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特許7589939健康データ処理システム及び健康データ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】健康データ処理システム及び健康データ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20241119BHJP
【FI】
G06Q50/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021020661
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123379
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 宝弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹本 享史
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 暁子
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚史
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-072732(JP,A)
【文献】特開2019-185408(JP,A)
【文献】特開2000-099605(JP,A)
【文献】特開2004-185192(JP,A)
【文献】特表2016-522950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0262499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康データ処理システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置に接続された記憶デバイスとを有する計算機によって構成され、
前記演算装置は、住民の基本データ、住民の健康データ、及びソーシャルキャピタル指数計測用データを格納するデータベースにアクセス可能であって、
前記健康データ処理システムは、
前記演算装置が、前記健康データを用いて、各住民の健康状態である個人健康状態を分析する個人健康状態分析部と、
前記演算装置が、各住民の健康状態の変化を分析する個人健康変化分析部と、
前記演算装置が、前記健康データを用いて、地域に属する住民の健康状態である地域健康状態を分析する地域健康状態分析部と、
前記演算装置が、前記ソーシャルキャピタル指数計測用データを用いて、地域毎のソーシャルキャピタル指数である地域SCI及び各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出するSCI導出部と、
前記演算装置が、前記個人SCIを用いて、各住民の個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析部と、
前記演算装置が、健康サービスの地域SCIへの貢献度合いを分析する健康サービス効果分析/サービスランキング生成部と、
前記演算装置が、前記住民に対するSCI課題に相当する前記地域SCIの向上に効果がある健康サービス情報を生成する個人提供情報生成部と、を備え、
前記健康サービス効果分析/サービスランキング生成部は、
前記各住民の健康状態の変化、前記個人SCIの変化、及び前記健康データに含まれる各種健康サービスの参加情報を用いて、前記健康サービスの前記個人SCIへの効果を分析し、
前記個人SCIへの効果に基づいて、前記地域毎の前記健康サービスのランキングを生成し、
前記個人提供情報生成部は、
前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康状態分析部で分析された個人健康状態、前記地域健康状態分析部で分析された地域健康状態、前記SCI導出部で導出された地域SCI、疾病リスクと健康意識の関係、及び健康意識と前記地域SCIの関連性を用いて、前記住民に対するSCI課題を分析し、
前記分析された課題と、前記生成された健康サービスのランキングを用いて、個人へのアドバイスを生成することを特徴とする健康データ処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の健康データ処理システムであって、
前記演算装置が、地域の人口密度及び年齢分布を含む地域基本情報を用いて、地域SCIを補正するSCI補正部と、を備えることを特徴とする健康データ処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の健康データ処理システムであって、
前記住民の健康データは、住民に提供される健康サービスへの参加情報を含み、
前記健康データ処理システムは、
