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特許7589639トナー残量検出装置、および画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】トナー残量検出装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20241119BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03G15/08 322B
G03G21/00 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021083703
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177443
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井口 純宏
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-230318(JP,A)
【文献】特開2001-75351(JP,A)
【文献】特開平9-190067(JP,A)
【文献】特開2019-86598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーの補給経路に設けられる第1センサと、
前記第1センサが検出した静電容量と、判定閾値とを比較してトナーエンドを検出する検出処理部と、を備えるトナー残量検出装置であって、
前記補給経路とは異なる位置に設けられる第2センサと、
初期期間における前記第2センサの静電容量を初期基準データとして記憶するとともに、部品交換後における前記第2センサの静電容量を交換後基準データとして記憶するメモリと、を有し、
前記検出処理部は、
前記初期期間に、前記初期基準データに基づき初期の前記判定閾値を設定し、
前記部品交換後に、前記交換後基準データに基づき、前記初期の前記判定閾値から交換後の前記判定閾値に設定し直す
ことを特徴とするトナー残量検出装置。
【請求項2】
前記検出処理部は、前記初期の前記判定閾値の設定において、所定の静電容量値を前記初期基準データに加える
ことを特徴とする請求項1に記載のトナー残量検出装置。
【請求項3】
前記検出処理部は、前記交換後の前記判定閾値の設定において、前記初期基準データと前記交換後基準データの差分を算出し、前記差分を前記初期の判定閾値に加える
ことを特徴とする請求項2に記載のトナー残量検出装置。
【請求項4】
前記検出処理部は、前記初期期間における当該検出処理部の起動時に、前記初期の前記判定閾値を自動的に設定する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項5】
前記検出処理部は、前記部品交換後に、部品交換の情報を認識することに基づき、前記交換後の前記判定閾値を自動的に設定する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項6】
前記メモリは、前記検出処理部に対して取り出し可能な不揮発性メモリである
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項7】
前記第1センサは、前記補給経路の内周面において互いに対向する一対の検出用電極を有し、
前記第2センサは、前記一対の検出用電極と同じ形状且つ同じ間隔に配置される一対の基準用電極を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項8】
前記検出処理部は、前記初期期間に、前記第1センサにより検出した静電容量を、初期検出データとして前記メモリに記憶し、
前記第1センサの交換時に、前記初期基準データと前記初期検出データとに基づき、前記第1センサのキャリブレーションを行う
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項9】
トナーの補給経路に設けられる第1センサと、
前記第1センサが検出した静電容量と、判定閾値とを比較してトナーエンドを検出する検出処理部と、を備えるトナー残量検出装置を有する画像形成装置であって、
前記補給経路とは異なる位置に設けられる第2センサと、
初期期間における前記第2センサの静電容量を初期基準データとして記憶するとともに、部品交換後における前記第2センサの静電容量を交換後基準データとして記憶するメモリと、を有し、
前記検出処理部は、
前記初期期間に、前記初期基準データに基づき初期の前記判定閾値を設定し、
前記部品交換後に、前記交換後基準データに基づき、前記初期の前記判定閾値から交換後の前記判定閾値に設定し直す
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記初期期間は、前記画像形成装置の工場出荷から前記画像形成装置にトナーボトルがセットされるまでの期間である
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー残量検出装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、トナーの残量を検出するトナー残量検出装置を備えた装置が知られている。トナー残量検出装置は、補給経路に補給されるトナーの状態を検出し、トナーの補給量低下を示すトナーエンドを判定して、トナーボトルの交換をユーザに促す。
【0003】
