(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241119BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20241119BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241119BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241119BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241119BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J129/04
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2020189236
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大一
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176918(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/102327(WO,A1)
【文献】特開2011-227418(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141382(WO,A1)
【文献】特開2017-019974(JP,A)
【文献】特開2016-151580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 129/04
C09J 11/06
C09J 7/38
C09J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールの含有量が4μg/cm
2以上230μg/cm
2以下である偏光板を製造する工程と、
前記偏光板の一方の面にゲル分率が
5%以下である粘着剤層を形成する粘着剤層付き偏光板を製造する工程と、
前記粘着剤層付き偏光板を、温度が18℃以上28℃以下であり、相対湿度が40%以上70%以下である環境に2日以上保管する工程と、を有
し、
前記偏光板を製造する工程は、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子と、透明保護フィルムとを、前記アルコールを含む接着剤から形成される接着剤層によって貼合する工程を含み、
前記アルコールがメタノール、エタノール、およびn-プロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つである、粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤がポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項
1に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤において、前記アルコールの含有量が、前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対し、100質量部以上2000質量部以下である、請求項
1又は2に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤層の厚みが0.01~7μmである、請求項
1~
3のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記保管する工程が終了した時点において、前記粘着剤層のゲル分率は60%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付き偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶テレビだけでなく、パソコン、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途にも広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤層付き偏光板を、その粘着剤層により貼合した液晶パネルを有し、バックライトからの光を液晶パネルで制御することにより表示が行われている。近年では、有機EL表示装置も液晶表示装置と同様にテレビ、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途で広く用いられている。有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射され鏡面のように視認されることを抑止するために、画像表示パネルの視認側表面に円偏光板(偏光素子とλ/4板を含む積層体)が配置される場合がある。
【0003】
偏光板は上記のように、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置の部材として、車に搭載される機会が増えている。車載用の画像表示装置に用いられる偏光板は、テレビや携帯電話等のモバイル用途に比較して、高温環境や高温高湿環境など様々な過酷な環境に曝されることが多い。そのため、厳しい環境の変化に対しても例えば粘着剤層付き偏光板が液晶セルから浮いたり剥がれたりしてしまう不具合(以下、「剥離不良」とも称す。)が発生しないことが求められる。
【0004】
このような厳しい環境に対応するために、偏光板の高温環境下での寸法変化を抑えることで色相を改善させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような偏光板であっても、高温高湿環境から高温環境への環境変化に晒された場合の剥離不良の抑制は十分ではなかった。本発明は、高温高湿環境から高温環境への環境変化においても剥離不良がより抑制された粘着剤層付き偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に例示する粘着剤層付き偏光板の製造方法を提供する。
[1] アルコールの含有量が4μg/cm2以上230μg/cm2以下である偏光板を製造する工程と、
前記偏光板の一方の面にゲル分率が70%以下である粘着剤層を形成する粘着剤層付き偏光板を製造する工程と、
前記粘着剤層付き偏光板を、温度が18℃以上28℃以下であり、相対湿度が40%以上70%以下である環境に2日以上保管する工程と、を有する粘着剤層付き偏光板の製造方法。
[2] 前記アルコールがメタノール、エタノール、およびn-プロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つである[1]に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
[3] 前記偏光板を製造する工程は、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子と、透明保護フィルムとを、アルコールを含む接着剤から形成される接着剤層によって貼合する工程を含む[1]または[2]に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
[4] 前記接着剤がポリビニルアルコール系樹脂を含む、[3]に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
