(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】永久磁石の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20241119BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20241119BHJP
B30B 11/00 20060101ALI20241119BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20241119BHJP
H01F 13/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01F41/02 G
B22F3/02 R
B30B11/00 A
H01F7/02 E
H01F13/00 300
(21)【出願番号】P 2024553712
(86)(22)【出願日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2023029467
(87)【国際公開番号】W WO2024127713
(87)【国際公開日】2024-06-20
【審査請求日】2024-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2022199438
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】平良 有紗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝雄
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-258181(JP,A)
【文献】特開2008-205498(JP,A)
【文献】特開2012-190937(JP,A)
【文献】国際公開第2009/81978(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/64589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
B22F 3/02
B30B 11/00
H01F 7/02
H01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石の製造装置であって、
前記製造装置が、圧縮成形機構と、磁場発生機構と、を備え、
前記圧縮成形機構が、互いに対向する一対のパンチと、前記一対のパンチが挿入される筒状のダイと、を含み、
前記磁場発生機構が、一対のコイルを含み、
前記圧縮成形機構が、前記一対のコイルの間に配置され、
前記圧縮成形機構が、前記一対のコイル其々の内側を貫通せず、
磁石粉末を含む原料が、前記ダイ内に供給され、
磁場が、前記一対のコイルのうち少なくとも一つの前記コイルによって発生し、
前記磁場を前記ダイ内の前記原料へ印加しながら、前記ダイ内の前記原料を前記一対のパンチで圧縮することにより、成形体が前記原料から形成され、
前記磁場発生機構の全体の移動、前記磁場発生機構の全体の回転、及び少なくとも一つの前記コイルの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、前記ダイ内の前記原料へ印加される前記磁場の方向が変化する、
永久磁石の製造装置。
【請求項2】
永久磁石の製造装置であって、
前記製造装置が、圧縮成形機構と、磁場発生機構と、を備え、
前記圧縮成形機構が、互いに対向する一対のパンチと、前記一対のパンチが挿入される筒状のダイと、を含み、
前記磁場発生機構が、一対のコイルを含み、
前記圧縮成形機構の少なくとも一部が、前記一対のコイル其々の内側に配置され、
磁石粉末を含む原料が、前記ダイ内に供給され、
磁場が、前記一対のコイルのうち少なくとも一つの前記コイルによって発生し、
前記磁場を前記ダイ内の前記原料へ印加しながら、前記ダイ内の前記原料を前記一対のパンチで圧縮することにより、成形体が前記原料から形成され、
前記磁場発生機構の全体の移動、前記磁場発生機構の全体の回転、及び少なくとも一つの前記コイルの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、前記ダイ内の前記原料へ印加される前記磁場の方向が変化する、
永久磁石の製造装置。
【請求項3】
加圧方向が、前記一対のパンチが対向する方向と定義され、
前記磁場発生機構の全体が、前記加圧方向に平行な方向、及び前記加圧方向に垂直な方向のうち少なくとも一つの方向において移動する、
請求項1又は2に記載の永久磁石の製造装置。
【請求項4】
加圧方向が、前記一対のパンチが対向する方向と定義され、
前記磁場発生機構の全体の回転軸線から一方の前記コイルまでの距離が、前記回転軸線から他方の前記コイルまでの距離と等しく、
前記回転軸線が、前記加圧方向に垂直であり、
前記磁場発生機構の全体が、前記回転軸線に対して回転する、
請求項1又は2に記載の永久磁石の製造装置。
【請求項5】
加圧方向が、前記一対のパンチが対向する方向と定義され、
一つの前記コイルの中心軸線と前記加圧方向との間の角度が変化するように、少なくとも一つの前記コイルが回転する、
請求項1又は2に記載の永久磁石の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久磁石の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石(bоnded magnet)及び焼結磁石(sintered magnet)等の異方性の永久磁石(anisotropic permanent magnet)の製造では、磁石粉末(永久磁石からなる多数の磁石粒子)を含む原料が、金型内に供給される。コイルによって発生する磁場を金型内の原料へ印加しながら、原料を金型で圧縮することにより、原料から成形体が形成される。成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)は、磁場に沿って磁化(magnetize)及び配向(оrient)される。(下記特許文献1及び2参照。)例えば、一般的な永久磁石の製造方法では、磁場のうち磁束(磁力線)の密度が高い部分が金型内の原料を通過するように金型が配置され、原料の加圧方向(圧縮方向)と平行又は垂直な磁場が、金型内の原料へ印加される。その結果、永久磁石内の各磁石粒子(又は各磁区)の磁化容易軸(結晶軸)は、磁場と平行に磁化及び配向される。
