(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ネットワーク管理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/06 20220101AFI20241119BHJP
【FI】
H04L41/06
(21)【出願番号】P 2023527142
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2021021537
(87)【国際公開番号】W WO2022259298
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正崇
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】明石 和陽
(72)【発明者】
【氏名】小川 まな美
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089256(JP,A)
【文献】特開2020-065202(JP,A)
【文献】特開2010-212829(JP,A)
【文献】特開2014-241536(JP,A)
【文献】特開平11-313130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信設備が収容されてネットワークの上位階層に対応する複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記発生した障害により前記ネットワークの下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算する障害影響計算部と、
前記発生した障害および前記障害影響計算部により計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークのいずれかの建物で引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出する優先度算出部と、
を備えるネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記優先度算出部により算出された優先度に対応する前記建物に対する前記障害の復旧の作業に係る条件に基づいて、前記発生した障害の実際の復旧の作業を計画する計画処理部をさらに備える、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記障害影響計算部は、
前記上位階層に対応する複数の建物に収容される通信設備への電源の供給が停止したことに伴う前記障害が発生したときで、前記発生した障害により前記下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算し、
前記優先度算出部は、
前記発生した障害および前記障害影響計算部により計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備への電源の供給の復旧がなされたと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークの複数の建物のいずれかで引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記電源の供給を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出する、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記計画処理部は、
前記優先度算出部により算出された優先度が高い建物を優先して、当該建物における前記障害に係る情報、および当該建物に対する前記障害の復旧の作業のために配備される車両の候補に係る情報に基づいて、前記建物に対して実際に配備される車両および当該建物への前記車両の移動経路を示す情報を計画する、
請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
ネットワーク管理装置により行なわれる方法であって、
通信設備が収容されてネットワークの上位階層に対応する複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記発生した障害により前記ネットワークの下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算することと、
前記発生した障害および前記計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークのいずれかの建物で引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出することと、
を備えるネットワーク管理方法。
【請求項6】
前記算出された優先度に対応する前記建物に対する前記障害の復旧の作業に係る条件に基づいて、前記発生した障害の実際の復旧の作業を計画することをさらに備える、
請求項5に記載のネットワーク管理方法。
【請求項7】
前記障害の影響を計算することは、
前記上位階層に対応する複数の建物に収容される通信設備への電源の供給が停止したことに伴う前記障害が発生したときで、前記発生した障害により前記下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算することを含み、
前記優先度を算出することは、
前記発生した障害および前記計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備への電源の供給の復旧がなされたと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークの複数の建物のいずれかで引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記電源の供給を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出することを含む、
請求項5に記載のネットワーク管理方法。
【請求項8】
請求項1
もしくは請求項3に記載のネットワーク管理装置の