前記演算装置が、前記導出された個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析部と、
前記演算装置が、前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康変化分析部で分析された個人の健康状態の変化、前記個人SCI変化分析部で分析された個人SCIの変化、及び自助健康サービスデータに含まれる前記健康サービスの参加情報を用いて、前記健康サービスの健康状態と地域SCIへの効果を分析し、前記健康サービスによる健康特性及び地域SCIの各項目に対する効果を個人の属性毎に算出する健康サービス効果分析部と、を備えることを特徴とする健康データ処理システム。
【請求項4】
健康データ処理システムが実行する健康データ処理方法であって、
前記健康データ処理システムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置に接続された記憶デバイスとを有する計算機によって構成され、
前記演算装置は、住民の基本データ、住民の健康データ、及びソーシャルキャピタル指数計測用データを格納するデータベースにアクセス可能であって、
前記健康データ処理方法は、
前記演算装置が、前記健康データを用いて、各住民の健康状態である個人健康状態を分析する個人健康状態分析手順と、
前記演算装置が、各住民の健康状態の変化を分析する個人健康変化分析手順と、
前記演算装置が、前記健康データを用いて、地域に属する住民の健康状態である地域健康状態を分析する地域健康状態分析手順と、
前記演算装置が、前記ソーシャルキャピタル指数計測用データを用いて、地域毎のソーシャルキャピタル指数である地域SCI及び各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出するSCI導出手順と、
前記演算装置が、前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康状態分析手順で分析された個人健康状態、前記地域健康状態分析手順で分析された地域健康状態、前記SCI導出手順で導出された地域SCI、疾病リスクと健康意識の関係、及び健康意識と前記地域SCIの関連性を用いて、前記住民に対するSCI課題を分析し、前記地域SCIの向上への貢献度による健康サービスのランキングの上位を選択して、前記住民の健康に寄与する情報を生成する個人提供情報生成手順と、
前記演算装置が、前記個人SCIを用いて、各住民の個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析部と、
前記演算装置が、健康サービスの地域SCIへの貢献度合いを分析する健康サービス効果分析/サービスランキング生成手順と、
前記演算装置が、前記住民に対するSCI課題に相当する前記地域SCIの向上に効果がある健康サービス情報を生成する個人提供情報生成手順と、を備え、
前記健康サービス効果分析/サービスランキング生成手順では、
前記演算装置が、前記各住民の健康状態の変化、前記個人SCIの変化、及び前記健康データに含まれる各種健康サービスの参加情報を用いて、前記健康サービスの前記個人SCIへの効果を分析し、
前記演算装置が、前記個人SCIへの効果に基づいて、前記地域毎の前記健康サービスのランキングを生成し、
前記個人提供情報生成手順では、
前記演算装置が、前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康状態分析手順で分析された個人健康状態、前記地域健康状態分析手順で分析された地域健康状態、前記SCI導出手順で導出された地域SCI、疾病リスクと健康意識の関係、及び健康意識と前記地域SCIの関連性を用いて、前記住民に対するSCI課題を分析し、
前記分析された課題と、前記生成された健康サービスのランキングを用いて、個人へのアドバイスを生成することを特徴とする健康データ処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の健康データ処理方法であって、
前記演算装置が、地域の人口密度及び年齢分布を含む地域基本情報を用いて、地域SCIを補正するSCI補正手順と、を備えることを特徴とする健康データ処理方法。
【請求項6】
請求項4に記載の健康データ処理方法であって、
前記住民の健康データは、住民に提供される健康サービスへの参加情報を含み、
前記SCI導出手順では、前記演算装置が、前記ソーシャルキャピタル指数計測用データを用いて、各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出し、
前記健康データ処理方法は、
前記演算装置が、前記個人健康状態の変化を分析する個人健康変化分析手順と、
前記演算装置が、前記導出された個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析手順と、