【0003】
永久磁石の一種であるNd‐Fe‐B系磁石は、ボンド磁石及び焼結磁石の両方の原料に用いられる。一方、Sm‐Fe‐N系磁石の結晶構造は高温(約500℃)において劣化し易いので、Sm‐Fe‐N系磁石から焼結磁石を製造することは困難である。したがって、Sm‐Fe‐N系磁石は、結晶構造が維持される低い温度での加熱(磁石粉末と混合される熱硬化性樹脂の熱硬化)によって製造可能なボンド磁石の原料に用いられる。Sm‐Fe‐N系磁石は、Nd‐Fe‐B系磁石に比べて安い原料から製造可能であり、優れた磁気特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-193189号公報
【文献】実開平6-79134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
永久磁石は、モーター又はアクチュエータを構成する部品として、様々な技術分野において利用される。例えば、永久磁石は、電気自動車、ハイブリッド自動車、スマートフォン、磁気共鳴画像装置(MRI)、デジタルカメラ、薄型テレビ、ハードディスクドライブ、スキャナー、エアコン、ヒートポンプ、冷蔵庫、掃除機、洗濯乾燥機、エレベーター、及び風力発電機等の様々な工業製品に利用される。これらの多様な用途に応じて、永久磁石に要求される寸法、形状及び磁化方向(magnetizatiоn directiоn)は異なる。したがって、多品種の永久磁石を製造するためには、永久磁石の用途、寸法及び形状に応じて、永久磁石の磁化方向を容易に変更できることが望まれる。永久磁石の磁化方向を容易に変更するためには、金型内の原料に印加される磁場の方向及び強度を容易に変更及び制御できることが望まれる。特に、永久磁石の小型化に伴い、狭い領域(原料を内包する小型の金型が設置される領域)において、磁場の方向及び強度を正確に変更及び制御する必要がある。例えば、所定の曲率を有する磁力線に沿って原料中の磁石粉末が配向されてよい。換言すれば、永久磁石内の各磁区が、所定の曲率を有する曲線に沿って配向されてよい。原料の加圧方向と磁力線との間の角度が任意の値に維持された状態において、原料中の磁石粉末が磁力線に沿って配向されてもよい。換言すれば、原料の加圧方向と原料中の磁石粉末の配向方向との間の角度が任意の値に調整されてもよい。磁場のうち磁束密度が比較的低い部分が金型内の原料へ印加されるように、磁場が制御されてもよい。
【0006】
しかしながら、従来の永久磁石の製造装置においては、金型の可動域は限られ、コイル位置及び向きは固定されている。したがって、従来の永久磁石の製造装置において、コイルが金型内の原料へ印加する磁場の方向を自在に変更することは困難であった。つまり、従来の永久磁石の製造装置によって、永久磁石の磁化方向を自在に変更することは困難であった。
【0007】
本発明の一側面の目的は、永久磁石の磁化方向を容易に変更することができる永久磁石の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例えば、本発明の一側面は、下記の[1]~[5]のいずれか一項に記載の永久磁石の製造装置に関する。
【0009】
[1] 永久磁石の製造装置であって、
製造装置が、圧縮成形機構(compression molding mechanism)と、磁場発生機構と、を含み、
圧縮成形機構が、互いに対向(face)する一対のパンチと、一対のパンチが挿入される筒状のダイと、を含み、
磁場発生機構が、一対のコイルを含み、
圧縮成形機構が、一対のコイルの間に配置され、
圧縮成形機構が、一対のコイル其々の内側を貫通せず、
磁石粉末を含む原料が、ダイ内に供給され、
磁場が、一対のコイルのうち少なくとも一つのコイルによって発生し、
磁場をダイ内の原料へ印加(apply)しながら、ダイ内の原料を一対のパンチで圧縮(compress)することにより、成形体(cоmpact)が原料から形成され、
磁場発生機構の全体の移動、磁場発生機構の全体の回転、及び少なくとも一つのコイルの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、ダイ内の原料へ印加される磁場の方向が変化する、
永久磁石の製造装置。
【0010】
[2] 永久磁石の製造装置であって、
製造装置が、圧縮成形機構と、磁場発生機構と、を含み、
圧縮成形機構が、互いに対向する一対のパンチと、一対のパンチが挿入される筒状のダイと、を含み、
磁場発生機構が、一対のコイルを含み、
圧縮成形機構の少なくとも一部が、一対のコイル其々の内側に配置され、
磁石粉末を含む原料が、ダイ内に供給され、
磁場が、一対のコイルのうち少なくとも一つのコイルによって発生し、
磁場をダイ内の原料へ印加しながら、ダイ内の原料を一対のパンチで圧縮することにより、成形体が原料から形成され、
磁場発生機構の全体の移動、磁場発生機構の全体の回転、及び少なくとも一つのコイルの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、ダイ内の原料へ印加される磁場の方向が変化する、
永久磁石の製造装置。
【0011】
[3] 加圧方向(pressing directiоn)が、一対のパンチが対向する方向と定義され、
磁場発生機構の全体が、加圧方向に平行な方向、及び加圧方向に垂直な方向のうち少なくとも一つの方向において移動する、
[1]又は[2]に記載の永久磁石の製造装置。
【0012】
[4] 加圧方向が、一対のパンチが対向する方向と定義され、
磁場発生機構の全体の回転軸線から一方のコイルまでの距離が、回転軸線から他方のコイルまでの距離と等しく、
回転軸線が、加圧方向に垂直であり、
磁場発生機構の全体が、回転軸線に対して回転する、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の永久磁石の製造装置。
