(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム、それを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20241119BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241119BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B32B27/36
B65D65/42 A
(21)【出願番号】P 2021006607
(22)【出願日】2021-01-19
(62)【分割の表示】P 2020171436の分割
【原出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】堀 周二郎
(72)【発明者】
【氏名】三谷 洋喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸弘
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6780794(JP,B1)
【文献】特許第4717596(JP,B2)
【文献】特開2009-160776(JP,A)
【文献】特公平04-018534(JP,B2)
【文献】実開平07-005733(JP,U)
【文献】特開2001-131317(JP,A)
【文献】特開2004-122670(JP,A)
【文献】特開2004-137356(JP,A)
【文献】国際公開第2004/063255(WO,A1)
【文献】特開2004-292542(JP,A)
【文献】国際公開第2005/092957(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/016563(WO,A1)
【文献】特開2002-155151(JP,A)
【文献】特開2007-197526(JP,A)
【文献】特開2002-012687(JP,A)
【文献】特開2018-021148(JP,A)
【文献】特開2005-335368(JP,A)
【文献】特開2007-197527(JP,A)
【文献】特表2013-510231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/02
B32B 27/36
B65D 65/40
B65D 65/42
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を
70質量%以上含む層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有するコーティング層を配した熱収縮性フィルムであって、以下a)、およびc)を満たし、前記コーティング層における帯電防止剤の有効成分の含有量が、0.0012g/m
2以上0.015g/m
2以下である熱収縮性フィルム。
a)コーティング層の表面抵抗率が温度23℃、相対湿度30%雰囲気下で5.0×10
11(Ω/sq)以下、かつ温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で1.0×10
11(Ω/sq)以下
c)80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以上
【請求項2】
前記帯電防止剤が、帯電防止剤の総量を100質量%としたとき、帯電防止剤総量に対しカチオン系帯電防止剤および、アニオン系帯電防止剤の少なくとも一方が35質量%以上である、請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記熱収縮性フィルムの一方の表面と他方の表面のJIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で0.20以上0.50以下である、請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が7%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
前記コーティング層のJIS L1094に準拠して測定した帯電圧半減期が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で5秒以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステル系樹脂が芳香族ポリエステル系樹脂またはポリ乳酸系樹脂である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
前記芳香族ポリエステル系樹脂が、共重合ポリエステル系樹脂であり、共重合成分として1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-プロパンジオール、およびイソフタル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項6に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項8】
前記ポリ乳酸系樹脂が、D-乳酸とL-乳酸との共重合体からなり、D-乳酸とL-乳酸のD/L比が、D/L=1/99~10/90、または、90/10~99/1である、請求項6に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱収縮フィルムを基材として用いた成形品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項11】
請求項9に記載の成形品または請求項10に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる熱収縮性フィルム、成形品、熱収縮性ラベル、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に使用されており、その熱収縮性により、収縮包装、収縮結束包装、プラスチック容器(ペットボトル等)の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、キャップシール等に広く使用されている。
上記熱収縮性フィルムとしては、従来、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂からなるフィルムが主に使用されてきた。これに対し、近年、安全衛生性や耐薬品性に優れたポリエステル系樹脂を使用した熱収縮性フィルムが要望されており、ポリエステル系樹脂からなる延伸フィルムの使用が増加しつつある。
【0003】
また、近年では、熱収縮性フィルムに商品名や使用上の注意等の情報伝達だけでなく意匠性を持たせるために、美麗なデザインも取り入れた多種多様な印刷が施されている。特に近年の印刷技術の向上は著しく、印刷スピードの高速化、高度なグラデーション図柄の印刷も可能となったため、最近ではグラビア印刷においてグラデーションを伴う図柄がますます頻繁に使用されるようになっている。
その中で、熱可塑性樹脂を基材とする熱収縮フィルムとしては材質が絶縁体であることから、フィルムに静電気が発生しやすく蓄積しやすい問題が有り、特に湿度の低い冬場の環境下においては、静電気に由来するトラブルが発生しやすい。具体的には、熱収縮性フィルムへ印刷する際のフィルムのロール搬送時において発生する際の静電気が、印刷インキの転写不良の原因となっており、また、フィルム表面へのコンタミネーションの混在による印刷デザインへ悪影響を及ぼす原因となっている。さらに、近年の印刷スピードの高速化において、静電気が発生しやすい状況にあり、熱収縮性フィルムにおいて優れた帯電防止性が求められている。