[5] 前記接着剤において、前記アルコールの含有量が、前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対し、100質量部以上2000質量部以下である、[4]に記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
[6] 前記接着剤層の厚みが0.01~7μmである、[3]~[5]のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温高湿環境から高温環境への環境変化においても剥離不良がより抑制された粘着剤層付き偏光板を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[偏光板を製造する工程]
偏光板には、アルコールを含有するものを用いる。前記偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層に二色性色素を吸着配向させた偏光素子と、透明保護フィルムと、を有するものを用いることができる。
【0011】
偏光板に含まれるアルコールの量は、4μg/cm2以上230μg/cm2以下であり、好ましくは13μg/cm2以上200μg/cm2以下であり、より好ましくは20μg/cm2以上190μg/cm2以下であり、60μg/cm2以上であってもよいし、100μg/cm2以上であってもよい。偏光板に含まれるアルコールの量をこのような範囲にすることで偏光素子の特性を損なうことなく、後の工程で粘着剤層へのアルコールの移行量を十分に確保可能となる。後述の「粘着剤層付き偏光板を保管する工程」の直前においても、偏光板に含まれるアルコールの量は上記範囲にあることが望ましい。
【0012】
<偏光素子>
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも称す。)系樹脂を含む層(以下、「PVA系樹脂層」とも称す。)に二色性色素を吸着配向させた偏光素子としては、周知の偏光素子を用いることができる。偏光素子としては、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、一軸延伸することによって得られる延伸フィルムや、基材フィルム上にPVA系樹脂を含む塗布液を塗布して形成した塗布層を有する積層フィルムを用いて、塗布層を二色性色素で染色し、積層フィルムを一軸延伸することによって得られる延伸層が挙げられる。延伸は二色性色素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、延伸してから染色してもよい。
【0013】
PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、エチレン等のオレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等が挙げられる。
【0014】
PVA系樹脂の鹸化度は、好ましくは約85モル%以上、より好ましくは約90モル%以上、さらに好ましくは約99モル%以上100モル%以下である。PVA系樹脂の重合度としては、例えば1000以上10000以下、好ましくは1500以上5000以下である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等でもよい。
【0015】
偏光素子の厚みは、好ましくは3μm以上35μm以下、より好ましくは4μm以上30μm以下、さらに好ましくは5μm以上25μm以下である。偏光素子の厚みが35μm以下であることにより、高温環境下でPVA系樹脂のポリエン化が光学特性の低下に与える影響を抑制することができる。偏光素子の厚みが3μm以上であることにより所望の光学特性を達成する構成とすることが容易となる。
【0016】
偏光素子は、好ましくはアルコールを含む。本実施形態において、偏光素子と透明保護フィルムとを、アルコールを含有する接着剤から形成される接着剤層によって貼合する工程を含むことができる。そのため、アルコールの一部は接着剤層から移行して偏光素子に含まれていると推測される。偏光素子中のアルコールは、偏光素子の製造過程で添加されたものを含んでいてもよい。
【0017】
(アルコール)
本発明で用いるアルコールとしては、例えば、炭素数が1個~4個の低級アルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコールが挙げられる。偏光板や接着剤(または接着剤層)が含有してもよいアルコールは、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、およびtert-ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことができる。これらは、分子量が低く偏光板から粘着剤層に効率よく移行させることができることから好ましい。
【0018】
偏光素子にアルコールを含有させる方法としては、アルコールを含有する処理溶媒にPVA系樹脂層を浸漬する方法、又は処理溶媒をPVA系樹脂層に噴霧、流下もしくは滴下する方法が挙げられる。この中でも、アルコールを含有する処理溶媒にPVA系樹脂層を浸漬させる方法が好ましく用いられる。
【0019】
アルコールを含む処理溶媒にPVA系樹脂層を浸漬させる工程は、後述の偏光素子の製造方法における膨潤、延伸、染色、架橋、洗浄等の工程と同時に行ってもよいし、これらの工程とは別に設けてもよい。PVA系樹脂層にアルコールを含有させる工程は、PVA系樹脂層をヨウ素で染色した後に行なうことが好ましく、洗浄工程で同時に行うことがより好ましい。このような方法によれば、色相変化が小さく、偏光素子の光学特性への影響を小さくすることができる。
【0020】
偏光素子にアルコールを含有させるために、偏光素子の製造時における添加と接着剤への添加との両方を行ってもよい。
【0021】
(尿素系化合物)
偏光素子は、さらに尿素系化合物を含んでもよい。尿素系化合物を含む偏光素子は、透過率の低下をより抑制することができる。尿素系化合物としては、後述の接着剤に含まれ得る尿素系化合物と同じものであってもよい。偏光素子に尿素系化合物を含ませる方法としては、偏光素子にアルコールを含有させる方法と同じ方法を用いることができる。尿素系化合物は、偏光素子の製造過程において含ませてもよいし、後述する偏光素子と透明保護フィルムとを積層するための接着剤に含有させて、偏光素子に含ませることもできる。
【0022】
(ジカルボン酸)
偏光素子は、さらにジカルボン酸を含んでもよい。ジカルボン酸を含む偏光素子は、透過率の低下をより抑制することができる。ジカルボン酸としては、後述の接着剤に含まれ得るジカルボン酸と同じものであってもよい。偏光素子にジカルボン酸を含ませる方法としては、偏光素子にアルコールを含有させる方法と同じ方法を用いることができる。ジカルボン酸は、偏光素子の製造過程において含ませてもよいし、後述する偏光素子と透明保護フィルムとを積層するための接着剤に含有させて、偏光素子に含ませることもできる。
【0023】
(偏光素子の製造方法)
偏光素子の製造方法は特に限定されないが、予めロール状に巻かれたPVA系樹脂フィルムを送り出して延伸、染色、架橋等を行って作製する方法(以下、「製造方法1」とする。)やPVA系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布して塗布層であるPVA系樹脂層を形成し、得られた積層体を延伸する工程を含む方法(以下、「製造方法2」とする。)が典型的である。