前記演算装置が、前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康変化分析手順で分析された個人の健康状態の変化、前記個人SCI変化分析手順で分析された個人SCIの変化、及び自助健康サービスデータに含まれる前記健康サービスの参加情報を用いて、前記健康サービスの健康状態と地域SCIへの効果を分析し、前記健康サービスによる健康特性及び地域SCIの各項目に対する効果を個人の属性毎に算出する健康サービス効果分析手順と、を備えることを特徴とする健康データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康データ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2019-87239号公報)には、高齢者基本データ、要介介護保険データ、医療保険データ、地域施策データを有するデータベースを有し、地域マネジメント支援機能部が、医療・介護のデータから事業単位別に、高齢者情報やサービス利用状況についての量的分析レポート、及び心身状態項目の状態変化を表す指標に基づく質的レポートを出力し、地域情報管理機能部が、事業単位ごとに、サービスの量や質に係る活動評価結果を個票形式で出力し、高齢者情報管理機能部が、高齢者の基本情報、心身状態利用サービス状況、及び医療状況を一元管理し、これらに関する過去の履歴を参照することでケアプランの効果確認、及び次期プランの見直し方針検討を支援する、地域包括ケア事業システムが記載されている(要約参照)。
【0003】
また、非特許文献1("Development of an instrument for community-level health related social capital among Japanese older people: The JAGES Project)には、ソーシャルキャピタル指数と健康意識との有意な相関が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-87239号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Masashige Saito, et.al., "Development of an instrument for community-level health related social capital among Japanese older people: The JAGES Project", Journal of Epidemiology 27 (2017) 221e227, 2017年2月4日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、新型コロナCovid19のパンデミックによって、人々の交流機会など社会特性が低下し、地域分断が生じやすい状況になっている。従来の健康サービスは、特許文献1に記載された地域包括ケア事業システムのように、地域の健康特性を考慮した個人の健康状態を分析できるものであるが、地域の人々の繋がりの強さなどの社会特性は考慮されていない。
【0007】
一方、非特許文献1に示すように、「信頼」、「社会規範」、「社会ネットワーク」などの人々の繋がりの強さを示す指数として、ソーシャルキャピタル指数(SCI)があり、SCIと健康意識の間には一定の相関がある。
【0008】
Withコロナ時代やAfterコロナ時代では、地域SCIの低下によって健康特性にも悪影響が出ることが懸念されている。このように、地域SCIが相違すると地域によって必要な施策やケア内容が異なることが推測されるが、従来技術ではこれらを同時に計測し、分析して、健康増進施策に反映されていない。
【0009】
本発明の目的は、健康特性と社会特性を計測し、分析して、施策やアドバイスによって、健康増進を図る仕組みを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、健康データ処理システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置に接続された記憶デバイスとを有する計算機によって構成され、前記演算装置は、住民の基本データ、住民の健康データ、及びソーシャルキャピタル指数計測用データを格納するデータベースにアクセス可能であって、前記健康データ処理システムは、前記演算装置が、前記健康データを用いて、各住民の健康状態である個人健康状態を分析する個人健康状態分析部と、前記演算装置が、各住民の健康状態の変化を分析する個人健康変化分析部と、前記演算装置が、前記健康データを用いて、地域に属する住民の健康状態である地域健康状態を分析する地域健康状態分析部と、前記演算装置が、前記ソーシャルキャピタル指数計測用データを用いて、地域毎のソーシャルキャピタル指数である地域SCI及び各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出するSCI導出部と、前記演算装置が、前記個人SCIを