(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】潜像担持体表面電位検知装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241119BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241119BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20241119BHJP
G03G 21/06 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/00 303
G03G15/02 102
G03G21/06
(21)【出願番号】P 2020151125
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019196380
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】茂呂将典
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-243357(JP,A)
【文献】特開2006-065113(JP,A)
【文献】特開平05-223513(JP,A)
【文献】特開2015-158602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
前記潜像担持体を帯電する帯電部材と、
前記潜像担持体を除電する除電部材と、
前記除電部材に流れた電流の直流成分を検知する電流検知部と、
帯電状態にある前記潜像担持体を前記除電部材で除電する際に前記電流検知部に流れる電流の直流成分から、前記除電部材通過前の前記潜像担持体の表面電位を推定する制御手段と、を有
し、
前記制御手段は、前記除電部材による除電開始から前記潜像担持体1周目の取得電流と、前記潜像担持体2周目以降の取得電流の和を、前記除電部材通過前の前記潜像担持体の表面電位の推定に用いることを特徴とする潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項2】
前記除電部材には、除電バイアスとして、DCバイアスとACバイアスを重畳した振動電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項3】
前記除電部材に印加される除電バイアスは0Vであることを特徴とする請求項1又は2に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項4】
前記除電部材と前記帯電部材が共通部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項5】
前記潜像担持体に対向して転写装置を備え、
前記制御手段は、検知対象の電位に帯電した前記潜像担持体の位置が前記転写装置の対向位置又はその付近に来たとき、前記転写装置の転写バイアスをオフすることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項6】
前記帯電部材よりも潜像担持体回転方向下流側であって、前記転写装置よりも潜像担持体回転方向上流側に、潜像担持体表面電位を変化させるモジュールを備え、
前記制御手段は、検知対象の電位に帯電した前記潜像担持体の位置が前記潜像担持体表面電位を変化させるモジュールの対向位置に来たとき、前記潜像担持体表面電位を変化させるモジュールのバイアスをオフすることを特徴とする請求項
5に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項7】
潜像担持体と、
前記潜像担持体を帯電する帯電部材と、
前記潜像担持体を除電する除電部材と、
前記潜像担持体に対向した転写装置と、
前記除電部材に流れた電流の直流成分を検知する電流検知部と、
帯電状態にある前記潜像担持体を前記除電部材で除電する際に前記電流検知部に流れる電流の直流成分から、前記除電部材通過前の前記潜像担持体の表面電位を推定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、検知対象の電位に帯電した前記潜像担持体の位置が前記転写装置の対向位置又はその付近に来たとき、前記転写装置の転写バイアスをオフすることを特徴とする潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項8】
潜像担持体と、
前記潜像担持体を帯電する帯電部材と、
前記潜像担持体を除電する除電部材と、
前記除電部材への除電バイアス印加時に内部電流を生じる検知回路を有し、前記内部電流と前記帯電部材に流れた電流を足し合わせたフィードバック電流を検知する電流検知部と、
除電時の前記内部電流の変動量から除電時に生じた除電電流を算出し、算出した前記除電電流の大きさから除電前の前記潜像担持体の表面電位を推定する制御手段と、を有することを特徴とする潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項9】
除電によって前記潜像担持体の表面電位を検知する際は、前記制御手段は、前記除電部材による除電開始から前記潜像担持体2周目以降の前記検知回路の内部電流減少量と、前記潜像担持体1周目の内部電流減少量の和を、除電前の前記潜像担持体の表面電位の推定に用いることを特徴とする請求項8に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項10】
前記除電部材と前記帯電部材が共通部材であることを特徴とする請求項8又は9に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項11】
前記制御手段は、使用する範囲の潜像担持体電位の上限で発生する前記除電電流を相殺することが可能な前記内部電流が生じるように除電バイアスを設定することを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の潜像担持体表面電位検知装置。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の装置で検知した潜像担持体表面電
位を制御項目にフィードバックすることで、最適な作像条件を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の装置で検知した潜像担持体表面電
位を使用して、キーパーツ寿命やプロセスカードリッジ寿命を判断することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体表面電位検知装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、表面電位計のような装置を用いずにフィードバック(FB)回路を使用し、感光体を帯電する際に帯電部材に流れる電流の直流成分(DC成分)を検知し、感光体の帯電後表面電位を推定する技術が知られている。
【0003】
