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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/043 20060101AFI20241119BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20241119BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F04D29/043 A
F04D29/60 D
F04D29/58 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020054026
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156172
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】早川 淳一
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-115731(JP,A)
【文献】特開平07-103183(JP,A)
【文献】特開平04-219529(JP,A)
【文献】特開2016-211476(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212533(WO,A1)
【文献】特開平11-082556(JP,A)
【文献】特開平07-293597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/043
F04D 29/60
F04D 29/58
F04D 13/00
F16D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車が連結された回転軸を有するポンプと、
前記ポンプの回転軸を回転させるように駆動軸を回転させる駆動装置と、
入力軸と出力軸とを有し、電気をかけることで生じる場の作用で粘性が変化する粘性流体を、当該入力軸から当該出力軸までのトルクの伝達経路に内蔵し、前記粘性流体にかける場の強さに応じて当該入力軸から当該出力軸にトルクを伝達するトルク伝達装置と、
を備え、
前記トルク伝達装置は、駆動軸と回転軸の間、前記駆動軸の途中、または前記回転軸の途中に設けられ、
前記回転軸に備えられ前記トルク伝達装置の外周を冷却する水流を起こす羽根車、
あるいは、
前記駆動軸に備えられ前記トルク伝達装置の外周を冷却する空気流れを起こすファン、
を備えているポンプ装置。
【請求項2】
前記駆動軸は、前記駆動装置と前記トルク伝達装置の間に、前記トルク伝達装置の周囲に空気流れを引き起こすファンを備える
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記駆動軸は、前記トルク伝達装置と前記ポンプの間に、前記トルク伝達装置の周囲に空気流れを引き起こすファンを備える
請求項1または2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記トルク伝達装置は、前記駆動軸の途中に設けられ、
前記トルク伝達装置は、外周にフィンを備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記トルク伝達装置の出力軸は、前記入力軸と前記入力軸に設けられたディスクと前記粘性流体を収容する空間が形成されたヨークを有し、
前記粘性流体が前記ヨークの内部及びフィンの内部を循環する流路が設けられている
請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記流路は、前記ヨークの内壁を貫通して前記フィンへ延びる第1の流路と、第1の流路と連通し前記フィンに形成された第2の流路と、当該第2の流路と連通しており且つ前記ヨークの内壁を貫通して前記フィンへ延びる第3の流路とを有し、
前記第3の流路の前記ヨークの内壁側の端の位置は、前記第1の流路のヨークの内壁側の端の位置より、前記入力軸の回転軸芯に近い
請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記トルク伝達装置は、前記回転軸で且つ前記ポンプがポンピングする揚水に晒される位置に設けられている
