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特許7589623脱水システムの監視装置、監視方法および制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】脱水システムの監視装置、監視方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20241119BHJP
   C02F 11/123 20190101ALI20241119BHJP
   G01N 15/0205 20240101ALI20241119BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C02F11/14
C02F11/123 ZAB
G01N15/0205
G01N21/27 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059905
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156300
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】井上 健
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-010199(JP,A)
【文献】特開2006-272228(JP,A)
【文献】特開2021-020158(JP,A)
【文献】特開2017-026438(JP,A)
【文献】特開平07-204699(JP,A)
【文献】特公平03-080080(JP,B2)
【文献】特開2021-063699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
B01D 23/00-35/04
B01D 35/08-37/08
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
C02F 1/52-1/56
C02F 11/00-11/20
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を脱水するベルトプレス脱水機又は多重円板型脱水機よりなる脱水機の洗浄排水(ベルトプレス脱水機の場合は濾布ベルトの洗浄排水、多重円板型脱水機の場合は回転濾過体の洗浄排水)中の粒子の粒径に対応した指標値の測定手段を有する脱水システムの監視装置を用い、
該指標値に基づいて該脱水システムの監視を行う脱水システムの監視方法であって、
該測定手段は、洗浄排水中にレーザー光を照射する照射部及び該洗浄排水からの散乱光を受光して受光信号強度を得る受光部を有し、
時刻間隔Δt(Δtは0.1~10mSecから選定される。)で測定される受光信号強度と時刻とをプロットしたグラフにおいて、隣接する極小点と極大点との受光信号強度差(以下、ピーク波高値という。)を求め、
所定時間(該所定時間は200mSec~20分から選定される。)内における、予め設定した閾値(この閾値は、予め前記汚泥を前記脱水機で脱水する脱水処理を行ったデータから設定された値である。)以上のピーク波高値の数前記指標値とする脱水システムの監視方法
【請求項2】
前記汚泥は、凝集剤によって被処理汚泥を凝集処理した汚泥である請求項1の脱水システムの監視方法
【請求項3】
前記汚泥は、無機凝集剤及び高分子凝集剤によって被処理汚泥を凝集処理した汚泥である請求項1の脱水システムの監視方法。
【請求項4】
記指標値が所定値又は所定範囲内となるように被処理汚泥への凝集剤添加量を制御する請求項2又は3の脱水システムの監視方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を脱水処理するシステムの監視及び制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトプレス脱水機を用いた脱水処理において、安定した脱水処理を行うために脱水ケーキの剥離性を適切に評価することが求められている。無機凝集剤や高分子凝集剤の注入量を増加することで脱水ケーキの剥離性を改善する方法は有効であるが、どの程度の薬剤投入でどの程度の改善効果があるかを投入時点において数値で示すことは困難である。実際には薬剤投入後に脱水ケーキの剥離性をベルトプレス脱水機の濾布の汚れ具合を目視で判断していたが、この手法は人が現場にいる時にのみ可能な方法であるため連続的な監視は困難である。
【0003】
特公昭63-29639号公報には、濾布の通気度を測定することで剥離性を評価することが記載されている。しかし、剥離性の評価は濾布の広い範囲にわたって評価する必要があるため、広範囲にわたって通気度を測定するためには大がかりな装置が必要となる。また、部分的に汚泥が十分に剥離している濾布では、その部分に集中して流体が通過するため、通気性で剥離性を正確に評価することは困難である。
【0004】
