IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許7589811制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図4
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図5
  • 特許-制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20241119BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20241119BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20241119BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W84/00 110
H04W16/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023529354
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023870
(87)【国際公開番号】W WO2022269841
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 章太
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098797(JP,A)
【文献】特開2004-241799(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031280(WO,A1)
【文献】特開2019-033435(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139397(WO,A1)
【文献】特開2020-202437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と複数の基地局とを備える通信システムにおける前記制御装置であって、
1以上の特定優先端末の位置情報、及び遮蔽物センシング情報を取得する情報取得部と、
前記遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物マップを生成する遮蔽物マップ生成部と、
前記位置情報と前記遮蔽物マップに基づいて、各特定優先端末に対する各基地局のアンテナからの見通しの有無を判定する見通し判定部と、
複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるように、前記複数の基地局における可動基地局を制御する基地局制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記基地局制御部は、複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるようなアンテナの位置及び方向を示す1以上のパラメータのうち、前記複数の基地局によりカバーされるエリアの品質であるカバーエリア品質を最大にするパラメータを選択し、当該パラメータを用いて可動基地局を制御し、
前記カバーエリア品質は、基地局から見通し状態となるカバーエリア要素の数であり、前記カバーエリア要素は、前記複数の基地局によりカバーされるエリアを小エリアに区切った場合の当該小エリアである
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記制御装置と前記複数の基地局とを備える通信システム。
【請求項4】
制御装置と複数の基地局とを備える通信システムにおける前記制御装置が実行する制御方法であって、
1以上の特定優先端末の位置情報、及び遮蔽物センシング情報を取得する情報取得ステップと、
前記遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物マップを生成する遮蔽物マップ生成ステップと、
前記位置情報と前記遮蔽物マップに基づいて、各特定優先端末に対する各基地局のアンテナからの見通しの有無を判定する見通し判定ステップと、
複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるように、前記複数の基地局における可動基地局を制御する基地局制御ステップと
を備える制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の前記制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける基地局の制御方法に関連するものである。。
【背景技術】
【0002】
大容量のシステム、高速なデータ伝送速度、低遅延、多数の端末の同時接続等を実現する5Gの導入が進められている。5Gでは、現在の移動通信で使用されている周波数帯に加えて、ミリ波帯のような高周波数帯が利用される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ミリ波を用いた超高速・長距離伝送の5G屋外実験、岸山、奥村、他、ドコモテクニカルジャーナル(Vol.26-1, P25-32)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場屋内で、遠隔から制御する生産ロボットやAGV(無人搬送車)を接続する端末(特定優先端末の例)を高周波数帯のエリアに収容して制御を行うというユースケースがある。このような特定優先端末では、通信信頼性を維持するために複数の基地局に接続する冗長接続状態が望ましい。
