(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】多層反射膜付き基板の検査方法、及び反射型マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20241119BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20241119BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20241119BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
G01B11/30 Z
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2021070482
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒岡 幹
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095959(WO,A1)
【文献】特開2013-80810(JP,A)
【文献】特開2016-81050(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129527(WO,A1)
【文献】特開2013-191733(JP,A)
【文献】特開2002-310962(JP,A)
【文献】特開2022-151654(JP,A)
【文献】特開2015-206817(JP,A)
【文献】特開2015-88742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/84
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する検査方法であって、
第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得することと、
前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得することと、
前記第1座標系から前記第2座標系に前記振幅欠陥の座標を変換する座標変換を行うことと、
前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び前記第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第2座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得することと、
を含む検査方法。
【請求項2】
前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第2移動速度で移動させながら撮像した画像の画素分解能は、前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら撮像した画像の画素分解能よりも低い、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記第2座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像する間、前記多層反射膜付き基板を移動停止させる、請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板の移動停止中に前記第2座標系における前記振幅欠陥又は前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥又は前記位相欠陥を検出できなかった場合、撮像する座標をずらして再度撮像を行うことを含む、請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する検査方法であって、
第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得することと、
前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得することと、
前記第2座標系から前記第1座標系に前記位相欠陥の座標を変換する座標変換を行うことと、
前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び前記第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第1座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得することと、
を含む検査方法。
【請求項6】
前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度で移動させながら撮像した画像の画素分解能は、前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら撮像した画像の画素分解よりも低い、請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記第1座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像する間、前記多層反射膜付き基板を移動停止させる、請求項5または6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板の移動停止中に前記第1座標系における前記振幅欠陥又は前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥又は前記位相欠陥を検出できなかった場合、撮像する座標をずらして再度撮像を行うことを含む、請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する検査方法であって、