特公平3-80080号公報には濾布洗浄排水中の懸濁物質濃度を測定することにより剥離性を評価することが記載されている。しかし、濾布洗浄排水中の懸濁物質は、塊として存在することがあるため、均一に液中に分散するとは限らない。そのため、濾布洗浄排水中の懸濁物質の濃度は、通常の光学式MLSS計では適切に測定することができない。
【0005】
そこで、従来は、濾布洗浄排水中の懸濁物質濃度は、濾過分離重量測定法などにより分析されている。しかし、濾過分離重量測定方法などの方法は連続的に測定するためには装置が大がかりとなる。
【0006】
特許文献3,4には、レーザー光を水中に向けて照射し、水中のフロック等によって散乱される散乱光を受光して凝集状態を測定する凝集状態モニタリングセンサを用いて凝集剤添加を制御することが記載されている。
【0007】
本発明者らは、特願2019-187889号において、後述する「ボトム値」や「散乱光量平均値」などが濾布洗浄排水中の固形物量と相関があり、これに基づいて、凝集剤の薬注量を制御できることを見出し、出願した
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭63-29639号公報
【文献】特公昭3-80080号公報
【文献】特開2017-26438号公報
【文献】特開2021-20158号公報
【文献】特願2019-187889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑み、脱水機の汚泥剥離性を的確に監視できる監視システムおよび監視方法と、その監視した結果に基づいて、脱水機を適切に制御することが可能な脱水機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の脱水システムの監視装置は、脱水機の洗浄排水中の固形物の粒径に対応した指標値の測定手段を有する脱水システムの監視装置であって、該測定手段は、洗浄排水中にレーザー光を照射する照射部及び散乱光を受光する受光部を有し、散乱光強度信号の規定時間内における所定値以上のピーク波高値の数から前記指標値を求めるものである。
【0011】
本発明の脱水システムの監視方法は、本発明の脱水システムの監視装置を用い、前記指標値に基づいて脱水システムの監視を行うものである。
【0012】
本発明の脱水機の制御装置は、本発明の脱水システムの監視装置と、前記指標値が所定値又は所定範囲内となるように被処理汚泥への凝集剤添加量を制御する制御手段とを有するものである。
【0013】
本発明の一態様では、前記ピーク波高値は散乱光強度信号の極大値と極小値との差である。
【0014】
本発明の一態様では、前記脱水機はベルトプレス脱水機であり、前記洗浄排水はベルトプレス脱水機の濾布ベルト洗浄排水である。
【発明の効果】
【0015】
本発明者らは、特許文献3,4に記載の凝集状態モニタリングセンサにより、脱水機洗浄排水中の固形物の状態(固形物量や粒径分布の相対的な情報)を評価できることを見出した。
【0016】
ベルトプレス脱水機の場合、濾布からの脱水ケーキの剥離性が悪化した場合、脱水ケーキが濾布上に張り付いて残る。この濾布上に残った脱水ケーキは洗浄水で洗い流され、濾布洗浄排水中に含まれることになる。
【0017】
この濾布洗浄排水中に含まれる固形物の粒径が大きいほど、剥離性が悪い。濾布洗浄排水中の固形物の粒径は、該凝集状態モニタリングセンサを用いて測定した場合、規定時間内における一定以上のピーク波高値の数、すなわちピーク波高値が大きい波形ピークの出現数として検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る脱水システムの構成図である。
図2】凝集状態モニタリングセンサの構成図である。
図3】凝集状態モニタリングセンサの計測領域の模式図である。
図4】凝集状態モニタリングセンサの検出波形図である。
図5】凝集状態モニタリングセンサの検出波形図である。
図6】凝集状態モニタリングセンサの検出波形図である。
図7】実施例の結果を示すグラフである。
図8】比較実験例の結果を示すグラフである。
図9】比較実験例の結果を示すグラフである。
図10】凝集状態モニタリングセンサの検出波形図である。
図11】凝集状態モニタリングセンサの検出波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態に係る脱水システムについて説明する。
【0020】
図1の通り、この脱水システムでは、被処理汚泥である原汚泥は、流量計2を有する流入管1を介して第1凝集槽3に導入され、第1薬注装置4によって無機凝集剤が添加される。第1凝集槽3には撹拌機3aが設置されている。
【0021】
第1凝集槽3内で凝集処理された液(第1凝集処理液)は、移流口(又は移流管)を介して第2凝集槽5に導入され、第2薬注装置6によって高分子凝集剤が添加される。第2凝集槽5には撹拌機5aが設置されている。
【0022】