従来の感光体表面電位検知では、感光体が帯電していない状態から感光体を帯電させる際に帯電部材に流れる帯電電流を検知して、帯電後の感光体表面電位を推定していた。また、検知時の外乱を抑えるために、転写ローラなどの感光体周辺モジュールからの影響による感光体表面電荷の変化を防ぐために、帯電部材に流れる電流を検知する間は転写ローラなどの感光体周辺モジュールのバイアスを切ったり、転写ローラを感光体と離間させたりしていた。しかし、実際の作像動作時には転写ローラなどの感光体周辺モジュールは感光体に当接し、バイアスが掛かった状態であるから、検知した感光体表面電位と作像時の感光体表面電位が異なるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、画像濃度を安定させるために、感光体に隣接して配置された導電性部材に流れる電流から、感光体表面電位を検知する技術が開示されている。しかし、検知時の感光体表面電位への外乱を抑えるためには転写ローラを感光体から離間させる必要があり、そのようにして検知した感光体表面電位と作像中の感光体表面電位が異なってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、表面電位計のような装置を用いずに、作像中と同条件で潜像担持体表面電位を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、潜像担持体と、前記潜像担持体を帯電する帯電部材と、前記潜像担持体を除電する除電部材と、前記除電部材に流れた電流の直流成分を検知する電流検知部と、帯電状態にある前記潜像担持体を前記除電部材で除電する際に前記電流検知部に流れる電流の直流成分から、前記除電部材通過前の前記潜像担持体の表面電位を推定する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記除電部材による除電開始から前記潜像担持体1周目の取得電流と、前記潜像担持体2周目以降の取得電流の和を、前記除電部材通過前の前記潜像担持体の表面電位の推定に用いることを特徴とする潜像担持体表面電位検知装置によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
表面電位計のような装置を用いずに、作像中と同条件での感光体表面電位を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成ユニットの概略図である。
【
図3】感光体表面電位検知シーケンスを示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
【
図5】各タイミングでの感光体表面電位を示す概要図である。
【
図6】除電前の感光体表面電位と除電部材に流れた電流との関係を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
【
図8】各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
【
図9】第3実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
【
図10】各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
【
図11】第4実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
【
図12】各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
【
図13】本発明の別な実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスを示すフローチャートである。
【
図14】第5実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
【
図15】各タイミングでの感光体表面電位を示す概要図である。
【
図16】除電前の感光体表面電位と除電電流によって相殺される内部電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の全体構成を示す概略図である。プリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す:表示の簡略化のため、以下ではこれら略号を省略することもある)のトナー像を生成するための4つの画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kを備える。これら画像形成ユニット1は、画像を形成する画像形成物質として互いに異なる色のYトナー、Cトナー、Mトナー、Kトナーを用いるが、それ以外は同じ構成である。
【0010】
Yトナーの画像形成ユニット1Yを例にとって説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成ユニットの概略図である。
図2に示すように、画像形成ユニット1Yは、潜像担持体であるドラム状の感光体3Yを有する感光体ユニット2Yと、感光体3Y上の潜像を現像する現像装置としての現像ユニット7Yとで構成されている。画像形成ユニット1Yは、プリンタ本体に対して一体的に着脱可能であり、プリンタ本体から取り外した状態では、現像ユニット7Yを感光体ユニット2Yに対して着脱することができる。すなわち、
図1で示されるプリンタでは、画像形成ユニット1がプロセスカートリッジとして構成されている。
【0011】
図2において、感光体ユニット2Yは、感光体3Yと、ドラムクリーニング装置4Yと、感光体3Yの表面を除電する除電部材と、感光体3Yの表面を帯電する帯電装置5Yなどを備える。帯電装置5Yは、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される感光体3Yの表面を一様に帯電する(例えば-690V)。
図2の例では、感光体3Yに近接させた帯電部材としての帯電ローラ6Yに帯電バイアスを印加することで感光体3Yの表面を一様帯電させる方式の帯電装置5Yを示している。帯電ローラ6Yの代わりに、帯電ブラシを当接させる方式やスコロトロンチャージャのようなチャージャ方式を用いてもよい。
【0012】
図1において、画像形成ユニット1の図中下方には、潜像形成手段としての光書き込みユニット20が設けられている。光書き込みユニット20は画像情報に基づきレーザー光Lを画像形成ユニット1の一様帯電後の感光体3に照射する。
図1の例では、光書き込みユニット20は、光源から発したレーザー光Lをモータにより回転駆動されるポリゴンミラー21で偏向させながら複数の光学レンズやミラーを介して感光体3に照射する構成である。しかしこのようなポリゴン走査方式に代えて、LEDアレイによる光走査を行うこともできる。
【0013】
またプリンタは、検知時のバイアスや周辺モジュールの感光体3への当接及び離間を制御する制御手段としてのコントローラ65を備えている。
【0014】
