(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ポリアミック酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/12 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C08G73/12
(21)【出願番号】P 2020125845
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永見 直斗
(72)【発明者】
【氏名】松川 大作
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-041305(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097633(WO,A1)
【文献】特開平06-234853(JP,A)
【文献】特開2019-020709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される
少なくとも2種類のジカルボン酸化合物
の混合物に対して塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リンを作用させて下記一般式(2)で表される
少なくとも2種類のジカルボン酸塩化物
の混合物を得た後、前記ジカルボン酸塩化物
の混合物にジアミンを作用させるポリアミック酸の製造方法であって、
前記ジカルボン酸化合物の混合物が、ピロメリット酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物及び4,4’-オキシジフタル酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物を含み、
塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リンを前記ジカルボン酸化合物の混合物に対して作用させる時間が、3時間以内であり、
前記ジカルボン酸化合物が、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対して、塩基性触媒を用いてモノアルコール化合物を作用させて得られたものであり、
前記モノアルコール化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール化合物を含み、
前記塩基性触媒が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンを含むポリアミック酸の製造方法。
【化1】
(一般式(1)において、Xは、4価の有機基を示し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方が、下記一般式(3)で表される基である。)
【化2】
(一般式(2)において、X、R
1及びR
2は、一般式(1)におけるX、R
1及びR
2と同様である。)
【化3】
(一般式(3)中、R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
【化4】
(一般式(4)において、Xは、一般式(1)におけるXと同様である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミック酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の保護膜材料として、ポリイミド樹脂等の高い耐熱性を有する有機材料が広く適用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
このようなポリイミド樹脂を用いた保護膜(硬化膜)は、ポリイミド前駆体又はポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して形成した樹脂膜を、加熱して硬化することで得られる。
【0003】
保護膜を形成するために用いられるポリイミド樹脂が感光性であると、容易にパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)を形成することが可能である。このようなパターン樹脂膜を加熱して硬化することで、容易にパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成することができる。
ポリイミド樹脂を感光性とする方法として、ポリイミドに感光性を付与する方法が挙げられる。ポリイミドに感光性を付与する手法としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸にエステル結合又はイオン結合を介して(メタ)アクリロイル基を導入する方法、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミドを用いる方法、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルト位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミドを用いる方法等が知られている。
これら手法の中でも、ポリアミック酸にエステル結合を介して(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、ポリアミック酸を合成する際、用いるモノマーを自由に選択することが可能であり、(メタ)アクリロイル基が化学結合を介して導入されていることから、経時安定性に優れているという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3526829号
【文献】特許第4524808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エステル結合を介して(メタ)アクリロイル基が導入されたポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物に対して(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール化合物を作用させて(メタ)アクリロイル基を有するジカルボン酸化合物を調製し、次いで、塩素化剤を用いて(メタ)アクリロイル基を有するジカルボン酸化合物を塩素化し、塩素化された(メタ)アクリロイル基を有するジカルボン酸化合物とジアミンとを反応させて調製することができる。
(メタ)アクリロイル基を有するジカルボン酸化合物の塩素化には、塩素化剤として塩化チオニルが用いられることがある。塩化チオニルを用いた塩素化反応では、副生成物として二酸化硫黄等の硫化ガスの生ずることがある。二酸化硫黄がポリアミック酸を製造する際に用いられる金属製の反応釜を侵食し、ポリアミック酸中に金属イオンの混入する場合がある。ポリアミック酸中に金属イオンが混入すると、ポリイミド樹脂で構成されるLSIの保護膜中に金属イオンが混入することになり、保護膜の電気特性が悪化する場合がある。
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、本開示は、硫化ガスの発生が抑制されるポリアミック酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に対して塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リンを作用させて下記一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物を得た後、前記ジカルボン酸塩化物にジアミンを作用させるポリアミック酸の製造方法。
【0007】
【0008】