【0013】
[5] 加圧方向が、一対のパンチが対向する方向と定義され、
一つのコイルの中心軸線と加圧方向との間の角度が変化するように、少なくとも一つのコイルが回転する、
[1]~[4]のいずれか一項に記載の永久磁石の製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、永久磁石の磁化方向を容易に変更することができる永久磁石の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造装置の模式的な断面図であり、
図1に示される断面は、加圧方向に平行であり、且つ一対のパンチ、ダイ、及び一対のコイルの全てを横断する。
【
図2】
図2は、
図1に示される製造装置の模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される製造装置の模式的な上面図であり、圧縮成形機構のうちダイ以外の部分は
図3において省略されている。
【
図4】
図4は、
図1に示される製造装置において磁場発生機構の全体が移動した状態を示す。
【
図5】
図5は、
図1に示される製造装置において磁場発生機構の全体が回転した状態を示す。
【
図6】
図6は、
図1に示される製造装置において一対のコイル其々が個別に回転した状態を示す。
【
図7】
図7は、
図1に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図8】
図8は、
図1に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図9】
図9は、
図1に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図10】
図10は、
図1に示される製造装置に備わる一つのコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図11】
図11は、
図1に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態に係る製造装置の模式的な断面図であり、
図12に示される断面は、加圧方向に平行であり、且つ一対のパンチ、ダイ、及び一対のコイルの全てを横断する。
【
図14】
図14は、
図12に示される製造装置の模式的な上面図であり、圧縮成形機構のうちダイ以外の部分は
図14において省略されている。
【
図15】
図15は、
図12に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【
図16】
図16は、
図12に示される製造装置に備わる一対のコイルが原料へ印加する磁場の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
図1~16に示されるX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。X軸,Y軸及びZ軸其々の方向は、
図1~16に共通する。以下に記載された「永久磁石」は、ボンド磁石及び焼結磁石のうち少なくとも一種の異方性磁石を意味する。
【0017】
(第一実施形態)
図1~11は、本発明の第一実施形態に係る永久磁石の製造装置100を示す。
図1は、製造装置100の断面を示す。
図1に示される断面は、製造装置100の正面と平行である。
図2は、
図1に示される製造装置100の側面を示す。
図3は、
図1に示される製造装置100の上面を示す。
図4~11其々は、製造装置100の正面を示す。説明の便宜のために、
図4~11(各正面図)において、磁石粉末を含む原料rm1の断面、及び筒状のダイd1の断面が示されている。
【0018】
[製造装置100の概要]
永久磁石の製造装置100は、圧縮成形機構P10及び磁場発生機構M10を含む。
【0019】
圧縮成形機構P10は、互いに対向する一対のパンチ(第一パンチp1及び第二パンチp2)と、一対のパンチが挿入される筒状のダイd1と、を含む。ダイd1において第一パンチp1と向かい合う端面には、第一開口部(first оpening)が形成されており、第一パンチp1は第一開口部へ挿入される。ダイd1において第二パンチp2と向かい合う端面には、第二開口部(secоnd оpening)が形成されており、第二パンチp2は第二開口部へ挿入される。ダイd1に挿入された第二パンチp2と、ダイd1と、から、キャビティー(凹型)が構成されてよい。第一パンチp1は、コア(凸型)として機能してよい。
圧縮成形機構P10は、第一加圧機構(first pressing mechanism)p11及び第二加圧機構(secоnd pressing mechanism)p21を更に含む。例えば、第一加圧機構p11及び第二加圧機構p21其々は、油圧装置であってよい。第一パンチp1は、第一加圧機構p11に接続され、第一加圧機構p11によって自在に駆動される。第二パンチp2は、第二加圧機構p21に接続され、第二加圧機構p21によって自在に駆動される。ダイd1、第一加圧機構p11及び第二加圧機構p21は、製造装置100において固定されていてよい。
磁石粉末を含む原料rm1が、ダイd1内に供給される。ダイd1内の原料rm1が、第一パンチp1及び第二パンチp2の間に挟まれ、且つ第一パンチp1及び第二パンチp2によって加圧される。磁石粉末は、永久磁石からなる多数の磁石粒子と言い換えられてよい。
第一パンチp1、第二パンチp2、及びダイd1其々の寸法及び形状は、限定されない。例えば、第一パンチp1、第二パンチp2、及びダイd1其々の寸法及び形状は、成形体(又は永久磁石)の所望の寸法及び形状に応じて変更されてよい。第一パンチp1、第二パンチp2、及びダイd1其々の組成は限定されない。例えば、第一パンチp1、第二パンチp2、及びダイd1其々は、型として十分な機械的強度を有する金属であってよい。
【0020】
加圧方向Dp(圧縮方向)は、一対のパンチ(第一パンチp1及び第二パンチp2)が対向する方向と定義される。加圧方向Dp(圧縮方向)は、一対のパンチ其々の端面が対向する方向、又は一対のパンチ其々の端面に垂直な方向と言い換えられてよい。
