(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】電極付き衣類
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20241119BHJP
A61B 5/27 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/27
(21)【出願番号】P 2022543216
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031431
(87)【国際公開番号】W WO2022038737
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆子
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸昭
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】都甲 浩芳
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534118(JP,A)
【文献】特表2017-538503(JP,A)
【文献】特開2017-121442(JP,A)
【文献】特開2018-038597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0087116(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の後身頃の裏地の左肩近傍に、被測定者の背中の左肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置される関電極と、
前記衣類の後身頃の裏地の右肩近傍に、前記被測定者の背中の右肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置される不関電極と、
前記関電極と前記不関電極、それぞれに接続する配線部と、
前記配線部に接続する制御部と
を備え、
前記関電極が、前記衣類の左肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記不関電極が、前記衣類の右肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、
前記関電極と前記不関電極とが、前記被測定者の鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、前記被測定者の鎖骨に重ならないように配置され
、前記制御部が、前記後身頃の裏地の中央に配置されることを特徴とする電極付き衣類。
【請求項2】
衣類の前身頃の裏地の左肩近傍に、被測定者の大胸筋の隆起箇所の斜面に接するように配置される関電極と、
前記衣類の前身頃の裏地の右肩近傍に、前記被測定者の大胸筋の隆起箇所の斜面に接するように配置される不関電極と、
前記関電極と前記不関電極、それぞれに接続する配線部と、
前記配線部に接続する制御部と
を備え、
前記関電極が、前記衣類の左肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記不関電極が、前記衣類の右肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、
前記関電極と前記不関電極の、前記被測定者の鎖骨に重なる部分が、前記被測定者の鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、非導電性の素材で覆われ
、前記制御部が、前記前身頃の裏地の中央に配置されることを特徴とする電極付き衣類。
【請求項3】
前記関電極および前記不関電極が、導電性接続部材を介して、前記配線部に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項
2に記載の電極付き衣類。
【請求項4】
前記関電極と前記不関電極との電位差を心電信号として取得することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の電極付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度で生体情報を取得する電極付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康・医療分野において、ウェアラブル生体電極(センサ)を用いて、日常の健康状態を計測する技術に関心がもたれている。とくに、心電信号(心電図)等を長期的に計測して解析することは、心臓病等の早期発見に有効であることが知られている。長期的な心電図等の計測において、ウェアラブル生体電極を装着した衣服(電極付き衣類)は、利用者(被測定者)が着用することにより日常容易に心電図等を計測できるので注目されている。(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】NTT技術ジャーナル「業界の垣根を超えて結実した ウェアラブルセンサ」 2014.5, p42-45.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胸郭・腹部・腋下・背中での心電信号等の生体信号の計測において、電極付き衣類を用いて心電信号等の計測精度を高めるためには、電極と体表面を密着させ着圧を高める必要がある。そこで、電極付き衣類の着圧が低いと、電極と体表面が密着せずノイズが発生して、高精度で生体信号を取得することが困難であるという問題があった。
【0005】