図2に戻って、感光体3Yはレーザー光Lで露光された領域のみ表面電位が低下し(例えば-50V)、静電潜像が形成される。感光体3Yが回転することで、静電潜像は現像ユニット7Yの現像ローラ12Yと対向する現像領域まで搬送される。現像ユニット7Yは、搬送スクリュと、攪拌フィンとを有する第1の搬送攪拌手段8Y、及びトナー補給口が設けられた第1の現像剤循環搬送通路9Yを有する。また、搬送スクリュと、攪拌フィンとを有する第2の搬送攪拌手段11Y、透磁率センサからなるトナー濃度センサ10Y、現像ローラ12Y、及びドクターブレード13Yなどが設けられた第2の現像剤循環搬送通路14Yを有する。(以下、第1、第2の現像剤循環搬送通路9Y、14Yを、それぞれ第1、第2の搬送通路9Y、14Yと表記する。)
【0015】
第1、第2の搬送通路9Y、14Yは両端(
図2における紙面手前側と奥側)の連絡口で繋がっており、マイナス帯電性のYトナーと磁性キャリアを有するY現像剤を内包している。
【0016】
第1の搬送攪拌手段8Yは駆動手段で回転し、第1の搬送通路9YにあるY現像剤を
図2の紙面奥側から手前側へ搬送する。手前側に搬送されたY現像剤は紙面手前側の連絡口で第2の搬送通路14Yへ移動する。第2の搬送攪拌手段11Yも同様に回転し、第2の搬送通路14Yに来たY現像剤を
図2の紙面手前側から奥側へ搬送する。搬送途中のY現像剤は第2の搬送通路14Yの底部に固定されたトナー濃度センサ10Yで、そのトナー濃度を検知される。
【0017】
第2の搬送通路14Yの上方には、現像ローラ12Yが第2の搬送攪拌手段11Yと平行に配置されている。現像ローラ12Yは、
図2で反時計回り方向に回転する非磁性の現像スリーブ15Yと、現像スリーブ15Yに内包された回転しないマグネットローラ16Yで構成される。第2の搬送通路14Y内を搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラ16Yの磁力により現像スリーブ15Yの表面に汲み上げられる。現像スリーブ15Yには、微小な隙間を保持してドクターブレード13Yが対向して設けられており、汲み上げられたY現像剤はドクターブレード13Yを通過する際にその層厚(汲み上げ量)を規制される。
【0018】
ドクターブレード13Yを通過したY現像剤は感光体3Yと対向する現像領域まで搬送される。現像スリーブ15Yに印加された現像バイアス(例えば-550V)と感光体3Yの露光部の表面電位(例えば-50V)との電位差により、現像領域に搬送されたY現像剤中のYトナーのみが感光体3Yの露光部に付着する。これにより感光体3Y上にYトナー像が形成される。現像によりYトナーを消費したY現像剤は第2の搬送通路14Yに戻され、第2の搬送攪拌手段11Yで
図2の紙面奥側へ搬送され、奥側の連絡口で第1の搬送通路9Yに移動する。第1の搬送通路9Yに戻ったY現像剤はトナー補給口にて新たにトナーを補給され、再び第1の搬送攪拌手段8Yで
図2の紙面手前側に搬送される。
【0019】
感光体3Yに形成されたYトナー像は、
図1の中間転写体である中間転写ベルト41に中間転写される。中間転写後に感光体3Yの表面に残留した廃トナーは、ドラムクリーニング装置4Yによって除去される。廃トナーが除去された感光体3Yの表面は除電部材により除電され、次の画像形成を行うために帯電装置5Yへと向かう。
【0020】
なお、現像剤の搬送通路近傍に設けられるべき作像温度センサは、第1、第2の搬送通路9Y、14Y内の現像剤の温度と相関が高い温度検知を行うことができる位置に配置されている。(例えば、現像ユニット7Y内や、画像形成装置の本体側の現像ユニット7Y近傍など)
【0021】
図1に戻って、光書き込みユニット20の下方には、第1給紙カセット31、第2給紙カセット32が設けられている。これらの給紙カセット内には記録紙Pが複数枚重ねられた状態で収納されており、一番上の記録紙Pには、それぞれ第1給紙ローラ31a、第2給紙ローラ32aが当接するようになっている。これら給紙ローラ31a、32aが反時計回りに駆動することで、給紙カセット31、32内の一番上の記録紙Pが給紙路33に排出される。
【0022】
記録紙Pは搬送ローラ対34で上側へ搬送され、スキュー補正・タイミング合わせローラ対(いわゆるレジストローラ)35の位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト41上の画像に合わせたタイミングで二次転写ニップ(二次転写ローラ50と二次転写対向ローラ46の当接位置)へと搬送される。
【0023】
画像形成ユニット1の上方には中間転写ユニット40が配置されている。中間転写ユニット40は中間転写ベルト41、ベルトクリーニングユニット42、一次転写ローラ45Y、45C、45M、45、二次転写対向ローラ46、及び駆動ローラ47などを備えて構成される。中間転写ベルト41は駆動ローラ47により反時計回りに回転する。4つの一次転写ローラ45は中間転写ベルト41を挟んで、各々対応する色の感光体3との間に一次転写ニップを形成している。一次転写ローラ45は中間転写ベルト41の内周側に一次転写バイアスを印加する。一次転写ローラ45と感光体3の電位差により、感光体3上のトナー像が一次転写ニップで中間転写ベルト41に転写される。各色の一次転写ニップで、Yトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Kトナー像が中間転写ベルト41に順次転写され、中間転写ベルト41には4色のトナー像を重ね合わせた4色トナー像が形成される。
【0024】
二次転写対向ローラ46は二次転写ローラ50と対向する位置に設けられ、両者が中間転写ベルト41を挟んで二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト41に形成された4色トナー像のタイミングに合わせて、スキュー補正・タイミング合わせローラ対35が記録紙Pを二次転写ニップに搬送する。二次転写対向ローラ46と二次転写ローラ50の間には二次転写バイアスが印加され、その力で中間転写ベルト41上の4色トナー像は記録紙Pへと二次転写される。そして記録紙Pの下地色と相まって、フルカラーのトナー像となる。二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト41に残留した廃トナーはベルトクリーニングユニット42によって除去される。
【0025】
二次転写ニップの上方には定着ユニット60が設けられている。定着ユニット60はハロゲンランプなどの発熱源を内包する加圧ローラ61と、定着ベルトユニット62とで構成されている。さらに定着ベルトユニット62は、定着ベルト64、ハロゲンランプなどの発熱源を内包する加熱ローラ63、及び駆動ローラ66などで構成されている。定着ベルト64は駆動ローラ66により図中反時計回りに回転し、加熱ローラ63により加熱されて一定の温度(例えば140℃)に維持される。
【0026】
加圧ローラ61も時計回りに回転し、内部の発熱源により加熱され一定の温度(例えば120℃)に維持される。定着ベルト64と加圧ローラ61は当接しており、定着ニップを形成する。二次転写ニップを通過し、トナー像を載せた記録紙Pは、定着ユニット60内の定着ニップに搬送される。定着ニップで加熱・加圧されることで、トナー像は記録紙P上に定着する。トナー像を定着させた記録紙Pは、排紙ローラ対67を通過して、機外の排紙スタック部68に排紙される。
【0027】