前記障害影響計算部および前記優先度算出部または請求項2もしくは請求項4に記載のネットワーク管理装置の前記障害影響計算部、前記優先度算出部、および前記計画処理部としてプロセッサを機能させるネットワーク管理処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ネットワーク管理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信設備が収容されることで外部との間の通信を提供するビル(building)(通信ビルと称されることがある)において、地震または台風等の災害発生等に伴って発電所からの電源供給が断たれた場合などにより、このビルにおける通信が切断された場合、ビル内に設置された、燃料によって稼働する非常用発電機(emergency power generator)等を稼働させることによって、通信設備に係る電源を復旧させることで、通信の提供が再開される。
【0003】
上記の非常用発電機の稼働が長時間に及ぶことにより、ビル内で備蓄される燃料が枯渇すると非常用発電機の稼働が停止するので、再び電源供給が断たれて通信が切断される。そこで、通信事業者は、上記の通信ビルに車両等で燃料を配送および供給する。
【0004】
通信事業者は、燃料が枯渇する前の通信ビルに対して燃料配送車両により燃料を予め配送したり、燃料が枯渇した通信ビルに対して燃料配送車両により迅速に燃料を配送したりすることで、通信の切断を防止したり、早期に通信の提供を再開させたりする必要がある。
【0005】
限られた燃料リソース(resource)の条件下で、通信断の影響をできる限り小さくするために、通信事業者は、電源供給が断たれた通信ビルのうち、上記の燃料が枯渇している多数の通信ビルの中から、燃料の配送先である救済対象ビル(救済ビルと称されることがある)を短時間で選択する必要がある。
【0006】
救済ビルは、例えば被災したビル、このビルから波及する通信ネットワークサービス(network service)への影響、所在地、燃料状況、および交通状況等の様々な状況に応じて選択される必要があり、人手による検討には多大な時間および高度なスキル(skill)を要する。
【0007】
災害への対応は緊急を要し、その発生頻度が低く、有スキル者の育成が困難であることから、災害発生時の状況を鑑みて救済ビルを選択し、このビルへの燃料配送計画を自動かつ短時間で決定する技術が求められる。
【0008】
例えば特許文献1では、ネットワーク構成情報と障害影響情報とが求められる技術が開示され、この障害影響情報に基づいて、各ビルのうち優先して救済するビルが評価されて上記の配送計画が決定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の技術では、通信ネットワークの冗長構成(redundant configuration)が考慮されないため、各ビルについて、障害の復旧の対象としての適切な優先度(priority)が算出されていなかった。
【0011】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ネットワークの冗長構成にて通信の障害が発生したときに、この障害の復旧の対象を適切に定めることができるようにしたネットワーク管理装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るネットワーク管理装置は、通信設備が収容されてネットワークの上位階層に対応する複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記発生した障害により前記ネットワークの下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算する障害影響計算部と、前記発生した障害および前記障害影響計算部により計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークのいずれかの建物で引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出する優先度算出部と、を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るネットワーク管理方法は、ネットワーク管理装置により行なわれる方法であって、通信設備が収容されてネットワークの上位階層に対応する複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記発生した障害により前記ネットワークの下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、前記通信の障害の影響を計算することと、前記発生した障害および前記計算された影響が適用された条件において、前記障害が発生した前記上位階層に対応する建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記ネットワークのいずれかの建物で引き続き発生する前記通信の障害の度合いに基づいて、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出することと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネットワークの冗長構成にて通信の障害が発生したときに、この障害が及ぼす影響を適切に計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置による処理手順の一例を示すフローチャート(flow chart)である。
【
図3】
図3は、優先度算出部および配備計画処理部の機能の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、ネットワークの冗長構成をなし、通信設備が収容されるビルの一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、通信障害が発生した単体のビルに係る復旧がなされたときの影響の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、通信障害が発生したビルに係る復旧がなされたときの影響の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ(user)数の第1の例を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第2の例を説明する図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第3の例を説明する図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