第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得することと、
前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得することと、
前記第1座標系から前記第1座標系及び前記第2座標系とは異なる第3座標系に前記振幅欠陥の座標を変換すると共に、前記第2座標系から前記第3座標系に前記位相欠陥の座標を変換する座標変換を行うことと、
前記第1欠陥検査装置及び前記第2欠陥検査装置とは異なる第3欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第3座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得することと、
を含む検査方法。
【請求項10】
前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度で移動させながら撮像した画像の画素分解能、及び前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第2移動速度で移動させながら撮像した画像の画素分解能は、前記第3欠陥検査装置を用いて前記第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら撮像した画像の画素分解能よりも低い、請求項9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記第3座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像する間、前記多層反射膜付き基板を移動停止させる、請求項9または10に記載の検査方法。
【請求項12】
前記第3欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板の移動停止中に前記第3座標系における前記振幅欠陥又は前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥又は前記位相欠陥を検出できなかった場合、撮像する座標をずらして再度撮像を行うことを含む、請求項11に記載の検査方法。
【請求項13】
前記第1欠陥検査装置は、波長193nm~532nmの光の反射光または散乱光によって前記振幅欠陥を撮像する、請求項1~12のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項14】
前記第2欠陥検査装置は、波長10nm~20nmの光の反射光または散乱光によって前記位相欠陥を撮像する、請求項1~13のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項15】
前記第3欠陥検査装置は、波長10nm~532nmの光の反射光または散乱光によって前記振幅欠陥と前記位相欠陥を撮像する、請求項9~12のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項16】
前記多層反射膜付き基板を前記第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら撮像した画像の画素分解能は、5nm~100nmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項17】
前記多層反射膜付き基板は、前記基板または前記多層反射膜に複数の基準マークを有し
複数の前記基準マークを基に前記座標変換を行う、請求項1~16のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項18】
前記多層反射膜付き基板は、前記位相欠陥であって且つ前記振幅欠陥でもある共通欠陥を複数有し、
複数の前記共通欠陥を基に前記座標変換を行う、請求項1~17のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項19】
前記座標変換は、ヘルマート変換、アフィン変換、又は射影変換である、請求項1~18のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の検査方法を用いて検査した前記多層反射膜の上に、吸収膜を形成することを含む、反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層反射膜付き基板の検査方法、及び反射型マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、極端紫外線(Extreme Ultra-Violet:EUV)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィー(EUVL)が開発されている。EUVとは、軟X線および真空紫外線を含み、具体的には波長が0.2nm~100nm程度の光のことである。現時点では、13.5nm程度の波長のEUVが主に検討されている。
【0003】