(一般式(1)において、Xは、4価の有機基を示し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R1及びR2の少なくとも一方が、下記一般式(3)で表される基である。)
【0009】
【0010】
(一般式(2)において、X、R1及びR2は、一般式(1)におけるX、R1及びR2と同様である。)
【0011】
【0012】
(一般式(3)中、R3~R5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
<2> 少なくとも2種類の前記ジカルボン酸化合物の混合物に対して塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リンを作用させて、少なくとも2種類の前記ジカルボン酸塩化物の混合物を得る<1>に記載のポリアミック酸の製造方法。
<3> 前記ジカルボン酸化合物の混合物が、ピロメリット酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物及び4,4’-オキシジフタル酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物を含む<2>に記載のポリアミック酸の製造方法。
<4> 塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リンを前記ジカルボン酸化合物の混合物に対して作用させる時間が、3時間以内である<3>に記載のポリアミック酸の製造方法。
<5> 前記ジカルボン酸化合物が、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対して、モノアルコール化合物を作用させて得られたものであり、
前記モノアルコール化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール化合物を含む<1>~<4>のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
【0013】
【0014】
(一般式(4)において、Xは、一般式(1)におけるXと同様である。)
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、硫化ガスの発生が抑制されるポリアミック酸の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0017】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味する。
【0018】
<ポリアミック酸の製造方法>
本開示のポリアミック酸の製造方法は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に対して塩化オキサリル、三塩化リン又は五塩化リン(以下、特定塩素化剤と称することがある。)を作用させて下記一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物を得た後、前記ジカルボン酸塩化物にジアミンを作用させるものである。
【0019】
【0020】
一般式(1)において、Xは、4価の有機基を示し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R1及びR2の少なくとも一方が、下記一般式(3)で表される基である。
【0021】
【0022】
一般式(2)において、X、R1及びR2は、一般式(1)におけるX、R1及びR2と同様である。
【0023】
【0024】
一般式(3)中、R3~R5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。
【0025】
一般式(1)において、Xで表される4価の有機基は、炭素数が4~25であることが好ましく、4~13であることがより好ましく、6~12であることがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基は、芳香環を含んでもよい。Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミック酸の紫外領域における光透過性を向上する観点から、ベンゼン環が好ましい。
Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、各芳香環は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。芳香環の置換基としては、アルキル基、フッ素原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
Xで表される4価の有機基がベンゼン環を含む場合、Xで表される4価の有機基は1個~4個のベンゼン環を含むことが好ましく、1個~3個のベンゼン環を含むことがより好ましく、1個又は2個のベンゼン環を含むことがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基が2個以上のベンゼン環を含む場合、各ベンゼン環は、単結合により連結されていてもよいし、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(RA)2-;RAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)シロキサン結合(-O-(Si(RB)2-O-)n;RBは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)等の連結基、これら連結基を少なくとも2つ組み合わせた複合連結基などにより結合されていてもよい。また、2つのベンゼン環が単結合及び連結基の少なくとも一方により2箇所で結合されて、2つのベンゼン環の間に連結基を含む5員環又は6員環が形成されていてもよい。
【0026】
一般式(1)において、-COOR1基と-COOH基とは互いにオルト位置にあり、-COOR2基と-COOH基とは互いにオルト位置にあることが好ましい。
【0027】
Xで表される4価の有機基の具体例としては、下記一般式(A)~下記一般式(E)で表される基を挙げることができるが、本開示は下記具体例に限定されるものではない。
【0028】
【0029】
一般式(D)において、A及びBは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、ハロゲン化メチレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)又はシリレン結合(-Si(RA)2-;RAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)を表し、A及びBの両方が単結合となることはない。
一般式(E)において、Cは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(RA)2-;RAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(RB)2-O-)n;RBは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Cは、下記式(C1)で表される構造であってもよい。
【0030】
【0031】
一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基としては、炭素数が1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、エチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基が好ましい。
【0032】
