(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】導体接続構造体およびダイス並びに導体接続構造体への導体の接続方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/20 20060101AFI20241119BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01R4/20
H01R43/048 A
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2021133658
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2018215218の分割
【原出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596091956
【氏名又は名称】冨士端子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】京田 猛
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-169900(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203320(JP,U)
【文献】特開平11-87010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/20
H01R 43/048
H02G 1/14
H02G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体接続構造体の接続筒部に導体を挿入し、ダイスでかしめることで導体と電気的および機械的に接続する、導体接続構造体への導体の接続方法であって、
前記ダイスは、
前記接続筒部のうち外部より視認し難い圧着位置をかしめるのに用いられ、
受け側ダイスおよび押し込みダイスによって構成され、
前記押し込みダイスの先端にある平坦部を前記接続筒部の所定の位置に合わせたときに、前記接続筒部の表面上の前記受け側ダイスの縁が位置する箇所に第1指示線が設けてあり、
前記受け側ダイスの縁は、外部より視認可能であり、かつ、
前記ダイスとして前記接続筒部に対応したダイスを選択することが可能な目印を、前記ダイスの少なくとも一か所に有し、
前記受け側ダイスの縁を前記第1指示線に合わせた状態で、前記ダイスでかしめることによって、前記接続筒部が圧着許容範囲内で圧着されることを特徴とする、導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項2】
前記目印は、本来把持しようとする導体のサイズ毎に色分けされていることを特徴とする、請求項1に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項3】
前記目印は、対応する前記接続筒部に付された
前記第1指示線と位置を合わせる場所に有することを特徴とする、請求項1または2に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項4】
前記接続筒部の外周面に当接する受け側ダイスと、前記受け側ダイスに対して一定軌道上を往復移動する押し込みダイスとを有し、前記受け側ダイスと前記押し込みダイスとの相対的位置を変動させることで、前記接続筒部をかしめることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項5】
前記第1指示線は、前記圧着位置の許容可能なずれ幅に対応した幅または距離を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項6】
導体を挿入し、ダイスでかしめることで導体と電気的および機械的に接続する接続筒部の外表面に、前記接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる第1指示線と、圧着位置の許容範囲を示す第2指示線とを少なくとも有する導体接続構造体のうち、少なくとも前記接続筒部をかしめる、導体接続構造体への導体の接続方法であって、
前記ダイスは、
前記接続筒部のうち、外部より視認し難い圧着位置をかしめるのに用いられ、
受け側ダイスおよび押し込みダイスによって構成され、
前記押し込みダイスの先端にある平坦部を前記接続筒部の所定の位置に合わせたときに、前記接続筒部の表面上の前記受け側ダイスの縁が位置する箇所に前記第1指示線が設けてあり、
前記受け側ダイスの縁は、外部より視認可能であり、かつ、
前記ダイスとして前記接続筒部に対応したダイスを選択することが可能な目印を、前記ダイスの少なくとも一か所に有し、