EUVLでは、反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、ガラス基板等の基板と、基板の上に形成される多層反射膜と、多層反射膜の上に形成される吸収膜と、を含む。吸収膜には、開口パターンが形成される。EUVLでは、吸収膜の開口パターンを半導体基板に転写する。
【0004】
反射型マスクの製造においては、多層反射膜の上に吸収膜を形成する前に、多層反射膜の欠陥の位置を特定することが重要である。多層反射膜の欠陥を修復したり除去したりすることは困難である。そこで、多層反射膜の欠陥が吸収膜で覆われるように、吸収膜の開口パターンを補正する技術が開発されている。この技術は、ミチゲーションと呼ばれる。
【0005】
特許文献1には、欠陥検査装置の座標系から電子線描画機の座標系への変換精度を向上する技術が開示されている。電子線描画機は、吸収膜の上に形成されたレジスト膜にパターンを描画する。その後、レジスト膜を現像し、現像したレジスト膜を用いて吸収膜に開口パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層反射膜付き基板の欠陥は、振幅欠陥と、位相欠陥とに大別される。振幅欠陥は、EUVの振幅を変化させてしまう。一方、位相欠陥は、EUVの位相を変化させてしまう。振幅欠陥は主に多層反射膜の表面に形成されるのに対し、位相欠陥は主に基板の表面又は多層反射膜の内部に形成される。振幅欠陥と位相欠陥とは、異なる深さに存在するので、異なる欠陥検査装置を用いて検出され、別々に設定される座標系の座標で位置を特定される。
【0008】
従来、一の座標系から他の座標系に欠陥の座標を変換する際に、誤差が生じることがあった。また、欠陥の検査は基板の品質保証領域全体で行われるので、従来、検査時間の短縮と位置精度の向上とを両立することが困難であった。例えば、基板の移動中に欠陥を撮像すれば、検査時間を短縮できるが、欠陥の位置精度が低下してしまう。一方、基板の移動停止中に欠陥を撮像すれば、欠陥の位置精度を向上できるが、一度に検査できる領域が狭く、検査時間が長くなり過ぎる。
【0009】
本開示の一態様は、振幅欠陥と位相欠陥の座標を短時間で高精度に検出する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1態様に係る検査方法は、基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する。第1態様に係る検査方法は、下記(A)~(D)を含む。(A)第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得する。(B)前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得する。(C)前記第1座標系から前記第2座標系に前記振幅欠陥の座標を変換する座標変換を行う。(D)前記第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び前記第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第2座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得する。
【0011】
本開示の第2態様に係る検査方法は、基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する。第2態様に係る検査方法は、下記(E)~(H)を含む。(E)第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得する。(F)前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得する。(G)前記第2座標系から前記第1座標系に前記位相欠陥の座標を変換する座標変換を行う。(H)前記第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び前記第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第1座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得する。
【0012】
本開示の第3態様に係る検査方法は、基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、を有する多層反射膜付き基板を検査する。第3態様に係る検査方法は、下記(I)~(L)を含む。(I)第1欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第1移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する振幅欠陥を検出し、前記第1欠陥検査装置が設定した第1座標系における前記振幅欠陥の座標を取得する。(J)前記第1欠陥検査装置とは異なる第2欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を第2移動速度で移動させながら前記多層反射膜付き基板を撮像することで、前記多層反射膜付き基板に存在する位相欠陥を検出し、前記第2欠陥検査装置が設定した第2座標系における前記位相欠陥の座標を取得する。(K)前記第1座標系から前記第1座標系及び前記第2座標系とは異なる第3座標系に前記振幅欠陥の座標を変換すると共に、前記第2座標系から前記第3座標系に前記位相欠陥の座標を変換する座標変換を行う。(L)前記第1欠陥検査装置及び前記第2欠陥検査装置とは異なる第3欠陥検査装置を用いて前記多層反射膜付き基板を前記第1移動速度及び第2移動速度よりも遅い第3移動速度で移動させるか、移動停止させながら、前記第3座標系における前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を撮像し、前記振幅欠陥と前記位相欠陥の座標を再度取得する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、多層反射膜付き基板の高速移動中に振幅欠陥と位相欠陥を撮像し、振幅欠陥と位相欠陥のおおよその座標を特定し、その後、多層反射膜付き基板の低速移動中、又は移動停止中に振幅欠陥と位相欠陥を再度撮像する。それゆえ、振幅欠陥と位相欠陥の座標を短時間で高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る反射型マスクブランクの基板を示す断面図である。