【0005】
しかし、遮蔽物が多く、また、遮蔽物が移動する工場屋内では通信の品質が安定しない。また、5G等の高周波数帯の電波は直進性が高く、遮蔽によるロスが大きい。そのため冗長接続状態を維持することが難しい。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、遮蔽物が存在する環境であっても、特定優先端末の冗長接続状態を維持することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術によれば、制御装置と複数の基地局とを備える通信システムにおける前記制御装置であって、
1以上の特定優先端末の位置情報、及び遮蔽物センシング情報を取得する情報取得部と、
前記遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物マップを生成する遮蔽物マップ生成部と、
前記位置情報と前記遮蔽物マップに基づいて、各特定優先端末に対する各基地局のアンテナからの見通しの有無を判定する見通し判定部と、
複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるように、前記複数の基地局における可動基地局を制御する基地局制御部と
を備える制御装置が提供される。

【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、遮蔽物が存在する環境であっても、特定優先端末の冗長接続状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における通信システムの構成例を示す図である。
図2】可動基地局100を説明するための図である。
図3】通信システムにおける各装置の構成を示す図である。
図4】通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図5】可動基地局の制御例を示す図である。
図6】装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0011】
(実施の形態の概要)
本実施の形態では、主に5G等の通信システム向けかつ特定優先端末の通信信頼性が求められるユースケース向けに、遮蔽物の多い工場屋内等における特定優先端末の冗長接続状態を維持するための技術について説明する。
【0012】
特定優先端末とは、例えば、遠隔から制御する生産ロボットやAGV(無人搬送車)を接続する端末である。このような特定優先端末は通信信頼性を維持するために冗長接続状態を維持する必要がある。しかし、遮蔽物が多く、また、遮蔽物が移動する工場屋内では、通信が遮られ、上記のような冗長接続状態を維持することが難しい。そこで、本実施の形態では、可動基地局のアンテナの位置と方向を制御することで、冗長接続状態を維持することとしている。
【0013】
特定優先端末の冗長接続状態を維持するための制御は後述する制御装置300が実行する。制御の概要は下記のとおりである。
【0014】
制御装置300は、遮蔽物検知情報(カメラ映像情報、LiDAR情報より生成)および特定優先端末の位置情報を基に、可動基地局のアンテナの位置・方向パラメータの組み合わせごとの、複数基地局から見通しとなる特定優先端末数Npと、カバーエリア品質(見通しとなるカバーエリア要素数Neなど)を算出・記憶する。
【0015】
そして、制御装置300は、Npを最大化するアンテナ位置・方向パラメータの組み合わせのうち、カバーエリア品質(Neなど)を最大にするアンテナ位置・方向パラメータを算出し、算出したパラメータを用いて可動基地局100のアンテナを移動させる制御を実行する。
【0016】
上記のような制御により、遮蔽物があり、遮蔽物が移動する環境であっても、特定優先端末の冗長接続上頼を維持することができ、通信信頼性を向上させることができる。
【0017】
以下、本実施の形態をより詳細に説明する。
【0018】
(システム構成例)
本実施の形態では、工場屋内や倉庫内など、準静的または動的に大きな遮蔽物が移動するような環境で無線通信システムの通信エリアを形成する状況を想定している。通信エリアは、単一又は複数の基地局によりカバーされる。
【0019】
無線通信システムとしてはどのようなものでも本発明を適用可能である。ただし、本実施の形態では、主に5G等の無線通信システムであって、特にAbove-6GHz等の直進性の高い周波数を用いる無線通信システムを想定している。
【0020】
図1に、本実施の形態における通信システムの全体構成例を示す。図1に示すとおり、本通信システムは、可動基地局100-1、可動基地局100-2、遮蔽物センサ10、遮蔽物20、複数の端末200-1~200-3、及び制御装置300を備える。
【0021】
遮蔽物センサ10は、遮蔽物を検知できるセンサであればどのようなセンサであってもよい。遮蔽物センサ10は、例えば、カメラ、LiDAR等である。遮蔽物20は、固定されている物でもよいし、移動する物でもよい。遮蔽物20としては、例えば、工場屋内の資材、機械、棚、人物等が想定される。
【0022】
