IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7589776着色組成物、着色硬化膜及びその製造方法、カラーフィルタ、表示素子、受光素子、並びに硬化性組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】着色組成物、着色硬化膜及びその製造方法、カラーフィルタ、表示素子、受光素子、並びに硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20241119BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241119BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20241119BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20241119BHJP
   C08F 267/06 20060101ALI20241119BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20241119BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20241119BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20241119BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/44 B
C08L33/04
C08L51/06
C08F20/28
C08F267/06
G02B5/20 101
H10K59/38
H01L31/02 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023135064
(22)【出願日】2023-08-22
(62)【分割の表示】P 2020210076の分割
【原出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2023164445
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2019230963
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】福間 聡司
(72)【発明者】
【氏名】井川 茂
(72)【発明者】
【氏名】倉 怜史
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026546(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026547(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/147156(WO,A1)
【文献】特開平10-316643(JP,A)
【文献】特開平11-080313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08L 1/00 -101/14
C08F 6/00 -246/00
C08F267/06
G02B 5/20
H10K 59/38
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤と、(B)重合体(ただし、前記(A)着色剤を除く。)と、(C)重合性化合物(ただし、前記(A)着色剤及び前記(B)重合体を除く。)とを含有する着色組成物であって、
前記(B)重合体は、下記式(1)で表される部分構造を有し、
前記(B)重合体は、水酸基を有する、着色組成物。
【化1】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Lは、2価の有機基である。Xは、電子求引性を有する2価の連結基である。n1及びn2は、それぞれ独立して0~2の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
【請求項2】
前記(B)重合体が、上記式(1)で表される部分構造を有する構成単位(a)を含む重合体を含有する、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a)は、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構成単位である、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記構成単位(a)は、下記式(1-2)で表される構成単位である、請求項2又は3に記載の着色組成物。
【化2】
(式(1-2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R、R、L、X、n1及びn2は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【請求項5】
前記(B)重合体として、前記構成単位(a)を有するアルカリ可溶性の重合体を含有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性の重合体は、水酸基を有する構成単位を更に有する、請求項5に記載の着色組成物。
【請求項7】
前記水酸基を有する構成単位は、エチレン性不飽和基を有する単量体に由来する構成単位である、請求項6に記載の着色組成物。
【請求項8】
前記(B)重合体として、水酸基を有する構成単位を含む重合体を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項9】
前記水酸基を有する構成単位は、エチレン性不飽和基を有する単量体に由来する構成単位である、請求項8に記載の着色組成物。
【請求項10】
前記Xは、カルボニル基、アミド基、イミド基、エステル基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、及びカルボンイミドイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の電子求引性基を有する基である、請求項1~9のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の着色組成物を用いて形成された着色硬化膜。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の着色組成物を用いて形成されたカラーフィルタ。
【請求項13】
請求項11に記載の着色硬化膜を備える表示素子。
【請求項14】
請求項11に記載の着色硬化膜を備える受光素子。
【請求項15】
基板上に、請求項1~10のいずれか一項に記載の着色組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に含まれる溶剤を除去する工程と、
を含む、着色硬化膜の製造方法。
【請求項16】
前記塗膜を露光する工程と、
前記露光された塗膜を現像する工程と、
を更に含む、請求項15に記載の着色硬化膜の製造方法。
【請求項17】
(B)重合体(ただし、着色剤を除く。)と、(C)重合性化合物(ただし、前記着色剤及び前記(B)重合体を除く。)とを含有する硬化性組成物であって、
前記(B)重合体は、下記式(1)で表される部分構造を有し、
前記(B)重合体は、水酸基を有する、硬化性組成物。
【化3】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Lは、2価の有機基である。Xは、電子求引性を有する2価の連結基である。n1及びn2は、それぞれ独立して0~2の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、着色硬化膜及びその製造方法、カラーフィルタ、表示素子、受光素子、並びに硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ等の着色硬化膜の製造方法としては、インクジェット方式や電着法、印刷法、フォトリソグラフィ法等が知られている。これらのうち、近年ではフォトリソグラフィ法が主流となっている。フォトリソグラフィ法によりカラーフィルタを製造する場合、例えば、基板上に着色硬化性組成物を塗布して塗膜を形成した後、所定の開口パターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで現像して未露光部分を溶解除去することにより、パターンを形成する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。パターン形成後は、通常200~250℃の温度で30~60分程度ポストベークすることにより塗膜の硬化を促進させ、膜硬度や膜の耐溶剤性等を高めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-144502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着色硬化膜に含有される着色剤として、染料は、染料自体の色純度やその色相の鮮やかさにより、画像表示させたときの表示画像の色相や輝度を高めることができ、また顔料に由来する粗大粒子の低減によってコントラストの向上に有効であると考えられている。
【0005】
しかしながら、染料は、一般に耐熱性に劣るという問題がある。そのため、染料を含有する着色組成物を用いて形成された塗膜を200~250℃のポストベーク温度で加熱することが困難である。また、表示素子等の用途の拡大に伴い、基板としては、従来のガラス基板からフレキシブルなプラスチック基板への代替が検討されている。しかしながら、プラスチック基板は一般に耐熱性が低いため、プラスチック基板上に着色組成物からなる塗膜を形成し、200~250℃のポストベーク温度で加熱した場合、プラスチック基板の伸長や収縮が生じることが懸念される。
【0006】
こうした問題に対し、ポストベークをできるだけ低い温度で行うことが考えられる。しかしながら、ポストベークを低温で行うと膜の硬化が十分に行われず、耐溶剤性の低下といった問題が生じるおそれがある。また、低温で高感度な硬化性組成物は、一般に保存安定性に劣る傾向がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、保存安定性及び低温硬化性に優れ、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を得ることができる着色組成物を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、保存安定性及び低温硬化性に優れ、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を得ることができる硬化性組成物を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明によれば、以下の着色組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、表示素子、受光素子、着色硬化膜の製造方法、及び硬化性組成物が提供される。
【0009】
[1](A)着色剤と、(B)重合体(ただし、前記(A)着色剤を除く。)と、(C)重合性化合物(ただし、前記(A)着色剤及び前記(B)重合体を除く。)とを含有する着色組成物であって、前記(A)着色剤、前記(B)重合体及び前記(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、下記式(1)で表される部分構造を有し、前記(A)着色剤、前記(B)重合体及び前記(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、水酸基を有する、着色組成物。
【化1】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Lは、2価の有機基である。Xは、電子求引性を有する2価の連結基である。n1及びn2は、それぞれ独立して0~2の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
[2]上記[1]の着色組成物を用いて形成された着色硬化膜。
[3]上記[1]の着色組成物を用いて形成されたカラーフィルタ。
[4]上記[2]の着色硬化膜を備える表示素子。
[5]上記[2]の着色硬化膜を備える受光素子。
[6]基板上に、上記[1]の着色組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜から溶剤を除去する工程と、を含む、着色硬化膜の製造方法。
[7](B)重合体(ただし、着色剤を除く。)と、(C)重合性化合物(ただし、前記着色剤及び前記(B)重合体を除く。)とを含有する硬化性組成物であって、前記(B)重合体及び前記(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、下記式(1)で表される部分構造を有し、前記(B)重合体及び前記(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、水酸基を有する、硬化性組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の着色組成物によれば、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が上記式(1)で表される部分構造を有し、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が水酸基を有することにより、低温でポストベークを行った場合にも耐溶剤性に優れた着色硬化膜を形成することができる。また、本発明の着色組成物は、粘度の経時的変化が少なく、保存安定性が良好である。したがって、本発明の着色組成物は、表示素子及び受光素子等の各種のカラーフィルタの材料として有用である。
【0011】
また、本発明の硬化性組成物によれば、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が上記式(1)で表される部分構造を有し、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が水酸基を有することにより、低温でポストベークを行った場合にも耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる。また、本発明の硬化性組成物は、粘度の経時的変化が少なく、保存安定性が良好である。したがって、本発明の硬化性組成物は、保護膜材料やスペーサー材料、絶縁膜材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構成単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
【0013】
[着色組成物]
着色組成物は、カラーフィルタに用いられる各色画素、ブラックマトリックス、ブラックスペーサー等といった着色層を形成するために用いられる組成物である。本開示の着色組成物は、(A)着色剤と、(B)重合体(だたし、(A)着色剤を除く。以下同じ。)と、(C)重合性化合物(ただし、(A)着色剤及び(B)重合体を除く。以下同じ。)とを含有する。特に、本開示の着色組成物は、(A)着色剤、(B)重合体、及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種における同一分子内又は異なる分子内に、下記式(1)で表される部分構造と、水酸基とを含む。すなわち、本開示の着色組成物は、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、下記式(1)で表される部分構造を有し、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、水酸基を有する。なお、下記式(1)で表される部分構造と水酸基は同一分子に存在していてもよく、異なる分子に存在していてもよい。
【化2】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Lは、2価の有機基である。Xは、電子求引性を有する2価の連結基である。n1及びn2は、それぞれ独立して0~2の整数である。「*」は結合手であることを表す。)
【0014】
ここで、本開示の着色組成物において、「(A)着色剤、(B)重合体、及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種における同一分子内又は異なる分子内に、式(1)で表される部分構造と、水酸基とを含む」とは、式(1)で表される部分構造と水酸基とが同種の成分中に存在している態様であってもよいし、あるいは、式(1)で表される部分構造と水酸基とが異種の成分中に存在している態様であってもよい。例えば、(A)着色剤が式(1)で表される部分構造と水酸基とを有することにより、式(1)で表される部分構造と水酸基とを含む着色組成物としてもよい。あるいは、(A)着色剤が式(1)で表される部分構造を有し、(B)重合体が水酸基を有することにより、式(1)で表される部分構造と水酸基とを含む着色組成物としてもよい。
【0015】
本開示の着色組成物において、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、耐溶剤性の高い着色硬化膜を得る観点から、着色組成物の全固形分の合計量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、工程性を良好にする観点から、着色組成物の全固形分の合計量に対して、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
また、本開示の着色組成物において水酸基の含有割合は、耐溶剤性の高い着色硬化膜を得る観点から、着色組成物の全固形分の合計量に対して、0.3質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。また、水酸基の含有割合は、工程性を良好にする観点から、着色組成物の全固形分の合計量に対して、35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
なお、本明細書において「固形分」とは、着色組成物中に含有される(E)溶剤以外の成分を意味する。したがって、「全固形分」とは、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物と、(A)着色剤、(B)重合体、(C)重合性化合物及び(E)溶剤以外のその他成分と、を合わせた成分を意味する。例えば、液状の光重合性化合物や添加剤成分(界面活性剤等)であっても、これらは固形分に含まれるものとする。