【
図4】
図4は、反射型マスクブランクの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、反射型マスクの一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、多層膜付き基板の欠陥の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の欠陥を覆う吸収膜の開口パターンの一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る多層膜付き基板の検査方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1座標系における振幅欠陥の座標の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2座標系における位相欠陥の座標の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1座標系から第2座標系に振幅欠陥の座標を変換した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0016】
図1に示すように、反射型マスクブランクの製造方法は、ステップS1~S7を有する。反射型マスクブランクの製造には、例えば
図2及び
図3に示す基板2を用いる。基板2は、第1主表面21と、第1主表面21とは反対向きの第2主表面22とを含む。第1主表面21は、矩形状である。本明細書において、矩形状とは、角に面取加工を施した形状を含む。また、矩形は、正方形を含む。第2主表面22は、第1主表面21とは反対向きである。第2主表面22も、第1主表面21と同様に、矩形状である。
【0017】
また、基板2は、4つの端面23と、4つの第1面取面24と、4つの第2面取面25とを含む。端面23は、第1主表面21及び第2主表面22に対して垂直である。第1面取面24は、第1主表面21と端面23の境界に形成される。第2面取面25は、第2主表面22と端面23の境界に形成される。第1面取面24及び第2面取面25は、本実施形態では、いわゆるC面取面であるが、R面取面であってもよい。
【0018】
基板2は、例えばガラス基板である。基板2のガラスは、TiO2を含有する石英ガラスが好ましい。石英ガラスは、一般的なソーダライムガラスに比べて、線膨張係数が小さく、温度変化による寸法変化が小さい。石英ガラスは、SiO2を80質量%~95質量%、TiO2を4質量%~17質量%含んでよい。TiO2含有量が4質量%~17質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。石英ガラスは、SiO2およびTiO2以外の第三成分又は不純物を含んでもよい。
【0019】
平面視にて基板2のサイズは、例えば縦152mm、横152mmである。縦寸法及び横寸法は、152mm以上であってもよい。
【0020】
基板2は、第1主表面21に中央領域27と周縁領域28とを有する。中央領域27は、その中央領域27を取り囲む矩形枠状の周縁領域28を除く、縦142mm、横142mmの正方形の領域であり、ステップS1~S4によって所望の平坦度に加工される領域であり、品質保証領域である。中央領域27の4つの辺は、4つの端面23に平行である。中央領域27の中心は、第1主表面21の中心に一致する。
【0021】
なお、図示しないが、基板2の第2主表面22も、第1主表面21と同様に、中央領域と、周縁領域とを有する。第2主表面22の中央領域は、第1主表面21の中央領域と同様に、縦142mm、横142mmの正方形の領域であって、
図1のステップS1~S4によって所望の平坦度に加工される領域であり、品質保証領域である。
【0022】
先ず、ステップS1では、基板2の第1主表面21及び第2主表面22を研磨する。第1主表面21及び第2主表面22は、本実施形態では不図示の両面研磨機で同時に研磨されるが、不図示の片面研磨機で順番に研磨されてもよい。ステップS1では、研磨パッドと基板2の間に研磨スラリーを供給しながら、基板2を研磨する。
【0023】
研磨パッドとしては、例えばウレタン系研磨パッド、不織布系研磨パッド、又はスウェード系研磨パッドなどが用いられる。研磨スラリーは、研磨剤と分散媒とを含む。研磨剤は、例えば酸化セリウム粒子である。分散媒は、例えば水又は有機溶剤である。第1主表面21及び第2主表面22は、異なる材質又は粒度の研磨剤で、複数回研磨されてもよい。
【0024】
なお、ステップS1で用いられる研磨剤は、酸化セリウム粒子には限定されない。例えば、ステップS1で用いられる研磨剤は、酸化シリコン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、ダイヤモンド粒子、又は炭化珪素粒子などであってもよい。