特許文献1には、透磁率センサ等の検出センサの検出結果と、判定閾値(トナーエンプティー判定閾値)とを比較して、トナーエンドを判定する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、温湿度情報、出力ジョブの平均印字率情報、現像剤のライフ情報、交換可能なトナー収容容器内のトナー残量に応じて判定閾値の補正を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トナー残量検出装置は、コストダウンや省スペース化を図るために、検出センサとして静電容量センサを適用してもよい。静電容量センサは、トナーの補給経路上において相互に対向する一対の電極を有し、補給経路に貯まるトナーに応じた静電容量を検出する。しかしながら、この種の静電容量センサを適用した場合には、電極に対するトナーのこびりつき、部品交換時の部品バラつきによる誤差等により判定閾値がずれて、トナーエンドの判定が不正確になる場合がある。
【0005】
そこで、静電容量センサを用いた場合でも、判定閾値を精度よく設定して、トナーエンドを正確に検出することができるトナー残量検出装置、および画像形成装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るトナー残量検出装置は、トナーの補給経路に設けられる第1センサと、前記第1センサが検出した静電容量と、判定閾値とを比較してトナーエンドを検出する検出処理部と、を備えるトナー残量検出装置であって、前記補給経路とは異なる位置に設けられる第2センサと、初期期間における前記第2センサの静電容量を初期基準データとして記憶するとともに、部品交換後における前記第2センサの静電容量を交換後基準データとして記憶するメモリと、を有し、前記検出処理部は、前記初期期間に、前記初期基準データに基づき初期の前記判定閾値を設定し、前記部品交換後に、前記初期基準データおよび前記交換後基準データに基づき、前記初期の前記判定閾値から交換後の前記判定閾値に設定し直す。
【発明の効果】
【0007】
上述の構成を有するトナー残量検出装置および画像形成装置は、静電容量センサを用いた場合でも、判定閾値を精度よく設定して、トナーエンドを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るトナー残量検出装置および画像形成装置を示すブロック図である。
図2】ブラックのトナーを補給する構成およびトナー検出用静電容量センサを示す説明図である。
図3】トナー検出用静電容量センサの測定波形のイメージを示す図である。
図4】残量検出基板の機能ブロックを示す図である。
図5図5(a)は、初期の判定閾値の設定方法を示すフローチャートである。図5(b)は、交換後の判定閾値の設定方法を示すフローチャートである。
図6】交換後の判定閾値の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのトナー残量検出装置および画像形成装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るトナー残量検出装置1および画像形成装置100を示すブロック図である。トナー残量検出装置1は、画像形成装置100におけるトナー残量を検出する構成部分であり、画像形成装置100は、筐体内にトナー残量検出装置1を収容している。画像形成装置100は、目的の画像を印刷媒体に印刷するものであり、例えば、複写機、プリンタおよびファクシミリ等があげられる。
【0012】
画像形成装置100は、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを印刷媒体にそれぞれ付着させて、カラー画像を印刷媒体に形成する。あるいは、画像形成装置100は、1色(例えば、ブラック)のトナーを印刷媒体に付着するものでもよく、別の色数のトナーを印刷媒体に付着するものでもよい。印刷媒体は、特に限定されず、用紙またはプラスチックシート等のシート状部材があげられる。
【0013】
画像形成装置100は、表示操作部2、CTL(コントローラ)基板3、プロッタ制御基板4を有し、またトナー残量検出装置1の構成部品である残量検出基板10を有する。各基板は、互いに異なる部品であってもよく、適宜組み合わせることで一体化した部品であってもよい。
【0014】
表示操作部2は、画像形成装置100の状態を表示するとともに、サービスマンやユーザが直接操作する部品であり、例えば、タッチパネルを適用することができる。表示操作部2は、4色のトナーのうちいずれかがなくなった際に、トナー交換を促すメッセージを表示し、サービスマンまたはユーザに報知する。なお、表示操作部2は、表示部と操作部を別々に備えてもよい。
【0015】
CTL基板3は、1以上のインタフェース用プロセッサ(I/FCPU)30、入出力インタフェース、および電子回路等を有する。CTL基板3は、上記の表示操作部2、および画像形成装置100の外部接続装置102(例えば、パーソナルコンピュータ)に対して情報通信可能に接続される。画像形成装置100は、トナー残量検出装置1の出力情報(トナー残量、トナーの交換を促す情報等)を、CTL基板3を介して表示操作部2や外部接続装置102に送信する。
【0016】
プロッタ制御基板4は、1以上のプロッタ制御用プロセッサ(プロッタCPU)40、メモリ41、入出力インタフェース、および電子回路等を有する。メモリ41は、揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)、不揮発性メモリ410(FROM411(Flash Read Only Memory)、EEPROM412(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))を含み、プロッタ制御基板4の記憶部を形成している。プロッタ制御基板4は、画像形成装置100の画像の印刷を制御するためのプログラムをFROM411に記憶している。プロッタ制御用プロセッサ40は、FROM411からプログラムを読み出して実行することで、画像を形成する。
【0017】
EEPROM412は、プロッタ制御基板4に対して取り出し可能に設けられる。このEEPROM412には、画像形成装置100の固有情報(識別情報、各種の部品情報、印刷履歴、メンテナンス履歴、校正情報等)が記憶される。例えば、プロッタ制御基板4の故障時に、サービスマンは、EEPROM412を取り出して交換用のプロッタ制御基板4に取り付ける。これにより、交換用のプロッタ制御基板4は、画像形成装置100の固有情報を容易に取得することができる。