用いて、各住民の個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析部と、前記演算装置が、健康サービスの地域SCIへの貢献度合いを分析する健康サービス効果分析/サービスランキング生成部と、前記演算装置が、前記住民に対するSCI課題に相当する前記地域SCIの向上に効果がある健康サービス情報を生成する個人提供情報生成部と、を備え、前記健康サービス効果分析/サービスランキング生成部は、前記各住民の健康状態の変化、前記個人SCIの変化、及び前記健康データに含まれる各種健康サービスの参加情報を用いて、前記健康サービスの前記個人SCIへの効果を分析し、前記個人SCIへの効果に基づいて、前記地域毎の前記健康サービスのランキングを生成し、前記個人提供情報生成部は、前記基本データに含まれる個人の属性情報、前記個人健康状態分析部で分析された個人健康状態、前記地域健康状態分析部で分析された地域健康状態、前記SCI導出部で導出された地域SCI、疾病リスクと健康意識の関係、及び健康意識と前記地域SCIの関連性を用いて、前記住民に対するSCI課題を分析し、前記分析された課題と、前記生成された健康サービスのランキングを用いて、個人へのアドバイスを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、個々の住民に適した情報を提供できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例による地域健康データ処理システムの構成図である。
図2】健康サービス効果分析/サービスランキング生成部及び個人への提供情報生成部の詳細の構成を示す図である。
図3】個人のSCI課題分析部の詳細な構成を示す図である。
図4】社会性基準値演算部による演算の一例を示す図である。
図5】個人の社会性演算部による演算の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】
以下の実施例においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は複数の実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施例において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施例において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施例において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施例による地域健康データ処理システムの構成図である。
【0018】
本発明の実施例の地域健康データ処理システムは、個人の健康状態と地域の健康特性及び地域のソーシャルキャピタル指数(地域SCI)を併せて分析して、地域特性を考慮した健康アドバイスを個人に提示する。
【0019】
本実施例の地域健康データ処理システムは、統合データベース100、個別分析部200及び統合分析部500で構成される。統合データベース100は、住民基本データ101、自助健康サービスデータ110、公助データ121及びSCI計測用データ131を有する。住民基本データ101は、住民の住所、年齢、性別などが格納される。自助健康サービスデータ110は、各種自助健康サービスの参加情報や健康データ(身長、体重などの一般健康データ、便、母乳、尿などの特殊健康データ)を含む自助健康サービスデータ1~N(111~11N)を含む。公助データ121は、健康診断データ、医療レセプト、介護レセプトなどを含む。SCI計測用データ131は、ソーシャルキャピタル指数(SCI)を計測するためのデータであり、所定のアンケートの結果やセンシングデータなどである。アンケートは、例えばイベントへの参加、地域内の活動などであり、SCIと健康アンケートとの相関を知ることができる。センシングデータは,例えば地域イベントなどでの音声・カメラ・振動量などのセンシングデータであり,活性度などを計測できる。統合データベース100は、住民に一意に付与される住民IDを用いて、関連付け部141が各種データを関連付けて統合データベース100を構成している。
【0020】
個別分析部200は、個人健康状態分析部211、地域健康状態分析部212、個人健康変化分析部221、地域健康変化分析部222、地域基本情報抽出部252、SCI補正値抽出部251、SCI導出部231、SCI補正部232、個人SCI変化分析部241及び地域SCI変化分析部242で構成される。
【0021】
