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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】シャワーヘッド及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20241119BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241119BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 A
H01L21/205
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021097606
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022189180
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】堀田 隼史
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 健索
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 英亮
(72)【発明者】
【氏名】掛川 崇
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝哉
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0174827(US,A1)
【文献】特開2020-161596(JP,A)
【文献】特開2016-117933(JP,A)
【文献】特開2018-100439(JP,A)
【文献】特開2015-175060(JP,A)
【文献】特開2018-011032(JP,A)
【文献】特表2013-541182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/31
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワープレートと、
ガス流路が設けられ、前記シャワープレートを固定するベース部材と、
前記シャワープレートと前記ベース部材の間に形成されるガス拡散空間に配置され、前記ガス流路に接続され、前記ガス流路から供給されたガスを水平方向に前記ガス拡散空間内に吐出する複数の吐出口を有する、複数のガス供給コマと、を備え、
複数の前記ガス供給コマは、同心の複数の円周上に配置され、最外周の円周上に配置される複数の外側ガス供給コマを含み、
前記外側ガス供給コマは、該外側ガス供給コマの側面を周方向に等分したうちの1つの方向を除いたその他の方向の側面のそれぞれにおいて前記吐出口を有し、前記1つの方向の側面において前記吐出口を有さず、
複数の前記外側ガス供給コマは、前記最外周の円周上に等間隔に配置され、
前記外側ガス供給コマの中心から一の周方向で隣接する外側ガス供給コマの中心に向かう方向の側面に前記吐出口を有し、
前記外側ガス供給コマの中心から前記一の周方向とは逆向きの他の周方向で隣接する外側ガス供給コマの中心に向かう方向の側面に前記吐出口を有さず、
複数の前記外側ガス供給コマ前記吐出口から吐出されたガスは、前記一の周方向の旋回流を形成する、
シャワーヘッド。
【請求項2】
前記外側ガス供給コマの吐出方向のベクトル成分の合計は、前記ベース部材の中心を軸とした周方向の成分を有する、
請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
複数の前記外側ガス供給コマは、前記ベース部材の中心を軸として、同心円状に配置される、
請求項1または請求項2に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記外側ガス供給コマの内側に、複数の内側ガス供給コマが配置され、
前記内側ガス供給コマの吐出方向のベクトル成分の合計は、ゼロである、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
複数の前記内側ガス供給コマは、前記ベース部材の中心を軸として、同心円状に配置され、
前記内側ガス供給コマの吐出方向は、互いに等しい、
請求項4に記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
前記内側ガス供給コマのガス吐出口は、8か所であり、
前記外側ガス供給コマのガス吐出口は、7か所である、
請求項4または請求項5に記載のシャワーヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のシャワーヘッドを有する、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッド及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前記処理室に設けられ、基板が載置される載置部と、前記載置部に対向して設けられ、中央から外周に向けて末広がりの形状の傾斜面構造を有する天井部と、前記天井部の中央領域に設けられ、前記天井部の周方向に沿ってガス吐出口が形成された複数のガス供給部と、前記複数のガス供給部を下方側から覆うように設けられると共に、前記載置部と対向す面に複数のガス供給口が形成されたシャワーヘッドと、前記処理室内の真空排気を行う排気部と、を備え、前記シャワーヘッドの外縁は、前記載置部に載置された基板の外縁よりも内側に位置していることを特徴とする成膜装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、シャワープレートと上蓋との間にガス分散ノズルが設けられ、ガス導管へ導入されたガスがガス分散ノズルで分散され、シャワープレートを貫通するガス吐出口を通過し、基板上へ供給される、薄膜形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-70249号公報
