(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】積層部材
(51)【国際特許分類】
C03C 27/00 20060101AFI20241119BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241119BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20241119BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241119BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20241119BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C03C27/00
C03C3/091
C03C3/097
C03C3/093
B32B18/00 B
B32B17/06
(21)【出願番号】P 2022576695
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001654
(87)【国際公開番号】W WO2022158457
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2021007287
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】塙 優
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 誠二
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087812(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/251247(WO,A1)
【文献】特開2018-203571(JP,A)
【文献】特開2008-199006(JP,A)
【文献】特開平03-088783(JP,A)
【文献】特開平08-083835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 1/00-14/00
C03C 27/00
C04B 37/00
C04B 37/04
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長850nmにおける直線透過率が80%以上であるガラス部材と、
前記ガラス部材上に樹脂を含む接合層と、
前記接合層上にSi-SiC部材と、を有する積層部材であって、
前記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO
2と、1.5~22.0モル%のAl
2O
3と、2.0~14.0モル%のB
2O
3と、0~5.0モル%のP
2O
5と、を含み、
前記SiO
2、前記Al
2O
3、前記B
2O
3および前記P
2O
5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、
前記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが、2.85~4.00ppm/℃であり、
前記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、
前記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αから前記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|が2.00ppm/℃以下である、積層部材。
【請求項2】
前記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、60.0~78.0モル%のSiO
2と、8.0~18.0モル%のAl
2O
3と、2.0~11.0モル%のB
2O
3と、0~3.0モル%のP
2O
5と、を含み、
前記SiO
2、前記Al
2O
3、前記B
2O
3および前記P
2O
5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、80.0~90.0%である、請求項1に記載の積層部材。
【請求項3】
前記ガラス部材中のROおよびZnOの含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、2.0~25.0%であり、
前記ガラス部材中のR
2Oの含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、0~15.0%である、請求項1または2に記載の積層部材。
【請求項4】
前記ガラス部材の平均線膨張係数βが、2.00~3.50ppm/℃であり、ヤング率が、40~120GPaであり、溶解温度が、1000~2000℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項5】
前記ガラス部材に含まれる前記B
2O
3の含有量が、8.5モル%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項6】
前記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、0~13.0モル%のNa
2Oを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項7】
前記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、0.0001~0.0115モル%のFe
2O
3を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項8】
前記ガラス部材の波長850nmにおける直線透過率が90%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項9】
前記ガラス部材の厚さが2~40mmであり、
前記Si-SiC部材の厚さが0.5~15mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項10】
前記Si-SiC部材の20℃における熱伝導率が130~300W/m・Kである、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項11】
前記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βが、前記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αよりも小さい、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項12】
前記Si-SiC部材のヤング率が300~420GPaである、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項13】
前記Si-SiC部材の金属Si含有比率が8~60質量%である、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項14】
前記樹脂の耐熱温度が120~420℃である、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項15】
前記接合層の20~200℃における平均線膨張係数γが2~200ppm/℃である、請求項1~14のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項16】
密度が2.40~2.85g/cm
3である、請求項1~15のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項17】
反り量が0.25mm以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項18】
前記Si-SiC部材の上に設けられる第2の接合層と、
前記第2の接合層を介して前記Si-SiC部材と接合される第2のSi-SiC部材と、をさらに有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の積層部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層部材および積層部材を構成するガラス部材に用いられるガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンは、作業台、加熱調理器などがワークトップで繋がっている。ワークトップの素材としては、ステンレス、人工大理石、セラミックス等が挙げられる。
【0003】
また、電子デバイスの電気的試験を行うための検査装置や試験装置において、電子デバイスを載せる載置台の素材として、ガラス等が用いられている。
【0004】
加熱調理器は、ワークトップに設けられた開口に組み込まれる。加熱調理器は、被加熱体(鍋等)を載置するトッププレートを備える。トッププレートの素材としては、結晶化ガラス(特許文献1参照)、セラミックス等が挙げられる。
【0005】
また、特許文献2や特許文献3には、電子デバイスの電気的特性を検査する検査装置や試験装置が開示されており、例えば特許文献2の検査装置における載置台は、セラミック、石英、ガラスで構成されたステージ蓋や冷却ユニットを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2012-148958号公報
【文献】国際公開第2018/100881号
【文献】日本国特開平9-298225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、デザイン性の点から、ワークトップとトッププレートとを同じ素材にすることの要望がある。そのため、加熱調理器や検査装置等のトッププレートに用いる加熱部材をワークトップに適用することが検討されている。
【0008】
ここで、トッププレートに用いる加熱部材は、温度を設定温度に対して所定の温度範囲内に制御すべく、急速に加熱できる構造と、電子デバイスを含む温度センサー部を保護するための冷却(吸熱)構造とを有することが求められる。そのため、当該加熱部材としては、温度上昇性および耐衝撃性に優れることが求められる。