端末200-1~200-3はそれぞれ、可動基地局100と無線通信する機能を有する端末である。端末200-1~200-3のうちの一部又は全部は特定優先端末である。特定優先端末は、例えば遠隔から制御する生産ロボットやAGV(無人搬送車)を接続する端末である。
【0023】
制御装置300は、可動基地局100の制御を行う。制御装置300は、可動基地局100の近傍に配置してもよいし、ネットワークを介して遠方に配置してもよい。また、制御装置300が可動基地局100内に備えられてもよい。可動基地局100と制御装置300の間は、有線接続でもよいし、無線接続(IAB・WiGig等)でもよい。
【0024】
可動基地局100は、無線信号の送受信点となるアンテナを含む部分である可動部105を移動させることが可能な基地局である。アンテナの方向も可変である。可動部105にはアンテナが含まれていればよく、アンテナ以外の機能部が含まれていてもよい。可動部105がアンテナそのものであってもよい。
【0025】
可動基地局100について、例えば図2に示すように、可動部105をレール上でスライドさせることにより符号112に示す方向に可動部105の位置を変更することができる。レールを水平方向に回転させることもできる。この移動制御により、可動部105を所定範囲内の任意の位置に配置することができる。
【0026】
また、アンテナ方向制御に関しては、例えば、可動部105を支持する構造体により、可動部105をx軸周り(符号113参照)、y軸周り(符号114参照)、z軸周り(符号115参照)に回転移動させることができる。この移動制御により、アンテナを任意の方向に向けることができる。
【0027】
なお、可動基地局100として上記のようにレール上をスライドさせる方式のものを使用することは一例に過ぎない。基地局が備えるアンテナの位置と方向を変更できる方式であればどのようなものを使用してもよい。例えば、ドローンあるいはAGV(無人搬送車)に基地局を搭載して、基地局のアンテナの位置及び方向を制御してもよいし、手動で基地局のアンテナの位置及び方向を制御してもよい。
【0028】
また、図1に示す例では、基地局として、可動基地局100のみが存在する例を示しているが、可動機能を持たない基地局と、可動基地局とを組み合わせて使用してもよい。この場合、可動機能を持たない基地局の位置・方向パラメータを固定として、以下で説明する処理を行うことで、可動基地局100のみを用いる場合と同様にして、位置・方向パラメータの最適化を行うことができる。
【0029】
(詳細構成例)
図3に、本実施の形態における通信システムを構成する各装置の構成を示す。図3は、k台の可動基地局100-1~100-kを備える場合の例である。1~kを特に区別しない場合には「可動基地局100」と記述する。また、複数の端末200が存在し、各端末200は特定優先端末であるとする。図3に示す遮蔽物センシング部400は、図1における遮蔽物センサ10に相当する。遮蔽物センシング部400は、制御装置300内に含まれる機能部であってもよい。
【0030】
<可動基地局100>
図3に示すとおり、可動基地局100は、動作機構部110、無線送受信部120、信号復調部130を有する。動作機構部110は、前述した可動部105を動作させるための機構である。動作機構部110をアクチュエータと呼んでもよい。可動部105が無線送受信部120であってもよい。
【0031】
無線送受信部120は、アンテナを有し、無線信号の送受信を行う。信号復調部130は、無線送受信部120から上り信号を受け取り、復調して、制御装置300に送信する。
【0032】
<端末200>
端末200は、無線送受信部210、位置情報取得部220、遮蔽物センシング230を備える。無線送受信部210は、無線信号の送受信を行う。位置情報取得部220は、端末200自身の位置情報を取得する。遮蔽物センシング部230は遮蔽物の探知を行う。遮蔽物センシング部230は、カメラでもよいし、LiDARでもよいし、その他のセンサであってもよい。
【0033】
制御装置300において、端末200により取得した端末200の位置情報を使用する場合において、位置情報取得部220は、当該位置情報を、上りのデータチャネル(または制御チャネル)を用いて、可動基地局100に送信し、可動基地局100が当該位置情報を制御装置300に送信する。
【0034】
端末200は、位置情報取得部220を備えなくてもよい。その場合、制御装置300あるいは可動基地局100が、カメラ映像等を使用して端末位置を推定する。
【0035】
遮蔽物センシングは、端末200とは別に備えられている遮蔽物センシング部400で行う。ただし、端末200が遮蔽物センシング部230を備える場合には、当該遮蔽物センシング部230がセンシング情報(カメラ映像、RiDAR情報など)を上り信号を用いて制御装置300に通知してもよい。端末200は遮蔽物センシング部230を備えなくてもよい。
【0036】
<制御装置300>
制御装置300は、見通し判定部310、遮蔽物マップ生成部320、情報取得部330、基地局制御部340、記憶部350を備える。各部の概要は下記のとおりである。
【0037】
情報取得部330は、遮蔽物センシング情報、特定優先端末200の位置情報等を取得する。遮蔽物マップ生成部320は、遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物を探知し、3D(又は2D)マップを生成し、その情報を記憶部350に記憶する。