【0004】
上記帯電防止性に優れた熱収縮性フィルムとして、例えば、特許文献1では、フィルムの片面にベタイン系両性界面活性剤を塗布した熱収縮性ポリエステル系フィルが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、フィルムの少なくとも片面に、アニオン系界面活性剤とグリセリンの混合物または、カチオン系界面活性剤のいずれか1種からなる塗布層を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-265465号公報
【文献】特開2007-197527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、帯電防止性が充分ではなく、更なる改良が求められるものである。上記特許文献2の開示技術は、ある程度の帯電防止性は得られているものの、低湿度下における帯電防止性が充分ではない。また、動摩擦係数は充分な範囲ではあるが、フィルム製造時や印刷等の二次加工時において、特に低湿度下ではフィルムが帯電し、フィルム同士が密着しやすくなるため、擦りキズ等の不具合が起こりやすく、更なる改良が求められる。さらには、上記特許文献2の開示技術は、静摩擦係数については考慮されていないことから、熱収縮性フィルムを巻き取り、ロール状の原反とした時、巻きずれが起こりやすくなり、印刷等の二次加工時に不具合が発生しやすく、この点についても更なる改良が求められている。
【0008】
そこで、本発明では、このような背景下において、透明性、光沢性、特に低湿度環境下においても帯電防止性に優れ、印刷加工性に優れた熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂を主成分とする層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有する層を配した熱可塑性フィルムの表面抵抗率、静摩擦係数、熱収縮率、およびヘイズ値を特定の範囲とすることにより、透明性、光沢性、特に低湿度環境下においても帯電防止性に優れ、印刷加工性に優れた熱収縮性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を主成分として含む層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有する層を配した熱収縮性フィルムであって、以下a)~d)を満たす熱収縮性フィルムを要旨とする。
a)帯電防止剤を含有する層の表面抵抗率が温度23℃、相対湿度30%雰囲気下で5.0×1011(Ω/sq)以下、かつ温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で1.0×1011(Ω/sq)以下
b)一方の表面と他方の表面のJIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で0.20以上0.50以下
c)80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以上
d)JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が7%以下
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記フィルムは、透明性、光沢性、特に低湿度環境下においても帯電防止性に優れ、印刷加工性に優れた熱収縮性フィルムとすることができ、食品包装用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱収縮性フィルム(以下、「本発明のフィルム」と称することがある。)について詳細に説明する。
なお本明細書において、「主成分とする」とは、主成分として含有される樹脂が有する作用および効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する意味である。また、「主成分とする」とは、具体的な含有率を制限するものではないが、構成成分全体に対する含有率が50質量%以上を占める成分であることが好ましく、70質量%以上を占める成分であることがより好ましく、80質量%以上を占める成分であることがさらに好ましく、また100質量%以下の範囲を占める成分である。
【0013】
本発明の熱収縮性フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含む層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有する層を配したものであり、特定の物性を満たすものである。
【0014】
〔熱可塑性樹脂を主成分として含む層〕
本発明で用いる熱収縮性フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含む層(以下、「熱可塑性樹脂層」と称する)を有するものであり、上記熱可塑性樹脂としては、熱可塑性フィルムとして用いられている公知一般の樹脂を用いることができる。なかでも、収縮性の点からポリエステル系樹脂が好ましい。以下、本発明の好ましい熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂について詳述する。
【0015】
[ポリエステル系樹脂]
上記ポリエステル系樹脂とは、構成原料として、ジカルボン酸成分、およびジオール成分を含む重合成分を重合することにより得られる熱可塑性樹脂である。なかでも、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂が好ましい。
【0016】
(芳香族ポリエステル系樹脂)
上記芳香族ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分およびジオール成分の少なくとも一方に芳香族を含むものである。なかでも、ジカルボン酸成分が芳香族を含むことが好ましい。また、芳香族ポリエステル系樹脂は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0017】
上記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸およびイソフタル酸が特に好ましい。また、テレフタル酸を主成分とすることがより好ましい。
【0018】
共重合成分におけるテレフタル酸の配合量は、剛性や熱収縮性および耐破断性等の機械物性の点から、ジカルボン酸成分の総量100モル%に対し、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、また100モル%以下が好ましい。
【0019】
上記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3-プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール等が挙げられる。これらのジオール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。また、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールを主成分とすることがより好ましい。
【0020】
エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールを主成分とする場合の配合量は、ジオール成分総量100モル%に対して、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0021】
また、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオール以外のジオール成分を含む場合の配合量は、ジオール成分総量100モル%に対して、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、また40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。
【0022】
上記芳香族ポリエステル系樹脂は、共重合ポリエステル系樹脂であり、共重合成分としてテレフタル酸とエチレングリコールとを含み、さらに結晶性の低い成分、例えば、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-プロパンジオール、およびイソフタル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。なかでも、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸を含むことが特に好ましい。
【0023】
上記芳香族ポリエステル系樹脂は、ポリエステル系樹脂の慣用の製造方法、すなわち、直接重合法、エステル交換法等の製造方法を用い、回分式、連続式等の方式によって製造することができる。
【0024】
上記の方法により得られた芳香族ポリエステル系樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら、若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状とされる。さらに、この重縮合後のペレットを加熱処理して固相重縮合させることにより、さらに高重合度化させることができ、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0025】
上記芳香族ポリエステル系樹脂の製造方法において、エステル化反応には、必要に応じて、例えば、三酸化二アンチモンや、アンチモン、チタン、マグネシウム、カルシウム等の有機酸塩や有機金属化合物等のエステル化反応触媒を使用して行うことができる。また、エステル交換反応では、必要に応じて、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、チタン、亜鉛等の有機酸塩や有機金属化合物等のエステル交換反応触媒を使用することができる。
【0026】
また、重縮合反応は、例えば、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、およびこれらのエステルや有機酸塩等の燐化合物の存在下、および、例えば、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等の金属酸化物、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、チタン、コバルト等の有機酸塩や有機金属化合物等の重縮合触媒を使用して行うことができる。
【0027】
これらの重縮合触媒のうち、特に、テトラブトキシチタン、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウムから選択される一種以上が好適に使用される。さらに、重合過程での消泡を促進するため、シリコーンオイル等の消泡剤を添加することもできる。
【0028】
上記触媒の使用量は、エステル化反応触媒、エステル交換反応触媒、および重縮合触媒とも、得られる芳香族ポリエステル系樹脂の理論収量に対して、金属量(原子換算量)として通常5質量ppm以上2000質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下の範囲で用いられる。
【0029】
本発明で用いる芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度は、通常0.4dL/g以上、好ましくは0.6dL/g以上であり、かつ1.5dL/g以下、好ましくは1.2dL/g以下の範囲であることが望ましい。芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.4dL/g以上であれば、充分な機械的特性が得られ、また固有粘度が1.5dL/g未満であれば、良好な成形性が得られる。なお、上記固有粘度は、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1対1)の混合溶媒中30℃で測定した値である。
【0030】
(ポリ乳酸系樹脂)
前記ポリ乳酸系樹脂とは、D-乳酸またはL-乳酸の単独重合体、またはそれらの共重合体をいい、具体的には構造単位がD-乳酸であるポリ(D-乳酸)、構造単位がL-乳酸であるポリ(L-乳酸)、さらにはL-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリ(DL-乳酸)があり、また、D-乳酸とL-乳酸との共重合比の異なる複数の上記共重合体の混合樹脂も含まれる。なかでも、L-乳酸とD-乳酸の共重合体が好ましい。
【0031】
上記L-乳酸とD-乳酸との共重合体は、D-乳酸とL-乳酸との共重合比(以下「D/L比」と略する。)が1/99~10/90、または、90/10~99/1であることが好ましく、3/97~15/85、または、85/15~97/3であることがより好ましく、5/95~15/85、または、85/15~95/5であることがさらに好ましく、8/92~15/85、または、85/15~92/8であることが特に好ましく、10/90~15/85、または、85/15~90/10であることが最も好ましい。D-乳酸の共重合比が97より高い、または3未満の場合は、非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷および溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性および溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、加熱時のフィルム収縮特性が低下する傾向がある。さらに、延伸条件を調整することによって結晶化を抑えたフィルムとしても、熱収縮時に加熱により結晶化が収縮より先に進行してしまいその結果、収縮ムラや収縮不足を生じてしまう傾向がある。一方、D-乳酸の共重合比が85未満、または15より高い場合は、結晶性がほぼ完全になくなってしまうため、その結果加熱収縮後にラベル同士がぶつかった場合に熱にて融着してしまう等のトラブルが発生しやすくなる。そこで、上記の範囲にポリ乳酸樹脂のD-乳酸とL-乳酸との構成比を調整することにより、先記のような問題を生じない収縮特性の優れた熱収縮フィルムを得ることが可能となる。
【0032】
本発明で用いるポリ乳酸系樹脂は、D/L比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドすることも可能であり、かつ、ブレンドした方がポリ乳酸系樹脂のD/L比をより容易に調整できるので、より好ましい。この場合には、複数の乳酸系重合体のD/L比を、平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D/L比の異なるポリ乳酸系樹脂を二種以上ブレンドし、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