請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置及びトルク伝達装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の立軸ポンプの一例を、図8を参照して説明する。図8は、従来の立軸ポンプを設置したポンプ場の構造図である。図8において、第1の床410に吐出しエルボ412が配設され、第1の床410の下に設けられた吸込水槽414内に揚水管416と羽根車ケーシング418および吸込ベル420などが一体的に懸垂配設される。そして、第1の床410の上方に設けられた第2の床422に、減速装置424およびこれに連結された原動機426が配設され、吐出しエルボ412の外壁を垂直方向に貫通突出するポンプ軸428が適宜な軸継手を介して減速装置424の出力軸に連結される。そこで、原動機426の駆動により、その回転数が減速装置424で減速され、その減速された回転数でポンプ軸428が回転駆動されて立軸ポンプによる揚水がなされる。
【0003】
かかる立軸ポンプの設置構造にあっては、吐出しエルボ412を配設する第1の床410と、その上方に設けられて減速装置424および原動機426を配設する第2の床422とを備えた床構造のポンプ建屋が必要である。このような構造であるので、ポンプ建屋の建設費用が高く、また、立軸ポンプの設置高さが高いために、背丈の高いクレーンなどが組立作業に必要であり、それだけ組立作業が繁雑なものであった。さらに、減速装置424には、潤滑油を冷却するための冷却装置などが付帯設備として必要である。
【0004】
これらの課題を解決するために、図9に示す構造図によるポンプ機場が提案されている。すなわち、吐出しエルボ430と揚水管490と羽根車ケーシング492および吸込ベル494が一体的に構成された立軸ポンプが、吐出しエルボ430が吸込水槽488の上に配設された床484に配設され、吐出しエルボ430から下の揚水管490と羽根車ケーシング492および吸込ベル494が一体的に吸込水槽488の水面下まで懸垂配設されている。ここで、減速装置450が吐出しエルボ430の外壁に一体的に付設されて、減速装置の出力軸がポンプ軸434と連結され、また減速装置の入力軸452が吐出しエルボ430により水平方向に向けられる吐出し方向と反対側に水平方向に突出されている。減速装置450の入力軸452に適宜に軸継手を介して連結された原動機486が配設される。
【0005】
このような構成によれば、吐出しエルボ30の外壁に減速装置450が付設されるので、立軸ポンプの設置高さが低くなり、組み立て分解に際して背丈の高いクレーンなどを必要とせず、また、設置するポンプ建屋は、床は1つで良いためポンプ建屋の建築費用が安価にできる。また、減速装置430の潤滑油を、吐出しエルボ430の外壁に接して流下させ、吐出しエルボ430の外壁に直接的に接させるとともに、吐出しエルボ430内を通過する流体により効果的に冷却させることで、減速装置430の潤滑油を冷却する冷却装置を、付帯設備として必要としないなどの効果を奏している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-193799号公報
【文献】特開平6-200960号公報
【文献】特開2017-78471号公報
【文献】特開2008-281098号公報
【文献】実開平3-32221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、減速装置のサイズは、減速の程度が歯車比により決まってしまうため、より小型化をするには限界があった。
【0008】
また、減速装置は、歯車を用いるため、経時的な歯車の摩耗や、繰り返し疲労による歯車の破損の虞があるので、定期的にメンテナンスを行う必要があった。また、近年、排水の要請に応じて回転数を高くしたり低くしたりする必要があり、そのため、機械的に対応するには複数の歯車比を備え、クラッチ機構が必要となるなど、複雑さが増し、コスト増となるとともに、サイズ的にも大型化していた。
【0009】
回転数を変える装置としては、駆動機が電動機である場合には電動機に供給する電源をインバータを介することで可能であるが、排水機場で用いるポンプの駆動機に用いられるような電動機は容量が大きく、それに応じたインバータは、特殊仕様であるので、サイズ的には大きく、金額的には高価で、納期的には長期に及ぶことが課題であった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、破損もしく摩耗を抑制しつつ回転軸の回転数を変更可能で、メンテナンスに係る労力を抑制するとともに、ポンプ機場の設備の大型化を抑制することを可能とするポンプ装置及びトルク伝達装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係るポンプ装置は、羽根車が連結された回転軸を有するポンプと、前記ポンプの回転軸を回転させるように駆動軸を回転させる駆動装置と、入力軸と出力軸とを有し、電気をかけることで生じる場の作用で粘性が変化する粘性流体を、当該入力軸から当該出力軸までのトルクの伝達経路に内蔵するトルク伝達装置と、を備え、前記トルク伝達装置は、駆動軸と回転軸の間、前記駆動軸の途中、または前記回転軸の途中に設けられている。