【0038】
見通し判定部310は、各可動基地局について、可動基地局100のアンテナの位置及び方向のパラメータ毎の見通しとなる特定優先端末やカバーエリア要素を特定し、その情報を記憶部350に記憶する。基地局制御部340は、可動基地局100に対する移動制御等を行う。
【0039】
(通信システムの動作例)
次に、図4に示すフローチャートを参照して、通信システム(特に制御装置300)の動作例を説明する。説明において図5も適宜参照する。
【0040】
<S101:位置情報取得>
まず、S101において、制御装置300の情報取得部330が、特定優先端末200の位置情報を取得する。特定優先端末200が複数台存在する場合には特定優先端末200毎にその位置情報を取得する。
【0041】
位置情報はどのような方法で取得してもよい。例えば、特定優先端末200が三点測位、GPS等を用いて測定した位置情報をデータチャネルあるいは制御チャネルで制御装置300に報告してもよい。また、特定優先端末200の位置のシナリオを準備し、シナリオに従った位置情報(例:各時刻の位置)を予め記憶部350に記憶しておくこととしてもよい。
【0042】
<S102:遮蔽物センシング情報取得>
S102において、情報取得部330は、遮蔽物センシング部400により得られた遮蔽物センシング情報(カメラ映像情報、LiDAR情報等)を取得し、記憶部350に格納する。
【0043】
<S103:遮蔽物マップ生成>
S103において、遮蔽物マップ生成部320は、S102において取得した遮蔽物センシング情報(カメラ映像情報、LiDAR情報等)に基づいて、遮蔽物を探知して3D(または2Dマップ)を生成する。3Dマップには、遮蔽物の3次元の位置情報が含まれる。2Dマップには遮蔽物の2次元の位置情報が含まれる。
【0044】
<S104:見通し判定>
S104において、見通し判定部310は、各可動基地局100について、特定優先端末200の位置情報及び遮蔽物マップを用いて、可動基地局100のアンテナの位置・方向を示すパラメータの組み合わせごとの、可動基地局100から各特定優先端末200への見通し有無を判別し、判別した見通し有無の情報を記憶部350に記憶する。
【0045】
また、見通し判定部310は、各可動基地局100について、カバーエリア要素の情報と遮蔽物マップを用いて、可動基地局100のアンテナの位置・方向を示すパラメータの組み合わせごとの、可動基地局100から各カバーエリア要素への見通し有無を判別し、判別した見通し有無の情報を記憶部350に記憶する。
【0046】
例えば、1つの可動基地局100に関して、2つの特定優先端末200-1、200-2が存在するとして、アンテナの位置・方向を示すパラメータ1~nが存在すると想定する。あるパラメータmは例えば、{x,y,z,p,c,r}からなる。ここで、x,y,zはそれぞれアンテナ中心位置のx座標、y座標、z座標であり、p,c,rはそれぞれアンテナのパン角、チルト角、ロール角である。
【0047】
見通し判定部310は、パラメータ毎に可動基地局100から特定優先端末200-1、200-2への見通しの有無を判断し、例えば、下記のような情報を記憶部350に記憶する。
【0048】
「パラメータ1:特定優先端末200-1への見通し有、200-2への見通し無」、「パラメータ2:特定優先端末200-1への見通し有、200-2への見通し無」、....、「パラメータn:特定優先端末200-1への見通し無、200-2への見通し有」。
【0049】
複数台存在する可動基地局100毎に上記の情報が記憶部350に記憶される。
【0050】
次に、カバーエリア要素について説明する。カバーエリア要素とは、図5に示すように、制御対象となる複数基地局にカバーされるエリア(カバーエリア)を小エリアに区切った場合のその小エリアのことである。
【0051】
例えば、カバーエリア要素が9個存在するとして、1つの可動基地局100に関して、アンテナの位置・方向を示すパラメータ1~nが存在すると想定する。あるパラメータmは例えば、{x,y,z,p,c,r}からなる。ここで、x,y,zはそれぞれアンテナ中心位置のx座標、y座標、z座標であり、p,c,rはそれぞれアンテナのパン角、チルト角、ロール角である。
【0052】
見通し判定部310は、パラメータ毎に可動基地局100から各カバーエリア要素への見通しの有無を判断し、例えば、下記のような情報を記憶部350に記憶する。
【0053】
「パラメータ1:カバーエリア要素1への見通し有、カバーエリア要素2への見通し有、...、カバーエリア要素9への見通し有」、「パラメータ2:カバーエリア要素1への見通し無、カバーエリア要素2への見通し無、...、カバーエリア要素9への見通し有」、....、「パラメータn:カバーエリア要素1への見通し有、カバーエリア要素2への見通し無、...、カバーエリア要素9への見通し有」。
【0054】
複数台存在する可動基地局100毎に上記の情報が記憶部350に記憶される。
【0055】
<S105:端末数、カバーエリア品質算出>
基地局制御部340(又は見通し判定部310)は、可動基地局100のアンテナの位置・方向を示すパラメータの組み合わせごとの、複数基地局から見通しとなる特定優先端末数Npと、カバーエリア品質(見通しとなるカバーエリア要素数Neなど)を算出し、算出した情報を記憶する。
【0056】