前記受け側ダイスの縁を前記第1指示線に合わせた状態で、前記ダイスでかしめることによって、前記接続筒部が圧着許容範囲内で圧着されることを特徴とする、導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項7】
導体接続構造体の接続筒部に導体を挿入し、ダイスでかしめることで導体と電気的および機械的に接続する、導体接続構造体への導体の接続方法であって、
前記接続筒部の外表面に、前記接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる第1指示線と、前記ダイスによる圧着位置の許容範囲を示す第2指示線を少なくとも設け、
前記ダイスとして、前記接続筒部のうち外部より視認し難い圧着位置をかしめるのに用いられ、受け側ダイスおよび押し込みダイスによって構成され、前記押し込みダイスの先端にある平坦部を前記接続筒部の所定の位置に合わせたときに、前記接続筒部の表面上の前記受け側ダイスの縁が位置する箇所に第1指示線が設けてあり、前記受け側ダイスの縁が外部より視認可能であり、かつ、前記接続筒部に対応したダイスを選択することが可能な目印を少なくとも一か所に有する、前記接続筒部に対応したダイスを用いて、
前記第1指示線を前記受け側ダイスの縁に合わせた状態で、前記ダイスでかしめることによって、前記接続筒部が圧着許容範囲内で圧着されることを特徴とする、導体接続構造体への導体の接続方法。
【請求項8】
前記導体接続構造体および前記ダイスとして、前記導体接続構造体に付され
る前記第1指示線または前記第2指示線の色と、前記ダイスに付される目印の色が、前記導体のサイズに応じて同じ色に色分けされたものを用いることを特徴とする、請求項7に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線、ケーブル等の導体の先端にかしめて取り付ける端子、導体接続管といった導体接続構造体、およびこれをかしめる際に使用するダイスス並びに導体接続構造体への導体の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電線、ケーブル等の導体を端子台やブレーカー等の盤内の設備等に接続する際、導体の先端に接続端子を接続し、これをつなぎ込むようにして接続する。そして、電線、ケーブル等の導体に端子を接続する際には、端子の一方の端部に設けられた接続筒部に導体を挿入し、かしめ治具、例えば、前記接続筒部の外周面に当接する受け側ダイスと、当該受け側ダイスに対して一定軌道上(代表的には直線上)を往復移動しする押し込みダイスとを有し、受け側ダイスと押し込みダイスとの相対的位置を変えるかしめ用ダイスを用いて、挿入した導体ごと接続筒部をかしめて接続筒部と導体とを電気的、機械的に接続する。
【0003】
また、電線、ケーブルを延長する際には、両側に接続筒部を有する導体接続管(導体接続管自体が接続筒部であると言ってもよい。)が使用される。そして、接続する2本の電線、ケーブル等の導体の各先端を導体接続管の両端の接続筒部にそれぞれ挿入し、導体接続管を所定の手順でかしめることで、各導体と導体接続管とを電気的、機械的に接続して電線、ケーブルが延長される。
【0004】
かしめる方法には、接続筒部を局部的にかしめる圧着と、接続筒部や導体接続管を全体的にかしめる圧縮とがある。そして、接続筒部をかしめる場合には、挿入する導体のサイズ(導体断面積[mm2])に見合ったダイスを選定し、導体が挿入された接続筒部の指定の位置をかしめるようにする。これは、圧着の場合も圧縮の場合も同様である(例えば非特許文献1~3等参照)。
【0005】
そして、電線、ケーブル等の導体と端子や導体接続管の接続筒部とをかしめて接続させる際に、それらを適切にかしめて電気的、機械的に適切に接続させるようにするために、従来から種々の工夫がなされている(例えば特許文献1~4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-022040号公報
【文献】実用新案登録第3114133号公報
【文献】実開昭59-39870号公報
【文献】特開平5-347163号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】株式会社泉精器製作所,充電油圧式多機能工具「REC-Li200M REC-Li250M 」取扱説明書,p.12~13
【文献】一般社団法人日本電力ケーブル接続技術協会,「6600V架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル用テープ巻形直線接続部」(JCAA F 4201-3)