無機凝集剤としては塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄などの鉄系無機凝集剤や塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミ系無機凝集剤が挙げられる。
【0023】
高分子凝集剤としてはカチオン性又は両性の高分子凝集剤、とりわけカチオン性高分子凝集剤が好適である。カチオン性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチルアクリレート或いはその四級化物、ジメチルアミノエチルメタクリレート或いはその四級化物などのカチオン性単量体の単独重合物やアクリルアミドとの共重合物、ポリビニルアミジン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ(2-ビニル-1-メチルピリニジウム)、ジアルキルアミン‐エピクロルヒドリン重縮合物、ポリリジン、キトサン、ジエチルアミノエチルデキストランなどが挙げられる。
【0024】
両性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチルアクリレート或いはその四級化物やジメチルアミノエチルメタクリレート或いはその四級化物などのカチオン性単量体と、アクリルアミドなどのノニオン性単量体と、アクリル酸或いはその塩などとの共重合物を用いることができる。
【0025】
第2凝集槽5内で凝集処理された汚泥は、移送管9を介してベルトプレス脱水機10に送られる。
【0026】
図1では、凝集槽3,5を設置しているが、無機凝集剤を配管1で添加し、凝集槽3を省略してもよい。また、第2凝集槽5の代わりに第2配管を設置し、該第2配管に高分子凝集剤を添加してもよい。
【0027】
ベルトプレス脱水機10は、無端回動する下側濾布ベルト及び上側濾布ベルトを備えている。凝集汚泥は、両者の間で挟圧され、脱水され、脱水ケーキと脱水濾液とに分離される。脱水ケーキは濾布から剥離され、脱水機10から取り出される。
【0028】
濾布ベルトは、脱水機10内の濾布洗浄部で洗浄水により洗浄される。この濾布ベルトの洗浄排水の一部は配管11を介して計測槽12に送水される。計測槽12には凝集状態モニタリングセンサ20が設置されており、その検出信号が制御器8に入力される。制御器8はこの検出信号に基づいて第1及び第2薬注装置4,6を制御する。
【0029】
凝集状態モニタリングセンサ20は、好ましくは、特許文献3に記載のものが用いられる。図2はこの凝集状態モニタリングセンサのプローブ部分の構成を示している。このプローブは、直交する面21a,21b及びそれらが交わる頂部21cを有したブロック21と、面21aに沿って設けられた、凝集処理液に向ってレーザ光を照射する発光部22と、面21bに沿って設けられた、受光光軸を該発光部22の発光光軸と直交方向とした受光部23とを有する。また、凝集状態モニタリングセンサ20は、発光部22の発光作動及び受光部23の受光信号の解析を行うために、発光回路、検波回路及び計測回路(図示略)を備えている。計測回路は、タイミング回路、A/D変換部、演算部等を有する。
【0030】
特許文献3と同様に、発光部22から、頂部21c近傍の計測領域Aに照射されたレーザー光が計測領域A内の粒子によって散乱され、この散乱光が受光部23で受光され、この受光強度の経時変化に基づいて凝集状態が計測される。なお、ブロック21は不透明材料よりなる。
【0031】
発光回路は、タイミング回路からの信号に応じて発光部に一定の変調周波数を持った電気信号を送り、レーザ発光を行わせる。発光部は、発光回路からの信号によって、レーザ光を発光する。受光部は、レーザ光が水中の懸濁物に当たって発生した散乱光を受けて、電気信号に変換する。検波回路は、受光部からの電気信号から変調成分を除去し、散乱光強度に応じた受光電圧を出力する。
【0032】
計測回路 は、発光回路に発光のための信号(特定の周波数変調波)を送信すると共に、検波回路からの信号をデジタル信号に変換し、論理演算して凝集に関する情報を出力する。
【0033】
この凝集状態モニタリングセンサとしては、特許文献3のモニタリング装置、特にそれが特許された特許第6281534号公報に記載のモニタリング装置を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
なお、特許第6281534号の凝集モニタリング装置は、
「 凝集処理される被処理水の処理状態を監視する凝集モニタリング装置であって、
計測光を前記被処理水の計測領域に照射する計測光照射部と、
前記計測領域にある前記被処理水の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、
前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視および集計し、特定の振幅の発生率または発生頻度を算出して、前記被処理水中のフロックの粒径を表す前記被処理水の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部と、
