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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】バックドア及びリアガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20241119BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021048834
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147545
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】間室 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 尚史
(72)【発明者】
【氏名】田村 次郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 潤
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043842(JP,A)
【文献】特開2009-105665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記リインフォースは、上下方向に延伸する縦リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部を有する、バックドア。
【請求項2】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記補助エレメントは、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線と交わる中間部を有し、
前記中間部は、前記リアガラスの平面視において前記補助エレメントと前記リインフォースとが重ならない部分であり、
前記アンテナが受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記リアガラスの波長短縮率をk、前記第1バスバー又は前記複数の電熱線のうち前記導体部から最も遠い端部を第1端部とするとき、
前記中間部から前記導体部及び前記第1バスバーを経由して前記第1端部に至るまでの経路は、前記導体部を少なくとも含む第1導電経路を有し、
前記第1導電経路の長さは、0.90×λ/2×k以上1.10×λ/2×k以下である、バックドア。
【請求項3】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記補助エレメントは、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線と交わる中間部を有し、
前記中間部は、前記リアガラスの平面視において前記補助エレメントと前記リインフォースとが重ならない部分であり、
前記導体部は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとのうち、前記第1バスバーに近い方の第1導体部と、前記第2バスバーに近い方の第2導体部とを含み、
前記アンテナが受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記リアガラスの波長短縮率をk、前記第1バスバー又は前記複数の電熱線のうち前記第1導体部から最も遠い端部を第1端部、前記第2バスバー又は前記複数の電熱線のうち前記第2導体部から最も遠い端部を第2端部とするとき、
前記中間部から前記第1導体部及び前記第1バスバーを経由して前記第1端部に至るまでの第1経路は、前記第1導体部を少なくとも含む第1導電経路を含み、
前記中間部から前記第2導体部及び前記第2バスバーを経由して前記第2端部に至るまでの第2経路は、前記第2導体部を少なくとも含む第2導電経路を含み、
前記第1導電経路と前記第2導電経路とのうち、少なくとも一方の導電経路の長さは、0.9×λ/2×k以上1.1×λ/2×k以下である、バックドア。
【請求項4】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記アンテナは、前記デフォッガと前記補助エレメントによって形成された閉ループに囲まれた、バックドア。
【請求項5】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、ギャップを介して対向する第1補助エレメント及び第2補助エレメントを含む、バックドア。
【請求項6】
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線に対して線対称である、バックドア。
【請求項7】
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有する、請求項4からのいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項8】
前記リインフォースは、上下方向に延伸する縦リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部を有する、請求項2,3,のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項9】
前記リインフォースは、前記縦リインフォース部に接続され且つ水平方向に延伸する横リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記横リインフォース部に沿って延伸する横導体部を有する、請求項1またはに記載のバックドア。
【請求項10】
前記導体部は、前記リアガラスの平面視で、前記リインフォースと重なる、請求項1,2,3,7,8,9のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項11】
前記導体部は第1縦近接部を有し、前記第1縦近接部から前記第1端部に至るまでの導電経路の長さは、0.95×λ/4×k以上1.05×λ/4×k以下である、請求項2に記載のバックドア。
【請求項12】
前記第1導体部から前記第1端部に至るまでの導電経路と、前記第2導体部から前記第2端部に至るまでの導電経路とのうち、少なくとも一方の導電経路の長さは、0.95×λ/4×k以上1.05×λ/4×k以下である、請求項3に記載のバックドア。
【請求項13】
前記導体部は、前記リインフォースに近接する、請求項1から3および7から12のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項14】