【0033】
また、上記ポリ乳酸系樹脂は、この発明の効果を損なわない範囲において、α-ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸等のその他の共重合成分との共重合体であってもよい。
【0034】
上記α-ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-メチル乳酸、2-ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0035】
上記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロへキサンジメタノール等が挙げられる。
【0036】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
【0037】
乳酸と、その他の共重合成分との共重合比は特に限定されないが、乳酸の占める割合が高いほど、石油資源の消費が少ないため好ましい。具体的には乳酸と、その他の共重合成分との共重合比(質量比)は乳酸:その他の共重合成分=95:5~10:90、好ましくは90:10~20:80、さらに好ましくは80:20~30:70である。共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性等の物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。
【0038】
上記ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法等、公知の方法を採用することも可能である。例えば縮合重合法であれば、D-乳酸、L-乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。上記ラクチドには、L-乳酸の二量体であるDL-ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。さらには、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物、酸クロライド等を使用しても構わない。
【0039】
上記ポリ乳酸系樹脂の重量(質量)平均分子量は、20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限が400,000以下、好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量(質量)平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
【0040】
上記ポリ乳酸系樹脂の市販品としては、例えば、Nature WorksLLC社製の「NatureWorks」、三井化学社製の「LACEA」等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いるポリエステル系樹脂は、上記芳香族ポリエステル系樹脂またはポリ乳酸系樹脂であることが好ましいが、これに限定されず、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールのみからなるポリエチレンテレフタレート(ホモポリエステル)のみからなるものであってもよく、上記ホモポリエステルと一種以上の共重合ポリエステルを含むものであってもよく、一種の共重合ポリエステルのみからなるものであってもよく、また、異なる組成の共重合ポリエステルを二種以上含んでいてもよい。
【0042】
(その他の樹脂)
また、熱可塑性樹脂層には、上記ポリエステル系樹脂以外にも、この発明の効果を著しく阻害しない範囲で、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(EMA)、エチレン-メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(GPPS(汎用ポリスチレン)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、SBS(スチレン-ブタジエン共重合体)、SIS(スチレン-イソプレン共重合体)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体)、ポリ乳酸系樹脂を除く脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂、ジオールとジカルボン酸と乳酸系樹脂との共重合体、コアシェル構造型ゴム、スチレン-カルボン酸共重合体等、ポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂等の、その他の樹脂を少なくとも一種以上さらに含有することができる。
【0043】
なかでも、ポリ乳酸系樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂層にコアシェル構造型ゴムを含むことが好ましく、特にコアシェル構造型ゴムがアクリル系ゴムであることが好ましい。上記コアシェル構造型ゴムは、コアとシェルから形成される二重構造を有しており、コア部分は軟質なゴムであって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、ゴム自体としては粉末(粒子)状態である弾性体である。このコアシェル構造型ゴムは、例えば、ポリ乳酸系樹脂と溶融混練した後もその粒子状態は大部分が元の形態を保っているため、ポリ乳酸系樹脂への分散性に優れる。
【0044】
上記アクリル系ゴムのコアシェル構造型ゴムの市販品としては、例えば、カネカ社製の「カネエースFM-40」、「カネエースM-570」、三菱ケミカル社製の「メタブレンSX-005」、「メタブレンSRK200」、「メタブレンW600A」、「メタブレンC-223A」等が挙げられる。
【0045】
上記コアシェル構造型ゴムの含有量は、熱可塑性樹脂層の全量を100質量%として、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0046】
また、熱可塑性樹脂層には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、フィルムの耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を含有させてもよい。
【0047】
(添加剤)
さらに、熱可塑性樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系、チオエーテル系の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系等の光安定剤、無機系または有機系の結晶核剤、分子量調整剤、耐加水分解剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、老化防止剤、帯電防止剤、滑材、離型剤、可塑剤、難燃剤、難燃補助剤、発泡剤、着色剤、分散助剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0048】
上記可塑剤は、耐衝撃性、透明性、成形加工性および熱収縮性フィルムの諸特性を向上させることができることから好ましい。上記可塑剤としては、脂肪酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0049】
