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特許7590033一酸化炭素の製造方法およびそれに使用される装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】一酸化炭素の製造方法およびそれに使用される装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20241119BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C01B32/40
B01J23/02 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023519798
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2022019516
(87)【国際公開番号】W WO2023037652
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021146155
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹山 知嶺
(72)【発明者】
【氏名】高坂 文彦
(72)【発明者】
【氏名】倉本 浩司
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/038484(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107376826(CN,A)
【文献】特開2012-025636(JP,A)
【文献】特開2019-188353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 32/40
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)担体、並びに
前記担体に担持された、NaおよびKからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、
Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素を実質的に含まない、
吸収転換触媒を準備する工程と、
(b)前記吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて、前記吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる工程と、
(c)工程(b)の後、二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒に還元性ガスを接触させて、一酸化炭素を生成する工程と、
を含む、一酸化炭素の製造方法。
【請求項2】
前記担体が、アルミナ担体、及びジルコニア担体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)の前記添加物が、Naを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
(a)担体、並びに
前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、
Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素を実質的に含まない、
吸収転換触媒を準備する工程と、
(b)前記吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて、前記吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる工程と、
(c)工程(b)の後、400~600℃で、二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒に還元性ガスを接触させて、一酸化炭素を生成する工程と、
を含む、一酸化炭素の製造方法。
【請求項5】
前記担体が、アルミナ担体、及びジルコニア担体からなる群から選択される少なくとも
1種であり、
工程(a)の前記添加物が、Na、K、およびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(c)における還元性ガスが、水素含有ガスである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(b)における二酸化炭素が、大気中あるいは排ガス中から直接回収した二酸化炭素である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて、前記吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる工程を行う二酸化炭素回収層と、
前記二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒を、前記二酸化炭素回収層の外に送りだす触媒循環路と、
前記触媒循環路を介して送り出された前記吸収転換触媒が供給され、前記二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒に還元性ガスを接触させて、一酸化炭素を生成する工程を行う一酸化炭素合成反応層と、を備え、
前記吸収転換触媒は、
担体、並びに
前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、
Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素を実質的に含まない、循環流動層型反応装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法を実施するための装置であって、