【0025】
次に、ステップS2では、基板2の第1主表面21及び第2主表面22の表面形状を測定する。表面形状の測定には、例えば、表面が傷付かないように、レーザ干渉式等の非接触式の測定機が用いられる。測定機は、第1主表面21の中央領域27、及び第2主表面22の中央領域の表面形状を測定する。
【0026】
次に、ステップS3では、ステップS2の測定結果を参照し、平坦度を向上すべく、基板2の第1主表面21及び第2主表面22を局所加工する。第1主表面21と第2主表面22は、順番に局所加工される。その順番は、どちらが先でもよく、特に限定されない。局所加工の方法は、例えばGCIB(Gas Cluster Ion Beam)法、又はPCVM(Plasma Chemical Vaporization Machining)法である。局所加工の方法は、磁性流体による研磨法、又は回転研磨ツールによる研磨法等であってもよい。
【0027】
次に、ステップS4では、基板2の第1主表面21及び第2主表面22の仕上げ研磨を行う。第1主表面21及び第2主表面22は、本実施形態では不図示の両面研磨機で同時に研磨されるが、不図示の片面研磨機で順番に研磨されてもよい。ステップS4では、研磨パッドと基板2の間に研磨スラリーを供給しながら、基板2を研磨する。研磨スラリーは、研磨剤を含む。研磨剤は、例えばコロイダルシリカ粒子である。
【0028】
次に、ステップS5では、基板2の第1主表面21の中央領域27に、
図4に示す導電膜5を形成する。導電膜5は、反射型マスクを露光装置の静電チャックに吸着するのに用いられる。導電膜5は、例えば窒化クロム(CrN)などで形成される。導電膜5の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0029】
次に、ステップS6では、基板2の第2主表面22の中央領域に、
図4に示す多層反射膜3を形成する。多層反射膜3は、EUVを反射する。多層反射膜3は、例えば高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層は例えばシリコン(Si)で形成され、低屈折率層は例えばモリブデン(Mo)で形成される。多層反射膜3の成膜方法としては、例えばイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法が用いられる。
【0030】
最後に、ステップS7では、ステップS6で形成された多層反射膜3の上に、
図4に示す吸収膜4を形成する。吸収膜4は、EUVを吸収する。吸収膜4は、例えばタンタル(Ta)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む単金属、合金、窒化物、酸化物、酸窒化物などで形成される。吸収膜4の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0031】
なお、ステップS6~S7は、本実施形態ではステップS5の後に実施されるが、ステップS5の前に実施されてもよい。
【0032】
上記ステップS1~S7により、
図4に示す反射型マスクブランク1が得られる。反射型マスクブランク1は、第1主表面11と、第1主表面11とは反対向きの第2主表面12とを有し、第1主表面11の側から第2主表面12の側に、導電膜5と、基板2と、多層反射膜3と、吸収膜4とをこの順番で有する。
【0033】
反射型マスクブランク1は、図示しないが、基板2と同様に、第1主表面11に中央領域と周縁領域とを有する。中央領域は、その中央領域を取り囲む矩形枠状の周縁領域を除く、縦142mm、横142mmの正方形の領域であり、品質保証領域である。また、反射型マスクブランク1は、基板2と同様に、第2主表面12にも中央領域と周縁領域とを有する。中央領域は、その中央領域を取り囲む矩形枠状の周縁領域を除く、縦142mm、横142mmの正方形の領域であり、品質保証領域である。
【0034】
なお、反射型マスクブランク1は、導電膜5と、基板2と、多層反射膜3と、吸収膜4とに加えて、別の膜を含んでもよい。
【0035】
例えば、反射型マスクブランク1は、更に、低反射膜を含んでもよい。低反射膜は、吸収膜4上に形成される。その後、低反射膜と吸収膜4の両方に、開口パターン41が形成される。低反射膜は、開口パターン41の検査に用いられ、検査光に対して吸収膜4よりも低反射特性を有する。低反射膜は、例えばTaONまたはTaOなどで形成される。低反射膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0036】
また、反射型マスクブランク1は、更に、保護膜を含んでもよい。保護膜は、多層反射膜3と吸収膜4との間に形成される。保護膜は、吸収膜4に開口パターン41を形成すべく吸収膜4をエッチングする際に、多層反射膜3がエッチングされないように、多層反射膜3を保護する。保護膜は、例えばRu、Si、またはTiO2などで形成される。保護膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0037】
図5に示すように、反射型マスクは、吸収膜4に開口パターン41を形成して得られる。開口パターン41の形成には、フォトリソグラフィ法およびエッチング法が用いられる。従って、開口パターン41の形成に用いられるレジスト膜が、反射型マスクブランク1に含まれてもよい。
【0038】
図6に、多層反射膜付き基板7を示す。以下、多層反射膜付き基板7を、単に基板7とも呼ぶ。基板7は、少なくとも基板2と多層反射膜3とを有する。反射型マスクの製造においては、多層反射膜3の上に吸収膜4を形成する前に、多層反射膜3の欠陥の位置を特定することが重要である。