を備え、
前記振幅計測手段は、前記受光信号が上昇から下降に変化する第1の変曲点および下降から上昇に変化する第2の変曲点を検出し、前記第1の変曲点および第2の変曲点のレベル差から前記振幅を計測することを特徴とする凝集モニタリング装置。」
である。
【0035】
図3は、図2の計測領域Aにおけるレーザー光Lの光軸と垂直な断面を示す模式図である。図3の通り、ある時点では、計測領域Aに5個の粒子が存在している。この時点で計測領域Aに照射されたレーザー光が、各粒子によって散乱され、散乱光Sが受光部23に入射する。この時点から所定時間Δt(好ましくは0.1~10mSecの間から選定された時間。例えば、約1mSec)が経過した時点では、計測領域Aに存在する粒子の大きさや数が変動する。
【0036】
粒子の大きさや数が変動すると、それに連動して散乱光強度が変動し、受光部23の受光強度が例えば図4のように変動する。なお、図4は、凝集状態モニタリングセンサの散乱光強度を信号処理して得られる凝集状態モニタリングセンサ出力信号(受光信号強度)の経時変化の一例を示している。図4における出力信号は、受光部23の受光強度(散乱光強度)に比例した値であり、単位は、例えばmVである。
【0037】
任意の時刻tの受光強度と、Δt経過後の時刻tk+1の受光強度との差は、該Δtの間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に比例した値となる。
【0038】
粒子の粒径が大きいほど、1個の粒子が計測領域Aに出入りしたときの該受光強度の変動幅が大きいものとなる。従って、この受光強度の変動幅から、計測領域Aに出入りした粒子の粒径の大小を検出することができる。
【0039】
この実施の形態では、センサの発光素子の消耗を抑制するために、発光素子を間欠的に作動させる。一例としては、図5のように、200mSec発光作動させた後、1800mSec停止するように、2秒に1回のペースで発光させる。なお、200mSec、1800mSec及び2秒は一例であり、これに限定されるものではない。
【0040】
この実施の形態では、凝集状態モニタリングセンサ20の受光強度に基づいて濾布ベルト洗浄排水中の粒径の大きい粒子の数を評価し、この粒径の大きい粒子の数を濾布からの脱水ケーキの剥離性の指標として、無機凝集剤、あるいは無機凝集剤及び高分子凝集剤の添加制御を行う。
【0041】
凝集状態モニタリングセンサ20の受光信号強度から濾布ベルト洗浄排水中の大径粒子の数を評価する方法について図6a,6bを参照して説明する。
【0042】
図6aは、時刻t,t…tの各時刻において測定された受光信号強度をプロットしたグラフであり、各時刻の間隔Δt(すなわちt-tk-1)は前述の通り、好ましくは0.1~10mSec、例えば1mSecである。
【0043】
図6bは、図6aにおいて、極小点P,P…と、極大点Q,Q…とを記入し、隣接する極小点と極大点との差(このピーク差を、以下、ピーク波高値という。)h,h…を記入した説明図である。なお、ピーク差が所定値以下の微小な極小、極大は外乱との差異が不明であるため無視して処理する。例えば、hが所定の閾値未満の場合、P≧PであればPとQは無視してデータ処理し、P<PであればQとPは無視して、PとQとの差をピーク波高値とするようデータ処理する。
【0044】
上述の通り、任意の時刻tk-1の受光信号強度と時刻tの受光信号強度との差hは、時刻tk-1~t間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に相関した値である。
【0045】
そこで、時刻t~tのΔt・z秒間(zは例えば200とされ、Δt=1mSecである場合Δt・zは0.2秒となる。)の測定時間帯における閾値以上(例えば200mV以上)のピーク波高値の数に基づいて濾布洗浄排水中の大粒径粒子の数を評価する。なお、このように1つの測定時間帯(時刻t~t)の測定結果に基づくのではなく、複数個の測定時間帯を包含する所定時間(例えば、10分間)にわたって閾値以上のピーク波高値の数をカウントしてもよい。
【0046】
なお、上記所定時間は200mSec~20分、特に200mSec~10分の間から選ばれることが好ましく、上記の10分は一例にすぎない。また、上記のピーク波高値の閾値200mVも一例である。ピーク波高値の閾値は、実際に汚泥の脱水処理を行い、添加量が問題のない時のデータから適宜設定するのが好ましい。
【0047】
原汚泥への無機凝集剤の注入量を増加するに従って濾布洗浄排水中の固形物量が少なくなる。定時間内における閾値以上のピーク波高値の数と脱水ケーキの剥離性は相関し、この数が少ないほど脱水ケーキの剥離性が良い。定時間内における閾値以上のピーク波高値の数を指標値とし、この定時間内における閾値以上のピーク波高値の数に目標値又は目標範囲を設定し、第1目標値(又は目標範囲上限値)より多くなったときには第1目標値(又は目標範囲下限値以上)になるまで無機凝集剤及び有機凝集剤の注入量を増加させる。また、第2目標値(又は目標範囲下限値)より少なくなったときには第2目標値(又は目標範囲上限値以下)になるまで無機凝集剤及び有機凝集剤の注入量を減少させる(又は維持する)ことで、適正な薬注条件となるよう連続的な制御が可能となる。