また、電極付き衣類は、上半身を強く締め付けて電極を体表面に密着させる機能又は器具を必要とする。その結果、電極付き衣類の構成が制限され、コストが増加することが問題となる。また、利用者が電極付き衣類を着用するときに圧迫感を受けることも問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る電極付き衣類は、衣類の後身頃の裏地の左肩近傍に、被測定者の背中の左肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置される関電極と、前記衣類の後身頃の裏地の右肩近傍に、前記被測定者の背中の右肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置される不関電極と、前記関電極と前記不関電極、それぞれに接続する配線部と、前記配線部に接続する制御部とを備え、前記関電極が、前記衣類の左肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記不関電極が、前記衣類の右肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記関電極と前記不関電極とが、前記被測定者の鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、前記被測定者の鎖骨に重ならないように配置され、前記制御部が、前記後身頃の裏地の中央に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電極付き衣類は、衣類の前身頃の裏地の左肩近傍に、被測定者の大胸筋の隆起箇所の斜面に接するように配置される関電極と、前記衣類の前身頃の裏地の右肩近傍に、前記被測定者の大胸筋の隆起箇所の斜面に接するように配置される不関電極と、前記関電極と前記不関電極、それぞれに接続する配線部と、前記配線部に接続する制御部とを備え、前記関電極が、前記衣類の左肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記不関電極が、前記衣類の右肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置され、前記関電極と前記不関電極の、前記被測定者の鎖骨に重なる部分が、前記被測定者の鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、非導電性の素材で覆われ、前記制御部が、前記前身頃の裏地の中央に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極と体表面との間の密着性を維持して高精度で心電信号などの生体情報を取得する電極付き衣類を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電極付き衣類の背面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電極の装着を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電極付き衣類により取得される心拍データある。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電極付き衣類の背面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る電極付き衣類の正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る電極の装着を説明するための図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第4の実施の形態に係る電極付き衣類の装着時の断面図である。
【
図7B】
図7Bは、従来の電極付き衣類の装着時の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態におけるコンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る付き衣類について、
図1~
図2を参照して説明する。
【0011】
<電極付き衣類の構成>
図1に、本実施の形態に係る電極付き衣類10の背面図を示す。電極付き衣類10は、衣類1と、関電極11と、不関電極12と、制御部13と、配線部14とを備える。
【0012】
衣類1は、襟口2から左側に、左肩3、左袖7、左袖の基端に左袖山5を有し、襟口2から右側に、右肩4、右袖8、右袖の基端に右袖山6を有する。
【0013】
また、衣類1は、シャツ、Tシャツ、トレーニングウェア等であり、ポリエステルや綿など、Tシャツなどの一般的な下着素材が用いられる。
【0014】
関電極11と不関電極12は、心電信号を取得するための電極であり、それぞれ衣類1の裏地に固定され、人体の皮膚に接して心電信号を取得する。ここで、心臓に近い左側に関電極11が配置され、右側に不関電極12が配置される。
【0015】
関電極11は、衣類1の後身頃で、左肩3の中央部近傍、換言すれば襟口2の左側と左袖山5の中間点近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置される。詳細には、左肩3において左袖山5から5cm程度離れた位置から略鉛直方向の下方に向けて配置される。
【0016】
不関電極12は、衣類1の後身頃で、右肩4の中央部、換言すれば襟口2の右側と右袖山6の中間点近傍から鉛直方向の下方に向けて配置される。詳細には、右肩4において右袖山6から5cm程度離れた位置から略鉛直方向の下方に向けて配置される。
【0017】