第4の例を説明する図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第5の例を説明する図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る配備計画処理部による、救済されるビルの復旧のための復旧作業車の配備計画の生成の一例について説明する図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る配備計画処理部による、復旧作業車両の配備の可否の判定結果の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア(hardware)構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、この発明に係わる一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置10は、ユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15を備える。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
ユーザ入力部11は、通信設備が収容されてネットワーク冗長構成をなす建物である複数のビルのいずれかで発生する通信障害を示す障害情報、発生した通信障害の復旧に係る電源(電力)供給状況、および通信障害の復旧のために配備される復旧作業車両に係る車両配備情報をと入力する(S11)。
上記の電源供給状況は、例えば、各ビルに収容される、後述する非常用発電機へ補充される必要がある燃料の分量、および各ビルにおける通信障害が発生してからの経過時間、などである。また、上記の車両配備情報は、例えば、復旧作業車両の現在位置、ビルへ移動可能な復旧作業車両の台数、および各々の復旧作業車両により運搬および供給可能な燃料の分量、などである。
【0018】
障害影響計算部12は、S11で入力された障害情報に基づいて、ネットワーク構成における一部のビルに収容される通信設備への電源の供給が停止したことなどに伴って発生した通信障害により同じネットワーク構成における他のビルへ及ぶ影響である、通信障害の影響を計算する(S12)。
【0019】
優先度算出部13は、S11で入力した障害情報で示される障害、およびS12での計算結果が適用された条件において、通信障害が発生したビルの組み合わせから、救済の対象、すなわち通信障害の復旧の対象であるビルの組み合わせの全てのパターン(pattern)を生成する(S13)。
【0020】
優先度算出部13は、上記生成したパターン毎に、このパターンに応じたビルへの救済がなされた、例えば当該ビルへ収容される通信設備への電源の供給の復旧がなされたと仮定した条件が適用されたときの、いずれかのビルで引き続き発生する通信障害およびその影響の度合いを示す値を算出する(S14)。
【0021】
全てのパターンについてS14での算出が終了していなければ(S15のNo)、別のパターンについてS14の処理がなされる。
また、全てのパターンについてS14での算出が終了したとき(S15のYes)は、優先度算出部13は、障害が発生したビルのパターンのうち、通信障害およびその影響の度合いを示す値の少ない順に、発生した障害を実際に復旧させる対象であるビルの候補の優先度が高く設定されるように、各パターンをソート(sort)した情報を生成する(S16)。
【0022】
配備計画処理部14は、ソートされたパターンにおける、高い優先度が設定されたパターンを優先させて、この優先度に応じたパターンの各ビルに対する復旧作業車両およびこの車両の適切な配備ルート(route)を、S11で入力した電源供給状況および車両配備情報に基づいて探索する(S17)。
【0023】
S17での探索の結果を受けて、配備計画出力部15は、救済対象のビルの名称、および該当するビルへの復旧作業車両の配備ルート、すなわち移動経路を示す情報を出力する(S18)。
それぞれの処理の詳細については以下で述べる。
【0024】
ユーザ入力部11は、通信が提供される、通信ネットワークの冗長構成をなす各ビルに係る、ネットワーク冗長構成における各ビルの接続関係、各ビルでの非常用電源の種別、各ビルの所在地、ビルでの通信障害が発生したときの影響度を示す情報、およびビルでの通信障害が発生してからの経過時間、などをオペレータ(operator)などによる入力操作などにより入力する。
【0025】
ビルでの通信の提供とは、例えば、ビル内での通信機器間での通信およびビル内の通信機器と外部の通信機器との間での通信を意味する。
上記通信障害としては、例えば、ビル内での通信設備への電源の供給が遮断されたことに伴う通信の切断、またはサーバ(server)などの通信機器の故障、通信用ケーブル(cable)の損傷などによる通信の切断が挙げられる。本実施形態の以降の説明では、ビル内での通信設備への電源の供給が遮断されたことに伴う通信の切断を例に挙げて説明する。
【0026】
また、上記の、各ビルでの非常用電源の種別としては、燃料により稼働する非常用発電機、および充放電が可能な蓄電池により動作する非常用電源装置が挙げられる。非常用発電機は、例えばディーゼルエンジン(diesel engine)である。
なお、上記のビルは、通信が提供される設備であれば他の形態であってもよい。
【0027】
上記の各ビルの接続関係には、例えばネットワークトポロジ(network topology)における上位階層(単に上位と称されることがある)および下位階層(単に下位と称されることがある)を示す情報が含まれ得る。上記の通信障害時の影響度とは、通信障害が発生したビル内に収容可能である、通信を利用するユーザの数(収容ユーザと称されることがある)、ビル内に設置される通信機器の数、またはビル内に設置される通信機器により送受信するデータ(data)量、などが挙げられる。
【0028】
また、ユーザ入力部11は、通信障害が発生したビルに対する通信の復旧作業に用いられる車両(以下、復旧作業車両と称されることがある)に係る、車両の数、車両の種別、各車両位置情報、各車両による非常用発電機用の燃料などの供給可能量、および各車両の走行エリア(area)の交通状況、などを上記入力操作などにより入力する。交通状況とは、例えば上記走行エリアでの交通量を示す情報、および工事または災害などによる道路の通行可否を示す情報、などが挙げられる。
【0029】
上記の車両の種別は、燃料配送車および電源車が挙げられる。