【0048】
上記実施の形態は、ベルトプレス脱水機に関するものであるが、多重円板型脱水機等の脱水機であってもよい。多重円板型脱水機の場合は、回転濾過体の洗浄排水について上記と同様の測定を行えばよい。
【0049】
上記説明では、定時間内における所定値(閾値)以上のピーク波高値の数に基づいて無機凝集剤及び有機凝集剤添加量を制御しているが、定時間内における所定値(閾値)以上のピーク波高値の数に基づいて無機凝集剤添加量を制御し、有機凝集剤添加量については、他の方法、例えば特許文献4の方法により制御してもよい。
【実施例
【0050】
[実施例1]
下記実験方法に従って、汚泥を凝集処理し、ナイロン製濾布で濾過し、圧搾した後、該濾布から脱水ケーキを剥離させ、剥離性(脱水ケーキ回収率)を測定した。
【0051】
また、脱水ケーキ剥離後の濾布を水で洗浄し、洗浄排水について、特許第6281534号に記載の凝集センサ(栗田工業株式会社製S.sensing(登録商標) CS-P)を用い、200mV以上のピーク波高値の数を10秒間測定した。結果(ピーク波高値の数と脱水ケーキ回収率との関係)を図7に示す。
【0052】
≪実験方法≫
(A)凝集汚泥の作成
(A-1) 汚泥200mLを300mLビーカーに採取する。
(A-2) 無機凝集剤として、ポリ硫酸第2鉄を2500mg/L、5000mg/L又は7500mg/L添加する。
(A-3) ハンドミキサー(東芝(登録商標)ハンドミキサーHM300(家庭用))の1目盛目の速度設定で20秒撹拌する。
(A-4) 高分子凝集剤として栗田工業社製クリフィックス(登録商標)EC-466を375mg/L添加する。
(A-5) スパーテルを用いて3回/秒の撹拌速度で30秒間撹拌する。
(B)凝集汚泥の重力濾過
(B-1) メスシリンダーの上にブフナー漏斗を載せ、その上に60meshナイロン濾布を敷き、その上に50Aの塩ビ管を立てる。
(B-2) 上記(B-1)の塩ビ管の内側に(A-5)の凝集汚泥を注ぐ。
(B-3) 30秒後、濾布の上に残った濾過後ケーキを採集する。
(C)圧搾
(C-1) (B-3)で採集した濾過後ケーキをケーキ型枠(30mmφ×17.5mmH)に詰め込み、型枠を外す。
(C-2) 外側からスポンジ及び濾布(敷島カンバス社製T1189)で濾過後ケーキを挟み込む。
(C-3) 0.1MPaで60秒間圧搾する。
(C-4) 上記(C-1)~(C-3)を10回繰り返す。試料が足りないときは、(C-1)から繰り返す。
(D) 脱水ケーキおよび濾布洗浄排水の回収
(D-1) 脱水ケーキをスクレーパーで濾布から剥がし、得られた脱水ケーキの乾燥重量と含水率を測定する。
(D-2) 脱水ケーキを剥がした濾布(各条件毎10セット)を高圧水洗浄し、洗浄排水をすべて回収する。
(D-3) 上記(D-2)の洗浄排水に水道水を合計で3Lとなるように注水する。
(E) 濾布洗浄排水の計測
(E-1) 上記(D-3)の濾布洗浄排水をベッセルに注入し、400rpmで撹拌しながら実施例1で用いたものと同じ凝集センサで計測する。
(E-2) 200mV以上のピーク波高値の数を10秒間測定する。
【0053】
[比較実験例1]
実施例1において、(E-2)の代りに、図10のように、受光信号強度を時間で積分した。図10では、時刻T(mSec)~T+200(mSec)間、T+2000(mSec)~T+2200(mSec)間、…のように200mSecの発光期間の受光信号強度を積分している。即ち、図10でドットを付した部分の面積(S,S…)を経時的に測定している。
【0054】
10秒間における測定値から各積分値S,S…の平均値を求め、脱水ケーキ含水率との関係を図8に示した。
【0055】
[比較実験例2]
実施例1において、(E-2)の代りに、図11のように各発光期間時刻T(mSec)~T+200(mSec)間、T+2000(mSec)~T+2200(mSec)間、…の最小受光信号強度Imin(1),Imin(2),…を求めた。10秒間(この10秒間に発光期間は5個(10÷2=5)存在する。)における最小受光信号強度(以下、ボトム値ということがある。)Imin(1),Imin(2)…Imin(5)の平均値を求め、この値と脱水ケーキ含水率との関係を図9に示した。
【0056】
[考察]
図7~9では、グラフの傾向はほぼ同様であり、200mV以上のピーク波高値の数を所定時間測定したときのデータを脱水ケーキ剥離性の指標として利用できることが認められた。
【符号の説明】
【0057】
3,5 凝集槽
4,6 薬注装置
8 制御器
20 凝集状態モニタリングセンサ
21 ブロック
22 発光部
23 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11