前記デフォッガは、複数の前記電熱線を上下方向で短絡する短絡線を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項15】
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部と、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線と交わる中間部とを有し、
前記中間部は、前記リアガラスの平面視において前記補助エレメントと前記リインフォースとが重ならない部分であり、
前記アンテナが受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記リアガラスの波長短縮率をk、前記短絡線の線端のうち前記導体部から最も遠い線端または前記複数の電熱線のうち前記導体部から最も遠い電熱線上の点を経路端とするとき、
前記中間部から前記導体部及び前記短絡線を経由して前記経路端に至るまでの経路の長さは、0.90×λ/2×k以上1.10×λ/2×k以下である、請求項14に記載のバックドア。
【請求項16】
前記補助エレメントは、前記短絡線に接続される、請求項14又は15に記載のバックドア。
【請求項17】
前記補助エレメントは、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの少なくとも一方に接続される、請求項1から15のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項18】
前記ギャップの長さは、300mm以下である、請求項5に記載のバックドア。
【請求項19】
前記ギャップは、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線と交わる、請求項5又は18に記載のバックドア。
【請求項20】
前記ギャップは、前記リアガラス又は前記デフォッガの中心線と交わらない、請求項5又は18に記載のバックドア。
【請求項21】
前記アンテナは、給電部と、前記給電部に接続されるアンテナエレメントと、を有し、
前記アンテナエレメントは、前記デフォッガと容量結合するエレメント部を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項22】
前記デフォッガの水平方向の幅をWとするとき、
前記補助エレメントが前記デフォッガに接続される箇所は、前記デフォッガの水平方向における各端部から水平方向に0.3×Wまでの範囲にある、請求項1から21のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項23】
前記アンテナと前記補助エレメントとの間の距離は、10mm以上ある、請求項1から22のいずれかに記載のバックドア。
【請求項24】
前記アンテナは、VHF帯の電波を受信する、請求項1から23のいずれか一項に記載のバックドア。
【請求項25】
金属製のリインフォースを有する樹脂製のバックドアに形成された開口部を覆うように前記バックドアに取り付け可能なリアガラスであって、
第1方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから前記第1方向に直角な第2方向に離れて配置され且つ前記第1方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記リインフォースは、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記第1方向に延伸する縦リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部を有する、リアガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドア及びリアガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック式の自動車などの一部の車両では、後部ドアが樹脂製の場合がある。この場合、後部ドアの剛性を高めるため、バックドアの開口部の周辺部には、金属補強枠などのリインフォースを設ける構成が知られている。また、後部ドアに取り付けられるリアガラスには、デフォッガやアンテナなどの導体が配置されることがある。このような後部ドアに取り付けられる後部窓ガラスにおいて、金属ボディにアースされた金属補強枠に、デフォッガから分岐した補助エレメントを容量結合させることで、FMラジオ放送波を高利得で受信する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-105665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リインフォースの形状や大きさは、その仕様により異なる。そのため、リインフォースの形状などによっては、アンテナをチューニングしても、十分なアンテナ利得が得られない場合がある。
【0005】
本開示は、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
開口部を有するバックドアであって、
樹脂製のアウターパネルと、
樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に配置される金属製のリインフォースと、
前記開口部を覆うリアガラスと、
を有し、
前記リアガラスは、
上下方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから水平方向に離れて配置され且つ上下方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記リインフォースは、上下方向に延伸する縦リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部を有する、バックドアを提供する。
【0007】
また、本開示は、
金属製のリインフォースを有する樹脂製のバックドアに形成された開口部を覆うように前記バックドアに取り付け可能なリアガラスであって、
第1方向に延伸する第1バスバーと、前記第1バスバーから前記第1方向に直角な第2方向に離れて配置され且つ前記第1方向に延伸する第2バスバーと、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間を接続する複数の電熱線とを備えるデフォッガと、
前記デフォッガに接続された補助エレメントと、