【0021】
磁場発生機構M10は、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)を含む。圧縮成形機構P10は、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)の間に配置される。圧縮成形機構P10は、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)其々の内側を貫通しない。
製造装置100は給電機構(electric power supply mechanism)を更に含む。第一コイルc1及び第二コイルc2其々は、給電機構に電気的に接続されている。給電機構より、第一コイルc1中に生じる第一電流Ic1の向き及び絶対値、第二コイルc2中に生じる第二電流Ic2の向き及び絶対値其々が自在に制御される。給電機構は、各図において省略されている。
第一コイルc1及び第二コイルc2其々が導電体である限り、第一コイルc1及び第二コイルc2其々の組成は限定されない。第一コイルc1及び第二コイルc2其々は、空芯コイル(air core coil)であってよい。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の内部に鉄心(ヨーク)が設置されていてもよい。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の内径及び巻き数(ターン数)は限定されない。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の内径は互いに同じであってよい。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の内径は互いに異なってもよい。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の巻き数は互いに同じであってよい。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の巻き数は互いに異なってもよい。
【0022】
磁場発生機構M10は、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)に加えて、第一回転機構Ac1、第二回転機構Ac2、連結部材M5、及び第三回転機構AM10を更に含む。第一コイルc1は、第一回転機構Ac1を介して、連結部材M5の一方の端部近傍に設置されている。第二コイルc2は、第二回転機構Ac2を介して、連結部材M5の他方の端部近傍に設置されている。製造装置100は、移動機構を更に含む。連結部材M5は、第三回転機構AM10を介して移動機構に接続されている。移動機構は、各図において省略されている。
【0023】
[磁場発生機構M10の全体の移動]
連結部材M5が接続された上記移動機構により、磁場発生機構M10の全体が、加圧方向Dpに平行な方向、及び加圧方向Dpに垂直な方向のうち少なくとも一つの方向において自在に移動する。換言すれば、移動機構により、磁場発生機構M10の位置が所望の位置に調整され、且つ固定される。移動機構により、磁場発生機構M10の全体が、加圧方向Dpに平行な方向、及び加圧方向Dpに垂直な方向の両方において自在に移動してよい。ただし、磁場発生機構M10の全体が移動する範囲は、磁場発生機構M10が圧縮成形機構P10と物理的に干渉しない範囲に限られる。加圧方向Dpに平行な方向は、Z軸方向と言い換えられてよい。加圧方向Dpに垂直な方向は、XY面に平行な方向と言い換えられてよい。
図1は、磁場発生機構M10の全体が移動する前の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の配置を示す。
図4は、磁場発生機構M10の全体が加圧方向Dpに平行な方向及び加圧方向Dpに垂直な方向の両方において移動した後の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の配置の一例を示す。
移動機構が、加圧方向Dpに平行な方向、及び加圧方向Dpに垂直な方向のうち少なくとも一つの方向において磁場発生機構M10の全体を移動させる機能を有する限り、移動機構の具体的構造は限定されない。例えば、移動機構は、加圧方向Dpに平行な方向において磁場発生機構M10(連結部材M5)を移動させる第一アクチュエータ(リニアアクチュエータ)を含んでよい。移動機構は、加圧方向Dpに垂直な方向において磁場発生機構M10(連結部材M5)を移動させる第二アクチュエータ(リニアアクチュエータ)を含んでもよい。移動機構は、加圧方向Dpに平行な方向、及び加圧方向Dpに垂直な方向の両方において磁場発生機構M10を移動させる多軸アクチュエータであってもよい。例えば、多軸アクチュエータは、第一アクチュエータ及び第二アクチュエータを含んでよい。例えば、磁場発生機構M10(連結部材M5)が第一アクチュエータによって直接駆動され、磁場発生機構M10(連結部材M5)及び第一アクチュエータの全体が、第二アクチュエータによって駆動されてよい。磁場発生機構M10(連結部材M5)が第二アクチュエータによって直接駆動され、磁場発生機構M10(連結部材M5)及び第二アクチュエータの全体が、第一アクチュエータによって駆動されてよい。例えば、上述の各アクチュエータは、電気式アクチュエータ又は油圧式アクチュエータであってよい。
【0024】
[磁場発生機構M10の全体の回転]
連結部材M5に連結された上記第三回転機構AM10により、磁場発生機構M10の全体が、第三回転軸線LM10に対して自在に回転する。磁場発生機構M10の回転後、磁場発生機構M10の全体の向き(傾き)は固定される。第三回転機構AM10及び第三回転軸線LM10は、
図2及び
図3に示される。例えば、第三回転機構AM10は、磁場発生機構M10(連結部材M5)に連結された回転軸、回転軸が接続される軸受、及び回転軸を駆動するモーターを含んでよい。磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)は、加圧方向Dpに垂直である。磁場発生機構M10の全体が回転する範囲は、磁場発生機構M10が圧縮成形機構P10と物理的に干渉しない範囲に限られる。
磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)から一方のコイル(第一コイルc1)までの距離は、第三回転軸線LM10から他方のコイル(第二コイルc2)までの距離と等しい。例えば、磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)から第一コイルc1の第一回転軸線Lc1までの距離は、第三回転軸線LM10から第二コイルc2の第二回転軸線Lc2までの距離と等しくてよい。例えば、磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)から第一コイルc1の重心までの距離は、第三回転軸線LM10から第二コイルc2の重心までの距離と等しくてよい。
図1は、磁場発生機構M10の全体が回転する前の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の配置を示す。
図5は、磁場発生機構M10の全体が回転した後の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の配置の一例を示す。
【0025】
[コイルの回転]
一つのコイルの中心軸線と加圧方向Dpとの間の角度が変化するように、少なくとも一つのコイルが回転する。つまり、少なくとも一つのコイルの回転により、一つのコイルの中心軸線と加圧方向Dpとの間の角度が、所望の値に調整される。一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)のうち一つのコイルのみが回転してよい。一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)其々が独立に回転してもよい。
例えば、第一回転機構Ac1により、第一コイルc1が、第一回転軸線Lc1に対して自在に回転する。第一コイルc1が回転により、第一コイルc1の中心軸線(第一中心軸線Cc1)と加圧方向Dpとの間の角度θが自在に変化する。第一コイルc1の回転後、第一コイルc1の向き(傾き)は固定される。第一コイルc1が回転する範囲は、第一コイルc1が圧縮成形機構P10と物理的に干渉しない範囲に限られる。第一コイルc1の回転軸線(第一回転軸線Lc1)は、加圧方向Dpに垂直であり、磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)と平行である。第一回転機構Ac1は、第一コイルc1に連結された回転軸、回転軸が接続される軸受、及び回転軸を駆動するモーターを含んでよい。
例えば、第二回転機構Ac2により、第二コイルc2が、第二回転軸線Lc2に対して自在に回転する。第二コイルc2の回転により、第二コイルc2の中心軸線(第二中心軸線Cc2)と加圧方向Dpとの間の角度が自在に変化する。第二コイルc2の回転後、第二コイルc2の向き(傾き)は固定される。第二コイルc2が回転する範囲は、第二コイルc2が圧縮成形機構P10と物理的に干渉しない範囲に限られる。第二コイルc2の回転軸線(第二回転軸線Lc2)は、加圧方向Dpに垂直であり、磁場発生機構M10の全体の回転軸線(第三回転軸線LM10)と平行である。第二回転機構Ac2は、第二コイルc2に連結された回転軸、回転軸が接続される軸受、及び回転軸を駆動するモーターを含んでよい。
図1は、第一コイルc1及び第二コイルc2其々が回転する前の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の向き(傾き)を示す。
図6は、第一コイルc1及び第二コイルc2其々が回転した後の第一コイルc1及び第二コイルc2其々の向き(傾き)の一例を示す。
【0026】
[製造装置100を用いた永久磁石の製造方法]
磁場Hが、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)のうち少なくとも一つのコイルによって発生する。この磁場Hをダイd1内の原料rm1へ印加しながら、ダイd1内の原料rm1が一対のパンチ(第一パンチp1及び第二パンチp2)で圧縮される。その結果、成形体が原料rm1から形成され、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)は、磁場Hに沿って磁化及び配向(оrient)される。
第一コイルc1において発生する磁場と、第二コイルc2において発生する磁場と、から磁場Hが合成されてよく、合成された磁場Hがダイd1内の原料rm1へ印加されてもよい。第一コイルc1及び第二コイルc2のうち一つのコイルのみによって発生した磁場Hが、ダイd1内の原料rm1へ印加されてもよい。磁場Hは、静磁場(時間の経過に伴って磁束の分布が変化しない磁場)であってよい。磁場Hは、パルス磁場であってもよい。
【0027】
磁場発生機構M10の全体の移動、磁場発生機構M10の全体の回転、及び第一コイルc1及び第二コイルc2のうち少なくとも一つの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの方向が自在に変化する。つまり、ダイd1内の原料rm1への磁場Hの印加を開始する前に、いずれかの上記操作により、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの方向が自在に調整される。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向(orientation direction)を自在に制御することができる。成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向は、完成された永久磁石においても維持されるので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向を制御することに因り、永久磁石の磁化方向を容易に変更及び調整することができる。換言すれば、製造装置100によれば、永久磁石の用途、寸法及び形状に応じて、永久磁石の磁化方向を容易に変更及び調整することができる。