上記脂肪酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジ(n-オクチル)アジペート、ジ(n-デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ(n-ヘキシル)アゼレート、ジ(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2-エチルヘキシル)ドデカンジオネート等が挙げられる。
【0050】
また、上記フタル酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート等が挙げられる。さらに、上記トリメリット酸エステル系可塑剤の具体例としては、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテート等が挙げられる。
【0051】
上記添加剤の混合方法は特に限定されず、ポリエステル系樹脂の重合過程で添加してもよく、また、熱可塑性樹脂層の製造過程で混合してもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂層(フィルム)の製造は、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂(その他の樹脂や添加剤を含む場合は、熱可塑性樹脂の組成物)をあらかじめ200℃以上300℃以下の温度で溶融押出し、カッティングしてペレット状とし、次いで上記ペレットを200℃以上300℃以下の温度で溶融押出す方法、熱可塑性樹脂(その他の樹脂や添加剤を含む場合は、熱可塑性樹脂の組成物)を200℃以上300℃以下の温度で溶融押出す方法等により製造することができる。
【0053】
上記押出し方法としては、特に限定されず、Tダイ法、チューブラー法等を用いることができる。Tダイ法の場合には、例えば、押出し後、表面温度が15℃以上80℃以下のキャスティングドラム上で急冷し、未延伸フィルムを形成する。次いで、テンターを使用し、延伸温度60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下、延伸倍率1.7倍以上7.0倍以下、好ましくは3.0倍以上6.0倍以下の条件下で、上記の未延伸フィルムを横一軸方向に延伸した後、55℃以上100℃以下、好ましくは70℃以上95℃以下の温度で熱処理を行う。上記熱処理を行った後のフィルムは、通常、巻き取りを行いフィルムロールとする。また、加熱縦延伸ロールを使用し、ロール温度60℃以上120℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下、延伸倍率1.0倍以上1.3倍以下、好ましくは1.0倍以上1.1倍以下の条件下、縦軸方向に延伸してもよい。
【0054】
上記熱可塑性樹脂層の厚さは10μm以上、好ましくは20μm以上であり、かつ100μm以下、好ましくは80μm以下である。熱可塑性樹脂層の厚さが上記数値以上であれば、二次加工が容易であるという利点があり、また熱可塑性樹脂層の厚さが上記数値以下であれば、良好なフィルムの加工性を維持することができる。
【0055】
また、熱可塑性樹脂層は、後述する帯電防止剤を含む塗布液の塗布性、接着性を改良するため、化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等の表面処理を施してもよい。
【0056】
〔帯電防止剤〕
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有する層を配したものである。なかでも、熱可塑性樹脂層の片面に帯電防止剤を含有する層を配することが好ましい。
【0057】
上記帯電防止剤としては、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤が挙げられる。これらの帯電防止剤は単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記カチオン系帯電防止剤としては、例えば、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、4級アンモニウム塩、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アルキルエーテルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。なかでも、4級アンモニウム塩が好ましく、特にはポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩が好ましい。
【0059】
上記ノニオン系帯電防止剤としては、例えば、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸 エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグリコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の炭素数5~25のエステル類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の炭素数5~25のエーテル類;ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキル ジエタノールアミド、アルキルアミンオキシド等のアミド等が挙げられる。なかでも炭素数5~25のエステル類が好ましく、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0060】
上記アニオン系帯電防止剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩が挙げられ、具体的には、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルメチルアラニン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシル-ω-アミノ酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン酸塩、ホルマリン縮合系硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属塩が挙げられる。なかでも、アルキルスルホン酸塩が好ましい。
【0061】
上記両性帯電防止剤としては、例えば、アミノプロピオン酸、炭素数5~20のカルボキシベタイン、スルホベタイン等が挙げられる。
【0062】
上記帯電防止剤としては、カチオン系帯電防止剤、およびアニオン系帯電防止剤の少なくとも一方を含むことが帯電防止性、および印刷加工性の点から好ましくい。
【0063】
上記帯電防止剤は、帯電防止剤の総量を100質量%としたとき、帯電防止剤の総量に対しカチオン系帯電防止剤、およびアニオン系帯電防止剤の少なくとも一方が35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上が特に好ましい。帯電防止剤の総量に対するカチオン系帯電防止剤、およびアニオン系帯電防止剤の少なくとも一方の含有量が少なすぎると、帯電防止性、印刷加工性が低下する傾向がある。なお、帯電防止剤の総量におけるカチオン系帯電防止剤、およびアニオン系帯電防止剤の少なくとも一方の含有量の上限は、通常、100質量%である。
【0064】
上記帯電防止剤は、帯電防止剤の総量を100質量%としたとき、帯電防止剤の総量に対してカチオン系帯電防止剤が主成分として含むことがさらに好ましく、帯電防止剤がカチオン系帯電防止剤のみからなることが特に好ましい。