前記デフォッガと前記補助エレメントによって囲まれるように配置されたアンテナと、を有し、
前記補助エレメントは、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記リインフォースに沿って延伸する導体部を有し、
前記リインフォースは、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記第1方向に延伸する縦リインフォース部を有し、
前記導体部は、前記リアガラスが前記バックドアに取り付けられた状態で、前記縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部を有する、リアガラスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかるバックドアの一構成例を模式的に示す平面図である。
図2】高周波電流の分布の一例を示す図である。
図3】第2実施形態にかかるバックドアの一構成例を模式的に示す平面図である。
図4】バスバーから補助エレメントのエレメント端までの長さaの違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。
図5】アンテナと補助エレメントとの最短距離dの違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。
図6】ギャップの長さeの違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示にかかる各実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0011】
図1は、第1実施形態にかかるバックドアの一構成例を模式的に示す平面図である。図1に示すバックドア100は、車両の後部に開閉可能に取り付けられる樹脂製の開閉体であり、車両の後方を視認するための開口部11を有する。バックドア100は、樹脂製のアウターパネル12と、樹脂製のインナーパネル13と、アウターパネル12とインナーパネル13との間に配置される金属製のリインフォース14と、開口部11を覆うリアガラス15とを有する。
【0012】
なお、図1は、アウターパネル12が取り外されたバックドア100を車外側からの視点で示す平面図である。X軸方向は、車幅方向(水平方向)にほぼ対応し、Y軸方向は、車両の上下方向にほぼ対応する。上下方向は、第1方向の一例であり、水平方向は、第1方向に直角な第2方向の一例である。また、図1に示す各部の形状は、一例であり、本開示の技術は、図示の形状に限られない。
【0013】
アウターパネル12とインナーパネル13は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂によって成形される。アウターパネル12は、インナーパネル13に対して車外側(より詳しくは、車両後方側)に設置される。
【0014】
リインフォース14は、バックドア100の剛性が向上するように、バックドア100を補強する金属部材である。リインフォース14は、開口部11の一部又は全部を周りから囲むように、インナーパネル13とアウターパネル12の一方又は両方に取り付けられる。図1に示す例では、リインフォース14は、インナーパネル13に取り付けられ、リアガラス15とインナーパネル13との(Z軸方向の)間に位置する。
【0015】
リインフォース14は、一つ又は複数の部材から構成され、図1に示す例では、左右(車幅方向)で分離した複数の部材(左リインフォース14Aと右リインフォース14B)から構成されている。左リインフォース14Aは、開口部11の左側領域を上下方向に延伸する左リインフォース部14Aaと、開口部11の上方領域を左リインフォース部14Aaの上端部から右に向けて水平方向に延伸する左上リインフォース部14Abとを有する。右リインフォース14Bは、開口部11の右側領域を上下方向に延伸する右リインフォース部14Baと、開口部11の上方領域を右リインフォース部の上端部から左に向けて水平方向に延伸する右上リインフォース部14Bbとを有する。左リインフォース部14Aaと右リインフォース部14Baは、上下方向に延伸する縦リインフォース部の一例である。左上リインフォース部14Abと右上リインフォース部14Bbは、縦リインフォース部に接続され且つ水平方向に延伸する横リインフォース部の一例である。
【0016】
図1に示す例では、左リインフォース部14Aaと左上リインフォース部14Abとは、同一部材により形成されているが、例えば、2種以上の部材が連結して形成されてもよい。また、左リインフォース14Aは、複数の部材に分離されてもよく、例えば、左リインフォース部14Aaと左上リインフォース部14Abとは、分離されてもよい。また、左リインフォース14Aの少なくとも一部は、リアガラス15の平面視において、リアガラス15又は開口部11に重なってもよく、重ならなくてもよい。
【0017】
同様に、図1に示す例では、右リインフォース部14Baと右上リインフォース部14Bbとは、同一部材により形成されているが、例えば、2種以上の部材が連結して形成されてもよい。また、右リインフォース14Bは、複数の部材に分離されてもよく、例えば、右リインフォース部14Baと右上リインフォース部14Bbとは、分離されてもよい。また、右リインフォース14Bの少なくとも一部は、リアガラス15の平面視において、リアガラス15又は開口部11に重なってもよく、重ならなくてもよい。
【0018】
リアガラス15は、樹脂製のバックドア100に形成された開口部11を覆うようにバックドア100に取り付けられる窓ガラスである。リアガラス15は、インナーパネル13に対して車外側(この例では、Z軸方向の正側)に取り付けられている。
【0019】
リアガラス15は、デフォッガ20、アンテナ40及び補助エレメント30を備える。
【0020】
デフォッガ20は、リアガラス15の曇りを除去する通電加熱式の導体パターンである。デフォッガ20は、リアガラス15の左右方向(水平方向)に延在する複数の電熱線23と、複数の電熱線23に給電する複数のバスバー21,22とを備える。複数の電熱線23は、互いに並走するようにリアガラス15の左右方向(水平方向)に延伸するヒータ線であり、第1バスバー21と第2バスバー22との間を接続する。
【0021】
第1バスバー21は、上端部21aから下端部21bまで上下方向に延伸する帯状電極であり、複数の各電熱線23よりも幅広である。第2バスバー22は、第1バスバー21から水平方向に離れて配置され、且つ、上端部22aから下端部22bまで上下方向に延伸する帯状電極であり、複数の各電熱線23よりも幅広である。複数のバスバー21,22の間に電圧が印加されると、複数の電熱線23が通電して発熱するので、リアガラス15の曇りが除去される。