【0018】
また、画像形成装置100は、プロッタ制御基板4にスキャナ5を接続した構成でもよい。スキャナ5は、スキャナ制御部の制御下に、ユーザがスキャナ5にセットしたスキャナ画像を取り込む。プロッタ制御基板4は、スキャナ5から送信されたスキャナ画像の情報を、そのまま印刷することによりスキャナ画像をコピーする。なお、画像形成装置100は、CTL基板3にスキャナ5を接続した構成でもよい。
【0019】
そして、画像形成装置100は、上記のプロッタ制御基板4に対してトナー残量検出装置1を接続している。トナー残量検出装置1は、残量検出基板10と、4色のトナーの補給経路8(図2参照)にそれぞれ設けられるトナー検出用静電容量センサ15(第1センサ)と、1つの基準用静電容量センサ16(第2センサ)と、を有する。以下では、4色のトナーの構成を個別に説明する場合、必要に応じて、イエローのトナーに対応するものにY、マゼンタのトナーに対応するものにM、シアンのトナーに対応するものにC、ブラックのトナーに対応するものにKを付して説明する。すなわち、4つのトナー検出用静電容量センサ15は、イエロー用のトナー検出用静電容量センサ15Y、マゼンタ用のトナー検出用静電容量センサ15M、シアン用のトナー検出用静電容量センサ15C、ブラック用のトナー検出用静電容量センサ15Kからなる。
【0020】
残量検出基板10は、トナー残量の検出処理を行う検出処理部を形成している。残量検出基板10は、1以上の残量検出プロセッサ11、メモリ12、電源IC13、新品検出回路14、入出力インタフェース、および電子回路等を有する。
【0021】
残量検出プロセッサ11は、メモリ12に記憶された検出用プログラムを実行する残量検出基板10の処理本体であり、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせて構成される。
【0022】
メモリ12は、揮発性メモリ(RAM)、不揮発性メモリ120(FROM121、EEPROM122)を含み、残量検出基板10の記憶部を形成している。なお、メモリ12の一部は、残量検出プロセッサ11に内蔵されていてもよい。
【0023】
残量検出基板10は、上記の検出用プログラムをFROM121に記憶している。EEPROM122は、残量検出基板10に対して取り出し可能に設けられる。EEPROM122には、トナー残量検出装置1の固有情報(識別情報、各種の部品情報、トナー情報、校正情報等)が記憶される。例えば、残量検出基板10の故障時に、サービスマンは、EEPROM122を取り出して交換用の新しい残量検出基板10に取り付ける。これにより、交換用の残量検出基板10は、トナー残量検出装置1の固有情報を容易に取得することができる。
【0024】
電源IC13は、残量検出基板10の電源供給を行う。例えば、電源IC13は、残量検出プロセッサ11に動作用の電力を供給し、残量検出プロセッサ11は、各トナー検出用静電容量センサ15および基準用静電容量センサ16に対して静電容量を測定するための電力を印加する。
【0025】
新品検出回路14は、残量検出基板10の交換が生じた場合に、新しい残量検出基板10(新品状態)を検出する。一例として、新品検出回路14は、ヒューズを備え、残量検出基板10の使用中又は交換時に高電流を流してヒューズを遮断することで、新品状態から旧品状態に変更する。これにより、残量検出プロセッサ11は、新品検出回路14のヒューズが繋がっていること(部品交換の情報)を検出することで、残量検出基板10が新品状態であることを認識できる。
【0026】
4つのトナー検出用静電容量センサ15は、トナーの状態に応じた静電容量の変化を検出する。図2は、ブラックのトナーを補給する構成およびトナー検出用静電容量センサ15を示す説明図である。次に、図2を参照して、ブラックのトナーの補給およびトナーの状態検出について説明する。なお、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーの構成および動作は、ブラックのトナーと同様の構成および動作をとり得るため説明を省略する。
【0027】
画像形成装置100は、ブラックのトナーを補給する構成として、トナーボトル6と、トナー補給機構7と、補給経路8と、現像機9とを備える。
【0028】
トナーボトル6は、収容空間60を内部に有する円筒状に形成され、この収容空間60にトナーを収容している。トナーボトル6は、螺旋状の突起を内周面に備えるとともに、収容空間60からトナーを流出する流出口61を軸方向の一端部に備える。画像形成装置100のユーザは、トナー交換において、トナーボトル6のトナー補給機構7にセットする。画像形成装置100は、トナーボトル6のセット状態で、補給経路8の鉛直方向上側に流出口61を配置する。
【0029】
トナー補給機構7は、プロッタ制御基板4によって動作が制御されるモータを備え、セット状態のトナーボトル6を軸回りに回転させる。トナーボトル6は、トナー補給機構7の回転動作により、内部の螺旋状の突起が回転することで収容空間60内のトナーを流出口61に導き、流出口61から補給経路8にトナーを落とすことができる。
【0030】
補給経路8は、トナーの流通方向上流側である流出口61と、流通方向下流側である現像機9との間にあり、トナーの貯留およびトナーの送り出しを行う。補給経路8は、トナーの通路80aを有する通路用部材80により構成され、通路用部材80は、鉛直方向に延在する少なくとも一部に円管状部位801を有している。トナー残量検出装置1は、この円管状部位801にトナー検出用静電容量センサ15を備える。
【0031】
トナー検出用静電容量センサ15は、一対の検出用電極150、および各検出用電極150と残量検出基板10(残量検出プロセッサ11)とを接続する一対の電気配線151(図1参照)を有する。
【0032】