【0009】
本発明者らが、従来の加熱部材として、ガラス部材、樹脂である接合層、および、Si-SiC部材を有する積層部材を評価したところ、温度上昇性および耐衝撃性に優れるものの、耐熱衝撃性については改善の余地があることを見出した。
【0010】
そこで、本発明は、温度上昇性、耐衝撃性および耐熱衝撃性に優れる積層部材および、当該積層部材を構成するガラス部材に用いられるガラス組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の直線透過率のガラス部材と、樹脂を含む接合層と、Si-SiC部材と、を有する積層部材であって、上記ガラス部材の組成が所定範囲内であり、上記Si-SiC部材の平均線膨張係数α、上記ガラス部材の平均線膨張係数β、及び、上記αとβとの差の絶対値(|α―β|)が所定範囲内であれば、温度上昇性、耐衝撃性および耐熱衝撃性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1]波長850nmにおける直線透過率が80%以上であるガラス部材と、
上記ガラス部材上に樹脂を含む接合層と、
上記接合層上にSi-SiC部材と、を有する積層部材であって、
上記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、
上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、
上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが、2.85~4.00ppm/℃であり、
上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、
上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αから上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|が2.00ppm/℃以下である、積層部材。
[2]上記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、60.0~78.0モル%のSiO2と、8.0~18.0モル%のAl2O3と、2.0~11.0モル%のB2O3と、0~3.0モル%のP2O5と、を含み、
上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、80.0~90.0%である、[1]に記載の積層部材。
[3]上記ガラス部材中のROおよびZnOの含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、2.0~25.0%であり、
上記ガラス部材中のR2Oの含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、0~15.0%である、[1]または[2]に記載の積層部材。
[4]上記ガラス部材の平均線膨張係数βが、2.00~3.50ppm/℃であり、ヤング率が、40~120GPaであり、溶解温度が、1000~2000℃である、[1]~[3]のいずれか1に記載の積層部材。
[5]上記ガラス部材に含まれる上記B2O3の含有量が、8.5モル%以下である、[1]~[4]のいずれか1に記載の積層部材。
[6]上記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、0~13.0モル%のNa2Oを含む、[1]~[5]のいずれか1に記載の積層部材。
[7]上記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、0.0001~0.0115モル%のFe2O3を含む、[1]~[6]のいずれか1に記載の積層部材。
[8]上記ガラス部材の波長850nmにおける直線透過率が90%以上である、[1]~[7]のいずれか1に記載の積層部材。
[9]上記ガラス部材の厚さが2~40mmであり、
上記Si-SiC部材の厚さが0.5~15mmである、[1]~[8]のいずれか1に記載の積層部材。
[10]上記Si-SiC部材の20℃における熱伝導率が130~300W/m・Kである、[1]~[9]のいずれか1に記載の積層部材。
[11]上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βが、上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αよりも小さい、[1]~[10]のいずれか1に記載の積層部材。
[12]上記Si-SiC部材のヤング率が300~420GPaである、[1]~[11]のいずれか1に記載の積層部材。
[13]上記Si-SiC部材の金属Si含有比率が8~60質量%である、[1]~[12]のいずれか1に記載の積層部材。
[14]上記樹脂の耐熱温度が120~420℃である、[1]~[13]のいずれか1に記載の積層部材。
[15]上記接合層の20~200℃における平均線膨張係数γが2~200ppm/℃である、[1]~[14]のいずれか1に記載の積層部材。
[16]密度が2.40~2.85g/cm3である、[1]~[15]のいずれか1に記載の積層部材。
[17]反り量が0.25mm以下である、[1]~[16]のいずれか1に記載の積層部材。
[18]上記Si-SiC部材の上に設けられる第2の接合層と、
上記第2の接合層を介して上記Si-SiC部材と接合される第2のSi-SiC部材と、をさらに有する、[1]~[17]のいずれか1に記載の積層部材。
[19]ガラス部材と、上記ガラス部材上に樹脂を含む接合層と、上記接合層上にSi-SiC部材、からなる積層部材において、上記ガラス部材に用いられるガラス組成物であって、
上記ガラス組成物は、波長850nmにおける直線透過率が80%以上であり、
上記ガラス組成物は、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、
上記ガラス組成物は、上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、
上記ガラス組成物は、20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、
上記ガラス組成物は、20~200℃における平均線膨張係数αが2.85~4.00ppm/℃であるSi-SiC部材を有する積層部材に用いられるものであり、上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αから上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|が2.00ppm/℃以下となるように用いられる、ガラス組成物。
[20]酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、
上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、
20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、
波長850nmにおける直線透過率が80%以上である、ガラス組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度上昇性、耐衝撃性および耐熱衝撃性に優れる積層部材、および当該積層部材を構成するガラス部材に用いられるガラス組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一態様の積層部材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
[積層部材]
本開示の積層部材は、波長850nmにおける直線透過率が80%以上であるガラス部材と、上記ガラス部材上に樹脂を含む接合層と、上記接合層上にSi-SiC部材と、を有し、上記ガラス部材が、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが2.85~4.00ppm/℃であり、上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αから上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|が2.00ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0017】
本開示の積層部材は、温度上昇性、耐衝撃性および耐熱衝撃性に優れる。この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、概ね以下の理由によるものと推測される。
【0018】
すなわち、波長850nmにおける直線透過率が80%以上であるガラス部材を用いることで、加熱利用に十分な赤外線が透過して、積層部材が高速で昇温したと推測される。
【0019】
また、樹脂を含む接合層を有することで、接合層が緩衝材として機能して、耐衝撃性が向上したと推測される。
【0020】
また、Si-SiC部材の平均線膨張係数α、ガラス部材の平均線膨張係数β、および絶対値|α-β|が上記範囲にあることで、樹脂を含む接合層との膨張係数差が小さくなるので、発生する応力が小さくなり、耐熱衝撃性が向上したと推測される。
【0021】
以下において、本発明の一態様の積層部材について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一態様の積層部材を模式的に示す断面図である。積層部材100は、ガラス部材101と、ガラス部材101上に配置された接合層103と、接合層103上に配置されたSi-SiC部材105と、を有する。積層部材100は、ガラス部材101と、接合層103と、Si-SiC部材105とが、この順に積層された積層構造を有する。
【0023】
〔Si-SiC部材〕
本発明の一態様において、Si-SiC部材とは、炭化ケイ素(SiC)とケイ素(Si)(金属Si)とを含む複合材料で構成された焼結部材を意味する。
【0024】
