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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】パッケージおよびパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20241118BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241118BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241118BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241118BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241118BHJP
【FI】
H01L23/04 E
H01L23/48 K
H01L23/02 H
H01L25/04 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023538453
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2022028038
(87)【国際公開番号】W WO2023008252
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021121281
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】三原 芳和
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】実公昭56-036137(JP,Y1)
【文献】特開2005-019922(JP,A)
【文献】特開2005-086057(JP,A)
【文献】特開平09-326464(JP,A)
【文献】特開平07-183448(JP,A)
【文献】特開平07-022572(JP,A)
【文献】特開2020-155699(JP,A)
【文献】特開2006-222471(JP,A)
【文献】特開平11-111909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
H01L 23/48
H01L 23/02
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されることになる実装面を有するヒートシンク板と、
前記ヒートシンク板に取り付けられ、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲む枠体と、
前記枠体に取り付けられ、磁性体からなるリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部を覆うめっき層と、
を備え、
前記めっき層は、
前記リードフレームの前記少なくとも一部を直接的に覆い、非磁性体からなり、金およびパラジウムのいずれとも異なる金属からなり、第1厚みを有する第1層と、
前記第1層を直接的に覆い、金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなり、第2厚みを有する第2層と、
を含み、前記第1厚みと前記第2厚みとの合計が1μm以上であり、前記第2厚みが1μm未満であり、
前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている、パッケージ。
【請求項2】
請求項に記載のパッケージであって、
前記ヒートシンク板は前記実装面と反対の底面を有しており、前記底面が前記めっき層によって覆われている、パッケージ。
【請求項3】
請求項に記載のパッケージであって、
前記ヒートシンク板の表面は、前記枠体に面する部分と、他の部分とからなり、前記他の部分の全体が前記めっき層によって覆われている、パッケージ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記金属は、銅および銀の少なくともいずれかを含む、パッケージ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記第1厚みが0.5μm以上である、パッケージ。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージと、
前記ヒートシンク板の前記実装面上に実装された前記電子部品と、
前記電子部品を封止するように前記パッケージに取り付けられた蓋体と、
を備え、
前記電子部品は3.6GHz以上の動作周波数を有している、パワーモジュール。
【請求項7】
請求項に記載のパワーモジュールであって、
前記パッケージの前記第2層は、前記第1層からの前記金属の原子拡散を有している、パワーモジュール。
【請求項8】
電子部品が実装されることになる実装面を有するヒートシンク板と、
前記ヒートシンク板に取り付けられ、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲む枠体と、
前記枠体に取り付けられ、非磁性体からなるリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部を直接的に覆い、金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなり、1μm未満の厚みを有するめっき層と、
を備え
前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている、パッケージ。
【請求項9】
請求項に記載のパッケージであって、
前記ヒートシンク板は前記実装面と反対の底面を有しており、前記底面が前記めっき層によって覆われている、パッケージ。
【請求項10】
請求項に記載のパッケージであって、
前記ヒートシンク板の表面は、前記枠体に面する部分と、他の部分とからなり、前記他の部分の全体が前記めっき層によって覆われている、パッケージ。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記リードフレームは銅または銅合金からなる、パッケージ。
【請求項12】
請求項8から10のいずれか1項に記載のパッケージと、
前記ヒートシンク板の前記実装面上に実装された前記電子部品と、
前記電子部品を封止するように前記パッケージに取り付けられた蓋体と、
を備え、
前記電子部品は3.6GHz以上の動作周波数を有している、パワーモジュール。
【請求項13】
電子部品が実装されることになる実装面を有するヒートシンク板と、前記ヒートシンク板に取り付けられ、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲む枠体と、前記枠体に取り付けられ、非磁性体からなるリードフレームと、前記リードフレームの少なくとも一部を直接的に覆い、金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなり、1μm未満の厚みを有するめっき層と、を備えるパッケージと、
前記ヒートシンク板の前記実装面上に実装された前記電子部品と、
前記電子部品を封止するように前記パッケージに取り付けられた蓋体と、
を備え、
前記電子部品は3.6GHz以上の動作周波数を有しており、