前記装置は、二酸化炭素回収および一酸化炭素合成反応層を含む固定層型反応装置である、前記装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法は、循環流動層型反応装置または固定層型反応装置のいずれかで行われ、
前記循環流動層型反応装置において行なわれる場合において、
前記循環流動層型反応装置は、二酸化炭素回収層、一酸化炭素合成反応層、および前記二酸化炭素回収層と前記一酸化炭素合成反応層とを連結する触媒循環路を含み、
工程(b)は、前記吸収転換触媒が保持された前記二酸化炭素回収層に、前記二酸化炭素を含むガスを導入して行われ、
工程(b)で前記二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒は、前記触媒循環路を介して、前記二酸化炭素回収層から前記一酸化炭素合成反応層に供給され、
工程(c)は、前記一酸化炭素合成反応層に、前記還元ガスを導入して行われ、
前記固定層型反応装置において行なわれる場合において、
前記固定層型反応装置は、二酸化炭素回収および一酸化炭素合成を行うため、前記吸収転換触媒が保持された回収反応層を含み、
工程(b)は、前記回収反応層に前記二酸化炭素を含むガスを導入して行われ、
工程(c)は、前記回収反応層に前記還元ガスを導入して行われる、
製造方法。
【請求項11】
前記吸収転換触媒への前記二酸化炭素を含むガスの供給を停止して工程(b)を停止後に、工程(c)を開始する請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記吸収転換触媒は、前記担体及び前記添加物のみからなる、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(CO)の製造方法、およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因物質であるCOを燃料や化成品などに変換して有効利用するための手法が盛んに研究されている。その手法の一つである、COの吸蔵作用と触媒作用を併せ持つ二元機能触媒を用いたプロセスは、エネルギー消費量が比較的少ないこと、低濃度のCOも効率的に吸蔵・変換できることなどから注目されている。ただし、これまでの報告例のほとんどはメタンへの変換を対象としている。メタンは化学的に安定であり、別の物質にさらに変換して付加価値を高めるためには多大なエネルギーを必要とするため、燃料としての利用が主流になると考えられる。
【0003】
一方で、二元機能触媒に吸蔵されたCOを逆シフト反応によって合成ガスの主成分であるCOに還元できれば、既に確立されているフィッシャー・トロプシュ(FT)反応による炭化水素類の合成原料として直接COを利用できるため、容易に高付加価値化できる。
【0004】
CO吸蔵とCOへの水素還元を目的とした既存の手法として、FeCrCu/K/MgO-Al(非特許文献1)、Cu-K/Al(非特許文献2)といった二元機能触媒の利用例が報告されている。これらの手法では、二元機能触媒中のアルカリがCOの吸蔵作用を、二元機能触媒中のFeCrCuやCuなどの金属種が逆シフト反応によるCOへの還元作用を担っていると考えられる。また、MgO-AlやAlはアルカリや金属種を保持する担体である。
【0005】
他には、BaTiOなどの複合酸化物を用いた先行例も報告されている(特許文献1)。この例では、800~1000℃の高温条件が必要である。
また、CO吸蔵は行わない逆COシフト触媒の先行例も報告されている(特許文献2)。この例では、逆COシフト触媒として、FeおよびCrを活性成分とする触媒または活性アルミナが記載されている。
【0006】
さらに、CO吸蔵と転換を行うCO吸蔵・転換キャリア粒子としてNi/KCO/MgO、およびNi/KCO/ZrOを用いた先行例も報告されている(非特許文献3)。この例では、CO吸蔵後にHで還元する際に、CO吸蔵・転換キャリア粒子としてNi/KCO/MgOを用いた場合にはCOが選択的に生成し、Ni/KCO/ZrOを用いた場合には主にCH、副次的にCOが生成している。
加えて、アルミナ上にNaCOやKCOを担持した材料を、単純にCOの吸蔵材として利用した例も報告されている(非特許文献4)。この例では、COの吸蔵工程と放出工程で温度条件をスイングすることで、COの形態のまま吸蔵、放出を行っており、該材料がCOへの転換触媒として用い得ることは明らかになっていなかった。
さらにまた、Fe-Co合金を炭素系担体である窒素ドープグラフェンに担持した材料を、CO転換触媒として利用した例も報告されている(非特許文献5)。
以上の通り、従来は主にNi、Fe、Coなどの金属種や複合酸化物がCOの転換作用を担っているものと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2008/038484号
【文献】特開2000-233917号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】L.F.Bobadilla et al.,Journal of CO2 Utilization,2016,14,106-111.
【文献】T.Hyakutake et al.,Journal of Materials Chemistry A,2016,4,6878-6885.
【文献】七瀬浩希 他、Proceeding of SCEJ 85th Annual Meeting (2020),PA162
【文献】R.R.Kondakindi et al., International Journal of Greenhouse Gas Control,2013,15,65-69.