Si-SiC部材105は、Si-SiC部材の全質量に対して、40~92質量%のSiCと、8~60質量%のSiとを含むセラミックスであるのが好ましく、50~87質量%のSiCと、13~50質量%のSiとを含むセラミックスであるのがより好ましく、55~82質量%のSiCと、18~45質量%のSiとを含むセラミックスであるのがさらに好ましく、60~77質量%のSiCと、23~40質量%のSiとを含むセラミックスであるのが特に好ましく、65~72質量%のSiCと、28~35質量%のSiとを含むセラミックスであるのが最も好ましい。
【0025】
Si-SiC部材105のSiおよびSiCの含有率が上述の範囲であれば、Si-SiC部材105は熱的特性と機械的特性のバランスが優れる。
【0026】
Si-SiC部材105の組成は、SiCおよびSiを含んでいれば特に限定されず、焼結助剤を由来とする成分や微量の不純物(Fe等)等を含んでいてもよい。焼結助剤は、特に限定されないが、例えばBeO、B4C、BN、Al、及びAlNが挙げられる。
【0027】
Si-SiC部材105の厚さは、0.5~15mmが好ましい。Si-SiC部材105の厚さは、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。
【0028】
Si-SiC部材105の厚さは、10.0mm以下がより好ましく、7.5mm以下がさらに好ましく、5.5mm以下が特に好ましい。
【0029】
Si-SiC部材105は、ガラス部材101で支持されることで、薄くできる。Si-SiC部材105を薄くできるため、素早い昇降温が可能となる。
【0030】
Si-SiC部材105の厚さは、例えばノギスやデジタルメジャー等により測定できる。
【0031】
Si-SiC部材105の20~200℃における平均線膨張係数αは、2.85~4.00ppm/℃である。以下、Si-SiC部材105の20~200℃における平均線膨張係数αを、単に平均線膨張係数αとも呼ぶ。
【0032】
平均線膨張係数αは、2.90ppm/℃以上が好ましく、2.95ppm/℃以上がより好ましく、3.00ppm/℃以上が特に好ましい。
【0033】
平均線膨張係数αは、3.40ppm/℃以下が好ましく、3.20ppm/℃以下がより好ましく、3.10ppm/℃以下が特に好ましい。
【0034】
Si-SiC部材105の平均線膨張係数αが上述の範囲であれば、Si-SiC部材105とガラス部材101との平均線膨張係数を一致または近づけやすい。また、Si-SiC部材105の熱伝導率と強度を高くできるので、温度上昇速度を高めつつ、耐衝撃性も高めることができる。
【0035】
中でも、平均線膨張係数αが3.00~3.10ppm/℃であれば、Si-SiC部材の熱伝導率と強度のバランスがより優れる。
【0036】
平均線膨張係数αは、測定する温度範囲を20℃~200℃とした熱膨張計(Dilatometer)や、熱機械分析装置(TMA)により測定できる。
【0037】
Si-SiC部材105の平均線膨張係数αを上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0038】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率は、130~300W/m・Kが好ましい。
【0039】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率は、190W/m・K以上がより好ましく、210W/m・K以上がさらに好ましく、225W/m・K以上が特に好ましい。
【0040】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率は、270W/m・K以下がより好ましく、260W/m・K以下がさらに好ましく、250W/m・K以下が特に好ましい。
【0041】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率が上述の範囲であれば、加熱部材として均熱性が向上する。また、Si-SiC部材105の熱伝導率が上述の範囲であれば、Si-SiC部材105の製造時に熱伝導率がばらつくことによる歩留まりの低下を防ぐことができ、Si-SiC部材105の品質を安定させやすい。
【0042】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率は、例えばレーザーフラッシュ法等により測定できる。
【0043】
Si-SiC部材105の20℃における熱伝導率を上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0044】
Si-SiC部材105のヤング率は、300~420GPaが好ましい。Si-SiC部材105のヤング率は、320GPa以上がより好ましく、350GPa以上がさらに好ましく、370GPa以上が特に好ましい。
【0045】
Si-SiC部材105のヤング率は、410GPa以下がより好ましく、400GPa以下がさらに好ましく、390GPa以下が特に好ましい。
【0046】
ヤング率は低い方が、耐熱衝撃性が高い。Si-SiC部材105は、ヤング率が上記範囲を満たすことで、耐熱衝撃性が向上するため好ましい。また、Si-SiC部材105は、他の炭化ケイ素質のセラミックスに比べてヤング率が低いため、耐熱衝撃性が高く好ましい。
【0047】
Si-SiC部材105のヤング率は、日本工業規格(JIS R1602:1995)に記載された弾性率試験方法(超音波パルス法:動的弾性率)により20℃で測定できる。
【0048】
Si-SiC部材105のヤング率を上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0049】
Si-SiC部材105の曲げ強度は、130~300MPaが好ましい。Si-SiC部材105の曲げ強度は、200MPa以上がより好ましく、220MPa以上がさらに好ましく、230MPa以上が特に好ましい。
【0050】
Si-SiC部材105の曲げ強度は260MPa以下がより好ましく、250MPa以下がさらに好ましく、240MPa以下が特に好ましい。
【0051】
Si-SiC部材105の曲げ強度が上記範囲を満たすことで、落下物によるSi-SiC部材105ひいては積層部材100の割れを防止でき、耐衝撃性を高めることができる。
【0052】
Si-SiC部材105の曲げ強度は、日本工業規格(JIS R1601:2008)に記載された曲げ強さ試験方法(4点曲げ強さ)により20℃で測定できる。
【0053】
Si-SiC部材105のビッカース硬さ(Hv)は、20~27GPaが好ましい。
【0054】
ビッカース硬さは、21GPa以上がより好ましく、22GPa以上がさらに好ましく、23GPa以上が特に好ましい。
【0055】
ビッカース硬さは、26GPa以下がより好ましく、25GPa以下がさらに好ましく、24GPa以下が特に好ましい。
【0056】
Si-SiC部材105のビッカース硬さが上記範囲を満たすことで、Si-SiC部材105ひいては積層部材100の耐擦傷性が向上する。
【0057】
Si-SiC部材105のビッカース硬さは、ビッカース硬さ計システムにより20℃で測定できる。
【0058】
〔ガラス部材〕
ガラス部材101としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。また、ガラス部材101は、化学強化されたガラス(化学強化ガラス)、風冷等により物理強化されたガラス(物理強化ガラス)、結晶化処理を施したガラス(結晶化ガラス)であってもよい。
【0059】
以下、ガラス部材101のガラス組成について説明する。なお、本明細書におけるガラス組成(ガラス部材の対象成分の含有量)は、酸化物基準のモル百分率表示(モル%)で示す。
【0060】
ガラス部材101は、SiO2を含有する。SiO2は、ガラスの主成分である。
【0061】
SiO2の含有量は、ガラスの耐候性を高める点から、55.0モル%以上であり、57.0モル%以上が好ましく、60.0モル%以上がより好ましく、62.0モル%以上が特に好ましい。
【0062】
SiO2の含有量は、ガラスの溶解温度を低くして製造性を高める点から、85.0モル%以下であり、83.0モル%以下が好ましく、80.0モル%以下がより好ましく、78.0モル%以下が特に好ましい。
【0063】
ガラス部材101は、Al2O3を含有する。Al2O3を含有することで、ガラスの耐候性を高め、線膨張係数を低くできる。
【0064】
Al2O3の含有量は、ガラスのヤング率を高くできる点から、1.5モル%以上であり、3.0モル%以上が好ましく、5.0モル%以上がより好ましく、8.0モル%以上が特に好ましい。
【0065】
Al2O3の含有量は、ガラスの耐酸性を高める点から、22.0モル%以下である。また、ガラスの失透を抑制する(失透温度を低くできる)点、原料の未融物発生を抑制する点、および、ガラスの溶解温度の向上を抑制して清澄性を向上する点から、18.0モル%以下が好ましく、17.0モル%以下がより好ましく、16.0モル%以下が特に好ましい。
【0066】
ガラス部材101は、B2O3を含有する。B2O3を含有することで、ガラスの線膨張係数を調整できる。
【0067】
B2O3の含有量は、ガラスの線膨張係数を抑制する点から、2.0モル%以上であり、3.5モル%以上が好ましく、5.0モル%以上が特に好ましい。
【0068】
B2O3の含有量は、ガラスの耐候性を向上させる点から、14.0モル%以下である。また、ガラスのヤング率を高くできる点から、11.0モル%以下が好ましく、10.0モル%以下がより好ましく、8.5モル%以下がさらに好ましく、7.5モル%以下が特に好ましい。
【0069】
ガラス部材101は、ROを含有してもよいし、含有しなくてもよい。ROは、MgO、CaO、SrO、および、BaOのうちの少なくとも1種を意味する。ROの含有量は、MgO、CaO、SrO、および、BaOの合計量を表す。
【0070】
ROおよびZnOの含有量の合計は、ガラスの溶解温度を低くして溶解性を高め、線膨張係数を制御する点から、2.0モル%以上が好ましく、3.0モル%以上がより好ましく、4.0モル%以上がさらに好ましく、5.0モル%以上が特に好ましい。
【0071】
ROおよびZnOの含有量の合計は、ガラスの失透温度を低くして製造性を高め、線膨張係数を制御する点から、25.0モル%以下が好ましく、20.0モル%以下がより好ましく、16.0モル%以下がさらに好ましく、15.0モル%以下が特に好ましい。
【0072】