【0039】
多層反射膜3の欠陥を修復したり除去したりすることは困難である。そこで、
図7に示すように、多層反射膜3の欠陥が吸収膜4で覆われるように、吸収膜4の開口パターン41を補正する技術が開発されている。この技術は、ミチゲーションと呼ばれる。
【0040】
基板7の欠陥は、振幅欠陥31と、位相欠陥32とに大別される。振幅欠陥31は、EUVの振幅を変化させてしまう。一方、位相欠陥32は、EUVの位相を変化させてしまう。振幅欠陥31は主に多層反射膜3の表面に形成されるのに対し、位相欠陥32は主に基板2の表面又は多層反射膜3の内部に形成される。振幅欠陥31と位相欠陥32とは、異なる深さに存在するので、異なる欠陥検査装置を用いて検出され、別々に設定される座標系の座標で位置を特定される。
【0041】
従来、一の座標系から他の座標系に欠陥の座標を変換する際に、誤差が生じることがあった。また、欠陥の検査は基板7の品質保証領域全体で行われるので、従来、検査時間の短縮と位置精度の向上とを両立することが困難であった。例えば、基板7の高速移動中に欠陥を撮像すれば、検査時間を短縮できるが、欠陥の位置精度が低下してしまう。一方、基板7の低速移動中、又は移動停止中に欠陥を撮像すれば、欠陥の位置精度を向上できるが、一度に検査できる領域が狭く、検査時間が長くなり過ぎる。
【0042】
次に、
図8~
図13を参照して、本実施形態に係る多層反射膜付き基板の検査方法について説明する。検査方法は、ステップS101~S104を有する。ステップS101とステップS102の順番は逆でもよく、ステップS102の後でステップS101が行われてもよい。
【0043】
先ず、ステップS101では、不図示の第1欠陥検査装置を用いて基板7を第1移動速度V1で移動させながら基板7を撮像することで、基板7に存在する振幅欠陥31を検出し、第1欠陥検査装置が基板7に設定した第1座標系における振幅欠陥31の座標を取得する。なお、基板7の移動中に基板7を撮像すればよく、振幅欠陥31の検出(画像処理)及び振幅欠陥31の座標の特定は基板7の移動中に行われなくてもよい。
【0044】
第1欠陥検査装置としては、市販の装置が用いられ、例えばレーザー検査装置などが用いられる。第1欠陥検査装置は、位相欠陥32よりも振幅欠陥31を検出するのに適している。但し、第1欠陥検査装置は、振幅欠陥31のみならず、位相欠陥32を検出することも可能である。
【0045】
第1欠陥検査装置は、例えば、検査ステージと、移動機構と、位置計測器と、照射器と、検出器と、画像処理装置と、を備える。検査ステージは、多層反射膜3を上に向けて、基板7を下方から水平に保持する。移動機構は、検査ステージを水平方向に移動させる。位置計測器は、検査ステージの位置を計測する。位置計測器は、例えばレーザー変位計などである。
【0046】
照射器は、検査ステージに保持された基板7に対して光を照射する。光の波長は、特に限定されないが、例えば193nm~532nmである。波長193nm~532nmの光は、多層反射膜3の表面を検査するのに適しており、振幅欠陥31を検出するのに適している。
【0047】
検出器は、照射器によって多層反射膜3に照射した光の反射光または散乱光を受光する。検出器は、複数の受光素子が行列状に並ぶエリアセンサであるが、複数の受光素子が一列に並ぶラインセンサ、又は単一の受光素子からなるセンサであってもよい。エリアセンサとして、例えばCCDイメージセンサ、又はCMOSイメージセンサが用いられる。単一の受光素子からなるセンサを用いる場合は、例えばガルバノミラーまたはポリゴンミラーにより照射器によって多層反射膜3に照射する光を走査し、その反射光または散乱光を、受光する。単一の受光素子として、例えばPMT(Photomultiplier Tube)、又はAPD(Avalanche Photodiode)が用いられる。
【0048】
画像処理装置は、検出器によって撮像した画像を処理し、振幅欠陥31を検出する。また、画像処理装置は、画像中の振幅欠陥31の座標と、画像を撮像した時の検査ステージの位置とから、基板7に設定した第1座標系における振幅欠陥31の座標を取得する。
【0049】
図9に示すように、第1座標系(XY座標系)の原点は、例えば基板7の品質保証領域77の中心に設定される。品質保証領域77は、例えば縦142mm、横142mmの正方形の領域であって、
図1のステップS1~S4によって所望の平坦度に加工される領域である。
【0050】
第1座標系は、2次元直交座標系である。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する方向であり、いずれも水平方向である。検出器を構成する複数の受光素子は行列状に並んでおり、例えば行方向がX軸方向であり、列方向がY軸方向である。なお、上記の通り、複数の受光素子は一列に並んでもいてもよい。また、照射器によって多層反射膜3に照射した光をX軸方向またはY軸方向に走査させれば、検出器は単一の受光素子であってもよい。
【0051】
画像処理装置は、検出器によって撮像した画像を処理し、基準マーク71を検出する。基準マーク71は、基板2又は多層反射膜3に形成される。画像処理装置は、基準マーク71を検出することで、品質保証領域77の中心を検出する。
【0052】
基準マーク71は、例えば品質保証領域77の外に形成される。基準マーク71の数は、
図9では4つであるが、2つ以上であればよい。基準マーク71の形状は、
図9では十字状であるが、十字状には限定されない。
【0053】