【0024】
製造方法1は、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色して二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0025】
膨潤工程は、PVA系樹脂フィルムを膨潤浴中に浸漬する処理工程である。膨潤工程により、PVA系樹脂フィルムの表面の汚れやブロッキング剤等を除去できるほか、PVA系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラを抑制できる。膨潤浴には、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。膨潤浴は、常法に従って界面活性剤、アルコール等が適宜に添加されていてもよい。偏光素子のカリウムの含有率を制御する観点から、膨潤浴にヨウ化カリウムを使用してもよく、この場合、膨潤浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
膨潤浴の温度は、10℃以上60℃以下程度であることが好ましく、15℃以上45℃以下程度であることがより好ましく、18℃以上30℃以下程度であることがさらに好ましい。膨潤浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの膨潤の程度が膨潤浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5秒以上300秒以下程度であることが好ましく、10秒以上200秒以下程度であることがより好ましく、20秒以上100秒以下程度であることがさらに好ましい。膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0027】
染色工程は、PVA系樹脂フィルムを染色浴(ヨウ素溶液)に浸漬する処理工程であり、PVA系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着及び配向させることができる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であることが好ましく、ヨウ素及び溶解助剤としてヨウ化物を含有する。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムが好適である。
【0028】
染色浴中のヨウ素の濃度は、0.01質量%以上1質量%以下程度であることが好ましく、0.02質量%以上0.5質量%以下程度であることがより好ましい。染色浴中のヨウ化物の濃度は、0.01質量%以上10質量%以下程度であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下程度であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下程度であることがさらに好ましい。
【0029】
染色浴の温度は、10℃以上50℃以下程度であることが好ましく、15℃以上45℃以下程度であることがより好ましく、18℃以上30℃以下程度であることがさらに好ましい。染色浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの染色の程度が染色浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10秒以上300秒以下程度であることが好ましく、20秒以上240秒以下程度であることがより好ましい。染色工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0030】
架橋工程は、染色工程にて染色されたPVA系樹脂フィルムを、ホウ素化合物を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬する処理工程であり、ホウ素化合物によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムが架橋して、ヨウ素分子又は染料分子が当該架橋構造に吸着できる。ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂等が挙げられる。架橋浴は、水溶液が一般的であるが、水との混和性のある有機溶媒及び水の混合溶液であってもよい。架橋浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。
【0031】
架橋浴中、ホウ素化合物の濃度は、1質量%以上15質量%以下程度であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下程度であることがより好ましい。架橋浴にヨウ化カリウムを使用する場合、架橋浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上15質量%以下程度であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下程度であることがより好ましい。
【0032】
架橋浴の温度は、20℃以上70℃以下程度であることが好ましく、30℃以上60℃以下程度であることがより好ましい。架橋浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの架橋の程度が架橋浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5秒以上300秒以下程度であることが好ましく、10秒以上200秒以下程度であることがより好ましい。架橋工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0033】
延伸工程は、PVA系樹脂フィルムを、少なくとも一方向に所定の倍率に延伸する処理工程である。一般には、PVA系樹脂フィルムを、搬送方向(長手方向)に1軸延伸する。延伸の方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。延伸工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。延伸工程は、偏光素子の製造において、いずれの段階で行われてもよい。
【0034】
湿潤延伸法における処理浴(延伸浴)は、通常、水又は水との混和性のある有機溶媒及び水の混合溶液等の溶媒を用いることができる。延伸浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。延伸浴にヨウ化カリウムを使用する場合、延伸浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上15質量%以下程度であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましく、3質量%以上6質量%以下程度であることがより好ましい。処理浴(延伸浴)には、延伸中のフィルム破断を抑制する観点から、ホウ素化合物を含むことができる。ホウ素化合物を含む場合、延伸浴中のホウ素化合物の濃度は、1質量%以上15質量%以下程度であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下程度であることがより好ましい。
【0035】