MgOは、ガラスの溶解温度を低くして溶解性を高め、線膨張係数を制御するために、含有させてもよい。
【0073】
MgOの含有量は、1.0モル%以上が好ましく、2.0モル%以上がより好ましく、2.5モル%以上がさらに好ましく、3.0モル%以上が特に好ましい。
【0074】
MgOの含有量は、ガラスの失透温度を低くして生産性を高め、線膨張係数を制御する点から、15.0モル%以下が好ましく、12.0モル%以下がより好ましく、10.0モル%以下がさらに好ましく、9.0モル%以下が特に好ましい。
【0075】
CaOは、ガラスの溶解温度を低くして溶解性を高め、線膨張係数を制御するために、含有させてもよい。
【0076】
CaOの含有量は、0.5モル%以上が好ましく、1.0モル%以上がより好ましい。
【0077】
CaOの含有量は、10.0モル%以下が好ましく、8.0モル%以下がより好ましい。
【0078】
SrOは、ガラスの溶解温度を低くして溶解性を高め、線膨張係数を制御するために含有させてもよい。
【0079】
SrOの含有量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましい。
【0080】
SrOの含有量は、5.0モル%以下が好ましく、3.0モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましい。
【0081】
BaOは、ガラスの溶解温度を低くして生産性を高め、線膨張係数を制御するために含有させてもよい。
【0082】
BaOの含有量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がさらに好ましい。
【0083】
BaOの含有量は、3.0モル%以下が好ましく、2.0モル%以下がより好ましい。
【0084】
なお、BaOは、意図的に含有させなくても石灰石やドロマイト、炭酸ストロンチウム等の原料や製造工程由来の不純物として混入することがある。
【0085】
ガラス部材101は、R2Oを含有してもよいし、含有しなくてもよい。R2Oは、Li2O、Na2O、および、K2Oのうちの少なくとも1種を意味する。R2Oの含有量は、Li2O、Na2O、および、K2Oの合計量を表す。
【0086】
R2Oは、ガラス原料の溶融を促進し、線膨張係数、溶解温度等を調整するのに有用な成分である。
【0087】
R2Oの含有量は、上記効果を良好に発揮するために、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。
【0088】
R2Oの含有量は、ガラスの線膨張係数を小さくして、温度変化の際に発生する応力を小さくできる点から、15.0モル%以下が好ましく、10.0モル%以下がより好ましく、6.0モル%以下がさらに好ましく、5.0モル%以下が特に好ましい。
【0089】
なお、Li2Oを含有しない場合のR2O、すなわちNa2OおよびK2Oの合計量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。
【0090】
Li2Oを含有しない場合のR2O、すなわちNa2OおよびK2Oの合計量は、線膨張係数を小さくする点から、13.0モル%以下が好ましく、10.0モル%以下がより好ましく、5.0モル%以下がさらに好ましく、3.0モル%以下が特に好ましい。
【0091】
Li2Oは、ガラス原料の溶融を促進し、線膨張係数、溶解温度等を調整するのに有用な成分である。
【0092】
Li2Oの含有量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。
【0093】
Li2Oの含有量は、ガラスの線膨張係数を小さくして、温度変化の際に発生する応力を小さくする点から、10.0モル%以下が好ましく、7.0モル%以下がより好ましく、5.0モル%以下がさらに好ましく、4.0モル%以下が特に好ましい。
【0094】
Na2Oは、ガラス原料の溶融を促進し、線膨張係数、溶解温度等を調整するのに有用な成分である。
【0095】
Na2Oの含有量は、0~13.0モル%が好ましい。
Na2Oの含有量は、0.01モル%以上がより好ましい。
Na2Oの含有量は、10.0モル%以下がより好ましく、5.0モル%以下がさらに好ましく、3.0モル%以下が特に好ましい。
Na2Oの含有量が13.0モル%以下であれば、ガラスの線膨張係数を小さくして、温度変化の際に発生する応力を小さくできる。
【0096】
K2Oは、ガラス原料の溶融を促進し、線膨張係数、溶解温度等を調整するのに有用な成分である。
【0097】
K2Oの含有量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。
【0098】
K2Oの含有量は、ガラスの線膨張係数を小さくして、高温に曝された際に発生する応力を小さくする点から、3.0モル%以下が好ましく、1.0モル%以下がより好ましく、0.1モル%以下がさらに好ましい。
【0099】
ガラス部材101は、ZrO2を含有してもよいし、含有しなくてもよい。ZrO2を含有する場合、ガラスの耐薬品性を向上できる。
【0100】
ZrO2の含有量は、上記効果を良好に発揮できる点から、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましい。
【0101】
ZrO2の含有量は、ガラスの失透温度を低くして生産性を高める点から、5.0モル%以下が好ましく、3.0モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましい。
【0102】
ガラス部材101は、TiO2を含有してもよいし、含有しなくてもよい。TiO2を含有する場合、ガラスの耐薬品性を向上できる。
【0103】
TiO2の含有量は、上記効果を良好に発揮できる点から、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましい。
【0104】
TiO2の含有量は、ガラスの失透温度を低くして生産性を高める点、不要な着色を抑制する点から、5.0モル%以下が好ましく、3.0モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましい。
【0105】
ガラス部材101は、P2O5を含有してもよいし、含有しなくてもよい。P2O5を含有する場合、ガラスの結晶化を抑制し、ガラスを安定化できる。
【0106】
P2O5の含有量は、0モル%以上である。また、上記効果を良好に発揮できる点から、0.05モル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましい。
【0107】
P2O5の含有量は、ガラスの溶解温度を高くしすぎることなくガラスを安定化できる点、および、ガラスの分相を抑制して、透明性を向上できる点から、5.0モル%以下であり、4.0モル%以下が好ましく、3.5モル%以下がより好ましく、3.0モル%以下が特に好ましい。
【0108】
ガラス部材101は、Fe2O3を含有してもよいし、含有しなくてもよい。Fe2O3を含有する場合、ガラスの色味を損なうことなく、ガラスの清澄性を改善させ、溶融炉の底素地の温度制御ができる。また、ガラス部材101の波長850nmにおける直線透過率を後述の範囲に調節することが容易になり、安定した製品を得ることができる。
【0109】
Fe2O3の含有量は、上記効果を良好に発揮できる点から、0.0001モル%以上が好ましく、0.0005モル%以上がより好ましく、0.0010モル%以上がさらに好ましい。
【0110】
Fe2O3の含有量は、ガラスの色味を維持させる点から、0.0115モル%以下が好ましく、0.0100モル%以下がより好ましく、0.0080モル%以下がさらに好ましく、0.0050モル%以下が特に好ましい。
【0111】
ガラス部材101は、ZnOを含有してもよいし、含有しなくてもよい。
ZnOの含有量は、0モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましく、0.5モル%以上が特に好ましい。
【0112】
ZnOの含有量は、ガラスの失透温度を低くして生産性を高める点から、15.0モル%以下が好ましく、12.0モル%以下がより好ましく、10.0モル%以下がさらに好ましく、8.0モル%以下が特に好ましい。
【0113】
ガラス部材101は、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の他の成分(例えば、TiO2、Y2O3、Gd2O3等)を含有してもよい。
他の成分の含有量の合計は、10.0モル%以下が好ましい。
【0114】
ガラス部材101は、ガラスの溶融の際の清澄剤として、硫酸塩、塩化物、フッ化物、ハロゲン化物、水酸化物、SnO2、Sb2O3、As2O3などを適宜含有してもよい。
【0115】
さらに、色味の調整のため、Ni、Co、Cr、Mn、V、Se、Au、Ag、Cdなどの着色成分を含有してもよい。
【0116】
また、積極的に着色させたい場合は、0.0001モル%以上の範囲で、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、V、Se、Au、Ag、Cdなどの着色成分を含有してもよい。
【0117】
なお、上記他の成分のうち、硫酸塩、塩化物、フッ化物、ハロゲン化物、水酸化物、SnO2、Sb2O3、およびAs2O3からなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合、これらの群の含有量の合計は、清澄性の点から、0.01モル%以上が好ましく、0.02モル%以上がより好ましく、0.05モル%以上がさらに好ましい。
【0118】
これら群の含有量の合計は、ガラス特性に影響を与えない点から、5.0モル%以下が好ましく、2.0モル%以下がより好ましく、1.0モル%以下がさらに好ましい。
【0119】
SiO2、Al2O3、B2O3およびP2O5は、ガラスの網目形成成分(ネットワークフォーマー)である。
【0120】
ガラス部材101中のSiO2、Al2O3、B2O3およびP2O5の含有量の合計は、ガラス構造の安定性、化学的耐久性を高める点から、70.0モル%以上であり、75.0モル%以上が好ましく、78.0モル%以上がより好ましく、80.0モル%以上が特に好ましい。
【0121】