【0022】
アンテナ40は、デフォッガ20と補助エレメント30によって囲まれるように配置された導体である。図1に示す例では、アンテナ40は、デフォッガ20と補助エレメント30によって形成された閉ループに囲まれている。
【0023】
アンテナ40は、所定の周波数帯Fの電波を送受(送信、受信又はその両方)可能に形成されており、周波数帯Fにおける周波数で共振する。アンテナ40の形状は、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯の電波の送受に適している。VHF帯に含まれる周波数帯として、FM放送波の帯域(76MHz~108MHz)、DAB Band IIIの帯域(174MHz~240MHz)などがある。また、アンテナ40の形状は、周波数が300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送受可能なものでもよいし、3GHz~6GHzの周波数帯の電波を送受可能な、4GLTEアンテナや5G(sub6)アンテナでもよい。
【0024】
補助エレメント30は、デフォッガ20に接続された線状導体であり、図1に示す例では、デフォッガ20の電熱線23aに接続されている。電熱線23aは、複数の電熱線23のうち最もアンテナ40に近接する電熱線であり、この例では、複数の電熱線23のうち最も上側に位置する電熱線である。補助エレメント30は、リアガラス15の曇りを除去する電熱線の機能を有してもよいし、当該電熱線の機能を有さない導線でもよい。
【0025】
補助エレメント30は、デフォッガ20に接続される箇所である第1エレメント端61と、デフォッガ20に接続される箇所である第2エレメント端62とを有する。補助エレメント30は、第1エレメント端61から第2エレメント端62までのエレメントであり、アンテナ40のアンテナ利得の増加を補助する。
【0026】
補助エレメント30は、リアガラス15又はデフォッガ20の中心線16と交わる点を含む、中間部60を有する。中間部60は、補助エレメント30のうち、第1エレメント端61と第2エレメント端62との間の部分である。中心線16は、上下方向に延びる仮想的な線であり、とくに、平面視で線対称となるリアガラス15の対象軸に相当する。補助エレメント30は、中心線16に対して線対称でも線対称でなくてもよい。図1に示す例では、中間部60は、リアガラス15の平面視において補助エレメント30とリインフォース14とが重ならない部分として説明する。
【0027】
図1に示す第1実施形態では、アンテナ40は、デフォッガ20と補助エレメント30によって囲まれるように配置されている。補助エレメント30を追加することで、アンテナ40のアンテナ容量は増えるので、アンテナ40が共振する周波数を低周波側にシフトできる。一方、リインフォース14が存在すると、アンテナ40のアンテナ利得は低下する。したがって、アンテナ40のアンテナ利得がリインフォース14の存在により低下する帯域(ディップ)が使用周波数帯内にあっても、補助エレメント30を追加することで、ディップを使用周波数帯から外れるようにシフトできる。例えば、補助エレメント30は、リインフォース14の存在によってできるディップを、使用周波数帯よりも低域側にシフトさせてもよく、高域側にシフトさせてもよい。その結果、アンテナ40の周波数帯Fにおける平均アンテナ利得が向上する。
【0028】
補助エレメント30は、例えば、リインフォース14に沿って延伸する導体部を有する。リインフォース14に沿って延伸する導体部とは、リアガラス15の平面視において、リインフォース14の表面部分又は外縁部分に平行(略平行を含んでよい)に延伸する部分であり、より詳細には、リインフォース14の延伸する方向に平行(略平行を含んでよい)に延伸する部分である。図1には、そのような導体部として、第1近接部31及び第2近接部32が例示されている。第1近接部31は、リインフォース14に沿って延伸する導体部の一例であり、リインフォース14の左リインフォース14Aに近接する。第2近接部32は、リインフォース14に沿って延伸する導体部の一例であり、リインフォース14の右リインフォース14Bに近接する。
【0029】
補助エレメント30は、リインフォース14に近接する近接部を有することで、リインフォース14と容量結合する。近接部とは、補助エレメント30のうち、リインフォース14と容量結合可能な間隔を空けてリインフォース14から離れたエレメント部をいう。例えば、容量的に結合可能な間隔は、0mm超50mm以下であり、0mm超30mm以下でもよい。図1に示す例では、リアガラス15の平面視において補助エレメント30の近接部は、補助エレメント30とリインフォース14とが重なっているが、容量的に結合可能な間隔で配置されていれば、リアガラス15の平面視においてこれらが重なっていなくてもよい。
【0030】
図1に示す例では、補助エレメント30は、左リインフォース14Aに沿って延伸する第1近接部31と、右リインフォース14Bに沿って延伸する第2近接部32とを有する。第1近接部31は、第1バスバー21と第2バスバー22のうち、第1バスバー21に近い方の第1導体部の一例である。第2近接部32は、第1バスバー21と第2バスバー22とのうち、第2バスバー22に近い方の第2導体部の一例である。
【0031】
図1に示す第1実施形態では、アンテナ40は、デフォッガ20と補助エレメント30によって囲まれるように配置され、補助エレメント30は、リインフォース14に沿って延伸する近接部を有する。これにより、図1に示す例では、中間部60から第1近接部31及び第1バスバー21を経由して下端部21bに至るまでの第1経路(以下、"経路L"ともいう)に、全長がλ/2の第1ダイポールアンテナ71(図2参照)が仮想的に形成される。下端部21bは、第1バスバー21のうち第1近接部31から最も遠い端部である第1端部の一例である。λは、アンテナ40が受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長を表す。同様に、中間部60から第2近接部32及び第2バスバー22を経由して下端部22bに至るまでの第2経路(以下、"経路L"ともいう)に、全長がλ/2の第2ダイポールアンテナ72(図2参照)が仮想的に形成される。下端部22bは、第2バスバー22のうち第2近接部32から最も遠い端部である第2端部の一例である。なお、経路Lの端部(中間部60とは反対側の端部)は、第1バスバー21の下端部21bではなく、複数の電熱線23のうち第1近接部31から最も遠い電熱線上の任意の一点でもよい。同様に、経路Lの端部(中間部60とは反対側の端部)は、第2バスバー22の下端部22bではなく、複数の電熱線23のうち第2近接部32から最も遠い電熱線上の任意の一点でもよい。