【0012】
この構成によれば、電気をかけることで生じる場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させる粘性流体を用いたトルク伝達装置を採用することにより、破損もしく摩耗を抑制しつつ回転軸の回転数を変更可能で、メンテナンスに係る労力を抑制するとともに、ポンプ機場の設備の大型化を抑制することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係るポンプ装置は、第1の態様に係るポンプ装置であって、前記駆動軸は、前記駆動装置と前記トルク伝達装置の間に、前記トルク伝達装置の周囲に空気流れを引き起こすファンを備える。
【0014】
この構成によれば、粘性流体の温度が上昇して発熱があっても、駆動軸に設けられたファンが回転してトルク伝達装置周辺に空気流を生じさせ、その空気流にトルク伝達装置に生じた熱が伝達されるので、トルク伝達装置は冷却される。
【0015】
本発明の第3の態様に係るポンプ装置は、第1または2の態様に係るポンプ装置であって、前記駆動軸は、前記トルク伝達装置と前記ポンプの間に、前記トルク伝達装置の周囲に空気流れを引き起こすファンを備える。
【0016】
この構成によれば、粘性流体の温度が上昇して発熱があっても、駆動軸に設けられたファンが回転してトルク伝達装置周辺に空気流を生じさせ、その空気流にトルク伝達装置に生じた熱が伝達されるので、トルク伝達装置は冷却される。
【0017】
本発明の第4の態様に係るポンプ装置は、第1から3のいずれかの態様に係るポンプ装置であって、前記トルク伝達装置は、前記駆動軸の途中に設けられ、前記トルク伝達装置は、外周にフィンを備える。
【0018】
この構成によれば、出力軸が回転している場合には、熱伝達により、トルク伝達装置の外周に備えられたフィンの放熱作用でトルク伝達装置が冷却できる。
【0019】
本発明の第5の態様に係るポンプ装置は、第4の態様に係るポンプ装置であって、前記トルク伝達装置の出力軸は、前記入力軸と前記入力軸に設けられたディスクと前記粘性流体を収容する空間が形成されたヨークを有し、前記粘性流体が前記ヨークの内部及びフィンの内部を循環する流路が設けられている。
【0020】
この構成によれば、出力軸が回転している場合には、熱伝達により、トルク伝達装置の外周に備えられたフィンの放熱作用でトルク伝達装置が冷却できる。それととともに、出力軸が回転していない場合で入力軸が回転している場合であっても、入力軸の複数のディスクが回転することに伴う遠心力の作用で、ディスクとヨークの間の粘性流体が、ディスクの外周と径方向で相対するヨークの内壁から、トルク伝達装置の外周に備えられたフィンの内部まで貫通する第1の流路を通過して、フィンに形成された第2の流路を通過する。このため、トルク伝達装置の内部の熱は粘性流体に伴ってファンに形成された第2の流路まで伝えられ、さらに、ファンを経由して周囲の空気に放熱する。
放熱して冷却された粘性流体は、トルク伝達装置の外周に備えられたフィンに沿って設けられた第2の流路を通る。そして、入力軸の端部側で、ディスクの軸方向で相対するヨークの入力軸に近い内壁から、トルク伝達装置の外周に備えられたに向けてヨークを貫通する第3の流路を介して、再びディスクを収容する収容空間に戻される。
【0021】
本発明の第6の態様に係るポンプ装置は、第5の態様に係るポンプ装置であって、前記流路は、前記ヨークの内壁を貫通して前記フィンへ延びる第1の流路と、当該第1の流路と連通しており且つ当該第1の流路よりも入力軸側に設けられ且つ前記ヨークの内壁を貫通して前記フィンへ延びる第2の流路とを有し、前記第2の流路の前記ヨークの内壁側の端の位置は、前記第1の流路のヨークの内壁側の端の位置より、前記入力軸の回転軸芯に近い。
【0022】
この構成によれば、冷却された粘性流体が戻される位置は、収容空間から粘性流体が流出する位置よりも相対的に入力軸の回転軸芯に近いので、それに伴い粘性流体にかかる遠心力が小さい。この遠心力の差により、粘性流体が循環する力が生じる。
