(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】管理システム、管理方法及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241119BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20241119BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
G05B19/418 Z
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2022572162
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045779
(87)【国際公開番号】W WO2022138272
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020217779
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】守屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】茂木 弘典
(72)【発明者】
【氏名】片岡 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】松沢 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】魚山 和哉
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033525(JP,A)
【文献】特開2013-115118(JP,A)
【文献】特開2020-120004(JP,A)
【文献】特開2020-027556(JP,A)
【文献】特開2020-201545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G05B 19/418
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板製造プロセスを管理する管理システムであって、
前記基板製造プロセスを実行する基板処理装置
における所定の事象を検出する複数のエージェントと、
いずれかのエージェントにおいて所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいてエージェント間で情報を送受信する伝送経路と、を有し、
前記エージェントは、
他のエージェントとの間で情報の送受信が必要であると判断した場合に、前記伝送経路を介して
前記他のエージェントとの間で前記検出された事象に基づく情報を送受信し、前記基板製造プロセス全体の指標値が最適化されるように、前記送受信される情報に基づいて、前記基板処理装置への指示を導出する、管理システム。
【請求項2】
前記基板製造プロセスから取得される情報に基づいて、前記基板処理装置の状態を推定する状態推定モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記基板製造プロセスから取得される情報を、前記状態推定モデルに入力することで推定された、前記基板処理装置の状態を取得する取得部と、
前記取得された基板処理装置の状態から、前記基板処理装置における所定の事象を検出する検出部と
を有する請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記モデル記憶部は、更に、前記基板処理装置の制御システムを再現する予測モデルを記憶し、
前記管理システムは、更に、
他のエージェントとの間で情報の送受信が必要か否かを、前記検出された事象の種類に基づいて判断する判断部と、
他のエージェントとの間で情報の送受信が必要であると判断された場合、前記伝送経路を介して接続された他のエージェントに対して、前記検出された事象に基づく情報を送信する送信部と、
前記検出された事象に基づく情報を送信したことに対する前記他のエージェントからの応答を受信する受信部と、
前記他のエージェントとの間で送受信された情報を記憶する情報記憶部と、
前記他のエージェントからの応答に基づいて算出された目標値を前記予測モデルが出力するよう、制御値を最適化する最適化部と、
最適化された前記制御値を用いて、前記制御システムを制御する制御部と、
を有する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記判断部は、
前記検出された事象の種類に応じた目標値を前記予測モデルが出力するよう、前記最適化部が制御値を最適化した場合の前記予測モデルの出力と、前記検出された事象の種類に応じた目標値との誤差に基づいて、制御可否を判定することで、他のエージェントとの間で情報の送受信が必要か否かを判断する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記取得部は、
最適化された前記制御値を用いて制御したことに応じて、前記基板製造プロセスから新たに取得した情報を、前記状態推定モデルに入力することで、前記基板処理装置の状態を新たに取得する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項6】
前記エージェントは、更に、
前記新たに取得した情報に基づいて、前記予測モデルの予測精度を検証する検証部を更に有し、
前記検証部は、
前記予測精度に基づいて前記予測モデルのモデルパラメータを調整する、請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記複数のエージェントは、それぞれ、他の全てのエージェントと、または、他の一部のエージェントと前記伝送経路を介して接続される、請求項1に記載の管理システム。
【請求項8】
前記複数のエージェントは、それぞれ、前記伝送経路により接続された他のエージェントとの間で情報を送受信する際の送受信方向が、接続先ごとに予め規定されている、請求項1に記載の管理システム。
【請求項9】
前記複数のエージェントは、前記基板製造プロセスの動作単位に基づく階層構造において、各階層に対応付けて配され、
前記伝送経路は、前記検出された事象に基づく情報が、異なる階層に対応付けられたエージェント間で送受信されるように、前記複数のエージェント間を接続する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項10】
前記複数のエージェントは、前記検出された事象に基づく情報を、異なる階層に対応付けられたエージェントとの間で送受信する場合の階層間のルールを、対応付けられた階層ごとに記憶するルール記憶部を更に有する、請求項9に記載の管理システム。
【請求項11】
前記送信部は、
他の階層に対応付けられたエージェントから受信した情報に基づいて算出した情報を、前記階層間のルールに従って他の階層に対応付けられたエージェントに送信する、請求項10に記載の管理システム。
【請求項12】
前記伝送経路は、異なるサイバー空間にそれぞれ含まれる複数のエージェントのうち、対応するエージェント間で情報が送受信されるよう、異なるサイバー空間にそれぞれ含まれるエージェント同士を接続する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項13】
基板製造プロセスを管理する管理方法であって、
複数のエージェントが、前記基板製造プロセスを実行する基板処理装置
における所定の事象を検出する検出工程と、
いずれかのエージェントにおいて所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいてエージェント間で情報を、伝送経路を介して送受信する送受信工程と、を有し、
前記エージェントは、
他のエージェントとの間で情報の送受信が必要であると判断した場合に、前記伝送経路を介して
前記他のエージェントとの間で前記検出された事象に基づく情報を送受信し、前記基板製造プロセス全体の指標値が最適化されるように、前記送受信される情報に基づいて、前記基板処理装置への指示を導出する、管理方法。
【請求項14】
基板製造プロセスを管理する管理システムのコンピュータを、
前記基板製造プロセスを実行する基板処理装置
における所定の事象を検出する複数のエージェントと、
いずれかのエージェントにおいて所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいてエージェント間で情報を送受信する伝送経路として機能させるプログラムであって、
前記エージェントは、
他のエージェントとの間で情報の送受信が必要であると判断した場合に、前記伝送経路を介して
前記他のエージェントとの間で前記検出された事象に基づく情報を送受信し、前記基板製造プロセス全体の指標値が最適化されるように、前記送受信される情報に基づいて、前記基板処理装置への指示を導出する、管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システム、管理方法及び管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板製造プロセスの分野においては、スマートファクトリの実現に向けて、種々の取り組みがなされている。具体的には、基板製造プロセスにおいて測定される多様なデータ(フィジカル空間におけるデータ)を管理システムが収集し、サイバー空間にてフィジカル空間を再現するデジタルツイン技術の開発が進められている。
【0003】
一方で、スマートファクトリの実現に向けては、更に、フィジカル空間において発生する様々な事象に適切に対処するための仕組みを構築し、基板製造プロセスを実行する各基板処理装置を自律化させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/050072号
【文献】特表2020-518079号公報
【文献】特開2018-092511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板処理装置を自律化させる管理システム、管理方法及び管理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による管理システムは、例えば、以下のような構成を有する。即ち、
基板製造プロセスを管理する管理システムであって、
前記基板製造プロセスを実行する基板処理装置における所定の事象を検出する複数のエージェントと、
いずれかのエージェントにおいて所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいてエージェント間で情報を送受信する伝送経路と、を有し、
前記エージェントは、他のエージェントとの間で情報の送受信が必要であると判断した場合に、前記伝送経路を介して前記他のエージェントとの間で前記検出された事象に基づく情報を送受信し、前記基板製造プロセス全体の指標値が最適化されるように、前記送受信される情報に基づいて、前記基板処理装置への指示を導出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板処理装置を自律化させる管理システム、管理方法及び管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、基板製造プロセスを実行する複数の基板処理装置を備える、サイバーフィジカルシステムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第1の図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第2の図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第3の図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ガス関連デジタルツインの機能構成の概要を示す図である。
