されても構わない。
【0037】
すなわち、正常に動作する検出アーム部材15の場合には、一対の検出アーム部材15は一様に昇降するため、同一時間における各接触子16の高さの差であるドリフト量はほぼゼロで推移する。したがって、一対の検出アーム部材15に各々接続されている、一対の計測手段20でそれぞれ測定された、各接触子16のドリフト量が、予め設定された所定範囲(例えば、3μm程度)にあるか否かを制御手段21で演算して、その結果に基づいて一対の検出アーム部材15の何れか一方に異常が生じていないかを自動的に診断することも可能である。
【0038】
また、一対の検出アーム部材15を用いた構造に変えて、1つの検出アーム部材15を用いた板厚の測定構成であっても良いが、一対の検出アーム部材15を用いて診断した場合には、2つの検出アーム部材をモニタすることで、熱や測定環境による誤差が無くなり、より正確な診断を行うことができる。
【0039】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0040】
10、10A、10B:接触式板厚測定器
11 :自己診断装置
12 :装置基体
13 :測定器本体部
14 :リンク結合部
15 :検出アーム部材
16 :接触子
17 :吸気パイプ
18 :排気パイプ
19 :ブーツ
20 :計測手段
21 :制御手段
22 :報知手段
101 :基板載置台
102 :チャックテーブル
U :基準位置
W :ウエハ(被測定基板)
図1
図2
図3