延伸浴の温度は、25℃以上80℃以下程度であることが好ましく、40℃以上75℃以下程度であることがより好ましく、50℃以上70℃以下程度であることがさらに好ましい。延伸浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの延伸の程度が延伸浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10秒以上800秒以下程度であることが好ましく、30秒以上500秒以下程度であることがより好ましい。湿潤延伸法における延伸処理は、膨潤工程、染色工程、架橋工程及び洗浄工程のいずれか1つ以上の処理工程とともに施してもよい。
【0036】
乾式延伸法としては、例えば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。なお、乾式延伸法は、乾燥工程とともに施してもよい。
【0037】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施される総延伸倍率(累積の延伸倍率)は、目的に応じ適宜設定できるが、2倍以上7倍以下程度であることが好ましく、3倍以上6.8倍以下程度であることがより好ましく、3.5倍以上6.5倍以下程度であることがさらに好ましい。
【0038】
洗浄工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、洗浄浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面等に残存する異物を除去できる。洗浄浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。また、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、洗浄浴にヨウ化カリウムを使用することが好ましく、この場合、洗浄浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上10質量%以下程度であることが好ましく、1.5質量%以上4質量%以下程度であることがより好ましく、1.8質量%以上3.8質量%以下程度であることがさらに好ましい。
【0039】
洗浄浴の温度は、5℃以上50℃以下程度であることが好ましく、10℃以上40℃以下程度であることがより好ましく、15℃以上30℃以下程度であることがさらに好ましい。洗浄浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの洗浄の程度が洗浄浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、1秒以上100秒以下程度であることが好ましく、2秒以上50秒以下程度であることがより好ましく、3秒以上20秒以下程度であることがさらに好ましい。洗浄工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0040】
乾燥工程は、洗浄工程にて洗浄されたPVA系樹脂フィルムを、乾燥して偏光素子を得る工程である。乾燥は任意の適切な方法で行われ、例えば自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥が挙げられる。
【0041】
製造方法2は、PVA系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのPVA系樹脂層を二色性色素で染色することにより吸着させて偏光素子とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光素子を形成するために用いる基材フィルムは、偏光素子の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光素子から剥離除去してもよい。
【0042】
<透明保護フィルム>
本実施形態において用いられる透明保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」とも称す。)は、偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介して貼り合わされる。この透明保護フィルムは偏光素子の片面又は両面に貼り合わされるが、両面に貼り合わされていることが好ましい。
【0043】
保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、複数の層が積層された積層構造に形成されていてもよい。保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣る。適切な膜厚としては、5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上80μm以下であり、より好ましくは15μm以上70μm以下である。
【0044】
保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂系フィルム等のフィルムを用いることができる。PVA接着剤等の水系接着剤を用いて偏光素子の両面に保護フィルム貼合する場合、透湿度の点で少なくとも片側の保護フィルムはセルロースアシレート系フィルム又は(メタ)アクリル系重合体フィルムのいずれかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0045】
少なくとも一方の保護フィルムは、視野角補償等の目的で位相差機能を備えていてもよい。その場合、保護フィルム自身が位相差機能を有していてもよく、位相差層を別に有していてもよく、両者の組み合わせであってもよい。位相差機能を備えるフィルムは、接着剤を介して直接偏光素子に貼合されてもよいが、偏光素子に貼合された別の保護フィルムを介して粘着剤又は接着剤を介して貼合された構成であってもよい。
【0046】
<接着剤層>
偏光素子に保護フィルムを貼合するための接着剤層を構成する接着剤として、アルコールを含有する接着剤を用いることが好ましい。接着剤は、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等を用いることができるが、アルコールを含有させる観点から水系接着剤であることが好ましく、PVA系樹脂を含むことが好ましい。アルコールを含有する接着剤を用いることにより、偏光板の高温環境下での透過率の低下を抑制することもできる。
【0047】
接着剤の塗布時の厚みは、任意の値に設定され得、例えば硬化後又は加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定できる。接着剤から構成される接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上2μm以下であり、最も好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0048】
下記の接着剤についての説明は、偏光素子の製造時に偏光素子にアルコールを含有させない場合についての好ましい範囲の記載とする。偏光素子にアルコールを含有させた場合には、下記の値を適宜調整すればよい。アルコールの具体的な例については、上述の偏光素子に含有されるアルコールと同一のものを用いることができる。偏光素子と保護フィルムとの接着時における乾燥工程を経て接着剤層を形成する過程で、アルコールの一部が接着剤層から偏光素子等に移動していても構わない。
【0049】