【
図8】
図8は、ガス関連デジタルツインの機能構成の詳細を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、ガス流量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9B】
図9Bは、調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、Fabレイヤデジタルツインの機能構成の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、Fabレイヤデジタルツインの機能構成の詳細を示す図である。
【
図16】
図16は、生産管理処理時に階層間で送受信される会話内容の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、生産管理処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
<サイバーフィジカルシステムのシステム構成>
はじめに、基板製造プロセスを実行する複数の基板処理装置を備える、サイバーフィジカルシステムのシステム構成について説明する。
図1は、基板製造プロセスを実行する複数の基板処理装置を備える、サイバーフィジカルシステムのシステム構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、サイバーフィジカルシステム100は、サーバ装置110_1~110_3と、管理装置120_1~120_nと、基板処理装置130_1~130_nと、管理者端末140とを有する。
【0012】
サイバーフィジカルシステム100において、サーバ装置110_1~110_3と、管理装置120_1~120_nと、管理者端末140とは、ネットワーク150を介して通信可能に接続される。
【0013】
サーバ装置110_1~110_3は、サイバーフィジカルシステム100全体を統括する装置である。サーバ装置110_1~110_3は、例えば、各基板処理装置130_1~130_nが実行する基板製造プロセスの、製造管理、データ管理、装置管理、及び、各管理装置120_1~120_nがサイバー空間で用いるモデルの管理等を行う。
【0014】
管理装置120_1~120_nは、それぞれ、基板処理装置130_1~130_nと接続されており、管理システムを構成する。
【0015】
また、管理装置120_1~120_nは、対応する基板処理装置130_1~130_nの機能を再現する各種モデルを有し、サイバー空間を形成する。管理装置120_1~120_nは、基板処理装置130_1~130_nにおいて取得されたフィジカル空間におけるデータを収集することで、
・基板処理装置130_1~130_nの状態の把握、
・基板処理装置130_1~130_nにおいて発生した事象の検出、
・検出した事象に対処するための他の管理装置との連携、
・検出した事象に対処するための、基板処理装置130_1~130_nへの指示、
等を行い、フィジカル空間において発生する様々な事象に適切に対処する。
【0016】
このように、管理装置120_1~120_nは、基板処理装置130_1~130_nにおいて発生する様々な事象を、サイバー空間において適切に対処し、基板処理装置130_1~130_nへの指示を導出する。これにより、管理装置120_1~120_nによれば、基板処理装置を自律化させることができる。
【0017】
基板処理装置130_1~130_nは、基板製造プロセスを実行する装置であり、フィジカル空間を構成する。基板処理装置130_1~130_nには、例えば、成膜処理を実行する装置、リソグラフィ処理を実行する装置、エッチング処理を実行する装置、洗浄処理を実行する装置等が含まれる。基板処理装置130_1~130_nは、基板製造プロセスの実行中に取得したフィジカル空間におけるデータを、管理装置120_1~120_nに送信する。
【0018】
管理者端末140は、サイバーフィジカルシステム100を管理する管理者が操作する端末である。管理者端末140は、例えば、管理装置120_1~120_nが有する各種モデルを生成する際に用いられる。
【0019】
なお、
図1に示すサイバーフィジカルシステム100では、管理装置120_1~120_nと、基板処理装置130_1~130_nとが別体として構成される場合について示した。しかしながら、管理装置120_1~120_nと、基板処理装置130_1~130_nとは、一体として構成されてもよい。
【0020】
<管理装置のハードウェア構成>
次に、管理装置120_1~120_nのハードウェア構成について説明する。なお、管理装置120_1~120_nは、いずれも同様のハードウェア構成を有するため、ここでは、
図2を用いてまとめて説明する。
図2は、管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0021】
図2に示すように、管理装置120_1~120_nは、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、I/F(Interface)装置204、通信装置205、ドライブ装置206を有する。なお、管理装置120_1~120_nの各ハードウェアは、バス207を介して相互に接続されている。
【0022】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラム(例えば、後述する管理プログラム等)をメモリ202上に読み出して実行する。
【0023】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータを形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0024】
補助記憶装置203は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0025】
I/F装置204は、外部装置の一例である基板処理装置130_1~130_nと、管理装置120_1~120_nとを接続する接続デバイスである。
【0026】
通信装置205は、ネットワーク150を介して他の装置(本実施形態では、サーバ装置110_1~110_3、他の管理装置、管理者端末140等)と通信するための通信デバイスである。
【0027】
ドライブ装置206は記録媒体210をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体210には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体210には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0028】
なお、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体210がドライブ装置206にセットされ、該記録媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置206により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、通信装置205を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0029】
<サイバーフィジカルシステムの機能構成(1)>
次に、サイバーフィジカルシステム100の機能構成について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第1の図である。
【0030】
図3に示すように、管理装置120_1~120_nにより形成されるサイバー空間310には、基板処理装置130_1~130_nの機能を再現する各種モデルを含む複数のデジタルツインが含まれる。
【0031】
図3の例は、複数のデジタルツインとして、プロセス全体関連デジタルツイン311、APC/AEC関連デジタルツイン312、プロセスレシピ関連デジタルツイン313、メンテナンス関連デジタルツイン314が含まれることを示している。また、
図3の例は、複数のデジタルツインとして、搬送関連デジタルツイン315、ガス関連デジタルツイン316、温度関連デジタルツイン317、パーティクル関連デジタルツイン318、オペレーション関連デジタルツイン319が含まれることを示している。
【0032】
また、
図3に示すように、サイバー空間310に含まれる各デジタルツインは、他の一部のデジタルツインと伝送経路(サイバー空間310内の点線参照)を介して接続され、他の一部のデジタルツインとの間で情報を送受信する。例えば、プロセス全体関連デジタルツイン311は、APC/AEC関連デジタルツイン312、メンテナンス関連デジタルツイン314、搬送関連デジタルツイン315と、それぞれ伝送経路を介して接続され、情報を送受信する。
【0033】
なお、伝送経路を介して接続された接続元のデジタルツインには、接続先のデジタルツインとの間で情報の送受信方向が予め規定されているものとする。
【0034】
また、
図3に示すように、サイバー空間310に含まれる特定のデジタルツインには、フィジカル空間330におけるデータが入力される。これにより、サイバー空間310に含まれる特定のデジタルツインでは、状態の把握、事象の検出、他のデジタルツインとの連携、基板処理装置への指示等(以下、これらを「デジタルツイン処理」と称す)を行うことができる。
【0035】
図3の例は、ガス関連デジタルツイン316に、フィジカル空間におけるデータとして、ガス流量情報、温度情報、圧力情報等321が入力されることで、ガス関連デジタルツイン316が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、ガス関連デジタルツイン316は、他のデジタルツインと連携する際、プロセスレシピ関連デジタルツイン313及び温度関連デジタルツイン317との間で情報を送受信する。
【0036】
また、
図3の例は、温度関連デジタルツイン317に、フィジカル空間におけるデータとして、ガス流量情報、温度情報、圧力情報等321が入力されることで、温度関連デジタルツイン317が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、温度関連デジタルツイン317は、他のデジタルツインと連携する際、プロセスレシピ関連デジタルツイン313及びガス関連デジタルツイン316との間で情報を送受信する。
【0037】
また、
図3の例は、パーティクル関連デジタルツイン318に、フィジカル空間におけるデータとして、パーティクル情報323が入力されることで、パーティクル関連デジタルツイン318が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、パーティクル関連デジタルツイン318は、他のデジタルツインと連携する際、メンテナンス関連デジタルツイン314との間で情報を送受信する。
【0038】
また、
図3の例は、プロセスレシピ関連デジタルツイン313に、フィジカル空間におけるデータとして、メンテナンス情報324、装置構成情報325が入力されることで、プロセスレシピ関連デジタルツイン313が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、プロセスレシピ関連デジタルツイン313は、他のデジタルツインと連携する際、ガス関連デジタルツイン316、温度関連デジタルツイン317、APC/AEC関連デジタルツイン312との間で情報を送受信する。