前記パッケージの前記めっき層は、前記リードフレームからの銅原子拡散を有している、パワーモジュール
【請求項14】
請求項13に記載のパワーモジュールであって、
前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている、パワーモジュール
【請求項15】
請求項14に記載のパワーモジュールであって、
前記ヒートシンク板は前記実装面と反対の底面を有しており、前記底面が前記めっき層によって覆われている、パワーモジュール
【請求項16】
請求項14に記載のパワーモジュールであって、
前記ヒートシンク板の表面は、前記枠体に面する部分と、他の部分とからなり、前記他の部分の全体が前記めっき層によって覆われている、パワーモジュール
【請求項17】
請求項13から16のいずれか1項に記載のパワーモジュールであって、
前記リードフレームは銅または銅合金からなる、パワーモジュール
【請求項18】
電子部品が実装されることになる実装面を有するヒートシンク板と、
前記ヒートシンク板に取り付けられ、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲む枠体と、
前記枠体に取り付けられ、磁性体からなるリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部を直接的に覆い、銀からなり、1μm以上の厚みを有し、露出された表面を有するめっき層と、
を備え
前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている、パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パッケージおよびパワーモジュールに関し、特に、電子部品が実装されることになるヒートシンク板を有するパッケージと、パッケージと電子部品と蓋体とを有するパワーモジュールと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006-128588号公報(特許文献1)は、大電力用の電子部品を収納するための電子部品収納用パッケージに用いられるリード端子を開示している。上記公報が主張するところによれば、リード端子は、Fe(鉄)-Ni(ニッケル)-Co(コバルト)合金、Fe-Ni合金、Fe、Cu(銅)、またはCu合金などの金属からなり、好ましくは、CuまたはCu合金のような、Cu成分を含む金属からなる。さらに好ましくは、リード端子は、Fe-Ni-Co合金、Fe-Ni合金、またはFeなどの芯材と、その周りを覆うCuとを有する材料からなり、この構成により、リード端子において高周波信号を効率よく伝送させることができるとともに、Ag(銀)ろう等の接合材を用いてリード端子を固定させる際に、熱膨張差による熱応力を小さいものとすることができる。リード端子を伝送する電気信号が高周波信号である場合、表皮効果により電気信号がリード端子の表面に近い部分だけを伝送するようになるので、Cuはリード端子の表面に近い部分だけに設けられていればよく、めっき法などによってリード端子の表面に0.5~5μm程度に薄くCuを被着させただけでも、高周波信号を効率よく伝送させることが可能となる。
【0003】
特開2014-3134号公報(特許文献2)は、セラミック枠体とリード端子とを有するパッケージを開示している。リード端子には、セラミック枠体のセラミックと熱膨張係数が近似するFe-Ni-Co系合金またはFe-Ni系合金などからなる金属板が用いられている。また上記公報は、ボンディングワイヤでの接続、または、外気との接触による酸化もしくは硫化の防止などのために、表面に露出する金属部分に、Niめっき被膜およびAu(金)めっき被膜を形成することを開示している。
【0004】
特開2015-88757号公報(特許文献3)は、導電性リードを有するパッケージを開示している。導電性リードは、合金ではなく固体銅から形成されてよい。上記公報が主張するところによれば、合金ではなく固体銅を使用することによって、導電性が改善される。固体銅は、コスト上の利点も提供する。パッケージを含むシステムには、その製造のための様々な段階において、例えばNiAu(ニッケル/金)またはNiPdAu(ニッケル/パラジウム/金)を使用して、めっきをしてよい。
【0005】
特開2020-155699号公報(特許文献4)は、樹脂を含む枠体と、それに取り付けられた端子電極と、純度95.0wt%(重量パーセント)以上でCuを含有するヒートシンク板と、を有するパッケージを開示している。端子電極の材料は、Fe-Ni合金であってもよいが、好ましくは純度90wt%以上でCuを含有する材料である。端子電極の表面には、ボンディングワイヤなどとの接合性を確保する目的で、ニッケルめっきと、当該ニッケルめっき上の金めっきとが施されてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-128588号公報
【文献】特開2014-3134号公報
【文献】特開2015-88757号公報
【文献】特開2020-155699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開2014-3134号公報(特許文献2)によれば、磁性体からなるリード端子上にNiめっきとAuめっきとが設けられた構成が開示されている。ここで、パッケージの製造コストを低減するためには、高価な材料を用いるAuめっきの厚みは、必要最小限であることが望ましい。上記公報に開示された構成においては、Auめっきの厚みを薄くするほど、磁性体であるNiめっきが、より表面近くに位置することになる。磁性体は非磁性体に比して表皮効果の影響を大きく受ける。本発明者らの検討によれば、非常に高い周波数が用いられる場合において、パッケージに設けられたリード端子(リードフレーム)の、表皮効果に起因しての高周波損失が、有意な問題となり得る。近年、第5世代移動通信システム(5G)の導入などにともなって、3.6GHz以上の高周波の利用が活発化してきており、その場合、この問題はより顕著となる。具体的には、5G向け基地局のアンプを構成するためのパワーモジュールを製造するためのパッケージにおいて、この問題は顕著となる。Auめっきの厚みに関連したこの問題は、本発明者らが知る限り、パッケージの技術分野においてこれまで看過されていた。Auめっきに代わって、またはそれと共にPd(パラジウム)めっきが用いられる場合も、同様である。本発明者らはこの問題に着目し、そしてさらに検討を重ねることによって、後述する本発明の一の態様に想到した。
【0008】
特開2020-155699号公報(特許文献4)によれば、Cuを主成分とし非磁性体からなる端子電極に、NiめっきとAuめっきとを順に施すことが開示されている。ここで、パッケージの製造コストを低減するためには、高価な材料を用いるAuめっきの厚みは、必要最小限であることが望ましい。上記公報に開示された構成においては、Auめっきの厚みを薄くするほど、磁性体であるNiめっきが、より表面近くに位置することになる。磁性体は非磁性体に比して表皮効果の影響を大きく受ける。本発明者らの検討によれば、非常に高い周波数が用いられる場合において、パッケージに設けられた端子電極(リードフレーム)の、表皮効果に起因しての高周波損失が、有意な問題となり得る。近年、5Gの導入などにともなって、3.6GHz以上の非常に高い周波数の利用が活発化してきており、その場合、この問題はより顕著となる。具体的には、5G向け基地局のアンプを構成するためのパワーモジュールを製造するためのパッケージにおいて、この問題は顕著となる。Auめっきの厚みに関連したこの問題は、本発明者らが知る限り、パッケージの技術分野においてこれまで看過されていた。Auめっきに代わって、またはそれと共にPd(パラジウム)めっきが用いられる場合も、同様である。本発明者らはこの問題に着目し、そしてさらに検討を重ねることによって、後述する本発明の他の態様に想到した。