【0065】
上述のとおり、本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂層の少なくとも一方の面に帯電防止剤を含有する層を配したものであるが、上記帯電防止剤を含有する層は、コーティング層であることが帯電防止性の点から好ましい。
【0066】
上記コーティング層の形成は、インラインコーティングによりコーティング層を形成してもよく、また、オフラインコーティングによりコーティング層を形成してもよい。なかでも、加工の容易性の点からインラインコーティングによりコーティング層を形成することが好ましい。
【0067】
上記インラインコーティングは、熱可塑性樹脂層の製造の工程内で、帯電防止剤を溶媒に溶解または分散させた塗布液を塗布しコーティング層を形成する方法であり、具体的には、熱可塑性樹脂を溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階で、塗布液を塗布し、コーティング層を形成する方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された延伸フィルム、熱固定前の延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムのいずれかの熱可塑性樹脂層に塗布液を塗布し、コーティング層を形成する。
【0068】
塗布液を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、キスロールコートが好ましい。
【0069】
上記帯電防止剤を溶解または分散させる溶媒としては、特に制限はないものの、水が好ましい。水を溶媒として用いることにより、水性塗布液とすることができる。
【0070】
また、上記水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。
上記有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗布性を良好にすることができる場合がある。
【0071】
上記コーティング層における帯電防止剤の有効成分の含有量(塗布量)は、0.0012g/m2以上であることが好ましく、より好ましくは0.0015g/m2以上、特に好ましくは0.0018g/m2以上であり、0.015g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.012g/m2以下、特に好ましくは0.010g/m2以下である。帯電防止剤の有効成分の含有量が下限以上であれば、充分な帯電防止性能が得られる傾向があり、帯電防止剤の有効成分の含有量が上限以下であれば、後述する静摩擦係数が適度となり、フィルムロールとした際に巻きずれが起こりにくくなる傾向がある。
【0072】
本発明のフィルムの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、急冷して得られる熱可塑性樹脂層の未延伸シートに塗布液を塗布し、コーティング層を形成した後に横一軸方向に延伸する方法が好ましい。かかる方法によれば、コーティング層の形成後に延伸を行うため、コーティング層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、オフラインコーティングに比べ、コーティング層の厚さをより均一にすることができる。
さらには、延伸前に熱可塑性樹脂層にコーティング層を設けることにより、コーティング層を熱可塑性樹脂層と共に延伸することができ、それによりコーティング層を熱可塑性樹脂層に強固に密着させることができる。
【0073】
〔フィルムの層構成〕
本発明のフィルムの層構成は、要求品質や用途の観点等から、必要に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂層の単層フィルムであってもよく、熱可塑性樹脂層に他の樹脂層が積層された複数層の積層フィルムであってもよい。上記積層フィルムの場合は、熱可塑性樹脂層が最外層の少なくとも一方であることが必要である。
【0074】
上記の積層フィルムを形成する方法としては、共押出法や、各層のフィルムを形成した後に、重ね合わせて熱融着する方法、接着剤等で接合する方法等が挙げられる。
【0075】
また、本発明のフィルムの最外層には、熱収縮性フィルムにした際の耐ブロッキング性、および易滑性に優れる点から、微粒子を含有させることも好ましい。
【0076】
上記微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子が挙げられる。
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、弗化リチウム、カーボンブラック、およびポリエステル重合時のアルカリ金属、アルカリ土類金属、燐化合物等の触媒等に起因する析出物等が挙げられる。
また、上記有機微粒子としては、例えば、各種架橋ポリマー等が挙げられる。
これらの微粒子は単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0077】
上記微粒子の平均粒子径は、耐ブロッキング性、および易滑性の効果を得る観点から、0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上であり、かつ10μm以下、好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲であることが望ましい。
なお、ここでいう「平均粒子径」とは、レーザー回折法、動的光散乱法等の電磁波散乱法、遠心沈降式等の光透過法等の方法で測定した50%体積平均粒子径(d50)を意味するが、測定方法によって差異が生じる場合は、レーザー回折法による値を用いる。
【0078】
上記微粒子の含有量は最外層を構成する樹脂層の全質量を100質量%としたときに、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、かつ1質量%以下、好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0079】
また、本発明のフィルムには、必要に応じてコロナ処理、印刷、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシール等による製袋加工やミシン目加工等を施すことができる。さらに必要に応じて、蒸着層や各種コート層等を設けることもできる。
【0080】
上記のようにして得られる本発明のフィルムは、下記のa)~d)を満たすものである。
a)帯電防止剤を含有する層の表面抵抗率が温度23℃、相対湿度30%雰囲気下で5.0×1011(Ω/sq)以下、かつ温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で1.0×1011(Ω/sq)以下
b)一方の表面と他方の表面のJIS K7125に準拠して測定した静摩擦係数が、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で0.20以上0.50以下
c)80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以上
d)JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が7%以下
【0081】
<表面抵抗率>