各検出用電極150は、金属板等の導電部材を通路80aの内周面に一致するように湾曲形成され、全体として半円筒状を呈している。一対の検出用電極150は、円管状部位801の通路80aに露出して、互いに非接触に対向しており、また互いの鉛直方向の長さが一致している。つまり、一対の検出用電極150は、トナーの通路80aを挟んだ状態で固定されていることで、通路80a内の静電容量の変化を定常的に捕捉する。なお、一対の検出用電極150は、半円筒状に限定されず、補給経路8の形状に応じて適宜の形状(平板状、円盤状等)を採ることが可能である。
【0033】
一対の電気配線151は、ハーネスまたは中継基板)等が適用される。残量検出プロセッサ11は、一対の電気配線151を介して、一対の検出用電極150間に適宜の電圧を印加し、この一対の検出用電極150間の静電容量の変化を検出する。なお、トナー検出用静電容量センサ15は、一対の検出用電極150に接続される検出回路を備え、残量検出プロセッサ11の指示に基づき検出回路が静電容量を測定して残量検出プロセッサ11に測定結果を送信する構成でもよい。また、トナー検出用静電容量センサ15は、一対の検出用電極150の一方を接地し、一対の検出用電極150の他方を残量検出プロセッサ11に接続した構成でもよい。
【0034】
現像機9は、補給経路8からトナーが流入する容器90と、容器内に設けられたモータ駆動機構と、を備える。容器90は、補給経路8に接続される流入口91を有する。現像機9は、トナーボトル6から補給経路8に落下して補給経路8に貯まったトナーを、モータ駆動機構の駆動下に、流入口91を介して容器90内に送り出す。すなわち、鉛直方向に延在する補給経路8内のトナーの貯留高さ(貯留状態、詰まり具合)は、トナーボトル6から供給されるトナーの補給量と、現像機9側へ送り出すトナーの送出量とのバランスによって変化する。
【0035】
残量検出プロセッサ11は、トナー検出用静電容量センサ15が測定した測定結果(静電容量の測定波形)を受信し、一対の検出用電極150間に存在しているトナーの量や空気の量を認識する。トナーボトル6内のトナーが空になると、トナーボトル6を回転しても補給経路8にトナーが落ちずに、補給経路8内のトナーが減少していく。したがって、残量検出プロセッサ11は、トナーボトル6の回転中におけるトナー検出用静電容量センサ15の測定結果に基づき、トナーボトル6によるトナーの補給量低下または補給量ゼロを示すトナーエンドを検出することができる。
【0036】
詳細には、残量検出プロセッサ11は、トナー検出用静電容量センサ15の測定結果と、判定閾値Thとを比較してトナーエンドを判定する。判定閾値Thは、補給経路8にトナーを補給する前に設定され、不揮発性メモリ410に記憶されている。
【0037】
図3は、トナー検出用静電容量センサ15の測定波形のイメージを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は静電容量の値である。次に図3を参照して、トナーの補給に伴うトナー検出用静電容量センサ15の静電容量の変化と、トナーエンドの検出について説明する。
【0038】
画像形成装置100では、工場の製品出荷から画像形成装置100にトナーボルトをセットするまでの初期期間(図3中の時点t0~t1)において、補給経路8に対するトナーのこびりつきがない。したがって、初期期間に画像形成装置100が起動した際に、残量検出プロセッサ11は、トナー検出用静電容量センサ15の測定結果として最も低い値を取得する。なお、トナー検出用静電容量センサ15の測定波形は、図3中に示すように、時間経過に伴って静電容量方向(縦軸)に小さな振幅を繰り返している。このため、残量検出プロセッサ11は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量の測定波形について、振幅の平均値(移動平均等)や中間値を算出し、静電容量の値としている。
【0039】
画像形成装置100は、ユーザによりトナーボルトがセットされた時点t1以降において、トナー補給機構7のトナーボルトの回転により、補給経路8内にトナーを補給していく。補給経路8内にトナーが詰まることで、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が上昇する。残量検出プロセッサ11は、この静電容量が判定閾値Th以上となることに基づき(時点t2参照)、トナー有状態を判定し、プロッタ制御用プロセッサ40にトナー有状態の情報を送信する。
【0040】
トナー有状態でトナーボトル6からトナーの補給を続けると、トナーの過補給による異常発生の可能性があるため、プロッタ制御用プロセッサ40は、トナー有状態において現像機9を動作させて、補給経路8から現像機9へのトナー送り出しを優先する。これにより、補給経路8内のトナーの貯留高さが徐々に下がり、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が低下していく(時点t3~時点t4参照)。
【0041】
トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が判定閾値Thを下回る時点t4において、残量検出プロセッサ11は、補給経路8内のトナーの貯留高さが低下したトナー無状態を判定する。ただし、補給経路8にはトナーが若干残留している(トナーのこびりつきが発生している)。よって仮に、一対の検出用電極150よりもトナーの貯留高さが低くなった時点t5においても、トナー検出用静電容量センサ15は、初期期間の静電容量より高い値を測定し続ける。
【0042】
プロッタ制御用プロセッサ40は、残量検出プロセッサ11からの送信情報がトナー無状態の場合に(例えば、時点t6において)、トナー補給機構7を動作させて、トナーボトル6から補給経路8にトナーを補給する。補給経路8内にトナーが詰まることで、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が上昇する。そして、残量検出プロセッサ11は、静電容量が判定閾値Th以上となることに基づき(時点t7参照)、トナー有状態を再び判定する。つまり、画像形成装置100は、残量検出プロセッサ11のトナー有状態またはトナー無状態の情報に基づき、トナーボトル6のトナーの補給または補給停止、現像機9によるトナーの送り出しまたは送り出し停止を制御する。