【文献】一般社団法人日本電力ケーブル接続技術協会,テクニカルレビュー「電力ケーブル接続部を安全にお使い頂くために(施工・工事編その2)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電線、ケーブル等の導体と端子や導体接続管の接続筒部とを接続する際、上記のように、導体が挿入された接続筒部の指定の位置をダイスでかしめて圧着したり圧縮したりすることが必要である。しかし、現状では、現場の作業員が自らの経験や勘に基づいて接続筒部の所定の位置をダイスでかしめているため、実際にダイスでかしめた位置が所定の位置からずれる場合がある。
【0009】
かしめた位置が所定の位置からずれて、導体と接続筒部とが電気的、機械的に接触する範囲が、所定の位置をかしめた場合よりも狭くなると、使用中に導体が端子や導体接続管から抜けてしまったり、端子や導体接続管の部分で所定の性能を得ることができなくなったり、導体と端子や導体接続管との接触抵抗の増大により使用中(すなわち通電中)に発熱に至る場合がある。
【0010】
さらに、密閉型端子の場合、端子の接続筒部の所定の圧着中心から、押し込みダイスの中心がずれてしまって、押し込みダイスの側端部が、接続筒部の根元側に寄り、この状態で筒部の根元をかしめると、そこにせん断力がかかり、端子が破壊されてしまう例も生じ得る。
【0011】
特に、圧着ダイス200の場合、
図8に示すように、押し込みダイス210の押込み部は先端に向かってテーパー状にされ、さらにその先端の角部は接続筒部110のかしめた部分が割れないようにR加工が施されている。そのため、実際に圧着する場合、
図9に示すように、押し込みダイス210の先端、特に電気的、機械的な圧着のために必要な平坦部211が、接続筒部110の所定の圧着位置にあるのかどうかが、外部からうまく視認できず、分かりにくい。これを回避するためには、所定の圧着範囲を広く設定する必要があり、そうすると、接続筒部110が大きくなり、端子100ないし導体接続管(図示せず)の大きさが大きくなる。例えば端子の場合、分電盤といった盤内で端子が占めるスペースが大きくなってしまい、他の機器や電線との取り合いに支障が出る恐れがある。
【0012】
また、端子100ないしは導体接続管のこのような接続筒部110をかしめる際、本来適用すべきサイズより小さなダイスを使って端子100をかしめると、押し込みダイス210が規定よりも深く押し込まれるので、ケーブル300等の導体が断線してしまう虞れがある。
ダイスは、圧着の場合、押し込み側のダイス210の先端が規定の押し込み深さを保つように、その深さになると受け側ダイス220と押し込み側ダイス210とが当該押し込み部以外の部位においてぶつかり、それ以上、深く入り込まないようになっている。よって、適用サイズより小さなダイスを使ってかしめると上記したようなケーブル300等の導体の断線の虞れがある一方で、適用サイズより大きなダイスを使ってかしめると、かしめは甘くなってしまい、所定の変形率(圧縮率)が得られない。そうすると、接触抵抗が高くなり使用中に発熱に至る虞れがある。また、かしめが甘いと導体が抜けてしまう虞れもある。
【0013】
従って、本発明は上述したような従来技術における問題点を解決し、電線、ケーブル等の導体先端に、端子や導体接続管といった導体接続用構造体を接続する際に、導体接続用構造体の接続筒部の最適な位置で容易にかしめることができ、さらに、かしめに使用するダイスのサイズ間違いも防ぐことができ、電気的、機械的に安定した接続処理を可能とする導体接続構造体およびダイス並びに導体接続構造体への導体の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、端子、導体接続管といった導体接続用構造体を、電線、ケーブルといった導体先端に接続するに当たり、導体接続用構造体の接続筒部を導体が挿入された状態でダイスでかしめる際に接続筒部の所定の位置を正確にかしめることが出来るように、接続筒部外表面に目印を設け、そこにダイスの、受け側ダイスの縁といった、外部から視認しやすい所を合わせることにより、所定の位置を正確にかしめることが出来ること、また、その目印の色をケーブルサイズ毎に変え、ケーブルサイズに対応した色をダイス側にも付けることで、ダイスの選定間違いを防ぐことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1) 導体を挿入し、かしめることで導体と電気的および機械的に接続する接続筒部を有する導体接続構造体であって、前記接続筒部の外表面に、かしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる目印を設けたことを特徴とする導体接続構造体。
【0016】
(2) 前記導体接続構造体が、一方の端部に前記接続筒部を有し他方の端部は端子部とされている端子、または、いずれの端部にも前記接続筒部を有する導体接続管である上記(1)に記載の導体接続構造体。
【0017】