【文献】L.Peng et al.,ACS Sustainable Chemistry&Engineering,2021,9,9264-9272.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況を鑑み、コスト上昇の要因となる金属種(Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd)やBaTiOなどの複合酸化物を用いることなく、かつ高効率に実施可能な、COの還元によるCOの製造方法、およびそのために使用される装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。
その結果、担体に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属等の添加物が担持され、Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素を実質的に含まない吸収転換触媒を用いて、吸収転換触媒とCOを接触させて、COを製造する方法により、COを効率よく製造することができることを知見し、このような知見に基づいて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、一般的にはCOの吸蔵材として使用されているアルカリ金属およびアルカリ土類金属を用いて、COを高効率に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態の一つである、固定層での反応を行う一体化CO回収および転換システムの一部である。
図2図2は、本実施の形態の一つである、循環流動層での反応を行う一体化CO回収および転換システムの概略図である。
図3図3は、大気圧、450℃の条件での反応器からの流出ガス組成プロファイルであり、CO、CO、CH濃度を示す。(a)はNa/γ-Alを用いた結果、(b)はK/γ-Alを用いた結果、(c)はCa/γ-Alを用いた結果、(d)はγ-Alを用いた結果を示す。
図4図4は、種々の添加物を担持した二元機能触媒でのCOの吸収量とCO生成量を示す図である。
図5図5は、担体の異なる種々の二元機能触媒でのCOの吸収量とCO生成量を示す図である。
図6図6は、Na/γ-Alを用いて様々な反応温度でのCOの吸収量とCO生成量を比較した図である。
図7図7は、Na/γ-Alを用い、450℃でCOの吸収・変換実験を50サイクル行った場合のCO吸収量とCO生成量の推移を示す図である。
図8図8は、Na/γ-Alを用い、60倍にスケールアップして500℃で大気濃度COから合成ガス製造を行った場合の流出ガス組成プロファイルであり、CO、CO、CH濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、説明する。
なお、実施の形態において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。
【0014】
<二酸化炭素から一酸化炭素を製造する方法>
本実施の形態は、(a)担体、並びに
前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、
Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素(以下「Ni等」)を実質的に含まない、
吸収転換触媒を準備する工程と、
(b)前記吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて前記吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる工程と、
(c)二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒と、還元性ガスと接触させて一酸化炭素を生成する工程と、
を含む、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する方法に関する。
【0015】
前述のとおり、Ni等の金属種やBaTiOなどの複合酸化物をCOの転換触媒として用いる検討はなされている。またNi等の金属種のうち多くのものはメタンCHへの転換を促進し、COへの転換を促進しない場合も多い。更に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属をCOからCOへの転換触媒として用いる検討はなされていない。本実施の形態は、担体に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属等の成分が担持された材料が、従来COの吸蔵作用だけを担うものと考えられてきたのに対して、COからCOへの転換作用を持つという本発明者らの予想外の発見に基づくものである。この材料を吸収転換触媒として用い、吸収転換触媒とCOを接触させて、COを製造する方法により、COを効率よく製造することができ、金属種や複合酸化物を用いずにCOを高効率に製造する手段を提供するものである。すなわち、本実施の形態は、大気のCO浄化等への適用が期待できる。
【0016】
工程(a)では、担体、並びに前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、Ni等の元素を実質的に含まない、吸収転換触媒を準備する。
【0017】
ここで、吸収転換触媒とは、所定の条件下で二酸化炭素を吸蔵する能力を有し、かつ還元性ガスを用いて二酸化炭素を一酸化炭素に転換する能力を有する触媒である。
【0018】
この吸収転換触媒は、担体、並びに前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む成分を含み、Ni等の元素を実質的に含まない。