【0023】
本発明の第7の態様に係るポンプ装置は、第1の態様に係るポンプ装置であって、前記トルク伝達装置は、前記回転軸で且つ前記ポンプがポンピングする揚水に晒される位置に設けられている。
【0024】
この構成によれば、粘性流体の温度が上昇することになるが、本実施形態においては、そのような発熱があっても、トルク伝達装置がポンプのケーシング内にあるので、ポンプの羽根車の回転によってケーシング内に水が満たされれば、トルク伝達装置の外周を水が通過する際に、トルク伝達装置を冷却するので特別な冷却装置をポンプとは別置する必要がない。
【0025】
本発明の第8の態様に係るトルク伝達装置の運転方法は、電気をかけることで生じる場の作用で粘性が変化する粘性流体を、入力軸から出力軸までのトルクの伝達経路に内蔵するトルク伝達装置の運転方法であって、単位時間のうち、ある時間に、前記粘性流体に作用する場を生じさせるように電気をかける工程と、単位時間のうち、残りの時間に、前記粘性流体に作用する場が生じないように電気をかけないようにする工程と、を有し、電気をかける時間と電気をかけない時間の割合を可変にすることによって、前記トルク伝達装置の入力軸から出力軸への回転エネルギーの伝達割合を可変にするトルク伝達装置の運転方法である。
【0026】
この構成によれば、電気を供給する時間と電気をかけない時間の割合を変えることで、入力軸から出力軸までのトルクの伝達経路に電気的な場が生じる時間割合を変え、入力軸から出力軸への回転エネルギーの伝達割合を任意に決めて運転することが可能である。このような運転をすることで、粘性流体の発熱を冷却する装置を、より小型化あるいは不要とすることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、電気をかけることで生じる場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させる粘性流体を用いたトルク伝達装置を採用することにより、破損もしく摩耗を抑制しつつ回転軸の回転数を変更可能で、メンテナンスに係る労力を抑制するとともに、ポンプ機場の設備の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態に係るトルク伝達装置の縦断面図である。
図2A】第1の実施形態に係るポンプ装置の一部を示す模式断面図である。
図2B】第2の実施形態に係るポンプ装置の模式断面図である。
図2C】羽根車部の詳細を示す模式断面図である。
図3】第3の実施形態に係るポンプ装置の一部を示す模式断面図である。
図4図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたトルク伝達装置の縦断面図である。
図5A図4とは別の態様で、図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたことを示すトルク伝達装置の縦断面図である。
図5B図5Aのトルク伝達装置の横断面図である。
図6図4図5A図5Bと同じく、図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたことを示す縦断面図である。
図7図1に示したトルク伝達装置とは別の態様のトルク伝達装置の縦断面図である。
図8】従来の立軸ポンプを設置したポンプ機場の構造図である。
図9図8とは別のポンプ機場の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0030】
まず、電気をかけることで生成される場によって作用される性質を持つ微粒子を潤滑油中に含ませることで、潤滑油の粘性が、それらの場により変化する性質を利用したトルク伝達装置について説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
例えば、図1は、第1の実施形態に係るトルク伝達装置の縦断面図である。第1の実施形態に係るトルク伝達装置125は、入力軸101と、出力軸102とを有している。入力軸101(例えば入力軸101の出力軸102側の端部付近)には、複数のディスク121が互いに間隔をおいて設けられている。出力軸102の一部であるヨーク123の内部には、ディスク121のそれぞれを収容する収容空間が形成されている。
【0032】
収容空間の端部それぞれには、電気的絶縁性の気密シール104が設けられており、シールされた収容空間内には潤滑油などの電気的絶縁性の液媒体に固体粒子を含んだ粘性流体105が封入されている。出力軸102にはプラス電極が、入力軸101にはマイナス電極が接触し、これらプラス電極とマイナス電極に電圧をかけることで、収容空間内に電気的な場(電場ともいう)を生じさせるようになっている。