ステップS101では、検査ステージ及び基板7を第1移動速度V1で移動させながら基板7を撮像する。それゆえ、基板7を後述する第3移動速度V3(V3<V1)で移動させるか、移動停止させながら基板7を撮像する場合に比べて、品質保証領域77の全体を短時間で撮像でき、検査時間を短縮できる。ステップS101では、振幅欠陥31のおおよその座標を取得できる。
【0054】
第1移動速度V1は、例えば10mm/sec~1000mm/secであり、好ましくは50mm/sec~200mm/secである。また、第3移動速度V3は、例えば0mm/sec~50mm/secであり、好ましくは0mm/sec~10mm/secである。
【0055】
ステップS101で取得される画像の画素分解能は、後述するステップS104で取得される画像の画素分解能よりも低く、例えば50nm~1000nmであり、好ましくは50nm~400nmである。画素分解能とは、1つの受光素子によって撮像する対象物の実際の大きさ(X軸方向寸法又はY軸方向寸法)であり、X軸方向寸法とY軸方向寸法のうち最大値である。
【0056】
次に、ステップS102では、不図示の第2欠陥検査装置を用いて基板7を第2移動速度V2で移動させながら基板7を撮像することで、基板7に存在する位相欠陥32を検出し、第2欠陥検査装置が基板7に設定した第2座標系における位相欠陥32の座標を取得する。なお、基板7の移動中に基板7を撮像すればよく、位相欠陥32の検出(画像処理)及び位相欠陥32の座標の特定は基板7の移動中に行われなくてもよい。
【0057】
第2欠陥検査装置としては、市販の装置が用いられ、例えばレーザーテック社製のABI(Actinic Blank Inspection)装置などが用いられる。第2欠陥検査装置は、振幅欠陥31よりも位相欠陥32を検出するのに適している。但し、第2欠陥検査装置は、位相欠陥32のみならず、振幅欠陥31を検出することも可能である。
【0058】
第2欠陥検査装置は、第1欠陥検査装置と同様に、例えば、検査ステージと、移動機構と、位置計測器と、照射器と、検出器と、画像処理装置と、を備える。検査ステージは、多層反射膜3を上に向けて、基板7を下方から水平に保持する。移動機構は、検査ステージを水平方向に移動させる。位置計測器は、検査ステージの位置を計測する。位置計測器は、例えばレーザー変位計、又はレーザー干渉計などである。
【0059】
照射器は、検査ステージに保持された基板7に対して光を照射する。光の波長は、特に限定されないが、例えば10nm~20nmである。波長10nm~20nmの光は、多層反射膜3の内部を検査するのに適しており、位相欠陥32を検出するのに適している。
【0060】
検出器は、照射器によって多層反射膜3に照射した光の反射光または散乱光を受光する。検出器は、複数の受光素子が行列状に並ぶエリアセンサであるが、複数の受光素子が一列に並ぶラインセンサであってもよい。エリアセンサとして、例えばCCDイメージセンサ、又はCMOSイメージセンサが用いられる。
【0061】
画像処理装置は、検出器によって撮像した画像を処理し、位相欠陥32を検出する。また、画像処理装置は、画像中の位相欠陥32の座標と、画像を撮像した時の検査ステージの位置とから、基板7に設定した第2座標系における位相欠陥32の座標を取得する。
【0062】
図10に示すように、第2座標系(UV座標系)の原点は、例えば基板7の品質保証領域77の中心に設定される。第2座標系は、2次元直交座標系である。U軸方向とV軸方向は、互いに直交する方向であり、いずれも水平方向である。検出器を構成する複数の受光素子は行列状に並んでおり、例えば行方向がU軸方向であり、列方向がV軸方向である。なお、上記の通り、複数の受光素子は一列に並んでもいてもよい。
【0063】
画像処理装置は、検出器によって撮像した画像を処理し、基準マーク71を検出する。
【0064】
ステップS102では、検査ステージ及び基板7を第2移動速度V2で移動させながら基板7を撮像する。それゆえ、基板7を後述する第3移動速度V3(V3<V2)で移動させるか、移動停止させながら基板7を撮像する場合に比べて、品質保証領域77の全体を短時間で撮像でき、検査時間を短縮できる。ステップS102では、位相欠陥32のおおよその座標を取得できる。
【0065】
第2移動速度V2は、例えば10mm/sec~1000mm/secであり、好ましくは50mm/sec~200mm/secである。一方、第3移動速度V3は、上記の通り、例えば0mm/sec~50mm/secであり、好ましくは0mm/sec~10mm/secである。
【0066】
ステップS102で取得される画像の画素分解能は、後述するステップS104で取得される画像の画素分解能よりも低く、例えば100nm~1000nmであり、好ましくは100nm~500nmである。画素分解能とは、1つの受光素子によって撮像する対象物の実際の大きさ(U軸方向寸法又はV軸方向寸法)であり、U軸方向寸法とV軸方向寸法のうち最大値である。
【0067】
図11は、
図9に示す第1座標系の原点と
図10に示す第2座標系の原点を重ね合わせた図である。
図11において、破線は第1座標系を示し、実線は第2座標系を示す。第1座標系における基板7の輪郭と、第2座標系における基板7の輪郭とがずれている。また、第1座標系における基準マーク71と、第2座標系における基準マーク71とがずれている。
【0068】
ステップS103では、第1座標系から第2座標系に振幅欠陥31の座標を変換する座標変換を行う。座標変換は、例えば複数の基準マーク71を基に行われ、例えば第1座標系における基準マーク71が第2座標系における基準マーク71に一致するように第1座標系を平行移動したり、回転移動したり、拡大縮小したりすることで行われる。