(3) 前記目印を、前記かしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に合わせることで、かしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まるものとされている上記(1)または(2)に記載の導体接続構造体。
【0018】
(4) 前記目印が一定の幅を有する帯状のものとして、前記接続筒部の周面に沿って設けられているものである上記(1)~(3)のいずれかに記載の導体接続構造体。
【0019】
(5) 前記目印が、所定間隔を持って離間された複数の線状のものとして、前記接続筒部の周面に沿って設けられているものである上記(1)~(3)のいずれかに記載の導体接続構造体。
【0020】
(6) 前記目印は、前記接続筒部が本来把持しようとする導線のサイズ毎に色分けされているものである上記(1)~(5)のいずれかに記載の導体接続構造体。
【0021】
(7) 前記目印が、蓄光塗料で形成されていることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の接続筒部。
【0022】
(8) 前記目印が、蛍光塗料で形成されていることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の接続筒部。
【0023】
(9)導体接続構造体の接続筒部をかしめるために用いられるダイスであって、対応する前記導体接続構造体の接続筒部に付された、本来把持しようとする導線のサイズを識別するための目印の色が、ダイスの少なくとも一か所に塗られていることを特徴とするダイス。
【0024】
(10) 導体を挿入し、かしめることで導体と電気的および機械的に接続する接続筒部を有する導体接続構造体への接続方法であって、前記接続筒部の外表面にかしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる目印を予め設けておき、この目印をダイスの所定位置に合わせた状態でダイスでかしめることを特徴とする導体接続構造体への導体の接続方法。
【0025】
(11) 前記目印が、前記かしめ治具の外部より視認可能な所定部位に合わせることで、かしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる位置に付されており、この目印とかしめ治具の所定部位との位置合わせを、前記かしめ治具の外部より視認しながら行うものである、上記(10)に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【0026】
(12) 前記導体接続構造体に設けられた目印が、前記接続筒部の内径サイズ毎に色分けされているものであり、また前記接続筒部をかしめるために用いられるダイスにも対応する前記導体接続構造体の接続筒部の目印の色と同色の色が付されており、導体接続構造体の目印の色と、使用するダイスに付された色とを一致させた上で、かしめることを特徴とする上記(10)または(11)に記載の導体接続構造体への導体の接続方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、端子や導体接続管に目印を設けることにより、電線、ケーブルの導体先端に接続する際、接続筒部の最適な位置をかしめることが出来、さらに、ダイスのサイズ間違いも防ぐことが出来、電気的、機械的に安定した接続処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の導体接続構造体の一実施例の圧着時における構成を模式的に示す図面である。
【
図2】本発明の導体接続構造体の別の一実施例の使用状態における構成を更に概念化して、(a)は斜視図として、(b)は側面図として示す図である。
【
図3】本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例の使用状態における構成を模式的に示す図面である。
【
図4】(a)~(d)は、本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例における構成を模式的に示す図面である。
【
図5】(a)~(d)は、本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例における構成を模式的に示す図面である。
【
図6】(a)~(f)は、本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例における構成を模式的に示す図面である。
【
図7】本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例における構成を示す図面代用写真である。
【