【0039】
また、
図3の例は、メンテナンス関連デジタルツイン314に、フィジカル空間におけるデータとして、メンテナンス情報324が入力されることで、メンテナンス関連デジタルツイン314が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、メンテナンス関連デジタルツイン314は、他のデジタルツインと連携する際、パーティクル関連デジタルツイン318、オペレーション関連デジタルツイン319との間で情報を送受信する。更に、メンテナンス関連デジタルツイン314は、他のデジタルツインと連携する際、APC/AEC関連デジタルツイン312、プロセス全体関連デジタルツイン311との間で情報を送受信する。
【0040】
また、
図3の例は、オペレーション関連デジタルツイン319に、フィジカル空間におけるデータとして、オペレーション情報が入力されることで、オペレーション関連デジタルツイン319が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、オペレーション関連デジタルツイン319は、他のデジタルツインと連携する際、メンテナンス関連デジタルツイン314、搬送関連デジタルツイン315との間で情報を送受信する。
【0041】
また、
図3の例は、搬送関連デジタルツイン315に、フィジカル空間におけるデータとして、装置構成情報325が入力されることで、搬送関連デジタルツイン315が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、搬送関連デジタルツイン315は、他のデジタルツインと連携する際、プロセス全体関連デジタルツイン311、オペレーション関連デジタルツイン319との間で情報を送受信する。
【0042】
また、
図3の例は、APC/AEC関連デジタルツイン312に、フィジカル空間におけるデータとして、装置構成情報325が入力されることで、APC/AEC関連デジタルツイン312が、デジタルツイン処理を行うことを示している。なお、
図3の例の場合、APC/AEC関連デジタルツイン312は、他のデジタルツインと連携する際、プロセス全体関連デジタルツイン311、プロセスレシピ関連デジタルツイン313、メンテナンス関連デジタルツイン314との間で情報を送受信する。
【0043】
一方、基板処理装置130_1~130_nにより構成されるフィジカル空間330には、サイバー空間310に入力されるデータを提供するための各要素、あるいは、サイバー空間310からの指示が送信される各要素が含まれる。
【0044】
図3の例は、サイバー空間310に入力されるデータを提供するための各要素として、センサ331、装置外計測機333、メンテナンス情報格納部334、装置構成情報格納部335、オペレーション情報格納部336が含まれることを示している。また、
図3の例は、サイバー空間310からの指示が送信される各要素として、アクチュエータ332が含まれることを示している。
【0045】
センサ331は、ガス流量情報、温度情報、圧力情報等321を測定する。センサ331により測定されたガス流量情報、温度情報、圧力情報等321は、フィジカル空間におけるデータとして、サイバー空間310に入力される。
【0046】
装置外計測機333は、パーティクル情報323を測定する。装置外計測機333により測定されたパーティクル情報323は、フィジカル空間におけるデータとして、サイバー空間310に入力される。なお、パーティクル情報323を測定するための機器は、装置外計測機に限定されず、基板処理装置130_1~130_n内に設置された装置内計測機であってもよい。例えば、基板処理装置130_1~130_nの壁に設けられた窓を介して、基板処理装置130_1~130_n内部の状態を計測する機器であってもよい。また、パーティクル情報323を測定するための機器は、処理対象の基板上の状態を観察する機器であっても、処理対象の基板を処理する処理空間の状態を取得する機器であってもよい。
【0047】
メンテナンス情報格納部334は、フィジカル空間330において行われた、基板処理装置の主要部品のメンテナンス(修理、交換)に関するメンテナンス情報324を格納する。メンテナンス情報格納部334に格納されたメンテナンス情報324は、フィジカル空間におけるデータとして、サイバー空間310に入力される。
【0048】
装置構成情報格納部335は、フィジカル空間330の各基板処理装置130_1~130_nの装置構成を示す装置構成情報325を格納する。装置構成情報格納部335に格納された装置構成情報325は、フィジカル空間におけるデータとして、サイバー空間310に入力される。
【0049】
オペレーション情報格納部336は、フィジカル空間330において基板処理装置に対して行われた各種オペレーションを示すオペレーション情報326を格納する。オペレーション情報格納部336に格納されたオペレーション情報326は、フィジカル空間におけるデータとして、サイバー空間310に入力される。
【0050】
アクチュエータ332は、サイバー空間310からの指示に基づいて動作する。
図3の例は、アクチュエータ332が、ガス関連デジタルツイン316や温度関連デジタルツイン317により算出された制御情報322(制御値の一例)に基づいて動作することを示している。
【0051】
<サイバーフィジカルシステムの機能構成(2)>
次に、サイバーフィジカルシステム100の他の機能構成として、伝送経路の接続態様が
図3とは異なる機能構成について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第2の図である。
【0052】
図3との相違点は、
図4の場合、複数のデジタルツインのうち、プロセス全体関連デジタルツイン311以外のデジタルツインが、それぞれ、プロセス全体関連デジタルツイン311と、伝送経路を介して接続されている点である。
【0053】
例えば、APC/AEC関連デジタルツイン312は、プロセス全体関連デジタルツイン311と伝送経路を介して接続され、プロセス全体関連デジタルツイン311との間で情報を送受信する。また、プロセスレシピ関連デジタルツイン313は、プロセス全体関連デジタルツイン311と伝送経路を介して接続され、プロセス全体関連デジタルツイン311との間で情報を送受信する。以下、メンテナンス関連デジタルツイン314~オペレーション関連デジタルツイン319も同様である。
【0054】
<サイバーフィジカルシステムの機能構成(3)>
次に、サイバーフィジカルシステム100の他の機能構成として、伝送経路の接続態様が
図3及び
図4とは異なる機能構成について説明する。
図5は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す第3の図である。
【0055】
図3及び
図4との相違点は、
図5の場合、複数のデジタルツイン全てが、伝送経路を介して相互に接続されている点である。
【0056】
例えば、ガス関連デジタルツイン316は、プロセス全体関連デジタルツイン311~搬送関連デジタルツイン315、及び、温度関連デジタルツイン317~オペレーション関連デジタルツイン319と、伝送経路を介して接続されている。つまり、ガス関連デジタルツイン316は、ガス関連デジタルツイン316以外のデジタルツインとの間で情報を送受信する。
【0057】
また、プロセスレシピ関連デジタルツイン313は、プロセス全体関連デジタルツイン311~APC/AEC関連デジタルツイン312及びメンテナンス関連デジタルツイン314~オペレーション関連デジタルツイン319と、伝送経路を介して接続されている。つまり、プロセスレシピ関連デジタルツイン313は、プロセスレシピ関連デジタルツイン313以外のデジタルツインとの間で情報を送受信する。以下、他のデジタルツインも同様である。
【0058】
<サイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理>
次に、サイバーフィジカルシステム100において実行される各種処理について説明する。
図6は、第1の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。なお、
図6では、伝送経路の接続態様が
図3で示した接続態様である場合において実行される各種処理の一例を示している。
【0059】
図6において、太線黒枠で示した処理は、対応するデジタルツインが主体となって実行する処理の一例を表している。
図6に示すように、例えば、プロセス全体関連デジタルツイン311は、指標値管理処理を実行する。
【0060】
指標値管理処理とは、基板製造プロセス全体の指標値を管理する処理であり、当該指標値には、基板製造プロセス全体の歩留まり、基板製造プロセス全体の単位時間あたりの処理量、基板製造プロセス全体の消費エネルギ等のサブ指標値が含まれる。
【0061】
プロセス全体関連デジタルツイン311では、例えば、伝送経路を介して他のデジタルツインとの間で情報を送受信することで、それぞれのサブ指標値を取得し、取得したサブ指標値に基づいて基板製造プロセス全体の指標値を算出する。また、プロセス全体関連デジタルツイン311では、算出した指標値を最適化するように、他のデジタルツインに、各種指示を送信する。
【0062】
なお、プロセス全体関連デジタルツイン311により実行される指標値管理処理は、他のデジタルツインが主体となって実行する各種処理と関連している。つまり、他のデジタルツインが主体となって実行する各種処理は、基板製造プロセス全体の指標値が最適化されるように実行される。
【0063】
レシピ最適化処理とは、プロセスレシピを最適化する処理である。レシピ最適化処理には、所定の装置状態(部品の消耗状態、チャンバ内壁のデポの状態等)での基板処理品質の最適化の他、基板処理時間または基板処理量の最適化等が含まれる。
【0064】
プロセスレシピ関連デジタルツイン313では、例えば、伝送経路を介して他のデジタルツインとの間で情報を送受信することで現在の装置状態を把握し、把握した装置状態における最適なプロセスレシピを、過去データに基づく学習結果から導出する。
【0065】
メンテナンス最適化処理とは、基板処理装置を構成する主要部品のうち、交換または修理を行うべき対象部品と、対象部品について交換または修理を行うべきタイミングとを最適化する処理である。
【0066】
メンテナンス関連デジタルツイン314では、例えば、伝送経路を介して他のデジタルツインとの間で情報を送受信することで、主要部品の消耗状態を把握するとともに、今後の装置の稼働状況に基づいて主要部品の寿命を予測する。また、メンテナンス関連デジタルツイン314では、予測した寿命に基づいて、それぞれの主要部品について交換または修理を行うべき最適なタイミングを導出する。
【0067】
搬送最適化処理とは、基板の搬送を最適化する処理である。搬送最適化処理には、基板処理装置による単位時間あたりの処理量の最大化等が含まれる。
【0068】
搬送関連デジタルツイン315では、例えば、伝送経路を介して他のデジタルツインとの間で情報を送受信することで、基板処理装置が処理すべき処理量を把握し、把握した処理量を処理するのに最適な搬送方法を、過去データに基づく学習結果から導出する。
【0069】
ガス流量制御処理とは、基板の処理に用いるガスの流量が所定の目標値となる制御情報を導出する処理である。
【0070】
ガス関連デジタルツイン316では、例えば、基板処理装置において何らかの事象が発生した場合に、伝送経路を介して他のデジタルツインとの間で情報を送受信することで、処理可能な目標値を算出し、算出した目標値を実現する制御情報を導出する。