【0018】
(上記式(1)で表される部分構造を有する化合物)
上記式(1)において、R及びRの炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。上記式(1)で表される部分構造と水酸基との反応生成物が膜外に排出されるようにする観点から、R及びRは、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
n1及びn2は、水酸基との反応効率をより高くできる点で、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0019】
は、電子求引性を有する2価の連結基であればよく、特に限定されない。ここで、「電子求引性を有する2価の連結基」とは、電子求引性基の任意の位置から水素原子を取り除き、新たな結合手とした基をいう。この場合、新たな結合手とは異なる結合において電子求引性を示すと考える。なお、電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σp値が0.15以上の置換基であり、より好ましくは0.2以上の置換基である。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207-1216に従う。
【0020】
は、水酸基との反応を低温で効率よく進行させる観点から、カルボニル基(-CO-)、アミド基(-CONR-*)、イミド基(-CONRCO-)、エステル基(-CO-O-*)、スルホニル基(-SO-)、スルフィニル基(-SO-)、チオカルボニル基(-CS-)、及びカルボンイミドイル基(-C(=NH)-)よりなる群から選択される少なくとも1種(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、「*」は、上記式(1)中のLに結合する結合手を表す)であることが好ましい。これらのうち、Xは、アミド基、カルボニル基又はエステル基がより好ましく、アミド基又はカルボニル基が更に好ましい。
の2価の有機基としては、炭素数1~20のアルカンジイル基、炭素数1~20のアルカンジイル基の炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-CONH-等を有する基等が挙げられる。
【0021】
上記式(1)で表される部分構造を有する化合物(以下、「特定化合物」ともいう)は、繰り返し単位を有さない低分子の化合物(以下、単に「低分子化合物」ともいう)であってもよく、重合体であってもよい。なお、本明細書において「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が好ましくは1,000以下の化合物である。耐溶剤性に優れた着色膜を得ることができる点で、特定化合物は重合体であることが好ましく、具体的には、上記式(1)で表される部分構造を有する構成単位(a)を含む重合体であることが好ましい。特定化合物が重合体である場合、該特定化合物は、(A)着色剤であってもよく、(B)重合体であってもよい。また、特定化合物として、(A)着色剤と(B)重合体とが着色組成物に含有されていてもよい。
【0022】
構成単位(a)は、上記式(1)で表される部分構造を有していればよく、その他の部分構造は特に限定されない。上記式(1)で表される部分構造を重合体の側鎖に導入しやすい点で、構成単位(a)は、エチレン性不飽和基を有する単量体(以下「エチレン性不飽和単量体」ともいう)に由来する構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構成単位であることがより好ましい。これらの中でも、構成単位(a)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位であることが好ましく、下記式(1-2)で表される構成単位であることが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する概念である。
【化3】
(式(1-2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R、R、L、X、n1及びn2は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【0023】
上記式(1-2)において、R、R、L、X、n1及びn2の具体例及び好ましい例の説明は、上記式(1)の説明が適用される。
は、水素原子又はメチル基が好ましい。Lは、耐溶剤性に優れた着色膜を得ることができる点で、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~5がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい。
【0024】
(水酸基含有化合物)
水酸基を有する化合物(以下、「水酸基含有化合物」ともいう)は、1分子内に少なくとも1個の水酸基を有する化合物であればよい。この水酸基含有化合物は、低分子化合物であってもよく、重合体であってもよい。また、水酸基含有化合物は、特定化合物と同一の化合物であっても異なる化合物であってもよい。水酸基含有化合物と特定化合物とが同一の化合物である場合、該化合物は、1分子内に上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する。この場合、上記式(1)で表される部分構造中に水酸基を含んでいてもよいが、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とは異なる部位(すなわち、異なる構成単位中)に存在していることが好ましい。
【0025】
ここで、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを含む本開示の組成物においては、上記式(1)中の基「OR」及び基「OR」の少なくとも一方と水酸基とのエステル交換反応が生じ、これにより分子内又は分子間で架橋構造が形成され硬化すると考えられる。このエステル交換反応は可逆的な反応であり、平衡が保たれた状態ではエステル交換反応の進行が抑制される。これにより、加熱される前の平衡が保たれた状態では着色組成物は硬化せずに、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物の混合状態が安定に維持されると考えられる。
【0026】
一方、上記組成物を塗布して加熱し平衡移動が生じると、上記式(1)中の基「OR」及び基「OR」の少なくとも一方と水酸基とのエステル交換反応が起こる。エステル交換された「HO-R」もしくは「H-OR」が系外に排出され平衡移動が生じることにより、特定化合物と水酸基含有化合物との間で架橋構造が形成され、組成物が硬化すると考えられる。また、このエステル交換反応は、例えば180℃以下の低温で進行し、膜硬化を生じさせることが可能である。こうしたエステル交換反応を利用することにより、本開示の着色組成物によれば、保存安定性と低温硬化性とを両立できるものと推測される。
【化4】
【0027】
(着色組成物の配合態様)
本開示の着色組成物は、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が上記式(1)で表される部分構造を有し、かつ、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が水酸基を有する限り、その配合態様は特に限定されない。すなわち、特定化合物は、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物のうちいずれであってよく、これらのうちの2種以上であってもよい。同様に、水酸基含有化合物は、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物のうちいずれであってよく、これらのうちの2種以上であってもよい。また、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物のうち少なくともいずれかが、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する化合物を含有していてもよい。
【0028】
着色組成物の組成の具体的態様としては、例えば以下の[1]~[8]の配合態様が挙げられる。
[1](A)着色剤として上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する重合体を含有し、(B)重合体として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。
[2](B)重合体として上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。ただし、(A)着色剤は、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基を有しない。
[3](A)着色剤として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有し、(B)重合体として上記式(1)で表される部分構造を有し水酸基を有しない重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。
[4](B)重合体として上記式(1)で表される部分構造を有し水酸基を有しない重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。ただし、(A)着色剤は、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基を有しない。
【0029】
[5](A)着色剤として上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する重合体を含有し、(B)重合体として上記式(1)で表される部分構造と水酸基を有する重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。
[6](A)着色剤として上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する重合体を含有し、(B)重合体として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない重合体を含有する態様。ただし、(C)重合性化合物は、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基を有しない。
[7](A)着色剤として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない重合体を含有し、(B)重合体として上記式(1)で表される部分構造を有し水酸基を有しない重合体を含有し、(C)重合性化合物として水酸基を有し上記式(1)で表される部分構造を有しない化合物を含有する態様。
[8](A)着色剤として水酸基を有する重合体を含有し、(B)重合体として水酸基を有する重合体を含有し、(C)重合性化合物として式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する態様。ただし、(A)着色剤及び(B)重合体のうち少なくも一方は、上記式(1)で表される部分構造を更に有していてもよい。
以下、本開示の着色組成物に含有される各成分、及び必要に応じて含有される成分について詳細に説明する。
【0030】
<(A)着色剤>
(A)着色剤は、用途に応じて色彩や種類が適宜選択される。(A)着色剤としては、顔料、染料、量子ドット及び天然色素のいずれも使用できる。輝度及び色純度の高い画素を得ることができる点で、(A)着色剤は、顔料及び染料の少なくともいずれかであることが好ましく、染料を含むことが特に好ましい。着色組成物に配合される顔料及び染料は有機物であることが好ましい。(A)着色剤としては、特定化合物、水酸基含有化合物、並びに、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基を有しない他の着色剤が挙げられる。
【0031】
(特定化合物について)
本開示の着色組成物の一形態において、(A)着色剤は特定化合物を含む。(A)着色剤としての特定化合物は、上記式(1)で表される部分構造を有していればよく、特に限定されない。特定化合物が重合体である場合に、上記式(1)で表される部分構造を有する重合体を通常の重合方法を用いて比較的容易に得ることができる点で、(A)着色剤としての特定化合物は、構成単位(a)と、色素構造を有する構成単位(b)とを含む重合体(以下、「重合体(A1)」ともいう)であることが好ましい。
【0032】
ここで、本明細書において「色素構造」とは、色素に由来する部分構造であって、発色団である。色素構造は電荷を有していてもよい。色素構造が電荷を有している場合、色素構造は、分子内塩及び分子間塩のいずれの形態であってもよい。色素構造は、公知の色素に由来する構造を採用することが可能であり、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ジピロメテン色素、ジアリールメタン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、アントラキノン色素、アゾ色素、キノンイミン色素、ポリメチン色素(オキソノール色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素等)、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素、及びそれらの金属錯体色素から選ばれる色素に由来する構造を挙げることができる。中でも、色特性の観点から、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラキノン色素、アゾ色素、キノンイミン色素、ポリメチン色素、サブフタロシアニン色素及びフタロシアニン色素よりなる群から選択される色素に由来する構造が好ましく、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、キノンイミン色素及びポリメチン色素よりなる群から選択される色素に由来する構造がより好ましく、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、キノンイミン色素及びシアニン色素よりなる群から選択される色素に由来する構造が更に好ましい。なお、色素構造を形成し得る具体的な色素については、「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善、1970)、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色素ハンドブック」(大河原他編;講談社、1986)等に記載されている。
【0033】
色素構造は、カチオン部又はアニオン部から構成されていてもよく、例えば、カチオン性発色団と対アニオンとの塩、アニオン性発色団と対カチオンとの塩が挙げられる。対イオンは、有機イオンであってもよく、無機イオンであってもよい。ここで、本明細書において「カチオン性発色団」とは、正電荷を有する原子団をいう。なお、原子団が正電荷を有する官能基及び負電荷を有する官能基を有しており、これらの電荷を合計して全体で正電荷となる場合にはカチオン性発色団に包含されるものとする。「アニオン性発色団」とは、負電荷を有する原子団をいう。なお、原子団が正電荷を有する官能基及び負電荷を有する官能基を有しており、これらの電荷を合計して全体で負電荷となる場合にはアニオン性発色団に包含されるものとする。また、色素構造は、電気的に中性の発色団であってもよい。「電気的に中性の発色団」とは、カチオン性発色団にもアニオン性発色団にも該当しない原子団であって、正電荷を有する官能基及び負電荷を有する官能基を有していないか、あるいは、正電荷を有する官能基及び負電荷を有する官能基を有しているとしても、正電荷の総数と負電荷の総数とが同一であり、全体として電気的に中性である原子団をいう。
【0034】
構成単位(a)は、上記式(1)で表される部分構造を有する重合体を比較的簡便に得ることができる点で、好ましくは、下記式(a1)で表される化合物に由来する構造単位である。下記式(a1)で表される化合物の具体例としては、下記式(a1-1)~式(a1-9)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化5】
(式(a1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R、R、L、X、n1及びn2は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【化6】
(式(a1-1)~式(a1-9)中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。)
【0035】
重合体(A1)において、構成単位(a)の含有割合は、硬化膜の耐溶剤性を十分に高くすることができる点で、重合体(A1)が有する全構成単位に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、構成単位(a)の含有割合は、着色組成物を調製する際の作業性と良好な着色性を保つことができる点で、重合体(A1)が有する全構成単位に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
構成単位(b)は、色素構造を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位であることが好ましい。構成単位(b)が有する色素構造は、輝度及び色純度の高い画素を得ることができる点で、イオン性染料及び非イオン性染料よりなる群から選択される染料に由来する構造であることが好ましい。ここで、本明細書では、発色団が酸性基を有するイオン性染料を「アニオン性染料」という。アニオン性染料は、酸性基と塩を形成しているイオン性染料を含む意味である。同様に、発色団が塩基性基を有するイオン性染料を「カチオン性染料」という。カチオン性染料は、塩基性基と塩を形成しているイオン性染料を含む意味である。「非イオン性染料」は、カチオン性染料及びアニオン性染料以外の染料である。
【0037】