関電極11と不関電極12の大きさは、5cm~7cm程度の長さ、2cm程度の幅である。また、本実施の形態では、関電極11と不関電極12は衣類1において左右対称に配置する例を示したが、左右対称でなくてもよい。
【0018】
関電極11と不関電極12には、導電性の繊維状の材料が用いられる。導電性の繊維状の材料として、例えば、導電性を有する高分子や金属を含む繊維材料、例えば繊維に金属をメッキや蒸着などにより成膜した材料や繊維に金属糸を編み込んだ材料を用いることができる。金属には、銀(Ag)やアルミニウム(Al)などを用いることができる。
【0019】
また、関電極11と不関電極12は、衣類1に縫い付けたり接着したりすることで、衣類1に固定される。
【0020】
関電極11と不関電極12は、それぞれ配線部14を介して、制御部13に電気的に接続される。ここで、配線部14には、材料として、関電極11と不関電極12と同様に、導電性の繊維状の材料が用いられる。
【0021】
制御部13には、関電極11と不関電極12との間の電位差として取得される心電信号が伝達される。制御部13に電源を備えてもよい。
【0022】
この構成により、関電極11と不関電極12において取得される心電信号は、配線部14を介して、制御部13に伝達される。伝達される心電信号は、制御部13に記憶部を備えて、記憶部に記憶されてもよい。または、伝達される心電信号は、制御部13に送信部を備えて、スマートフォンやサーバに送信され、信号処理、記憶されてもよい。
【0023】
図2に、利用者(被測定者)が本実施の形態に係る電極付き衣類10を着用するときの態様における左側面
図101と背面
図102を示す。
【0024】
本実施の形態に係る電極付き衣類10を着用すれば、シャツなどの衣類1の自重15により利用者(被測定者)の姿勢に依存せず、関電極11と不関電極12が体表面に密着するので、密着性の低いシャツ等の衣類を着用して着圧の低い状態でも良好に心電信号を取得することができる。
【0025】
詳細には、本実施の形態に係る電極付き衣類10を利用者(被測定者)9が着用するとき、関電極11は、背中側の体表面において、左肩近傍の鎖骨の下の部分から左肩甲骨の隆起箇所に向けて装着される。同様に、不関電極12は、背中側の体表面において、右肩近傍の鎖骨の下の部分から右肩甲骨の隆起箇所に向けて装着される。
【0026】
その結果、関電極11と不関電極12は、それぞれ左右の肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように装着されるので、衣類1の自重15により肩甲骨の隆起箇所に密着する。
【0027】
ここで、心電信号の取得において、鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、電極付き衣類10を着用したときに、関電極11と不関電極12は、鎖骨に重ならないように鎖骨の下部の体表面から下方に向けて装着される。
【0028】
とくに、利用者の日常の歩行動作のように腕が前後に動くときに衣服(衣類)にシワができやすいので、従来技術では電極と体表面との密着性が低下するが、本実施の形態に係る電極付き衣類10では、関電極11と不関電極12が肩甲骨の隆起箇所に装着されるので、安定して密着性を維持できる。
【0029】
本実施の形態に係る電極付き衣類10を着用して心電図を計測した結果、
図3に示すように、関電極と不関電極を体表面に密着させて計測される心電図と同等の、雑音が少ない良好な心電図を計測することができる。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係る電極付き衣類10によれば、衣類1の自重15により関電極11と不関電極12を体表面に密着でき、高精度で低雑音の心電信号を取得することができる。
【0031】
また、上半身を強く締め付けて着圧を高める機構が必要ないので、簡易な構成で心電信号を低コストで取得できる。
【0032】
また、利用者(被測定者)は、本実施の形態に係る電極付き衣類10を簡単に、圧迫感を受けずに着用できる。
【0033】
本実施の形態では、関電極11と不関電極12が、衣類1の後身頃で、左右の肩の中央部近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置される例を示したが、これに限らない。関電極11は、衣類1の左肩3の近傍で、左肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置されればよい。また、不関電極12は、衣類1の右肩4の近傍で、右肩甲骨の隆起箇所の斜面に接するように配置されればよい。
【0034】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態に係る電極付き衣類は、第1の実施の形態に係る電極付き衣類と略同様の構成を有し、略同様の効果を奏するが、関電極と不関電極の配置が異なる。
【0035】
<電極付き衣類の構成>
図4に、本実施の形態に係る電極付き衣類20の背面図を示す。電極付き衣類20は、衣類1と、関電極21と、不関電極22と、制御部23と、配線部24とを備える。
【0036】
関電極21は、衣類1の後身頃で、左肩3近傍、詳細には、左肩3の下方2~3cm程度の部分を、襟口2の左側から左袖山5に向かう方向に配置される。
【0037】
不関電極22は、衣類1の後身頃で、右肩4近傍、詳細には、右肩4の下方2~3cm程度の部分を、襟口2の右側から右袖山6に向かう方向に配置される。
【0038】
本実施の形態に係る電極付き衣類20を着用すれば、シャツなどの衣類の自重15により利用者(被測定者)の姿勢に依存せず生体電極が体表面に密着するので、密着性の低いシャツ等の衣類を着用して着圧の低い状態でも良好に心電信号を取得することができる。