「Ni等の元素を実質的に含まない」とは、意図的には添加しないが、不可避的に混入する微量の不純物としては許容するという意味である。一例としては、吸収転換触媒中の各元素の含有量が、それぞれ0.1at%以下、好ましくは0.05at%以下、より好ましくは0.01at%以下であることをいう。また、他の例としては、吸収転換中の各元素の含有量が、原子量比で前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の1/1000以下、好ましくは1/2000以下、より好ましくは1/10000以下であることをいう。
Ni等の元素は、Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素であるが、これらはCOを還元してC やCOに転換する作用を持つ添加物として報告例がある経験則上の金属種である。このような金属種を添加することなくCO転換を効率よく起こさせることできるため、上記の吸収転換触媒の低コスト化が図れる。
Ni等の元素を実質的に含まず、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を吸収転換触媒として利用することで、COをCOに転換する際にCHにまで転換されるCOの量を減らし、CO選択性を向上させることができる。
【0019】
この吸収転換触媒における担体は、触媒担体として用いられるものであれば特に制限は無く、例えばアルミナ(Al)担体、シリカ(SiO)担体、チタニア(TiO)担体、ジルコニア(ZrO)担体、セリア(CeO)担体、カルシア(CaO)担体、及びマグネシア(MgO)担体などの酸化物担体、並びに活性炭、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックなどの炭素系担体を用いることができる。添加物を担持した際により高活性が得られるという観点から、アルミナ担体、シリカ担体、チタニア担体、ジルコニア担体、及びセリア担体等が好ましく、アルミナ担体、及びジルコニア担体がより好ましい。これらの担体は、1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
すなわち、担体は、アルミナ担体、及びジルコニア担体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
吸収転換触媒の形状は特に制限はないが、使用性という観点から、平均粒径(メジアン径、D50)0.1~500μmの粒子が好ましく、平均粒径1~300μmの粒子がより好ましく、平均粒径50~200μmの粒子が特に好ましい。また、比表面積についても特に制限はないが、10~2,000m/gが好ましく、20~1,000m/gがより好ましく、30~500m/gが特に好ましい。なお、吸収転換触媒粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱法、X線小角散乱法、レーザー回折法等によって測定することができ、また、比表面積は、例えば、ガス吸着法、透過法等によって測定することができる。
【0021】
二酸化炭素を吸蔵し、一酸化炭素に転換する効果を有する添加物は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
この吸収転換触媒においては、担体に上記添加物が担持されている。吸収転換触媒によって二酸化炭素が選択的に吸蔵され、この吸蔵した二酸化炭素と還元性ガスとを吸収転換触媒を触媒として反応させることで、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する。
【0022】
担体への添加物の担持の態様は特に制限されないが、添加物が担体表面に吸着している態様が例示される。
担体上に添加物が均一に分散していることによって、添加物の表面積が変化したり、添加物がアモルファス状で担体上に担持されると考えられ、それらによって吸収転換触媒のCOの吸蔵作用とCOへの転換作用が強く発現するものと考えられる。
【0023】
添加物としては、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、及びCs等が挙げられ、Na、及びKが好ましく、Naが特に好ましい。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、及びBa等が挙げられ、耐久性等の観点からCaが好ましい。これらの添加物は1種を使用しても2種以上を併用してもよい。また、担体上に担持された添加物は、アルカリ金属塩、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ金属元素からなる群から選択される少なくとも一、および/またはアルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属酸化物、およびアルカリ土類金属原子からなる群から選択される少なくとも一として存在する。
【0024】
添加物の担持量が低すぎると、吸収転換触媒の二酸化炭素吸蔵性能が低下し、二酸化炭素を効率よく還元できないため、二酸化炭素からの一酸化炭素の製造効率が低下し、高すぎると添加物の粗大化や担体の細孔閉塞等が起こるため、二酸化炭素吸蔵性能および一酸化炭素製造効率が低下する。このような観点から、添加物の担持量としては、吸収転換触媒100質量部に対して0.1~50質量部が好ましく、1~35質量部がより好ましく、5~25質量部が特に好ましい。
【0025】
上記の添加物のアルカリ金属、アルカリ土類金属の原料としては、種々のアルカリ金属塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属塩、およびアルカリ土類金属酸化物などを用いることができる。塩としては特に限定されないが、例えば、塩化物、フッ化物などのハロゲン化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩などが挙げられる。中でも、硝酸塩、炭酸塩が好ましい。
【0026】
上述の吸収転換触媒は、公知の吸収転換触媒の製造方法に基づいて製造することができる。