【0028】
以下では、
図7~11を参照しながら、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの具体例が説明される。
【0029】
図7に示される製造装置100においては、ダイd1内の原料rm1が第一コイルc1及び第二コイルc2の間に配置されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は互いに対向している。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線は互いに一致し、且つ加圧方向Dpに対して垂直であり、且つ原料rm1の中心を通過している。第一コイルc1における第一電流Ic1の向きは、第二コイルc2における第二電流Ic2の向きと同じである。
図7に示される製造装置100においては、磁場Hの磁束密度が第一コイルc1及び第二コイルc2の間において最も高く、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に形成された直線的な磁場Hが原料rm1へ印加される。原料rm1へ印加される磁場Hは、加圧方向Dpに対して垂直である。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して垂直な方向に磁化及び配向される。
【0030】
図8に示される製造装置100においては、磁場発生機構M10の全体が回転した状態が維持されている。ダイd1内の原料rm1は、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に配置されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は互いに対向している。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線は互いに一致し、且つ加圧方向Dpに対して傾いており、且つ原料rm1の中心を通過している。第一コイルc1における第一電流Ic1の向きは、第二コイルc2における第二電流Ic2の向きと同じである。
図8に示される製造装置100においては、磁場Hの磁束密度が第一コイルc1及び第二コイルc2の間において最も高く、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に形成された直線的な磁場Hが原料rm1へ印加される。原料rm1へ印加される磁場Hは、加圧方向Dpに対して傾いている。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して傾いた方向に磁化及び配向される。
【0031】
図9に示される製造装置100においては、磁場発生機構M10の全体が加圧方向Dpに平行な方向(下方向)に移動し、且つ第一コイルc1及び第二コイルc2其々が回転した状態が維持されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は、ダイd1内の原料rm1の下方に配置されている。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線は、加圧方向Dpと平行である。つまり、第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線と、加圧方向Dpと、の間の角度は、ゼロ度である。第一コイルc1における第一電流Ic1の向きは、第二コイルc2における第二電流Ic2の向きと逆である。第一コイルc1の上端から第二コイルc2の上端に向かって、曲がった磁束が延びている。曲がった磁束の密度は、原料rm1が配置された部分において比較的低くなっている。曲線状の磁場H(磁束)が原料rm1へ印加されるので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、磁場H(磁束)と同様の曲線に沿って磁化及び配向される。
【0032】
図10に示される製造装置100においては、磁場発生機構M10の全体が加圧方向Dpに平行な方向(下方向)及び加圧方向Dpに垂直な方向(右方向)に移動し、且つ磁場発生機構M10の全体が回転した状態が維持されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は、ダイd1内の原料rm1の下方に配置されている。第一コイルc1において第一電流Ic1が生じているが、第二コイルc2において第二電流Ic2は生じていない。したがって、磁場Hは、第一コイルc1のみによって発生している。第一コイルc1の外側に位置し、且つ磁束が曲がり、且つ磁束密度が比較的低い磁場Hが、原料rm1へ印加される。曲線状の磁場H(磁束)が原料rm1へ印加されるので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、磁場H(磁束)と同様の曲線に沿って磁化及び配向される。原料rm1へ印加される磁場Hは加圧方向Dpに対して傾いているので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して傾いた方向に磁化及び配向される。
【0033】
図11に示される製造装置100においては、磁場発生機構M10の全体が回転し、且つ第一コイルc1及び第二コイルc2其々が回転した状態が維持されている。第一コイルc1は、ダイd1の左隣に配置され、第二コイルc2は、ダイd1の下方に配置されている。第一コイルc1の中心軸線は、加圧方向Dpに垂直である。つまり、第一コイルc1の中心軸線と、加圧方向Dpと、の間の角度は、90度である。第二コイルc2の中心軸線は、加圧方向Dpと平行である。つまり、第二コイルc2の中心軸線と、加圧方向Dpと、の間の角度は、ゼロ度である。第一コイルc1及び第二コイルc2によって発生した磁場Hにおいては、第二コイルc2の上端から第一コイルc1の右端に向かって、曲がった磁束が延びている。曲線状の磁場H(磁束)が原料rm1へ印加されるので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、磁場H(磁束)と同様の曲線に沿って磁化及び配向される。原料rm1へ印加される磁場Hは加圧方向Dpに対して傾いているので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して傾いた方向に磁化及び配向される。