【0039】
詳細には、本実施の形態に係る電極付き衣類20を利用者(被測定者)が着用するとき、関電極21と不関電極22は、背中側の体表面で、上部僧帽筋において肩峰に向けて装着される。
【0040】
その結果、関電極21と不関電極22は、肩甲骨の隆起箇所(斜面)に接するように装着されるので、衣類1の自重15により肩甲骨の隆起箇所(斜面)に密着する。したがって、密着性の低いシャツ等の衣類を着用して着圧の低い状態でも良好に心電信号を取得することができる。
【0041】
さらに、第1の実施の形態に係る電極付き衣類10を着用する場合、ブラジャー等の下着の肩ストラップの上に関電極21と不関電極22が配置されると、良好に心電信号を取得することができない。
【0042】
一方、本実施の形態に係る電極付き衣類20を着用すれば、ブラジャー等の下着の肩ストラップの上を関電極21と不関電極22が横切るように配置されるので、電極は体表面と密着でき、良好に心電信号を取得できる。
【0043】
本実施の形態に係る電極付き衣類20を着用して心電図を計測した結果、関電極と不関電極を体表面に密着させて計測される心電図と同等の、雑音が少ない良好な心電図を計測することができる。
【0044】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態に係る電極付き衣類は、第1の実施の形態に係る電極付き衣類と略同様の構成を有し、略同様の効果を奏するが、関電極と不関電極とを、衣類の前身頃に配置する点で異なる。
【0045】
<電極付き衣類の構成>
図5に、本実施の形態に係る電極付き衣類30の正面図を示す。電極付き衣類30は、衣類1と、関電極31と、不関電極32と、制御部33と、配線部34とを備える。
【0046】
関電極31と不関電極32は、心電信号を取得するための電極であり、それぞれ衣類1の裏地に固定され、人体の皮膚に接して心電信号を取得する。ここで、心臓に近い左側に関電極31が配置され、右側に不関電極32が配置される。
【0047】
関電極31は、衣類1の前身頃で、左肩3の中央部近傍、換言すれば襟口2の左側と左袖山5の中間点近傍から略鉛直方向の下方に向けて配置される。詳細には、左肩3において左袖山5から5cm程度離れた位置から略鉛直方向の下方に向けて配置される。
【0048】
不関電極32は、衣類1の前身頃で、右肩4の中央部、換言すれば襟口2の右側と右袖山6の中間点近傍から鉛直方向の下方に向けて配置される。詳細には、右肩4において右袖山6から5cm程度離れた位置から略鉛直方向の下方に向けて配置される。
【0049】
関電極31と不関電極32の大きさは、5cm~7cm程度の長さ、2cm程度の幅である。また、本実施の形態では、関電極31と不関電極32は衣類1において左右対称に配置する例を示したが、左右対称でなくてもよい。
【0050】
また、関電極31と不関電極32は、衣類1に縫い付けたり接着したりすることで、衣類1に固定される。
【0051】
関電極31と不関電極32は、それぞれ配線部34を介して、制御部33に電気的に接続される。ここで、配線部34には、材料として、関電極31と不関電極32と同様に、導電性の繊維状の材料が用いられる。
【0052】
制御部33には、関電極31と不関電極32との間の電位差として取得される心電信号が伝達される。制御部33に電源を備えてもよい。
【0053】
この構成により、関電極31と不関電極32において取得される心電信号は、配線部34を介して、制御部33に伝達される。伝達される心電信号は、制御部33に記憶部を備えて、記憶部に記憶されてもよい。または、伝達される心電信号は、制御部33に送信部を備えて、スマートフォンやサーバに送信され、信号処理、記憶されてもよい。
【0054】
図6に、利用者(被測定者)が本実施の形態に係る電極付き衣類30を着用するときの態様における左側面
図301と正面
図302を示す。
【0055】
本実施の形態に係る電極付き衣類30を着用すれば、シャツなどの衣類1の自重35により利用者(被測定者)の姿勢に依存せず、関電極31と不関電極32が体表面に密着するので、密着性の低いシャツ等の衣類を着用して着圧の低い状態でも良好に心電信号を取得することができる。
【0056】
詳細には、本実施の形態に係る電極付き衣類30を利用者(被測定者)9が着用するとき、関電極31は、胸側の体表面において、左肩近傍の鎖骨の部分から左胸の大胸筋に向けて装着される。同様に、不関電極32は、胸側の体表面において、右肩近傍の鎖骨の部分から右胸の大胸筋に向けて装着される。
【0057】
その結果、関電極31と不関電極32は、それぞれ左右の大胸筋の隆起箇所の斜面に接するように装着されるので、衣類1の自重35により肩甲骨の隆起箇所に密着する。
【0058】
ここで、心電信号の取得において、鎖骨の動きに起因する雑音を回避するために、電極付き衣類30を着用したときに、関電極31と不関電極32の鎖骨に重なる部分を非導電性の素材で覆うことによって、雑音を回避することができる。
【0059】
また、利用者の日常の歩行動作のように腕が前後に動くときに衣服(衣類)にシワができやすいので、従来技術では電極と体表面との密着性が低下するが、本実施の形態に係る電極付き衣類30では、関電極31と不関電極32が大胸筋の隆起箇所に装着されるので、安定して密着性を維持できる。
【0060】
本実施の形態に係る電極付き衣類30を着用して心電図を計測した結果、関電極と不関電極を体表面に密着させて計測される心電図と同等の、雑音が少ない良好な心電図を計測することができる。
【0061】