【文献】特開2005-303292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板に成膜等の処理を施す基板処理装置において、膜厚の面内分布の改善が求められている。
【0006】
上記課題に対して、一側面では、膜厚の面内分布を改善するシャワーヘッド及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、シャワープレートと、ガス流路が設けられ、前記シャワープレートを固定するベース部材と、前記シャワープレートと前記ベース部材の間に形成されるガス拡散空間に配置され、前記ガス流路に接続され、前記ガス流路から供給されたガスを水平方向に前記ガス拡散空間内に吐出する複数の吐出口を有する、複数のガス供給コマと、を備え、複数の前記ガス供給コマは、同心の複数の円周上に配置され、最外周の円周上に配置される複数の外側ガス供給コマを含み、前記外側ガス供給コマは、該外側ガス供給コマの側面を周方向に等分したうちの1つの方向を除いたその他の方向の側面のそれぞれにおいて前記吐出口を有し、前記1つの方向の側面において前記吐出口を有さず、複数の前記外側ガス供給コマは、前記最外周の円周上に等間隔に配置され、前記外側ガス供給コマの中心から一の周方向で隣接する外側ガス供給コマの中心に向かう方向の側面に前記吐出口を有し、前記外側ガス供給コマの中心から前記一の周方向とは逆向きの他の周方向で隣接する外側ガス供給コマの中心に向かう方向の側面に前記吐出口を有さず、複数の前記外側ガス供給コマ前記吐出口から吐出されたガスは、前記一の周方向の旋回流を形成する、シャワーヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、膜厚の面内分布を改善するシャワーヘッド及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る基板処理装置の断面模式図の一例。
図2】本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッドの構造を説明する断面模式図の一例。
図3】本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッドの構造を説明する平面図の一例。
図4】参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッドの構造を説明する平面図の一例。
図5】面内分布及びガス流速の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
<基板処理装置>
本実施形態に係る基板処理装置について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置の断面模式図の一例である。図2は、本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の構造を説明する断面模式図の一例である。
【0012】
基板処理装置は、ウェハ等の基板Wに対して、原料ガスとしてのWClガス及び反応ガスとしてのHガスを供給して、基板Wの表面に金属膜であるタングステン膜を成膜する装置である。基板処理装置は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)装置等により構成される。
【0013】
図1及び図2に示されるように、基板処理装置は、処理容器1、基板載置台(ステージ)2、シャワーヘッド3、排気部4、ガス供給機構5、制御装置6を有する。
【0014】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有する。処理容器1の側壁には基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成され、搬入出口11はゲートバルブ12で開閉可能となっている。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。また、排気ダクト13の外壁には排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。天壁14と排気ダクト13の間はシールリング15で気密にシールされている。区画部材16は、基板載置台2(およびカバー部材22)が後述する処理位置へと上昇した際、処理容器1の内部を上下に区画する。
【0015】
基板載置台2は、処理容器1内で基板Wを水平に支持する。基板載置台2は、基板Wに対応した大きさの円板状をなし、支持部材23に支持されている。基板載置台2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、基板載置台2の上面の基板載置面近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することにより、基板Wを所定の温度に制御するようになっている。
【0016】
基板載置台2には、基板載置面の外周領域、及び基板載置台2の側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスからなるカバー部材22が設けられている。
【0017】
支持部材23は、基板載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。昇降機構24により基板載置台2が支持部材23を介して、図1で実線で示す処理位置と、その下方の図1で二点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられており、処理容器1の底面と鍔部25の間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、基板載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