SiO2、Al2O3、B2O3およびP2O5の含有量の合計は、ガラスの溶解温度の向上を抑制して清澄性を向上する点から、97.0モル%以下であり、95.0モル%以下が好ましく、93.0モル%以下がより好ましく、90.0モル%以下が特に好ましい。
【0122】
ガラス部材101のガラス組成の好適態様としては、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~14.5モル%のAl2O3と、3.0~14.0モル%のB2O3と、0~3.5モル%のP2O5と、を含み、ガラス部材101中のSiO2、Al2O3、B2O3およびP2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%である態様が挙げられる。これにより、ガラス特性がより優れる。
【0123】
ガラス部材101の厚さは、特に制限されず、Si-SiC部材105を支持できる厚さであればよい。ガラス部材101の厚さは、具体的には、2~40mmが好ましい。
【0124】
ガラス部材101の厚さは、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、10mm以上が特に好ましく、15mm以上が最も好ましい。
【0125】
ガラス部材101の厚さは、35mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましく、25mm以下が特に好ましい。
【0126】
ガラス部材101の厚さが上記範囲であれば、支持部材として十分な強度を維持できる。
【0127】
ガラス部材101の厚さは、例えば、ノギスやデジタルメジャー等により測定できる。
【0128】
ガラス部材101の20~200℃における平均線膨張係数βは、1.50~5.00ppm/℃である。以下、ガラス部材101の20~200℃における平均線膨張係数βを、単に平均線膨張係数βとも呼ぶ。
【0129】
平均線膨張係数βは、2.00ppm/℃以上が好ましく、2.50ppm/℃以上がより好ましく、2.60ppm/℃以上が特に好ましい。
【0130】
平均線膨張係数βは、3.50ppm/℃以下が好ましく、3.25ppm/℃以下がより好ましく、3.10ppm/℃以下がさらに好ましく、3.00ppm/℃以下が特に好ましい。
【0131】
ガラス部材101の平均線膨張係数βが上述の範囲であれば、ガラス部材101とSi-SiC部材105との平均線膨張係数を一致させやすくでき、βが小さいほどガラス部材内部で温度差がついた際の、ガラス内部で発生する歪みを小さくできる。
【0132】
平均線膨張係数βは、測定する温度範囲を20℃~200℃とした熱膨張計(Dilatometer)や、熱機械分析装置(TMA)により測定できる。
【0133】
Si-SiC部材105の平均線膨張係数αからガラス部材101の平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|は、2.00ppm/℃以下である。絶対値|α-β|は、1.00ppm/℃以下が好ましく、0.50ppm/℃以下がより好ましく、0.30ppm/℃以下が特に好ましい。
【0134】
絶対値|α-β|を上記値以下とすることで、得られる積層部材100の反りを防止できる。
【0135】
Si-SiC部材105とガラス部材101では、Si-SiCの方がガラスに比べて熱伝導率が高いことから、使用時に温度差がつくことがある。特に冷却時にはガラスの接合層と反対の面に引っ張り応力が入るため、ガラスが割れやすくなることから、ガラス部材101の平均線膨張係数βは、Si-SiC部材105の平均線膨張係数αよりも小さいことが好ましい。
【0136】
波長850nmにおけるガラス部材101の直線透過率は、80%以上であり、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。波長850nmにおけるガラス部材101の直線透過率が80%以上であれば、加熱利用に十分な赤外線の透過量を実現できる。
ガラス部材101の直線透過率の上限は、100%である。
【0137】
直線透過率は、入射光の入射角を0°とし、ガラス部材101をその厚さ方向に直線的に透過する光の透過率であって、分光光度計により20℃で測定できる。
【0138】
ガラス部材101の直線透過率を上記範囲にする方法としては、ガラス部材101中のFe2O3の含有量を上述の範囲に調節する方法や、ガラス部材101の表面反射を抑制するために反射防止膜を成膜する方法が挙げられる。反射防止膜の成膜方法としては、スプレーコート、スピンコート、フローコートなどによるウェットコーティングや、スパッタリングや蒸着などによるドライコーティングなど、一般的に知られている手法を用いることができる。
【0139】
ガラス部材101のヤング率は、40~120GPaが好ましい。
【0140】
ガラス部材101のヤング率は、60GPa以上がより好ましく、65GPa以上がさらに好ましく、70GPa以上が特に好ましい。
【0141】
ガラス部材101のヤング率は、100GPa以下がより好ましく、95GPa以下がさらに好ましく、90GPa以下が特に好ましい。
【0142】
ガラス部材101のヤング率が上記範囲であれば、支持部材として十分な強度を保ち、反り量を低減できる。
【0143】
ガラス部材101のヤング率は、日本工業規格(JIS R1602:1995)に記載された超音波パルス法により20℃で測定できる。
【0144】
ガラス部材101の溶解温度は、1000~2000℃が好ましい。
【0145】
ガラス部材101の溶解温度は、1300℃以上がより好ましく、1400℃以上がさらに好ましく、1500℃以上が特に好ましい。
【0146】
ガラス部材101の溶解温度は、1900℃以下がより好ましく、1800℃以下がさらに好ましく、1700℃以下が特に好ましい。
【0147】
ガラス部材101の溶解温度が上述の範囲であれば、ガラスの清澄性、原料の溶解性が優れ、ガラス中の欠点を抑制できる。
【0148】
ガラス部材101の溶解温度は、回転粘度計を用いて粘度を測定し、102dPa・sとなるときの温度T2(℃)を示す。
【0149】
ガラス部材101の失透温度は、800~1600℃が好ましい。
【0150】
ガラス部材101の失透温度は、900℃以上がより好ましく、1000℃以上がさらに好ましく、1100℃以上が特に好ましい。
【0151】
ガラス部材101の失透温度は、1500℃以下がより好ましく、1450℃以下がさらに好ましく、1400℃以下が特に好ましい。
【0152】
ガラス部材101の失透温度が上記範囲であれば、ガラスの製造時に発生する欠点が少なくなる。
【0153】
ガラス部材101の失透温度は、白金製皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラス表面および内部に結晶が析出しない温度の最大値である。
【0154】
〔接合層〕
接合層103は、ガラス部材101とSi-SiC部材105とを接合する部材である。
【0155】
接合層103に含まれる樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。耐熱性がより優れる点から、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びフッ素樹脂が好ましい。
樹脂は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0156】
樹脂の含有量は、接合層103の全質量に対して、40~100質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。
【0157】
樹脂の含有量が上記範囲であれば、接合層103を介したガラス部材101とSi-SiC部材105との密着性がより優れ、Si-SiC部材との膨張係数差を小さくできる。
【0158】
接合層103は、樹脂以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他の成分の具体例としては、例えば可塑剤、フィラー等が挙げられる。
【0159】
接合層103が他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、接合層103の全質量に対して、10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、25~35質量%がさらに好ましい。他の成分の含有量が50質量%以下であれば、接合層103を介したガラス部材101とSi-SiC部材105との密着性がより優れる。
【0160】
接合層103は、樹脂フィルムや塗布タイプの接着剤等で構成されてもよい。
【0161】
接合層103が樹脂フィルムで構成される場合は、例えば加熱プレス装置を用いて作製できる。ガラス部材101とSi-SiC部材105との間に、接合層103を構成する樹脂フィルムを挟み込む(この構成を仮積層体とする)。仮積層体を樹脂フィルムの軟化点以上の温度に加熱し、仮積層体に圧力をかけてプレスし、ガラス部材101とSi-SiC部材105とを接合する。接合時に泡の巻き込みを防ぐために、仮積層体は真空雰囲気下でプレスすることが好ましい。
【0162】
また、接合層103が塗布タイプの接着剤で構成される場合は、ガラス部材101の上に従来公知の任意の方法で塗布し、その上にSi-SiC部材105を積層する。
【0163】
アンカー効果を高めるために、ガラス部材101の接合層103との接触面およびSi-SiC部材105の接合層103との接触面は、ブラスト処理などで適度に荒らしておいてもよい。
【0164】
接合層103の厚さは、0.001~0.300mmが好ましい。
【0165】
接合層103の厚さは、0.005mm以上であってもよく、0.008mm以上であってもよく、0.010mm以上であってもよい。
【0166】
接合層103の厚さは、0.150mm以下であってもよく、0.050mm以下であってもよく、0.030mm以下であってもよい。
【0167】
接合層103の厚さは、SEM断面観察による撮影のデジタルデータや画像処理ソフトを用いて算出できる。
【0168】
波長850nmにおける接合層103の直線透過率は、88%以上が好ましく、91%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。接合層103の直線透過率が88%以上であれば、加熱利用に十分な赤外線の透過量を実現できる。
接合層103の直線透過率の上限は、100%である。