【0032】
したがって、アンテナ40は、アンテナ40自身で受信した周波数帯Fの電波だけでなく、第1ダイポールアンテナ71で受信した周波数帯Fの電波をデフォッガ20の電熱線23aを介して取得できるので、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。そして、アンテナ40は、第2ダイポールアンテナ72で受信した周波数帯Fの電波をデフォッガ20の電熱線23aを介して取得できるので、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が更に向上する。
【0033】
このように、図1に示す第1実施形態によれば、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを実現できる。なお、図1に示す構成を上下反転又は左右反転させても、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを実現できる。
【0034】
アンテナ40は、給電部41と、給電部41に接続されるアンテナエレメント42とを有する。アンテナエレメント42は、デフォッガ20と容量結合するエレメント部42aを有する。このようなエレメント部42aを有することで、アンテナ40は、第1ダイポールアンテナ71で受信した周波数帯Fの電波及び第2ダイポールアンテナ72で受信した周波数帯Fの電波をデフォッガ20の電熱線23aを介して効率的に取得できる。これにより、周波数帯Fにおけるアンテナ利得がより向上する。図1に示す例では、エレメント部42aは、電熱線23aに沿って近接することで、電熱線23aと容量結合する。エレメント部42aと電熱線23aとの距離は、30mm以下であればよく、20mm以下でもよく、10mm以下でもよい。該距離の下限は、0mm超であればよく、例えば3mm以上でもよい。
【0035】
アンテナ40を介して得られる受信信号は、給電部41から取り出される。給電部41から取り出された信号は、給電部41に導通可能に接続された導電性部材を介して、アンプ(不図示)の入力部に伝達される。この導電性部材の具体例として、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が挙げられる。アンプは、給電部41から取り出される信号を増幅し、増幅した信号を、車両に搭載される不図示の信号処理回路に出力する。
【0036】
給電線として同軸ケーブルが使用される場合、同軸ケーブルの芯線(内部導体)は、給電部41に接続され、同軸ケーブルの外部導体は、車体又は車体に導電的に接続される金属部などのグランド(車体グランド)に接続される。車体に導電的に接続される金属部は、例えば、リインフォース14でもよい。また、アンプを給電部41に接続するためのコネクタが使用されてもよく、当該コネクタは、例えば、給電部41に実装される。なお、アンプは、コネクタに搭載されてもよい。なお、アンテナ40は、給電部41が1つのみの、いわゆる単極型アンテナであるが、給電部41を2つ有して一方が同軸ケーブルの芯線、他方が同軸ケーブルの外部導体と接続する双極型アンテナでもよい。
【0037】
図2は、高周波電流の分布の一例を示す図であり、色が濃いほど、流れる高周波電流が大きいことを表す。車体に接地された左リインフォース14Aと容量結合する第1近接部31から両側(この場合、下側及び右側)に延伸する線状導体部分は、周波数帯Fで共振する第1ダイポールアンテナ71として機能する。同様に、車体に接地された右リインフォース14Bと容量結合する第2近接部32から両側(この場合、下側及び左側)に延伸する線状導体部分は、周波数帯Fで共振する第2ダイポールアンテナ72として機能する。
【0038】
図2において、中間部60から下端部21bまでの経路Lは、第1導電経路(以下、"導電経路CL"ともいう)を含む経路である。導電経路CLは、左リインフォース14Aに沿って延伸する第1近接部31を少なくとも含む経路である。このとき、導電経路CLの長さは、第1ダイポールアンテナ71の長さに相当する。同様に、中間部60から下端部22bまでの経路Lは、第2導電経路(以下、"導電経路CL"ともいう)を含む経路である。導電経路CLは、右リインフォース14Bに沿って延伸する第2近接部32を少なくとも含む経路である。このとき、導電経路CLの長さは、第2ダイポールアンテナ72の長さに相当する。
【0039】
アンテナ40が受信する所定の周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、リアガラス15の波長短縮率をkとする。このとき、導電経路CLと導電経路CLとのうち、少なくとも一方の導電経路の長さLは、0.90×λ/2×k以上1.10×λ/2×k以下であると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、少なくとも一方の導電経路の長さLは、0.92×λ/2×k以上1.08×λ/2×k以下が好ましく、0.94×λ/2×k以上1.06×λ/2×k以下がより好ましい。
【0040】
図1において、第1近接部31は、上下方向に延伸する左リインフォース部14Aaに沿って上下方向に延伸する第1縦近接部33を有すると、垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。同様に、第2近接部32は、上下方向に延伸する右リインフォース部14Baに沿って上下方向に延伸する第2縦近接部34を有すると、垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。第1縦近接部33は、上下方向に延伸する縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部の一例であり、左リインフォース14Aaに近接する。第2縦近接部34は、上下方向に延伸する縦リインフォース部に沿って延伸する縦導体部の一例であり、右リインフォース14Baに近接する。
【0041】