燃料配送車は、ビル内の非常用電源が上記の非常用発電機であるときの当該発電機用の燃料が積載され、この燃料を当該非常用発電機に充填する設備を有する車両である。
また、上記の電源車は、ビル内の非常用電源が上記の非常用電源装置であるときの、上記の蓄電池への充電機器を有する車両、または、上記蓄電池が交換可能であるときの交換用の蓄電池、すなわち充電済みの新しい蓄電池が積載される車両である。
【0030】
障害影響計算部12は、ユーザ入力部11により入力した情報に基づいて、ネットワーク冗長構成における各ビルのうちネットワークトポロジにおける上位の複数のビルで通信障害が発生したことによる影響を受けて通信が切断される、ネットワークトポロジにおける下位の複数のビルを特定する。
上記影響を受けて通信が切断される設備を特定する技術は、例えば上記特許文献1にも開示される既知の技術である。
【0031】
そして、障害影響計算部12は、上記障害が発生したビルの一部または全部での当該障害を復旧させた後と仮定した条件における通信障害発生時の影響度、例えば上記復旧がなされた後と仮定した条件で、引き続き上記の障害の影響を受ける下位のビルの収容ユーザの数を計算する。
図3は、優先度算出部および配備計画処理部の機能の一例を説明する図である。
優先度算出部13は、上記特定した複数のビルの一部または全部で成る組み合わせのパターンにおける、上記計算された通信障害発生時の影響度の大小に基づいて、上記組み合わせのパターンの各々について、通信の障害の復旧に係る優先度を算出する。
【0032】
図3に示された例では、通信障害が発生したビルは「ビルA」、「ビルB」、「ビルC」、「ビルD」、「ビルE」、および「ビルF」である。
これらのビルのうち、通信の障害を復旧させるビルの組み合わせ、およびこの組み合わせに属する各ビルの通信の障害の復旧の作業が行なわれて復旧がなされた後と仮定したときにおける、通信障害が引き続き発生するビル、およびこれらのビルでの収容ユーザの合計は、例えば「ビルA、ビルB、ビルC、ビルD、ビルE、ビルF:0人」、「ビルA、ビルB、ビルC、ビルD、ビルE:50人」、「ビルA、ビルB、ビルC、ビルD:100人」、「ビルA、ビルC、ビルD、ビルF:110人」、または「ビルC、ビルD、ビルE、ビルF:180人」である。
上記組み合わせのうち、収容ユーザの数が少ない組み合わせは、復旧に係る作業の効果が高い組み合わせであるので、復旧に作業の実施に係る優先度が高い。
【0033】
配備計画処理部14は、優先度算出部13により算出された優先度が高い順に、この優先度に係る、ビルの組み合わせのパターンに属する各ビルへの通信障害の復旧作業に向かわせる車両である復旧作業車両の配備の可否を、ネットワークの冗長構成をなすビルの組み合わせのパターンごとに、ビルの所在地および交通状況等に基づいて、上記パターンごとに判定する。この判定の結果に基づいて、配備計画処理部14は、実際にビルへの復旧作業に向かわせる復旧作業車両、ならびにこの車両の通行スケジュール(schedule)および通行ルートなどを示す情報である配備計画情報を生成する。
配備計画出力部15は、配備計画処理部14より生成された配備計画情報を、図示しない表示装置などへの表示により出力する。
【0034】
本実施形態では、通信の障害が発生した単体のビルではなく、通信の障害が発生したビルのうち、ネットワークの冗長構成をなすビルの組み合わせのパターンごとに、復旧作業車両の配備計画が生成されることにより、復旧作業車両の適切な配備計画が生成される。
【0035】
これにより、例えば、通信の復旧の対象であるビルにて通信障害が発生している時間を大幅に短縮することが可能な配備計画を、自動かつ短時間で決定できるので、配備計画の立案に係る高度なスキルを不要とし、かつ立案に要する時間を大幅に短縮できる。
【0036】
図4は、ネットワークの冗長構成をなし、通信設備が収容されるビルの一例を説明する図である。
図4に示された例では、本実施形態に係るネットワーク管理装置が適用され得る、ネットワークの冗長構成をなし、通信設備が収容されるビルは、リング(ring)型でビル間の通信設備が通信可能に接続可能である通信ネットワークをなすビル群である。
図4に示された例では、リング状に接続されたビル群の一部をなすビルAおよびビルBがネットワークトポロジにおける上位のビルとして設けられる。
【0037】
(ビルA、ビルB、および下位のビルについて)
そして、このリング状の構成において、ビルAとビルBとの間には、ビルA寄りの第1のビルおよびビルB寄りの第2のビルが設けられ、これら4つのビルが第1のリング状のビル群を成す。
【0038】
また、上記第1のビルと他の3つのビルとで成る4つのビルが、上記第1のリング状のビル群とは別の、第2のリング状をなすビル群として設けられ、上記第2のビルと他の3つのビルとで成る4つのビルが、上記第1および第2のリング状のビル群とは別の、第3のリング状をなすビル群として設けられる。すなわち、上記第1のビルは第1のリング状をなすビル群および第2のリング状をなすビル群に係り、上記第2のビルは第1のリング状をなすビル群および第3のリング状をなすビル群に係る。
【0039】
これらのビルのうち、ビルAおよびビルB以外の計8つの各ビルはネットワークトポロジにおける下位のビル群として設けられ、ビルA、ビルB、および下位のビルとで独立したネットワーク構成を成す。これらの下位のビル群はビルA,Bの下位ビルと称されることがある。
【0040】
ビルAにおいて収容可能なユーザ(収容ユーザと称されることがある)の数は50人であり、ビルBにおいて収容可能なユーザの数は30人であり、ビルA,Bの下位ビルに収容可能なユーザの数の合計は100人である。
【0041】
(ビルC、ビルD、および下位のビルについて)
また、
図4に示された例では、リング状に接続されたビル群の一部をなすビルCおよびビルDがネットワークトポロジにおける上位のビルとして設けられ、上記ビルCおよびビル
Dに対する、ネットワークトポロジにおける下位のビルとして、上記のビルA,Bの下位ビルと同様の構成をなす下位のビル群が設けられ、ビルC、ビルD、および下位のビルとで独立したネットワーク構成を成す。これらの下位のビル群はビルC,Dの下位ビルと称されることがある。
ビルCにおいて収容可能なユーザの数は160人であり、ビルDにおいて収容可能なユーザの数は200人であり、ビルC,Dの下位ビルに収容可能なユーザの数の合計は200人である。
【0042】
(ビルE、ビルF、および下位のビルについて)
さらに、