【0018】
処理容器1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の基板支持ピン27が設けられている。基板支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降可能になっており、搬送位置にある基板載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて基板載置台2の上面に対して突没可能となっている。このように基板支持ピン27を昇降させることにより、基板搬送機構(図示せず)と基板載置台2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0019】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、基板載置台2に対向するように設けられている。天壁14には、シャワーヘッド3(後述するガス供給路33)と接続するガス供給路36が設けられている。
【0020】
基板載置台2が処理位置に存在した状態では、シャワーヘッド3(後述するシャワープレート32)と基板載置台2との間に処理空間37が形成され、シャワーヘッド3(後述するシャワープレート32)と基板載置台2のカバー部材22の上面が近接して環状隙間38が形成される。
【0021】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気ダクト13の排気口13bに接続された排気配管41と、APC(Auto Pressure Controller)バルブ42と、開閉バルブ43と、真空ポンプ44と、を有する。排気配管41の一端は排気ダクト13の排気口13bに接続され、他端は真空ポンプ44の吸入ポートに接続される。排気ダクト13と真空ポンプ44との間には、上流側から順に、APCバルブ42、開閉バルブ43が設けられる。APCバルブ42は、排気経路のコンダクタンスを調整して処理空間37の圧力を調整する。開閉バルブ43は、排気配管41の開閉を切り替える。処理に際して、区画部材16及び基板載置台2(カバー部材22)は、処理容器1の内部を、処理空間37を含む上部空間と、基板載置台2の裏面側の下部空間と、に区画する。これにより、処理空間37内のガスは、環状隙間38、スリット13aを介して排気ダクト13の内部の環状空間に至り、排気ダクト13の排気口13bから排気部4の真空ポンプ44により排気配管41を通って排気される。なお、下部空間は、図示しないパージガス供給機構によりパージ雰囲気となっている。このため、処理空間37のガスは、下部空間には流入しない。
【0022】
ガス供給機構5は、ガス供給路36に原料ガス、反応ガス、パージガスを供給する。以下の説明において、原料ガスはWCl、反応ガスはH、パージガスはNとして、説明する。ガス供給路36に供給されたガスは、シャワーヘッド3から処理空間37に供給される。
【0023】
制御装置6は、基板処理装置の各部の動作を制御する。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAM等の記憶領域に格納されたレシピに従って、所望の処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する装置の制御情報が設定されている。制御情報は、例えばガス流量、圧力、温度、プロセス時間であってよい。なお、レシピ及び制御装置6が使用するプログラムは、例えばハードディスク、半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で所定の位置にセットされ、読み出されるようにしてもよい。
【0024】
制御装置6は、原料ガス供給工程、第1パージガス供給工程、反応ガス供給工程、第2パージガス供給工程を繰り返して、基板Wにタングステン膜を成膜する。
【0025】
原料ガス供給工程において、制御装置6は、ガス供給機構5を制御して、処理空間37に原料ガス(WCl)を供給する。これにより、基板Wの表面に原料ガスが吸着する。
【0026】
第1パージガス供給工程において、制御装置6は、ガス供給機構5を制御して、処理空間37にパージガス(N)を供給する。これにより、処理空間37内の余剰の原料ガス等をパージする。
【0027】
反応ガス供給工程において、制御装置6は、ガス供給機構5を制御して、処理空間37に反応ガス(H)を供給する。これにより、反応ガスと、基板Wの表面に吸着された原料ガスと、が反応し、基板Wの表面にタングステン膜を成膜する。
【0028】
第2パージガス供給工程において、制御装置6は、ガス供給機構5を制御して、処理空間37にパージガス(N)を供給する。これにより、処理空間37内の余剰の反応ガス等をパージする。
【0029】
このように、原料ガス供給工程、第1パージガス供給工程、反応ガス供給工程、第2パージガス供給工程を所定回数繰り返すことにより、基板Wにタングステン膜を成膜する。
【0030】
<シャワーヘッドの構造>
次に、シャワーヘッド3の構造について、図2を用いて更に説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の構造を説明する断面模式図の一例である。図3は、本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の構造を説明する平面図の一例である。なお、図2及び図3において、ガスの流れを矢印で示す。
【0031】