第1近接部31は、水平方向に延伸する左上リインフォース部14Abに沿って水平方向に延伸する第1横近接部35を有すると、水平偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。同様に、第2近接部32は、水平方向に延伸する右上リインフォース部14Bbに沿って水平方向に延伸する第2横近接部36を有すると、水平偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。第1横近接部35は、横リインフォース部に沿って延伸する横導体部の一例であり、左上リインフォース14Abに近接する。第2横近接部36は、横リインフォース部に沿って延伸する横導体部の一例であり、右上リインフォース14Bbに近接する。
【0042】
第1近接部31は、リアガラス15の平面視で左リインフォース14Aと重なると、Z軸方向で左リインフォース14Aとの容量結合が容易となる。これにより、その結合強度が増大し、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。同様に、第2近接部32は、リアガラス15の平面視で右リインフォース14Bと重なると、Z軸方向で右リインフォース14Bとの容量結合が容易となる。これにより、その結合強度が増大し、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。
【0043】
第1縦近接部33から下端部21bに至るまでの導電経路の長さLQ1は、0.95×λ/4×k以上1.05×λ/4×k以下であると、垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。即ち、第1縦近接部33及び第1バスバー21が、左リインフォース14Aに沿うように上下方向(Y軸方向)に延伸する長さ(LQ1)が上記の範囲であると、周波数帯Fにおける垂直偏波のアンテナ利得が向上する。垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、長さLQ1は、0.96×λ/4×k以上1.04×λ/4×k以下が好ましく、0.97×λ/2×k以上1.03×λ/2×k以下がより好ましい。なお、長さLQ1の始点は、第1縦近接部33における任意の一点でよい。長さLQ1の終点は、第1バスバー21の下端部21bではなく、複数の電熱線23のうち第1近接部31から最も遠い電熱線23fにおける任意の一点でもよい。
【0044】
第2縦近接部34から下端部22bに至るまでの導電経路の長さLQ2は、0.95×λ/4×k以上1.05×λ/4×k以下であると、垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。即ち、第2縦近接部34及び第2バスバー22が、右リインフォース14Bに沿うように上下方向(Y軸方向)に延伸する長さ(LQ2)が上記の範囲であると、周波数帯Fにおける垂直偏波のアンテナ利得が向上する。垂直偏波の送受において周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、長さLQ2は、0.96×λ/4×k以上1.04×λ/4×k以下が好ましく、0.97×λ/2×k以上1.03×λ/2×k以下がより好ましい。なお、長さLQ2の始点は、第2縦近接部34における任意の一点でよい。長さLQ2の終点は、第2バスバー22の下端部22bではなく、複数の電熱線23のうち第2近接部32から最も遠い電熱線23fにおける任意の一点でもよい。
【0045】
デフォッガ20は、複数の電熱線23を上下方向で短絡する一又は複数の短絡線を備えると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。図1に示す例では、デフォッガ20は、中心線16と第1バスバー21との間で複数の電熱線23を上下方向で短絡する短絡線24と、中心線16と第2バスバー22との間で複数の電熱線23を上下方向で短絡する短絡線25とを備える。なお、図1では示さないが、デフォッガ20は、中心線16に沿った短絡線(例えば、短絡線24と短絡線25との間で複数の電熱線23を上下方向で短絡する短絡線)をさらに有してもよい。短絡線24は、例えば、複数の電熱線23のうち最もアンテナ40に近接する電熱線23aに接続される上端24aと、複数の電熱線23のうち最もアンテナ40から遠い電熱線23fに接続される下端24bとを有する。短絡線25は、例えば、電熱線23aに接続される上端25aと、電熱線23fに接続される下端25bとを有する。
【0046】
ここで、中間部60から第1近接部31及び短絡線24を経由して電熱線23f上の任意の一点に至るまでの経路を経路Lとするとき、経路Lの長さは、0.90×λ/2×k以上1.10×λ/2×k以下であると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。このときの電熱線23f上の任意の一点は、複数の電熱線23のうち第1近接部31から最も遠い電熱線の上の経路端の一例である。なお、短絡線24の下端24bが電熱線23f上にない場合、経路Lの経路端は、電熱線23f上の任意の一点ではなく、下端24bでもよい。この場合の下端24bは、短絡線24の線端のうち第1近接部31から最も遠い線端の一例である。とくに、補助エレメント30の第1縦近接部33が、第1バスバー21よりも短絡線24の近くに接続される場合、経路Lにおける高周波電流が大きくなり、短絡線24を経由した経路Lによってもダイポールアンテナとして機能し、経路Lの第1ダイポールアンテナとともに機能する。この場合も、アンテナ40は、これらのダイポールアンテナによってアンテナ利得が増加する。
【0047】
同様に、中間部60から第2近接部32及び短絡線25を経由して電熱線23f上の任意の一点に至るまでの経路を経路Lとするとき、経路Lの長さは、0.90×λ/2×k以上1.10×λ/2×k以下であると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。このときの電熱線23f上の任意の一点は、複数の電熱線23のうち第2近接部32から最も遠い電熱線の上の経路端の一例である。なお、短絡線25の下端25bが電熱線23f上にない場合、経路Lの経路端は、電熱線23f上の任意の一点ではなく、下端25bでもよい。この場合の下端25bは、短絡線25の線端のうち第2近接部32から最も遠い線端の一例である。とくに、補助エレメント30の第2縦近接部34が、第2バスバー22よりも短絡線25の近くに接続される場合、経路Lにおける高周波電流が大きくなり、短絡線25を経由した経路Lによってもダイポールアンテナとして機能し、経路Lの第2ダイポールアンテナとともに機能する。この場合も、アンテナ40は、これらのダイポールアンテナによってアンテナ利得が増加する。
【0048】