【0043】
画像形成装置100は、現像機9のトナーの付着による画像形成を継続し、トナーボトル6内のトナーが空になると、トナー補給機構7を動作させても補給経路8内にトナーを貯めることができなくなる。例えば、時点t8において、残量検出プロセッサ11は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が判定閾値Thを下回ることを判定する。さらに、残量検出プロセッサ11は、所定期間にわたって(時点t8から期間閾値を加えた時点t9を超えるまで)、静電容量が判定閾値Thを下回り続けることを判定すると、トナーボトル6の交換を促すトナーエンドを検出する。
【0044】
以上のように、画像形成装置100(トナー残量検出装置1)の判定閾値Thは、トナー補給機構7の動作や現像機9の動作を判断するためのトナー補給送出判定閾値と、トナーエンドを判定するためのトナーエンド判定閾値とを兼ねている。なお、トナー残量検出装置1は、トナー補給送出判定閾値とトナーエンド判定閾値を別に有していてもよい。この場合でも、トナー補給送出判定閾値およびトナーエンド判定閾値の設定には、後述する判定閾値Thの設定方法を適用することができる。
【0045】
図1および図2に戻り、次に判定閾値Thの設定方法について説明する。画像形成装置100が補給経路8にトナーを一度でも補給すると、補給経路8へのトナーのこびりつきが発生してしまう。このため、トナー残量検出装置1は、初期期間の起動時に、各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量に基づき判定閾値Thを設定する。初期期間は、工場出荷から画像形成装置100にトナーボトル6がセットされるまでの期間である。
【0046】
ただし、画像形成装置100のメンテナンス等により、トナー残量検出装置1の部品が交換された場合、電子部品(残量検出プロセッサ11、電源IC13等)の部品バラつきにより各トナー検出用静電容量センサ15の測定結果が交換前の測定結果と異なる可能性がある。したがって、トナー残量検出装置1は、基準用静電容量センサ16の静電容量の測定結果を用いて、判定閾値Thとして初期の判定閾値Th1および交換後の判定閾値Th2を各々設定する。
【0047】
具体的には、基準用静電容量センサ16は、一対の基準用電極160、および各基準用電極160と残量検出基板10(残量検出プロセッサ11)との間を接続する一対の電気配線161を有する。
【0048】
各基準用電極160は、各検出用電極150と同じ形状(半円筒状)を呈している。また、一対の基準用電極160は、一対の検出用電極150と同じ間隔で互いに非接触に対向している。つまり、一対の基準用電極160の検出仕様は、一対の検出用電極150による静電容量の検出仕様と同一に設定される。
【0049】
ただし、一対の基準用電極160の設置位置は、一対の検出用電極150の設置位置(トナーの補給経路8)と異なる位置となっている。例えば、トナー残量検出装置1は、通路用部材80の円管状部位801と同形状に形成された円管状ケースに一対の基準用電極160を固定して、画像形成装置100の内部構造(補給経路8)や外部に対し一対の基準用電極160を隔離している。また、トナー残量検出装置1は、好ましくは、一対の基準用電極160を、各トナーの補給経路8の周辺に備えることで、基準用静電容量センサ16の電気配線161の長さと、トナー検出用静電容量センサ15の電気配線151の長さとを略同じに設定している。
【0050】
このように構成された基準用静電容量センサ16は、トナーの補給経路8に設けられたトナー検出用静電容量センサ15とは異なり、トナーの影響を受けず、トナーのこびりつきによる静電容量の誤差成分を発生させない。
【0051】
なお、一対の検出用電極150と一対の基準用電極160は、互いに同じ形状および同じ間隔であることに限定されず、異なる形状や異なる間隔でもよい。基準用静電容量センサ16が検出した静電容量を基準データとし、一対の検出用電極150の静電容量の差分を算出および保有しておけば、その差分を利用して閾値設定やキャリブレーション処理を行うことができるからである。すなわち、トナー残量検出装置1は、基準用静電容量センサ16の静電容量を用いることで、判定閾値Thを精度よく設定するとともに、トナー検出用静電容量センサ15の経年変化やメンテナンスにおいてキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0052】
図4は、残量検出基板10の機能ブロックを示す図である。残量検出プロセッサ11は、FROM121の検出用プログラムを実行して、図4に示す機能ブロックを形成する。残量検出基板10の内部には、初期期間検出部110、部品交換時検出部111、部品交換認識部112、記憶部113、キャリブレーション部114、閾値設定部115、使用中検出部116、トナー残量判定処理部117が形成される。また、残量検出基板10は、EEPROM122の記憶領域を記憶部113として利用する。
【0053】
初期期間検出部110は、初期期間(工場の製品出荷からトナーボトル6のセットまでの間)に、各トナー検出用静電容量センサ15により静電容量を測定し、基準用静電容量センサ16により静電容量を測定する。そして、初期期間検出部110は、各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量を初期検出データPDとして記憶部113に記憶するとともに、基準用静電容量センサ16の静電容量を初期基準データPSとして記憶部113に記憶する。
【0054】