【0071】
なお、
図6に示した各種処理は、サイバーフィジカルシステム100において実行される処理の一例であり、上記の各デジタルツインが、上述した処理以外の処理を実行してもよい。また、主体となるデジタルツインは、
図6に示したものに限定されず、
図6において処理を例示していない他のデジタルツインが主体となって、任意の処理を実行してもよい。
【0072】
以下では、
図6に示した各種処理のうち、ガス関連デジタルツイン316が実行するガス流量制御処理について詳細を説明する。
【0073】
<ガス関連デジタルツインの機能構成の概要>
はじめに、ガス流量制御処理を実行するガス関連デジタルツインの機能構成の概要について説明する。
図7は、ガス関連デジタルツインの機能構成の概要を示す図である。
図7において、サイバー空間310及びフィジカル空間330は、
図3に示したサイバー空間310及びフィジカル空間330のうち、ガス関連デジタルツイン316に関連するデジタルツイン、及び、各要素を抜粋して示している。また、図
7では、サイバー空間310に入力されるデータ及びフィジカル空間330の基板処理装置への指示のうち、ガス関連デジタルツイン316に関連するデータ及び指示を抜粋して示している。
【0074】
ガス関連デジタルツイン316は、ガス流量制御処理を実行するための機能ブロックとして、エージェント部710、状態推定部720、モデル予測制御部730を有する。各部が有するモデルは、モデル記憶部740に格納されており、ガス流量制御処理が実行される際に、モデル記憶部740から読み出される。
【0075】
エージェント部710は、状態推定部720とモデル予測制御部730とを管理する。具体的には、エージェント部710は、状態推定部720により推定された基板処理装置の状態をリアルタイムに把握し、ガス流量制御処理における目標値の変更が必要な事象が発生していないかを監視する。
【0076】
また、エージェント部710は、ガス流量制御処理における目標値の変更が必要な事象が発生したと判定した場合に、目標値を変更する。このとき、エージェント部710では、他のデジタルツインのエージェント部との間(つまり、エージェント間)で情報の送受信が必要か否かを判断し、必要と判断した場合には、他のデジタルツインとの間で情報の送受信を行ったうえで、目標値を変更する。更に、エージェント部710は、変更後の目標値をモデル予測制御部730に通知する。
【0077】
状態推定部720は、センサ331により測定されたガス流量情報、温度情報、圧力情報等321を取得し、基板処理装置のガス流量制御処理の制御対象であるガス流量制御システムの状態を推定する。また、状態推定部720は、推定したガス流量制御システムの状態をエージェント部710に通知する。
【0078】
モデル予測制御部730は制御部の一例であり、エージェント部710より通知された、変更後の目標値を実現する制御情報322を導出する。また、モデル予測制御部730は、導出した制御情報322を、基板処理装置(具体的には、フィジカル空間330のアクチュエータ332)への指示として送信する。
【0079】
<ガス関連デジタルツインの機能構成の詳細>
次に、ガス流量制御処理を実行するガス関連デジタルツイン316の機能構成の詳細について説明する。
図8は、ガス関連デジタルツインの機能構成の詳細を示す図である。
【0080】
図8に示すように、状態推定部720は取得部の一例であり、状態推定モデル821を有する。状態推定モデル821は、ガス流量情報、温度情報、圧力情報等321を入力として、例えば、基板処理装置130_1のガス流量制御システムの状態を示す状態情報を推定する。
【0081】
エージェント部710は、事象検出モデル811、判断部812、送信部/受信部813、解析モデル814を有する。
【0082】
事象検出モデル811は検出部の一例であり、状態推定モデル821にて推定された状態情報を入力として、ガス流量制御処理における目標値の変更が必要な事象の発生有無及び事象の種類を推定する。
【0083】
判断部812は、事象検出モデル811にて目標値の変更が必要な事象が発生したと推定された場合に、事象検出モデル811から事象の種類を取得する。また、判断部812は、取得した事象の種類に応じた目標値を算出したうえで、モデル予測制御部730に通知し、制御可否を判定することで、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要か否かを判断する。
【0084】
判断部812では、制御可と判定した場合、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が不要と判断する。一方、判断部812では、制御不可と判定した場合、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要と判断する。
【0085】
他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要であると判断した場合、判断部812は、事象の種類に応じて算出した目標値を含む会話内容を、送信部/受信部813に通知する。
【0086】
送信部/受信部813は、ガス関連デジタルツイン316と、他のデジタルツイン(
図7の場合、プロセスレシピ関連デジタルツイン313及び温度関連デジタルツイン317)との間で会話内容を送受信する。
【0087】
例えば、送信部/受信部813は、判断部812から通知された会話内容を、他のデジタルツインに送信する。また、送信部/受信部813は、他のデジタルツインから送信された会話内容(応答)を受信し、解析モデル814に入力する。また、送信部/受信部813は、解析モデル814から出力された会話内容を、他のデジタルツインに再度送信する。なお、送信部/受信部813が他のデジタルツインとの間で送受信する会話内容は、情報記憶部815に記憶される。
【0088】
解析モデル814は、送信部/受信部813から通知された会話内容(応答)を入力として、他のデジタルツインに送信する会話内容を出力する。ガス流量制御処理の場合、他のデジタルツインに送信された目標値に対して、他のデジタルツインから、許容しうる目標値あるいは制約条件等が送信される。このため、解析モデル814では、他のデジタルツインから送信された、許容しうる目標値あるいは制約条件等を入力として、新たな目標値を算出する。
【0089】
解析モデル814では、他のデジタルツインとの会話内容の送受信を繰り返すことで、適切な目標値を算出し、モデル予測制御部730に通知する。
【0090】
なお、送信部/受信部813が他のデジタルツインから送信される会話内容(応答)には、プロセス全体関連デジタルツイン311が、基板製造プロセス全体の指標値を最適化するように送信した各種指示が反映されているものとする。つまり、解析モデル814では、基板製造プロセス全体の指標値を最適化するように目標値が算出されることになる。
【0091】
モデル予測制御部730は、予測モデル831、目的関数部832、最適化部833、検証部834を有する。
【0092】
予測モデル831は、フィジカル空間330におけるガス流量制御システムの挙動(センサ331、アクチュエータ332、不図示のコントローラの挙動)をモデル化したものであり、制御情報を入力としてガス流量を予測する。
【0093】
目的関数部832は、予測モデル831により予測されたガス流量と、目標値との誤差を算出し、最適化部833に通知する。
【0094】
最適化部833は、目的関数部832より通知された誤差を小さくする制御情報を探索する。また、最適化部833は、探索した制御情報を予測モデル831に入力し、予測モデル831により予測されたガス流量と、目標値との誤差を再び取得する。最適化部833では、これらの処理を繰り返すことで誤差を最小化し、最適な制御情報322を導出する。
【0095】
また、最適化部833は、最適な制御情報322を、基板処理装置(具体的には、フィジカル空間330のアクチュエータ332)への指示として送信する。
【0096】
検証部834は、最適化部833より最適な制御情報322を取得する。また、検証部834は、最適な制御情報322が基板処理装置(具体的には、フィジカル空間330のアクチュエータ332)への指示として送信されたことに応じて、フィジカル空間330から提供されたガス流量情報を取得する。
【0097】
更に、検証部834は、最適な制御情報322と、取得したガス流量情報とに基づいて、制御情報322の適否を判定するとともに、予測モデル831の予測精度を検証し、必要に応じて予測モデル831のモデルパラメータを調整する。これにより、検証部834は、予測モデル831を、フィジカル空間330におけるガス流量制御システムの挙動と一致させることができる。
【0098】
<ガス流量制御処理の流れ>
次に、ガス関連デジタルツイン316によるガス流量制御処理の流れについて説明する。
図9Aは、ガス流量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0099】
ステップS901において、モデル予測制御部730は、目標値を取得し、取得した目標値に応じて制御情報を導出する。また、モデル予測制御部730は、導出した制御情報を、フィジカル空間330の基板処理装置への指示として送信する。
【0100】
ステップS902において、状態推定部720は、フィジカル空間におけるデータとして、ガス流量情報、温度情報、圧力情報等321を、フィジカル空間330より取得する。
【0101】
ステップS903において、状態推定部720は、取得したフィジカル空間におけるデータに基づいて、基板処理装置のガス流量制御システムの状態を示す状態情報を推定する。
【0102】
ステップS904において、エージェント部710は、状態推定部720により推定された状態情報に基づいて、目標値の変更が必要な事象の発生有無を監視する。
【0103】
ステップS905において、エージェント部710は、ガス流量制御処理における目標値の変更が必要な事象が発生したか否か、及び、事象の種類を判定する。ステップS905において、事象が発生していないと判定した場合には(ステップS905においてNOの場合には)、ステップS912に進む。
【0104】
一方、ステップS905において、事象が発生したと判定した場合には(ステップS905においてYESの場合には)、ステップS906に進む。
【0105】
ステップS906において、エージェント部710は、発生した事象の種類に応じた目標値を算出する。
【0106】
ステップS907において、モデル予測制御部730は、最適化処理を実行することで、算出された目標値との誤差を最小化する制御情報を導出する。
【0107】
ステップS908において、エージェント部710は、ステップS907においてモデル予測制御部730により最適化処理が実行された際の目標値との誤差に基づいて、制御可否を判定する。
【0108】
具体的には、ステップS907において制御情報を導出した際の予測モデル831の出力と目標値との誤差が閾値以上であり、誤差を最小化する制御情報の導出に至らない場合、エージェント部710では、制御不可と判定する。つまり、最適化処理を実行しても、目標値に近づけない場合には、エージェント部710では、制御不可と判定する。一方、ステップS907において制御情報を導出した際の予測モデル831の出力と目標値との誤差が閾値未満であり、誤差を最小化する制御情報の導出に至った場合には、エージェント部710では、制御可と判定する。つまり、最適化処理を実行することで、目標値に近づけた場合には、エージェント部710では、制御可と判定する。
【0109】