なお、中間転写ユニット40の上方には、Yトナー、Cトナー、Mトナー、Kトナーを各々収容する4つのトナーカートリッジ100Y、100C、100M、100Kが設けられている。トナーカートリッジ100内の各色トナーは補給経路を経て、トナー補給口から現像ユニット7に補給される。これらのトナーカートリッジ100は、画像形成ユニット1とは独立して画像形成装置本体に対して着脱可能である。
【0028】
なお、トナーカートリッジ100、及びトナーボトルは、トナー収容容器の一例である。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスを示すフローチャートである。
プリンタに備えられたコントローラ65は、ステップS1で現在作像中であるか否かを判断する。作像中であれば(ステップS1,Yes)、既に作像モジュール(感光体3、帯電装置5、現像ユニット7など)は駆動され、感光体3にバイアスが掛かった状態なので、ステップS4以降の感光体表面電位検知シーケンスに連続的に移行することができる。一方、作像中でない場合は(ステップS1,No)、コントローラ65は、ステップS2で作像モジュールを駆動させ、ステップS3で帯電装置5によって作像中の条件で感光体3を帯電させる。
【0030】
その後ステップS4に移行する。ステップS4では、コントローラ65は、検知したい電位に帯電した感光体3の箇所が除電部材の隣接位置に来たタイミングで帯電バイアスから除電バイアスに切り替える。除電部材に除電バイアスを掛けるタイミングについては、
図4のタイミングチャートを用いて後述する。
【0031】
次いで、ステップS5では、コントローラ65は、除電部材に除電バイアスを掛けた際に除電部材に流れる電流をフィードバック回路にて取得する。ここでフィードバック回路は、
図5における電流検知部70に相当する。電流検知部70は、除電部材に流れた電流の直流成分を検知する。
【0032】
次いで、ステップS6では、コントローラ65は、フィードバック回路での取得電流から除電前の感光体表面電位を推定する。すなわち制御手段としてのコントローラ65は、帯電状態にある感光体3を除電部材で除電する際に電流検知部70に流れる電流の直流成分から、除電部材通過前の感光体3の表面電位を推定する。この推定には、
図6に示すような実験的又は計算的に取得した、除電前感光体表面電位と除電部材に流れた電流の関係を用いる。
【0033】
除電部材には、帯電電源E1から、除電バイアスとして、DCバイアスとACバイアスを重畳した振動電圧が印加される。これにより、除電後の感光体表面電位が安定するため、精度の高い電位検知が可能となる。
【0034】
なお、感光体表面電位検知シーケンスは、
図3のようなフローに限らず、他の調整動作でバイアスを印加するシーケンスから続けて実施しても良いし、感光体表面電位検知シーケンスのために個別の調整動作を設けても良い。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
本実施形態は、DCバイアスとACバイアスを重畳する帯電装置5において、除電部材と帯電部材を共通部材として構成した場合の例である。これにより、除電部材の配置スペースを省略可能となるとともに、コスト削減が可能となる。
【0036】
感光体表面電位の検知対象は、作像中の帯電後電位V1の場合である。説明の簡単のために、帯電ローラ6の帯電DCバイアスとそのバイアスを掛けたときの感光体表面電位は同等になると仮定している。
【0037】
一次転写ローラ45の転写バイアスに関して、検知対象は帯電後の感光体表面電位(
図5中のV
1に相当)であるため、コントローラ65は、時期Aにおいて、検知対象の電位に帯電した感光体位置が転写装置としての一次転写ローラ45の対向位置又はその付近に来たとき、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフしている。これにより、検知対象の電位に帯電した感光体位置が除電部材の対向位置に来るまでに、感光体表面は転写バイアスによる外乱を受けない。
【0038】
一方、帯電ローラ6の帯電DCバイアスに関して、時期Bで、本実施形態では帯電ローラ6と同一である除電部材のバイアスを作像中のバイアスV1から除電バイアスV0に切り替えている。切り替えのタイミングは、転写バイアスの外乱を受けていない帯電後電位V1に帯電した感光体3の位置が、除電部材の対向位置に来たとき又はその前後位置に来たときである。
【0039】
また、この場合の除電部材に印加される除電バイアスV0は0Vとしている。これにより、感光体表面電位検知シーケンス後に感光体表面に電荷が存在しなくなるため、追加の除電動作が不要になる。しかしながら、除電バイアスV0を掛けた後もACバイアスは重畳されたままである。
【0040】
フィードバック回路に流れるフィードバック電流に関して、時期Bで除電部材のバイアスを除電バイアスV0に切り替えて以降、感光体1周分に相当する時間の間、帯電前電位V1が帯電後電位V0に除電されたときに生じる電流IFB2が除電部材に流れる。コントローラ65は、このIFB2の大きさを用いて、除電前の感光体表面電位を推定する。除電前の感光体表面電位によってフィードバック電流の大きさが変化するため、転写の影響込みの表面電位を検知可能となる。IFB2を取得する際は、これを複数回取得してその平均値を推定に用いると、検知精度を上げることができる。因みに、電流IFB1は、転写バイアスの外乱を受けてV1から変化した表面電位の箇所が帯電部材によってV1に帯電されたときに生じた電流である。
【0041】
図5は、各タイミングでの感光体表面電位を示す概要図である。
プリンタは、感光体3に対向して一次転写ローラ45を備えている。
図5(a)に示す時期1は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオンからオフに切り替えるタイミングであって、これは
図4における時期Aに一致する。
図5(b)に示す時期2は、帯電ローラ6の帯電DCバイアスを除電バイアスV
0に切り替える直前のタイミングである。
図5(c)に示す時期3は除電部材による除電中のタイミングである。時期1~3は
図4のタイミングチャートにも示されている。
【0042】
時期1では、感光体表面には、帯電ローラ6(本実施形態では除電部材と同一)によりV1に帯電した箇所と、一次転写ローラ45の転写バイアスの外乱を受けてV2に電位が変化した箇所が存在している。帯電ローラ6には、帯電電源E1から、帯電バイアスとして、直流電圧(帯電DCバイアス)と交流電圧(帯電ACバイアス)とを重畳した振動電圧が印加される。
【0043】
時期2は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフしてから除電部材による除電が開始される前のタイミングである。時期1から時期2までの感光体3の回転中、転写バイアスがオフになっているため、帯電ローラ6によってV1に帯電した感光体表面の箇所は一次転写ローラ45を通過後も転写バイアスの外乱を受けない。
【0044】
時期3では、感光体表面は除電部材による除電バイアスV
0で除電中である。電流検知部70が、感光体表面電位がV
1からV
0に除電される際にフィードバック回路に生じた電流I
FB2を取得する。コントローラ65は、
図6に示す関係を用いて電流I