構成単位(b)は、色素構造を重合体の側鎖に導入しやすい点で、エチレン性不飽和単量体のうち、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構成単位であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位であることが好ましく、下記式(b1)で表される構成単位であることが特に好ましい。
【化7】
(式(b1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。Lは、単結合又は2価の有機基であり、Yは、イオン性染料又は非イオン性染料に由来する構造を有する1価の基である。)
【0038】
上記式(b1)において、Lの2価の有機基としては、炭素数1~20のアルカンジイル基、炭素数1~20のアルカンジイル基のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-CONH-、-S-、-O-CO-Ph-CO-O-(Phはフェニレン基)等で置き換えられた基等が挙げられる。
【0039】
において、非イオン性染料に由来する構造としては、例えばトリアリールメタン染料、シアニン染料、キサンテン染料、アントラキノン染料、アゾ染料、ジピロメテン染料、キノフタロン染料、クマリン染料、ピラゾロン染料、キノリン染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、フタロシアニン染料、スクアリリウム染料等の公知の染料に由来する構造が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から、非イオン性染料に由来する構造は、トリアリールメタン染料、シアニン染料、キサンテン染料、アントラキノン染料、ジピロメテン染料、スクアリリウム染料又はフタロシアニン染料に由来する構造であることが好ましい。
【0040】
において、イオン性染料に由来する構造の具体例としては、カチオン性発色団と対アニオンとからなる構造、及びアニオン性発色団と対カチオンとからなる構造が挙げられる。上記式(b1)において、Yが有する色素構造とLとの結合は、Yが有する色素構造がカチオン性発色団と対アニオンとからなる構造の場合、カチオン性発色団及び対アニオンのうちいずれかが直接又は2価の連結基を介してLに結合することにより形成される。また、Yが有する色素構造がアニオン性発色団と対カチオンとからなる構造の場合、Yが有する色素構造とLとの結合は、アニオン性発色団及び対カチオンのうちいずれかが直接又は2価の連結基を介してLに結合することにより形成される。
【0041】
カチオン性発色団としては、例えば、トリアリールメタン発色団、シアニン発色団、キサンテン発色団、ポリメチン発色団、アゾ発色団、ジアリールメタン発色団、キノンイミン発色団、アントラキノン発色団、フタロシアニン発色団、スクアリリウム発色団、キノフタロン発色団等を挙げることができる。カチオン性発色団は、これらのうち、トリアリールメタン発色団、シアニン発色団、キサンテン発色団、ポリメチン発色団、又はアゾ発色団が好ましく、トリアリールメタン発色団又はシアニン発色団がより好ましい。カチオン性発色団としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)において、C.I.ベーシックに分類される染料のカチオン部を用いることもできる。
【0042】
カチオン性発色団と対アニオンとからなる構造において、対アニオンは特に限定されないが、例えば特開2015-129263号公報の段落0034に記載のアニオンが挙げられる。これらの中でも、スルホネートアニオン、イミドアニオン又はカルボキシレートアニオンが好ましく、イミドアニオンがより好ましく、スルホニルイミドアニオンが更に好ましい。
【0043】
アニオン性発色団としては、例えば、トリアリールメタン発色団、ポリメチン発色団、アゾ発色団、ジアリールメタン発色団、キノンイミン発色団、アントラキノン発色団、フタロシアニン発色団、キサンテン発色団、スクアリリウム発色団、キノフタロン発色団等を挙げることができる。これらのうち、アニオン性発色団は、トリアリールメタン発色団、アゾ発色団、フタロシアニン発色団又はキサンテン発色団が好ましく、-SO3-及び-CO2-の少なくとも一方の置換基を有する、トリアリールメタン発色団、アゾ発色団、フタロシアニン発色団、又はキサンテン発色団がより好ましい。アニオン性発色団としては、上記カラーインデックスにおいてC.I.アシッドに分類される染料のアニオン部を用いることもできる。
【0044】
アニオン性発色団と対カチオンとからなる構造において、対カチオンとしては、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ジアゾニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、対カチオンは、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。
【0045】
重合体(A1)において、構成単位(b)の含有割合は、良好な着色性を示す着色剤を得る観点から、重合体(A1)が有する全構成単位に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。また、構成単位(b)の含有割合は、重合体(A1)の現像液溶解性を確保する観点から、重合体(A1)が有する全構成単位に対して、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
重合体(A1)は、構成単位(a)及び構成単位(b)のみを有していてもよいが、耐溶剤性や耐熱性、分散性の向上を図る観点から、上記式(1)で表される部分構造及び色素構造のいずれも有さない構成単位(c)を更に有することが好ましい。構成単位(c)は、エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構成単位であることがより好ましい。
【0047】
構成単位(c)を形成する単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)の具体例としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、1級アミノ基含有アルキル(メタ)アクリレート、2級アミノ基含有アルキル(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、N-置換マレイミド、ビニルエーテル、含酸素飽和複素環を有するエチレン性不飽和単量体、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー等が挙げられる。重合体(A1)は、構成単位(c)を1種のみ有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0048】
その他の単量体として、水酸基を有する単量体(以下、「水酸基含有単量体」ともいう)を用いることにより、(A)着色剤として、上記式(1)で表される部分構造と水酸基と色素構造とを有する重合体(以下、「重合体(A1-1)」ともいう)を得ることができる。こうした重合体(A1-1)を(A)着色剤として用いることにより、重合体(A1-1)の分子間で架橋構造が形成され、硬化膜からの着色剤の溶出を十分に抑制できる点で好ましい。なお、重合体(A1-1)は、特定化合物でもあり水酸基含有化合物でもある。水酸基含有単量体は、エチレン性不飽和単量体であることが好ましく、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、(メタ)アクリル系単量体及びスチレン系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、(メタ)アクリル系単量体であることが特に好ましい。
【0049】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の1級水酸基及び2級水酸基含有モノマー;
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の側鎖のグリシジル基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対してグリシジル(メタ)アクリレート等の側鎖のグリシジル基を付加したモノマー、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の側鎖の脂環式エポキシ基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対して3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の側鎖の脂環式エポキシ基を付加したモノマー、(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル(メタ)アクリレート等の側鎖オキセタニル基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、及び(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対して(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル(メタ)アクリレート等の側鎖オキセタニル基を付加したモノマー等の2級水酸基含有モノマー;
2,2-ジメチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。水酸基含有単量体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
重合体(A1-1)の合成に使用する水酸基含有単量体は、上記式(1)で表される部分構造が有する基「OR」及び基「OR」との反応性に優れる点で、重合体側鎖に1級及び/又は2級のアルコール性水酸基を有する単量体が好ましい。中でも、水酸基含有単量体は、1級水酸基含有モノマー、1級水酸基及び2級水酸基含有モノマー、並びに2級水酸基含有モノマーよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。1級水酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが特に好ましい。1級水酸基及び2級水酸基含有モノマーとしては、グリセロールモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。2級水酸基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等の側鎖のグリシジル基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対してグリシジル(メタ)アクリレート等の側鎖のグリシジル基を付加したモノマー、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の側鎖の脂環式エポキシ基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対して3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の側鎖の脂環式エポキシ基を付加したモノマー、(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル(メタ)アクリレート等の側鎖オキセタニル基に対して(メタ)アクリル酸等の酸モノマーを付加したモノマー、及び(メタ)アクリル酸等の酸モノマーに対して(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル(メタ)アクリレート等の側鎖オキセタニル基を付加したモノマーが特に好ましい。
【0051】
重合体(A1-1)を得る方法としては、上述した水酸基含有単量体と、特定基含有単量体と、色素構造を有する単量体とを原料モノマーに用いて重合する方法(方法〔1a〕)のほか、以下の方法〔2a〕~〔4a〕が挙げられる。
方法〔2a〕:エポキシ基含有単量体(又はカルボキシ基含有単量体)、特定基含有単量体、及び色素構造を有する単量体を原料モノマーに用いて重合することによりエポキシ基を側鎖に有する重合体を得て、次いで、該重合体とカルボキシ基含有化合物(又はエポキシ基含有化合物)とを反応させて側鎖に水酸基(より具体的には2級水酸基)を導入する方法。
方法〔3a〕:水酸基を有する重合開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等)を用いて、特定基含有単量体と色素構造を有する単量体とを含む原料モノマーを重合する方法。
方法〔4a〕:水酸基を含有する連鎖移動剤(例えば、チオグリコール酸モノエタノールアミン、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジチオール等)を用いて、特定基含有単量体と色素構造を有する単量体とを含む原料モノマーを重合する方法。
これらのうち、方法〔1a〕及び方法〔2a〕によれば、水酸基を側鎖に有する重合体を得ることができる。また、方法〔3a〕及び方法〔4a〕によれば、水酸基を主鎖末端に有する重合体を得ることができる。ここで、本明細書において、水酸基を「主鎖末端に有する」とは、主鎖構造のうち、隣接構成単位と結合を形成していない構成単位に対して結合を形成していることをいう。
【0052】
方法〔2a〕において、エポキシ基含有単量体は(メタ)アクリル系単量体が好ましく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラニル基含有(メタ)アクリル系単量体;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル(メタ)アクリレート等のオキセタニル基含有(メタ)アクリル系単量体等が挙げられる。カルボキシ基含有化合物としては、カルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、(メタ)アクリル系化合物がより好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。重合体(A1-1)は、重合体が有する水酸基の量を調整しやすい点、及び水酸基含有重合体を比較的簡便に得ることができる点で、水酸基を少なくとも側鎖に有する重合体が好ましい。
【0053】
重合体(A1-1)において、水酸基を有する構成単位の含有割合は、耐溶剤性の高い着色硬化膜を得る観点から、重合体(A1-1)が有する全構成単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、水酸基を有する構成単位の含有割合は、保存安定性を良好にする観点から、重合体(A1-1)が有する全構成単位に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0054】
なお、重合体(A1)を得る方法は特に限定されない。重合体(A1)は、上記単量体を用いて、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合等により製造することができる。また、重合体(A1-1)を上記方法〔2a〕により製造する場合、エポキシ基含有単量体とカルボキシ基含有化合物との反応は公知の方法に従い、例えば溶液中で行うことができる。
【0055】
(水酸基含有化合物について)
本開示の着色組成物の一形態において、(A)着色剤は水酸基含有化合物を含む。(A)着色剤としての水酸基含有化合物は、低分子化合物であってもよく、重合体であってもよい。(A)着色剤として水酸基を有する低分子化合物を用いる場合、該低分子化合物は、輝度及び色純度の高い着色硬化膜を得ることができる点で、染料(以下、「水酸基含有染料(A2-1)」ともいう)であることが好ましい。水酸基含有染料(A2-1)は、非イオン性染料及びイオン性染料のいずれでもよく、イオン性染料の場合、アニオン性染料及びカチオン性染料のいずれでもよい。
【0056】
水酸基含有染料(A2-1)が有する水酸基の数は、耐溶剤性と保存安定性とを両立させる観点から、1~10個が好ましく、2~8個であることがより好ましい。
水酸基含有染料(A2-1)としては、例えば、特開2013-173850号公報、国際公開第2014/192973号パンフレット等に記載の水酸基含有染料を挙げることができる。また、上記で例示した公知の染料を原料として、公知の方法にて製造することができる。水酸基含有染料(A2-1)は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0057】
(A)着色剤として水酸基を有する重合体を用いる場合、該重合体としては、上記重合体(A1-1)のほか、水酸基と色素構造とを有し、かつ上記式(1)で表される部分構造を有さない重合体(以下、「水酸基含有重合体(A2-2)」ともいう)が挙げられる。水酸基含有重合体(A2-2)は、水酸基と色素構造とを有していればよく、水酸基の位置等は特に限定されない。すなわち、水酸基含有重合体(A2-2)は、水酸基を側鎖に有していてもよく、主鎖末端に有していてもよく、側鎖及び主鎖末端の両方に有していてもよい。水酸基含有重合体(A2-2)を得る方法としては、重合体(A1-1)で説明した方法〔1a〕~〔4a〕において、特定基含有単量体を用いずに重合する方法が挙げられる。なお、水酸基含有重合体(A2-2)を製造する際には、これらの方法のうちの1種のみを用いてもよく、又は2種以上を組み合わせてもよい。重合体(A2-2)は、水酸基の量を調整しやすい点、及び水酸基含有重合体を比較的簡便に得ることができる点で、水酸基を少なくとも側鎖に有する重合体が好ましい。
【0058】
重合体(A2-2)において、水酸基を有する構成単位の含有割合は、耐溶剤性の高い着色硬化膜を得る観点から、重合体(A2-2)が有する全構成単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることがより更に好ましい。また、水酸基を有する構成単位の含有割合は、良好な着色性を得る観点から、重合体(A2-2)が有する全構成単位に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
(A)着色剤が重合体である場合、該重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、1,000~100,000であることが好ましい。Mwは、好ましくは3,000以上である。また、Mwは、好ましくは50,000以下である。Mwが1,000以上であるとパターン形状が良好となる点で好ましく、100,000以下であると、解像時間が長くなり過ぎず、工程性確保の観点から好ましい。また、(A)着色剤が重合体である場合、該重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~3.0である。