図8】圧着に用いられる押し込みダイスの実際の形状を示す図面代用写真である。
【
図9】従来の導体接続構造体の使用時における状態を圧着時における構成を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に従う導体接続構造体およびダイスの実施形態について、以下で詳細に説明する。
【0030】
本発明に係る導体接続構造体としては、導体を挿入し、かしめることで導体と電気的および機械的に接続する接続筒部を有する構造のものであれば、特に限定されるものではなく、長手方向の一方の端部に前記接続筒部を有し他方の端部は端子部とされている端子、または、いずれの端部にも前記接続筒部を有する導体接続管などが広く包含され得る。
【0031】
より具体的には例えば、接続筒部の形状としてもかしめることで内部に挿入された導体と、電気的および機械的に接続し得るものであれば、特に限定されず、かしめる前の形状として接続筒部がその周面を全周に亘って有する形状のものに限られるものではなく、かしめた後の縮径を考慮して、周面上の一ないし二以上の箇所で長手方向に略沿った切欠き、溝、開放端等を有するものであっても良い。
【0032】
また、導体接続構造体が端子である場合、端子として、その端子部の形状としても特に限定されるものではなく、例えば、ボルトないしピン留め等が可能なように中央に穴部を有する環状形態、フック状形態等、あるいは例えば所定のカプラー構造の一方であるボールジョイント形状、ソケット形状、ボルト形状、嵌合溝形状等のもので有り得る。また、端子として、1つの接続筒部に対して略同一軸線上に1つの端子部が設けられている形態のみならず、1つの接続筒部に対して2ないしそれ以上の端子部が分岐して設けられている形態や、あるいは逆に2ないしそれ以上の接続筒部に対して1つの端子部が設けられている形態等のいずれであってもよい。
【0033】
さらに導体接続構造体が導体接続管である場合、当該導体接続管の各端部には接続筒部が設けられるが、この導体接続管が両端の接続筒部間に何らかの区画や電気的接続構造を有しないような、両端が開放された単純な1つの筒状体から、両端の接続筒部間に何らかの区画や電気的接続構造を有するもの、あるいは例えば分岐構造を有して、3方以上の端部に接続筒部を有するものなどのいずれの形態のものであってもよい。
【0034】
しかして、本発明に係る導体接続構造体においては、前記接続筒部の外表面に、かしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる目印を設けられている。
ここで、このような目印は、導体接続構造体の有する接続筒部の少なくとも1つのものに設けられていれば良いが、例えば導体接続構造体が導体接続管である態様におけるように、接続筒部が2ないし複数存在する場合においては、これらの2ないし複数の接続筒部それぞれに、このような目印が付されているものであることが好ましい。
【0035】
この目印としては、接続筒部の正しい圧着位置を直接示すものであっても良いが、通常かしめ治具のダイスでのかしめ操作の際、圧着位置を直接示すものは、外部より視認し難い位置のものとなる場合が多い。このため、前記かしめ治具のダイスを接続筒部の正しい圧着位置に配した際に、前記かしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に対応する接続筒部表面上に目印を設けておき、実施のかしめ操作の際には、当該かしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に、目印を合わせることで、結果的にかしめ治具のダイスが接続筒部の正しい圧着位置が相対的に位置することとなるものであることが望ましい。このような目印を合わせる、かしめ治具の外部より視認可能な点としては、特に限定されるものではなく、かしめ治具のダイスの押圧部との一次元的距離関係(代表的には長手方向での距離関係)が変動しない箇所であれば、任意の点で良いが、圧着ダイスの構造上から、例えば、受け側ダイスの縁等が、視認しやすい箇所であるため好ましい。
また、位置合わせする箇所は、上記したように少なくとも一点で充分であるが、二点以上に増やしこれに対応する目印も二点以上とすることで、より位置合わせの精度が高まることが期待できる。
【0036】
なお、このようなかしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に対応する接続筒部表面上の位置に目印を設ける場合であっても、接続筒部の正しい圧着位置を直接示す目印を別途補助的に設けておくことが、圧着位置の誤認を防止する上からはより好ましい。
【0037】