FB2から除電前の感光体表面電位を推定することができる。
【0045】
図6は、除電前の感光体表面電位と除電部材に流れた電流との関係を示す図である。
図6は、様々な除電前の感光体表面電位に対して、除電部材に除電バイアスをかけて感光体表面を除電した際の、除電前の感光体表面電位と除電部材に流れた電流の実験結果である。この時の除電バイアスは150[-V]とした。図示のように、高い線形性が得られたため、この結果から、除電部材に流れた電流を取得することで、除電前の感光体表面電位を推定することができる。
【0046】
本実施形態に係る潜像担持体表面電位検知装置は、潜像担持体としての感光体3と、感光体3を帯電する帯電部材としての帯電ローラ6と、感光体3を除電する除電部材と、除電部材に流れた電流の直流成分を検知する電流検知部70と、帯電状態にある感光体3を除電部材で除電する際に電流検知部70に流れる電流の直流成分から、除電部材通過前の感光体表面電位を推定する制御手段65と、を有する。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、AC重畳DC帯電方式を用いた電子写真方式の画像形成装置において、感光体表面電位に外乱を与える周辺モジュール(例えば転写モジュール)のバイアスが掛かった状態で帯電され、作像中と同等の表面電位になった感光体を、帯電ローラ6を用いてAC除電し、その際に帯電ローラ6に流れる電流の直流成分から、除電前の感光体表面電位を推定する。これにより、実際の作像中と同等の感光体表面電位を推定することが可能である。
【0048】
このための具体的な検知手順は以下の通りである。検知前の状態では、実際の作像時と同様の条件で感光体及び周辺モジュールは駆動され、バイアスが印加されている。感光体3上の帯電後表面電位を検知したい箇所が外乱を与える周辺モジュール(例えば転写モジュール)に突入する前に、その周辺モジュールのバイアスを切ったり、感光体3から離間したりすることで感光体表面電位への影響を無くす。帯電後表面電位を検知したい箇所が再び帯電ローラ6に突入する前に、帯電ローラ6は帯電電位の直流成分(Vc)を0Vに切り替える。すると、感光体上の電荷は0Vに近づくようにAC除電される。AC除電時に帯電ローラ6に流れる電流の直流成分は、除電前の感光体表面電位に対応するものであるから、これを検知することで感光体表面電位を推定することが可能である。
【0049】
図7は、第2実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
図4の第1実施形態では、帯電ローラ6の帯電DCバイアスとそのバイアスを掛けたときの感光体表面電位は同等になると仮定したが、除電部材の疲労や汚れなどによって、除電バイアスを掛けてから感光体3を1周させただけでは完全には除電しきれない場合がある。そこで、除電後1周目にフィードバック回路に流れる電流I
FB2’だけでなく、除電後2周目の電流I
FB2’’も用いて除電前の感光体表面電位を推定する。つまり、I
FB2=I
FB2’+I
FB2’’とし、1周目と2周目の電流値の和を用いる。I
FB2’やI
FB2’’は感光体回転中のいずれかの1点又はその期間中で取得した電流の平均値である。あるいは、1周目と2周目の電流値の和を用いるのではなく、1周目と2周目の期間中の除電部材に流れた電流の時間積分値を推定に用いても良い。
【0050】
なお、除電バイアスを感光体2周目まで掛けても除電しきれない場合は、同様にして除電バイアスを感光体3周目、4周目、5周目以降まで掛け、この時にフィードバック回路に流れる電流を除電前の感光体表面電位の推定に用いることができる。
【0051】
図8は、各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
図8(a)に示す時期1は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオンからオフに切り替えるタイミングであって、これは
図7における時期Aに一致する。
図8(b)に示す時期2は、帯電ローラ6の帯電DCバイアスを除電バイアスV
0に切り替える直前のタイミングである。
図8(c)に示す時期3は、除電開始後の感光体1周目のタイミングである。
図8(d)に示す時期4は、除電開始後の感光体2周目のタイミングである。時期1~4は
図7のタイミングチャートにも示されている。
【0052】
図8(a)に示す時期1では、感光体表面には、帯電ローラ6(本実施形態では除電部材と同一)によりV
1に帯電した箇所と、一次転写ローラ45の転写バイアスの外乱を受けてV
2に電位が変化した箇所が存在している。
【0053】
図8(b)に示す時期2は、一次転写ローラ45の転写バイアスがオフしてから除電部材による除電が開始される前のタイミングである。
図8(a)に示す時期1から
図8(b)に示す時期2までの感光体3の回転中、転写バイアスがオフになっているため、帯電ローラ6によってV
1に帯電した感光体表面の箇所は一次転写ローラ45を通過後も転写バイアスの外乱を受けない。
【0054】
図8(c)に示す時期3では、感光体表面は除電部材による除電バイアスV
0で除電中であるが、感光体表面電位はV
0(=0V)まで除電しきれず、V
0’(>0V)になっている。
【0055】
図8(d)に示す時期4では、2周目の感光体表面電位はV
0(=0V)まで除電されている。電流検知部70が、感光体表面電位がV
1からV
0に除電される際にフィードバック回路に生じた電流I
FB2=I
FB2’+I
FB2’’を取得する。
図6に示す関係を用いて電流I
FB2から除電前の感光体表面電位を推定することができる。これにより、除電部材による除電開始から感光体1周目で除電しきれない場合でも、正確な電位検知が可能となる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、AC除電時に帯電ローラ6に流れる電流の直流成分を検知するタイミングは感光体1周目だけでなく、2周目又はそれ以降であってもよい。帯電ローラ6の経時劣化や汚れや通電疲労によって、その除帯電能力が低下した場合は、AC除電を開始してから1周目だけで感光体表面電位を完全に除電できないことが想定される。この場合、AC除電を開始してから感光体1周目のみの帯電電流だけで除電前の感光体表面電位を推定しようとするとズレが生じてしまう。しかしながら、帯電ローラ6の除帯電能力が低下していた場合でも、感光体複数周にわたってAC除電を繰り返すことで、感光体表面電位は0V付近に近づくため、感光体複数周にわたって帯電ローラ6に流れた電流を足し合わせることで、正確なAC除電前の感光体表面電位を推定することができる。
【0057】
図9は、第3実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
本実施形態は、現像バイアスなどの転写バイアス以外の外乱を除去するためのものである。
本実施形態によれば、感光体表面電位に外乱を与える要因が転写バイアス以外にある場合でも、適切なタイミングでバイアスを制御することによって、狙いの検知対象の電位を検知することが可能になる。転写バイアス以外の感光体表面電位に外乱を与える要因として、現像ユニット7及びそこに印加される現像バイアスが挙げられる。