一方、部品交換時検出部111は、サービスマンによるトナー残量検出装置1の部品交換後に、部品交換認識部112による部品交換指令に基づき、基準用静電容量センサ16により静電容量を測定する。この実施形態における「部品交換」としては、残量検出基板10の交換、残量検出基板10内の電子部品の交換、検出用電極150の交換、あるいは電気配線151の交換があげられる。
【0055】
部品交換時検出部111は、部品交換認識部112の部品交換指令に基づき、基準用静電容量センサ16の測定を行うと、測定した静電容量を、交換後基準データCSとして記憶部113に記憶する。
【0056】
部品交換認識部112は、トナー残量検出装置1の部品交換を適宜の認識手段により認識する。例えば、残量検出基板10の基板交換の認識手段としては、以下の第1手段または第2手段があげられる。
第1手段:サービスマンが、トナー残量検出装置1の部品交換時に、表示操作部2に部品交換した旨の情報入力を行うことで、画像形成装置100が残量検出プロセッサ11に部品交換情報を送信する。
第2手段:ヒューズの繋がりによる新品検出回路14が通電することを、残量検出プロセッサ11が認識することで、部品交換を識別する。
【0057】
また、部品交換認識部112は、残量検出基板10以外の部品交換についても、第1手段や第2手段と同様の認識手段(サービスマンの入力、新品検出時に通電を行うことによる反応)に基づいて認識することができる。なお、残量検出基板10を交換する場合、サービスマンは、交換前の残量検出基板10のEEPROM122を取り外して、当該EEPROM122を交換予定の残量検出基板10に取り付ける。これにより、残量検出プロセッサ11は、EEPROM122に記憶された交換前のトナー残量検出装置1の情報を簡単に利用することができる。
【0058】
キャリブレーション部114は、初期期間において、初期検出データPDと初期基準データPSとの初期差分を算出し、この初期差分を記憶部113に記憶する。つまり、トナー残量検出装置1は、初期基準データPS(基準用静電容量センサ16の静電容量)に対する各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量のずれを予め記憶する。これにより、キャリブレーション部114は、例えば、トナー検出用静電容量センサ15の交換時等に、初期差分を用いてトナー検出用静電容量センサ15のキャリブレーションを行うことができる。
【0059】
閾値設定部115は、初期基準データPSが記憶部113に記憶されたタイミングで、記憶部113の初期基準データPSを読み出して判定閾値Thを設定する。閾値設定部115は、例えば、初期基準データPS(基準用静電容量センサ16の静電容量)に所定の静電容量値Xを加えることで、判定閾値Thを算出する。所定の静電容量値Xは、シミュレーションや実験等により予め算出され、記憶部113に記憶されている。そして、閾値設定部115は、算出した初期の判定閾値Th1を記憶部113に記憶する。
【0060】
また、閾値設定部115は、交換後基準データCSが記憶部113に記憶されると、記憶部113の初期基準データPSと交換後基準データCSを読み出して、判定閾値Thを再設定する。上記したように、トナー残量検出装置1の部品交換として、例えば、残量検出基板10を交換した場合には、電子部品(残量検出プロセッサ11、電源IC13等)の部品バラつきが生じる可能性がある。このため、閾値設定部115は、初期基準データPS(基準用静電容量センサ16の静電容量)と交換後基準データCSとの差分ΔSを算出し、交換後の判定閾値Th2の算出において、その差分ΔSを初期の判定閾値Th1に加える。これにより、閾値設定部115は、部品交換による電子部品の部品バラつきを抑制することができる。
【0061】
使用中検出部116は、画像形成装置100による印刷媒体への画像形成時に、各トナー検出用静電容量センサ15の測定を行い、各トナー検出用静電容量センサ15の測定結果を取得する。使用中検出部116は、取得した各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量をメモリ12(揮発性メモリ等)に記憶するとともに、トナー残量判定処理部117に送信する。
【0062】
トナー残量判定処理部117は、使用中検出部116から受信した各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量に基づき、トナー残量を認識する。図3を参照して説明したように、トナー残量判定処理部117は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が判定閾値Th(初期の判定閾値Th1、交換後の判定閾値Th2)以上であれば、トナー有状態を判定する。そして、トナー残量判定処理部117は、トナー有状態をプロッタ制御基板4に送信する。一方、トナー残量判定処理部117は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が判定閾値Thを下回る場合に、トナー無状態を判定し、このトナー無状態をプロッタ制御基板4に送信する。これにより、プロッタ制御基板4のプロッタ制御用プロセッサ40は、トナー残量検出装置1から送信されたトナー有状態又はトナー無状態に基づき、トナー補給機構7や現像機9の動作を制御する。
【0063】
さらに、トナー残量判定処理部117は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が所定期間にわたって判定閾値Th(初期の判定閾値Th1、交換後の判定閾値Th2)を下回った場合に、トナーボトル6の交換を促すトナーエンドを判定する。トナー残量判定処理部117は、トナーエンドを判定すると、トナーエンドを示す情報をCTL基板3またはプロッタ制御基板4に送信する。これにより、CTL基板3またはプロッタ制御基板4は、表示操作部2または外部接続装置102を介して、トナーの交換を促す旨の情報をユーザに報知する。
【0064】
一実施形態に係るトナー残量検出装置1および画像形成装置100は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、トナー残量検出装置1の判定閾値Thの設定方法について説明する。