図4に示された例では、リング状に接続されたビル群の一部をなすビルEおよびビルFがネットワークトポロジにおける上位のビルとして設けられ、上記ビルEおよびビルFに対する、ネットワークトポロジにおける下位のビルとして、上記のビルA,Bの下位ビルと同様の構成をなす下位のビル群が設けられ、ビルE、ビルF、および下位のビルとで独立したネットワーク構成を成す。これらの下位のビル群はビルE,Fの下位ビルと称されることがある。
【0043】
ビルEにおいて収容可能なユーザの数は80人であり、ビルFにおいて収容可能なユーザの数は150人であり、ビルE,Fの下位ビルに収容可能なユーザの数の合計は250人である。
そして、
図4に示された例では、上位のビルA乃至ビルFで成る計6つのビルでは、電源の喪失により通信設備に係る電源の供給が停止している状態であり、これらのビルに収容される通信設備による通信機能は停止している。
【0044】
そして、上位のビルA乃至ビルFから見た、ネットワークトポロジにおける下位のビルである、ビルA,Bの下位ビル、ビルC,Dの下位ビル、およびビルE,Fの下位ビルは、自身のビルでの通信設備に係る電源の供給は停止していない一方で、上位のビルの通信機能の停止の影響を受けて、これらのビルに収容される通信設備による正常な通信が不可の状態である。
【0045】
そして、上記の上位のビルA乃至ビルFのうち、救済、すなわち通信機能の復旧に係る優先度は、ビルに収容されるユーザへの影響が大きいほど高い。
そこで、本実施形態では、上記上位のビルのうち一部のビルに係る通信障害の復旧がなされた後であると仮定されたときで、通信機能が引き続き停止しているビルに収容されるユーザ、すなわち上記救済後における通信機能の停止の影響を引き続き受けるユーザの数(影響ユーザ数と称されることがある)が影響度として定義される。そして、この影響度の値が小さいほど、救済による効果が高いことを意味するため、本実施形態では、影響度の値が小さいほど、ビル救済に係る高い優先度が設定される。
【0046】
次に、通信障害が発生した単体のビルに係る復旧がなされたときの影響に基づく、復旧の優先度の算出について説明する。
図5は、通信障害が発生した単体のビルに係る復旧がなされたときの影響の一例を示す図である。
図5に示された構成での各ビルの収容ユーザ数は
図4で説明した人数である。
【0047】
(ビルAのみの救済)
図5に示されたビルАと、ビルBと、ビルA,Bの下位ビルとのうちビルАとビルBとに通信障害が発生したときで、ビルAのみについて救済がなされたと仮定する。この救済により、ビルA,Bの下位ビルの通信障害が復旧するので、優先度算出部13は、ビルАと、ビルBと、ビルA,Bの下位ビルとの
収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数(波及影響ユーザ数と称されることがある)は、救済されていないビルBの収容ユーザ数、すなわち30人であると計算する。
【0048】
(ビルBのみの救済)
図5に示されたビルАと、ビルBと、ビルA,Bの下位ビルとのうちビルАとビルBとに通信障害が発生したときで、ビルBのみについて救済がなされたと仮定する。
この救済により、ビルA,Bの下位ビルの通信障害が復旧するため、優先度算出部13により、ビルАと、ビルBと、ビルA,Bの下位ビルとの収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルAの収容ユーザ数、すなわち50人であると計算される。
【0049】
(ビルCのみの救済)
図5に示されたビルCと、ビルDと、ビルC,Dの下位ビルとのうちビルCとビルDとに通信障害が発生したときで、ビルCのみについて救済がなされたと仮定する。
この救済により、ビルC,Dの下位ビルの通信障害が復旧するので、優先度算出部13により、ビルCと、ビルDと、ビルC,Dの下位ビルとの収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルDの収容ユーザ数、すなわち200人であると計算される。
【0050】
(ビルDのみの救済)
図5に示されたビルCと、ビルDと、ビルC,Dの下位ビルとのうちビルCとビルDとに通信障害が発生したときで、ビルDのみについて救済がなされたと仮定する。
この救済により、ビルC,Dの下位ビルの通信障害は復旧するので、優先度算出部13により、ビルCと、ビルDと、ビルC,Dの下位ビルとの収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルCの収容ユーザ数、すなわち160人であると計算される。
【0051】
(ビルEのみの救済)
図5に示されたビルEと、ビルFと、ビルE,Fの下位ビルとのうちビルEとビルFとに通信障害が発生したときで、ビルEのみについて救済がなされたと仮定する。
この救済により、ビルE,Fの下位ビルの通信障害が復旧するので、優先度算出部13により、ビルEと、ビルFと、ビルE,Fの下位ビルとの収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルFの収容ユーザ数、すなわち150人であると計算される。
【0052】
(ビルFのみの救済)
図5に示されたビルEと、ビルFと、ビルE,Fの下位ビルとのうちビルEとビルFとに通信障害が発生したときで、ビルFのみについて救済がなされたと仮定する。
この救済により、ビルE,Fの下位ビルの通信障害が復旧するので、優先度算出部13により、ビルEと、ビルFと、ビルE,Fの下位ビルとの収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルEの収容ユーザ数、すなわち80人であると計算される。
【0053】
(優先度の算出について)
上記の算出結果では、影響ユーザ数は、(1)ビルCのみの救済がなされたとき、(2)ビルDのみの救済がなされたとき、(3)ビルEのみの救済がなされたとき、(4)ビルFのみの救済がなされたとき、(5)ビルBのみの救済がなされたとき、および(6)ビルAのみの救済がなされたとき、の順でビルCのみの救済がなされたときが最も多く、ビルAのみの救済がなされたときが最も少ない。
これにより、優先度算出部13により、復旧の優先度は、ビルCが1位で、ビルDが2位で、ビルEが3位で、ビルFが4位で、ビルBが5位で、ビルAが6位であると計算される。
【0054】
(複数のビルが救済されたときの波及影響ユーザ数)