例えば、上記のアルカリ金属塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属塩、およびアルカリ土類金属酸化物の1種類以上を含む液体中に担体を含浸させたのち、乾燥させることで、添加物のアルカリ金属、アルカリ土類金属を担体に担持させることで製造することができる。
【0027】
工程(b)では、吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて、吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる。吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いる事ができる。
また、用いる二酸化炭素としては特に限定されないが、大気中あるいは排ガス中から直接回収した二酸化炭素を用いることもできる。排ガスとしては二酸化炭素を含むものであれば、その発生源や含有成分について特に限定されるものではなく、例えば廃棄物の焼却により生成した排ガスを用いることができる。
【0028】
吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる際には、雰囲気の圧力は大気圧でもよいが、雰囲気の圧力を大気圧より高圧力としてもよい。雰囲気の圧力を大気圧より高圧力とする方法としては高圧力が達成される方法であれば特に限定されず、例えば、原料となる二酸化炭素を含むガスを加圧して反応器に導入する方法等であってよい。
【0029】
吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる雰囲気の温度としては、雰囲気の圧力等によって適宜調整可能であるが、触媒への水分の凝縮と添加物の酸化を抑制するという観点から、室温~600℃が好ましい。
吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる時間としては、雰囲気の圧力、温度、二酸化炭素濃度等によって適宜調整可能である。
【0030】
本実施の形態の製造方法における、原料となるガス中の二酸化炭素濃度としては特に制限はない。前述のとおり、低濃度の二酸化炭素を含むガスからも一酸化炭素への転換が可能である。すなわち、通常300ppm程度の低濃度の二酸化炭素を含むガスである空気からも一酸化炭素への転換が可能である。
【0031】
工程(c)では、二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒に還元性ガスを接触させて、一酸化炭素を得る。吸収転換触媒に還元性ガスを接触させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いる事ができる。
【0032】
還元性ガスとしては、二酸化炭素を還元して一酸化炭素への転換し得るものであれば特に制限はないが、例えば、純水素ガス、水素含有ガス、メタンガスが挙げられ、純水素ガス、水素含有ガスが好ましい。還元性ガスとしては、省エネルギー発電システムによる水電解で得られた水素ガスの利用も可能である。水素含有ガスに含まれる他のガスとしては、二酸化炭素の還元反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。水素含有ガス中の水素濃度としては、還元効率の観点から、5vol%以上が好ましく、10vol%以上がより好ましい。
【0033】
吸蔵した二酸化炭素と還元性ガスとを反応させる際には、雰囲気を大気圧としてもよいが、雰囲気の圧力を大気圧より高圧力としてもよい。雰囲気の圧力を大気圧より高圧力とする方法としては高圧力が達成される方法であれば特に限定されず、例えば、原料となる二酸化炭素を含むガスを加圧して反応器に導入する方法等であってよい。
【0034】
吸蔵した二酸化炭素と還元性ガスとを反応させる雰囲気の温度としては、雰囲気の圧力等によって適宜調整可能であるが、一酸化炭素生成速度の向上および還元時の二酸化炭素脱離の抑制を実現し、高い一酸化炭素製造効率を得るという観点から、400℃以上が好ましく、430℃以上がより好ましい。また、600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましく、530℃以下がさらに好ましい。実施例で示された450℃と500℃を含む温度範囲であることが好ましい。
吸蔵した二酸化炭素と還元性ガスとを反応させる時間としては、雰囲気の圧力、温度、二酸化炭素濃度等によって適宜調整可能である。
【0035】
<実施の形態の製造方法を実施するための装置>
実施の形態の別の一態様は、本実施の形態の製造方法を実施するための装置であって、前記装置は、二酸化炭素回収および一酸化炭素合成反応層(以下、回収反応層とも記す。)を含む固定層型反応装置である、前記装置に関する。
固定層を用いることで、触媒の回収を容易に行うことができ、低コストで上記の方法に係る実施形態を実施することができる。
【0036】
本実施の形態の装置の一部を図1に示す。
固定層型反応装置の一部である図1は、回収反応層である。前記回収反応層において、吸収転換触媒と二酸化炭素を含むガスとを接触させ、吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる。その後、二酸化炭素を吸蔵させた吸収転換触媒と還元性ガスとを接触させ、一酸化炭素を合成することができる。つまり、1個の回収反応層を使えば、逐次的にCOの回収と転換を行うことができる。なお、2個以上の回収反応層を準備しておき、一定の時間毎に二酸化炭素を含むガスと還元性ガスの供給を相補的に切り替える装置構成とすることも可能である。この場合は、少なくとも2個の回収反応層を切り替えながらCOの回収と転換を連続的に行うことができる。
【0037】
実施の形態の別の一態様は、本実施の形態の製造方法を実施するための装置であって、