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、接着剤におけるアルコールの含有量は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以上2000質量部以下であり、より好ましくは100質量部以上2000質量部以下であり、さらに好ましくは500質量部以上1800質量部以下であり、最も好ましくは800質量部以上1500質量部以下である。30質量部未満では、高温高湿環境から高温環境への変化における剥離抑制効果が十分に得られない場合がある。一方、アルコールの含有量が2000質量部を超える場合には、色相が悪化してしまうことがある。接着剤中のアルコール含有量を、前記範囲にすることで、偏光素子に接着剤を介して保護フィルムを積層した後の乾燥工程において、乾燥効率を上げることができ、偏光板中のアルコール含有量を所望の量に調整することが容易となる。
【0050】
偏光素子の両面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされている構成において、偏光素子両面の接着剤層の内、片面の接着剤層のみがアルコールを含有する層であってもよいが、両面の接着剤層が共にアルコールを含有する層であることが好ましい。
【0051】
偏光板の薄型化の要請に応えるために、偏光素子の片面にのみ透明保護フィルムを有する偏光板が開発されている。この構成においても、アルコールを含有する接着剤層を介して透明保護フィルムを積層する。このような偏光素子の片面にのみ透明保護フィルムを有する偏光板の作製方法として、最初に両面に接着剤層を介して透明保護フィルムを貼合した偏光板を作製した後に、一方の透明保護フィルムを剥離する方法が考えられる。このような製造方法が用いられる場合、どちらか一方の接着剤層のみがアルコールを含有していても構わないが、両面の接着剤層が共にアルコールを含有する層であることが好ましい。アルコールを含有する接着剤層が偏光素子の片面のみに用いられる場合は、剥離しないフィルム側の接着剤層がアルコールを含有することが好ましい。
【0052】
(水系接着剤)
水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得るが、好ましくはPVA系樹脂を含む水系接着剤(PVA系接着剤)が用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100以上5500以下程度、さらに好ましくは1000以上4500以下である。平均鹸化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%以上100モル%以下程度であり、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
【0053】
水系接着剤に含まれるPVA系樹脂としては、アセトアセチル基を含有するものが好ましく、その理由は、PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れているからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えばPVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%以上20モル%以下程度である。水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0054】
水系接着剤には架橋剤を含有させることもできる。架橋剤としては公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、例えば水溶性エポキシ化合物、ジアルデヒド、イソシアネート等が挙げられる。
【0055】
PVA系樹脂がアセトアセチル基含有PVA系樹脂である場合は、架橋剤としてグリオキサール、グリオキシル酸塩、メチロールメラミンのうちのいずれかであることが好ましく、グリオキサール、グリオキシル酸塩のいずれかであることがより好ましく、グリオキサールであることが特に好ましい。
【0056】
(活性エネルギー線硬化型接着剤)
活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む接着剤等を挙げることができる。重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、及びこれらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含む化合物を挙げることができる。
【0057】
(尿素系化合物)
接着剤には、さらに尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも1種の尿素系化合物を含有させてもよい。接着剤から構成される接着剤層が尿素系化合物を含有することでさらに高温耐久性を向上させることができる。接着剤から保護フィルムとの接着時における乾燥工程を経て接着剤層を形成する過程で、尿素系化合物の一部が接着剤層から偏光素子等に移動していても構わない。尿素系化合物には水溶性のものと難水溶性のものがあるが、どちらの尿素系化合物も使用することができる。難水溶性尿素系化合物を水溶性接着剤に用いる場合は、接着剤層を形成後、ヘイズ上昇等が起きないように分散方法を工夫することが好ましい。
【0058】
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、尿素系化合物の添加量は、PVA100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上400質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上200質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以上100質量部以下である。
【0059】
(尿素誘導体)
尿素誘導体は、尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子及び酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。尿素誘導体の一部は水に対する溶解度が低い反面、アルコールに対する溶解度は十分なものがある。その場合は、尿素系化合物をアルコールに溶解し、尿素系化合物のアルコール溶液を調製した後、尿素系化合物のアルコール溶液をPVA水溶液に添加し、接着剤を調製することも好ましい態様の一つである。
【0060】
尿素誘導体の具体例として、1置換尿素として、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、p-トリル尿素が挙げられる。2置換尿素として、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジエチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,3-tert-ブチル尿素、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)尿素、1-アセチル-3-メチル尿素、2-イミダゾリジノン(エチレン尿素)、テトラヒドロ-2-ピリミジノン(プロピレン尿素)が挙げられる。4置換尿素として、テトラメチル尿素、1,1,3,3-テトラエチル尿素、1,1,3,3-テトラブチル尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノンが挙げられる。
【0061】
(チオ尿素誘導体)