例えば、図5に示すように、可動基地局100-1と可動基地局100-2、及び特定優先端末200-1と特定優先端末200-2が存在するとして、可動基地局100-1がパラメータa、可動基地局100-2がパラメータbであるときに、可動基地局100-1と可動基地局100-2が両方とも特定優先端末200-1に対して見通し有であるが、可動基地局100-1のみ特定優先端末200-2に対して見通し有であるとすると、「動基地局100-1:パラメータa、可動基地局100-2:パラメータb」のパラメータ組み合わせに対して、複数可動基地局から見通しとなる特定優先端末数Npは1である。
【0057】
また、例えば、「動基地局100-1:パラメータa、可動基地局100-2:パラメータb」のパラメータ組み合わせに対して、可動基地局100-1と可動基地局100-2のいずれかから見通しとなるカバーエリア要素の数が8であるとすると、カバーエリア品質は8として算出される。
【0058】
なお、カバーエリア品質を、いずれかの可動基地局から見通しとなるカバーエリア要素数とすることは一例である。カバーエリア品質を、複数可動基地局から見通しとなるカバーエリア要素数としてもよいし、その他の指標をカバーエリア品質としてもよい。
【0059】
<S106:パラメータ選択>
S106において、基地局制御部340は、Npを最大にするアンテナ位置・方向パラメータの組み合わせのうち、カバーエリア品質(Ne等)を最大にするアンテナ位置・方向パラメータ#kを選択する。
【0060】
例えば、図5に示すように、可動基地局100-1と可動基地局100-2、及び特定優先端末200-1と特定優先端末200-2が存在するとして、「可動基地局100-1:パラメータc、可動基地局100-2:パラメータd」及び「可動基地局100-1:パラメータe、可動基地局100-2:パラメータf」のいずれの場合にもNpが最大の2になるとする。
【0061】
そして、「可動基地局100-1:パラメータc、可動基地局100-2:パラメータd」のほうが「可動基地局100-1:パラメータe、可動基地局100-2:パラメータf」よりもカバーエリア品質が高いとすると、基地局制御部340は、Npを最大にするアンテナ位置・方向パラメータの組み合わせのうち、カバーエリア品質(Ne等)を最大にするアンテナ位置・方向パラメータ#kとして、「可動基地局100-1:パラメータc、可動基地局100-2:パラメータd」を選択する。
【0062】
なお、基地局制御部340は、Npを最大にするアンテナ位置・方向パラメータのうち、任意のパラメータを選択することとしてもよい。この場合、カバーエリア品質を算出しなくてもよい。。
【0063】
<S107:基地局制御>
S107において、基地局制御部340は、S106において選択したパラメータを各可動基地局100へ送信することにより、各可動基地局100のアンテナの位置・方向をパラメータに従った位置・方向に移動させる。
【0064】
上記のような制御を行うことで、冗長接続状態を維持した特定優先端末200による信頼性の高い通信を可能とすることができる。
【0065】
(見通し判定方法の例)
以下、見通し判定部310が実行する見通し判定方法の例を説明する。ここでは、下記の3つの例を説明する。なお、下記の3方法は例であり、下記の3方法以外の方法で見通し判定を行ってもよい。
【0066】
<見通し判定方法1>
見通し判定方法1において、見通し判定部310は、アンテナ中心位置の点から壁または遮蔽物に衝突するまでの線分が通る領域を見通しエリアとする。この方法では、特定優先端末200、カバーエリア要素が当該領域に含まれていれば当該特定優先端末200、カバーエリア要素は見通し状態にあると判定できる。
【0067】
見通し判定方法1によれば、端末位置に依らず、エリア形状と遮蔽物位置と遮蔽物形状のみで簡易に見通しエリアを算出可能である。
【0068】
<見通し判定方法2>
見通し判定方法2では、見通し判定部2は、アンテナ中心位置の点から、予め定めたグリッド上の各点に対して、フレネルゾーンを算出し、フレネルゾーンのうち予め定めたx%が遮蔽されないポイントを見通し位置とし、これらのグリッド周囲のエリアを見通しエリアとする。この方法では、特定優先端末200、カバーエリア要素が当該エリアに含まれていれば当該特定優先端末200、カバーエリア要素は見通し状態にあると判定できる。
【0069】
見通し判定方法2によれば、端末位置に依らず、エリア形状と遮蔽物位置と遮蔽物形状のみで見通しエリアを算出可能である。
【0070】
<見通し判定方法3>
見通し判定方法3において、見通し判定部310は、アンテナ中心位置の点から、各端末に対して、フレネルゾーンを算出し、フレネルゾーンのうち予め定めたx%が遮蔽されない端末を見通し状態にある端末であると判定する。
【0071】
見通し判定方法3によれば、端末位置がある程度静的である場合に、エリア形状と遮蔽物位置と遮蔽物形状から、実際に通信する端末の見通し位置を判定可能である。
【0072】
<フレネルゾーンの計算について>
上記の見通し判定方法2,3において用いるフレネルゾーンの計算は下記の式により行うことができる。
【0073】
【数1】
【0074】
【数2】
上記数式における変数の意味は下記のとおりである。
【0075】
送信と受信側の最短距離:d(m)
回転楕円体の中央部の半径(フレネル半径):r1(m)
送信側と回転楕円体中央までの距離:d1(m)
受信側と回転楕円体中央までの距離:d2(m)