そして、上記の1位から4位までのビルC,D,E,Fに復旧作業車両を向かわせて救済がなされたと仮定する。この救済により、ビルC,Dの下位ビルの通信障害と、ビルE,Fの下位ビルの通信障害とが復旧するので、ビルAからFおよび下位の各ビルのうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルAの収容ユーザ数、ビルBの収容ユーザ数、およびビルA,Bの下位ビルの収容ユーザ数の合計、すなわち180人である。
すなわち、
図5の符号aで示される、ビルAと、ビルBと,ビルA,Bの下位ビルへの救済がなされないため、通信障害の影響
が引き続き広範囲に及ぶ。
【0055】
次に、通信障害が発生したビルに係る復旧がなされたときの影響に基づく、復旧の優先度の算出について説明する。
図6は、通信障害が発生したビルに係る復旧がなされたときの影響の一例を示す図である。
図6に示された構成での各ビルの収容ユーザ数は
図4で説明した人数である。
ここでは、
図6に示された上位のビルA乃至ビルFで成る6つのビルに通信障害が発生した場合で、ビルA、ビルC、ビルD、およびビルFに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、これらのビルへの救済がなされたと仮定する。
【0056】
この救済により、ビルA、ビルC、ビルD、およびビルFの通信障害が復旧するので、
図6の符号aで示されるように、救済後は、ビルA,Bの下位ビルに上位のビルの通信障害の影響は及ばなくなり、ビルA,Bの下位ビルの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害、すなわち下位の全てのビル群の通信障害が復旧する。
【0057】
このため、優先度算出部13により、上位のビルA乃至ビルF、および下位のビル群の収容ユーザ数のうち、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数は、救済されていないビルBの収容ユーザ数とビルEの収容ユーザ数の合計、すなわち110人であると計算される。
この計算された人数は、
図5における例で、最終的に計算された人数より少ないので、上記のビルA、ビルC、ビルD、およびビルFは、救済されるビルの組み合わせとして適切であることを意味する。
【0058】
図5に示された例では、ビルEは優先度が高いビルであるとして救済される一方で、ビルAは優先度が低いビルであるとして救済されなかった。これに対し、
図6に示された例では、ネットワークトポロジが考慮され、
図5に係る説明にて優先度が低いビルとして救済されなかったビルAが救済されることで、ビルA,Bの下位のビルへの影響が抑えられるため、
図5に示された例と比較して救済後の影響ユーザ数を少なくすることができる。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係る優先度算出部13による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第1の例を説明する図である。
ここでは、
図4に示される、通信障害が発生している上位のビルの全てに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、各々のビルへの救済がなされたと仮定する。
【0060】
本実施形態のネットワーク管理装置10の優先度算出部13は、通信障害が発生している上位のビルA乃至ビルFに対して救済がなされた場合、
図7に示されるように、上位のビルA乃至ビルFの通信障害、およびビルA,Bの下位ビルの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害、すなわち下位の全てのビル群の通信障害が復旧し、図
7に示されるように、全てのビルについて通信が可能となることを計算する。
【0061】
これにより、優先度算出部13は、ビルA乃至ビルFに対して救済がなされたと仮定したときの、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数である影響ユーザ数は0人であると計算する。
【0062】
図8は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第2の例を説明する図である。
ここでは、
図4に示される、通信障害が発生している上位のビルA乃至ビルFのうち、5つのビルであるビルAおよびビルC乃至ビルFでなる計5つのビルに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、各々のビルへの救済がなされたと仮定する。
【0063】
本実施形態のネットワーク管理装置10の優先度算出部13は、通信障害が発生している上位のビルAおよびビルC乃至ビルFに対して救済がなされた場合、
図8に示されるように、上位のビルAおよびビルC乃至ビルFの通信障害、およびビルA,Bの下位ビルの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害、すなわち下位の全てのビル群の通信障害が復旧し、ビルA,Bの下位ビルは片系で通信を継続することが可能であるので、
図8に示されるように、ビルB以外の全てのビルについて通信が可能となることを計算する。
【0064】
これにより、優先度算出部13は、ビルAおよびビルC乃至ビルFに対して救済がなされたと仮定したときの、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数である影響ユーザ数は、ビルBの収容ユーザ数、すなわち30人であると計算する。
【0065】
図9は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第3の例を説明する図である。
ここでは、
図4に示される、通信障害が発生している上位のビルA乃至ビルFのうち、5つのビルであるビルB乃至ビルFに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、各々のビルへの救済がなされたと仮定する。
【0066】
本実施形態のネットワーク管理装置10の優先度算出部13は、通信障害が発生している上位のビルB乃至ビルFに対して救済がなされた場合、
図9に示されるように、上位のビルB乃至ビルFの通信障害、ビルA,Bの下位ビルの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害、すなわち下位の全てのビル群の通信障害が復旧し、ビルA,Bの下位ビルは片系で通信を継続することが可能であるので、
図9に示されるように、ビルA以外の全てのビルについて通信が可能となることを計算する。
【0067】