周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、経路Lの長さは、0.92×λ/2×k以上1.08×λ/2×k以下が好ましく、0.94×λ/2×k以上1.06×λ/2×k以下がより好ましい。
【0049】
デフォッガ20の水平方向の幅(第1バスバー21との第2バスバー22との間の距離)をWとする。このとき、補助エレメント30がデフォッガ20に接続される第1エレメント端61は、デフォッガ20の水平方向における端部(第1バスバー21)から水平方向に0.3×Wまでの範囲にあると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、第1エレメント端61は、第1バスバー21から水平方向に0.2×Wまでの範囲にあると好ましく、第1バスバー21から水平方向に0.1×Wまでの範囲にあるとより好ましく、第1バスバー21に接続されるとさらに好ましい。
【0050】
同様に、補助エレメント30がデフォッガ20に接続される第2エレメント端62は、デフォッガ20の水平方向における端部(第2バスバー22)から水平方向に0.3×Wまでの範囲にあると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、第2エレメント端62は、第2バスバー22から水平方向に0.2×Wまでの範囲にあると好ましく、第2バスバー22から水平方向に0.1×Wまでの範囲にあるとより好ましく、第2バスバー22に接続されるとさらに好ましい。また、補助エレメント30は、デフォッガ20のうち第1バスバー21及び第2バスバー22近傍に接続する場合、補助エレメント30がリアガラス15の左右両端側に配置されるので、補助エレメント30によって視界が妨げられ難くなる。
【0051】
また、アンテナ40と補助エレメント30との間の最短距離dは、10mm以上あると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。図1に示す例では、最短距離dは、補助エレメント30と給電部41との距離に相当する。周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、最短距離dは、15mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、30mm以上がさらに好ましく、40mm以上が特に好ましく、50mm以上が最も好ましい。最短距離dの上限値は、アンテナ40の配置面積を確保できるのであれば、特に制限されない。
【0052】
図3は、第2実施形態かかるバックドアの一構成例を模式的に示す平面図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図3に示す第2実施形態にかかるバックドア200は、ギャップ37が中間部60にある点で、第1実施形態に係るバックドア100と相違する。
【0053】
補助エレメント30は、ギャップ37を介して対向する第1補助エレメント38及び第2補助エレメント39を含む。ギャップ37が補助エレメント30に存在しても、アンテナ40は、デフォッガ20と補助エレメント30によって囲まれるように配置されている。
【0054】
したがって、第1実施形態と同様に、第2実施形態によれば、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを実現できる。なお、図3に示す構成を上下反転又は左右反転させても、比較的高いアンテナ利得が得られるアンテナを備えるバックドア及びリアガラスを実現できる。
【0055】
ギャップ37の長さeは、300mm以下であると、周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する。周波数帯Fにおけるアンテナ利得が向上する点で、ギャップ37の長さは、200mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましく、20mm以下が特に好ましく、10mm以下が最も好ましい。
【0056】
また、図3に示す例では、ギャップ37は、中心線16と交わる位置にあるが、中心線16と交わらずに中心線16から離れた位置にあってもよい。また、ギャップ37は、補助エレメント30において、水平方向(X軸方向)に延伸する部分に有し、上下方向(Y軸方向)に延伸する部分に有さないことで、とくに周波数帯Fにおける垂直偏波のアンテナ利得を向上させやすい。なお、図3に示す例では、ギャップ37は、中心線16と交わる位置にあり、中間部60は、リアガラス15の平面視において補助エレメント30とリインフォース14とが重ならない部分とギャップ37の部分に相当する。
【0057】
図4は、第1実施形態のバックドア100(図1参照)において、バスバーから補助エレメントのエレメント端までの長さa(図2参照)の違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。長さaの違いとは、補助エレメント30とデフォッガ20との接続位置の違いである。
【0058】
図4において、"REF1"は、比較例として、図1に示す構成から補助エレメント30を取り除いた場合を示す。"REF2"は、参考例として、図1に示す構成からリインフォース14及び補助エレメント30を取り除いた場合を示す。"a=260mm"は、図1に示す構成において、第1エレメント端61が短絡線24の上端24aに直接接続され且つ第2エレメント端62が短絡線25の上端25aに直接接続された場合を示す。
【0059】
"a=80mm"及び"a=260mm"は、第1エレメント端61が第1バスバー21から0.3×Wまでの範囲にあり且つ第2エレメント端62が第2バスバー22から0.3×Wまでの範囲にある場合を示す。"a=0mm"は、第1エレメント端61が第1バスバー21に接続され且つ第2エレメント端62が第2バスバー22に接続される場合を示す。とくに"a=80mm"及び"a=0mm"の条件は、リアガラス15の平面視において、少なくとも左リインフォース部14Aa及び右リインフォース部14Baに補助エレメント30が重なるように配置され、これらの間で容量結合が生じる配置とした。
【0060】
なお、リアガラス15の波長短縮率k=0.7として、FM放送波の周波数Fの帯域(76MHz~108MHz)における空気中の波長λは、2776mm~3945mmの範囲である。上記において、(λ/2)×kは、972mm~1381mmの範囲であり、(λ/4)×kは、486mm~690mmの範囲である。そして、"a=80mm"及び"a=0mm"の条件において、導電経路CL及び導電経路CLの好適範囲に含まれる"(λ/2)×k"は、972mm~1381mmに調整し、さらに、導電経路LQ1及び導電経路LQ2の好適範囲に含まれる"(λ/4)×k"は、486mm~690mmに調整した。また、"a=260mm"の条件において、経路Lは、(λ/2)×kに相当する972mm~1381mmの範囲に調整した。