この目印の形状、形成方法等は特に限定されるものではなく、種々の態様を取り得、例えば、接続筒部の周面の特定角度部位のみに設けるものであっても十分に機能し得るが、視認性の上では周面の全周に亘って形成されたものであることが好ましい。また、目印の形状としては、線状、帯状、任意の小形(例えば、丸印、三角形、星型、菱形等)の繰返し等の任意のものであってよい。
【0038】
例えば、目印を帯状のものとして形成する場合、この帯状の目印の幅を、圧着位置の許容可能なずれ幅に対応させて形成しておくと、この帯状の目印の幅内に、かしめ治具の所定の位置合わせ点を収めれば、確実に許容範囲内で圧着することが可能となる。目印として線状のものとする場合であっても、所定間隔を持って離間された複数の線、例えば二重線状のものとすれば、同様に線間の距離を、圧着位置の許容可能なずれ幅に対応させて形成しておくということが可能である。
【0039】
さらに目印の形成方法としても、導体接続構造体の使用時、すなわち、かしめ時までは少なくとも当該構造体表面に安定して表示されているものである限り特に限定されるものではなく、例えば、塗装、印刷、金属染色加工(鍍金加工を含む)といったものから、ローレット加工、ブラスト加工、鏡面加工等の表面加工法等を用いることが可能である。なお、例えば、ローレット加工等により目印を形成した場合、目印の線が細かったり、目印として形成された溝が浅かったりすると、作業環境における光の関係で目印の視認性が悪くなったりする可能性があるが、この場合にはさらに蛍光塗料や蓄光塗料をこのような目印として、目印の視認性を向上させることも可能である。
【0040】
また目印としては、端子ないしは導体接続管等の導体接続構造体が、かしめによって接続筒部が本来把持しようとする導線、ケーブル等の導体のサイズ毎に、区別して異なるものとする、特に、導体のサイズ毎に色分けして形成することも可能である。そうすることにより、視認性を上げ、サイズ間違いを防止することができる。
【0041】
さらに、このような導体接続構造体の接続筒部をかしめる際において用いられるダイスについても、上記と対応するサイズ毎に区別された目印、特にサイズ毎に区別された色と同じものを、ダイスの少なくともどこかに付しておくことで、サイズ間違いを防止することができる。なお、前述したように、このような導体接続構造体の接続筒部をかしめる際、本来適用すべきサイズより小さなダイスを使ってかしめると、ダイスが規定よりも深く押し込まれるので、導体が断線してしまったり、接続筒部が一部破断してしまう等の虞れがあり、一方で、適用サイズより大きなダイスを使ってかしめると、かしめは甘くなってしまい、所定の変形率(圧縮率)が得られず、接触抵抗が高くなり使用中に発熱に至ったり、かしめが甘いと導体が抜けてしまう虞れがあるが、このようにサイズ毎に区別された目印を、導体接続構造体とかしめに使用する対応するダイスの双方に付しておくことで、このような不具合の発生を確実に防止できる。
【0042】
なお、導体接続構造体の接続筒部に付したサイズ毎に区別された目印、特に色と同一ものを、ダイスに付す場所としては、特に限定されるものではないが、例えば、接続筒部に付された当該目印と合わされるダイス上の位置を含むものであれば、目印を突き合わせる際に、より確実に間違いなく適合サイズのダイスを用いることが可能となると思われる。
【0043】
ここで、上記したような本発明に係る導体接続構造体の接続筒部をかしめるために用いられるダイスとしては、導体接続構造体を接続筒部を確実に圧着ないしは圧縮できるものであれば、特に限定されるものではなく、種々の形式、形態のものを使用可能であり、具体的には例えば、前述した導体接続構造体の前記接続筒部の外周面に当接する受け側ダイス(固定子)と、当該受け側ダイスに対して一定軌道上を往復移動する押し込みダイス(移動子)とを有し、受け側ダイスと押し込みダイスとの相対的位置を変動させることで前記接続構造体の接続筒部をかしめる形式のものが代表的なものである。さらに、押し込みダイスの軌道としては、受け側ダイスに対して直線的なもの、円弧状のものなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。さらにこのような構成を有して、例えば、台座等に固定された構成を有する固定タイプのものであっても、あるいは作業者が片手で操作できるようなハンディタイプのものであっても良い。
【0044】
また、本発明に係る導体接続構造体への導体の接続方法は、上記したような本発明に係る導体接続構造体の有する特徴、さらには接続に用いられるダイスの上記したような特徴を、生かすように正しく使用することによって、導体を導体接続構造体の接続筒部の正しい押圧位置でかしめることのできた製品を確実かつ簡単に製造することができるものである。すなわち、この方法を実施するための導体接続構造体の構成、ダイスの構成、およびこれらのその操作については既に述べたとおりであるが、本発明に係る導体接続構造体への導体の接続方法は、前記接続筒部の外表面にかしめ治具のダイスによる接続筒部の正しい圧着位置が相対的に決まる目印を予め設けておき、この目印をダイスの所定位置に合わせた状態でダイスでかしめることを特徴とするものである。