【0009】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造コストと高周波損失とを同時に抑制することができる、パッケージおよびパワーモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様は、ヒートシンク板と、枠体と、リードフレームと、めっき層とを有するパッケージである。前記ヒートシンク板は、電子部品が実装されることになる実装面を有している。前記枠体は、前記ヒートシンク板に取り付けられており、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲んでいる。前記リードフレームは、前記枠体に取り付けられており、磁性体からなる。前記めっき層は、前記リードフレームの少なくとも一部を覆っている。前記めっき層は、第1厚みを有する第1層と、第2厚みを有する第2層とを含む。前記第1層は、前記リードフレームの前記少なくとも一部を直接的に覆っており、非磁性体からなり、金およびパラジウムのいずれとも異なる金属からなる。前記第2層は、前記第1層を直接的に覆っており、金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなる。前記第1厚みと前記第2厚みとの合計が1μm以上であり、前記第2厚みが1μm未満である。
【0011】
第2態様は、第1態様に係るパッケージであって、前記金属は、銅および銀の少なくともいずれかを含む。
【0012】
第3態様は、第1または第2態様に係るパッケージであって、前記第1厚みが0.5μm以上である。
【0013】
第4態様は、第1から第3態様のいずれかひとつに係るパッケージであって、前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている。
【0014】
第5態様は、第4態様に係るパッケージであって、前記ヒートシンク板は前記実装面と反対の底面を有しており、前記底面が前記めっき層によって覆われている。
【0015】
第6態様は、第4態様に係るパッケージであって、前記ヒートシンク板の表面は、前記枠体に面する部分と、他の部分とからなり、前記他の部分の全体が前記めっき層によって覆われている。
【0016】
第7態様は、第1から第6態様のいずれかひとつに係るパッケージと、前記ヒートシンク板の前記実装面上に実装された前記電子部品と、前記電子部品を封止するように前記パッケージに取り付けられた蓋体と、を有するパワーモジュールである。前記電子部品は3.6GHz以上の動作周波数を有している。
【0017】
第8態様は、第7態様に係るパワーモジュールであって、前記パッケージの前記第2層は、前記第1層からの前記金属の原子拡散を有している。
【0018】
第9態様は、ヒートシンク板と、枠体と、リードフレームと、めっき層とを有するパッケージである。前記ヒートシンク板は、電子部品が実装されることになる実装面を有している。前記枠体は、前記ヒートシンク板に取り付けられており、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲んでいる。前記リードフレームは、前記枠体に取り付けられており、非磁性体からなる。前記めっき層は、前記リードフレームの少なくとも一部を直接的に覆っており、金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなり、1μm未満の厚みを有している。
【0019】
第10態様は、第9態様に係るパッケージであって、前記リードフレームは銅または銅合金からなる。
【0020】
第11態様は、第9または第10態様に係るパッケージであって、前記めっき層は前記ヒートシンク板の前記実装面を覆っている。
【0021】
第12態様は、第11態様に係るパッケージであって、前記ヒートシンク板は前記実装面と反対の底面を有しており、前記底面が前記めっき層によって覆われている。
【0022】
第13態様は、第11態様に係るパッケージであって、前記ヒートシンク板の表面は、前記枠体に面する部分と、他の部分とからなり、前記他の部分の全体が前記めっき層によって覆われている。
【0023】
第14態様は、第9から第13態様のいずれかひとつに係るパッケージと、前記ヒートシンク板の前記実装面上に実装された前記電子部品と、前記電子部品を封止するように前記パッケージに取り付けられた蓋体と、を有するパワーモジュールである。前記電子部品は3.6GHz以上の動作周波数を有している。
【0024】
第15態様は、第14態様に係るパワーモジュールであって、前記パッケージの前記めっき層は、前記リードフレームからの銅原子拡散を有している。
【0025】
第16態様は、ヒートシンク板と、枠体と、リードフレームと、めっき層とを有するパッケージである。前記ヒートシンク板は、電子部品が実装されることになる実装面を有している。前記枠体は、前記ヒートシンク板に取り付けられており、前記ヒートシンク板の前記実装面を囲んでいる。前記リードフレームは、前記枠体に取り付けられており、磁性体からなる。前記めっき層は、前記リードフレームの少なくとも一部を直接的に覆っており、銀からなり、1μm以上の厚みを有しており、露出された表面を有している。
【発明の効果】
【0026】
上記の一の態様に従うパッケージによれば、第1に、高価な材料である金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなる第2層の厚みである第2の厚みが1μm未満である。これにより、パッケージの製造コストを抑制することができる。第2に、第1層およびそれを直接的に覆う第2層が、リードフレームの表面上において、厚み1μm以上の非磁性膜を構成する。これにより、リードフレームを流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が、抑制される。以上から、パッケージの製造コストと、高周波損失とを、同時に抑制することができる。
【0027】
上記の他の態様に従うパッケージによれば、第1に、高価な材料である金、パラジウムおよび銀の少なくともいずれかからなるめっき層の厚みが1μm未満である。これにより、パッケージの製造コストを抑制することができる。第2に、めっき層と、非磁性体からなるリードフレームの、めっき層によって覆われた部分とによって、リードフレームの表面に沿って、十分な厚みを有する非磁性導体領域が確保される。これにより、リードフレームを流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が、抑制される。以上から、パッケージの製造コストと、高周波損失とを、同時に抑制することができる。
【0028】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態1におけるパワーモジュールの構成を概略的に示す上面図である。
図2図1の線II-IIに沿う概略的な断面図である。