チオ尿素誘導体は、チオ尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子及び酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
【0062】
チオ尿素誘導体の具体例として、1置換チオ尿素として、N-メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、プロピルチオ尿素、イソプロピルチオ尿素、1-ブチルチオ尿素、シクロヘキシルチオ尿素、N-アセチルチオ尿素、N-アリルチオ尿素、(2-メトキシエチル)チオ尿素、N-フェニルチオ尿素、(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(2-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(1-ナフチル)チオ尿素、(2-ピリジル)チオ尿素、o-トリルチオ尿素、p-トリルチオ尿素が挙げられる。2置換チオ尿素として、1,1-ジメチルチオ尿素、1,3-ジメチルチオ尿素、1,1-ジエチルチオ尿素、1,3-ジエチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素、1,3-ジイソプロピルチオ尿素、1,3-ジシクロヘキシルチオ尿素、N,N-ジフェニルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1-ベンジル-3-フェニルチオ尿素、1-メチル-3-フェニルチオ尿素、N-アリル-N’-(2-ヒドロキシエチル)チオ尿素、エチレンチオ尿素が挙げられる。3置換チオ尿素として、トリメチルチオ尿素が挙げられる。4置換チオ尿素として、テトラメチルチオ尿素、1,1,3,3-テトラエチルチオ尿素が挙げられる。
【0063】
尿素系化合物の中では、層間充填構成の画像表示装置に用いた時に、高温環境下での透過率の低下をより抑制することができる点で、尿素誘導体又はチオ尿素誘導体が好ましく、尿素誘導体がより好ましい。尿素誘導体の中でも、1置換尿素又は2置換尿素であることが好ましく、1置換体であることがより好ましい。2置換尿素には1,1-置換尿素と1,3-置換尿素とがあるが、1,3-置換尿素がより好ましい。
【0064】
(ジカルボン酸)
接着剤は、さらにジカルボン酸を含有することができる。ジカルボン酸を含有する接着剤を用いることにより、偏光板の高温環境下での透過率の低下を抑制することができる。ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、グルタミン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、オキサロ酢酸、メチルフマル酸、2,6-ピリジンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸又は酒石酸を用いることが好ましい。これらジカルボン酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
[偏光板の製造方法]
偏光板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、第1の透明保護フィルムと偏光素子と第2の透明保護フィルムとを、それぞれの層間に接着剤層を設けて積層後、乾燥工程を経て互いに接着する工程を有することができる。少なくとも一つの接着剤層は、アルコール含有接着剤を用いることが好ましい。偏光板を製造する工程は、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子と、透明保護フィルムとを、アルコールを含む接着剤から形成される接着剤層によって貼合する工程を含むことが好ましい。また、製造した偏光板の少なくとも片面に、その表面を保護するために剥離可能な表面保護フィルムを積層したものとしてもよい。なお、偏光板の両面に表面保護フィルムを積層した場合には、次工程の粘着剤の形成前に粘着剤形成側の表面保護フィルムを剥離すればよい。
【0066】
[粘着剤層付き偏光板を製造する工程]
次いで、作製した偏光板に粘着剤層を形成する工程を行う。用いる粘着剤層のゲル分率は70%以下である。
【0067】
<粘着剤層>
粘着剤層は、1層又は2層以上からなってもよいが、好ましくは1層からなる。粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0068】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0069】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0070】
前記ポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,5-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4′-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
前記ポリイソシアネート化合物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、ベースポリマー100重量部に対し、前記ポリイソシアネート化合物を0.01~2重量部含有してなることが好ましく、0.02~2重量部含有してなることがより好ましく、0.05~1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0072】
なお、上記イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、L45(綜研化学株式会社製)、TD75(綜研化学株式会社製)、BXX5627(トーヨーケム株式会社製)、X-301-422SK(サイデン化学株式会社製)、コロネートL(東ソー株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0073】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0074】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0075】
粘着剤層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材フィルム又は偏光板の表面上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。基材フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムであることが一般的であり、その典型的な例として、離型処理が施されたセパレートフィルムを挙げることができる。セパレートフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。
【0076】
粘着剤層付き偏光板を製造する工程は、セパレートフィルムの離型処理面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、このセパレートフィルム付粘着剤層を、その粘着剤層を介して、偏光板の表面に積層する工程を有してもよい。粘着剤層付き偏光板を製造する工程は、偏光板の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、粘着剤層の外面にセパレートフィルムを積層する工程を有してもよい。
【0077】