【0060】
(他の着色剤)
着色組成物は、(A)着色剤として、特定化合物及び水酸基含有化合物のうち少なくとも一方のみを含有していてもよいが、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基のいずれも有さない着色剤(以下、「他の着色剤」ともいう)を併用してもよい。また、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分中に、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを含む場合、着色組成物は、(A)着色剤として他の着色剤のみを含有していてもよい。
【0061】
他の着色剤は、特に限定されるものではなく、用途に応じて色彩や種類を適宜選択することができる。他の着色剤としては、顔料、染料、量子ドット及び天然色素のいずれも使用できる。本開示の着色組成物を、カラーフィルタを構成する各色画素の形成に用いる場合、輝度及び色純度の高い画素を得ることができる点で、他の着色剤は、顔料及び染料よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、有機顔料及び有機染料よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0062】
有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメントに分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)名が付されているものを挙げることができ、以下の有機顔料を好ましく用いることができる。
【0063】
C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド279等の赤色顔料;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59等の緑色顔料;
C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80、C.I.ピグメントブルー60等の青色顔料;
C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー179、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー211、C.I.ピグメントイエロー215、C.I.ピグメントイエロー231等の黄色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ38等の橙色顔料;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29等の紫色顔料;ラクタム系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料。
また、有機顔料としては、上記のほか、特表2011-523433号公報の式(Ic)で表されるブロモ化ジケトピロロピロール顔料を使用することもできる。
【0064】
無機顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。無機顔料としては、その他、特開2001-081348号公報、特開2010-026334号公報、特開2010-237384号公報、特開2010-237569号公報、特開2011-006602号公報、特開2011-145346号公報等に記載のレーキ顔料を挙げることができる。
【0065】
なお、顔料を使用する際には、顔料を再結晶法、再沈殿法、溶剤洗浄法、昇華法、真空加熱法又はこれらの組み合わせにより精製して使用してもよい。また、所望により、顔料の粒子表面を樹脂で改質して使用してもよい。また、有機顔料を使用する際には、いわゆるソルトミリングにより、一次粒子を微細化して使用してもよい。ソルトミリングの方法としては、例えば特開平08-179111号公報に記載の方法を採用することができる。
【0066】
染料としては、特に限定されるものではなく、例えば上記カラーインデックスにおいてダイ(Dye)に分類されている化合物の他、公知の染料を用いることができる。このような染料としては、上記で例示した公知の染料が挙げられる。上記の中でも、耐熱性の観点から、トリアリールメタン染料、シアニン染料、キサンテン染料、アントラキノン染料、ジピロメテン染料、スクアリリウム染料及びフタロシアニン染料が好ましい。
【0067】
染料は、カチオン部分とアニオン部分とから構成されていてもよい。こうした染料としては、例えばカチオン性発色団と対アニオンとの塩、又はアニオン性発色団と対カチオンとの塩が挙げられる。カチオン性発色団、対アニオン、アニオン性発色団及び対カチオンの例示については、上記の説明が適用される。
【0068】
本開示の着色組成物は、所望により、(A)着色剤と共に分散剤が配合されてもよい。また、着色組成物には、分散剤と共に分散助剤を含有させてもよい。分散剤及び分散助剤としては公知のものを使用できる。具体的には、分散剤として、例えばウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪酸エステル系分散剤、ポリエステル系分散剤、アクリル系分散剤等を;分散助剤として、例えば顔料誘導体等を、それぞれ挙げることができる。
【0069】
分散剤の具体例としては、塩基性分散剤として、例えばソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ13650、ソルスパーズ13940、ソルスパーズ16000、ソルスパーズ17000、ソルスパーズ18000、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ24000SG、ソルスパーズ24000GR、ソルスパーズ28000、ソルスパーズ31845、ソルスパーズ32000、ソルスパーズ32500、ソルスパーズ32550、ソルスパーズ32600、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ35200、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ38500、ソルスパーズ39000、ソルスパーズ56000、ソルスパーズ71000、ソルスパーズ76400、ソルスパーズ76500、ソルスパーズX300、ソルスパーズ9000、ソルスパーズJ200(以上、ルーブリゾール社製)、DISPERBYK-108、DISPERBYK-109、DISPERBYK-112、DISPERBYK-116、DISPERBYK-130、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-182、DISPERBYK-183、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、BYK-9077(以上、ビックケミー社製)、アジスパーPB821、PB822、PB823、PB824、PB827(以上、味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0070】
酸性分散剤としては、ソルスパーズ3000、ソルスパーズ21000、ソルスパーズ26000、ソルスパーズ36600、ソルスパーズ41000、ソルスパーズ41090、ソルスパーズ43000、ソルスパーズ44000、ソルスパーズ46000、ソルスパーズ47000、ソルスパーズ55000(以上、ルーブリゾール社製)、DISPERBYK-102、DISPERBYK-111、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-2096、BYK-P104、BYK-P104S、BYK-P105、BYK-220S(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。分散剤は、1種が単独で使用されてもよく、又は2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0071】
(A)着色剤の含有割合は、用途等に応じて適宜選択可能である。輝度が高く色純度に優れる画素を形成する観点や、遮光性に優れるブラックマトリックスを形成する観点から、(A)着色剤の含有割合は、着色組成物の全固形分の合計量に対し、好ましくは5~70質量%である。(A)着色剤の含有割合は、着色組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは12質量%以上である。また、(A)着色剤の含有割合は、着色組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは60質量%以下であり、更に好ましくは55質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以下である。
【0072】
(A)着色剤のうち染料の含有割合は、(A)着色剤の合計量に対して、5質量%以上とすることが好ましい。一般に、染料は耐熱性に劣るため、染料を含有する着色組成物を用いて硬化膜を形成する際、塗布膜を200℃以上のポストベーク温度で加熱することが困難である。これに対し、本開示の着色組成物は、200℃未満、好ましくは180℃以下の温度でポストベークを行った場合にも、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成することができる。したがって、本開示の着色組成物は、染料の含有割合を多くでき、各種のカラーフィルタの作製に好適に使用できる。輝度及び色純度の高い着色硬化膜を得る観点から、染料の含有割合は、(A)着色剤の合計量に対して、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。
【0073】
<(B)重合体>
(B)重合体は、(A)着色剤を分散、染色若しくは浸透させる目的で、又はバインダー樹脂として着色組成物に含有される。アルカリ現像型の硬化膜形成用の着色組成物を得る場合には、(B)重合体をアルカリ可溶性の重合体とすることが好ましい。なお、(B)重合体は色素構造を有さない点で、(A)着色剤である染料樹脂等の重合体とは異なる。
【0074】
(B)重合体がアルカリ可溶性の重合体である場合、(B)重合体は、アルカリ溶液に対して可溶であればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシ基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有する重合体であることが好ましい。(B)重合体は、これらの中でも、カルボキシ基を有する重合体(以下、「カルボキシ基含有重合体」ともいう)であることが好ましい。カルボキシ基含有重合体としては、例えば、1個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b1)」ともいう)と、不飽和単量体(b1)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b2)」ともいう)との共重合体が挙げられる。
【0075】
不飽和単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等を挙げることができる。カルボキシ基含有重合体は、不飽和単量体(b1)に由来する構造単位を1種のみ有していてもよいし、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0076】
上記共重合体において、不飽和単量体(b1)に由来する構成単位の含有割合は、アルカリ現像性に優れた着色硬化膜を得ることができる点で、(B)重合体が有する全構成単位に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。また、不飽和単量体(b1)に由来する構成単位の含有割合は、溶剤との溶解性を良好にする点で、上記共重合体が有する全構成単位に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
不飽和単量体(b2)は、用途等に応じて適宜選択可能であり、特に限定されない。(B)重合体の合成に際し、不飽和単量体(b2)として上記式(1)で表される部分構造を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「特定基含有単量体」ともいう)を用いることにより、(B)重合体として特定化合物を得ることができる。また、不飽和単量体(b2)として水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることにより、(B)重合体として水酸基含有化合物を得ることができる。
【0078】
(特定化合物について)
本開示の着色組成物の一形態において、(B)重合体は特定化合物を含む。(B)重合体としての特定化合物は、上記式(1)で表される部分構造を側鎖に有する重合体を合成しやすい点で、構成単位(a)を有する重合体(以下、「重合体(B1)」ともいう)であることが好ましい。構成単位(a)を有するために用いられる特定基含有単量体の例示及び好ましい例については、(A)着色剤の説明が適用される。
【0079】
重合体(B1)において、構成単位(a)の含有割合は、硬化膜の耐溶剤性を十分に高くすることができる点で、重合体(B1)が有する全構成単位に対して、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、構成単位(a)の含有割合は、着色組成物の保存安定性を保持することができる点で、重合体(B1)が有する全構成単位に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0080】
重合体(B1)の合成に際し、不飽和単量体(b2)として水酸基含有単量体を用いることにより、(B)重合体として、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを有する重合体(以下、「重合体(B1-1)」ともいう)を得ることができる。重合体(B1-1)を着色組成物に含有させることにより、重合体(B1-1)同士の間で架橋構造が形成され、耐溶剤性により優れた硬化膜を得ることができる点で好適である。なお、重合体(B1-1)は、特定化合物でもあり水酸基含有化合物でもある。重合体(B1)の合成に使用される水酸基含有単量体の例示及び好ましい例については、(A)着色剤の説明が適用される。
【0081】
重合体(B1-1)を得る方法としては、水酸基含有単量体と、特定基含有単量体とを原料モノマーに用いて重合する方法(方法〔1b〕)のほか、以下の方法〔2b〕~〔4b〕が挙げられる。
方法〔2b〕:エポキシ基含有単量体(又はカルボキシ基含有単量体)及び特定基含有単量体を原料モノマーに用いて重合することによりエポキシ基を側鎖に有する重合体を得て、次いで、該重合体とカルボキシ基含有化合物(又はエポキシ基含有化合物)とを反応させて側鎖に水酸基(より具体的には2級水酸基)を導入する方法。
方法〔3b〕:水酸基を有する重合開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等)を用いて、特定基含有単量体を含む原料モノマーを重合する方法。
方法〔4b〕:水酸基を含有する連鎖移動剤(例えば、チオグリコール酸モノエタノールアミン、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジチオール等)を用いて、特定基含有単量体を含む原料モノマーを重合する方法。
なお、方法〔2b〕において使用されるエポキシ基含有単量体及びカルボキシ基含有化合物の具体例については、上記方法〔2a〕の説明が適用される。重合体(B1-1)は、重合体が有する水酸基の量を調整しやすい点、及び水酸基含有重合体を比較的簡便に得ることができる点で、水酸基を少なくとも側鎖に有する重合体が好ましい。
【0082】
重合体(B1)の合成に際して使用される不飽和単量体(b2)としては、上記のほか、例えば、N-アルキルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等のN-置換マレイミド;スチレン、α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アセナフチレン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕-3-エチルオキセタン等の(メタ)アクリル酸エステル;
シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカニルビニルエーテル、3-(ビニルオキシメチル)-3-エチルオキセタン等のビニルエーテル;
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンの如き重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー等を挙げることができる。(B)重合体は、不飽和単量体(b2)に由来する構造単位を1種のみ有していてもよいし、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0083】
(水酸基含有化合物について)
本開示の着色組成物の一形態において、(B)重合体は水酸基含有化合物を含む。(B)重合体として水酸基を有する重合体を用いる場合、該重合体としては、上記重合体(B1-1)のほか、水酸基を有し、かつ上記式(1)で表される部分構造を有さない重合体(以下、「水酸基含有重合体(B2)」ともいう)が挙げられる。水酸基含有重合体(B2)は、水酸基を側鎖に有していてもよく、主鎖末端に有していてもよく、側鎖及び主鎖末端の両方に有していてもよい。これらのうち、水酸基含有重合体(B2)は、水酸基の量を調整しやすい点、及び水酸基含有重合体を比較的簡便に得ることができる点で、水酸基を少なくとも側鎖に有する重合体であることが好ましい。水酸基含有重合体(B2)を得る方法としては、重合体(B1-1)で説明した方法〔1b〕~〔4b〕において特定基含有単量体を用いずに重合する方法が挙げられる。重合体(B2)の合成に使用される水酸基含有単量体の例示及び好ましい例については、(A)着色剤の説明が適用される。なお、水酸基含有重合体(B2)を製造する際には、方法〔1b〕~〔4b〕のうちの1種のみを用いてもよく、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0084】