【0065】
図5(a)は、初期の判定閾値Th1の設定方法を示すフローチャートである。残量検出基板10は、上記したように、工場からの製品出荷からトナーボトル6がセットされる初期期間に、初期の判定閾値Th1を設定する。例えば、初期の判定閾値Th1を設定するタイミングとしては、製造後の起動確認時、工場からの製品出荷における検品時、画像形成装置100を使用場所に設置したタイミングにおける初回起動時等をあげることができる。
【0066】
残量検出基板10は、初期期間におけるトナー残量検出装置1の起動により、初期の判定閾値Th1の設定を自動的に開始する。この際、初期期間検出部110は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量(初期検出データPD)および基準用静電容量センサ16の静電容量(初期基準データPS)を測定する(ステップS10)。つまり、トナー検出用静電容量センサ15は、補給経路8にトナーを一度も通さない状態で静電容量を測定する。そして、初期期間検出部110は、取得した初期検出データPDおよび初期基準データPSを記憶部113(EEPROM122)に記憶する。なお、残量検出プロセッサ11は、初期検出データPDおよび初期基準データPSをプロッタ制御基板4のメモリ41(EEPROM412等)に保存してもよい。
【0067】
その後、閾値設定部115は、記憶部113の初期基準データPSおよび所定の静電容量値Xを読み出し、初期基準データPSに所定の静電容量値Xを加えることで、初期の判定閾値Th1を算出する(ステップS11)。
【0068】
そして、閾値設定部115は、算出した初期の判定閾値Th1を記憶部113(EEPROM122)に記憶する(ステップS12)。なお、残量検出プロセッサ11は、算出した初期の判定閾値Th1をプロッタ制御基板4のメモリ41(EEPROM412等)に保存してもよい。これにより、画像形成装置100は、EEPROM122の故障によるデータ消失を回避することができる。また、プロッタ制御基板4と残量検出基板10の両方にミラーリングした初期検出データPD、初期基準データPS、初期の判定閾値Th1等を持っておくことでも、故障した場合にケアすることができる。
【0069】
図3に示すように、基準用静電容量センサ16の静電容量に基づき設定された初期の判定閾値Th1は、初期期間に検出された各トナー検出用静電容量センサ15の静電容量に近似(略一致)している。すなわち、トナー残量検出装置1は、補給経路8にトナーを通過させていない初期期間において、各トナー検出用静電容量センサ15と基準用静電容量センサ16とは近似した静電容量を検出することで、初期の判定閾値Th1を適切に設定することができる。
【0070】
また、画像形成装置100は、初期期間以降の画像形成時に、各補給経路8にトナーを補給し、各補給経路8から現像機9に各トナーを送り出す。この際、トナー残量検出装置1は、各トナー検出用静電容量センサ15が測定する静電容量と、初期の判定閾値Th1とを比較して、各補給経路8のトナーの状態(トナー有状態、トナー無状態)を監視する。また、トナー残量検出装置1は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が初期の判定閾値Th1を所定期間下回った場合に、その色のトナーについてトナーエンドを精度よく判定することができる。
【0071】
図5(b)は、交換後の判定閾値Th2の設定方法を示すフローチャートである。残量検出基板10は、上記したように、トナー残量検出装置1の部品交換が行われた際に、交換後の判定閾値Th2を設定する。以下では、残量検出基板10を交換した場合について説明する。
【0072】
画像形成装置100のサービスマンは、残量検出基板10の交換において、交換前の残量検出基板10のEEPROM122を取り出して、交換予定の残量検出基板10に交換前のEEPROM122を取り付ける。サービスマンは、この交換予定の残量検出基板10を、画像形成装置100の所定位置(交換前の残量検出基板10の配置箇所)に設置する。
【0073】
その後、トナー残量検出装置1を起動すると、交換した残量検出基板10の残量検出プロセッサ11の部品交換認識部112は、基板交換を識別し、交換された部品を認識する(ステップS20)。
【0074】
次に、残量検出プロセッサ11の部品交換時検出部111は、部品交換認識部112の部品交換指令に基づき、自動的に、基準用静電容量センサ16の静電容量(交換後基準データCS)を測定する(ステップS21)。そして、部品交換時検出部111は、取得した交換後基準データCSを記憶部113(EEPROM122)に記憶する。
【0075】
その後、閾値設定部115は、記憶部113の初期基準データPS、交換後基準データCS、所定の静電容量値Xを読み出し、これらのパラメータに基づき交換後の判定閾値Th2を算出する(ステップS22)。具体的には、図6(a)に示すように、閾値設定部115は、初期基準データPSに対する交換後基準データCSの変化量である差分ΔSを算出する。差分ΔSは、符号を有する実数(非絶対値)であり、図6は初期基準データPSに対して交換後基準データCSが大きい場合である正の差分ΔSを例示している。さらに、図6(b)に示すように、閾値設定部115は、算出した差分ΔSを、初期の判定閾値Th1に加えることで、交換後の判定閾値Th2を算出する。つまり、閾値設定部115は、初期の判定閾値Th1を交換後基準データCSにより補正して、交換後の判定閾値Th2を設定する。
【0076】
そして、閾値設定部115は、算出した交換後の判定閾値Th2を記憶部113(EEPROM122)に記憶する(ステップS23)。
【0077】