粘着剤層を偏光板の表面に設ける際には、偏光板の貼合面及び/又は粘着剤層の貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理等の表面活性化処理を施すことが好ましく、コロナ処理を施すことがより好ましい。
【0078】
また、第2セパレートフィルム上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上にセパレートフィルムを積層した粘着剤シートを準備し、この粘着剤シートから第2セパレートフィルムを剥離した後のセパレートフィルム付粘着剤層を偏光板に積層してもよい。第2セパレートフィルムは、セパレートフィルムよりも粘着剤層との密着力が弱く、剥離し易いものが用いられる。
【0079】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。
【0080】
粘着剤層付き偏光板を製造する工程で用いる粘着剤層は、ゲル分率が所定の範囲にあるものを用いる。粘着剤層のゲル分率が大きいほど粘着剤層中で多くの架橋反応が進行していると考えられ、架橋密度の目安とすることができる。粘着剤層のゲル分率としては、70%以下であり、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。最も好ましくは、ゲル分率が実質的に0%の場合である。ゲル分率が実質的に0%とは、ゲル分率が5%以下であることをいう。ゲル分率が70%を超える場合は、高温高湿環境から高温環境への環境変化に晒された場合の剥離抑制効果が十分でなくなってしまうことがある。後述の「粘着剤層付き偏光板を保管する工程」の直前においても、粘着剤層のゲル分率は上記範囲にあることが望ましい。
【0081】
ゲル分率が所定範囲にある粘着剤層を得る方法としては、特に制限されず公知の方法が適用できる。具体的には、粘着剤の乾燥温度や乾燥時間を調整することで所望のゲル分率の粘着剤層を得ることができる。詳細な条件としては、例えば、乾燥温度70℃以上100℃未満とした場合には、乾燥時間を30秒以上5分以下とすることで所望の粘着剤層を得ることができる。こうして作製した直後の粘着剤層のゲル分率は、実質的に0%であり、作製直後の粘着剤層を偏光板に積層することが最も好ましい。
【0082】
[粘着剤層付き偏光板を保管する工程]
製造した粘着剤層付き偏光板を、温度が18℃以上28℃以下であり、相対湿度が40%以上70%以下である環境に2日以上保管する。粘着剤層付き偏光板がロールツーロールで連続的に生産された長尺状の場合には、ロールに巻き取られた状態のまま保管しても構わない。
【0083】
保管温度としては、20℃以上26℃以下であることが好ましい。保管湿度としては、50%以上60%以下であることが好ましい。保管する期間としては、好ましくは3日以上、より好ましくは5日以上、最も好ましくは7日以上である。保管する期間の上限は特に限定されないが、例えば365日以下であることができる。
【0084】
本発明の製造方法で製造された粘着剤層付き偏光板が高温高湿環境から高温環境への環境変化に晒された場合にも剥離不良を抑制できるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のように推定される。一般的に粘着剤層は、例えば、温度23℃かつ相対湿度55%の環境に架橋反応が安定するまで2日以上保管される。この間、粘着剤層では、厚み方向において均一に架橋反応が進んでいると推測される。しかし、本発明の製造方法で用いる偏光板はアルコールを所定量含有しており、かつ偏光板に粘着剤層が形成された後に、保管工程に供される。このような保管時に偏光板から粘着剤層へアルコールが移行していくと推定される。その結果、粘着剤層の中でも、厚み方向において偏光板により近いところにはアルコールが存在すると推測される。この移行したアルコールが架橋剤と反応することで、架橋剤を失活させ、架橋反応が抑制されうる。こうして保管された後の粘着剤層については、厚み方向において偏光板に近いところでは架橋密度が低く、偏光板から遠ざかるにつれて架橋密度が高くなっていると推定される。このような粘着剤層は、偏光板近傍の粘着剤層の貯蔵弾性率が低く、偏光板から遠ざかるにつれて高くなっているため、一方で偏光板の寸法変化によって生じた応力を緩和でき、他方で偏光板を貼合する表示装置への密着力も十分確保できる。このため高温高湿環境から高温環境への環境変化に晒された場合にも剥離不良を抑制できていると推測される。
【0085】
表示装置に供する時点(粘着剤層付き偏光板を保管する工程が終了した時点であってもよい。)での粘着剤層のゲル分率としては、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。ゲル分率が60%未満の場合には、高温環境下での剥離が生じやすくなってしまう。ゲル分率は、通常100%未満であることができる。
【0086】
したがって、偏光板に形成する際の粘着剤層のゲル分率が70%以上では、すでに架橋反応が十分進んでしまっており、偏光板中のアルコールの移行による架橋剤の失活効果が十分得られないことになり、高温高湿環境から高温環境への環境変化に晒された場合の剥離を抑制する効果を十分得られないと推測される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0088】
(1)偏光素子の厚さの測定:
株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH-15M”を用いて測定した。
【0089】
(2)偏光板中のアルコール(メタノール)量の測定:
偏光板を1cm角に裁断し、評価試料を採取した。その評価試料に超純水を5mL加え、70℃で30分加温し、撹拌後、GC-FID法にて下記条件で測定を行った。
(ガスクロマトグラフィ分析条件)
カラム:DB-WAX 30m×0.250mm×0.25μm、I.D.(アジレントテクノロジー)または同等品
キャリアガス:ヘリウム、1.0mL/分
カラム温度:40℃(5分間保持)→20℃/分で昇温→240℃(10分間保持)
注入口温度:240℃、注入量:1μL、スプリット比:50:1
検出器温度:240℃、検出器:FID
【0090】
(3)粘着剤層のゲル分率の測定
本発明の粘着剤層におけるゲル分率は、以下の(a)~(d)に従って測定される値である。
(a)約8cm×約8cmの面積の粘着剤層と、約10cm×約10cmのSUS304からなる金属メッシュ(その重量をWmとする)とを貼合する。
(b)上記(a)で得られた貼合物を秤量して、その質量をWsとし、次に粘着剤層を包み込むように4回折りたたんでホッチキス(ステープラー)で留めた後秤量し、その質量をWbとする。
(c)上記(b)でホッチキス留めしたメッシュをガラス容器に入れ、酢酸エチル60mLを加えて浸漬した後、このガラス容器を室温で3日間保管する。
(d)ガラス容器からメッシュを取り出し、120℃で24時間乾燥した後秤量し、その質量をWaとし、次式に基づいてゲル分率を計算する。
ゲル分率(質量%)=〔{Wa-(Wb-Ws)-Wm}/(Ws-Wm)〕×100
【0091】
<偏光素子の作製>