前記装置は、二酸化炭素回収層、一酸化炭素合成反応層、および前記二酸化炭素回収層と前記一酸化炭素合成反応層とを連結する触媒循環路を含む循環流動層型反応装置である、前記装置に関する。
循環流動層を用いることで、COの回収と転換の触媒反応を連続的に進行させることができる。さらに、これをスケールアップした循環流動層を用いることで大流量での触媒反応の進行が可能である。
【0038】
本実施の形態の装置を図2に示す。
図2に示す循環流動層型反応装置は、吸収転換触媒と二酸化炭素を含むガスとを接触させて、吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させて二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収層と、二酸化炭素を吸蔵させた吸収転換触媒と還元性ガスとを接触させて、一酸化炭素を合成するための一酸化炭素合成反応層と、二酸化炭素回収層と一酸化炭素合成反応層とを連結して設けられ、二層間で触媒を循環させるための触媒循環路とを備えている。ここで循環流動層は、少なくとも一部が吸収転換触媒である流動媒体から構成される。
【0039】
二酸化炭素回収層を充填した容器の下部には、容器内に二酸化炭素を含むガスを吹き込むための通気管およびガスを加圧して容器内に通気するためのコンプレッサーが設けられている。また、容器の上部には、触媒循環路から続く容器内に触媒を導入するための導入管が設けられている。また、容器の側壁には、容器内のガスを排出するための排気管およびガスを減圧して容器外に排出するための背圧調節弁と、触媒循環路へと続く容器内から触媒を排出するための排出管とが設けられている。
【0040】
二酸化炭素回収層では、通気管から二酸化炭素を含むガスを吹き込んで、容器内に充填された循環流動層を上昇させる。その過程で、循環流動層が攪拌、混合され、吸収転換触媒に二酸化炭素が吸蔵される。ここで二酸化炭素の吸収は発熱反応である。
【0041】
二酸化炭素回収層を充填した容器から排出された触媒は、二酸化炭素回収層と一酸化炭素合成反応層とを連結する触媒循環路を通って、一酸化炭素合成反応層を充填した容器に供給される。触媒循環路には、触媒を不活性ガスに接触させるガス置換部が設けられている。
【0042】
一酸化炭素合成反応層を充填した容器の下部には、容器内に還元性ガスを吹き込むための通気管およびガスを加圧して容器内に通気するためのコンプレッサーが設けられている。また、容器の上部には、触媒循環路へと続く容器内から触媒を排出するための排出管が設けられている。また、容器の側壁には、触媒循環路から続く容器内へ触媒を導入するための導入管が設けられている。
【0043】
一酸化炭素合成反応層では、通気管から還元性ガスを含むガスを吹き込んで、容器内に充填された循環流動層を上昇させる。その過程で、循環流動層が攪拌、混合され、吸収転換触媒に吸蔵された二酸化炭素と還元性ガスとが反応し、二酸化炭素から一酸化炭素が合成される。ここで一旦吸蔵された二酸化炭素の放出は吸熱反応であり、加熱が必要である。また、二酸化炭素と還元性ガスによる一酸化炭素の合成も吸熱反応で、加熱が必要である。
【0044】
一酸化炭素合成反応層を充填した容器から排出された触媒は、触媒循環路を通って、触媒等を捕集する捕集部に供給される。捕集部では、生成したガスと触媒を分離し、生成したガスは排出管から排出され、触媒は触媒循環路を通って、二酸化炭素回収層に戻される。触媒循環路には、触媒を不活性ガスに接触させるガス置換部が設けられており、炭酸ガス吸蔵層と合成反応層のガス雰囲気を切り離している。
図2の循環流動層型反応装置において、二酸化炭素回収層と一酸化炭素合成反応層とは独立しているため、それぞれの反応を最適化する温度に設定する場合に有利である。一般に、アルカリへのCOの吸収反応は平衡論的には相対的に低温条件が有利である。一方で、一般に、COからのCOの合成反応は相対的に高温条件が有利である。従って一酸化炭素合成反応層よりも二酸化炭素回収層の温度を低くする構成をとることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例により、さらに具体的に説明するが、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<(Na,K,Ca)/γ-Al触媒の調製>
担体には、ガンマアルミナ(γ-Al、水澤化学工業株式会社、ネオビード MSC#300)(粒径範囲90~425μm)を、加工することなく使用した。担持するアルカリの原料には、炭酸ナトリウム(Na(CO)、FUJIFILM Wako Pure Chemical)、炭酸カリウム(K(CO)、FUJIFILM Wako Pure Chemical)、または硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO・4HO、FUJIFILM Wako Pure Chemical)をはじめとするアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属硝酸塩の適当な量を含有する水性溶液でγ-Alを含浸した後、110℃で一晩乾燥させ、空気中、550℃で4時間焼成し、Na/γ-Al、K/γ-Al、Ca/γ-Al触媒を得た。アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属硝酸塩の添加量は、二元機能触媒1gあたり1.5mmolとした。すなわち、二元機能触媒1gあたり、アルカリの原料として炭酸ナトリウムを用いた場合は0.16g、炭酸カリウムを用いた場合は0.21g、硝酸カルシウム四水和物を用いた場合は0.29gとした。
【0047】
<Na/(ZrО,CeО,TiО)触媒の調製>