シャワーヘッド3は、処理容器1の天壁14に固定されたベース部材31と、ベース部材31の下に接続されたシャワープレート32と、を有する。ベース部材31には、上流側がガス供給路36(図1参照)と接続され、下流側が複数に分岐するガス供給路33が形成されている。ベース部材31とシャワープレート32との間には、ガス拡散空間34が形成されている。シャワープレート32の平坦面には、複数のガス吐出孔35が形成されている。ガス供給路36(図1参照)から供給されたガスは、ガス供給路33、ガス拡散空間34、ガス吐出孔35を流れ、処理空間37に供給される。そして、処理空間37内のガスは環状隙間38から排気ダクト13(図1参照)へと排気される。
【0032】
また、ガス拡散空間34には、ガス供給コマ(ガス供給部材)100が設けられている。
【0033】
ガス供給コマ100は、ガス供給路33の下端のそれぞれに接続される。ガス供給コマ100は、中空の円柱形状を有している。ガス供給コマ100の上方は開口(図示せず)を有し、ガス供給コマ100の中空空間とガス供給路33とが連通する。ガス供給コマ100の底面は、閉塞されている。ガス供給コマ100の側面(円周面)は、水平方向にガスを吐出する吐出口を複数備えている。これにより、ガス供給路36(図1参照)から供給されたガスは、ガス供給路33からガス供給コマ100に供給され、ガス供給コマ100の吐出口から水平方向にガス拡散空間34内に供給される。また、分岐するガス供給路33は、ガス供給路36から各ガス供給コマ100までの流路長がそれぞれ等しくなるように形成されている。
【0034】
ここで、図3に示すように、ガス供給コマ100は、円周(二点鎖線で示す)上に等間隔に配置される4つのガス供給コマ(内側ガス供給部材)101~104と、円周(二点鎖線で示す)上に等間隔に配置される8つのガス供給コマ(ガス供給部材)105~112と、を有している。ガス供給コマ105~112は、ベース部材31の中心を軸として、同心円状に等間隔に配置される。ガス供給コマ101~104は、ガス供給コマ101~104よりも内側で、ベース部材31の中心を軸として、同心円状に等間隔に配置される。
【0035】
図3において、ガス供給コマ100(101~112)のガスの吐出方向を矢印で示す。
【0036】
ガス供給コマ101~104は、平面視して放射方向へガスを吐出する吐出口を有している。ガス供給コマ101~104の吐出口は、周方向において8つ等間隔に設けられている。また、8つの吐出口は、同径に形成されている。また、ガス供給コマ101~104の吐出方向は、互いに等しくなるように形成されている。これにより、基板Wの中心付近における成膜処理の均一性を向上させることができる。
【0037】
ガス供給コマ105~112は、平面視して放射方向へガスを吐出する吐出口を有している。ガス供給コマ105~112の吐出口は、周方向において8等分したうちの7つの方向に設けられている。また、7つの吐出口は、同径に形成されている。
【0038】
ここで、円環状に配置されるガス供給コマ105~112は、一方の隣接するガス供給コマの中心に向かう方向に吐出口が設けられ、他方の隣接するガス供給コマの中心に向かう方向に吐出口が設けられていない。具体的には、ガス供給コマ105において、ガス供給コマ105の中心から一方の隣接するガス供給コマ112の中心に向かう方向の側面に吐出口105aが設けられ、ガス供給コマ105の中心から他方の隣接するガス供給コマ106の中心に向かう方向の側面105bに吐出口が設けられていない。また、ガス供給コマ106において、ガス供給コマ106の中心から一方の隣接するガス供給コマ105の中心に向かう方向の側面に吐出口106aが設けられ、ガス供給コマ106の中心から他方の隣接するガス供給コマ107の中心に向かう方向の側面106bに吐出口が設けられていない。これにより、ガス供給コマ105の中心と隣接するガス供給コマ106の中心とを結ぶ線(図3において破線で示す。)上において、ガスが向かい合って流れることを防止し、ガス圧が高くなる領域が生じることを防止することができる。
【0039】
同様に、ガス供給コマ107において、ガス供給コマ107の中心から一方の隣接するガス供給コマ106の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられ、ガス供給コマ107の中心から他方の隣接するガス供給コマ108の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。ガス供給コマ108において、ガス供給コマ108の中心から一方の隣接するガス供給コマ107の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられ、ガス供給コマ108の中心から他方の隣接するガス供給コマ109の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。ガス供給コマ109において、ガス供給コマ109の中心から一方の隣接するガス供給コマ108の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられ、ガス供給コマ109の中心から他方の隣接するガス供給コマ110の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。ガス供給コマ110において、ガス供給コマ110の中心から一方の隣接するガス供給コマ109の中心に向かう方向に吐出口が設けられ、ガス供給コマ110の中心から他方の隣接するガス供給コマ111の側面の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。ガス供給コマ111において、ガス供給コマ111の中心から一方の隣接するガス供給コマ110の中心に向かう方向に吐出口が設けられ、ガス供給コマ111の中心から他方の隣接するガス供給コマ112の側面の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。ガス供給コマ112において、ガス供給コマ112の中心から一方の隣接するガス供給コマ111の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられ、ガス供給コマ112の中心から他方の隣接するガス供給コマ105の中心に向かう方向の側面に吐出口が設けられていない。これにより、ガス供給コマの中心と隣接するガス供給コマの中心とを結ぶ線上において、ガスが向かい合って流れることを防止し、ガス圧が高くなる領域が生じることを防止することができる。