図9では、外乱を与える要因を「感光体表面電位を変化させるモジュール」として記載している。
【0058】
図10は、各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
図10(a)に示す時期1は、感光体表面電位を変化させるモジュール75をオンからオフに切り替えるタイミングであって、これは
図9における時期Aに一致する。
図10(b)に示す時期2は、感光体表面電位を変化させるモジュール75のオフから、一次転写ローラ45の転写バイアスのオフまでの間のタイミングである。
図10(c)に示す時期3は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフに切り替えるタイミングである。
図10に示す時期1~3は
図9のタイミングチャートにも示されている。
【0059】
図10(a)に示すように、プリンタは、帯電ローラ6よりも感光体回転方向下流側であって、一時転写ローラ45よりも感光体回転方向上流側に、感光体表面電位を変化させるモジュール75を備える。コントローラ65は、時期Aで、検知対象の電位に帯電した感光体3の位置が感光体表面電位を変化させるモジュール75の対向位置に来たとき、感光体表面電位を変化させるモジュール75のバイアスをオフにする。感光体表面電位を変化させるモジュール75のバイアスがオンだったときは、感光体表面電位を変化させるモジュール75の外乱(例えば、現像バイアス)によって、感光体3はV
3に帯電している。その後、
図10(b)に示すように、感光体表面電位を変化させるモジュール75のバイアスをオフにした後は、帯電ローラ6の帯電DCバイアスによりV
1に帯電した感光体表面は、感光体表面電位を変化させるモジュール75を通過後も、V
1に帯電したままである。その後、
図10(c)に示すように、時期Bで、感光体表面電位を変化させるモジュール75の外乱を受けていない、V
1に帯電した感光体位置が一次転写ローラ45の対向位置又はその付近に来たタイミングで、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフにする。
【0060】
図10(c)の時期3は
図5(a)の時期1と対応しており、以降は第1実施形態と同様な処理で電位V
1を推定可能である。
【0061】
図11は、第4実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
本実施形態は、書き込み電位などの帯電後電位以外の感光体表面電位を検知するためのものである。
本実施形態は、帯電ローラ6を通過した直後の感光体表面電位を検知する以外にも適用可能である。例えば、感光体表面電位を変化させるモジュール75として光書き込みユニット20が考えられる。そして、帯電した感光体を光書き込みユニット20で露光することでその表面電位を書き込み電位V
3に変化させることを考える。
【0062】
図11は書き込み電位を検知するときのタイミングチャートを示している。
図11において感光体表面電位を変化させるモジュール75をオンとしているのは、例えば光書き込みユニット20により書き込み動作(例えば画像領域の全面露光)をしていることを表す。
【0063】
図12は、各タイミングでの感光体表面電位の概要図である。
図12(a)に示す時期1は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオンからオフに切り替えるタイミングであって、これは
図11における時期Aに一致する。
図12(b)に示す時期2は、一次転写ローラ45の転写バイアスのオフから除電部材による除電開始までの間のタイミングである。
図12(c)に示す時期3は、帯電ローラ6の帯電DCバイアスを除電バイアスに切り替えるタイミングであって、これは
図11における時期Bに一致する。
図12(d)に示す時期4は除電部材による除電中のタイミングである。時期1~4は
図11のタイミングチャートにも示されている。
【0064】
図11に示すように、時期Aで一次転写ローラ45の転写バイアスをオフにする。これにより、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、帯電ローラ6によってV
1に帯電した感光体3を、感光体表面電位を変化させるモジュールである光書き込みユニット20により露光してできた書き込み電位V
3を有する感光体位置は、一次転写ローラ45の転写バイアスの外乱を受けることなく一次転写ローラ45を通過する。
【0065】
図11及び
図12(c)に示すように、時期Bで、書き込み電位V
3に帯電した感光体位置が、除電部材(
図12では帯電ローラ6と同一)の対向位置又はその前後に来たタイミングで、帯電ローラ6の帯電DCバイアスを除電バイアスV
0に切り替えている。
図11及び
図12(d)に示すように、帯電DCバイアスを除電バイアスV
0に切り替えて以降、書き込み電位V
3に対応した電流I
FB2が除電部材に流れるため、これを電流検知部70により取得して、書き込み電位V
3を推定することができる。
【0066】
図11では感光体表面電位を変化させるモジュール75はオンのままのため、
図12(d)に示すように、除電部材でV
0に除電された感光体表面電位は、感光体表面電位を変化させるモジュール75を通過する際にV
0’に変化するように表現している。
【0067】
図7及び
図8に示す第2実施形態のように、除電後2周目以降の検知電流を電位の推定に用いる場合は、V
0のまま感光体表面電位を変化させるモジュール75の対向位置を通過するように、感光体表面電位を変化させるモジュール75は、除電後の電位V
0の感光体位置がその対向位置に来たとき又はその前後でオフすることが望ましい。
【0068】
次に、本発明の第5実施形態としての潜像担持体膜厚検知装置を説明する。
前記第1実施形態から前記第4実施形態では、感光体表面電位の検知装置及び検知方法について説明したが、これは感光体膜厚を既知の項目とし、帯電後の感光体表面電位を検知対象としているからである。後述するように、放電前後の感光体表面電位差と感光体膜厚のうちの一方が既知であれば、検知したフィードバック電流から他方を推定可能であるため、適用するシステムによって同じ技術を感光体表面電位検知にも感光体膜厚検知にも使用可能である。
【0069】
例えば、以下の特徴を有するシステムでは本発明を感光体表面電位検知技術として使用することができる。
・感光体膜厚が一定又は予測可能であること
・(本発明以外で)感光体膜厚の検知手段があること
【0070】
また、以下の特徴を有するシステムでは本発明を感光体膜厚検知技術として使用することができる。
・感光体表面電位を予測可能であること
・(本発明以外で)感光体表面電位の検知手段があること
【0071】
以下に、感光体膜厚の求め方を説明する。
帯電ローラ6又は除電部材に流れる電流Ioutは以下の式(1)で近似できる。
Iout=C×(Vc-Vth-Vd0)×λ×α (1)
ここで、Cは感光体の静電容量、Vcは帯電ローラ6への印加電圧、Vthは放電開始電圧、Vdoは帯電前の感光体表面電位、λはプロセス線速、αは係数である。
【0072】
感光体の静電容量Cは以下の式で表せる。