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上である厚さ60μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、21.5℃の純水に79秒浸漬した後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が2/2/100であり、ヨウ素を1.0mM含む水溶液に23℃で151秒浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が2.5/4/100の水溶液に60.8℃で76秒浸漬した。引き続き、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が3/5.5/100の水溶液に45℃で11秒浸漬した。その後、38℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み22μmの偏光素子を得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.85倍であった。
【0092】
[接着剤1~2の調製]
(接着剤用PVA溶液Aの調製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(三菱ケミカル株式会社製「ゴーセネックスZ-410」)50gを950gの純水に溶解し、90℃で2時間加熱後常温に冷却し、接着剤用PVA溶液を得た(以下、「PVA溶液A」とする)。
【0093】
(接着剤1~2の調製)
上記で調製したPVA溶液A、純水、マレイン酸、グリオキサール40質量%溶液、及びメタノールを表1に示す含有量になるように配合し、接着剤1~2を作製した。
【0094】
【0095】
<透明保護フィルムの準備>
[透明保護フィルム1]
セルロースアシレートフィルム KC8UX2MSW(コニカミノルタ株式会社製、膜厚80μm)を用いた。前記セルロースアシレートフィルムを55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗した。その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、さらに水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返して水を落とした後に、70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理を行った。
[透明保護フィルム2]
シクロオレフィンポリマーフィルム ZB12シリーズ(日本ゼオン株式会社製、膜厚52μm)を用いた。前記のシクロオレフィンポリマーフィルムの両面には、40W・min/m2の条件にてコロナ処理を行った。
【0096】
<偏光板の作製>
[偏光板1の作製]
接着剤1を介して、偏光素子の片面に透明保護フィルム1をもう一方の面に透明保護フィルム2を、ロール貼合機を用いて貼合した後に、60℃で10分加熱処理を行うことにより、接着剤を乾燥させ偏光板1を得た。偏光板1の接着剤層の厚みは、偏光素子の両側ともに50nmであった。こうして作製した偏光板の透明保護フィルム1面に、表面保護フィルムを貼合した。表面保護フィルムは、ポリエステル系樹脂フィルム(厚み38μm)上にアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を形成した表面保護フィルムを貼合した。
【0097】
[偏光板2の作製]
接着剤2を用いたこと以外は、偏光板1の作製と同様にして、偏光板2を作製し、透明保護フィルム1面に、表面保護フィルムを貼合した。
【0098】
[粘着剤組成物の調製]
以下に示すアクリル系のベースポリマー(G-1)、イソシアネート系架橋剤(G-2)及びシランカップリング剤(G-3)を準備した。
【0099】
(H-1)ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体
(H-2)トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)(「コロネートL」(商品名)、東ソー株式会社製)
(H-3)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、液体(「KBM-403」(商品名)、信越化学工業株式会社製)
【0100】
上記アクリル系のベースポリマー(H-1)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(H-2)0.2質量部と、シランカップリング剤(H-3)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物を得た。
【0101】
[粘着剤層の作製]
得られたアクリル系粘着剤組成物の溶液を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布した後、90℃で3分間乾燥し、粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層のゲル分率は、0%であった。
【0102】
[粘着剤層付き偏光板1の作製]
上記粘着剤層を、すぐに偏光板1の透明保護フィルム2側に貼合し、粘着剤層付き偏光板1を作製した。得られた粘着剤層付き偏光板1を温度23℃かつ相対湿度50%の環境で7日間保管した。粘着剤層を積層する前の偏光板のメタノール含有量は75μg/cm2であった。保管後の粘着剤層のゲル分率は75%であった。
【0103】
[粘着剤層付き偏光板2の作製]
粘着剤層付き偏光板1で用いた偏光板1を偏光板2に変更したこと以外は、粘着剤層付き偏光板1の作製と同様にして粘着剤層付き偏光板2を作製した。得られた粘着剤層付き偏光板2を温度23℃かつ相対湿度50%の環境で7日間保管した。粘着剤層を積層する前の偏光板のメタノール含有量は0μg/cm2である。保管後の粘着剤層のゲル分率は80%であった。粘着剤層付き偏光板1と2とでゲル分率が異なるのは、粘着剤層付き偏光板1はアルコールを含有しているため、偏光板に近いところのゲル分率が低かったことが原因と推定される。
【0104】
[粘着剤層付き偏光板3の作製]
上記粘着剤層のポリエチレンテレフタレートフィルムが無い面に、さらに離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した。得られた両面に離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された粘着剤層を温度23℃かつ相対湿度50%の環境で7日間保管した。保管後の粘着剤層のゲル分率は、81%であった。保管後の粘着剤層の一方の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、偏光板1の透明保護フィルム2側に貼合し粘着剤層付き偏光板3を作製した。粘着剤層を積層する前の偏光板のメタノール含有量は75μg/cm2であった。
【0105】
<耐久性評価>
(評価用サンプルの作製)
粘着剤層付き偏光板1~3を、偏光板の吸収軸が長辺と平行になるように、110mm×60mmの大きさに裁断して、粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製「EAGLE XG」、サイズ120mm×70mm)に貼合した。次いで、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で15分間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置し、評価サンプルとした。
【0106】
こうして作製した評価サンプルを温度50℃相対湿度95%の環境下に24時間保管し、次いで温度95℃ の環境下に96時間保管した後、評価サンプルに浮きや剥がれが発生していないかを確認した。結果を表2に示す。
【0107】