図3】実施の形態1におけるパッケージの構成を概略的に示す上面図である。
図4図3の線IV-IVに沿う概略的な断面図である。
図5図4の領域Vの拡大図である。
図6】各種材料にとっての周波数と、表皮効果における表皮深さとの関係を概略的に示すグラフ図である。
図7】実施の形態2におけるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
図8】実施の形態3におけるパワーモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
図9】実施の形態3におけるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
図10図9の領域Xの拡大図である。
図11】実施の形態4におけるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
図12】実施の形態5におけるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
図13】実施の形態6におけるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて実施の形態について説明する。なお、以下の図面には、説明の便宜上、XYZ直交座標系が付されていることがある。また、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しており、明細書においてその説明は繰返さないことがある。また、用語「金属」は、特段の記載をともなわない限り、純金属および合金のいずれをも意味し得る。
【0031】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1におけるパワーモジュール901の構成を概略的に示す上面図である。図2は、図1の線II-IIに沿う概略的な断面図である。パワーモジュール901は、キャビティCVを有するパッケージ101と、キャビティCV内においてパッケージ101上に実装されたパワー半導体素子200(電子部品)と、パワー半導体素子200を封止するようにパッケージ101に取り付けられた蓋体300とを有している。またパワーモジュール901は、接着層46と、接合層42と、ボンディングワイヤ205(配線部材)とを有している。
【0032】
パワー半導体素子200は高周波用半導体素子であり、よってパワーモジュール901は高周波モジュールである。パワー半導体素子200は、3.6GHz以上の動作周波数を有していてよい。3.6GHz程度以上の高い動作周波数を用いるためには、パワー半導体素子200がワイドバンドギャップ半導体を用いていることが好ましい。例えば、パワー半導体素子200はGaN(窒化ガリウム)トランジスタである。なおパワー半導体素子200の動作周波数は、6.0GHz以下であってよい。
【0033】
詳しくは後述するが、パッケージ101は、キャビティCVに面する実装面RMを有するヒートシンク板50を含む。パワー半導体素子200は実装面RM上に実装されている。実装面RMとパワー半導体素子200とは、熱硬化性樹脂と金属とを含有する接合層42を介して互いに接合されていることが好ましい。接合層42の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。接合層42の金属は、銀を含むことが好ましい。接合層42は、熱硬化性樹脂を含まずに金属だけで構成されていてもよい。なお、パワー半導体素子200に加えて他の電子部品(図示せず)が実装面RM上に配置されていてよい。
【0034】
接着層46はパッケージ101と蓋体300とを互いに接着している。これにより、パワー半導体素子200は、キャビティCV内に封止されている。よってパワー半導体素子200は、高い気密性で、水蒸気その他の大気中のガスが侵入しないように外部環境から保護されている。
【0035】
ボンディングワイヤ205は、パワー半導体素子200と、パッケージ101のリードフレーム91(電極端子)とを、互いにつないでいる。これにより、パワー半導体素子200と、リードフレーム91とが、互いに電気的に接続されている。なお、パワー半導体素子200とリードフレーム91との間の電気的接続は、ボンディングワイヤ205とは異なる配線部材よって確保されてもよく、その場合、ボンディングワイヤ205は必ずしも必要ではない。
【0036】
図3は、実施の形態1におけるパッケージ101の構成を概略的に示す上面図である。図4は、図3の線IV-IVに沿う概略的な断面図である。図5は、図4の領域Vの拡大図である。パッケージ101は、パワーモジュール901(図1および図2)の製造用に用いられることになる部品である。パワーモジュール901の製造において、パッケージ101は、蓋体300(図2)が取り付けられることによって、封止されたキャビティCVを構成することになる。パッケージ101は、ヒートシンク板50と、枠体81と、リードフレーム91と、めっき層20とを有している。本実施の形態1においてはさらに、パッケージ101は、樹脂接着層61と、ヒートシンク接着層41と、追加接着層62と、追加枠体82とを有している。
【0037】
ヒートシンク板50は、パワー半導体素子200が実装されることになる実装面RMを有している。図3および図4においては、実装面RM上にパワー半導体素子200が未だ実装されておらず、よって実装面RMは露出されている。枠体81は、ヒートシンク板50に取り付けられており、平面視(XY面における視野)においてヒートシンク板50の実装面RMを囲んでいる。ヒートシンク板50は金属材料からなり、この金属材料は複合材料および非複合材料のいずれであってもよい。複合材料は、厚み方向(図4における縦方向)に異種材料膜が積層されることによって構成された積層膜であってよい。これら異種材料膜は、典型的には、Cu膜およびMo(モリブデン)膜である。非複合材料は、純度95.0wt%以上で銅を含有することが好ましく、純度99.8wt%以上で銅を含有する非複合材料であることがより好ましい。なお、耐熱性の観点からは、ヒートシンク板50の銅含有量は、100wt%未満であることが好ましい。
【0038】
リードフレーム91は、枠体81に樹脂接着層61によって取り付けられている。リードフレーム91は、平面視(XY面)において、枠体81の外縁から外側へ突出した突出部と、この突出部より内側の根本部とを有している。根本部は、枠体81に樹脂接着層61を介して接着されている。リードフレーム91は、磁性体からなり、この磁性体は、例えば、Fe-Ni合金(FeおよびNiを含む合金)またはFe-Ni-Co合金(Fe、NiおよびCoを含む合金)である。なお、リードフレーム91には磁性体めっき膜(例えばNiめっき膜)が施されていてもよく、この磁性体めっき膜は、磁性体からなるリードフレーム91の一部分とみなす。
【0039】
めっき層20は、リードフレーム91の少なくとも一部を覆っている。リードフレーム91のうち少なくとも上記突出部は、めっき層20によって覆われていることが好ましい。めっき層20は、図4に示されているようにリードフレーム91の全部を覆っていてもよい。
【0040】