ステップS909において、エージェント部710は、制御可否の判定結果に基づいて、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要か否かを判断する。
【0110】
具体的には、ステップS908において制御可と判定した場合、エージェント部710では、単独で目標値に近づくことができると判断する。このため、エージェント部710は、ステップS909において、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要でないと判断し(ステップS909においてNOと判断し)、ステップS910に進む。
【0111】
ステップS910において、モデル予測制御部730は、導出した新たな制御情報をフィジカル空間330の基板処理装置への指示として送信する。
【0112】
一方、ステップS908において制御不可と判定した場合には、エージェント部710は、単独で目標値に近づくことはできないと判断する。このため、エージェント部710は、ステップS909において、他のデジタルツインとの間で情報の送受信が必要であると判断し(ステップS909においてYESと判断し)、ステップS911に進む。
【0113】
ステップS911において、エージェント部710は、調整処理を行い、他のデジタルツインとの間で情報を送受信したうえで、新たな制御情報を導出する。なお、調整処理の詳細は、
図9Bに示すとおりである。
図9Bは、調整処理の流れを示すフローチャートである。
【0114】
ステップS921において、エージェント部710は、
図9AのステップS906において算出した目標値を含む会話内容を、他のデジタルツインに送信するとともに、他のデジタルツインから送信された会話内容(応答)を受信する。
【0115】
ステップS922において、エージェント部710は、他のデジタルツインとの間で会話内容を送受信することで、ガス流量制御処理における新たな目標値を算出する。
【0116】
ステップS923において、モデル予測制御部730は、最適化処理を実行することで、算出された新たな目標値との誤差を最小化する制御情報を導出する。
【0117】
ステップS924において、モデル予測制御部730は、導出した新たな制御情報を、フィジカル空間330の基板処理装置への指示として送信する。その後、
図9AのステップS912に戻る。
【0118】
ステップS912において、モデル予測制御部730は、予測モデルの検証に必要なフィジカル空間330におけるデータを、フィジカル空間330より取得する。
【0119】
ステップS913において、モデル予測制御部730は、フィジカル空間330に送信された制御情報と、フィジカル空間330より取得したデータとに基づいて、予測モデル831の予測精度を検証する。
【0120】
ステップS914において、モデル予測制御部730は、検証した予測モデル831の予測精度に基づいて、予測モデル831のモデルパラメータを調整する。
【0121】
ステップS915において、エージェント部710は、ガス流量制御処理を終了するか否かを判定し、ガス流量制御処理を継続すると判定した場合には(ステップS915においてNOの場合には)、ステップS902に戻る。
【0122】
一方、ステップS915において、ガス流量制御処理を終了すると判定した場合には(ステップS918においてYESの場合には)、ガス流量制御処理を終了する。
【0123】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、サイバーフィジカルシステム100において、サイバー空間を形成し、フィジカル空間の基板製造プロセスを管理する管理システムは、
・複数のデジタルツインを有する。また、複数のデジタルツインは、それぞれ、各基板処理装置の状態を監視し、所定の事象が発生したことを検出する複数のエージェント部を有する。
・複数のデジタルツインを接続する伝送経路であって、いずれかのデジタルツインのエージェント部において所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいて、他のデジタルツインのエージェント部との間で情報を送受信する伝送経路を有する。
・所定の事象が検出されたエージェント部は、基板製造プロセスの指標値が最適化されるように、伝送経路を介して送受信される情報に基づいて、基板処理装置への指示を導出する。
【0124】
このように、第1の実施形態に係る管理システムでは、サイバー空間にエージェント部と伝送経路とを配し、複数のデジタルツインを連携させることで、フィジカル空間において発生した事象に適切に対処し、基板処理装置への指示を導出する。これにより、第1の実施形態に係る管理システムによれば、各基板処理装置を自律化させることができる。
【0125】
つまり、第1の実施形態によれば、基板処理装置を自律化させる管理システムを提供することができる。
【0126】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、サイバーフィジカルシステムにおいて、1つのサイバー空間310が形成される場合について説明した。しかしながら、サイバーフィジカルシステムにおいて形成されるサイバー空間の数は1つに限定されず、複数のサイバー空間が形成されてもよい。また、形成された複数のサイバー空間それぞれに含まれるデジタルツイン同士(具体的にはエージェント同士)を、伝送経路を介して接続し、異なるサイバー空間のデジタルツイン間で、情報が送受信されるように構成してもよい。以下、第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0127】
<サイバーフィジカルシステムの機能構成>
はじめに、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成について説明する。
図10は、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す図である。
【0128】
図10に示すように、サイバーフィジカルシステム1000は、複数のサイバー空間(サイバー空間310及びサイバー空間1010)を有する。なお、
図10では、紙面の都合上、複数のサイバー空間それぞれに対応するフィジカル空間を省略しているが、例えば、サイバー空間310は、
図3のフィジカル空間330に対応するサイバー空間であるとする。また、サイバー空間1010は、
図3のフィジカル空間330とは異なる工場(Fab:Fabrication)にある、
図3のフィジカル空間330と同様の構成を有するフィジカル空間に対応するサイバー空間であるとする。
【0129】
したがって、
図10に示すサイバー空間1010は、サイバー空間310と同様のデジタルツインが含まれる(プロセス全体関連デジタルツイン1011~オペレーション関連デジタルツイン1019参照)。
【0130】
また、
図10に示すサイバー空間1010において各デジタルツインを接続する伝送経路は、サイバー空間310において各デジタルツインを接続する伝送経路と同様の接続態様であるとする。
【0131】
ただし、
図10の場合、サイバー空間310のプロセス全体関連デジタルツイン311と、サイバー空間1010のプロセス全体関連デジタルツイン1011とが、伝送経路を介して接続される(太点線参照)。また、
図10の場合、サイバー空間310のガス関連デジタルツイン316と、サイバー空間1010のガス関連デジタルツイン1016とが、伝送経路を介して接続される(太点線参照)。
【0132】
このように、異なるサイバー空間に含まれるデジタルツイン同士を、伝送経路を介して接続し、他のサイバー空間のデジタルツインとの間で情報を送受信する構成とすることで、例えば、複数のフィジカル空間全体の最適化を実現することが可能になる。
【0133】
<サイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理>
次に、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステム1000において実行される各種処理について説明する。
図11は、第2の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。なお、
図11の例では、異なるサイバー空間において伝送経路を介して接続されたデジタルツイン(プロセス全体関連デジタルツイン、ガス関連デジタルツイン)において実行される処理のみを示している。
【0134】
図11に示すように、サイバー空間310において、プロセス全体関連デジタルツイン311は、指標値管理処理を実行する。同様に、サイバー空間1010において、プロセス全体関連デジタルツイン1011は、指標値管理処理を実行する。
【0135】
プロセス全体関連デジタルツイン311及び1011においてそれぞれ実行される指標値管理処理は、上記第1の実施形態において説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0136】
ただし、プロセス全体関連デジタルツイン311は、プロセス全体関連デジタルツイン1011との間で情報を送受信しながら、基板製造プロセス全体の指標値を最適化するように、サイバー空間310に含まれる他のデジタルツインに、各種指示を送信する。
【0137】
同様に、プロセス全体関連デジタルツイン1011は、プロセス全体関連デジタルツイン311との間で情報を送受信しながら、基板製造プロセス全体の指標値を最適化するように、サイバー空間1010に含まれる他のデジタルツインに、各種指示を送信する。
【0138】
なお、
図11に示すように、プロセス全体関連デジタルツイン311及びプロセス全体関連デジタルツイン1011は、それらを統括するFab全体関連デジタルツイン1101と伝送経路を介して接続されていてもよい。
【0139】
Fab全体関連デジタルツイン1101は、複数のサイバー空間それぞれに含まれるプロセス全体関連デジタルツインを統括する。具体的には、Fab全体関連デジタルツイン1101は、プロセス全体関連デジタルツイン311、1011との間で情報を送受信し、Fab全体(つまり、複数のフィジカル空間全体)の指標値を最適化するように、各デジタルツインに各種指示を送信する。
【0140】
なお、Fab全体関連デジタルツイン1101は、サイバー空間310または1010のいずれかに含まれていてもよいし、他の装置(例えば、サーバ装置110_1~110_3)により形成されるサイバー空間に含まれていてもよい。
【0141】
同様に、
図11に示すように、サイバー空間310において、ガス関連デジタルツイン316は、ガス流量制御処理を実行する。同様に、サイバー空間1010において、ガス関連デジタルツイン1016は、ガス流量制御処理を実行する。
【0142】
ガス関連デジタルツイン316及び1016においてそれぞれ実行されるガス流量制御処理は、上記第1の実施形態において説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0143】
ただし、ガス関連デジタルツイン316は、プロセスレシピ関連デジタルツイン313及び温度関連デジタルツイン317に加えて、ガス関連デジタルツイン1016との間で情報を送受信しながら、処理可能な目標値を算出する。
【0144】
同様に、ガス関連デジタルツイン1016は、プロセスレシピ関連デジタルツイン1013及び温度関連デジタルツイン1017に加えて、ガス関連デジタルツイン316との間で情報を送受信しながら、処理可能な目標値を算出する。
【0145】
なお、
図11に示すように、ガス関連デジタルツイン316及びガス関連デジタルツイン1016は、それらを統括するガス関連全体デジタルツイン1102と伝送経路を介して接続されていてもよい。
【0146】