フレネル半径部分で反射する反射波と直接波の経路差:d3(m)
波長:λ(m)
(ハードウェア構成例)
本実施の形態における制御装置300は、例えば、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。なお、この「コンピュータ」は、物理マシンであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。仮想マシンを使用する場合、ここで説明する「ハードウェア」は仮想的なハードウェアである。
【0076】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0077】
図6は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図6のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0078】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0079】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、制御装置300に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0080】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る技術により、出来るだけ多くの特定優先端末が複数の可動基地局から見通し位置になる可動基地局位置を選択することとしたので、特定優先端末が冗長接続状態である可能性を最大化し、予測不可能な遮蔽等による通信品質低下を回避することができる。
【0081】
また、Npを最大にするアンテナ位置・方向パラメータの組み合わせのうち、カバーエリア品質(Ne等)を最大にするアンテナ位置・方向パラメータ#kを選択することとしたので、特定優先端末の通信品質を優先して保証しつつ、カバーエリア通信品質を向上することができる。
【0082】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の制御装置、通信システム、制御方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
制御装置と複数の基地局とを備える通信システムにおける前記制御装置であって、
1以上の特定優先端末の位置情報、及び遮蔽物センシング情報を取得する情報取得部と、
前記遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物マップを生成する遮蔽物マップ生成部と、
前記位置情報と前記遮蔽物マップに基づいて、各特定優先端末に対する各基地局のアンテナからの見通しの有無を判定する見通し判定部と、
複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるように、前記複数の基地局における可動基地局を制御する基地局制御部と
を備える制御装置。
(第2項)
前記基地局制御部は、複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるようなアンテナの位置及び方向を示す1以上のパラメータのうち、前記複数の基地局によりカバーされるエリアの品質であるカバーエリア品質を最大にするパラメータを選択し、当該パラメータを用いて可動基地局を制御する
第1項に記載の制御装置。
(第3項)
前記カバーエリア品質は、基地局から見通し状態となるカバーエリア要素の数である
第2項に記載の制御装置。
(第4項)
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の前記制御装置と前記複数の基地局とを備える通信システム。
(第5項)
制御装置と複数の基地局とを備える通信システムにおける前記制御装置が実行する制御方法であって、
1以上の特定優先端末の位置情報、及び遮蔽物センシング情報を取得する情報取得ステップと、
前記遮蔽物センシング情報に基づいて遮蔽物マップを生成する遮蔽物マップ生成ステップと、
前記位置情報と前記遮蔽物マップに基づいて、各特定優先端末に対する各基地局のアンテナからの見通しの有無を判定する見通し判定ステップと、
複数基地局から見通し状態となる特定優先端末の数が最大になるように、前記複数の基地局における可動基地局を制御する基地局制御ステップと
を備える制御方法。
(第6項)
コンピュータを、第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の前記制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0083】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 遮蔽物センサ
20 遮蔽物
100 可動基地局
105 可動部
110 動作機構部
120 無線送受信部
130 信号復調部
200 端末
210 無線送受信部2
220 位置情報取得部
230 遮蔽物センシング
300 制御装置
310 見通し判定部
320 遮蔽物マップ生成部
330 情報取得部
340 基地局制御部
350 記憶部
400 遮蔽物センシング部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6