担体には、ジルコニア(ZrО、日本触媒学会提供、試料コード:JRC-ZrO-9)、セリア(CeО、日本触媒学会提供、試料コード:JRC-CeO-5)、チタニア(TiО、日本触媒学会提供、試料コード:JRC-TiO-16)を、加工することなく使用した。担持するアルカリの原料には、炭酸ナトリウム(Na(CO)、FUJIFILM Wako Pure Chemical)を使用した。前述のNa/γ-Al触媒と同様の手順で含浸、乾燥、焼成を行った。前述のNa/γ-Al触媒と同様、炭酸ナトリウムの添加量は、二元機能触媒1gあたり1.5mmolとした。焼成後のサンプルをディスク状にプレス成型した後、粉砕して粒径250~500μmの範囲を分級することで、Na/ZrО、Na/CeО、Na/TiО触媒を得た。
【0048】
<一体化CO吸蔵およびCO転換>
実験は、固定層型反応装置を用いて、以下の手法に基づいて行った。
調製した触媒 1gを電気炉内のSUS管に配置した。測定に先立ち、触媒をH雰囲気下、500℃で1時間前処理した。一体化されたCO吸蔵およびCO転換測定のために、5%CO、N、H、およびNを順番に反応器内にそれぞれ3分間、3分間、30分間、および3分間、逐次供給した。なお、5%COとHとの間に供給したNは、パージガスとして供給した。この際、各ガスの供給流量はHのみ100mL/分とし、その他のガスは500mL/分で一定とした。
操作因子として、反応温度を350~500℃に変化させた。出口ガス中のCO、CO、CHの濃度を、非分散型赤外(NDIR)ガス分析計(VA-5000、HORIBA)を用いて測定した。熱電対を触媒に挿入することにより、反応温度をモニタリングした。反応温度は実験を単純化にするためCO吸蔵およびCO転換の一連のシーケンスで同じ温度になるよう設定した。
なお、比較例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を担持させないγ-Alを用いた以外は、上記と同様の操作を行った実験を行った。
すべての実験は、再現性を確認するため、一連のガス供給操作を5サイクル以上繰り返し行い、以下の実験データは、初めの1サイクル目を除いた2~5サイクル目の平均値±標準偏差として記載した。
【0049】
図3は、様々な触媒Na/γ-Al(a)、K/γ-Al(b)、Ca/γ-Al(c)、γ-Al(d)を用いた450℃および大気圧下(1atm)でのCO吸蔵および転換の測定結果を示す。この図で横軸は流出ガス体積(L)であるが、ガスの供給流量(mL/分)で換算すれば経過時間になる。
図3(a)-(c)のように添加物を担持した場合は、COの供給開始から遅れてCO濃度が緩やかに増加して供給濃度に漸近した。したがって、COが吸蔵されていると考えられる。
一方、図3(d)のように添加物を担持せずに担体であるγ-Alのみを用いた場合、CO供給時にはCO濃度が速やかに供給濃度に漸近した。また、水素供給時にはCOの生成がほとんど観察されなかった。
【0050】
図4は、図3の測定結果を積分してCO吸収量とCO生成量を算出した結果を示す。担体であるγ-Alのみの場合に比べ、いずれの添加物を担持した場合でもCOの吸収量、CO生成量は大きくなった。また、K/γ-Alを用いた場合にCOの吸収量、CO生成量が最も大きくなった。
吸蔵したCOのCOへの変換効率を評価するための指標として、吸収量基準のCO転化率(CO生成量/CO吸収量)と、CO/(CO+CH)選択率、それらを乗じたCO収率を算出し、表1にまとめて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
CO転化率はNa/γ-AlおよびK/γ-Alが特に高く、CO選択率はNa/γ-AlおよびCa/γ-Alが特に高かった。CO収率はNa/γ-Al、K/γ-Al、Ca/γ-Alの順に高かった。図4及び表1を参照すれば、比較例のAl単体でもある程度はCOを吸収してCOを生成しており、CO吸収や転換の触媒作用があるが大きな値ではない。これに対して、Na、K、Ca(以下Na等)を担持した場合は、Al単体に対して3.6倍から4倍以上のCO転化率を示しており、顕著なCO転換の触媒作用が生じている。
【0053】
図5は、担体の異なる様々な触媒Na/γ-Al、Na/ZrО、Na/CeО、Na/TiОを用いた450℃および大気圧下(1atm)でのCO吸蔵および転換の測定結果を基に算出したCO吸収量とCO生成量を示す。いずれの値も、Na/γ-Al、Na/ZrО、Na/CeО、Na/TiОの順に高かった。
また、各触媒でのCO転化率、CO選択率、CO収率を算出し、表2にまとめて示す。Na/γ-Al触媒が特に高いCO転化率とCO選択率を両立しており、結果としてCO収率が最大となった。
【表2】
【0054】
図6は、Na/γ-Alでの反応温度に対応するCO吸収量およびCO生成量を示す。350℃という低温の条件でもCOの生成が観察された。CO吸収量とCO生成量は共に反応温度の増加に伴って増大し、450℃以上では一定となる傾向を示した。
また、種々の反応温度でのCO転化率、CO選択率、CO収率を算出し、表3にまとめて示す。
【0055】
【表3】
【0056】
CO転化率は高温条件ほど高く、CO選択率は350~500℃の間で97%以上の非常に高い値を示した。それらの積であるCO収率は、転化率と同様に高温条件ほど高くなり、450℃以上では増加が緩やかになった。特許文献1の段落0041の表1には二酸化炭素吸収材料BaTiOで水素を還元ガスとしたCO生成を900℃で行いCO選択率が85%であった実験例(実施例4)が記載される。これに比べて表3の450℃の結果は、CO選択率99.2%、CO収率85.6%であり、900℃に比べ半分程度の低温でも非常に高効率のCO転換ができている。また、非特許文献1のFig.3(B)は、FeCrCu/K/MgO-Al触媒が450~550℃の間で80~90%程度のCO転化率を理想状態で示した実験結果を記載するが、上記表3の結果では、CO転換のための金属種を添加すること無しに同等以上のCO転化率が得られている。