一般式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基の具体例としては、上述の一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヘキサフルオロジメチルメチレン基等が好ましい。
【0033】
上記シリレン結合又はシロキサン結合に含まれるRA又はRBで表されるアルキル基としては、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。RA又はRBで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0034】
一般式(D)におけるA及びBの組み合わせは特に限定されるものではなく、メチレン基とエーテル結合との組み合わせ、メチレン基とスルフィド結合との組み合わせ、カルボニル基とエーテル結合との組み合わせ等が好ましい。
一般式(E)におけるCとしては、単結合、エーテル結合、カルボニル基等が好ましい。
【0035】
一般式(1)におけるR1及びR2で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~4であり、1又は2であることが好ましい。R1及びR2で表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0036】
一般式(3)におけるR3~R5で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は1~3であり、1又は2であることが好ましい。R3~R5で表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0037】
一般式(3)におけるR3~R5の組み合わせとしては、R3及びR4が水素原子であり、R5が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましい。
【0038】
一般式(3)におけるqは1~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
【0039】
一般式(1)においては、R1及びR2の少なくとも一方が、前記一般式(3)で表される基であることが好ましく、R1及びR2の両方が前記一般式(3)で表される基であることがより好ましい。
【0040】
一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物は、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に対し、特定塩素化剤を作用させてカルボキシ基を塩素化することで得ることができる。
【0041】
特定塩素化剤は、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物1モルに対して、通常2モル用いられるが、製造されるポリアミック酸の分子量を制御するために、特定塩素化剤の使用量を適宜調整してもよい。
特定塩素化剤の使用量は、ポリアミック酸の分子量を増大させ、硬化後の応力を向上させる観点から、1.5モル~2.5モルが好ましく、1.6モル~2.4モルがより好ましく、1.7モル~2.3モルがさらに好ましい。
【0042】
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に対して特定塩素化剤を作用させるときの温度としては、0℃~20℃であることが好ましく、副反応を制御する観点から0℃~15℃であることがより好ましく、0℃~10℃であることがさらに好ましい。
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に対して特定塩素化剤を作用させる時間としては、0.5時間~6時間であることが好ましく、副反応制御の観点から0.5時間~4時間であることがより好ましく、0.5時間~3時間であることがさらに好ましい。
【0043】
本開示のポリアミック酸の製造方法では、少なくとも2種類の一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物の混合物に対して特定塩素化剤を作用させて、少なくとも2種類の一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物の混合物を得てもよい。
【0044】
なお、少なくとも2種類の一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物の混合物に対して特定塩素化剤を作用させた場合、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物から一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物への転化率(クロロ化率と称することがある。)が、反応時間の経過と共に減少する場合がある。
特に、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物として、ピロメリット酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物及び4,4’-オキシジフタル酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物を併用した場合、所定の時間経過までは経過時間と共に増加したクロロ化率が、所定の時間経過後は経過時間と共に減少する場合がある。
そのため、特に、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物として、ピロメリット酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物及び4,4’-オキシジフタル酸由来のXで表される4価の有機基を含むジカルボン酸化合物を混合して用いる場合、反応効率の観点から、特定塩素化剤を作用させる時間としては、3時間以内であることが好ましい。
本開示において、クロロ化率は、下記方法により求めることができる。
クロロ化率の測定対象となる酸クロリドに過剰のアニリンを作用させて酸クロリドをアニリド誘導体に変換し、アニリド誘導体に対してHPLC測定を実施し、得られたクロマトグラムからジアニリド変換体のピーク面積を、モノアニリド変換体とジアニリド変換体のピーク面積の合計で除して100を乗ずることによって算出することができる。
HPLCの測定条件としては、溶離液としてアセトニトリル/0.085質量%リン酸水溶液=60/40(v/v)を用い、流速を1.0mL/minとし、測定波長を254nmとすることができる。
【0045】
上述のようにして得られた一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物に対してジアミンを作用させることで、ポリアミック酸が製造される。
一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物に対してジアミンを作用させる場合、塩基性化合物を用いてもよい。塩基性化合物は、一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物とジアミンとが反応した際に発生する塩化水素を捕捉する目的で用いられる。
【0046】
塩基性化合物としては、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等を用いることができる。塩基性化合物の使用量は、得られるポリアミック酸の分子量を高くし、硬化後の応力を向上させる観点から、特定塩素化剤1モルに対して、1.5モル~2.5モルであることが好ましく、1.7モル~2.4モルであることがより好ましく、1.8モル~2.3モルであることがさらに好ましい。
【0047】