【0169】
直線透過率は、入射光の入射角を0°とし、接合層103をその厚さ方向に直線的に透過する光の透過率であって、分光光度計により20℃で測定できる。
【0170】
接合層103に含まれる樹脂の耐熱温度は、120~420℃が好ましい。また、高温使用時の応力緩和の点から、120~300℃がより好ましい。
【0171】
接合層103に含まれる樹脂の耐熱温度は、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましく、180℃以上が最も好ましい。
【0172】
接合層103に含まれる樹脂の耐熱温度は、280℃以下であってもよく、260℃以下であってもよく、240℃以下であってもよい。
【0173】
接合層103に含まれる樹脂の耐熱温度は、大気雰囲気下で熱重量測定(TGA)を行い、測定対象物の質量が1質量%減少した温度とする。
【0174】
接合層103の20~200℃における平均線膨張係数γは、2~200ppm/℃が好ましい。以下、接合層103の20~200℃における平均線膨張係数γを、単に平均線膨張係数γとも呼ぶ。
【0175】
平均線膨張係数γは、4ppm/℃以上がより好ましく、7ppm/℃以上がさらに好ましく、10ppm/℃以上が特に好ましい。
【0176】
平均線膨張係数γは、100ppm/℃以下がより好ましく、50ppm/℃以下がさらに好ましく、30ppm/℃以下が特に好ましく、20ppm/℃以下が最も好ましい。
【0177】
接合層103の平均線膨張係数γが上記範囲であれば、密着性に優れ、かつSi-SiC部材との膨張係数差を小さくできるので、積層部材100の耐熱衝撃性が優れる。
【0178】
平均線膨張係数γは、測定する温度範囲を20℃~200℃とした熱膨張計(Dilatometer)や、熱機械分析装置(TMA)により測定できる。
【0179】
接合層103の平均線膨張係数γを上記範囲にする方法としては、上述の種類の樹脂を使用しカーボンやシリカなどのフィラーを配合する方法が挙げられる。
【0180】
接合層103の作製に樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムのヤング率は、Si-SiC部材105とガラス部材101の密着性を上げ、部材全体の形状を維持する点で、0.05GPa以上が好ましく、0.10GPa以上がより好ましく、0.15GPa以上がさらに好ましい。
【0181】
接合層103の作製に樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムのヤング率は、Si-SiC部材との膨張係数差から発生する応力を低減する点で、3.5GPa以下が好ましく、3.0GPa以下がより好ましく、2.0GPa以下がさらに好ましく、1.0GPa以下が特に好ましく、0.5GPa以下が最も好ましい。
【0182】
Si-SiC部材との膨張係数差から発生する応力は、樹脂層のヤング率が大きいほど応力は高くなり、ヤング率が小さければ発生する応力は小さくなる。
【0183】
樹脂層のヤング率は、日本工業規格(JIS K7171)に記載された弾性率試験方法により25℃で測定できる。
【0184】
〔積層部材の物性等〕
積層部材100の反り量は、0.25mm以下が好ましく、0.20mm以下がより好ましく、0.10mm以下がさらに好ましく、0.05mm以下が特に好ましい。
【0185】
積層部材100の反り量が上記値以下であれば、応力発生時に、特定の箇所への応力集中を防止できるので、耐衝撃性をより向上できる。また、積層部材100をキッチン用途等に施工した際に、積層部材100の反りにより周囲が歪んで積層部材100に映り込みデザイン性が低くなるのを避けることができる。また、積層部材100上に被加熱体を載置した際に、被加熱体のぐらつきを防止できる。
【0186】
積層部材100の反り量の下限は、0mmである。
【0187】
積層部材100の反り量は、非接触の3次元形状測定装置により測定できる。
【0188】
積層部材100の反り量を上記範囲にする方法としては、ガラス部材101、接合層103およびSi-SiC部材105の厚さや、各部材(層)を構成する成分の種類および含有量等を、上述の通りにする方法が挙げられる。
【0189】
積層部材100の密度は、2.40~2.85g/cm3が好ましい。
【0190】
積層部材100の密度は、2.45g/cm3以上がより好ましく、2.50g/cm3以上がさらに好ましく、2.55g/cm3以上が特に好ましい。
【0191】
積層部材100の密度は、2.80g/cm3以下がより好ましく、2.75g/cm3以下がさらに好ましく、2.70g/cm3以下が特に好ましい。
【0192】
密度が上述の範囲であれば、積層部材を加熱部材として筐体に組み込む際の施工性が向上する。
【0193】
密度は、積層部材100の総質量を、積層部材100の総体積で除した値である。積層部材100の総質量は、質量測定器により測定できる。積層部材100の総体積は、デジタルメジャーにより測定できる。
【0194】
積層部材100の密度を上記範囲にする方法としては、ガラス部材101、接合層103およびSi-SiC部材105の厚さや、各部材(層)を構成する成分の種類および含有量等を、上述の通りにする方法が挙げられる。
【0195】
積層部材100のSi-SiC部材105側の最上面の面積(積層部材100のSi-SiC部材105側の主表面)は、0.01~10m2が好ましい。
【0196】
積層部材100の最上面の面積は、0.07m2以上がより好ましく、0.15m2以上がさらに好ましく、0.30m2以上が特に好ましく、0.60m2以上が最も好ましい。
【0197】
積層部材100の最上面の面積は、8m2以下がより好ましく、4m2以下がさらに好ましく、2m2以下が特に好ましく、1m2以下が最も好ましい。
【0198】
積層部材100の最上面の面積が上述の範囲であれば、加熱部材として筐体に組み込む際の施工性が向上する。
【0199】
最上面の面積は、積層部材100の寸法をデジタルメジャーで測定して算出する。
【0200】
〔積層部材の製造方法〕
積層部材100の製造方法の一例としては、ガラス部材101とSi-SiC部材105との間に接合層103を配置して、ガラス部材101とSi-SiC部材105とを接合層103を介して貼り合わせる方法が挙げられる。
【0201】
積層部材100のより詳細な製造方法の一例としては、ガラス部材101と、接合層103と、Si-SiC部材105とがこの順になるように積層した後、150~380℃の温度で貼り合わせる方法が挙げられる。
【0202】
〔他の態様〕
本発明の積層部材の一例であって、上述の積層部材100とは異なる他の態様の積層部材(以下、「他の態様の積層部材」ともいう。)について説明する。
【0203】
他の態様の積層部材は、上記Si-SiC部材105の上に設けられる第2の接合層と、第2の接合層を介して上記Si-SiC部材105と接合される第2のSi-SiC部材と、をさらに有する。
第2のSi-SiC部材は、上記Si-SiC部材105と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0204】
Si-SiC部材105と第2のSi-SiC部材とを積層させた構造とすることで、複雑な形状の積層部材を作製しやすくなる。例えば、積層部材中に温度測定用のセンサーを差し込むための空間を設ける場合には、予めSi-SiC部材105と第2のSi-SiC部材の一方に溝加工を施しておき、他方を貼り合わせることで積層部材中に空間を設けることが容易となる。
【0205】
第2の接合層によってSi-SiC部材105と第2のSi-SiC部材とを接合する方法は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂やフッ素樹脂などの樹脂を用いた接合、スズやインジウムなどの溶融金属を用いた接合、ガラスフリットを用いた接合が挙げられる。積層部材を加熱部材として用いることを想定すると、耐熱性および熱伝導率の点から、金属を用いた接合が好ましい。
【0206】
耐熱性および熱伝導率の点から、ガラスフリットは耐熱性が高いが熱伝導率が低く、樹脂は耐熱性および熱伝導率どちらも低いため、金属を用いた接合が好ましい。金属の具体例としては、インジウム、スズ、スズ系合金、鉛系合金が挙げられる。中でも、熱伝導率、耐熱性および環境負荷の点からは、スズ金属、スズ系合金が好ましい。
【0207】
溶融金属を用いて接合する例を説明する。Si-SiC部材105と第2のSi-SiC部材を所望の温度、例えば250℃~270℃に加熱する。加熱したSi-SiC部材と第2のSi-SiC部材の接合面に超音波を当てながら、所望の温度(例えば250℃~270℃)近傍の温度で溶融しておいた金属を塗り込んだ後、接合面同士を重ね合わせればよい。
【0208】
他の態様の積層部材は、第2のSi-SiC部材の上に設けられる第3の接合層と、第3の接合層を介して第2のSi-SiC部材と接合される第3のSi-SiC部材と、をさらに有してもよい。第3の接合層は、第2の接合層と同様に構成される。また、第3のSi-SiC部材は、Si-SiC部材105と同様に構成される。ただし、他の態様の積層部材は、厚さの点では、第3の接合層および第3のセラミックス部材を有しないことが好ましい。
【0209】
本発明の積層部材は、積層部材を急速に冷却できる構成を有していてもよい。
【0210】
例えば、積層部材100は、ガラス部材101と接合層103との間、および、Si-SiC部材105と接合層103との間、の少なくとも1つに流路を備えていてもよい。あるいは、積層部材100は、ガラス部材101、および、Si-SiC部材105、の少なくとも1つが流路になるように加工されていてもよい。
【0211】
また、他の態様の積層部材は、ガラス部材101と接合層103との間、Si-SiC部材105と接合層103との間、Si-SiC部材105と第2の接合層との間、および、第2のSi-SiC部材と第2の接合層との間、の少なくとも1つに流路を備えてもよい。あるいは、他の態様の積層部材は、ガラス部材101、Si-SiC部材105、および、第2のSi-SiC部材、の少なくとも1つが流路になるように加工されていてもよい。
積層部材は、流路に水を流して冷却できる。
【0212】
本発明の積層部材は、透過率および照射効率を高める反射防止膜を備えてもよい。
【0213】