ガス関連全体デジタルツイン1102は、複数のサイバー空間それぞれに含まれるガス関連デジタルツインを統括する。具体的には、ガス関連全体デジタルツイン1102は、ガス関連デジタルツイン316、1016との間で情報を送受信し、Fab全体(つまり、複数のフィジカル空間全体)の目標値を最適化するように、各ガス関連デジタルツインに各種指示を送信する。
【0147】
なお、ガス関連全体デジタルツイン1102は、サイバー空間310または1010のいずれかに含まれていてもよいし、他の装置(例えば、サーバ装置110_1~110_3)により形成されるサイバー空間に含まれていてもよい。
【0148】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、サイバーフィジカルシステム1000において、複数のサイバー空間を形成し、複数のフィジカル空間の基板製造プロセスを管理する管理システムは、
・それぞれのサイバー空間が複数のデジタルツインを有する。また、複数のデジタルツインは、それぞれ、各基板処理装置の状態を監視し、所定の事象が発生したことを検出する複数のエージェント部を有する。
・異なるサイバー空間に含まれるデジタルツイン同士を接続する伝送経路を有する。具体的には、いずれかのサイバー空間に含まれるデジタルツインのエージェント部において所定の事象が検出された場合に、検出された事象に基づいて、他のサイバー空間に含まれるデジタルツインのエージェント部との間で情報を送受信する伝送経路を有する。
・所定の事象が検出されたエージェント部は、基板製造プロセスの指標値が最適化されるように、伝送経路を介して送受信される情報に基づいて、基板処理装置への指示を導出する。
・その際、複数のサイバー空間それぞれに含まれるデジタルツインを統括するデジタルツインを更に配し、複数のフィジカル空間全体が最適化されるように指示を導出してもよい。
【0149】
このように、第2の実施形態に係る管理システムは、上記第1の実施形態に係る管理システムの構成に加えて、異なるサイバー空間のデジタルツインを連携させる構成を有する。これにより、第2の実施形態に係る管理システムによれば、複数のフィジカル空間全体が最適化されるように、各基板処理装置を自律化させることができる。
【0150】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、サイバー空間において、基板処理装置のそれぞれの機能に対応するデジタルツインを形成するものとして説明した。つまり、サイバー空間において機能単位でデジタルツインを形成する場合について説明した。
【0151】
これに対して、第3の実施形態では、基板処理装置において機能を実現するハードウェアの動作単位でデジタルツインを形成する。以下、第3の実施形態について、上記第1及び第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0152】
<サイバーフィジカルシステムの機能構成>
はじめに、第3の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成について説明する。
図12は、第3の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムの機能構成の一例を示す図である。
【0153】
図12に示すように、サイバーフィジカルシステム1200において、管理装置120_1~120_nにより形成されるサイバー空間1210には、基板処理装置の機能を実現するハードウェアの動作単位に対応付けて形成された複数のデジタルツインが含まれる。
【0154】
図12の例は、Fab単位に形成されたFabレイヤデジタルツイン1211、基板処理装置の装置単位に形成された装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2が含まれることを示している。
【0155】
また、
図12の例は、MC単位に形成されたMCレイヤデジタルツイン1213_1、EC単位に形成されたECレイヤデジタルツイン1213_2、装置外計測機単位に形成された装置外計測機レイヤデジタルツイン1213_3が含まれることを示している。
【0156】
また、
図12の例は、センサ単位に対応するセンサレイヤデジタルツイン1214_1、1214_4が含まれることを示している。更に、
図12の例は、搬送選択単位に形成された搬送選択レイヤデジタルツイン1214_2、CJ/PJ管理単位に形成されたCJ/PJ管理レイヤデジタルツイン1214_3が含まれることを示している。
【0157】
また、
図12に示すように、サイバー空間1210に含まれる各デジタルツインは、各動作単位の階層関係に応じた階層構造を有する。例えば、
図12の場合、サイバー空間1210において、Fabに対応するFabレイヤデジタルツイン1211は最上位の階層に配置される。
【0158】
また、当該Fab内に配置された基板処理装置130_1、130_2に対応する、
・装置レイヤデジタルツイン1212_1、
・装置レイヤデジタルツイン1212_2、
は、それぞれ、サイバー空間1210において2番目の階層に配置される。
【0159】
また、基板処理装置130_1内に配置されたMCレイヤ1240、ECレイヤ1250、装置外計測機レイヤ1260に対応する、
・MCレイヤデジタルツイン1213_1、
・ECレイヤデジタルツイン1213_2、
・装置外計測機レイヤデジタルツイン1213_3、
は、それぞれ、サイバー空間1210において3番目の階層に配置される。
【0160】
また、MCレイヤ1240内に配置されたセンサレイヤ1241に対応するセンサレイヤデジタルツイン1214_1は、サイバー空間1210において4番目の階層に配置される。また、ECレイヤ1250内に配置された搬送選択レイヤ1251及びCJ/PJ管理レイヤ1252に対応する搬送選択レイヤデジタルツイン1214_2及びCJ/PJ管理レイヤデジタルツイン1214_3は、それぞれサイバー空間1210において4番目の階層に配置される。更に、装置外計測機レイヤ1260内に配置されたセンサレイヤ1261に対応するセンサレイヤデジタルツイン1214_4は、サイバー空間1210において4番目の階層に配置される。
【0161】
また、
図12に示すように、サイバー空間1210における最下位の階層(
図12の例では4番目の階層)には、フィジカル空間において最下位の階層に配置された動作単位に関する情報が入力される。
【0162】
具体的には、基板処理装置130_1のMCレイヤ1240内に配置されたセンサレイヤ1241に関する情報として、センサレイヤ情報1221が、センサレイヤデジタルツイン1214_1に入力される。
【0163】
また、基板処理装置130_1のECレイヤ1250内に配置された搬送選択レイヤ1251に関する情報として、搬送選択レイヤ情報1222が、搬送選択レイヤデジタルツイン1214_2に入力される。また、基板処理装置130_1のECレイヤ1250内に配置されたCJ/PJ管理レイヤ1252に関する情報として、CJ/PJ管理レイヤ情報1223が、CJ/PJ管理レイヤデジタルツイン1214_3に入力される。
【0164】
また、基板処理装置130_1の装置外計測機レイヤ1260内に配置されたセンサレイヤ1261に関する情報として、センサレイヤ情報1224が、センサレイヤデジタルツイン1214_4に入力される。
【0165】
また、
図12に示すように、サイバー空間1210における最下位の階層以外の階層(
図12の例では、最上位の階層、2番目の階層、3番目の階層)に位置するデジタルツインには、それぞれ、対応する動作単位の稼働情報が入力される。
【0166】
例えば、Fabレイヤデジタルツイン1211にはFab稼働情報1231が、装置レイヤデジタルツイン1212_1には装置稼働情報1232が、装置レイヤデジタルツイン1212_2には装置稼働情報1233が、それぞれ入力される。また、MCレイヤデジタルツイン1213_1にはMC稼働情報1234が、ECレイヤデジタルツイン1213_2にはEC稼働情報1235が、装置外計測機レイヤデジタルツイン1213_3には、計測機稼働情報1236が、それぞれ入力される。
【0167】
また、
図12に示すように、サイバー空間1210において、各階層に位置するデジタルツインは、1つ上位の階層に位置するデジタルツイン、及び、1つ下位の階層に位置するデジタルツインと、伝送経路を介して接続される。
【0168】
例えば、2番目の階層に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1は、1つ上位の階層に位置するデジタルツインであるFabレイヤデジタルツイン1211と伝送経路を介して接続される。また、2番目の階層に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1は、1つ下位の階層に位置するデジタルツインであるMCレイヤデジタルツイン1213_1~装置外計測機レイヤデジタルツイン1213_3と伝送経路を介して接続される。以下、同様に接続されるため、ここでは説明を省略する。
【0169】
<サイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理>
次に、サイバーフィジカルシステム1200において実行される各種処理について説明する。
図13は、第3の実施形態に係るサイバーフィジカルシステムにおいて実行される各種処理の一例を示す図である。
【0170】
上記各実施形態同様、
図13において、太線黒枠で示した処理は、対応するデジタルツインが主体となって実行する処理の一例を表している。
図13に示すように、例えば、Fabレイヤデジタルツイン1211は、生産管理処理を実行する。
【0171】
生産管理処理とは、Fab全体が処理すべき処理量を管理するとともに、各基板処理装置に割り当てる処理量を管理する処理である。
【0172】
Fabレイヤデジタルツイン1211では、例えば、対応する動作単位(Fab全体)の現在の稼働情報(Fab稼働情報1231)に基づいてFab全体が次に処理すべき処理量を算出し、各基板処理装置130_1、130_2に割り当てる処理量を決定する。また、Fabレイヤデジタルツイン1211では、決定した処理量を含む会話内容を、伝送経路を介して、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2にそれぞれ送信する。
【0173】
なお、決定した処理量を含む会話内容を送信したことに応じて、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1または1212_2から、決定した処理量を処理することができない旨の会話内容(応答)が送信される場合がある。
【0174】
この場合、Fabレイヤデジタルツイン1211では、各基板処理装置130_1、130_2に割り当てる処理量を変更する。また、Fabレイヤデジタルツイン1211では、変更した処理量を含む会話内容を、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2にそれぞれ送信する。
【0175】
このように、Fabレイヤデジタルツイン1211では、Fab全体の現在の稼働情報に基づいてFab全体が次に処理すべき処理量を算出し、各基板処理装置に割り当てる処理量を決定する。また、Fabレイヤデジタルツイン1211では、装置レイヤデジタルツインとの間で情報を送受信することで、割り当てる処理量を変更する。
【0176】
なお、
図13に示した生産管理処理は、サイバーフィジカルシステム1200において実行される処理の一例であり、Fabレイヤデジタルツイン1211は、生産管理処理以外の処理を実行してもよい。また、主体となるデジタルツインは、Fabレイヤデジタルツイン1211に限定されず、