C=εS/d
ここで、εは感光体の誘電率、Sは感光体をコンデンサとみなしたときの極板面積、dは感光体膜厚である。
【0073】
これより、式(1)は以下のように式(2)として表せる。
Iout=εS/d×(Vc-Vth-Vd0)×λ×α (2)
ここで、経時により変化が無視できる項をまとめて、係数α1とすると以下のように式(3)として表せる。
Iout=1/d×(Vc-Vth-Vd0)×α1 (3)
【0074】
式(3)においてVc-Vthは放電後の感光体表面電位であるので、Ioutは以下2つの物理量を用いて表される。
・放電前後の表面電位差
・感光体膜厚
よって、放電前後の表面電位差と感光体膜厚のうちの一方が分かれば、他方をIoutの値から推定することが可能になる。
【0075】
すなわち、本実施形態に係る潜像担持体膜厚検知装置は、潜像担持体としての感光体3と、感光体3を帯電する帯電部材としての帯電ローラ6と、感光体3を除電する除電部材と、除電部材に流れた電流の直流成分を検知する電流検知部70と、帯電状態にある感光体3を除電部材で除電する際に電流検知部70に流れる電流の直流成分から感光体膜厚を推定する制御手段65と、を有する。
【0076】
また、本発明の実施形態に係る画像形成装置では、前述した感光体表面電位検知装置で検知した感光体表面電位又は前述した感光体膜厚検知装置で検知した感光体膜厚を制御項目にフィードバックすることで、最適な作像条件を設定することができる。これにより、画像濃度などの品質を向上させることができる。なお、制御項目とは、各種バイアス(帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアス)、書き込み光量、画像処理方法などである。
【0077】
また、本発明の実施形態に係る画像形成装置は、前述した感光体表面電位検知装置で検知した感光体表面電位又は前述した感光体膜厚検知装置で検知した感光体膜厚を使用して、キーパーツ寿命やプロセスカードリッジ寿命を判断する処理を行う。これにより、感光体表面電位の低下や感光体膜厚の減少を検知することで適切なユニット寿命判断が可能になる。さらにユニットを寿命まで使い切ることが可能になり、サービスコストを低減できる。
【0078】
前述した実施形態における潜像担持体表面電位検知装置では、ある電位に帯電した感光体3を除電した際にフィードバック回路に生じる、感光体3を潜像担持体として帯電する場合に生じる向きと逆向きに流れる電流(すなわち、除電電流)の大きさから、除電前の感光体電位を推定するものである。
【0079】
しかし、このようなフィードバック回路は、回路を保護するために、感光体3を帯電させる際に生じる向きとは逆向きのフィードバック電流が流れないようする場合がある。例えば、ダイオードを帯電経路とフィードバック回路の途中に挿入することで、感光体3を帯電させる際に生じる向きとは逆向きの電流が流れないようにする。その場合、感光体3を除電する際に生じる向きのフィードバック電流を取得するためには、除電時に生じる向きのフィードバック電流を取得可能な回路を別個に設ける必要がある。
【0080】
しかし、以下に説明する実施形態における潜像担持体表面電位検知装置では、表面電位計のような装置を用いずに、作像中と同条件で潜像担持体表面電位を検知することができることに加えて、感光体3を帯電させる際に生じる向きとは逆向きの電流が流れないように設計された帯電経路のフィードバック回路を用いて、感光体3を帯電する際とは逆向きの電流(すなわち、除電電流)の大きさを算出し、除電電流から除電前の感光体表面電位を推定することができる。また、別個の回路を設ける必要が無いため、コストの増加や回路レイアウトの巨大化を回避できる。
【0081】
これにより、感光体3を帯電させる際に生じる向きとは逆向きの電流から回路を保護しつつも、同じフィードバック回路を用いて帯電時に生じる電流及び除電時に生じる帯電時とは逆向きの電流の両方を検知し、両方の向きの電流を各種制御に用いることができる。これは、以下の理由による。つまり、除電部材にバイアスを印加すると、フィードバック回路に感光体3を帯電する際と同じ向きの内部電流が生じる回路構成を用いて、帯電した感光体3を除電装置で除電する際に、印加バイアスをフィードバック回路に内部電流が生じるレベルに設定する。すると、除電によって帯電時とは逆向きの除電電流が流れるため、除電電流により内部電流が相殺され、内部電流が減少する。この内部電流の減少量を算出し、内部電流の変化量から除電前の感光体の表面電位を推定することができる。
【0082】
図13は、本発明の別な実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスを示すフローチャートである。
プリンタに備えられたコントローラ65は、ステップS10で現在作像中であるか否かを判断する。作像中であれば(ステップS10,Yes)、既に作像モジュール(感光体3、帯電装置5、現像ユニット7など)は駆動され、感光体3にバイアスが掛かった状態なので、ステップS4以降の感光体表面電位検知シーケンスに連続的に移行することができる。一方、作像中でない場合は(ステップS10,No)、コントローラ65は、ステップS11で作像モジュールを駆動させ、ステップS12で帯電装置5によって作像中の条件で感光体3を帯電させる。
【0083】
その後ステップS13に移行する。ステップS13では、コントローラ65は、検知したい電位に帯電した感光体3の箇所が除電部材の隣接位置に来たタイミングで帯電バイアスから除電バイアスに切り替える。除電部材に除電バイアスを掛けるタイミングについては、
図14のタイミングチャートを用いて後述する。
【0084】
次いで、ステップS14では、コントローラ65は、除電部材に除電バイアスを掛けた際に除電部材に流れる電流をフィードバック回路にて取得する。ここでフィードバック回路は、
図15における電流検知部70に含まれる。具体的には、電流検知部70は、除電部材への除電バイアス印加時に、感光体3の帯電時と同じ向きの内部電流が生じる検知回路としてのフィードバック回路を有し、内部電流と帯電部材としての帯電ローラ6Yに流れた電流を足し合わせたフィードバック電流を検知する。帯電時と除電時では、帯電ローラ6Yに流れる電流、すなわち帯電電流と除電電流の向きは逆になる。除電方法はAC除電に限らず、感光体電位と逆極性のバイアスを印加して除電する方法を用いてもよい。
【0085】
次いで、ステップS15では、コントローラ65は、取得したフィードバック回路に流れる電流と、印加した除電バイアスから見積もられる内部電流との差分を算出する。この差分が、感光体を帯電していた電荷が除電されることで生じた電流(すなわち、除電電流)となる。すなわち、制御手段としてのコントローラ65は、除電時の内部電流の変動量から除電時に生じた除電電流を算出する。
【0086】
次いで、ステップS16では、コントローラ65は、算出した除電電流の大きさから除電前の感光体表面電位を推定する。すなわち制御手段としてのコントローラ65は、帯電状態にある感光体3を除電部材で除電する際に電流検知部70に流れる電流の大きさから、除電前の感光体3の表面電位を推定する。この推定には、
図16に示すような実験的又は計算的に取得した、除電前感光体表面電位と内部電流の減少量(すなわち、除電電流)の関係を用いる。