【0045】
また、本発明の製造方法を実施する上では、上記したように導体接続構造体の前記目印が、前記かしめ治具の外部より視認可能な所定部位、例えば、前記したように受け側ダイスの縁等の部位に合わせるように設けてある態様を採り、かしめ操作において当該目印を前記かしめ治具の外部より視認しながら行うことによって、より簡単に正しい圧着位置にて導体が導体接続構造体へ接続された製品を得ることが可能となる。
【0046】
さらに、本発明の製造方法を実施する上では、導体接続構造体に付される目印として上記したようサイズ毎に区別された目印、特にサイズ毎に区別された色を付しておき、一方製造に用いられるダイスについても、対応するサイズ毎に付された色と同じものを付しておく態様を採り、導体接続構造体の目印の色と、使用するダイスに付された色とを一致させた上で、かしめることで、かしめ治具の不適合による、接合不良の発生を確実に防止することが可能とある。
【実施例】
【0047】
以下、図面を参考しつつ、端子を圧着によってかしめる場合を例に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例には何ら限定されるのではなく、例えば、導体接続構造体として以下に例示するような端子の構造のものに限られず、導体接続管といったその他の形態のものであっても、その接続筒部における構成、およびその圧着操作等はほぼ同様にして実施可能である。またさらに、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内において、これを逸脱することなく種々の変更ないし改変が可能である。
【0048】
図1は、本発明の導体接続構造体の一実施例の使用状態における構成を模式的に示す図面である。
図1に示すように、この実施例において導体接続構造体である端子10は、その一方の端部に(
図1上で紙面下方)、ケーブル30等の導体を挿入する挿入口を有する接続筒部11を有しており、他端部(
図1上で紙面上方)に「羽板部」ないし「舌部」と呼ばれる端子部12を有している。そして、接続筒部11の端子部側末端に比較的近い部分に、接続筒部11の周面に亘り形成された帯状の第1指示線51が形成されており、また、この第1指示線51よりも接続筒部11の長手方向の中心部に近い位置に、2重線状の第2指示線52a、52bが、当該中心より略等距離を置いて両側に形成されている。ここで、
図1に示すように、実際に圧着作業を行う際に圧着ダイス20の押し込みダイス21先端の平坦部23が端子の所定の位置にあるのかが判りにくい。そこで、最も見やすい受け側ダイス22の縁24で位置決めをする。すなわち、使用される押し込みダイス21先端の平坦部23を接続筒部の所定の位置に合わた際に、その時の受け側ダイス22の縁24にくる所に、前記第1の指示線51が目印として設けてある。圧着の際に押し込みダイス21先端がずれても良い範囲を表すために前記第1の指示線51は帯状として形成され幅を持たせてある。圧着する際、作業者は、押し込みダイス21先端をのぞき込むことなく、受け側ダイス22の縁24が目印となる前記第1の指示線51の幅の間にあることを確認さえすれば、確実に許容範囲内を圧着することが出来る。
【0049】
なお、
図1において2重線状の第2指示線52a、52bは、これらの第2指示線間が接続筒部11の圧着許容範囲の示すものとして形成されており、前記第1指示線51のみの表示では、作業者が錯誤により、第1指示線51の近傍に押し込みダイス21先端を押し込む可能性を排除するために補助的に設けられている。
【0050】
図2は、本発明の導体接続構造体の別の一実施例の使用状態における構成を更に概念化して、(a)は斜視図として、(b)は側面図として示す図である。
図1に示す実施例の場合と同様に、この実施例においても導体接続構造体である端子10は、その一方の端部に(
図2上で紙面右側)、ケーブル30等の導体を挿入する挿入口を有する接続筒部11を有しており、他端部(
図2上で紙面左側)に端子部12を有している。そして、前記
図1に示した実施例の場合とほぼ同様に、接続筒部11の端子部側末端に比較的近い部分に、接続筒部11の周面に亘り形成された帯状の第1の指示線51が形成されており、また、この第1指示線51よりも接続筒部11の長手方向の中心部に近い位置に、梯子状の模様を有する第2指示線52a、52bが、当該中心より略等距離を置いて両側に形成されている。前記第1の指示線51は、使用される押し込みダイス21先端の平坦部23を接続筒部の所定の位置に合わた際に、その時の受け側ダイス22の縁24にくる所に設けてあり、圧着する際、作業者は、押し込みダイス21先端をのぞき込むことなく、受け側ダイス22の縁24が目印となる前記第1の指示線51の幅の間にあることを確認さえすれば、確実に許容範囲内を圧着することが出来る。