【0069】
座標変換は、例えば、ヘルマート変換、アフィン変換、又は射影変換である。ヘルマート変換は、2つ以上の基準マーク71を基に行われる。アフィン変換は、3つ以上の基準マーク71を基に行われる。射影変換は、4つ以上の基準マーク71を基に行われる。
【0070】
なお、座標変換は、基準マーク71の代わりに、共通欠陥を用いて行われてもよい。共通欠陥とは、位相欠陥32であって且つ振幅欠陥31でもある欠陥のことである。共通欠陥は、ステップS101でもステップS102でも検出される。
【0071】
ステップS103によって、第1座標系から第2座標系に振幅欠陥31の座標を変換すれば、
図12に示すように、同じ1つの第2座標系で、振幅欠陥31の座標と、位相欠陥32の座標とを取得できる。
【0072】
ステップS104では、第2欠陥検査装置を用いて基板7を第3移動速度V3(V3<V1、V2)で移動させるか、移動停止させながら、第2座標系における振幅欠陥31と位相欠陥32の座標(例えば
図12に示す座標)を撮像し、振幅欠陥31と位相欠陥32の座標を再度取得する。これにより、座標変換によって生じた誤差を解消できる。また、ステップS104の前に振幅欠陥31と位相欠陥32のおおよその座標を特定済みであるので、基板7の低速移動中、又は移動停止中に撮像する画像の枚数を低減でき、検査時間を短縮できる。また、基板7の低速移動中、又は移動停止中に基板7を撮像するので、鮮明な画像を取得でき、精度の高い欠陥の座標を取得できる。
【0073】
ステップS104で取得される画像の画素分解能は、例えば5nm~100nmであり、好ましくは5nm~20nmである。画素分解能とは、1つの受光素子によって撮像する対象物の実際の大きさ(U軸方向寸法又はV軸方向寸法)であり、U軸方向寸法とV軸方向寸法のうち最大値である。
【0074】
なお、ステップS104では、ステップS102に比べて、単位面積当たりの光の積算照射量を上げてもよい。これにより、より鮮明な画像を取得でき、より精度の高い欠陥の座標を取得できる。単位面積当たりの光の積算照射量は、光源の出力、光の照射時間などで制御される。
【0075】
ところで、ステップS104の前に特定した振幅欠陥31と位相欠陥32の座標は、精度が低い。それゆえ、ステップS104において、ステップS104の前に特定した座標を撮像しても、振幅欠陥31又は位相欠陥32を検出できないことがありうる。この場合、ステップS104は、撮像する座標をずらして再度撮像を行うことを含む。例えば、既に撮像した範囲に隣接する範囲を再度撮像する。画像の撮り直しは、振幅欠陥31又は位相欠陥32が検出されるまで実行されてもよいし、予め定めた範囲で実行されてもよい。
【0076】
なお、本開示の検査方法は、上記の検査方法には限定されない。例えば、ステップS103では、第2座標系(UV座標系)から第1座標系(XY座標系)に位相欠陥32の座標を変換する座標変換を行ってもよい。この場合、ステップS104では、第1欠陥検査装置を用いて基板7を第3速度で移動させるか、移動停止させながら、第1座標系における振幅欠陥31と位相欠陥32の座標を撮像し、振幅欠陥31と位相欠陥32の座標を再度取得する。
【0077】
あるいは、ステップS103では、第1座標系(XY座標系)から第3座標系に振幅欠陥31の座標を変換すると共に、第2座標系(UV座標系)から第3座標系に位相欠陥32の座標を変換する座標変換を行ってもよい。第3座標系は、第1欠陥検査装置及び第2欠陥検査装置とは異なる第3欠陥検査装置が、基板7に設定する座標系である。
【0078】
この場合、ステップS104では、第3欠陥検査装置を用いて基板7を第3速度で移動させるか、移動停止させながら、第3座標系における振幅欠陥31と位相欠陥32の座標を撮像し、振幅欠陥31と位相欠陥32の座標を再度取得する。第3欠陥検査装置は、例えば、検査ステージと、移動機構と、位置計測器と、照射器と、検出器と、画像処理装置と、を備える。検査ステージは、多層反射膜3を上に向けて、基板7を下方から水平に保持する。移動機構は、検査ステージを水平方向に移動させる。位置計測器は、検査ステージの位置を計測する。位置計測器は、例えばレーザー変位計などである。
【0079】
照射器は、検査ステージに保持された基板7に対して光を照射する。光の波長は、特に限定されないが、例えば10nm~532nmである。光の波長は、10nm~20nmでもよいし、193nm~532nmでもよい。第3欠陥検査装置は、波長の異なる2つの光源を有してもよい。なお、第1欠陥検査装置と第2欠陥検査装置も、波長の異なる2つの光源を有してもよい。
【0080】
検出器は、照射器によって多層反射膜3に照射した光の反射光または散乱光を受光する。検出器は、複数の受光素子が行列状に並ぶエリアセンサであるが、複数の受光素子が一列に並ぶラインセンサであってもよい。エリアセンサとして、例えばCCDイメージセンサ、又はCMOSイメージセンサが用いられる。
【0081】
画像処理装置は、検出器によって撮像した画像を処理し、振幅欠陥31及び位相欠陥32を検出する。また、画像処理装置は、画像中の振幅欠陥31及び位相欠陥32の座標と、画像を撮像した時の検査ステージの位置とから、基板7に設定した第3座標系における振幅欠陥31及び位相欠陥32の座標を取得する。
【0082】
以上、本開示に係る多層反射膜付き基板の検査方法、及び反射型マスクブランクの製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0083】
2 基板
3 多層反射膜
4 吸収膜