これにより、優先度算出部13は、ビルB乃至ビルFに対して救済がなされたと仮定したときの、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数である影響ユーザ数は、ビルAの収容ユーザ数、すなわち50人であると計算する。
【0068】
図10は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第4の例を説明する図である。
ここでは、
図4に示される、通信障害が発生している上位のビルA乃至ビルFのうち、4つのビルであるビルC乃至ビルFに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、各々のビルへの救済がなされたと仮定する。
【0069】
本実施形態のネットワーク管理装置10の優先度算出部13は、通信障害が発生している上位のビルC乃至ビルFに対して救済がなされた場合、
図10に示されるように、上位のビルC乃至ビルFの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害が復旧するので、
図10に示されるように、ビルAと、ビルBと、ビルA,Bの下位ビルと、が除かれた他のビルについて通信が可能となることを計算する。
【0070】
これにより、優先度算出部13は、ビルC乃至ビルFに対して救済がなされたと仮定したときの、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数である影響ユーザ数は、ビルAの収容ユーザ数、ビルBの収容ユーザ数、ビルA,Bの下位ビルの収容ユーザ数の合計、すなわち180人であると計算する。
【0071】
図11は、本発明の一実施形態に係る優先度算出部による、救済されるビルの組み合わせごとに計算される影響ユーザ数の第5の例を説明する図である。
ここでは、
図4に示される、通信障害が発生している上位のビルA乃至ビルFのうち、4つのビルであるビルA、ビルC、ビルD、およびビルFに燃料配送車が配備されて、これらのビルに収容される非常用発電機に燃料が補給されることで、各々のビルへの救済がなされたと仮定する。
【0072】
本実施形態のネットワーク管理装置10の優先度算出部13は、通信障害が発生している上位のビルA、ビルC、ビルD、およびビルFに対して救済がなされた場合、
図11に示されるように、上位のビルA、ビルC、ビルD、およびビルFの通信障害、ビルA,Bの下位ビルの通信障害、ビルC,Dの下位ビルの通信障害、およびビルE,Fの下位ビルの通信障害、すなわち下位の全てのビル群の通信障害が復旧するので、ビルA,Bの下位ビルおよびビルE,Fの下位ビルは片系で通信を継続することが可能であるので、
図11に示されるように、ビル
BとビルEとが除かれた全てのビルについて通信が可能となることを計算する。
【0073】
これにより、優先度算出部13は、ビルA、ビルC、ビルD、およびビルFに対して救済がなされたと仮定したときの、通信障害の影響を引き続き受けるユーザの数である影響ユーザ数は、ビルBの収容ユーザ数およびビルEの収容ユーザ数の合計、すなわち110人であると計算する。この計算された人数は、図6に係る説明で示された人数と同じである。
【0074】
すなわち、4つのビルが救済可能である場合、
図10に示された、救済先のビルの組み合わせによる、救済後の影響ユーザ数と比較して、
図11に示された、救済先のビルの組み合わせでは、救済後の影響ユーザ数は少ないので、
図11に示された組みあわせが適切であって、救済先のビルの組み合わせとしての優先度が高いことが示される。
【0075】
次に、本発明の一実施形態に係る配備計画処理部14による、救済されるビルの復旧のための復旧作業車の配備計画について説明する。
図12は、本発明の一実施形態に係る配備計画処理部による、救済されるビルの復旧のための復旧作業車の配備計画の生成の一例について説明する図である。
図12に示される「救済ビルリスト」救済先のビルの組み合わせの全てのパターンに対して、優先度算出部13により、救済後の影響ユーザ数が求められて、この影響ユーザ数である影響度に基づく、救済先のビルの組み合わせとしての優先度
が算出される。
【0076】
この優先度が算出された後に、配備計画処理部14は、ユーザ入力部11により入力された、電源供給状況および燃料配送車情報に基づき、救済先のビルの組み合わせの各パターンのうち、選択前のパターンで優先度が最も高いパターンを選択する。
また、上記の燃料配送車情報は、例えば復旧作業車両の候補である燃料配送車の現在位置、ビルへ移動可能な燃料配送車の台数、各々の燃料配送車により運搬および供給可能な燃料の分量などである。
【0077】
配備計画処理部14は、このパターンに係る救済先の各ビルにて実際に燃料配送車が配備可能であるか否かを判定し、配備可能であるときは、救済先の各ビルへの燃料配送車の最適な移動ルートを探索する。配備計画出力部15は、このルートを示す情報を表示装置などに表示することで出力する。
【0078】
また、配備計画処理部14は、上記のように選択したパターンに係る各ビルにて実際に燃料配送車が配備可能でないと判定したときは、次の優先度のパターンに係る救済先の各ビルにて実際に燃料配送車が配備可能であるか否かを判定し、配備可能であるときは、救済先の各ビルへ燃料配送車の最適なルートを探索する。
【0079】
図13は、本発明の一実施形態に係る配備計画処理部による、復旧作業車両の配備の可否の判定結果の一例を示す図である。
図13に示された例では、上記のように算出された優先度が「1」である救済ビルのパターン優先度が低いパターンにかけて、このパターンに係る各ビルへの燃料配送車の配備の可否が判定され、この判定結果が
図13で示される表の配備計画の欄に反映される。
【0080】
図13で示される表の配備計画の欄の「〇」は、上記配備が可能であると判定されたことを示し、上記の欄の「×」は、上記配備が可能でないと判定されたことを示す。
そして、この
図13で示される表のうち、配備計画の欄の「〇」が付された行は、配備計画出力部15により出力され得る。
【0081】
上記のように、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理システムでは、通信設備が収容されてネットワークの上位階層に対応する複数の建物における通信に障害が発生したときで、この発生した障害によりネットワークの下位階層に対応する他の建物へ及ぶ影響である、通信の障害の影響を計算する。