個人健康状態分析部211は、自助健康サービスデータ110及び公助データ121から個人の健康状態や健康リスクを分析する。地域健康状態分析部212は、地域の住民の統計的な健康状態や健康リスクを分析する。個人健康変化分析部221は、個人の健康状態の変化を分析する。地域健康変化分析部222は、地域の住民の健康状態の変化を分析する。地域基本情報抽出部252は、地域の人口密度や年齢分布などの地域基本情報を抽出する。SCI補正値抽出部251は、導出されたSCIと地域基本情報からSCI補正値を出力する。健康意識とSCIとは関連があることが知られており、地域基本情報を用いてSCIを補正することによって、地域毎の偏りを排して、地域に依らない適切なSCIを出力できる。SCI導出部231は、SCI計測用データ131から個人SCIを導出し、導出された個人SCIから地域SCIを導出する。SCI補正部232は、導出された個人SCI及び地域SCIを地域ごとに補正する。個人SCI変化分析部241は、個人SCIの変化を分析する。地域SCI変化分析部242は、地域SCIの変化を分析する。
【0022】
統合分析部500は、提供情報生成部510、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520、各指標から総合的に判断して、地域グレードを導出する地域グレード生成部530及び個人ポイント付与部540で構成される。提供情報生成部510は、個人提供情報生成部610と、事業者への提供情報生成部620及び自治体への提供情報生成部630で構成される。
【0023】
本実施例の地域健康データ処理システムが、事業者への提供情報生成部620による情報提供の対象とする健康サービス事業者は、人の健康の分析や評価を必要とする事業者であって、医療事業者、介護事業者、医学的分析期間(例えば遺伝子分析機関、血液検査機関など)、製薬事業者、健康食品製造事業者である。
【0024】
SCIは複数の指標で構成され、例えば社会的連帯(人々への信頼、地域への愛着)、市民参加度(行事や自治体イベントへの参加)、互酬性(会ったり相談したりできる家族や親戚、友人の数)などが該当する。また、貧困に関する指標である社会的剥奪指標や自治体が保有する納税データなどの経済的指標を地域内格差をSCIとして用いてもよい。先行研究によると地域内格差が大きいと満足度が低いことが示唆されており、前述したSCIとは異なる視点の経済面の指標を用いることによって、より住民の実情に沿った課題の抽出とアドバイスの生成が可能となる。
【0025】
地域SCIは、地域の人口密度や年齢分布などの地域基本情報と相関関係にある。このため、地域SCIは、地域基本情報の影響を含めた指標として解析してもよいが、地域基本情報抽出部252及びSCI補正値抽出部251によって、地域基本情報から予測される地域SCIからの乖離を求めることで、地域基本情報の影響を除いた当該地域特有の地域SCIを指標として用いることができる。
【0026】
図2は、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520及び個人提供情報生成部610の詳細の構成を示す図である。
【0027】
健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520は、各サービスの地域SCIへの貢献度合いを分析し、各サービスの個人の健康改善や健康意識向上への貢献度合いを分析し、地域ごとに各種指標(地域SCI、個人の健康状態、個人の健康意識、地域の健康状態)への貢献度合いを分析して、自助健康サービスのランキングを生成する。具体的には、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520は、住民基本データ101に含まれる分析対象者の地域、性別、年齢等の情報、自助健康サービスデータ110に含まれる各種サービスの参加情報、個人SCI変化分析部241から出力される個人SCI変化情報、及び個人健康変化分析部221から出力される個人の健康状態の変化情報を用いて、各種健康サービスの健康状態とSCIへの効果を分析し、地域、年齢、性別毎に健康特性及びSCIの各項目に対する効果を定量的に導出する。また、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520は、地域、年齢、性別毎に健康特性及びSCIに対する効果に応じて、自助健康サービスのランキングを生成する。さらに、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520は、各自助健康サービスのメリット及び課題を分析し、健康特性及びSCIの各項目に対する効果とランキングを健康サービス事業者へ提供することによって、事業者が健康サービスの改善を図るための指標として活用できる。また、各SCIの向上に効果があるサービスの地域、年齢、性別毎のランキングをリスト化した情報を自治体へ提供することによって、地域ごとの地域SCI向上施策の検討が可能になり、検討の精度及び効率を向上できる。
【0028】