【0061】
FM放送波の帯域内における各周波数での平均アンテナ利得は、図4に示すデータから、
REF1 :-22.4[dBd]
REF2 :-14.7[dBd]
a=260mm:-19.1[dBd]
a=80mm:-14.0[dBd]
a=0mm :-13.4[dBd]
と計算された。このように、リインフォース14を有し、補助エレメント30を有しないREF1と比較して、補助エレメント30を有する場合において、FM放送波の帯域内における平均アンテナ利得はいずれも向上した。さらに、第1エレメント端61が第1バスバー21に接続され且つ第2エレメント端62が第2バスバー22に接続される場合が、平均アンテナ利得が最も高い結果が得られた。
【0062】
なお、図4の測定時において、図1に示す各部の寸法は、
アンテナエレメント42の長さ:280mm(縦80mm+横200mm)
アンテナエレメント42と電熱線23aとの間隔:5mm
中心線16から短絡線24までの水平距離:300mm
中心線16から短絡線25までの水平距離:295mm
補助エレメント30とリインフォース14との最短距離:12.6mm
W:1138mm
d:30mm
とした。
【0063】
図5は、第1実施形態のバックドア100(図1参照)において、アンテナ40と補助エレメント30との間の最短距離dの違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。
【0064】
FM放送波の帯域内における各周波数での平均アンテナ利得は、図5に示すデータから、
REF1 :-22.4[dBd]
REF2 :-14.7[dBd]
d=10mm:-15.6[dBd]
d=30mm:-14.0[dBd]
d=50mm:-13.7[dBd]
と計算された。つまり、アンテナ40と補助エレメント30との間の最短距離dが長くなるほど、平均アンテナ利得が高くなる結果が得られた。
【0065】
なお、図5の測定時において、図1に示す各部の寸法は、a=80mmで固定することを除いて、図4の測定時と同じとした。このように、補助エレメント30を有することで、平均アンテナ利得は、REF1よりも高められる。また、d=10mmの条件であっても、aの値を80mmよりも短くして、補助エレメント30と、左リインフォース部14Aa及び右リインフォース部14Baとの容量結合を強くする配置にすることで、さらに平均アンテナ利得を高められる。
【0066】
図6は、第2実施形態のバックドア200(図3参照)において、ギャップ37の長さeの違いによるFM放送波の帯域のアンテナ特性の一例を示す図である。"e=0mm(ギャップなし)"とは、第1実施形態のバックドア100(図1参照)の場合を表す。
【0067】
FM放送波の帯域内における各周波数での平均アンテナ利得は、図6に示すデータから、
REF1 :-22.4[dBd]
REF2 :-14.7[dBd]
e=0mm :-14.0[dBd]
e=10mm :-15.5[dBd]
e=20mm :-15.5[dBd]
e=100mm:-15.4[dBd]
e=200mm:-16.1[dBd]
と計算された。
【0068】
このように、補助エレメント30におけるギャップ37を有する場合でも、平均アンテナ利得は、REF1よりも高められる。また、図6の測定時において、図1に示す各部の寸法は、a=80mm、d=30mmとしたが、e=10mm~200mmの条件であっても、aの値を80mmよりも短くし、さらにdの値を30mmよりも長くすることで、さらに平均アンテナ利得を高められる。つまり、ギャップ37の長さeをある程度大きくしても、十分な平均アンテナ利得を確保できる。
【0069】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0070】
例えば、エレメントの「端部」は、エレメントの延伸の始点又は終点であってもよいし、その始点又は終点手前の導体部分である始点近傍又は終点近傍であってもよい。また、エレメントの「端部」には、折れ曲がりや折り返しが形成されてもよい。「端部」には、「一端」、「他端」、「先端部」、「終端部」又は「開放端」が含まれてもよい。また、エレメント同士の接続部は、曲率を有して接続されていてもよい。
【0071】
また、アンテナエレメント及び電極(給電部)は、例えば、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を窓ガラスの車内側表面にプリントして焼付けることによって形成される。しかし、アンテナエレメント及び電極の形成方法は、この方法に限定されない。例えば、アンテナエレメント又は電極は、銅等の導電性物質を含有する線状体又は箔状体を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設けることによって形成されてもよい。あるいは、アンテナエレメント又は電極は、窓ガラスに接着剤等により貼付されてもよく、窓ガラス自体の内部に設けられてもよい。
【0072】
電極の形状は、例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0073】
また、アンテナエレメントと電極との少なくともいずれかを形成する導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。さらに、アンテナエレメントと電極との少なくともいずれかが形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
11 開口部
12 アウターパネル
13 インナーパネル
14 リインフォース
15 リアガラス
16 中心線
20 デフォッガ
21 第1バスバー
21a,22a 上端部
21b,22b 下端部
22 第2バスバー
23,23a,23f 電熱線
24,25 短絡線
30 補助エレメント
31,32 近接部
33 第1縦近接部
34 第2縦近接部
35 第1横近接部
36 第2横近接部
37 ギャップ
38 第1補助エレメント
39 第2補助エレメント
40 アンテナ
41 給電部
42 アンテナエレメント
42a エレメント部
60 中間部
61 第1エレメント端
62 第2エレメント端
71,72 ダイポールアンテナ
100,200 バックドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6