図13において処理を例示していない他のデジタルツインが主体となって、任意の処理を実行してもよい。
【0177】
ただし、以下では、Fabレイヤデジタルツイン1211が実行する生産管理処理について詳細を説明する。
【0178】
<Fabレイヤデジタルツインの機能構成の概要>
はじめに、生産管理処理を実行するFabレイヤデジタルツインの機能構成の概要について説明する。
図14は、Fabレイヤデジタルツインの機能構成の概要を示す図である。
【0179】
図14に示すように、Fabレイヤデジタルツイン1211は、生産管理処理を実行するための機能ブロックとして、エージェント部1410、状態推定部1420を有する。なお、各部が有するモデルは、モデル記憶部1430に格納されており、生産管理処理が実行される際に、モデル記憶部1430から読み出される。
【0180】
エージェント部1410は、状態推定部1420を管理する。具体的には、エージェント部1410は、状態推定部1420により推定された、対応する動作単位(Fab全体)の状態を示す状態情報をリアルタイムに把握し、Fab全体が次に処理すべき処理量を算出する。また、エージェント部1410は、各基板処理装置に割り当てる処理量を決定する。
【0181】
また、エージェント部1410は、決定した処理量を含む会話内容を、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2に送信する。更に、エージェント部1410は、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2との会話内容の送受信を繰り返すことで、最適な処理量の割り当てを導出し、装置レイヤデジタルツイン1212_1、1212_2に送信する。
【0182】
状態推定部1420は、対応する動作単位(Fab全体)の現在の稼働情報(Fab稼働情報1231)を取得し、取得したFab稼働情報1231を入力として、対応する動作単位(Fab全体)の状態を示す状態情報を推定する。また、状態推定部1420は、推定した状態情報をエージェント部1410に送信する。
【0183】
なお、
図14では、Fabレイヤデジタルツインの機能構成について示したが、生産管理処理が実行される場合、他のデジタルツインも、同様の機能構成のもとで同様の処理が実行されるものとする。
【0184】
<Fabレイヤデジタルツイン1211の機能構成の詳細>
次に、生産管理処理を実行するFabレイヤデジタルツイン1211の機能構成の詳細について説明する。
図15は、Fabレイヤデジタルツインの機能構成の詳細を示す図である。
【0185】
図15に示すように、状態推定部1420は、状態推定モデル1521を有する。状態推定モデル1521は、Fab稼働情報1231を入力として、Fab全体の状態を示す状態情報を推定する。状態推定モデル1521が推定する状態情報には、Fab全体の状態に関する任意の情報が含まれる。
【0186】
エージェント部1410は、事象検出モデル1511、判断部1512、送信部/受信部1513、解析モデル1514を有する。
【0187】
事象検出モデル1511は、状態推定モデル1521にて推定された状態情報を入力として、Fab全体が次に処理すべき処理量について、変更が必要な事象の発生有無及び事象の種類を推定する。
【0188】
判断部1512は、事象検出モデル1511にて事象が発生していないと推定された場合、現在の稼働情報に基づいて、Fab全体が次に処理すべき処理量を算出するとともに、各基板処理装置に割り当てる処理量を算出する。また、判断部1512は、各基板処理装置に割り当てる処理量を含む会話内容を、送信部/受信部1513に通知する。
【0189】
このとき、判断部1512では、基板製造プロセス全体(ここでは、Fab全体)の指標値を最適化するように、Fab全体が次に処理すべき処理量、及び、各基板処理装置に割り当てる処理量を算出する。なお、ここでいう指標値は、上記第1の実施形態と同様であり、基板製造プロセス全体の歩留まり、基板製造プロセス全体の単位時間あたりの処理量、基板製造プロセス全体の消費エネルギ等のサブ指標値が含まれるものとする。
【0190】
また、判断部1512は、事象検出モデル1511にて事象が発生したと推定された場合に、事象検出モデル1511から事象の種類を取得する。また、判断部1512は、取得した事象の種類に基づいてFab全体が次に処理すべき処理量を変更するとともに、各基板処理装置に割り当てる処理量を変更する。また、判断部1512は、各基板処理装置に割り当てる処理量を含む会話内容を、送信部/受信部1513に通知する。
【0191】
送信部/受信部1513は、判断部1512から通知された会話内容を、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインに送信する。また、送信部/受信部1513は、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインから送信された会話内容(応答)を受信し、解析モデル1514に入力する。また、送信部/受信部1513は、解析モデル1514から出力された会話内容を、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインに送信する。
【0192】
なお、送信部/受信部1513が1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインとの間で会話内容を送受信するにあたっては、階層間ルール記憶部1515に記憶された階層間ルールに従って、送受信が行われる。
【0193】
また、送信部/受信部1513が1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインとの間で送受信する会話内容は、情報記憶部1516に記憶される。
【0194】
解析モデル1514は、送信部/受信部1513から通知された会話内容(応答)を入力として、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインに送信する会話内容を出力する。生産管理処理の場合、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインに送信された、処理量の割り当てに対して、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインのいずれかから、実行可否に関する情報が送信される。このため、解析モデル1514では、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインから送信された、実行可否に関する情報を入力として、新たな処理量の割り当てを算出する。
【0195】
解析モデル1514では、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインとの会話内容の送受信を繰り返すことで、最適な処理量の割り当てを導出し、1階層下位に位置する装置レイヤデジタルツインに送信する。
【0196】
なお、
図15の例は、最上位の階層に位置するFabレイヤデジタルツイン1211の機能構成の説明であったため、送信部/受信部1513は、1階層下位に位置するデジタルツインに対してのみ会話内容を送信した。しかしながら、他の階層に位置するデジタルツインの場合にあっては、1階層下位に位置するデジタルツインと、1階層上位に位置するデジタルツインの両方に、会話内容が送信されるものとする。ただし、いずれの会話内容をいずれの階層に位置するデジタルツインに送信するかは、階層間ルール記憶部1515に記憶された階層間ルールに従うものとする。
【0197】
<生産管理処理において階層間で送受信される会話内容の具体例>
次に、Fabレイヤデジタルツイン1211による生産管理処理において、階層間で送受信される会話内容の具体例について説明する。
図16は、生産管理処理時に階層間で送受信される会話内容の一例を示す図である。
【0198】
ステップS1601において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、Fab稼働情報1231に基づいて推定した状態情報から事象の有無を判定したうえで、Fab全体が次に処理すべき処理量を算出する。また、Fabレイヤデジタルツイン1211は、基板処理装置130_1、130_2に割り当てる処理量を算出する。このうち、Fabレイヤデジタルツイン1211は、基板処理装置130_1に割り当てた処理量を含む会話内容として、「XX月YY日までに装置1はAをα個処理しなさい」を、装置レイヤデジタルツイン1212_1に送信する。
【0199】
ステップS1602において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、会話内容を送信したことに応じて、装置レイヤデジタルツイン1212_1より、会話内容(応答)として、「完了しました」を受信する。
【0200】
続いて、ステップS1611において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、基板処理装置130_2に割り当てた処理量を含む会話内容として、「XX月YY日までに装置2はBをβ個処理しなさい」を、装置レイヤデジタルツイン1212_2に送信する。
【0201】
ステップS1612において、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、Fabレイヤデジタルツイン1211から送信された会話内容に基づいて、MCレイヤデジタルツイン1213_1に送信する会話内容を出力する。具体的には、会話内容として、「条件bで処理しなさい」を出力し、MCレイヤデジタルツイン1213_1に送信する。なお、このタイミングで、MCレイヤ1240内において、トラブル(基板処理装置130_2が次に処理すべき処理量について、変更が必要な事象)が発生したとする。
【0202】
ステップS1613において、MCレイヤデジタルツイン1213_1は、次に処理すべき処理量について変更が必要な事象が発生したことを検知し、会話内容として、「トラブルが発生しました」を、装置レイヤデジタルツイン1212_2に送信する。
【0203】
ステップS1614において、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、MCレイヤデジタルツイン1213_1から送信された会話内容(応答)に基づいて、基板処理装置130_2が実行可能な処理量を導出する。これにより、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、導出した処理量を含む会話内容として、「装置2はBを(β-n)個しか処理できません」を、Fabレイヤデジタルツイン1211に送信する。
【0204】
ステップS1615において、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、MCレイヤデジタルツイン1213_1より送信された会話内容(応答)に基づいて、トラブルに対する最適な解消方法を導出する。また、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、導出した解消方法を含む会話内容として、「在庫パーツZを使って復旧してください」を、MCレイヤデジタルツイン1213_1に送信する。
【0205】