めっき層20(図5)は、第1厚みを有する第1層21と、第2厚みを有する第2層22とを含む。第1層21は、リードフレーム91の少なくとも一部(本実施の形態においては全部)を直接的に覆っている。第1層21は、非磁性体からなり、AuおよびPdのいずれとも異なる金属からなる。第1層21をなすこの金属は、CuおよびAgの少なくともいずれかを含み、好ましくはCuである。第1層21の材料としては、第2層22の材料とは異なる材料が、材料コストを削減することができるように選択される。第2層22は、第1層21を直接的に覆っており、Au、PdおよびAgの少なくともいずれかからなる。このような第2層22を設けることにより、第1層21の表面が酸化や硫化などにより変質することを抑制できる。酸化だけでなく硫化の抑制も重要な場合は、第2層22は、好ましくは、AuおよびPdの少なくともいずれかからなる。一方、第2層22の材料コストの観点では、第2層22は、好ましくは少なくとも部分的にAgからなり、より好ましくは全体的にAgからなる。第2層22は、第1層21からの上記金属(例えばCu)の原子拡散を有していてよい。また、第1層21は、第2層22からの原子拡散を有していてよい。第1厚みと第2厚みとの合計、言い換えればめっき層20の厚み、は1μm以上である。第2厚みは1μm未満である。第1厚みは0.5μm以上であることが好ましい。また第2厚みは0.01μm以上であることが好ましい。第2厚みがこの程度であれば、めっき層20の表面が酸化してワイヤボンディング性や接合層42の濡れ性が阻害されることを防止できる。第2層22は、積層膜であってよい。具体的には、第2層22は、第1層21を直接的に覆うPd膜と、このPd膜を直接的に覆うAu膜とによって構成されていてよい。
【0041】
めっき層20は、リードフレーム91だけでなく、ヒートシンク板50の少なくとも一部、特に実装面RM、も覆っていてよい。さらに、図4に示されているように、ヒートシンク板50は実装面RMと反対の底面を有しており、当該底面がめっき層20によって覆われていてよい。ヒートシンク板50の表面は、枠体(本実施の形態においては枠体81)に面する部分と、他の部分(以下、「露出面」とも称する)と、からなる。図4においては、ヒートシンク板50の表面のうち、ヒートシンク接着層41に覆われた部分以外のすべての部分が露出面に対応している。この露出面の全体がめっき層20によって覆われていてよい。また、めっき層20は、図4に示されているように、ヒートシンク板50の全部を覆っていてもよい。なお変形例として、ヒートシンク板50には、めっき層20とは異なるめっき層が設けられていてよい。
【0042】
枠体81は樹脂(第1の樹脂)を含有していることが好ましい。この樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば液晶ポリマーである。この樹脂中には無機フィラー(第1の無機フィラー)が分散されていることが好ましい。この無機フィラーは、好ましくは、繊維状粒子および板状粒子の少なくともいずれかを含む。形状が繊維状または板状であることによって、枠体81が射出成形技術等によって形成される際に、フィラーが樹脂の流動を阻害することが抑制される。このような無機フィラーの材料としては、例えば、シリカガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、タルク(3MgO・4SiO・HO)、ウォラストナイト、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、硫酸バリウム、酸化チタンが用いられる。タルクからなる無機フィラーの平板上での大きさは、例えば、粒径1μm~50μmである。ここで粒径は、樹脂の断面観察によって得られた長径の算術平均値である。無機フィラーの含有量は30wt%~70wt%であることが好ましい。ヒートシンク板50の熱膨張係数が銅のものまたはそれに近い場合、銅の熱膨張係数に鑑みて、無機フィラーの熱膨張係数は17ppm/K以下が好ましい。枠体81の材料は、260℃2時間の熱処理に対して耐熱性を有していることが好ましい。
【0043】
樹脂接着層61は、枠体81の材料とは異なる材料からなる。樹脂接着層61は、枠体81の樹脂(第1の樹脂)と異なる樹脂(第2の樹脂)を含有している。樹脂接着層61の樹脂は、耐熱性と、硬化前の高流動性との観点で、熱硬化性樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂である。樹脂接着層61の樹脂中には無機フィラーが分散されていてよい。
【0044】
追加枠体82は、樹脂接着層61によってリードフレーム91が取り付けられた枠体81上に、追加接着層62を介して取り付けられている。枠体81と追加枠体82との間をリードフレーム91が通っている。追加枠体82は、樹脂を含有していることが好ましい。追加枠体82の材料は枠体81の材料と同じであってよい。また追加接着層62の材料は樹脂接着層61と同じであってよい。
【0045】
ヒートシンク接着層41は、枠体81と、ヒートシンク板50とを互いに接着している。ヒートシンク接着層41によってヒートシンク板50と枠体81との間の気密性が確保されている。
【0046】
ヒートシンク接着層41、樹脂接着層61および追加接着層62の各々による気密性は、260℃2時間の熱処理に対して耐熱性を有していることが好ましい。260℃2時間の熱処理に対して耐熱性を有していれば、熱硬化性樹脂と金属とを含有するペースト状の接着剤を用いてのパワー半導体素子200(図2)の実装工程における典型的な熱処理への耐熱性が確保される。
【0047】
枠体81は、ヒートシンク板50にヒートシンク接着層41を介して支持されている。枠体81は、図4において、例えば、0.3mm程度の厚み(図4における縦方向の寸法)と、2mm程度の全幅(図4における横方向の寸法)とを有している。なお追加枠体82の厚みおよび全幅も同様であってよい。全幅とは枠体を構成する一つの辺の幅をいう。
【0048】
ヒートシンク接着層41は枠体81とヒートシンク板50とを互いに接着している。ヒートシンク接着層41の材料は、枠体81の材料と異なる材料からなる。ヒートシンク接着層41の材料は、樹脂接着層61の材料と同じであってよい。ヒートシンク接着層41の樹脂は、耐熱性と、硬化前の高流動性との観点で、熱硬化性樹脂であることが好ましく、例えばエポキシ樹脂である。
【0049】
ヒートシンク接着層41の樹脂中には無機フィラーが分散されていることが好ましい。この無機フィラーは、好ましくはシリカガラスおよびシリカの少なくともいずれかを含有し、より好ましくはシリカガラスからなる。ここでシリカとは結晶性シリカと同義である。典型的には、シリカガラスの熱膨張係数は0.5ppm/K程度であり、結晶性シリカの熱膨張係数は15ppm/K程度であり、よって、無機フィラーの熱膨張係数を17ppm/K以下とすることができる。このことは、ヒートシンク接着層41の樹脂としてエポキシ樹脂またはフッ素樹脂が用いられる場合、特に望まれる。この場合、無機フィラーの含有量は50wt%~90wt%であることが好ましい。シリカガラスおよびシリカの少なくともいずれかに代わって、またはそれと共に、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、酸化鉄、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、マイカ、酸化チタン、炭素繊維の少なくともいずれかが用いられてもよい。無機フィラーの形状は、例えば、球状、繊維状、または板状である。一方、ヒートシンク接着層41の樹脂としてシリコーン樹脂が用いられる場合は、枠体81がゴム弾性を有するので、無機フィラーの熱膨張係数の制約はほぼ無視できる。この場合、無機フィラーの含有量は、ヒートシンク接着層41の流動性制御等の観点で調整されてよく、1wt%~10wt%であることが好ましい。硬化前のヒートシンク接着層41の流動性を確保する観点では、粒径1μm~50μmの球状シリカガラス(非結晶性シリカ)が最適である。