とくに、本実施の形態に係る電極付き衣類30では、関電極31と不関電極32を、衣類1の前身頃に配置することで、後身頃に比べて大きな心電位を計測することができるため、より雑音に強い良好な心電信号を取得できる。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係る電極付き衣類30によれば、衣類1の自重35により関電極31と不関電極32を体表面に密着でき、高精度で低雑音の心電信号を取得することができる。
【0063】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態に係る電極付き衣類は、第1の実施の形態に係る電極付き衣類と略同様の構成を有し、略同様の効果を奏するが、関電極と不関電極の装着時の形態が異なる。
【0064】
図7Aに、第4の実施の形態に係る電極付き衣類40の装着時における関電極および不関電極の周辺の断面図を示す。
【0065】
断面図は、電極付き衣類40を装着するときの関電極および不関電極において肩3,4と平行な面での断面を示す。例えば、第1の実施の形態に係る電極付き衣類10の場合には幅方向の断面であり、第2の実施の形態に係る電極付き衣類20の場合には長さ方向の断面である。
【0066】
比較のために、
図7Bに、従来の電極付き衣類の装着時における関電極および不関電極の周辺の断面図を示す。
【0067】
電極付き衣類40において、衣類1の内面に配置された電線44が、接続部材45を介して関電極41および不関電極42に接続する。関電極41および不関電極42は利用者(被測定者)の皮膚に密着して心電信号が取得される。
【0068】
ここで、接続部材45は、導電性であり、例えば、スナップ、導電性の粘着テープ、導電性両面テープなどを用いることができる。接続部材45によって、関電極41および不関電極42を着脱可能にできる。
【0069】
利用者(被測定者)が電極付き衣類40を着用する際には、関電極41および不関電極42を配線部44から取り外しておき、ブラジャー等の下着の肩ストラップ92を衣類1の内側に配置した後に、接続部材45を用いて、肩ストラップ92を覆うように、関電極41および不関電極42を固定する。
【0070】
従来の電極付き衣類を装着する場合には、関電極41および不関電極42と利用者(被測定者)の皮膚との間に肩ストラップ92が配置されるので、関電極41および不関電極42を利用者(被測定者)の皮膚に密着させることができず、高精度で低雑音の心電信号を取得することができない。
【0071】
一方、本実施の形態に係る電極付き衣類40を装着する場合には、肩ストラップ92が、衣類1と関電極41および不関電極42との間に配置され、関電極41および不関電極42と利用者(被測定者)の皮膚との間にされないので、関電極41および不関電極42を利用者(被測定者)の皮膚に密着させることができ、高精度で低雑音の心電信号を取得することができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態に係る電極付き衣類40によれば、衣類1と関電極41および不関電極42との間に肩ストラップ92を通過させる構成により、関電極41および不関電極42と肩ストラップ92との干渉を回避できる。
【0073】
その結果、利用者(被測定者)がブラジャー等の下着を着用する場合でも、高精度で低雑音の心電信号を取得することができる。
【0074】
本実施の形態では、関電極41および不関電極42の固定にシームテープを用いてもよい。
【0075】
本実施の形態で示した構成は、第1~第3の実施の形態に係る電極付き衣類に用いることができる。
【0076】
図8に、本発明の実施の形態に係る電極付き衣類の制御部におけるコンピュータ50の構成例を示す。電極付き衣類の制御部は、CPU(Central Processing Unit)53、記憶装置(記憶部)52およびインタフェース装置51を備えたコンピュータ50と、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPU53は、記憶装置52に格納されたプログラムに従って本発明の実施の形態における処理を実行する。
【0077】
本発明の実施の形態に係る電極付き衣類の制御部では、コンピュータ50を制御部内部に備えてもよいし、コンピュータの機能の少なくとも1部を外部コンピュータを用いて実現してもよい。また、記憶装置も装置外部の記憶媒体55を用いてもよく、記憶媒体55に格納されたプログラムを読み出して実行してもよい。記憶媒体55には、各種磁気記録媒体、光磁気記録媒体、CD-ROM、CD-R、各種メモリを含む。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介してコンピュータに供給されてもよい。また、外部のコンピュータや記憶装置としてサーバやスマートフォン等を用いる場合には、制御部に送信機能を備えることにより、無線で心電信号などのデータを送信することもできる。
【0078】
本発明の実施の形態では、衣類は袖付きのシャツを示したが、袖無しのシャツでもよい。
【0079】
本発明の実施の形態では、電極付き衣類の構成などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。電極付き衣類の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、健康医療分野において、日常の生体情報のモニタリングに用いるウェアラブルデバイス・器具として適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 衣類(後身頃)
2 襟口
3 左肩
4 右肩
5 左袖山
6 右袖山
10 電極付き衣類
11 関電極
12 不関電極
13 制御部
14 配線部