重合体(B1-1)及び重合体(B2)のそれぞれにおいて、水酸基を有する構成単位の含有割合は、耐溶剤性の高い着色硬化膜を得る観点から、重合体(B1-1)又は重合体(B2)が有する全構成単位に対して、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、水酸基を有する構成単位の含有割合は、保存安定性を良好にする観点から、重合体(B1-1)又は重合体(B2)が有する全構成単位に対して、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0085】
(他の重合体)
着色組成物は、(B)重合体として、特定化合物及び水酸基含有化合物のうち少なくとも一方のみを含有していてもよいが、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基のいずれも有さない重合体(以下、「他の重合体」ともいう)を併用してもよい。また、(A)着色剤及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種として、特定化合物と水酸基含有化合物とを含む場合、着色組成物は、(B)重合体として他の重合体のみを含有していてもよい。
【0086】
他の重合体は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。他の重合体の具体例としては、例えば、特開平7-140654号公報、特開平8-259876号公報、特開平10-31308号公報、特開平10-300922号公報、特開平11-174224号公報、特開平11-258415号公報、特開2000-56118号公報、特開2004-101728号公報等に開示されている共重合体を挙げることができる。また、(B)重合体としては、例えば特開平5-19467号公報、特開平6-230212号公報、特開平7-207211号公報、特開平9-325494号公報、特開平11-140144号公報、特開2008-181095号公報等に開示されているように、重合性不飽和結合(例えば、(メタ)アクリロイル基中の炭素-炭素二重結合)を側鎖に有するカルボキシ基含有重合体を使用することもできる。
【0087】
(B)重合体は、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合等の公知の方法により製造することができる。また、例えば特開2003-222717号公報、特開2006-259680号公報、国際公開第07/029871号パンフレット等に開示の方法により、その構造やMw及びMw/Mnを制御することもできる。なお、(B)重合体としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0088】
(B)重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により溶出溶媒をテトラヒドロフランとして測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000~100,000であることが好ましい。Mwは、好ましくは3,000以上である。また、Mwは、好ましくは50,000以下である。Mwが1,000以上であると、パターン形状を良好にできる点で好ましく、100,000以下であると、解像時間が長くなり過ぎず、工程性確保の観点から好ましい。
また、(B)重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~3.0である。なお、Mnは、溶出溶媒をテトラヒドロフランとしてGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
【0089】
着色組成物中において、(B)重合体の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、通常、10~1,000質量部である。(B)重合体の含有量が上記範囲であると、塗膜形成プロセス上において適切なアルカリ現像性と、着色組成物の製品としての十分な保存安定性と、カラーフィルタとして要求膜厚に対し十分な色濃度とを確保することができる。(B)重合体の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。また、(B)重合体の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、好ましくは500質量部以下であり、より好ましくは300質量部以下である。
【0090】
<(C)重合性化合物>
(C)重合性化合物は、重合性基を好ましくは2個以上有する化合物であり、架橋剤として機能する低分子化合物である。なお、(C)重合性化合物は、色素構造を有さない点で(A)着色剤とは異なり、分子量分布を有しない点で(B)重合体とは異なる。すなわち、重合性基及び色素構造を有する化合物は(A)着色剤に分類される。重合性基を有し色素構造を有しない重合体は(B)重合体に分類される。(C)重合性化合物の分子量は、好ましくは1,000以下であり、より好ましくは800以下である。
【0091】
重合性基としては、例えばエチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基等が挙げられる。これらのうち、(C)重合性化合物は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物であることが好ましく、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが特に好ましい。(C)重合性化合物1分子が有する重合性基の数は、好ましくは2~10個であり、より好ましくは2~8個である。
【0092】
(水酸基含有化合物について)
本開示の着色組成物の一形態において、(C)重合性化合物は水酸基含有化合物(以下、「水酸基含有架橋剤(C1)」ともいう)を含む。水酸基含有架橋剤(C1)を用いることにより、上記式(1)中の基「-OR」及び基「-OR」との反応点を比較的簡便に導入できる点、及び着色組成物中の水酸基の含有量を調整しやすい点で好ましい。
【0093】
水酸基含有架橋剤(C1)は、耐溶剤性と保存安定性とを両立させる観点から、1分子内の水酸基の数が、1~8個であることが好ましく、1~6個であることがより好ましく、1~4個であることが更に好ましい。また、水酸基含有架橋剤(C1)は、熱及び光に対する反応性が高い点で、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0094】
本開示の着色組成物が、水酸基含有化合物として水酸基含有架橋剤(C1)のみを含有する場合、水酸基含有架橋剤(C1)は、水酸基価が10~500mgKOH/gであることが好ましい。水酸基含有架橋剤(C1)の水酸基価を上記範囲内の値とすることにより、本開示の着色組成物を用いて得られる着色硬化膜の耐溶剤性を高くする効果と、着色組成物の保存安定性の効果とをバランスよく良好にできる点で好ましい。耐溶剤性の観点から、水酸基含有架橋剤(C1)の水酸基価は、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、更に好ましくは50mgKOH/g以上である。また、保存安定性の観点から、水酸基含有架橋剤(C1)の水酸基価は、より好ましくは400mgKOH/g以下であり、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。なお、本明細書において「水酸基価」とは、水酸基含有架橋剤(C1)の固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0095】
水酸基含有架橋剤(C1)は、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートが好ましく、その具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート等が挙げられる。これらのうち、分子間又は分子内における架橋密度が高められ、低温焼成によっても膜の硬化性をより向上できる点で、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレートが特に好ましい。なお、水酸基含有架橋剤(C1)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0096】
(他の重合性化合物)
着色組成物は、(C)重合性化合物として水酸基含有化合物のみを含有していてもよいが、上記式(1)で表される部分構造及び水酸基のいずれも有さない重合性化合物(以下、「他の重合性化合物」ともいう)を併用してもよい。また、本開示の着色組成物が、(A)着色剤及び(B)重合体よりなる群から選択される少なくとも1種として特定化合物と水酸基含有化合物とを含有する場合、着色組成物は、(C)重合性化合物として他の重合性化合物のみを含有していてもよい。
【0097】
他の重合性化合物の具体例としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えば、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物等が挙げられる。なお、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造とは、1以上のトリアジン環又はフェニル置換トリアジン環を基本骨格として有する化学構造をいい、メラミン、ベンゾグアナミン又はそれらの縮合物をも含む概念である。2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0099】
他の重合性化合物としては、中でも、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、カルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミンが好ましく、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、カルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。他の重合性化合物としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0100】
着色組成物中における(C)重合性化合物の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、(C)重合性化合物の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、1,000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましい。(C)重合性化合物の含有割合が上記範囲にあると、着色硬化膜として十分な硬化性と十分なアルカリ現像性とを確保できるとともに、未露光部の基板上あるいは遮光層上の地汚れ、膜残り等の発生を十分に抑制できる点で好ましい。
【0101】
本開示の着色組成物は、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物の他、必要に応じて種々の成分を含有していてもよい。本開示の着色組成物に含有されていてもよいその他の成分について以下に説明する。
【0102】
<(D)光重合開始剤>
(D)光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により(C)重合性化合物の重合を開始し得る活性種を発生する化合物である。このような光重合開始剤としては、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系開始剤、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。これらのうち、(D)光重合開始剤は、ラジカルを十分に生成することができ、膜硬化を十分に進行させることができる点で、オキシム系開始剤を含むことが好ましい。オキシム系開始剤としては、O-アシルオキシム系開始剤を好ましく用いることができる。
【0103】
O-アシルオキシム系開始剤の具体例としては、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-,1-(O-アセチルオキシム)(下記式(D-1)で表される化合物)、下記式(D-2)で表される化合物
【化8】
等が挙げられる。O-アシルオキシム系開始剤としては、NCI-831、NCI-930(以上、株式会社ADEKA社製)、PBG-3057(以上、常州強力電子新材料社製)、イルガキュアOXE03(以上、BASFジャパン株式会社製)等の市販品を使用してもよい。
【0104】
O-アシルオキシム系開始剤としては、下記式(d-10)、式(d-11)及び式(d-12)のそれぞれで表される化合物についても好ましく使用できる。
【化9】
(式(d-10)中、X及びXは、それぞれ独立して単結合又は-CO-である。ただし、X及びXの少なくとも一方は-CO-である。Rは炭素数2~6のアルキル基であり、Rは炭素数4~10のアルキル基である。Rは、炭化水素環又は複素環を有する1価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。)
【化10】
(式(d-11)及び式(d-12)中、Xは、単結合又は炭素数1~5のアルカンジイル基であり、Xは、-O-、-S-又は-NR10-(ただし、R10は水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基である。)である。X及びXは、それぞれ独立して単結合又は-CO-であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は置換若しくは無置換の炭素数3~20の複素環基である。R11及びR12は、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基である。)
【0105】
上記式(d-10)において、Rはエチル基又はプロピル基が好ましい。Rは直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。Rは、炭化水素環又は複素環が2価の連結基を介してオキシムエステル基の炭素原子に結合した基であることが好ましい。2価の連結基は、炭素数1~4のアルカンジイル基、-S-、-O-及び-CO-よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、-S-又は-O-であることがより好ましい。炭化水素環は、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環が好ましく、複素環は、ジオキソラン環又はピリミジン環が好ましい。
【0106】
上記式(d-11)及び式(d-12)において、R、R、R又はRが置換基を有する場合、当該置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。R11及びR12の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基及びシアノ基、並びに、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基又はシアノ基によって置換された基等が挙げられる。
【0107】
O-アシルオキシム系開始剤としては、硬化膜のコントラスト比をより良好にできる点で、ジフェニルスルフィド骨格を有するアシルオキシム化合物、カルバゾール骨格を有するアシルオキシム化合物、及びフルオレン骨格を有するアシルオキシム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましく使用できる。O-アシルオキシム系開始剤は、より好ましくは、ジフェニルスルフィド骨格を有するアシルオキシム化合物、及びフルオレン骨格を有するアシルオキシム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0108】
(D)光重合開始剤の含有割合は、(C)重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、(D)光重合開始剤の含有割合は、(C)重合性化合物100質量部に対して、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。(D)光重合開始剤の含有量が上記範囲であると、適切な露光量による塗膜の十分な硬化と、着色組成物としての十分なアルカリ現像性とを確保できるとともに、未露光部の基板上あるいは遮光層の地汚れ、膜残りの発生を十分に抑制できる。また、ポストベーク時における重合開始剤の黄変による塗膜の輝度低下を十分に抑制できる。(D)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0109】
<(E)溶剤>
本開示の着色組成物は、(E)溶剤を配合して液状組成物として調製される。(E)溶剤としては、着色組成物を構成する各成分(A)、(B)、(C)や他の成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものを好ましく使用できる。
【0110】
(E)溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0111】
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等の直鎖、分岐又は環状構造を有していてもよいアルキルアルコール類;ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;
【0112】
プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類;
3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシカルボン酸エステル類;
酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン
等のアミド又はラクタム類等が挙げられる。
【0113】