【0050】
図6は、各種材料にとっての周波数fと、表皮効果における表皮深さtとの関係を概略的に示すグラフ図である。図中、「Fe-Ni」は、具体的には、42アロイである。このグラフからわかるように、Au、CuおよびPdなどの非磁性体の表皮深さtに比して、NiおよびFe-Niなどの磁性体の表皮深さtは顕著に小さい。言い換えれば、磁性体は非磁性体に比して、表皮効果の影響を大きく受ける。特に、f=3.6GHzおよび6.0GHzでの表皮深さtは、以下の表1のとおりである。
【0051】
【表1】
【0052】
磁性体としては、1×10-4~1×10-1[H/m]程度の透磁率を有する金属を用いることができ、例えば、NiおよびNi-Fe合金(例えば42アロイ)の少なくともいずれかを用いることができる。一方、非磁性体としては、1×10-6~1×10-5[H/m]程度の透磁率を有する金属を用いることができ、例えば、Au、Pd、CuおよびAgの少なくともいずれかを用いることができる。図6および表1に示す表皮深さtの計算に用いた物性値(抵抗率と透磁率)を、以下の表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表皮深さtは、表2の物性値を用いて、以下の式
t = {(2 × ρ)/(2 × π × f × μ)}1/2
により算出されている。ここで、ρは抵抗率、fは周波数、μは透磁率である。
【0055】
本実施の形態におけるめっき層20は、例えば、Au/Pd/Cuの構成を有する積層膜であり、Au、PdおよびCuのいずれも、比較的大きな表皮深さtを有している。具体的には、f=3.6GHzの高周波においても、おおよそ1μmの表皮深さが確保される。よって、めっき層20の厚みが1μm以上であれば、3.6GHzの高周波においても、リードフレームによる電気的経路の表皮深さを1μm程度確保することができる。本発明者らの検討によれば、表皮深さをこの程度確保することができれば、高周波損失を十分に低く抑えることができる。また、より高い周波数であっても、例えばf=6.0GHz程度以下の範囲であれば、上記の表1に示すように表皮深さtが極端には小さくなっておらず、よって高周波損失を許容範囲内に抑えることができる場合が多いと考えられる。
【0056】
次にパワーモジュール901(図2)の製造方法について説明する。最初にパッケージ101(図4)が準備される。
【0057】
続いて、ヒートシンク板50の実装面RM(図4)上へパワー半導体素子200(図2)が実装される。パワー半導体素子200が実装される際は、熱硬化性樹脂と金属とを含有する接合層42(図2)を介してヒートシンク板50の実装面RMとパワー半導体素子200とが互いに接合されることが好ましい。言い換えれば、熱硬化性樹脂と金属とを含有するペースト状の接着剤の塗布と、その硬化とによる接合が行われることが好ましい。接合層42の熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。接合層42の金属は銀を含むことが好ましい。
【0058】
次に、パワー半導体素子200とリードフレーム91とがボンディングワイヤ205(図2)によって接続される。これにより、パワー半導体素子200とリードフレーム91との間の電気的接続が確保される。
【0059】
次に、パッケージ101の追加枠体82に蓋体300を取り付けることによって、パワー半導体素子200が封止される。これによりパワーモジュール901が得られる。具体的には、追加枠体82と蓋体300とが接着層46によって互いに接着される。パッケージ101への蓋体300の取り付けは、パワー半導体素子200が実装されたパッケージ101に対して、リークの原因となるほどの熱ダメージを与えないように行われる。言い換えれば、パッケージ101への蓋体300の取り付けは、ヒートシンク接着層41、樹脂接着層61および追加接着層62に対して、リークの原因となるほどの熱ダメージを与えないように行われる。例えば、蓋体300はパッケージ101へ、前述した熱ダメージにつながらない程度に低い硬化温度で硬化させられた接着層46を介して取り付けられる。この硬化温度は、例えば260℃未満である。
【0060】
本実施の形態1によれば、第1に、高価な材料であるAu、PdおよびAgの少なくともいずれかからなる第2層22の厚みである第2の厚みが1μm未満である。これにより、パッケージ101の製造コストを抑制することができる。第2に、第1層21およびそれを直接的に覆う第2層22が、リードフレーム91の表面上において、厚み1μm以上の非磁性膜を構成する。これにより、リードフレーム91を流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が、抑制される。以上から、パッケージ101の製造コストと、高周波損失とを、同時に抑制することができる。特に、第1厚みが0.5μm以上の場合、めっき層20の厚みを確保しつつ第2厚みをより小さくすること(例えば、第2厚みを0.5μm以下にすること)ができるので、製造コストを、より低減することができる。
【0061】
めっき層20がヒートシンク板50の実装面RMを覆っている場合、実装面RMを流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が抑制される。これにより、高周波損失を、より抑制することができる。ヒートシンク板50の底面もめっき層20によって覆われている場合、表皮効果に起因した電気的損失を、より抑制することができる。また、ヒートシンク板50の露出面の全体がめっき層20によって覆われている場合、表皮効果に起因した電気的損失を、より抑制することができる。
【0062】
さらに、ヒートシンク板50の表面上のめっき層20は、上記のように表皮効果に起因した電気的損失を抑制するだけでなく、ヒートシンク板50の表面の電気抵抗そのものを下げる効果が得られる場合がある。例えば、ヒートシンク板50の表面がNiめっき処理されている場合、Niに比して、めっき層20の材料の方が低い電気抵抗を有しているので、そのような効果が得られる。ヒートシンク板50を通る電流経路の電気抵抗を下げることによって、パワーモジュール901(図2)の動作効率を高めることができる。また、ヒートシンク板50を通る電流経路の電気抵抗が低ければ、量産されたパッケージ101間での当該電気抵抗のばらつきが問題となりにくくなる。これにより、量産されたパワーモジュール901間での特性ばらつきを抑えることができる。例えば、パワーモジュール901がパワーアンプである場合、製品間でのパワーアンプの出力ばらつきを抑えることができる。
【0063】
一般に、Niを用いためっき層の表面は、低い平滑性を有している。これに対して、めっき層20はNiを用いていないので、めっき層20の表面を平滑なものとしやすい。表面が平滑であれば、表面を流れる電流の経路が、より短くなる。これにより電気抵抗が低くなり、よって表皮効果の悪影響を緩和することができる。
【0064】