例えば、積層部材100は、ガラス部材101の接合層103側とは反対側の主表面および/またはガラス部材101の接合層103側の主表面に反射防止膜を備えてもよい。
【0214】
また、他の態様の積層部材は、Si-SiC部材105の接合層103側の主表面または第2のSi-SiC部材の第2の接合層側の主表面に反射防止膜を備えてもよい。
【0215】
反射防止膜は、赤外線を透過させる面に設けることで、照射効率(加熱効率)を高めることができる。
【0216】
本発明の積層部材は、温度センサーを備えていてもよい。
【0217】
例えば、積層部材100は、温度センサーをSi-SiC部材105の内側に備えてもよい。また、他の態様の積層部材は、温度センサーをSi-SiC部材105の内側、または、第2のSi-SiC部材の内側に備えてもよい。
【0218】
温度センサーを有する構成の具体例としては、Si-SiC部材105、または、第2のSi-SiC部材の側面に開けた穴に、温度センサーを差し込んだ構成が挙げられる。この場合、温度センサーは、Si-SiC部材105の接合層103側とは反対側の主表面の直下、または、第2のSi-SiC部材の第2の接合層とは反対側の主表面の直下に配置する。温度センサーは、接合層103または第2の接合層とは接しないように、かつ、温度センサーが露出しないように配置する。温度センサーにより、Si-SiC部材105の接合層103側とは反対側の主表面温度、または、第2のSi-SiC部材の第2の接合層とは反対側の主表面温度を測定できる。
【0219】
本発明の積層部材は、加熱部材として好適に使用できる。本発明の積層部材は、例えば、加熱調理器の加熱部材として好適に使用できる。
【0220】
また、本発明の積層部材は、キッチンのワークトップ(天板)として用いてもよい。
【0221】
また、本発明の積層部材は、電子デバイスの電気的試験を行うための検査装置や試験装置において、電子デバイスを載せる載置台の素材として、用いてもよい。
【0222】
また、本発明の積層部材は、加熱調理器や電子デバイスの電気的試験を行うための検査装置や試験装置のトッププレートとキッチンのワークトップとしての機能を兼ね備えてもよい。
【0223】
[ガラス組成物]
本開示のガラス組成物の一態様は、ガラス部材と、上記ガラス部材上に樹脂を含む接合層と、上記接合層上にSi-SiC部材、からなる積層部材において、上記ガラス部材に用いられるガラス組成物であって、上記ガラス組成物は、波長850nmにおける直線透過率が80%以上であり、上記ガラス組成物は、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、上記ガラス組成物は、上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、上記ガラス組成物は、20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、上記ガラス組成物は、20~200℃における平均線膨張係数αが2.85~4.00ppm/℃であるSi-SiC部材を有する積層部材に用いられるものであり、上記Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αから上記ガラス部材の20~200℃における平均線膨張係数βを引いた値の絶対値|α-β|が2.00ppm/℃以下となるように用いられることを特徴とする。
【0224】
本開示のガラス組成物の別の態様は、酸化物基準のモル百分率表示で、55.0~85.0モル%のSiO2と、1.5~22.0モル%のAl2O3と、2.0~14.0モル%のB2O3と、0~5.0モル%のP2O5と、を含み、上記SiO2、上記Al2O3、上記B2O3および上記P2O5の含有量の合計が、酸化物基準のモル百分率表示で、70.0~97.0%であり、20~200℃における平均線膨張係数βが、1.50~5.00ppm/℃であり、波長850nmにおける直線透過率が80%以上であることを特徴とする。
【0225】
上記ガラス組成物は、上述した積層部材を構成するガラス部材として好適に用いられる。上述した積層部材を構成するガラス部材として上記ガラス組成物を用いることで、当該積層部材の温度上昇性、耐衝撃性および耐熱衝撃性が優れたものとなる。
【0226】
なお、上記ガラス組成物におけるガラス組成や各物性値等は、本開示の積層部材のガラス部材に関する上記説明が当てはまる。なお、上記ガラス組成物における、波長850nmにおける直線透過率は、当該ガラス組成物をガラス部材として測定した場合の値を意味するものとする。
また、上記ガラス組成物を用いて得られるガラス部材を有する積層部材において、当該積層部材を構成する接合層およびSi-SiC部材についても、当該積層部材のガラス部材に関する上記説明が当てはまる。
【実施例】
【0227】
以下、本発明の一態様を実施例によって説明するが、本発明の一態様はこれらにより限定されるものではない。
【0228】
[ガラス部材]
作製したガラスを表1、表2に示す。
【0229】
【0230】
【0231】
〔ガラスの作製手順〕
表1、表2の(i-A)~(v)および(vii)~(xxix)のガラスは、表1、表2に示される酸化物基準のモル百分率表示の各ガラス組成となるように、次のように作製した。なお、表1、表2中の空欄は、該当する成分を含有しないことを意味する。
まず、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物または硝酸塩等、一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして10000gになるように秤量した。次に、混合した原料を白金るつぼに入れ、1500~1700℃の抵抗加熱式電気炉に投入して12時間程度溶融し、脱泡、均質化した。得られた溶融ガラスを型材に流し込み、ガラス転移点+50℃の温度において1時間保持した後、0.5℃/分の速度で室温まで冷却し、ガラスブロックを得た。
【0232】
表1の(vi)のガラスは、AGC株式会社製の合成石英ガラス(製品名:AQ)を用いた。
【0233】
得られた各ガラスブロックを切断、研削、研磨加工し、ガラス部材(縦300mm、横300mm)を得た。
【0234】
〔ガラス部材の物性〕
得られたガラス部材について、以下の測定を行った。測定結果を表1、表2に示す。
【0235】
厚さは、デジタルメジャーを用いて20℃で測定した。
【0236】
平均線膨張係数βは、ネッチ社製の高精度熱膨張計「DIL402 Expedis」を用いて、20℃~200℃の温度範囲で測定した。なお、表1の(xi)のガラスは、分相により白濁しており、ガラス部材として用いることができないことが明らかであるので、平均線膨張係数βを測定しなかった。
【0237】
直線透過率は、分光光度計により20℃、波長850nmで測定した。
なお、表1の(xi)のガラスは分相により白濁しており、直線透過率が80%未満になることが明らかであるので、直線透過率を測定しなかった。
【0238】
ヤング率は、日本工業規格(JIS R1602:1995)に記載された超音波パルス法により20℃で測定した。なお、表1の(xi)のガラスは、分相により白濁しており、ガラス部材として用いることができないことが明らかであるので、ヤング率を測定しなかった。
【0239】
溶解温度(T2)は、回転粘度計を用いて粘度を測定し、102dPa・sとなるときの温度T2(℃)を示す。
なお、表1の(iv)のガラスおよび(v)のガラスの溶解温度(T2)は、実測できなかったため、外挿により算出した。(vi)のガラスは、粘度が高すぎるため回転粘度計では測定ができなかった。
【0240】
失透温度は、白金製皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラス表面および内部に結晶が析出しない温度の最大値(℃)である。なお、表1の(xi)のガラスは、分相により白濁しており、ガラス部材として用いることができないことが明らかであるので、失透温度を測定しなかった。
【0241】
密度は、アルキメデス法により測定した。
【0242】
分相は、SEM(走査型電子顕微鏡)によってガラス部材を観察して評価し、分相が確認されなかった場合を「○」、分相が確認された場合を「×」とした。
【0243】
[Si-SiC部材]
作製したSi-SiC部材を表3に示す。
【0244】
【0245】
〔Si-SiC部材の作製手順〕
Si-SiC部材(a-1)~(a-3)は、次のように作製した。
α-SiC粉末A1を325メッシュの篩で分級して、α-SiC粉末A2(最大粒子径44μm、平均粒子径8μm)を得た。α-SiC粉末A2を、混酸(フッ酸:硝酸=2:1(質量比))および純水で洗浄して、α-SiC粉末A3(鉄の含有量2.1質量ppm)を得た。α-SiC粉末A3と、純水と、アクリル樹脂エマルジョン(結合剤)と、を混合して、泥漿(固形分濃度約75質量%)を得た。
【0246】
次に、泥漿を石膏型中に流し込んで成形体(サイズ:320mm×320mm×16mm)を得た。得られた成形体を50℃で14日間乾燥した後に、アルゴンの不活性雰囲気とした電気炉中において1900℃で焼成して、焼結体を得た。焼結体の気孔率は18.2%であった。
次いで、焼結体A1を別の電気炉に移し、真空中1500℃の条件下で、焼結体A1に高純度シリコンを溶融含浸して、すべての気孔が高純度シリコンで充たされたSi-SiC部材を得た。Si-SiC部材中に含まれる鉄の含有量は、2.2ppmであった。
【0247】
次に、Si-SiC部材を縦30cm、横30cm、表3に示す厚さになるように加工して、Si-SiC部材(a-1)~(a-3)を得た。
【0248】
Si-SiC部材(b)は、泥漿の固形分濃度を約79質量%に変更した以外はSi-SiC部材(a-1)と同様に作製した。
【0249】
Si-SiC部材(c)は、泥漿の固形分濃度を約61質量%に変更した以外はSi-SiC部材(a-1)と同様に作製した。
【0250】
Si-SiC部材(d)は、次のように作製した。
混錬機(宮崎鉄工株式会社製、型番:MP100)に、SiC粉末(太平洋ランダム株式会社製、型番:GMF-12S(平均粒径0.7μm))48.2質量%と、シリコン粉末(山石金属株式会社製、型番:No.700(平均粒径2.5μm))25.0質量%と、バインダーとしてメトローズ(信越化学株式会社製、型番SM8000)5.5質量%と、純水21.5質量%と、を投入して、6時間混錬し坏土を得た。
【0251】