【0057】
図7は、Na/γ-Alを用い、450℃でCOの吸収・変換実験を50サイクル行った場合のCO吸収量とCO生成量の推移を示す。
CO吸収量は、前処理としての水素還元直後である1サイクル目が特に高く、2サイクル目で低下するものの、それ以降は二元機能触媒1gあたり0.2mmol程度で一定となる傾向を示した。また、CO生成量はCO吸収量よりもわずかに低い値で一定となった。したがって、本実施の形態で用いた二元機能触媒は、CO吸収およびCOへの転換に繰り返し利用しても大きな活性の低下がなく、耐久性が高いことが分かった。
【0058】
<大気濃度COからの合成ガス製造>
COとHの混合ガスである合成ガスの製造においては、生成COの濃度だけでなく、未反応のHとのモル比(H/CO比)の制御が極めて重要である。例えば、液体燃料を製造するためのフィッシャー・トロプシュ(FT)反応では、合成ガスのH/CO比は2~3程度が望ましい。
本技術により、大気濃度COから実用的な組成の合成ガスを製造できることを実証するため、上記の一体化CO吸蔵およびCO転換実験を60倍にスケールアップした一体化CO吸蔵およびCO転換実験を行った。
吸収転換触媒には活性の高かったNa/γ-Alを60g用いた。実験は前述の手順で行った。ただし、実験条件は以下の通り変更した。反応器内に逐次供給するガスは400ppm CO、N、Hとし、それぞれの供給時間は12時間、15分間、150分間とした。各ガスの供給流量はHのみ200mL/分とし、その他のガスは1000mL/分で一定とした。反応温度は500℃とした。出口ガスの分析では、前述のガス分析計に加えて、マイクロガスクロマトグラフ(Agilent490、Agilent Technologies)も用いた。その際、所定の期間出口ガスをガスバッグに捕集し、分析のためのサンプルとした。
【0059】
図8は、スケールアップしたCO吸蔵および転換での出口ガス濃度の測定結果を示す。図8(a)は、400ppm CO、Nを逐次供給したCO吸蔵プロセス中の出口ガス濃度の測定結果を示す。このプロセスでは、大気濃度(400ppm)のCOでも吸収転換触媒に効率的に吸収され、実験開始から約4時間の間COはほとんど流出しなかった。図8(b)は、Hを供給した転換プロセス中の出口ガス濃度の測定結果を示す。このプロセスでは、Hを供給し始めると、COが速やかに放出された。一方、COやCHの濃度は最大でも約1vol%以下であり、CO転換の高い選択性が観察された。これは吸収転換触媒に吸収されたCOとHの間で逆シフト反応が進行したことを意味する。COのピーク濃度は20%を超えており、CO供給濃度の500倍以上に達した。
COピーク周辺の出口ガスをサンプルとして捕集し、マイクロガスクロマトグラフにより組成分析を行った結果、COとHの濃度はそれぞれ14.5%、48.1%であった。したがって、H/CO比は3.3と実用的な合成ガスの組成に近い値を達成できた。この結果は、COの生成量と未反応のH量を適切に制御することにより、望ましいH/CO比の合成ガスを製造できる可能性を示している。
【0060】
以上の通り、担体に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属等の成分が担持された吸収転換触媒を用いて、吸収転換触媒とCOを接触させて、COを製造する実施例の製造方法により、効率よく製造することができることが示された。さらにこの反応は450℃程度の比較的低温で効率よく起こるために、製造のためのコストの低減にも寄与する。
【0061】
以上の開示から把握された発明を例示すれば以下の通りである。
[1](a)担体、並びに
前記担体に担持された、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む添加物を含み、
Ni、Fe、Co、Cr、Cu、Ru、In、Rh、Pt、Au、及びPd元素を実質的に含まない、
吸収転換触媒を準備する工程と、
(b)前記吸収転換触媒に二酸化炭素を含むガスを接触させて、前記吸収転換触媒に二酸化炭素を吸蔵させる工程と、
(c)二酸化炭素を吸蔵させた前記吸収転換触媒に還元性ガスを接触させて、一酸化炭素を生成する工程と、
を含む、一酸化炭素の製造方法。
[2]前記担体が、アルミナ担体、及びジルコニア担体からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の方法。
[3]工程(a)の前記添加物が、Na、K、およびCaからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]工程(a)の前記添加物が、Naを含む、[3]に記載の方法。
[5]工程(c)が、400~600℃で行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]工程(c)における還元性ガスが、水素含有ガスである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]工程(b)における二酸化炭素が、大気中あるいは排ガス中から直接回収した二酸化炭素である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
前記装置は、二酸化炭素回収層、一酸化炭素合成反応層、および前記二酸化炭素回収層と前記一酸化炭素合成反応層とを連結する触媒循環路を含む循環流動層型反応装置である、前記装置。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
前記装置は、二酸化炭素回収および一酸化炭素合成反応層を含む固定層型反応装置である、前記装置。
【産業上の利用可能性】
【0062】
発電所や工場等からの排出COのカーボンリサイクルに適用する他に、大気のCO浄化等への適用が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8