なお、前述したように、第2層22は、第1層21からの金属の原子拡散を有していてよい。例えば、第2層22は、第1層21としてのCu層からのCu原子拡散を有していてよい。これにより、第1層21と第2層との間の密着強度が向上する。ただし、第1層21の原子が第2層22の表面まで拡散すると、第2層22の表面が酸化されやすくなるので、ワイヤボンディング性や接合層42の濡れ性が阻害される恐れがある。本発明者らの検討によれば、パッケージ101が過大な温度にまで加熱されなければ、少なくとも実用上十分な期間にわたって、この原子拡散を、第2層22の機能を損なわない程度に抑えることができる。この観点で、パッケージ101へパワー半導体素子200を実装する際に必要な熱処理温度は、なるべく低いことが好ましい。上記で具体的に説明した実装方法は、この目的に適している。
【0065】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2におけるパッケージ102の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ101(図4:実施の形態1)と異なりパッケージ102は、枠体81および追加枠体82(図4)に代わって、枠体80を有している。枠体80の材料は、枠体81と同様であってよい。リードフレーム91は、樹脂接着層61および追加接着層62(図4)を用いずに、枠体80に直接取り付けられている。この構成を得るためには、例えば、リードフレーム91と枠体80との一体成形が、射出成形法などにより行われる。
【0066】
なお本実施の形態2の上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。パッケージ102は、パワーモジュール901(図2:実施の形態1)においてパッケージ101に代わって用いられてよい。
【0067】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3におけるパワーモジュール903の構成を概略的に示す断面図である。パワーモジュール903は、パワーモジュール901(図2:実施の形態1)におけるパッケージ101がパッケージ103に置換された構造に対応している。
【0068】
図9は、実施の形態3におけるパッケージ103の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ103は、ヒートシンク板50と、枠体83と、リードフレーム91と、めっき層20とを有している。本実施の形態3においてはさらに、パッケージ103は接合層40を有している。枠体83は、接合層40によって、リードフレーム91およびヒートシンク板50の各々に取り付けられている。枠体83は、平面視(XY面における視野)においてヒートシンク板50の実装面RMを囲んでいる。
【0069】
めっき層20は、リードフレーム91の少なくとも一部を覆っている。めっき層20は、図9に示されているようにリードフレーム91の一部のみを覆っていてもよい。リードフレーム91のうち少なくとも、平面視(XY面)における枠体83から外側への突出部は、めっき層20によって覆われていることが好ましい。本実施の形態3においては、リードフレーム91の表面は、めっき層20に覆われた部分と、めっき層20には覆われずに接合層40に接合された部分と、を有している。
【0070】
めっき層20は、リードフレーム91だけでなく、ヒートシンク板50の一部、特に実装面RM、も覆っていてよい。この場合、リードフレーム91のめっき処理と、ヒートシンク板50のめっき処理とを、同時に行うことができる。
【0071】
図10は、図9の領域Xの拡大図である。めっき層20は、第1層21と、第2層22とを含む。第1層21は、リードフレーム91の少なくとも一部(本実施の形態においては一部のみ)を直接的に覆っている。なお、第1層21および第2層22の材料および厚みは、実施の形態1で説明されたものと同様である。
【0072】
枠体83は、絶縁枠体31と、メタライズ膜32と、めっき膜33とを有している。絶縁枠体31はセラミックスからなる。メタライズ膜32は絶縁枠体31の上面上および下面上に形成されている。めっき膜33はメタライズ膜32上に形成されている。一方のメタライズ膜32は、めっき膜33を介して接合層40によってヒートシンク板50に接合されており、他方のメタライズ膜32は、めっき膜33を介して接合層40によってリードフレーム91に接合されている。めっき膜33は、例えば、Niめっき膜である。接合層40は、例えば、ろう材である。
【0073】
次にパッケージ103の製造方法について説明する。まず、ヒートシンク板50と、枠体83と、リードフレーム91とが準備される。ヒートシンク板50は、例えば、板状の金属に対し切断加工や打ち抜き加工をすることで形成され得る。次に、これら部材が接合層40によって互いに接合される。次に、めっき層20として、第1層21および第2層22が順に形成される。これによりパッケージ103が得られる。
【0074】
なお本実施の形態3の上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0075】
<実施の形態4>
図11は、実施の形態4におけるパッケージ104の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ104は、パッケージ101(図4:実施の形態1)におけるリードフレーム91およびめっき層20のそれぞれに代わって、リードフレーム94およびめっき層24を有している。リードフレーム94およびめっき層24のそれぞれの配置は、リードフレーム91およびめっき層20と同様である。よって、めっき層24は、リードフレーム94の少なくとも一部(本実施の形態においては全部)を直接的に覆っている。また、めっき層24は、リードフレーム94だけでなく、ヒートシンク板50の少なくとも一部、特に実装面RM、も覆っていてよい。さらに、図11に示されているように、ヒートシンク板50は実装面RMと反対の底面を有しており、当該底面がめっき層24によって覆われていてよい。ヒートシンク板50の表面は、枠体(本実施の形態においては枠体81)に面する部分と、他の部分(以下、「露出面」とも称する)と、からなる。図11においては、ヒートシンク板50の表面のうち、ヒートシンク接着層41に覆われた部分以外のすべての部分が露出面に対応している。この露出面の全体がめっき層24によって覆われていてよい。また、めっき層24は、図11に示されているように、ヒートシンク板50の全部を覆っていてもよい。
【0076】
リードフレーム94は、非磁性体からなる。この磁性体は、銅を含むことが好ましく、例えばCuまたはCu合金である。Cu合金は、90wt%以上で銅を含有していることが好ましい。
【0077】
めっき層24は、Au、PdおよびAgの少なくともいずれかからなる。これにより、酸化や硫化などによる変質を抑制できる。酸化だけでなく硫化の抑制も重要な場合は、めっき層24は、好ましくは、AuおよびPdの少なくともいずれかからなる。一方、材料コストの観点では、めっき層24は、好ましくは少なくとも部分的にAgからなり、より好ましくは全体的にAgからなる。めっき層24は、リードフレーム94からのCu原子拡散を有していてよい。またリードフレーム94は、めっき層24からの原子拡散を有していてよい。めっき層24は積層膜であってよい。具体的には、めっき層24は、下地層としてのPd膜と、このPd膜を直接的に覆うAu膜とによって構成されていてよい。めっき層24の厚みは1μm未満である。まためっき層24の厚みは0.01μm以上であることが好ましい。めっき層24の厚みがこの程度であれば、めっき層24の表面が酸化してワイヤボンディング性や接合層42の濡れ性が阻害されることを防止できる。