一方、ステップS1616において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、装置レイヤデジタルツイン1212_2より送信された会話内容(応答)に基づいて、基板処理装置130_1、130_2に割り当てる処理量を変更する。このうち、Fabレイヤデジタルツイン1211は、割り当てを変更した後の基板処理装置130_2の処理量を含む会話内容として、「XX月YY日までに装置2は、Bを(β-n)個処理しなさい」を、装置レイヤデジタルツイン1212_2に送信する。
【0206】
ステップS1617において、装置レイヤデジタルツイン1212_2は、Fabレイヤデジタルツイン1211から送信された会話内容に基づいて、MCレイヤデジタルツイン1213_1に送信する会話内容を出力する。具体的には、会話内容として、「条件b’で処理しなさい」を出力し、MCレイヤデジタルツイン1213_1に送信する。
【0207】
ステップS1618において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、割り当てを変更した後の処理量を含む会話内容を送信したことに応じて、装置レイヤデジタルツイン1212_2より、会話内容(応答)として、「完了しました」を受信する。
【0208】
ステップS1621において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、割り当てを変更した後の処理量を含む会話内容として、「装置1は、追加でAをγ個処理しなさい」を、装置レイヤデジタルツイン1212_1に送信する。
【0209】
ステップS1622において、Fabレイヤデジタルツイン1211は、割り当てを変更した後の処理量を含む会話内容を送信したことに応じて、装置レイヤデジタルツイン1212_1より、会話内容(応答)として、「完了しました」を受信する。
【0210】
<生産管理処理の流れ>
次に、生産管理処理の流れについて説明する。
図17は、生産管理処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図17では、最上位以外の所定の階層に位置するデジタルツインによる、生産管理処理時の動作について説明する。
【0211】
ステップS1701において、所定の階層に位置するデジタルツインは、1階層上位の階層に位置するデジタルツインから、割り当てられた処理量を含む会話内容を受信する。
【0212】
ステップS1702において、所定の階層に位置するデジタルツインは、対応する動作単位の現在の稼働情報を取得する。
【0213】
ステップS1703において、所定の階層に位置するデジタルツインは、取得した稼働情報に基づいて、対応する動作単位の状態を示す状態情報を推定する。
【0214】
ステップS1704において、所定の階層に位置するデジタルツインは、推定した状態情報に基づいて、対応する動作単位が次に処理すべき処理量についての変更が必要な事象の発生有無を監視する。
【0215】
ステップS1705において、所定の階層に位置するデジタルツインは、処理量について変更が必要な事象が発生したか否か、及び、事象の種類を判定する。ステップS1705において、事象が発生していないと判定した場合には(ステップS1705においてNOの場合には)、ステップS1708に進む。
【0216】
一方、ステップS1705において、事象が発生したと判定した場合には(ステップS1705においてYESの場合には)、ステップS1706に進む。
【0217】
ステップS1706において、所定の階層に位置するデジタルツインは、1階層上位の階層に位置するデジタルツインに、発生した事象と、実行可能な処理量とを含む会話内容を送信する。
【0218】
ステップS1707において、所定の階層に位置するデジタルツインは、1階層上位の階層に位置するデジタルツインより、割り当てが変更された後の処理量を受信する。
【0219】
ステップS1708において、所定の階層に位置するデジタルツインは、受信した処理量に基づいて、1階層下位の階層に位置するデジタルツインに割り当てる処理量を導出する。
【0220】
ステップS1709において、所定の階層に位置するデジタルツインは、1階層下位の階層に位置するデジタルツインに、割り当てた処理量を含む会話内容を送信する。
【0221】
ステップS1710において、所定の階層に位置するデジタルツインは、1階層下位の階層に位置するデジタルツインより、事象を含む会話内容(応答)を受信したか否かを判定する。ステップS1710において、事象を含む会話内容(応答)を受信したと判定した場合には(ステップS1710においてYESの場合には)、ステップS1706に戻る。
【0222】
一方、ステップS1710において、事象を含む会話内容(応答)を受信していないと判定した場合には(ステップS1710においてNOの場合には、ステップS1711に進む。
【0223】
ステップS1711において、所定の階層に位置するデジタルツインは、生産管理処理を終了するか否かを判定する。ステップS1711において、生産管理処理を終了しないと判定した場合には(ステップS1711においてNOの場合には)、ステップS1702に戻る。
【0224】
一方、ステップS1711において、生産管理処理を終了すると判定した場合には(ステップS1711においてYESの場合には)、生産管理処理を終了する。
【0225】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、サイバーフィジカルシステム1200において、サイバー空間を形成し、フィジカル空間の基板製造プロセスを管理する管理システムは、
・複数のデジタルツインを有する。また、複数のデジタルツインは、各基板処理装置の機能を実現するハードウェアの動作単位に対応しており、動作単位の階層関係に応じた階層構造を有する。
・いずれかのデジタルツインにおいて検出された事象に基づく情報(例えば、変更後の処理量の割り当て)が、異なる階層に位置するデジタルツインとの間で送受信されるように、複数のデジタルツインを接続する伝送経路を有する。
【0226】
このように、動作単位に対応するデジタルツインを形成し、階層構造に応じた伝送経路を介して情報を送受信することで、第3の実施形態に係る管理システムによれば、上記第1及び第2の実施形態と同様の効果を享受することができる。加えて、第3の実施形態に係る管理システムによれば、生産管理処理等の特定の処理を、効率的に実行することが可能となる。
【0227】
[その他の実施形態]
上記第1乃至第4の実施形態では、管理装置120_1~120_nを、それぞれ、別体の管理装置として構成したが、管理装置120_1~120_nは、一体の装置として構成してもよい。この場合、一体の装置上で、n台の管理装置を仮想的に(つまり、仮想マシンとして)動作させるように構成してもよい。
【0228】
また、上記第1乃至第4の実施形態では、基板処理装置130_1~130_nに対応する管理装置120_1~120_nが、それぞれ、単体で管理プログラムを実行するものとして説明した。しかしながら、1台の基板処理装置(例えば、基板処理装置130_1)に対応する管理装置(例えば、管理装置120_1)が、例えば、複数台のコンピュータにより構成されてもよい。そして、複数台のコンピュータそれぞれに管理プログラムをインストールすることで、管理プログラムが分散コンピューティングの形態で実行されてもよい。
【0229】
また、上記第1乃至第4の実施形態では、管理装置120_1~120_nの補助記憶装置203への管理プログラムのインストール方法の一例として、ネットワークを介してダウンロードして、インストールする方法について言及した。このとき、ダウンロード元については特に言及しなかったが、かかる方法によりインストールする場合、ダウンロード元は、例えば、管理プログラムをアクセス可能に格納したサーバ装置であってもよい。また、当該サーバ装置は、ネットワークを介して管理装置120_1~120_nそれぞれからのアクセスを受け付け、課金を条件に管理プログラムをダウンロードするクラウド上の装置であってもよい。つまり、当該サーバ装置は、管理プログラムの提供サービスを行うクラウド上の装置であってもよい。
【0230】
また、上記第1乃至第4の実施形態では、複数の管理装置120_1~120_nを含む管理システムにおいてサイバー空間が形成されるものとして説明したが、管理システム以外においてサイバー空間が形成されてもよい。例えば、サーバ装置110_1~110_3においてサイバー空間が形成されてもよい。
【0231】
また、上記第1乃至第4の実施形態では、モデルの詳細について言及しなかったが、上記第1乃至第4の実施形態において用いられるモデルは、例えば、深層学習を含む機械学習モデルであってもよく、例えば、
・RNN(Recurrent Neural Network)、
・LSTM(Long Short-Term Memory)、
・CNN(Convolutional Neural Network)、
・R-CNN(Region based Convolutional Neural Network)、
・YOLO(You Only Look Once)、
・SSD(Single Shot MultiBox Detector)、
・GAN(Generative Adversarial Network)、
・SVM(Support Vector Machine)、
・決定木、
・Random Forest
等のいずれかであってもよい。
【0232】
なお、代替的に、GA(Genetic Algorism)、GP(Genetic Programming)など、遺伝的アルゴリズムを用いたモデル、あるいは、強化学習により学習されたモデルであってもよい。
【0233】
あるいは、上記第1乃至第4の実施形態で用いられるモデルは、PCR(Principal Component Regression)、PLS(Partial Least Square)、LASSO、リッジ回帰、線形多項式、自己回帰モデル、移動平均モデル、自己回帰移動平均モデル、ARXモデルなど、深層学習以外の一般的な統計解析によって得られるモデルであってもよい。あるいは、上記モデルを組み合わせて用いてもよい。
【0234】
なお、機械学習モデルを学習する際には、例えば、
図8の説明の際に“入力”として用いるデータと、“推定”されるデータとを予め取得しておき、それぞれのデータを「入力データ」及び「正解データ」とした学習用データが用いられてもよい。
【0235】
また、上記第1の実施形態では、3通りの接続態様について示したが、デジタルツインの接続態様はこれらに限定されない。また、各デジタルツインが主体となって実行する処理に応じて、接続態様を変更するように構成してもよい。
【0236】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0237】
本出願は、2020年12月25日に出願された日本国特許出願第2020-217779号に基づきその優先権を主張するものであり、同日本国特許出願の全内容を参照することにより本願に援用する。
【符号の説明】
【0238】
100 :サイバーフィジカルシステム
120_1~120_n :管理装置
130_1~130_n :基板処理装置
310 :サイバー空間
330 :フィジカル空間
710 :エージェント部
720 :状態推定部
730 :モデル予測制御部
811 :事象検出モデル
812 :判断部
813 :送信部/受信部
814 :解析モデル
821 :状態推定モデル
831 :予測モデル
832 :目的関数部
833 :最適化部
834 :検証部
1000 :サイバーフィジカルシステム
1010 :サイバー空間
1200 :サイバーフィジカルシステム
1210 :サイバー空間
1410 :エージェント部
1420 :状態推定部
1511 :事象検出モデル
1512 :判断部
1513 :送信部/受信部
1514 :解析モデル
1521 :状態推定モデル