本発明のフィルムの帯電防止剤を含有する層の表面抵抗率は、温度23℃、相対湿度30%雰囲気下で、5.0×1011(Ω/sq)以下であり、好ましくは4.7×1011(Ω/sq)以下、より好ましくは4.5×1011(Ω/sq)以下である。温度23℃、相対湿度30%雰囲気下での表面抵抗率が上記数値以下であれば、帯電防止性能が充分となり、印刷加工性が向上する。
【0082】
また、本発明のフィルムの帯電防止剤を含有する層の表面抵抗率は、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で、1.0×1011(Ω/sq)以下であり、好ましくは8.0×1010(Ω/sq)以下であり、より好ましくは5.0×1010(Ω/sq)以下である。温度23℃、相対湿度50%雰囲気下での表面抵抗率が上記数値以下であれば、帯電防止性能が充分となり、印刷加工性が向上する。
【0083】
<静摩擦係数>
本発明のフィルムは、フィルムの一方の表面と他方の表面との静摩擦係数が、JIS K7125に準拠して、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で、0.20以上であり、好ましくは0.22以上であり、特に好ましくは0.23以上であり、0.50以下であり、好ましくは0.45以下であり、特に好ましくは0.40以下である。静摩擦係数が上記数値以上であれば、フィルムロールとしたときに巻きずれが起こりにくくなる傾向があり、静摩擦係数が上記数値以下であれば、フィルムロールとしたときにシワや凹凸が入り難く、フィルムロールを繰り出しやすくなり作業性が向上する。
【0084】
<熱収縮率>
本発明のフィルムは、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上である。収縮率の下限値は25%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましい。上限値としては特に制限はされないが、一般的には70%以下であることが好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。80℃の主収縮方向の熱収縮率が20%未満であると、フィルムを熱収縮させた際に、容器の首部や天面において熱収縮が不充分となることがある。上記「主収縮方向」とは、熱をかけて収縮させたときの熱収縮率が高い方向、すなわち、縦方向と横方向のうち延伸方向の大きい方向であり、通常、横方向(フィルムの引き取り方向と縦方向に直交する方向)方向である。また、ボトルに装着する場合には、例えば、その外周方向に相当する方向である。
【0085】
<ヘイズ値>
本発明のフィルムの透明性はJIS K7136に準拠して測定されたヘイズ値により評価され、ヘイズ値は7%以下である。好ましくは6.5%以下、特に好ましくは6%以下である。ヘイズ値が上記数値以下であれば、良好な透明性を得られ、美麗な印刷等が可能となる。
【0086】
また、本発明のフィルムは、さらに、下記の帯電圧半減期を満たすことが好ましい。
<帯電圧半減期>
本発明のフィルムの帯電防止剤を含有する層の帯電圧半減期が、JIS L1094に準じて、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で、5秒以下であることが好ましく、3.5秒以下であることがより好ましい。帯電半減期が上記数値以下であると、特に印刷工程における、いわゆる印刷ヒゲの発生や印刷・チュービング工程でのロールへの巻き付きを防止できる傾向がある。
【0087】
このような物性を有する本発明のフィルムは、例えば、コーティング層における帯電防止剤の有効成分の塗布量を0.0012g/m2以上0.015g/m2以下とし、さらに、熱可塑性樹脂層を製造する際に、延伸倍率を1.7倍以上7.0倍以下とすること等により得ることができる。
【0088】
[成形品、熱収縮性ラベル、容器]
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工し包装に供することができる。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすればいい。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。このなかでも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0089】
また、本発明のフィルムは、透明性、光沢性、特に低湿度環境下においても停電防止性に優れ、印刷加工性に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層、その他機能層を積層して形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品の基材として用いることができる。そして、得られる成形品は、容器等として使用できる。
【0090】
さらに、本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルの基材として用いることができる。この場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱等)であっても密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。上記成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0091】
また、本発明のフィルムは、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等がこの発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも一種を構成素材として用いたプラスチック包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0092】
上記プラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-ブチルアクリレート共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0093】
以下に本発明のフィルムの実施例を示すが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。実施例では、フィルムの引き取り(流れ)方向を「MD」、それと直交する方向を「TD」と記載する。
【0094】
<測定・評価方法>
(1)表面抵抗率
実施例で得られたフィルムの帯電防止剤を含有する層の表面抵抗率を、エーディーシー社製デジタル超高抵抗微少電流計にて、印加電圧500Vの条件で温度23℃、相対湿度30%雰囲気下および温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で測定し、下記基準で評価した。
[温度23℃、相対湿度30%雰囲気下]
◎:2.0×1011(Ω/sq)以下
〇:2.0×1011(Ω/sq)を超え5.0×1011(Ω/sq)以下
×:5.0×1011(Ω/sq)を超える
[温度23℃、相対湿度50%雰囲気下]
◎:5.0×1010(Ω/sq)以下
○:5.0×1010(Ω/sq)を超え1.0×1011(Ω/sq)以下
×:1.0×1011(Ω/sq)を超える
【0095】
(2)静摩擦係数
実施例で得られたフィルムの一方の表面と他方の表面同士との静摩擦係数をJIS K7125に準拠し温度23℃、相対湿度50%雰囲気下測定し、下記基準で評価した。 ○:静摩擦係数が、0.20以上0.50以下