個人提供情報生成部610は、個人SCI課題分析部611及び個人アドバイス生成部612で構成される。個人SCI課題分析部611は、住民基本データ101に含まれる分析対象者の地域、性別、年齢等の情報、個人健康状態分析部211及び個人健康変化分析部221から出力される個人の健康特性情報、地域健康状態分析部212及び地域健康変化分析部222から出力される地域の健康特性の情報、SCI補正部232から出力される地域SCI特性の情報、及びナレッジベースの情報(例えば、疾病リスクと健康意識の関係、健康意識とSCIの関連性など)613を用いて、各個人に対するSCI課題を分析する。個人アドバイス生成部612は、個人SCI課題分析部611が導出した課題と、健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520が導出したSCI向上に効果のある健康サービスのランキングを用いて、個人へのアドバイスを生成する。
【0029】
個人SCI課題分析部611は、個人と地域の健康リスクと地域SCIを併せて分析して、個人が向上させるべきSCIを導出する。SCIの向上によって、健康とSCIの両方を向上できる。また、健康状態に比べて効果が表れるまでの時間が短いSCIを指標の一部に用いることで、健康サービスの効果検証の速度を向上できる。また、地域分断などの社会特性に関する課題を早期に発見でき、地域の社会特性の維持及び向上に貢献できる。さらに、介入が困難である人口密度や年齢分布(高齢化率)などの影響を除いた地域SCIを指標として用いることで、介入効果が高い課題を抽出できる。
【0030】
図3は、個人SCI課題分析部611の詳細な構成を示す図である。
【0031】
個人SCI課題分析部611は、社会性基準値演算部6111、個人社会性演算部6112及び個人社会性課題抽出部6113で構成される。
【0032】
社会性基準値演算部6111は、地域健康状態分析部212から出力される地域の健康状態をリスク観点で整理した地域特有の健康リスク6122、ナレッジベースやアンケート結果の分析で得られた各健康リスクにおける疾病要因となる健康意識6123、ナレッジベースやアンケート結果の分析で得られた健康意識とSCIの関連性6124及び地域SCI6125から、個人SCI課題の基準となる社会性基準値Screfを導出する。個人社会性演算部6112は、個人健康状態分析部211から出力される個人の健康状態をリスク観点で整理した個人健康リスク6121、ナレッジベースやアンケート結果の分析で得られた各健康リスクにおける疾病要因となる健康意識6123、ナレッジベースやアンケート結果の分析で得られた健康意識とSCIの関連性6124から、個人の健康リスクに対する各SCIの変換値Siを導出する。疾病要因となる健康意識6123及び健康意識とSCIの関連性6124は、住民基本データ101に含まれるものである。
【0033】
個人社会性課題抽出部6113は、各SCIの変換値Siと社会性基準値Screfの関係を分析し、各SCIの変換値Siが社会性基準値Screfより大きい場合、該当するSCIが個人が高めるべきSCIであると判定する。基準となる社会性基準値Screfには、地域特有の健康リスク及び地域SCIが含まれており、個人社会性課題抽出部6113で判定されたSCIは、地域の健康特性及び地域SCIを考慮して導出されたSCI課題となる。個人社会性課題抽出部6113は、SCI課題を社会性基準値Screfの順にソートして出力してもよい。
【0034】
このように個人SCI課題を導出することで、個人の健康特性のみならず、地域の健康特性と地域SCIを向上させるための個人の課題を明らかにし、さらに導出されたSCI課題を向上させるための施策情報及びアドバイスを提供することで、個人の健康特性のみならず、地域の健康特性と地域SCIを向上できる。また、介入が困難である人口密度や年齢分布(高齢化率)などの影響を除いた地域SCIを指標として用いることで、介入効果の高い課題を抽出できる。
【0035】
図4は、社会性基準値演算部6111による演算の一例を示す図である。
【0036】
例えば、地域の健康リスクrc(6122)は、各疾病について例えば3段階で採点される。疾病要因となる健康意識M(6123)は、各疾病に関連する健康意識について例えば4段階で採点される。健康意識とSCIの関連性を示すSCI関連度S(6124)は、健康意識とSCIの関連性について例えば3段階で採点される。地域SCI rs(6125)は、例えば平均値を基準として規格化された数値を用いる。社会性基準値Screfの計算には、地域健康リスクが高いほど数値が低くなるように、符号を反転して4-rcを用いるとよい。これらを図示したように掛け合わせて、社会性基準値Screfを導出する。導出された社会性基準値Screfは、地域の健康リスクが高いほど低くなり、また地域SCIが低いほど低くなる。
【0037】
図5は、個人社会性演算部6112による演算の一例を示す図である。
【0038】
例えば、個人の健康リスクri(6121)は、各疾病について例えば3段階で採点される。疾病要因となる健康意識M(6123)及びSCI関連度S(6124)は、図4に示す社会性基準値演算部6111による演算と同じである。これらを図示したように掛け合わせて、個人の社会性の推測値Siを導出する。導出された個人の社会性Siが社会性基準値Screfより高い場合、当該SCIは、この個人が向上すべきSCI課題であると判定する。前述したように、SCI課題判断の基準となる社会性基準値Screfは、地域の健康リスクが高いほど低くなり、また地域SCIが低いほど低くなる。このため、地域の健康リスクや地域SCIを考慮したSCI課題を判定できる。