これらのうち、(E)溶剤としては、溶解性、顔料分散性、塗布性等の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、及びピルビン酸エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、(E)溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0114】
本開示の着色組成物は、第1級アルコール及び第2級アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(以下、「特定アルコール類」ともいう)を所定量以下の範囲で含有することにより、着色組成物の保存安定性を良好にできる点で好ましい。特定アルコール類は、低温焼成を実現するために、沸点が150℃以下である溶媒が好ましい。特定アルコール類の好ましい例としては、第1級アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オールを;第2級アルコールとして、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オールを、それぞれ挙げることができる。これらのうち、保存安定性に優れた着色組成物を得ることができる点で、第1級アルコールが好ましい。
【0115】
なお、本開示の着色組成物において、成膜時の架橋形成はエステル交換反応によるものであり、エステル交換反応は可逆的な反応であるため、特定アルコール類を着色組成物中に存在させることにより平衡が保たれ、エステル交換反応の進行が抑制されたことにより、着色組成物の保存安定性を良化できたものと考えられる。
【0116】
本開示の着色組成物において、特定アルコール類の含有割合は、(A)着色剤の分散性を保持する観点から、着色組成物に含有される(E)溶剤の全量に対して、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。また、特定アルコール類の含有割合は、保存安定性の改善効果を得るために、0質量%よりも多いことが好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、1質量%以上がより更に好ましい。なお、特定アルコール類としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0117】
<(F)添加剤>
着色組成物は、その他必要に応じて、上記以外の種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリ(フロオロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の界面活性剤;密着促進剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;多官能チオール類;ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物等の金属キレート化合物、等を挙げることができる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲において、各添加剤の種類に応じて適宜設定することができる。
【0118】
本開示の着色組成物において、特定化合物及び水酸基含有化合物の含有割合は、特定化合物及び水酸基含有化合物の配合形態に応じて、上記式(1)で表される部分構造の含有量及び水酸基の含有量がそれぞれ好適な範囲となるように適宜設定することができる。
【0119】
<着色組成物の調製>
本開示の着色組成物は、適宜の方法により調製することができる。その調製方法としては、例えば特開2008-58642号公報、特開2010-132874号公報等に開示されている方法が挙げられる。(A)着色剤として染料と顔料の両方を使用する場合、特開2010-132874号公報に開示されているように、染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液を、別途調製した顔料分散液等と混合し、得られた着色組成物を第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用することができる。また、染料と、上記(B)重合体及び(C)重合性化合物、並びに必要に応じて使用される他の成分を溶媒に溶解し、得られた溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した溶液を、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた着色組成物を第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用してもよい。また、染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液と、上記(B)重合体及び(C)重合性化合物、並びに必要に応じて使用する他の成分を混合・溶解し、得られた溶液を第2のフィルタに通し、更に第2のフィルタを通過した溶液を、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた着色組成物を第3のフィルタに通すことにより調製する方法を採用してもよい。
【0120】
[カラーフィルタ及びその製造方法]
本開示のカラーフィルタは、上記の着色組成物を用いて形成された着色層を備える。
【0121】
カラーフィルタを製造する方法としては、まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するように遮光層(ブラックマトリックス)を形成する。次いで、この基板上に、例えば緑色の着色組成物(液状組成物)を塗布した後、減圧乾燥又はプレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する(膜形成工程)。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光した後(露光工程)、アルカリ現像液を用いて現像する(現像工程)。このとき、ポジ型の場合には塗膜の露光部を溶解除去し、ネガ型の場合には塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、ポストベークを行うことにより(加熱工程)、緑色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。
【0122】
次いで、赤色又は青色の各着色組成物を用い、上記と同様にして各着色組成物の塗布、乾燥、露光、現像及びポストベークを行い、赤色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、緑色、赤色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、各色の画素を形成する順序は上記のものに限定されない。ブラックマトリックスは、スパッタや蒸着により成膜したクロム等の金属薄膜を、フォトリソグラフィー法を利用して所望のパターンとすることにより形成することができる。また、黒色の着色剤が分散された着色組成物を用いて、上記画素の形成の場合と同様にして形成することもできる。
【0123】
カラーフィルタを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0124】
着色組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。これらのうち特に、均一な膜厚の塗膜を得ることができる点で、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。塗布後、減圧乾燥を行うことにより、基板上に塗膜が形成される。減圧乾燥は、通常、室温にて1~15分、好ましくは1~10分実施され、通常、50~200Paに到達する圧力で行われる。塗膜の形成は、ポストベーク温度よりも低温の加熱処理(プレベーク)により行われてもよい。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.6~8μm、好ましくは1.2~5μmである。
【0125】
露光する際に使用される放射線の光源としては、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。波長は、190~450nmの範囲にある放射線が好ましく、300~450nmの範囲にある放射線がより好ましい。放射線の露光量は、一般的には10~10,000J/m2が好ましい。放射線の露光量は、より好ましくは100J/m2以上であり、更に好ましくは200J/m2以上である。また、放射線の露光量は、より好ましくは5,000J/m2以下であり、更に好ましくは2,000J/m2以下である。
【0126】
アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で5~300秒が好ましい。
【0127】
ポストベークは、パターニングされた塗膜を70~230℃で加熱することにより行われる。ポストベーク温度は、硬化性や耐溶剤性、基板との密着性の向上、色移りの抑制、基板保護を考慮して、例えば70~120℃、あるいは120℃~180℃、180℃~240℃等、用途に応じて加熱温度を設定することができる。その際、特定化合物が有する基「OR」及び基「OR」の少なくとも一方と、水酸基含有化合物が有するOH基との間でのエステル交換反応を十分に進行させるために、着色組成物が含有するアルコール類の沸点よりも高い温度をポストベーク時の加熱温度に設定するとよい。ポストベーク時の加熱時間は、加熱温度により適宜設定可能であるが、例えば70~120℃の低温においては、通常5~120分、好ましくは30~100分である。基板上に形成された着色硬化膜(すなわち画素)の膜厚は、通常0.5~5μm、好ましくは1.0~3μmである。
【0128】
このようにして得られた画素パターン上に、必要に応じて保護膜を形成した後、透明導電膜をスパッタリングにより形成する。透明導電膜を形成した後、更にスペーサーを形成してカラーフィルタとすることもできる。スペーサーは、通常、透明な感光性樹脂組成物を用いて形成されるが、遮光性を有するスペーサー(ブラックスペーサー)とすることもできる。この場合、黒色の着色剤が分散された感光性着色組成物が用いられる。本開示の着色組成物は、かかるブラックスペーサーの形成にも好適に使用できる。
【0129】
本開示の着色組成物は、カラーフィルタに用いられる各色画素、ブラックマトリックス、ブラックスペーサー等のいずれの着色硬化膜の形成にも好適に用いることができる。このようにして形成されたカラーフィルタは輝度及び色純度が高く、カラー液晶表示素子、固体撮像素子、カラーセンサー、有機EL表示素子、電子ペーパー等に特に有用である。
【0130】
[表示素子]
本開示の表示素子は、本開示のカラーフィルタを備えるものである。表示素子としては、カラー液晶表示素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等が挙げられる。
【0131】
本開示のカラーフィルタを備えるカラー液晶表示素子は、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)の他、白色LEDを光源とするバックライトユニットを具備することができる。白色LEDとしては、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色LEDと緑色蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDとYAG系蛍光体の混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと橙色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、紫外線LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED等を挙げることができる。
【0132】
本開示のカラーフィルタを備える有機EL表示素子は、適宜の構造をとることが可能であり、例えば、特開平11-307242号公報に開示されている構造を挙げることができる。また、本開示のカラーフィルタを備える電子ペーパーは、例えば特開2007-41169号公報に開示されている構造を挙げることができる。
【0133】
[受光素子]
本開示の受光素子は、上述した着色組成物を用いて形成された着色硬化膜を備える。本開示の受光素子は適宜の構造を採り得るが、例えば、上記の着色硬化膜を、固体撮像素子を構成するカラーフィルタとし、フォトダイオードと組み合わせることで、固体撮像素子等の撮像素子を構成することができる。また、本開示の硬化膜を赤外光透過フィルタとして使用し、フォトダイオードと組み合わせることで、赤外光検出用画素を構成することができる。
【0134】
[硬化性組成物]
本開示の硬化性組成物は、上述した(B)重合体と(C)重合性化合物とを含有する。特に、本開示の硬化性組成物は、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が上記式(1)で表される部分構造を有し、(B)重合体及び(C)重合性化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が水酸基を有する。なお、上記式(1)で表される部分構造と水酸基は同一分子に存在していてもよく、異なる分子に存在していてもよい。
【0135】
本開示の硬化性組成物は、硬化膜を形成するために用いられる組成物である。硬化膜としては、表示素子や受光素子に用いられる各色画素、層間絶縁膜、平坦化膜、発光層を形成する領域を規定するバンク(隔壁)、ブラックマトリックス、スペーサー、保護膜等が挙げられる。表示素子としては、例えば、カラー液晶表示素子、有機EL素子、電子ペーパー等が挙げられ、受光素子としては、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等が挙げられる。
【実施例
【0136】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本実施例において、重合体の重量平均分子量(Mw)はGPCにより測定した。本実施例において使用した化合物及びその略称を以下に示す。
【0137】
(架橋性モノマー)
【化11】
【0138】
(その他モノマー)
【化12】
【0139】
(染料モノマー)
染料モノマーIは、公知構造である特許第5377595号公報の段落0434に記載の染料ポリマーXIVの原料モノマーのアニオン部位をビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンへ交換した構造式の化合物である。染料モノマーII~XIは、以下に示す構造式で表される化合物である。
【化13】
【0140】
(染料)
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0141】
(水酸基含有染料)
【化20】
【化21】
【0142】
(光重合開始剤)
【化22】
【0143】
(重合性化合物)
【化23】
C-2A:上記式(C-2)で表され、水酸基価が60~100mgKOH/gである化合物
C-2B:上記式(C-2)で表され、水酸基価が100~140mgKOH/gである化合物
【0144】
1.染料樹脂の合成
[合成例1-1]
冷却管を取り付けた反応容器に、染料モノマーI 8.70g、メタクリル酸(MA)1.41g、マロン酸-2-[[[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI-DEM」、以下「化合物(M-1)」と示す」)2.25g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.97g、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート(EHMP)0.42gを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)25.4g及びn-ブタノール59.2gに溶解させた。この溶液を窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。同温度で撹拌しながら、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、商品名「V-70」、以下単に「V-70」ともいう)を0.42g添加し、3時間撹拌を続けた。その後、V-70を更に0.42g添加し、3時間攪拌を継続した。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、PGMEA60gを加えて均一な溶液とし、この溶液をヘキサン1.1Lに滴下した。生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥して、重合体(これを「重合体(A-1)」とする)を15.30g得た。得られた重合体(A-1)は、Mwが19,000、Mnが9,800であることをGPCにより確認した。
【0145】
[合成例1-2~1-10、1-12~1-22及び比較合成例1-1~1-4]
使用するモノマーの種類及び配合量を下記表1のとおり変更した以外は、上記合成例1-1と同様の操作を行い、重合体(A-2)~(A-10)、(A-12)~(A-22)及び重合体(AR-1)~(AR-4)をそれぞれ合成した。なお、表1中、「-」は、該当する成分を配合しなかったことを示す(以下の表についても同じ)。
【0146】
[合成例1-11]
冷却管を取り付けた反応容器に、染料モノマーI 8.70g、MA1.41g、化合物(M-1)2.25g、グリセロールモノメタクリレート(GLM)1.97g、チオグリコール酸モノエタノールアミン(TG-MEA)0.42gを加え、PGMEA25.4g及びn-ブタノール59.2gに溶解させた。この溶液を窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。同温度で撹拌しながら、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬社製、水溶性ラジカル開始剤、商品名「VA-086」、以下単に「VA-086」ともいう)を0.42g添加し、3時間撹拌を続けた。その後、VA-086を更に0.42g添加し、3時間攪拌を継続した。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、PGMEA60gを加えて均一な溶液とし、この溶液をヘキサン1.1Lに滴下した。生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥して、重合体(これを「重合体(A-11)」とする)を15.30g得た。得られた重合体(A-11)は、Mwが19,300、Mnが10,000であることをGPCにより確認した。