【0087】
なお、感光体表面電位検知シーケンスは、
図13のようなフローに限らず、他の調整動作でバイアスを印加するシーケンスから続けて実施しても良いし、感光体表面電位検知シーケンスのために個別の調整動作を設けても良い。
【0088】
また、除電によって感光体3の表面電位を検知する際、コントローラ65は、除電部材による除電開始から感光体3の2周目以降の検知回路の内部電流減少量と、感光体3の1周目の内部電流減少量の和を、除電前の感光体3の表面電位の推定に用いてもよい。これにより、感光体1周目で完全には除電しきれない場合であっても、2周目以降との足し合わせで正確な除電電流の算出が可能となる。
【0089】
また、除電部材と帯電部材(帯電ローラ6)が共通部材であってもよい。これにより、コストの低減、除電部材のレイアウトスペースの削減及び装置の小型化が可能となる。
【0090】
ところで、除電時に発生する除電電流が、除電バイアスにより生じる内部電流の絶対値よりも大きい場合、内部電流によって除電電流を十分に相殺することができずに、内部電流の減少量が上がらなくなってしまう。そこで、コントローラ65は、使用する範囲の感光体電位の上限で発生する除電電流を相殺することが可能な内部電流が生じるように除電バイアスを設定する。大きな除電電流が生じた場合でも十分に相殺できる大きさの内部電流が生じるように除電バイアスを設定することで、除電前電位と除電電流の線形性を維持することができ、正確に除電前電位を推定することが可能となる。
【0091】
図14は、第5実施形態に係る感光体表面電位検知シーケンスのタイミングチャートを示す図である。
本実施形態は、DCバイアスとACバイアスを重畳する帯電装置5において、除電部材と帯電部材を共通部材として構成した場合の例である。これにより、除電部材の配置スペースを省略可能となるとともに、コスト削減が可能となる。
【0092】
感光体表面電位の検知対象は、作像中の帯電後電位V1の場合である。説明の簡単のために、帯電ローラ6の帯電DCバイアスとそのバイアスを掛けたときの感光体表面電位は同等になると仮定している。
また、帯電DCバイアスとしてV1を印加する際に、フィードバック回路に生じる内部電流をIFB1としている。
【0093】
一次転写ローラ45の転写バイアスに関して、検知対象は帯電後の感光体表面電位(
図15中のV
1に相当)であるため、コントローラ65は、時期Aにおいて、検知対象の電位に帯電した感光体位置が転写装置としての一次転写ローラ45の対向位置又はその付近に来たとき、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフしている。これにより、検知対象の電位に帯電した感光体位置が除電部材の対向位置に来るまでに、感光体表面は転写バイアスによる外乱を受けない。
【0094】
一方、帯電ローラ6の帯電DCバイアスに関して、時期Bで、本実施形態では帯電ローラ6と同一である除電部材のバイアスを作像中のバイアスV1から除電バイアスV0に切り替えている。この切り替えのタイミングは、転写バイアスの外乱を受けていない帯電後電位V1に帯電した感光体3の位置が、除電部材の対向位置に来たとき又はその前後位置に来たときである。また、除電電流が流れない状況で、除電バイアスV0を印加した際にフィードバック回路に生じる内部電流がIFB3である。
【0095】
時期Bで除電部材のバイアスを除電バイアスV0に切り替えて以降、感光体1周分に相当する時間の間、帯電前電位V1が帯電後電位V0に除電されたときに生じる除電電流(=IFB3-IFB2)がフィードバック回路に流れる。この除電電流は除電バイアスの印加によって生じる内部電流とは逆向きであるため、発生した除電電流によって内部電流が相殺され、内部電流は除電電流の大きさの分だけ減少する。コントローラ65は、この内部電流の減少分から除電電流を算出し、除電電流の大きさから除電前の感光体帯電電位を推定する。
【0096】
図15は、各タイミングでの感光体表面電位を示す概要図である。
プリンタは、感光体3に対向して一次転写ローラ45を備えている。
図15(a)に示す時期1は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオンからオフに切り替えるタイミングであって、これは
図14における時期Aに一致する。
図15(b)に示す時期2は、帯電ローラ6の帯電DCバイアスを除電バイアスV
0に切り替える直前のタイミングである。
図15(c)に示す時期3は除電部材による除電中のタイミングである。時期1~3は
図14のタイミングチャートにも示されている。
【0097】
時期1では、感光体表面には、帯電ローラ6(本実施形態では除電部材と同一)によりV1に帯電した箇所と、一次転写ローラ45の転写バイアスの外乱を受けてV2に電位が変化した箇所が存在している。帯電ローラ6には、帯電電源E1から、帯電バイアスとして、直流電圧(帯電DCバイアス)と交流電圧(帯電ACバイアス)とを重畳した振動電圧が印加される。
【0098】
時期2は、一次転写ローラ45の転写バイアスをオフしてから除電部材による除電が開始される前のタイミングである。時期1から時期2までの感光体3の回転中、転写バイアスがオフになっているため、帯電ローラ6によってV1に帯電した感光体表面の箇所は一次転写ローラ45を通過後も転写バイアスの外乱を受けない。
【0099】
時期3では、感光体表面は除電部材による除電バイアスV
0で除電中である。電流検知部70が、感光体表面電位がV
1からV
0に除電される際にフィードバック回路に生じた、除電電流によって相殺された内部電流を取得する。コントローラ65は、
図16に示す関係を用いて取得した内部電流から除電前の感光体表面電位を推定することができる。
【0100】
図16は、除電前の感光体表面電位と除電電流によって相殺される内部電流との関係を示す図である。
図16は、様々な除電前の感光体表面電位に対して、除電部材に除電バイアスをかけて感光体表面を除電した際の、除電前の感光体表面電位と除電電流によって減少した内部電流の実験結果である。この時の除電バイアスは150[-V]とした。図示のように、高い線形性が得られたため、この結果から、除電電流による内部電流の減少量を取得することで、除電前の感光体表面電位を推定することができる。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る潜像担持体表面電位検知装置は、潜像担持体としての感光体3と、感光体3を帯電する帯電部材としての帯電ローラ6と、感光体3を除電する除電部材と、除電部材への除電バイアス印加時に内部電流を生じる検知回路を有し、内部電流と帯電ローラ6に流れた電流を足し合わせたフィードバック電流を検知する電流検知部70と、除電時の内部電流の変動量から除電時に生じた除電電流を算出し、算出した除電電流の大きさから除電前の感光体3の表面電位を推定する制御手段65と、を有する。
【符号の説明】
【0102】
3 感光体(潜像担持体)
6 帯電ローラ(帯電部材)
65 コントローラ(制御手段)
70 電流検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】