一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物に作用させるジアミンは特に限定されるものではなく、一分子中に2つのアミノ基を含む化合物であれば特に限定されるものではない。
ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられ、耐熱性の観点から芳香族ジアミンが好ましい。
【0048】
芳香族ジアミンとしては、下記一般式(F)~下記一般式(G)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【0050】
一般式(F)又は一般式(G)において、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基を表し、nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
一般式(G)において、Dは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(RA)2-;RAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(RB)2-O-)n;RBは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Dは、上記式(C1)で表される構造であってもよい。一般式(G)におけるDの具体例は、一般式(E)におけるCの具体例と同様である。
【0051】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基としては、炭素数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0053】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基としては、炭素数が1~5のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のハロゲン化アルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基の具体例としては、一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0054】
一般式(F)又は一般式(G)におけるnは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0055】
脂肪族ジアミンとしては、直鎖状脂肪族ジアミン、分岐状脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン等が挙げられる。さらには、脂肪族ジアミンとして、炭素原子、水素原子及び窒素原子以外のその他の原子を含むヘテロ原子含有脂肪族ジアミンも挙げられる。
【0056】
直鎖状脂肪族ジアミンに含まれる炭素数は、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。
直鎖状脂肪族ジアミンの具体例としては、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン等が挙げられる。
【0057】
分岐状脂肪族ジアミンに含まれる炭素数は、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。
分岐状脂肪族ジアミンの具体例としては、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。
【0058】
脂環族ジアミンに含まれる炭素数は、3~10であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。
脂環族ジアミンの具体例としては、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0059】
ヘテロ原子含有脂肪族ジアミンとしては、分子中にポリアルキレンオキサイド構造を有するアルキレンオキサイド変性ジアミン、分子中にポリシロキサン構造を有するシロキサン変性ジアミン等が挙げられる。
【0060】
アルキレンオキサイド変性ジアミンに含まれるポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基に含まれる単位構造としては、炭素数1~10のアルキレンオキサイド構造が好ましく、炭素数1~8のアルキレンオキサイド構造がより好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキサイド構造がさらに好ましい。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリエチレンオキサイド構造又はポリプロピレンオキサイド構造が好ましい。アルキレンオキサイド構造中のアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリアルキレンオキサイド構造中の単位構造は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0061】
シロキサン変性ジアミンに含まれるポリシロキサン構造を有する2価の基としては、ポリシロキサン構造中のケイ素原子が水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基と結合しているポリシロキサン構造を有する2価の基が挙げられる。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数6~18のアリール基は、無置換でも置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
ジアミンの具体例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,2’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-トリジン、o-トリジンスルホン、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4-ジアミノメシチレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、ビス-{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス{4-(3’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
ジアミンは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物は、如何なる製法を経て得られたものであってもよい。
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物は、例えば、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対して、モノアルコール化合物を作用させて得られたものであってもよい。この場合、モノアルコール化合物として、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール化合物を含むことが好ましい。
【0064】
【0065】
一般式(4)において、Xは、一般式(1)におけるXと同様であり、具体例及び好ましい例も同様である。
【0066】
モノアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0067】
一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。