これにより、トナー残量検出装置1は、基板交換により残量検出プロセッサ11、電源IC13等の部品バラつきがあったとしても、交換後の判定閾値Th2を適切に調整することができる。例えば、基準用静電容量センサ16の静電容量のマージンとして30cnt(C=12fF)である場合に、部品バラつきにより一対の基準用電極160に印加する電圧が0.1V変動すると100cntずれることになる。これに対して、残量検出プロセッサ11は、初期基準データPSと交換後基準データCSを用いることで、このようなずれによる判定閾値Thの変化を高精度に補正することができる。
【0078】
したがって、部品交換以降の画像形成装置100の画像形成時に、トナー残量検出装置1は、各トナー検出用静電容量センサ15が測定する静電容量と、交換後の判定閾値Th2とを比較して、各補給経路8のトナーの状態を良好に監視することができる。また、トナー残量検出装置1は、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量が交換後の判定閾値Th2を所定期間下回った場合に、その色のトナーについてトナーエンドを精度よく判定することが可能となる。
【0079】
なお、残量検出基板10は、交換後の判定閾値Th2の算出について、交換後基準データCSと初期基準データPSの差分ΔSを初期の判定閾値Th1に加えることに限定されず、種々の設定方法を取り得る。例えば、残量検出基板10は、交換後基準データCSに所定の静電容量値Xを加えることで、交換後の判定閾値Th2を算出してもよい。
【0080】
以上のように、トナー残量検出装置1および画像形成装置100は、基準用静電容量センサ16(第2センサ)の静電容量を用いて判定閾値Thを設定することで、判定閾値Thを精度よく設定することができる。すなわち、補給経路8と異なる位置にある基準用静電容量センサ16は、トナーの影響を受けない測定結果を残量検出基板10(検出処理部)に出力する。残量検出基板10は、初期期間の初期基準データPSに基づき初期の判定閾値Th1を設定し、部品交換後の交換後基準データCSに基づき交換後の判定閾値Th2を設定し直すことで、部品交換時の部品バラつきによる誤差を抑制することが可能となる。そして、残量検出基板10は、設定した判定閾値Th(初期の判定閾値Th1、交換後の判定閾値Th2)に基づき、トナーエンドを正確に検出することができる。
【0081】
また、残量検出基板10は、初期の判定閾値Th1の設定において、所定の静電容量値Xを初期基準データPSに加える。これにより、トナー残量検出装置1は、初期の判定閾値Th1を簡単に設定することができる。
【0082】
また、残量検出基板10は、交換後の判定閾値Th2の設定において、初期基準データPSと交換後基準データCSの差分ΔSを算出し、差分ΔSを初期の判定閾値Th1に加える。これにより、トナー残量検出装置1は、交換後の判定閾値Th2を精度よく設定することができる。
【0083】
また、初期期間は、工場出荷からトナーボトル6がセットされるまでの期間である。これにより、トナー残量検出装置1は、補給経路8にトナーを補給する前に、判定閾値Thを良好に設定することができる。
【0084】
また、残量検出基板10は、初期期間における当該残量検出基板10の起動時に、初期の判定閾値Th1を自動的に設定する。これにより、トナー残量検出装置1は、サービスマン又はユーザの作業負担を軽減して、初期の判定閾値Th1を円滑に設定することができる。
【0085】
また、残量検出基板10は、部品交換後に、部品交換の情報を認識することに基づき、交換後の判定閾値Th2を自動的に設定する。これにより、トナー残量検出装置1は、サービスマン又はユーザの作業負担を軽減して、交換後の判定閾値Th2を円滑に設定することができる。
【0086】
また、不揮発性メモリ120は、残量検出基板10に対して取り出し可能に設けられる。これにより、トナー残量検出装置1は、部品交換により基板を交換した場合でも、不揮発性メモリ120に記憶した情報を、容易に利用することができる。
【0087】
また、トナー検出用静電容量センサ15は、補給経路8の内周面において互いに対向する一対の検出用電極150を有し、基準用静電容量センサ16は、一対の検出用電極150と同じ形状且つ同じ間隔に配置される一対の基準用電極160を有する。これにより、トナー検出用静電容量センサ15の静電容量と基準用静電容量センサ16の静電容量が近似することになり、トナー残量検出装置1は、判定閾値Thを一層精度よく設定することができる。
【0088】
また、残量検出基板10は、初期期間に、トナー検出用静電容量センサ15により検出した静電容量を、初期検出データPDとして不揮発性メモリ120に記憶し、トナー検出用静電容量センサ15の交換時に、初期基準データPSと初期検出データPDとに基づき、トナー検出用静電容量センサ15のキャリブレーションを行う。これにより、トナー残量検出装置1は、トナー検出用静電容量センサ15を交換した場合でも、トナー検出用静電容量センサ15の検出精度を安定化させることができる。
【0089】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。また、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【符号の説明】
【0090】
1 トナー残量検出装置
10 残量検出基板
11 残量検出プロセッサ
12 メモリ
120 不揮発性メモリ
122 EEPROM
15 トナー検出用静電容量センサ
150 検出用電極
16 基準用静電容量センサ
160 基準用電極
2 表示操作部
3 CTL基板
4 プロッタ制御基板
5 スキャナ
6 トナーボトル
7 トナー補給機構
8 補給経路
80 通路用部材
80a 通路
801 円管状部位
9 現像機
100 画像形成装置
CS 交換後基準データ
PD 初期検出データ
PS 初期基準データ
Th 判定閾値
Th1 初期の判定閾値
Th2 交換後の判定閾値
X 所定の静電容量値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【文献】特開2011-215566号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6