【0078】
なお本実施の形態4の上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。パッケージ104は、パワーモジュール901(図2:実施の形態1)においてパッケージ101に代わって用いられてよい。
【0079】
本実施の形態4によれば、第1に、高価な材料であるAu、PdおよびAgの少なくともいずれかからなるめっき層24の厚みが1μm未満である。これにより、パッケージ104の製造コストを抑制することができる。第2に、めっき層24と、非磁性体からなるリードフレーム94の、めっき層24によって覆われた部分と、によって、リードフレーム94の表面に沿って、十分な厚みを有する非磁性導体領域が確保される。これにより、リードフレーム94を流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が、抑制される。以上から、パッケージ104の製造コストと、高周波損失とを、同時に抑制することができる。
【0080】
めっき層24がヒートシンク板50の実装面RMを覆っている場合、実装面RMを流れる高周波電流の、表皮効果に起因した電気的損失が抑制される。これにより、高周波損失を、より抑制することができる。ヒートシンク板50の底面もめっき層24によって覆われている場合、表皮効果に起因した電気的損失を、より抑制することができる。また、ヒートシンク板50の露出面の全体がめっき層24によって覆われている場合、表皮効果に起因した電気的損失を、より抑制することができる。
【0081】
さらに、ヒートシンク板50の表面上のめっき層24は、上記のように表皮効果に起因した電気的損失を抑制するだけでなく、ヒートシンク板50の表面の電気抵抗そのものを下げる効果が得られる場合がある。例えば、ヒートシンク板50の表面がNiめっき処理されている場合、Niに比して、めっき層24の材料の方が低い電気抵抗を有しているので、そのような効果が得られる。ヒートシンク板50を通る電流経路の電気抵抗を下げることによって、パワーモジュールの動作効率を高めることができる。また、ヒートシンク板50を通る電流経路の電気抵抗が低ければ、量産されたパッケージ104間での当該電気抵抗のばらつきが問題となりにくくなる。これにより、量産されたパワーモジュール間での特性ばらつきを抑えることができる。例えば、パワーモジュールがパワーアンプである場合、製品間でのパワーアンプの出力ばらつきを抑えることができる。
【0082】
一般に、Niを用いためっき層の表面は、低い平滑性を有している。これに対して、めっき層20はNiを用いていないので、めっき層20の表面を平滑なものとしやすい。表面が平滑であれば、表面を流れる電流の経路が、より短くなる。これにより電気抵抗が低くなり、よって表皮効果の悪影響を緩和することができる。
【0083】
なお、仮に、めっき層24の下地層としてニッケルめっきを設けたとすると、ニッケルめっきの領域で表皮効果に起因する電気的損失が生じてしまい、非磁性体からなるリードフレーム94が上記の非磁性導体領域として寄与しにくくなる。
【0084】
なお、前述したように、めっき層24は、リードフレーム94からのCu原子拡散を有していてよい。これにより、めっき層24とリードフレーム94との間の密着強度が向上する。ただし、Cu原子がめっき層24の表面まで拡散すると、めっき層24の表面が酸化されやすくなるので、ワイヤボンディング性や接合層42の濡れ性が阻害される恐れがある。本発明者らの検討によれば、パッケージ104が過大な温度にまで加熱されなければ、少なくとも実用上十分な期間にわたって、この原子拡散を、めっき層24の機能を損なわない程度に抑えることができる。この観点で、パッケージ104へパワー半導体素子200を実装する際に必要な熱処理温度は、なるべく低いことが好ましい。実施の形態1で具体的に説明した実装方法は、この目的に適している。
【0085】
<実施の形態5>
図12は、実施の形態5におけるパッケージ105の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ104(図11:実施の形態1)と異なりパッケージ105は、枠体81および追加枠体82(図4)に代わって、枠体80を有している。枠体80の材料は、枠体81と同様であってよい。リードフレーム94は、樹脂接着層61および追加接着層62(図11)を用いずに、枠体80に直接取り付けられている。この構成を得るためには、例えば、リードフレーム94と枠体80との一体成形が、射出成形法などにより行われる。
【0086】
なお本実施の形態5の上記以外の構成については、上述した実施の形態4の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。パッケージ105は、パワーモジュール901(図2:実施の形態1)においてパッケージ101に代わって用いられてよい。
【0087】
<実施の形態6>
図13は、実施の形態6におけるパッケージ106の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ106は、パッケージ103(図9:実施の形態3)におけるリードフレーム91およびめっき層20のそれぞれが、リードフレーム94およびめっき層24に置換された構造に対応している。なお本実施の形態6の上記以外の構成については、上述した実施の形態3または4の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。パッケージ106は、パワーモジュール903(図8:実施の形態3)においてパッケージ103に代わって用いられてよい。
【0088】
<実施の形態7>
本実施の形態7においては、実施の形態1~3で説明されたパッケージ101~103のいずれかにおいて、第1層21および第2層22を含むめっき層20に代わって、Agからなるめっき層(以下、「Agめっき層」とも称する)が用いられる。Agめっき層は、第1層21(実施の形態1~3)と同様に、リードフレーム91の少なくとも一部を直接的に覆っている。またAgめっき層は、第2層22(実施の形態1~3)と同様に、露出された表面を有している。またAgめっき層の厚みは、第1層21および第2層22の総厚みと同様に、1μm以上である。言い換えれば、本実施の形態7は、実施の形態1~3において、第1層21および第2層22の両方がAgからなる場合に相当する。本実施の形態7によれば、実施の形態1~3と異なり第1層21および第2層22の材料を個別に最適化することができない短所はあるものの、めっき層の構成を単純化することができる。
【0089】
上述した実施の形態は、矛盾のない範囲で互いに自由に組み合わされてよい。この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0090】
20,24 :めっき層
21 :第1層
22 :第2層
50 :ヒートシンク板
80,81,83:枠体
91,94 :リードフレーム
101~106 :パッケージ
200 :パワー半導体素子(電子部品)
300 :蓋体
901,903 :パワーモジュール
RM :実装面
図1
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