【0040】
また、ガス供給コマ105の7つの吐出口は、周方向において8等分したうちの1つの方向の側面105bに設けられておらず、かつ、同じ開口径を有している。このため、ガス供給コマ105の7つの吐出口の吐出方向のベクトル成分の合計は、ベース部材31の中心を軸として、周方向成分を有する。図3の例では、ガス供給コマ105の吐出方向のベクトル成分の合計は、反時計回り方向の周方向成分を有する。ガス供給コマ105の吐出方向のベクトル成分の合計は、ベース部材31の中心を軸として、外側に向かう径方向成分を有する。同様に、ガス供給コマ106~112の吐出方向のベクトル成分の合計は、反時計回り方向の周方向成分及び外側に向かう径方向成分を有する。即ち、ガス供給コマ105~112の吐出方向のベクトル成分は、同一(図3の例では反時計回り)の周方向成分を有する。これにより、複数のガス供給コマ105~112の吐出口から吐出されたガスは、反時計回りの旋回流200を形成する。
【0041】
一方、ガス供給コマ101の8つの吐出口は、周方向に均等に配置され、かつ、同じ開口径を有している。このため、ガス供給コマ101の8つの吐出口の吐出方向のベクトル成分の合計は、ゼロである。同様に、ガス供給コマ102~104の吐出方向のベクトル成分の合計は、ゼロである。
【0042】
ここで、参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッド3Xの構造について、図4を用いて説明する。図4は、参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッド3Xの構造を説明する平面図の一例である。
【0043】
参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッド3Xの構造(図4参照)は、本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の構造(図3参照)と比較して、ガス供給コマ100の構造が異なっている。具体的には、全てのガス供給コマ100が、周方向において8つ等間隔に配置された吐出口を有する。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0044】
シャワーヘッド3Xにおいて、隣接するガス供給コマ100から吐出されたガスが衝突する領域210を有する。
【0045】
本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の効果について、参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッド3Xと対比しつつ説明する。図5は、膜厚分布及びガス流速の一例を示す図である。
【0046】
ここでは、シャワーヘッド3(図3参照)を有する本実施形態に係る基板処理装置及びシャワーヘッドX3(図4参照)を有する参考例に係る基板処理装置を用いて、基板Wにタングステン膜を成膜した。膜厚分布をドットの濃淡で示す。膜厚が厚いほど濃いドットを付し、膜厚が薄いほど淡いドットを付す。また、本実施形態に係る基板処理装置及び参考例に係る基板処理装置について、ガス供給コマ100とから吐出されるガス流速のシミュレーションを行った。ガス流速のシミュレーション結果をドットの濃淡で示す。ガス流速が速いほど濃いドットを付し、ガス流速が遅いほど淡いドットを付す。
【0047】
参考例に係る基板処理装置のシャワーヘッド3Xの構造(図4参照)では、流速のシミュレーション結果に示すように、ガス供給コマ100と隣接するガス供給コマ100との間に吐出されたガスが衝突(矢印参照)することで、流速が低下する位置411が生じている。また、内側のガス供給コマ100から吐出されたガスが外周側(排気ダクト13)へと向かう途中に流速が低下する位置412が生じている。これにより、参考例の膜厚分布に示すように、ガス供給コマ100から吐出されたガスが合流する位置401,402に、膜厚の厚い領域が生じている。換言すれば、ガス供給コマ100と隣接するガス供給コマ100との間の吐出されたガスが衝突する領域210(図4参照)において、膜厚の厚い領域が生じている。なお、参考例に係る膜厚の1σ/Ave(標準偏差を平均膜厚で割った値)は6.1%となった。
【0048】
これに対し、本実施形態に係る基板処理装置のシャワーヘッド3の構造(図3参照)では、旋回流200(図3参照)を形成する。即ち、流速のシミュレーション結果に示すように、ガス供給コマ105と隣接するガス供給コマ106との間の位置421において、ガスは1方向(ガス供給コマ106からガス供給コマ105に向かう方向)に流れる。これにより、本実施形態の膜厚分布に示すように、膜厚の均一性を向上する。なお、本実施形態に係る膜厚の1σ/Aveは2.9%となり、参考例と比較して膜厚の均一性を向上する。
【0049】
このように、ガス供給コマ100を設けることにより、基板Wに成膜されるタングステン膜の面内均一性を向上させることができる。
【0050】
今回開示された実施形態に係る基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
W 基板
1 処理容器
2 基板載置台(ステージ)
3 シャワーヘッド
4 排気部
5 ガス供給機構
6 制御装置
31 ベース部材
32 シャワープレート
33 ガス供給路
34 ガス拡散空間
35 ガス吐出孔
36 ガス供給路
37 処理空間
38 環状隙間
100 ガス供給コマ
101~104 ガス供給コマ(内側ガス供給部材)
105~112 ガス供給コマ(ガス供給部材)
200 旋回流
図1
図2
図3
図4
図5