そして、このシステムでは、発生した障害および計算された影響が適用された条件において、障害が発生した上位階層に対応する建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、ネットワークのいずれかの建物で引き続き発生する通信の障害の度合いに基づいて、障害が発生した上位階層の建物のうち、発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度を算出する。
これにより、ネットワークの冗長構成にて通信の障害が発生したときに、この障害の復旧の対象を適切に定めることができる。
【0082】
さらに、上記のシステムでは、算出された優先度に対応する建物に対する障害の復旧の作業に係る条件に基づいて、発生した障害の実際の復旧の作業を計画する。これにより、通信の障害の復旧の作業の計画を適切に定めることができる。
【0083】
図14は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図14に示された例では、上記の実施形態に係るネットワーク管理装置10は、例えばサーバコンピュータ(server computer)またはパーソナルコンピュータ(personal computer)により構成され、CPU等のハードウエアプロセッサ(hardware processor)111Aを有する。そして、このハードウエアプロセッサ111Aに対し、プログラムメモリ(program memory)111B、データメモリ(data memory)112、入出力インタフェース(interface)113及び通信インタフェース114が、バス(bus)120を介して接続される。
【0084】
通信インタフェース114は、例えば1つ以上の無線の通信インタフェースユニット(interface unit)を含んでおり、通信ネットワークNWとの間で情報の送受信を可能にする。無線インタフェースとしては、例えば無線LAN(Local Area Network)などの小電力無線データ通信規格が採用されたインタフェースが使用される。
【0085】
入出力インタフェース113には、ネットワーク管理装置10に付設される、利用者などにより用いられる入力デバイス(device)30および出力デバイス40が接続される。
入出力インタフェース113は、キーボード(keyboard)、タッチパネル(touch panel)、タッチパッド(touchpad)、マウス(mouse)等の入力デバイス30を通じて利用者などにより入力された操作データを取り込むとともに、出力データを液晶または有機EL(Electro Luminescence)等が用いられた表示デバイスを含む出力デバイス40へ出力して表示させる処理を行なうことができる。なお、入力デバイス30および出力デバイス40には、ネットワーク管理装置10に内蔵されたデバイスが使用されてもよく、また、ネットワークNWを介してネットワーク管理装置10と通信可能である他の情報端末の入力デバイスおよび出力デバイスが使用されてもよい。
【0086】
プログラムメモリ111Bは、非一時的な有形の記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリ(non-volatile memory)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとが組み合わせて使用されたもので、一実施形態に係る各種制御処理等を実行する為に必要なプログラムが格納され得る。
【0087】
データメモリ112は、有形の記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ(volatile memory)とが組み合わせて使用されたもので、各種処理が行なわれる過程で取得および作成された各種データまたは情報が記憶される為に用いられ得る。
【0088】
本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置10は、ソフトウエア(software)による処理機能部として、
図1に示されるユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15を有するデータ処理装置として構成され得る。
【0089】
ネットワーク管理装置10の各部によるワークメモリなどとして用いられる各情報記憶部は、
図14に示されたデータメモリ112が用いられることで構成され得る。ただし、これらの構成される記憶領域はネットワーク管理装置10内に必須の構成ではなく、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの外付け記憶媒体、又はクラウド(cloud)に配置されたデータベースサーバ(database server)等の記憶装置に設けられた領域であってもよい。
【0090】
上記のユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15の各部における処理機能部は、いずれも、プログラムメモリ111Bに格納されたプログラムを上記ハードウエアプロセッサ111Aにより読み出させて実行させることにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部または全部は、特定用途向け集積回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit))またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されてもよい。
【0091】
また、各実施形態に記載された手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク(Floppy disk)、ハードディスク(hard disk)等)、光ディスク(optical disc)(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ(Flash memory)等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布され得る。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブル(table)、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0093】
10…ネットワーク管理装置
11…ユーザ入力部
12…障害影響計算部
13…優先度算出部
14…配備計画処理部
15…配備計画出力部