【0147】
【表1】
【0148】
[合成例1-23]
冷却管を取り付けた反応容器に、p-(ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩(これを「酸性モノマーI」とする)8.45g、MA1.41g、化合物(M-1)2.25g、HEMA1.97g、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP)0.42gを加え、シクロヘキサノン(CHN)25.40g、n-ブタノール59.20gに溶解させた。この溶液を窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。同温度で撹拌しながら、V-70 0.84gを添加し、更に4時間撹拌を続けた。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン60gを加えて均一な溶液とし、この溶液をヘキサン1.1Lに滴下した。生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥して、下記構造式で表されるアニオン性基含有重合体(これを「重合体(A-23-1)」とする)を15.01g得た。得られた重合体(A-23-1)は、Mwが11,100、Mnが6,900であることをGPCにより確認した。
【化24】
【0149】
上記で合成した重合体(A-23-1)2.0gをアセトン40mLに溶解した。次に、下記スキームに示すように、重合体(A-23-1)の共重合比より算出される、p-(ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩由来の構成単位のモル数に対して当モル量のC.I.Basic Red 12(塩基性染料I)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧下濃縮して得られた残渣に対し、イオン交換水200mLを加えて生じる析出物を濾取し、水洗した。得られた固体を50℃で減圧乾燥して、下記構造式で表される重合体(これを「重合体(A-23)」とする)を2.61g得た。
【化25】
【0150】
[合成例1-24、1-25]
使用する塩基性染料の種類を下記表2のとおり変更した以外は、上記合成例1-23と同様の操作を行い、重合体(A-24)、(A-25)をそれぞれ合成した。
【0151】
[合成例1-26]
冷却管を取り付けた反応容器に、メタクリロイルプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(塩基性モノマーI)8.45g、MA1.41g、化合物(M-1)2.25g、HEMA1.97g、PEMP0.42gをCHN25.0g及びn-ブタノール60.0gに溶解させた。この溶液を窒素気流下、撹拌しながら75℃に加熱した。同温度で撹拌しながら、V-70 0.80gを添加し、更に4時間撹拌を続けた。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン60.0gを加えて均一な溶液とし、この溶液を1.10Lのヘキサンに滴下した。生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥して、下記構造式で表されるカチオン性基含有重合体(これを「重合体(A-26-1)」とする)を15.11g得た。得られた重合体(A-26-1)は、Mwが10,500、Mnが7,000であることをGPCにより確認した。
【化26】
【0152】
上記で合成した重合体(A-26-1)2.00gをアセトン40.0mLに溶解した。次に、下記スキームに示すように、重合体(A-26-1)の共重合比より算出される、アンモニウム塩由来の構成単位のモル数に対して当モル量のC.I.Acid Blue 93(酸性染料I)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧下濃縮して得られた残渣に対し、イオン交換水200mLを加えて生じる析出物を濾取し、水洗した。得られた固体を50℃で減圧乾燥して、下記構造式で表される色素多量体(これを「重合体(A-26)」とする)を2.62g得た。得られた重合体(A-26)は、Mwが12,600、Mnが7,500であることをGPCにより確認した。
【化27】
【0153】
[合成例1-27]
カチオン性モノマーをジメチルアミノエチルメタクリレート(これを「塩基性モノマーII」とする)に変更したこと以外は、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、下記構造式で表されるカチオン性基含有重合体(これを「重合体(A-27-1)」とする)を15.02g得た。得られた重合体(A-27-1)は、Mwが11,400、Mnが6,800であることをGPCにより確認した。続いて、重合体(A-27-1)を用い、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、重合体(A-27-1)とC.I.Acid Blue 93(酸性染料I)との色素多量体(これを「重合体(A-27)」とする)を得た。
【化28】
【0154】
[合成例1-28]
カチオン性モノマーをN,N-ジメチルアミノメチルスチレン(これを「塩基性モノマーIII」とする)に変更したこと以外は、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、下記構造式で表されるカチオン性基含有重合体(これを「重合体(A-28-1)」とする)を15.07g得た。得られた重合体(A-28-1)は、Mwが11,300、Mnが7,100であることをGPCにより確認した。続いて、重合体(A-28-1)を用い、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、重合体(A-28-1)とC.I.Acid Blue 93(酸性染料I)との色素多量体(これを「重合体(A-28)」とする)を得た。
【化29】
【0155】
[合成例1-29]
カチオン性モノマーをN-ビニルピロリドン(これを「塩基性モノマーIV」とする)に変更したこと以外は、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、下記構造式で表されるカチオン性基含有重合体(これを「重合体(A-29-1)」とする)を15.03g得た。得られた重合体(A-29-1)は、Mwが12,100、Mnが7,400であることをGPCにより確認した。続いて、重合体(A-29-1)を用い、上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、重合体(A-29-1)とC.I.Acid Blue 93(酸性染料I)との色素多量体(これを「重合体(A-29)」とする)を得た。
【化30】
【0156】
[合成例1-30]
酸性染料としてC.I.Acid Red 289(酸性染料II)を用いたこと以外は上記合成例1-26と同様の操作を行うことにより、重合体(A-26-1)とC.I.Acid Red 289(酸性染料II)との色素多量体(これを「重合体(A-30)」とする)を得た。
【0157】
【表2】
【0158】
表2中、化合物の略称は以下のとおりである。
酸性モノマーI:p-(ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩
塩基性モノマーI:メタクリロイルプロピルトリメチルアンモニウムクロリド
塩基性モノマーII:ジメチルアミノエチルメタクリレート
塩基性モノマーIII:N,N-ジメチルアミノメチルスチレン
塩基性モノマーIV:N-ビニルピロリドン
【0159】
2.バインダー樹脂の合成
[合成例2-1]
反応容器に、化合物(M-1)28.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)24.5g、N-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)7.0g、スチレン(ST)3.5g、メタクリル酸(MA)7.0g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)4.92gを量り取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40g、n-ブタノール90gに溶解させた。反応溶液を窒素気流下にて撹拌しながら75℃まで昇温し、5時間撹拌を継続した。反応溶液を室温まで冷却したのち、固形分濃度35質量%である重合体溶液200gを回収した。得られた重合体(これを「重合体(B-1)」とする)はMwが16,000、Mnが7,000であることをGPC測定により確認した。
【0160】
[合成例2-2~2-7、2-9~2-17及び比較合成例2-1~2-5]
使用するモノマーの種類及び配合量を下記表3のとおり変更した以外は、上記合成例2-1と同様の操作を行い、重合体(B-2)~(B-7)、(B-9)~(B-17)及び重合体(BR-1)~(BR-5)をそれぞれ合成した。
【0161】
[合成例2-8]
反応容器に、化合物(M-1)28.0g、グリセリンモノメタクリレート(GLM)24.5g、N-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)7.0g、スチレン(ST)3.5g、メタクリル酸(MA)7.0g、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬社製、水溶性ラジカル開始剤、商品名「VA-086」)を4.60gを量り取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40g、n-ブタノール90gに溶解させた。反応溶液を窒素気流下にて撹拌しながら75℃まで昇温し、5時間撹拌を継続した。反応溶液を室温まで冷却したのち、固形分濃度35質量%である重合体溶液200gを回収した。得られた重合体(これを「重合体(B-8)」とする)はMwが15,200、Mnが6,800であることをGPC測定により確認した。
【0162】
【表3】
【0163】
[合成例2-18]
反応容器に、グリシジルメタクリレート(GMA)32.0g、スチレン(ST)10.9g、ブチルメタクリレート(BMA)27.1g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を7.0gを量り取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート130gに溶解させた。反応溶液を窒素気流下にて撹拌しながら75℃まで昇温し、3時間撹拌を継続させ、その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、更に1時間重合することにより重合体溶液200gを得た。重合体溶液を室温まで冷却後、エアー気流下に切り替え、そこにアクリル酸(AA)16.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.2gを添加し、105℃で10時間加熱反応を行った。次いで、テトラヒドロフタル酸無水物22.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33gを添加し、105℃で3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却したのち、固形分濃度40質量%である重合体溶液270gを回収した。得られた重合体(これを「重合体(B-18)」とする)は、Mwが11,700、Mnが6,700であった。
【0164】
[合成例2-19]
反応容器に、化合物(M-1)19.4g、メタクリル酸(MA)26.4g、ブチルメタクリレート(BMA)24.2g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を7.0gを量り取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100g、n-ブタノール30gに溶解させた。反応溶液を窒素気流下にて撹拌しながら75℃まで昇温し、3時間撹拌を継続させ、その後、反応溶液の温度を90℃に昇温させ、更に1時間重合することにより重合体溶液200gが得られた。室温まで冷却後、エアー気流下に切り替え、そこにメタクリル酸[(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1-イル]メチル27.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)1.9gを添加し、105℃で10時間加熱反応を行った。反応溶液を室温まで冷却したのち、固形分濃度40質量%である重合体溶液240gを回収した。得られた重合体(これを「重合体(B-19)」とする)は、Mwが11,900、Mnが6,600であった。
【0165】
[合成例2-20]
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル3質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を仕込んだ。このフラスコに、N-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)12質量部、スチレン10質量部、メタクリル酸(MA)20質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)29質量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)14質量部、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製)5質量部を仕込んで、窒素置換した。その後、緩やかに撹拌して、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を3時間保持して重合した。その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、更に1時間重合することにより、バインダー樹脂(これを「重合体(BA-1)」とする)を33.3質量%含むバインダー樹脂溶液を得た。重合体(BA-1)は、Mwが9,700、Mnが5,700であった。
【0166】
[合成例2-21]
n-ブタノールの代わりにエタノールを使用した以外は、上記合成例2-1と同様の操作を行い、Mwが16,000、Mnが7,000の重合体(B-20)を合成した。
【0167】
3.水酸基含有染料の合成
[合成例3-1]
染料A1を用いて、1当量の無水コハク酸をピリジン溶媒中、触媒量のジメチルアミノピリジン存在下に室温にて攪拌した後、溶媒留去、水洗、脱水後に溶媒留去を行い、末端カルボン酸体を得た。次いで、1当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンをジクロロメタン溶媒中、1.2当量の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて室温にて攪拌した後、水洗、脱水後に溶媒留去を行い、染料A3を得た。
【0168】
[合成例3-2]
染料A1に代えて、染料A2のアニオンをヨードアニオンに変更した色素を用いた以外は上記合成例3-1と同様の方法にて、目的物である染料A4を得た。
[合成例3-3]
染料A1に代えて、特開2004-506775号公報の段落0003に記載の色素を用いた以外は上記合成例3-1と同様の方法にて、目的物である染料Cを得た。
[合成例3-4]
染料A1に代えて、中国特許CN102786459に記載の化合物[2]を用いた以外は上記合成例3-1と同様の方法にて、目的物である染料Eを得た。
なお、染料A1は公知の方法にて合成し、染料Dは特許第2812624号公報を参考に公知の方法にて合成した。
【0169】
4.着色剤分散液の調製
[調製例4-1]
着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58を13質量部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー社製、固形分濃度40.0質量%)を溶液で11.8質量部、バインダー樹脂として重合体(BA-1)を重合体溶液(固形分濃度33.3質量%)で13.0質量部、並びに、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート55.0質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル8質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、着色剤分散液(MB-G-1)を調製した。
【0170】
[調製例4-2]
着色剤の種類をC.I.ピグメントグリーン59に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-G-2)を得た。
[調製例4-3]
着色剤の種類をC.I.ピグメントグリーン7に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-G-3)を得た。
【0171】
[調製例4-4]
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー138に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Y-1)を得た。
[調製例4-5]
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー139に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Y-2)を得た。
[調製例4-6]
着色剤の種類をC.I.ピグメントイエロー185に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Y-3)を得た。
【0172】
[調製例4-7]
着色剤の種類をC.I.ピグメントレッド177に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-R-1)を得た。