【0051】
なお、
図2において梯子形状の第2指示線52a、52bは、これらの第2指示線間が接続筒部11の圧着許容範囲の示すものとして形成されており、前記第1指示線51のみの表示では、作業者が錯誤により、第1指示線51の近傍に押し込みダイス21先端を押し込む可能性を排除するために補助的に設けられており、さらに
図1に示す実施例における二重線状の指示線よりも、梯子形状としてより視認性を高くしている。
【0052】
図3は、本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例の使用状態における構成を模式的に示す図面である。
この実施例においては、前記した
図2に示す実施例におけるものと、接続筒部11の端子部側末端に比較的近い部分に、接続筒部11の周面に亘り形成された第1の指示線51が帯状のものから、2重線状のものに変更された以外は、実質同じ構成を有している。
この実施例におけるように、当該第1の指示線51を、受け側ダイス22の縁24に位置合わせする際に、2重線のうちの端子部12側(
図3上で紙面上側)の1本のみが受け側ダイス22の縁24より上にでていることを確認できれば、押し込みダイス21の平坦部23が圧着すべき許容範囲内に位置していることになる。2重線のうち両方ともが受け側ダイス22の縁24より上にでている、あるいは両方ともが受け側ダイス22の縁24よりも下に隠れている場合は、、押し込みダイス21の平坦部23が圧着すべき許容範囲から外れていることとなる。
【0053】
図4~6は、本発明の導体接続構造体のさらに別の一実施例における構成を模式的に示す図面である。
【0054】
図4~6においては、本発明の導体接続構造体の接続筒部11の表面上に設けられる目印としての第1指示線51および第2指示線52a、52bのさまざまなパターンが例示されるものである。
図4(a)~(d)においては、
図1および
図2に示した実施例と同様に、第1指示線51として帯状の印を用いた場合の各種態様を、
図5(a)~(d)においては、
図3に示した実施例と同様に、第1指示線51として二重線状の印を用いた場合の各種態様を、さらに
図6(a)~(d)においては、第1指示線51としてさらに別のものである、梯子状の印を用いた場合、
図6(e)においては、縁無し梯子状の印を用いた態様、
図6(f)では、ローレットによる印を用いた態様が示されている。
【0055】
これらの実施例において例示するように、本発明の導体接続構造体の接続筒部11の表面上に設けられる目印としての形態は、いずれのパターンを用いた場合であっても、その視認性等において多少の差異はあるものの、基本的にはほぼ同様に作用し得る。特に前記押し込みダイス21を接続筒部11の正しい圧着位置に配した際に、前記かしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に対応する接続筒部表面上の第1表示線51を少なくとも設けておき、実施のかしめ操作の際には、当該かしめ治具の外部より視認可能な少なくともある一点に、第1表示線51を合わせることで、結果的にかしめ治具のダイスが接続筒部の正しい圧着位置が相対的に位置することとなるものであることが望ましい。第2指示線52を設ける場合には、図示するように、第1指示線51の形態と第2指示線52の形態とは同種のものとしても、異なるタイプのものとしても良いが、その識別性の観点からは異なるタイプのものとすることが望ましい。
【0056】
図7は、本発明の導体接続構造体の接続筒部の表面上に設けられる目印としての指示線(第1指示線および第2指示線)を、実際の端子において、その端子が本来は把持しようとする導線(ケーブル)のサイズ毎に異なる色彩付したことを示す図である。
図7において、小さいサイズの端子については、指示線50redが赤色で、大きいサイズの端子においては指示線50blueが青色で形成されており、これによって、視認性を上げ、サイズ間違いを確実に防止することができる。さらには、図示はしないが、対応するサイズのダイスにも共通する色をどこかに付しておくことで、サイズ間違いをさらに確実に防止することができるものとなる。
【符号の説明】
【0057】
10 端子
11 接続筒部
12 端子部
20 圧着ダイス
21 押し込みダイス
22 受け側ダイス
23 押し込みダイス先端の平坦部
30 ケーブル
50red、50blue 色分けされた指示線
51 第1指示線
52a、52b 第2指示線
100 端子(従来例)
110 接続筒部(従来例)
200 圧着ダイス
210 押し込みダイス
211 押し込みダイス先端の平坦部
220 受け側ダイス
300 ケーブル