【0039】
以上に説明したように、本実施例の地域健康データ処理システムは、住民の健康データ(自助健康サービスデータ110)を用いて、各住民の健康状態である個人健康状態を分析する個人健康状態分析部211と、住民の健康データ110を用いて、地域に属する住民の健康状態である地域健康状態を分析する地域健康状態分析部212と、ソーシャルキャピタル指数計測用データ(SCI計測用データ131)を用いて、地域毎のソーシャルキャピタル指数である地域SCIを導出するSCI導出部231と、個人健康状態、域健康状態、及び地域SCIを用いて、住民の健康に寄与する情報を生成する個人提供情報生成部610と、を備えるので、住民は個人の健康状態と居住する地域の健康特性と地域SCIを考慮した施策情報とアドバイスを享受でき、より個々の住民に適した情報を提供できる。
【0040】
また、地域の人口密度及び年齢分布を含む地域基本情報を用いて、地域SCIを補正するSCI補正部232と、を備えるので、地域基本情報から予測される地域SCIからの乖離を求めることで、地域基本情報の影響を除いた当該地域特有の地域SCIを指標として用いて、適切なSCIを計算できる。
【0041】
また、SCI導出部231は、ソーシャルキャピタル指数計測用データ131を用いて、各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出し、地域健康データ処理システムは、個人健康状態の変化を分析する個人健康変化分析部221と、導出された個人SCIの変化を分析する個人SCI変化分析部241と、住民基本データ101、個人健康状態の変化、個人SCIの変化、及び健康サービスの参加情報を用いて、健康サービスによる地域の健康状態への効果を算出する健康サービス効果分析部(健康サービス効果分析/サービスランキング生成部520)と、を備えるので、健康とSCIの両方を向上できる。また、健康状態に比べて効果が表れるまでの時間が短いSCIを指標の一部に用いることで、健康サービスの効果検証の速度を向上できる。また、地域分断などの社会特性に関する課題を早期に発見でき、地域の社会特性の維持及び向上に貢献できる。さらに、介入効果が高い課題を抽出できる。
【0042】
また、SCI導出部231は、ソーシャルキャピタル指数計測用データ131を用いて、各住民のソーシャルキャピタル指数である個人SCIを導出し、個人提供情報生成部610は、地域健康状態、健康状態と健康意識の関係性情報、健康意識と個人SCIの関係性情報、及び地域SCIを用いて、個人SCIの基準となる社会性基準値を算出する社会性基準値演算部6111と、個人健康状態、健康状態と健康意識の関係性情報、及び健康意識と個人SCIの関係性情報を用いて、個人の社会性を算出する社会性演算部6112と、社会性基準値と個人の社会性の関係によって個人SCI課題を抽出する社会性課題抽出部6113と、を有するので、個人の健康特性のみならず、地域の健康特性と地域SCIを向上できる。また、介入効果の高い課題を抽出できる。
【0043】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0044】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0045】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0046】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0047】
100 統合データベース
101 住民基本データ
110 自助健康サービスデータ
121 公助データ
131 SCI計測用データ
141 関連付け部
200 個別分析部
211 個人健康状態分析部
212 地域健康状態分析部
221 個人健康変化分析部
222 地域健康変化分析部
231 SCI導出部
232 SCI補正部
241 個人SCI変化分析部
242 地域SCI変化分析部
251 SCI補正値抽出部
252 地域基本情報抽出部
500 統合分析部
510 提供情報生成部
520 サービスランキング生成部
530 地域グレード生成部
540 個人ポイント付与部
610 個人提供情報生成部
611 個人SCI課題分析部
612 個人アドバイス生成部
620 提供情報生成部
630 提供情報生成部
6111 社会性基準値演算部
6112 個人社会性演算部
6113 個人社会性課題抽出部
6121 個人健康リスク
6122 地域特有の健康リスク
6123 各健康リスクにおける疾病要因となる健康意識
6124 健康意識とSCIの関連性
図1
図2
図3
図4
図5