[調製例4-8]
着色剤の種類をC.I.ピグメントブルー15:6に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-B-1)を得た。
【0173】
[調製例4-9]
着色剤としてC.I.ピグメントブルー60 7質量部、C.I.ピグメントバイオレット29 6質量部を使用した以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Bk-1)を調製した。
[調製例4-10]
着色剤の種類をラクタム系顔料(BASF社製Irgaphor Black S0100 CF)に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Bk-2)を得た。
[調製例4-11]
着色剤の種類をペリレン系顔料(BASF社製Lumogen Black FK4280)に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Bk-3)を得た。
[調製例4-12]
着色剤の種類をカーボンブラック(キャボット社製TPX1227R)に変更したこと以外は、上記調製例4-1と同様に調製を行い、着色剤分散液(MB-Bk-4)を得た。
【0174】
5.着色組成物の調製及び評価〔1〕
[実施例1-1]
(1)着色組成物の調製
上記合成例1-1で得られた重合体(A-1)5.7質量部、Valifast Orange32(オリエント化学工業製)0.7質量部、着色剤分散液(MB-Y-2)11.7質量部、バインダー樹脂として重合体(BA-1)を重合体溶液(固形分濃度33.3質量%)で5.6質量部、(C)重合性化合物として、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート3.2質量部、(D)光重合開始剤としてオキシム系開始剤(D-1)1.0質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.03質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が15.0質量%になるように、全溶剤量の10質量%に相当する量のメトキシブチルアセテートを加え、全溶剤量の5質量%に相当する量のn-ブタノールを加え、全溶剤量の20質量%に相当する量のダイアセトンアルコールを加え、更に残りの溶剤量に相当する量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(G1-1)を調製した。
【0175】
(2)評価
着色組成物(G1-1)について、下記(i)及び(ii)に従って評価を行った。
(i)耐溶剤性の評価
着色組成物(G1-1)を、ナトリウムイオン溶出防止用のSiO膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、室温で減圧乾燥を行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を600J/mの露光量で露光した。その後、この基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm(ノズル径1mm)で吐出することにより、60秒間シャワー現像を行った。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に150℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行うことにより、基板上に短冊状パターンを形成した。この短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。
次に、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル/エチレングリコールモノブチルエーテル=50/50(質量比)の混合溶剤に5分間浸漬した後の短冊状パターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。浸漬前後での色変化、すなわちΔE*abを算出した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
◎:ΔE*abの値が3.0以下
○:ΔE*abの値が3.0より大きく7.0以下
△:ΔE*abの値が7.0より大きく15.0以下
×:ΔE*abの値が15.0より大きい
評価の結果、実施例1-1では耐溶剤性は「◎」であった。
【0176】
(ii)保存安定性の評価
着色組成物(G1-1)を調製した直後の粘度Voを、E型粘度計(東京計器製)を用いて測定した。次に、着色組成物(G1-1)を遮光ガラス容器に充填し、密封状態で25℃にて14日間静置した後、E型粘度計(東京計器製)を用いて再度粘度を測定した。調製直後の粘度Voに対する14日間保存後の粘度Vaの増加率ΔV[%](=((Va-Vo)/Vo)×100)を算出し、増加率ΔVにより保存安定性を評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
○:増加率ΔVが5%未満
△:増加率ΔVが5%以上10%未満
×:増加率ΔVが10%以上
評価の結果、実施例1-1では保存安定性は「○」であった。
【0177】
[実施例1-2~1-30及び比較例1-1~1-4]
実施例1-1において、着色剤及びその他の成分の種類を、C光源にてCIE表色系における色度座標値(x,y)が下記表4の値を示すように変更した以外は実施例1-1と同様にして、着色組成物(G1-2)~(G1-30)及び(G1-1R)~(G1-4R)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物(G1-2)~(G1-30)及び(G1-1R)~(G1-4R)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性、保存安定性評価を行った。それらの結果を下記表4に示した。
【0178】
【表4】
【0179】
表4中、化合物の略称は以下のとおりである(以下の表5~9についても同じ)。
Q-1:Valifast Orange3209
C-1:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名アロニックスM-402)
D-1:オキシム系開始剤(上記式(D-1)で表される化合物)
E1:メトキシブチルアセテート
E2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E3:n-ブタノール
E4:ダイアセトンアルコール
E5:シクロヘキサノン
F-1:メガファックF-554(DIC株式会社製)
【0180】
6.着色組成物の調製及び評価〔2〕
[実施例2-1]
(1)着色組成物の調製
着色剤分散液(MB-G-1)28.5質量部、着色剤分散液(MB-Y-1)29.1質量部、バインダー樹脂として重合体(B-3)を重合体溶液(固形分濃度35質量%)で2.7質量部、(C)重合性化合物として、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート4.2質量部、(D)光重合開始剤としてオキシム系開始剤(D-1)0.5質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.03質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が15.0質量%になるよう、全溶剤量の10質量%に相当する量のメトキシブチルアセテートを加え、全溶剤量の5質量%に相当する量のn-ブタノールを加え、更に残りの溶剤量に相当する量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(G2-1)を調製した。
(2)評価
着色組成物(G2-1)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性、保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表5に示した。
【0181】
[実施例2-2~2-27及び比較例2-1~2-5]
実施例2-1において、着色剤及びその他の成分の種類を、C光源にてCIE表色系における色度座標値(x,y)が下記表5の値を示すように変更した以外は実施例2-1と同様にして、着色組成物(G2-2)~(G2-27)及び(G2-1R)~(G2-5R)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性及び保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表5に示した。
【0182】
【表5】
【0183】
[実施例2-28~2-31及び比較例2-6~2-9]
着色組成物(G2-4)及び着色組成物(G2-3R)について、ポストベーク時におけるクリーンオーブン内の温度を下記表6に記載のとおりに変更した点以外は実施例1-1と同様にして耐溶剤性の評価を行った。それらの結果を下記表6に記載した。
[実施例2-32]
実施例2-1において、着色剤及びその他の成分の種類を、C光源にてCIE表色系における色度座標値(x,y)が下記表6の値を示すように変更した以外は実施例2-1と同様にして着色組成物(G2-4A)を調製した。得られた着色組成物(G2-4A)について、ポストベーク時におけるクリーンオーブン内の温度を85℃に変更した点以外は実施例1-1と同様にして耐溶剤性の評価を行った。結果を下記表6に記載した。
【0184】
【表6】
【0185】
7.着色組成物の調製及び評価〔3〕
[実施例3-1]
(1)着色組成物の調製
染料A1を3.4質量部と、Valifast Orange3209(オリエント化学工業製) 0.7質量部と、着色剤分散液(MB-Y-2)11.7質量部、バインダー樹脂として重合体(B-13)を重合体溶液(固形分濃度35質量%)で7.9質量部、(C)重合性化合物として、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート3.2質量部、(D)光重合開始剤として、オキシム系開始剤(D-1)1.0質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.03質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が15.0質量%になるよう、全溶剤量の10質量%に相当する量のメトキシブチルアセテートを加え、全溶剤量の5質量%に相当する量のn-ブタノールを加え、全溶剤量の20質量%に相当する量のダイアセトンアルコールを加え、更に残りの溶剤量に相当する量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(G3-1)を調製した。
(2)評価
着色組成物(G3-1)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性、保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表7に示した。
【0186】
[実施例3-2~3-13及び比較例3-1~3-5]
実施例3-1において、着色剤及びその他の成分の種類を、C光源にてCIE表色系における色度座標値(x,y)が下記表7に示すように変更した以外は実施例3-1と同様にして、着色組成物(G3-2)~(G3-13)及び(G3-1R)~(G3-5R)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物(G3-2)~(G3-13)及び(G3-1R)~(G3-5R)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性及び保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表7に示した。
【0187】
【表7】
【0188】
8.着色組成物の調製及び評価〔4〕
[実施例4-1]
(1)着色組成物の調製
染料IXを30.9質量部、着色剤分散液(MB-Y-1)24.2質量部、バインダー樹脂として重合体(B-12)を重合体溶液(固形分濃度35質量%)で6.5質量部、(C)重合性化合物として、水酸基価が100~140mgKOH/gのジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート3.9質量部、(D)光重合開始剤としてオキシム系開始剤(D-1)0.8質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.03質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が15.0質量%になるよう、全溶剤量の10質量%に相当する量のメトキシブチルアセテートを加え、全溶剤量の5質量%に相当する量のn-ブタノールを加え、全溶剤量の40質量%に相当する量のシクロヘキサノンを加え、更に残りの溶剤量に相当する量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(G4-1)を調製した。
(2)評価
着色組成物(G4-1)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性及び保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表8に示した。
【0189】
[実施例4-2~4-11]
実施例4-1において、着色剤及びその他の成分の種類を、C光源にてCIE表色系における色度座標値(x,y)が下記表8に示すように変更した以外は実施例4-1と同様にして、着色組成物(G4-2)~(G4-11)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物(G4-2)~(G4-11)について、実施例1-1と同様にして耐溶剤性及び保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表8に示した。
【0190】
【表8】
【0191】
表8中、化合物の略称は以下のとおりである。
C-2A:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(水酸基価:60~100mgKOH/g)
C-2B:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(水酸基価:100~140mgKOH/g)
【0192】
9.着色組成物の調製及び評価〔5〕
[実施例5-1]
(1)着色組成物の調製
着色剤分散液(MB-Bk-1)16質量部、着色剤分散液(MB-Bk-4)1.4質量部、バインダー樹脂として重合体(B-1)を重合体溶液(固形分濃度35質量%)で25.2質量部、(C)重合性化合物として、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート3.9質量部、(D)光重合開始剤としてオキシム系開始剤(D-1)1.9質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックRS-72-K(DIC株式会社製)0.2質量部を混合し、最終組成物の固形分濃度が30.0質量%になるよう、全溶剤量の10質量%に相当する量のメトキシブチルアセテートを加え、全溶剤量の5質量%に相当する量のn-ブタノールを加え、更に残りの溶剤量に相当する量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、着色組成物(Bk5-1)を調製した。
【0193】
(2)評価
着色組成物(Bk5-1)について、下記(i)に従って耐溶剤性の評価を行った。また、実施例1-1と同様にして保存安定性の評価を行った。それらの結果を下記表9に示した。
(i)耐溶剤性の評価
着色組成物(Bk5-1)を、ナトリウムイオン溶出防止用のSiO膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、室温で減圧乾燥を行い、膜厚10μmの塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を600J/mの露光量で露光した。その後、この基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm(ノズル径1mm)で吐出することにより、60秒間シャワー現像を行った。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に85℃のクリーンオーブン内で60分間ポストベークを行うことにより、基板上に幅3~50μm(1μm刻み)、長さ1mmのラインパターンを形成した。
次に、形成したラインパターンをプロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=50/50(質量比)の混合溶剤に5分間浸漬し、ラインパターンを光学顕微鏡で、浸漬後のラインパターンを観察した。浸漬後の残存パターンの中で最小となる線幅によって耐溶剤性の評価を行った。
(評価基準)
◎:最小線幅が5μm以下
○:最小線幅が6μm以上10μm以下
△:最小線幅が11μm以上30μm以下
×:最小線幅が31μm以上
評価の結果、実施例5-1では耐溶剤性は「○」であった。
【0194】
[実施例5-2~5-6及び比較例5-1~5-6]
実施例5-1において、着色剤及びその他の成分の種類・質量部と、溶剤及び固形分濃度を下記表9に示すように変更した以外は実施例5-1と同様にして、着色組成物(Bk5-2)~(Bk5-6)及び(Bk5-1R)~(Bk5-6R)をそれぞれ調製した。得られた着色組成物(Bk5-2)~(Bk5-4)、(Bk5-6)、(Bk5-2R)~(Bk5-4R)及び(Bk5-6R)について、耐溶剤性評価における塗膜の膜厚を1μmに変更した以外は、実施例5-1と同様にして耐溶剤性、保存安定性評価を行った。それらの結果を下記表9に示した。
【0195】
【表9】
【0196】
表9中、化合物の略称は以下のとおりである。
E6:エタノール
F-2:メガファックRS-72-K(DIC株式会社製)
【0197】
以上の結果から、(A)着色剤、(B)重合体及び(C)重合性化合物において、同一分子内又は異なる分子内に、上記式(1)で表される部分構造と水酸基とを含む硬化性組成物は、粘度の経時的変化が少なく保存安定性に優れるとともに、ポストベーク温度を低温にした場合にも耐溶剤性に優れた硬化膜を製造できることが明らかとなった。