得られた坏土を、押出成形機(宮崎鉄工株式会社製、型番:FM100)に投入し、ヘッド圧1.0MPa、吐出量1200g/分の条件で押出し成形して成形体を得た。得られた成形体を、50℃で14日間乾燥した後に、450℃の大気雰囲気下で3時間加熱し脱脂して脱脂体を得た。
得られた脱脂体を、カーボン焼成炉で10-3Paの真空雰囲気下1700℃の条件で2時間焼成して焼結体を得た。
得られた焼結体に、アルゴン雰囲気下1500℃の条件でSiを含侵させ、Si-SiC部材を得た。得られたSi-SiC部材を、縦30cm、横30cm、表3に示す厚みになるように加工して、Si-SiC部材(d)を得た。
【0252】
Si-SiC部材(e)は、泥漿の固形分濃度を約77質量%に変更した以外はSi-SiC部材(a-1)と同様に作製した。
【0253】
Si-SiC部材(f)は、泥漿の固形分濃度を約58質量%に変更した以外はSi-SiC部材(a-1)と同様に作製した。
【0254】
〔Si-SiC部材の物性〕
得られたSi-SiC部材(a-1)~(f)について、以下の測定を行った。測定結果を表3に示す。
【0255】
Si-SiC部材の各成分量(組成)は、誘導結合プラズマ質量分析計ICP-MS(島津製作所社製)により測定した。
【0256】
厚さは、株式会社エー・アンド・デイ社製のノギス(AD-5764A)を用いて20℃で測定した。
【0257】
平均線膨張係数αは、ブルカー・エイエックスエス社製の示差熱膨張計(TMA)「TMA4000SA」を用いて、20℃~200℃の温度範囲で測定した。
【0258】
熱伝導率は、京都電子工業社製のレーザーフラッシュ法熱物性測定装置「MODEL LFA-502」を用いて、20℃の温度下で測定した。
【0259】
ヤング率は、株式会社ティー・エス・イー社製のオートコム万能試験機「AC-300KN」を用いて、日本工業規格(JIS R1602:1995)に記載された弾性率試験方法(動的弾性率法)により20℃で測定した。
【0260】
曲げ強度は、株式会社ティー・エス・イー社製のオートコム万能試験機「AC-300KN」を用いて、日本工業規格(JIS R1601:2008)に記載された曲げ強さ試験方法(4点曲げ強さ)により20℃で測定した。
【0261】
ビッカース硬さは、ビッカース硬さ計システム(日鉄住金テクノロジー社製)を用いて、10kgfの押し込み荷重で15秒間押し込むことにより20℃で測定した。
【0262】
[接合層]
表4に示す各樹脂(樹脂フィルム、塗布タイプの接着剤)について、以下の測定を行った。測定結果を表4に示す。
表4中、フッ素樹脂は、AGC株式会社製、製品名EA-2000(樹脂フィルム)を使用し、エポキシ樹脂は、株式会社スリーボンド社製、製品名TB2237J(塗布タイプの接着剤)を使用し、ポリイミド樹脂は、河村産業株式会社製、製品名KPI―MX300F(樹脂フィルム)を使用した。
なお、エポキシ樹脂は塗布タイプの接着剤であるため、シート状に成型した状態で以下の測定を行った。
【0263】
【0264】
厚さは、デジタルメジャーで測定した。
【0265】
直線透過率は、分光光度計により20℃、波長850nmで測定した。
【0266】
耐熱温度は、大気雰囲気下で熱重量測定(TGA)を行い、樹脂フィルムや塗布タイプの接着剤の質量が1質量%減少した温度とした。
【0267】
平均線膨張係数γは、ブルカー・エイエックスエス社製の示差熱膨張計(TMA)「TMA4000SA」を用いて、20℃~200℃の温度範囲で測定した。
なお、樹脂フィルムや塗布タイプの接着剤の平均線膨張係数γと、樹脂フィルムや塗布タイプの接着剤を用いて得られた後述の接合層の平均線膨張係数γとは、同じ値であった。
【0268】
ヤング率は、Instron社製の万能試験機(型式5966)を用いて、日本工業規格(JIS K7171)に記載された弾性率試験方法により25℃で測定した。
【0269】
[積層部材]
作製した積層部材を表5~表7に示す。
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
〔作製手順〕
各部材が表5~表7に記載の組み合わせになるように、例1~14、18~43のサンプル(積層部材)を以下のようにして作製した。また、例15~17のサンプルを準備した。
例1~5、7、9~13、20~24、26~43は実施例であり、例6、8、14~19、25は比較例である。
【0274】
まず、SiC研磨紙を用いて、表1、表2に示すガラス部材の樹脂(接合層)と接触する側の表面を、Ra=0.2μmの面粗さに加工した。同様に、SiC研磨紙を用いて、表3に示すSi-SiC部材の樹脂(接合層)と接触する側の表面を、Ra=0.2μmの面粗さに加工した。
次に、表4に示す樹脂フィルムを、ガラス部材とSi-SiC部材との間に挟み込み、樹脂フィルムの軟化点+20度の温度に加熱し、2MPaの圧力をかけて5分間プレスすることで、ガラス部材とSi-SiC部材とを接合層を介して接合した。あるいは、表4に示す塗布タイプの接着剤をガラス部材に兵神社製ディスペンサーND型を用いて厚さ0.080mmで塗布し、さらにその上にSi-SiC部材を積層し、1.0MPaの圧力で加圧して120℃で4時間加熱し硬化させることで、ガラス部材とSi-SiC部材とを接合層を介して接合した。このようにして、例1~14、18~43のサンプル(積層部材)を得た。
【0275】
〔積層部材の評価〕
各例のサンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を上記表5~表7に示す。
【0276】
(温度上昇評価)
各例のサンプルに、2kWの赤外線ランプ9個を用いて赤外線(850nm)を2分照射し、温度上昇の評価をした。
評価基準は、サンプルの最表面の温度が200℃を超える場合は〇、サンプルの最表面の温度が200℃を超えない場合は×とした。
積層部材である例1~14、18~43のサンプルは、ガラス部材側から赤外線を照射し、Si-SiC部材側の最表面温度で評価した。例15~17のサンプルは、赤外線照射側と反対側の最表面温度で評価した。
【0277】
(耐衝撃性評価)
各例のサンプルに、533gの鋼球を落下させ、耐衝撃性の評価をした。耐衝撃性評価は、各例についてサンプル数3つ(n=3)で行った。サンプルの外周部には、厚さ3mm、幅15mm、硬さA50のゴム板製の支持枠を設け、上下から挟み込み固定した。鋼球はサンプルの中心から距離25mm以内の範囲に入るように落下させた。
評価基準は、落球高さ20cmで、サンプル数3つのうち2つ以上が割れた場合は×、サンプル数3つのうち1つが割れた場合は△、サンプル3つが割れなかった場合は〇として、△以上を合格とした。
積層部材である例1~14、18~43のサンプルは、Si-SiC部材側から鋼球を落下させた。なお、例17、25のサンプルについては、耐衝撃性を評価しなかった。
【0278】
(耐熱性評価)
各例のサンプルを230℃の温度で24時間加熱し、外観変化の目視評価をした。評価基準は、外観上の変化(変色、泡、異物の発生、接合層の滲みだしなど)が無かった場合は〇、外観上の変化が有った場合は×とした。なお、例25のサンプルについては、耐熱性を評価しなかった。
【0279】
(反り量)
各例のサンプルの反り量は、三鷹光機株式会社製の非接触三次元形状測定装置「NH-5Ns」を用いて、ISO25178-605に準拠してサンプル表面の三次元性状を測定し、サンプル表面の最大傾斜式平面度を求めることで測定した。
具体的には、精密定盤の上にサンプルを置き、レーザオートフォーカス顕微鏡を用いてサンプル上面の各点の高さを測定し、サンプル上面を平行な2つの平面で挟んだときにできる隙間の値、つまり、最大傾斜式平面度を反り量として求めた。
【0280】
(密度)
各例のサンプルの質量を、株式会社ディジ・テック社製のデジタルメジャーで測定した体積で除して求めた。
【0281】
(面積)
各例のサンプルの最上面の面積(積層部材の場合はSi-SiC部材の露出している主表面、単部材の場合は一方の主表面)を、株式会社ディジ・テック社製のデジタルメジャーで測定した寸法から求めた。
【0282】
(接合層の厚さ)
例1~14、18~43のサンプルの接合層(樹脂)の厚さを、SEM断面観察により算出した。
【0283】
(耐熱衝撃性評価)
例1~14、18~43のサンプルと同じ組み合わせで、幅15mm、長さ100mmの積層部材を作製し、Si-SiC部材側を、ホットプレートを用いて加熱することでガラスとの間に温度差を与え、耐熱衝撃性の評価をした。具体的には、220℃にセットしたホットプレートを用いてSi-SiC部材表面を加熱し、ガラス部材側は冷却水を流し10℃に冷却した冷却板を用いて冷却し、温度差を与えた状態で1時間保持した。
評価基準は、目視にて接着層にクラックや白濁が見られた場合は×、変化が見られない場合は〇とした。なお、例15~17および例25のサンプルについては、耐熱衝撃性を評価しなかった。
【0284】
表5~表7の結果より、本発明の積層部材は、温度上昇速度が速く、耐衝撃性および耐熱衝撃性が高く、加熱部材として好適であることがわかった(例1~5、7、9~13、20~24、26~43)。
【0285】
一方、例6の積層部材は、Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが2.85ppm/℃未満と低く、耐熱衝撃性が低かった。
例8の積層部材は、Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが2.85ppm/℃未満と低く、耐衝撃性および耐熱衝撃性が低かった。
例14の積層部材は、温度上昇速度が速く、耐衝撃性および耐熱衝撃性が高いものの、反り量が大きかった。
例15~例17のサンプルは、温度上昇速度または耐衝撃性が低かった。
例18、19の積層部材は、Si-SiC部材の20~200℃における平均線膨張係数αが2.85ppm/℃未満と低く、耐熱衝撃性が低かった。
例23の積層部材は、耐衝撃性が低く、反り量が大きかった。
例25の積層部材は、温度上昇速度が低かった。
【0286】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0287】
なお、本出願は、2021年1月20日出願の日本特許出願(特願2021-007287)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0288】
100 積層部材
101 ガラス部材
103 接合層
105 Si-SiC部材