【0034】
ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの向きは、
図7~11に示される各磁場Hの向きに限定されない。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の配置及び向きを上述の操作で変更することにより、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの向き及び強度を自在に変更及び調整することができる。第一コイルc1における第一電流Ic1の向き及び絶対値、並びに、第二コイルc2における第二電流Ic2の向き及び絶対値の変更により、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの向き及び強度を自在に変更及び調整することもできる。磁場Hの向き及び強度(磁束の向き及び密度)は、市販のソフトウェアを用いたシミュレーションによって容易に算出することができる。
【0035】
原料rm1に含まれる磁石粉末は、例えば、Nd‐Fe‐B系磁石(Nd2Fe14B等の合金)、サマリウム‐鉄‐窒素系磁石(Sm2Fe17N3等の合金)、サマリウムコバルト系磁石(Sm2Co17等の合金)、プラセオジム系磁石(PrCo5等の合金)、又はフェライト磁石であってよい。例えば、Nd‐Fe‐B系磁石は、ボンド磁石及び焼結磁石の両方の原料に用いられる。一方、Sm‐Fe‐N系磁石の結晶構造は高温(約500℃)において劣化し易いので、Sm‐Fe‐N系磁石から焼結磁石を製造することは困難である。したがって、Sm‐Fe‐N系磁石は、結晶構造が維持される低い温度での加熱(磁石粉末と混合される熱硬化性樹脂の熱硬化)によって製造可能なボンド磁石の原料に用いられる。
【0036】
永久磁石として、ボンド磁石(bоnded magnet)が製造される場合、原料rm1は、磁石粉末に加えて、熱硬化性樹脂(thermosetting resin)、硬化剤(curing agent)、硬化促進剤(硬化触媒)、シランカップリング剤、及びワックス(潤滑剤)、難燃剤、及び有機溶媒等の成分を含んでよい。ボンド磁石用の原料rm1は、熱硬化性樹脂に加えて、熱可塑性樹脂を更に含んでもよい。永久磁石として、焼結磁石(sintered magnet)が製造される場合、原料rm1は、磁石粉末に加えて、ワックス(潤滑剤)等の成分を含んでよい。原料rm1は、予め略均一に混合されている。
【0037】
ボンド磁石の製造方法では、上記の方法で成形体が形成された後、磁場Hと逆の方向を向く磁場(逆磁場)を、成形体に印加することにより、成形体が脱磁(demagnetize)される。脱磁された成形体においても、成形体中の各磁石粒子の磁化容易軸(easy magnetization axis)が磁場Hと同じ方向に配向された状態が維持される。上記製造装置100を用いて成形体が脱磁されてよい。つまり、磁場Hと逆の方向を向く磁場(逆磁場)を、ダイd1内において第一パンチp1及び第二パンチp2に挟持された成形体に印加することにより、成形体が脱磁されてよい。成形体がダイd1から取り出された後、上記製造装置100とは別の装置を用いて、成形体が脱磁されてもよい。ボンド磁石の製造方法では、脱磁された成形体の加熱により、成形体の硬化物が形成されてよい。つまり、成形体中の熱硬化性樹脂の熱硬化(thermal curing)により、成形体の硬化物が形成されてよい。ボンド磁石の製造方法では、上記の磁場Hと同じ方向を向く磁場を、成形体の硬化物に印加することにより、成形体の硬化物が着磁される。成形体の硬化物の着磁(magnetization)により、永久磁石(特定の方向に磁化された異方性磁石)が得られる。永久磁石の切削加工により、永久磁石の寸法及び形状が調整されてよい。
【0038】
焼結磁石の製造方法では、上記の方法で形成された成形体が焼結(sinter)され、焼結体が形成される。焼結体が永久磁石(特定の方向に磁化された異方性磁石)として用いられてよい。成形体が焼結される前に、成形体の焼結温度よりも低い温度で成形体を加熱することにより、成形体が脱脂(degrease)されてもよい。上記の磁場Hと同じ方向を向く磁場を、焼結体に印加することにより、焼結体が着磁されてもよい。着磁された焼結体が、永久磁石として用いられてよい。永久磁石の切削加工により、永久磁石の寸法及び形状が調整されてよい。
【0039】
(第二実施形態)
図12~16は、本発明の第二実施形態に係る永久磁石の製造装置200を示す。
図12は、製造装置200の断面を示す。
図12に示される断面は、製造装置200の正面と平行である。
図13は、
図12に示される製造装置200の側面を示す。
図14は、
図12に示される製造装置200の上面を示す。
図15及び
図16其々は、製造装置200の正面を示している。説明の便宜のために、
図15及び
図16(各正面図)において、磁石粉末を含む原料rm1の断面、及び筒状のダイd1の断面が示されている。
【0040】
以下では、第二実施形態と第一実施形態との相違点が主に説明される。
【0041】
永久磁石の製造装置200においては、圧縮成形機構P10の少なくとも一部が、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)其々の内側に配置される。換言すれば、圧縮成形機構P10の少なくとも一部が、一対のコイル其々の内側を貫通している。例えば、
図12に示されるように、第一パンチp1が第一コイルc1の内側を貫通し、第二パンチp2が第二コイルc2の内側を貫通している。製造装置200においては、圧縮成形機構P10の全体が、一対のコイル(第一コイルc1及び第二コイルc2)其々の内側に配置されていてもよい。
磁場発生機構M10の全体が移動する範囲は、一対のコイル其々の内側に配置された圧縮成形機構P10が、磁場発生機構M10と物理的に干渉しない範囲に限られる。