一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対してモノアルコール化合物を作用させて一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物を得る場合、一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルに対して、少なくとも2モル以上のモノアルコール化合物を塩基性触媒存在下で作用させることが好ましい。
なお、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物を一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物に変換する場合、反応系内に未反応のモノアルコール化合物が残っていると、特定塩素化剤が未反応のモノアルコール化合物と反応してしまい、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物の一般式(2)で表されるジカルボン酸塩化物への変換が充分に進行しない場合がある。従って、モノアルコール化合物の使用量としては、一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルに対して2.0モル~2.5モルであることが好ましく、2.0モル~2.3モルであることがより好ましく、2.0モル~2.2モルであることがさらに好ましい。
【0069】
一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させる際に用いる塩基性触媒としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等を用いることができる。
【0070】
原料として、2種類以上の一般式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、それぞれのテトラカルボン酸二無水物を別々に一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物に導き、これらジカルボン酸化合物を混合して用いてもよい。また、あらかじめ、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を混合した後、一括して一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物の混合物に導いてもよい。
【0071】
本開示のポリアミック酸の製造方法により製造されたポリアミック酸のポリスチレン換算での重量平均分子量は、10000~100000であることが好ましく、15000~100000であることがより好ましく、20000~85000であることがさらに好ましい。
硬化後の応力を充分に低下させる観点から、ポリアミック酸の重量平均分子量が10000以上であることが好ましい。また、ポリアミック酸の溶剤への溶解性及びポリアミック酸溶液の取り扱い性を向上する観点から、ポリアミック酸の重量平均分子量は100000以下であることが好ましい。
尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0073】
[実施例1]
-製造例1(ピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)-
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させたピロメリット酸二無水物43.624g(200mmol)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート54.919g(401mmol)とハイドロキノン0.220gをN-メチル-2-ピロリドン394gに溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを触媒量添加後、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行うことで、ピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0074】
-製造例2(4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)-
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’-オキシジフタル酸二無水物49.634g(160mmol)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート44.976g(328mmol)とハイドロキノン0.176gをN-メチル-2-ピロリドン378gに溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを触媒量添加後、室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行い、4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0075】
-合成例1(ポリマーIの合成)-
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に製造例1で得られたPMDA(HEMA)溶液195.564gと製造例2で得られたODPA(HEMA)溶液58.652gを入れ、その後、氷冷下で塩化オキサリル27.68g(218mmol)を反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下漏斗を用いて滴下した。塩化オキサリルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。後述の方法で酸クロリドのクロロ化率を求めたところ、96%であった。また、反応中に硫化ガスの発生は認められなかった。
次いで、滴下漏斗を用いて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル31.696g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN-メチル-2-ピロリドン90.211g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミック酸エステルを得た。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。
【0076】
-クロロ化率の測定-
30mlのスクリュー管に5質量%のアニリンのN-メチル-2-ピロリドン溶液を11ml秤量し、酸クロリド溶液を0.5ml加えて攪拌することによって、酸クロリドをアニリド誘導体に変換した。得られたアニリド誘導体溶液20滴を、アセトニトリル/0.085質量%リン酸水溶液=60/40(v/v)3mlで希釈した溶液を用いて、下記の表1に示す条件でHPLC測定を実施した。クロロ化率は、HPLC測定で得られたクロマトグラムからジアニリド変換体のピーク面積を、モノアニリド変換体とジアニリド変換体のピーク面積の合計で除して100を乗ずることによって算出した。
【0077】
【0078】
[実施例2]
塩化オキサリルの滴下が終了後、氷冷下で4時間反応を行った以外は実施例1と同様にしてポリアミック酸エステルを得た。
酸クロリドのクロロ化率は90.5%であり、実施例1に比較してクロロ化率が低下した。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は30000であった。また、反応中に硫化ガスの発生は認められなかった。
【0079】
なお、塩化オキサリルに代えて三塩化リン又は五塩化リンを用いた場合でもポリアミック酸エステルの合成は可能であった。また、塩化オキサリルに代えて三塩化リン又は五塩化リンを用いた場合でも、反応中に硫化ガスの発生は認められなかった。