×:静摩擦係数が、0.20未満、または、0.50を超える
【0096】
(3)熱収縮率
実施例で得られたフィルムを、MD20mm、TD100mmの大きさに切り取り、TDの収縮量を80℃の温水バスに10秒間浸漬し、測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0097】
(4)ヘイズ値
実施例で得られたフィルムを、JIS K7136に準拠しヘイズ値を測定し、透明性を下記基準で評価した。
◎:ヘイズ値が5%以下
○:ヘイズ値が5%を超え7%以下
×:ヘイズ値が7%を超える
【0098】
(5)帯電圧半減期
実施例で得られたフィルムの帯電防止剤を含有する層のJIS L1094に準じて測定した帯電圧半減期を、シシド静電気社製スタティックオネストメーターにて、温度23℃相対湿度50%雰囲気下で測定し、下記基準で評価した。
◎:3.5秒以下
○:3.5秒を超え、5秒以下
×:5秒を超える
【0099】
(6)フィルム総合評価
上記(1)~(5)の評価において、全ての評価が「〇」以上である場合は、フィルム総合評価「〇」とした。また、上記(1)~(5)の評価において、1つでも「×」がある場合は、フィルム総合評価「×」とした。
【0100】
(7)印刷評価(インキ抜け)
実施例で得られた各フィルム1000m分について、ベタ印刷を実施した後、欠点検出器を使用して、100m2当たりに発生した大きさ0.5mm以上のインキ抜け部の個数をカウントした。
○:5個以下
×:6個以上
【0101】
また、各実施例、比較例で使用した原材料および帯電防止剤は、下記の通りである。
【0102】
<熱可塑性樹脂層>
(芳香族ポリエステル系樹脂)
・ポリエステル系樹脂A(酸成分:テレフタル酸100mol%、グリコール成分:エチレングリコール65mol%、ジエチレングリコール3mol%、シクロヘキサンジメタノール32mol%)
・ポリエステル系樹脂B(酸成分:テレフタル酸70mol%、イソフタル酸30mol%、グリコール成分:エチレングリコール100mol%)
・ポリエステル系樹脂C(酸成分:テレフタル酸90mol%、イソフタル酸10mol%、グリコール成分:1,4ブタンジオール100mol%)
・ポリエステル系樹脂D(酸成分:テレフタル酸95mol%、イソフタル酸5mol%、グリコール成分:1,4ブタンジオール97mol%、テトラメチレングリコール3mol%)
(ポリ乳酸系樹脂)
・ポリ乳酸系樹脂A(Nature WorksLLC社製、商品名:Ingeo biopolymer4060D、D体/L体量=12/88)
・ポリ乳酸系樹脂B(Nature WorksLLC社製、商品名:Ingeo biopolymer4043D、D体/L体量=4.25/95.75)
(アクリルゴム)
・アクリルゴム(カネカ社製、商品名:カネエースFM-40、メタクリル酸メチル共重合体)
【0103】
<帯電防止剤>
(カチオン系界面活性剤)
・帯電防止剤a(東邦化学社製、商品名:アンステックスC-200X、有効成分:ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩50質量%)
(ノニオン系界面活性剤)
・帯電防止剤b(丸菱油化工業社製、商品名:デノン733、有効成分:アルキルアルカノールアマイド・ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル40質量%)
(アニオン系界面活性剤)
・帯電防止剤c(丸菱油化工業社製、商品名:デノン1895、有効成分:アルキルスルホン酸塩30質量%)
(両性界面活性剤)
・帯電防止剤d(花王社製、商品名:エレクトロストリッパーAC、有効成分:イミダゾリン系両性界面活性剤/直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩25質量%)
【0104】
<実施例1、2、比較例1~3および5>
各原材料をそれぞれ表1に示す配合にて混合した後、押出機および口金により押出機の設定温度を270℃で溶融混練後、35℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸シートを得た。得られたシートの片面にキス方式のロールコーターを用いて各帯電防止剤を塗布し、次いで、このシートをフィルムテンターを用いて、予熱温度95℃、延伸温度75℃で横一軸方向に5.0倍延伸後、75℃にて熱処理を行い、厚さ40μmのポリエステル系熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。また、実施例1、2、比較例1、3および5のフィルムについては、印刷評価を行った。印刷評価の結果を表2に示す。
【0105】
<実施例3~5、比較例4>
各原材料をそれぞれ表1に示す配合にて混合した後、押出機および口金により押出機の設定温度を200℃で溶融混練後、60℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸シートを得た。得られたシートの片面にキス方式のロールコーターを用いて各帯電防止剤を塗布し、次いで、このシートをフィルムテンターを用いて、予熱温度85℃、延伸温度85℃で横一軸方向に5.0倍延伸後、80~85℃にて熱処理を行い、厚さ30μmのポリ乳酸系熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
上記表1の結果から、本発明より得られた熱収縮性フィルム(実施例1~5)は、充分な熱収縮率を発現し、ヘイズ値が低く透明性に優れ、適度な滑り性が付与されており、帯電防止性が優れ、熱収縮フィルムが加工される際に求められる要求品質を満たすものであった。
一方、両性系界面活性剤を使用したポリエステル系熱収縮フィルム(比較例1)、ノニオン系およびアニオン系界面活性剤を特定のブレンド比率で塗布したポリエステル系熱収縮フィルム(比較例2)および、帯電防止剤を塗布しなかったポリエステル系熱収縮フィルム(比較例3)や帯電防止剤の塗布量が少なかったポリ乳酸系熱収縮フィルム(比較例4)では、表面抵抗率や帯電圧半減期等の帯電防止性が不充分であった。また、帯電防止剤を多量に塗布したポリエステル系熱収縮フィルム(比較例5)では、摩擦係数が本発明の範囲から外れる結果となった。
【0109】
また、表2の結果から、実施例1および2のフィルムは帯電防止性が優れており、印刷工程において、フィルムが帯電しにくい。そのため、ゴミや埃等のフィルム表面への付着や、ロール状フィルムへの巻き込みが抑えられ、それに起因したインキ抜け(個数)が低減されていた。これに対し、比較例1および3のフィルムでは帯電防止性が充分ではなく、印刷工程において、フィルムが帯電しやすく、ゴミや埃等のフィルム表面への付着や、ロール状フィルムへの巻き込みが増長され、それに起因したインキ抜け(個数)が多い結果となった。
また、比較例5のフィルムの場合、印刷工程において、静摩擦係数が低すぎるため、ロール状のフィルムを取り扱う際に巻ずれが発生する等、印刷加工を行う上でのハンドリング性が悪く、印刷ができなかった。
なお、印刷評価を行っていない実施例3~5のフィルムも、本発明で規定する物性を有することから、実施例1および2と同様の印刷加工性を有するものと推測される。
【0110】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うフィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の熱収縮性フィルムは、透明性、光沢性、特に低湿度環境下においても帯電防止性に優れ、印刷加工性に優れた熱収縮性フィルムとして好適に利用することができる。