磁場発生機構M10の全体が回転する範囲は、一対のコイル其々の内側に配置された圧縮成形機構P10が、磁場発生機構M10と物理的に干渉しない範囲に限られる。
第一コイルc1が回転する範囲は、第一コイルc1の内側に配置された圧縮成形機構P10が、第一コイルc1と物理的に干渉しない範囲に限られる。
第二コイルc2が回転する範囲は、第二コイルc2の内側に配置された圧縮成形機構P10が、第二コイルc2と物理的に干渉しない範囲に限られる。
上記の事項を除いて、第二実施形態に係る製造装置200は、第一実施形態に係る製造装置100と同じである。上記の事項を除いて、製造装置200を用いた永久磁石の製造方法は、製造装置100を用いた永久磁石の製造方法と同じである。
【0042】
製造装置200においても、磁場発生機構M10の全体の移動、磁場発生機構M10の全体の回転、及び第一コイルc1及び第二コイルc2のうち少なくとも一つの回転からなる群より選ばれる少なくとも一つの操作により、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの方向が自在に変化する。つまり、ダイd1内の原料rm1への磁場Hの印加を開始する前に、いずれかの上記操作により、ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの方向が自在に調整される。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向を自在に制御することができる。成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向は、完成された永久磁石においても維持されるので、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)の磁化方向及び配向方向を制御することに因り、永久磁石の磁化方向を容易に変更及び調整することができる。換言すれば、製造装置200によれば、永久磁石の用途、寸法及び形状に応じて、永久磁石の磁化方向を容易に変更及び調整することができる。
【0043】
例えば、
図15に示される製造装置200においては、ダイd1内の原料rm1が第一コイルc1及び第二コイルc2の間に配置されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は互いに対向している。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線は互いに一致し、且つ加圧方向Dpに対して平行であり、且つ原料rm1の中心を通過している。第一コイルc1における第一電流Ic1の向きは、第二コイルc2における第二電流Ic2の向きと同じである。
図15に示される製造装置100においては、磁場Hの磁束密度が第一コイルc1及び第二コイルc2の間において最も高く、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に形成された直線的な磁場Hが原料rm1へ印加される。原料rm1へ印加される磁場Hは、加圧方向Dpに対して平行である。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して平行な方向に磁化及び配向される。
【0044】
図16に示される製造装置200においては、磁場発生機構M10の全体が回転した状態が維持されている。ダイd1内の原料rm1は、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に配置されている。第一コイルc1及び第二コイルc2は互いに対向している。第一コイルc1及び第二コイルc2其々の中心軸線は互いに一致し、且つ加圧方向Dpに対して傾いており、且つ原料rm1の中心を通過している。第一コイルc1における第一電流Ic1の向きは、第二コイルc2における第二電流Ic2の向きと同じである。
図16に示される製造装置200においては、磁場Hの磁束密度が第一コイルc1及び第二コイルc2の間において最も高く、第一コイルc1及び第二コイルc2の間に形成された直線的な磁場Hが原料rm1へ印加される。原料rm1へ印加される磁場Hは、加圧方向Dpに対して傾いている。したがって、成形体中の各磁石粒子(各磁石粒子中の磁区)も、加圧方向Dpに対して傾いた方向に磁化及び配向される。
【0045】
ダイd1内の原料rm1へ印加される磁場Hの向きは、
図15及び
図16に示される各磁場Hの向きに限定されない。
【0046】
本発明は必ずしも上述された実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
【0047】
例えば、製造装置100及び製造装置200は、ダイd1内の原料rm1又は成形体を加熱する加熱機構(ヒーター)を更に含んでよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
例えば、本発明の一側面に係る永久磁石の製造装置は、ボンド磁石又は焼結時磁石の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
100,200…永久磁石の製造装置、P10…圧縮成形機構、M10…磁場発生機構、LM10…磁場発生機構M10の全体の回転軸線、AM10…第三回転機構(磁場発生機構M10の回転機構)、p1…第一パンチ、p11…第一加圧機構(第一パンチp1の加圧機構)、p2…第二パンチ、p21…第二加圧機構(第二パンチp2の加圧機構)、Dp…加圧方向、d1…ダイ、c1…第一コイル、Cc1…第一コイルc1の中心軸線、Lc1…第一コイルc1の回転軸線、Ac1…第一回転機構(第一コイルc1の回転機構)、Ic1…第一コイルc1における第一電流、及びその方向、c2…第二コイル、Cc2…第二コイルc2の中心軸線、Lc2…第二コイルc2の回転軸線、Ac2…第二回転機構(第二コイルc2の回転機構)、Ic2…第二コイルc2における第二電流、及びその方向、M5…連結部材、rm1…磁石粉末を含む原料、H…原料rm1に印加される磁場、及びその方向、θ…コイルの中心軸線と加圧方向Dpとの間の角度(第一コイルc1の中心軸線Cc1と加圧方向Dpとの間の角度)。