【0033】
電圧がかかっていない状態では、粘性流体105に電気的な場が生じないので、ディスク121とヨーク123の間には、粘性流体105の液媒体の粘性によって生じるわずかな力しか作用しないので、入力軸101が回転しても、入力軸101のトルクは出力軸102に伝達されず、出力軸102は回転しない。
【0034】
しかし、徐々に電圧をかけていくと、それに応じて、ディスク121とヨーク123の間に電気的な場が生じ強くなる。粘性流体105の固体粒子は電気的な場の強さに応じてクラスタの形成を促進させる。そして、粘性流体105の粘性は固体粒子のクラスタの成長に応じて大きくなる。このため、ディスク121とヨーク123に作用するトルクは徐々に増大して、入力軸101から出力軸102に伝達されるトルクが徐々に増大する。
【0035】
そして、粘性流体105に作用する電気的な場の強さが一定以上になると、入力軸101のトルクが、ほとんど100%出力軸102に伝達され、あたかも入力軸101と出力軸102が一体化したようになる。
【0036】
電気をかけることで生成される場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させることを利用したトルク伝達装置125は、粘性流体に作用する電気的な場の強さに応じて、入力軸101のトルクを出力軸102に伝達する。このように、トルク伝達装置125は、入力軸101と出力軸102とを有し、電気をかけることで生じる場の作用で粘性が変化する粘性流体を、当該入力軸101から当該出力軸102までのトルクの伝達経路に内蔵する。
【0037】
しかしながら、入力軸のトルクより、出力軸のトルクが小さい状態の運転は、入力軸の回転エネルギーを出力軸の回転エネルギーに100%変換せずに、一部を、粘性流体への散逸エネルギーとして排出させる。このため、粘性流体の温度が上昇して粘性流体の性質を劣化させたり、粘性流体の膨張により、粘性流体を気密する気密シールを破損させたりする虞がある。
【0038】
この対策としては、粘性流体を冷却する冷却装置を備えてもよい。しかしながら、別途、冷却装置を設ける必要があるので、設備の大型化や費用が増してしまうという問題がある。
【0039】
それに対して、本実施形態では、従来の機械式の減速装置を、電気をかけることで生成する電気的な場によって作用される性質を持つ微粒子を潤滑油中に含ませることで潤滑油の粘性がそれらの場により変化する性質を利用したトルク伝達装置に代替する際に、設備の大型化及び費用を抑えることも目的とする。
【0040】
以下、各実施形態おいて、ポンプの回転軸を回転させるように駆動軸を回転させる駆動装置は、原動機だけを含んでもよいし、原動機と減速機を含んでてもよい。また各実施形態では、ポンプの一例として立軸ポンプを例に説明するが、これに限らず、横軸ポンプであってもよい。
【0041】
図2Aは、第1の実施形態に係るポンプ装置の一部を示す模式断面図である。図2Aに示すように、立軸ポンプのうち、吐出エルボ部分が示されている。図2Aに示すように、第1の実施形態に係るポンプ装置100は、羽根車(図示せず)が連結された回転軸136を有する立軸ポンプPと、立軸ポンプPの回転軸136を回転させるように駆動軸128を回転させる駆動装置120と、回転軸136の途中に設けられたトルク伝達装置125を備える。
【0042】
吐出エルボ110は略曲管形状だが、吐出エルボの管外では、鉛直下方から吐出エルボ110の貫通孔119を貫通して上方に伸びる回転軸126と、吐出エルボ110の吐出方向とは反対方向から伸びて、駆動装置120の回転駆動力を伝達する駆動軸128が、ポンプ回転軸26に備えられた歯車Aから、駆動軸128に備えられた歯車Zが直接互いにかみ合うように配置されている。羽根車が連結された回転軸を有する。なお、歯車Aから歯車Zに、さらに別の歯車等を介してもよい。
【0043】
回転軸126と駆動軸128と吐出エルボ110との位置関係は、ケーシング114を介すことで決められ、互いに配設される。
【0044】
吐出エルボ110は、回転軸126の軸芯位置に軸方向に貫通孔119が穿設されており、回転軸126は、貫通孔119において、軸封装置132により軸封される。
【0045】
ケーシング114内の歯車Aと歯車Zは、任意の歯車比でよい。回転軸126は、ケーシング114の上部に備えられた軸受122と、ケーシング114の上部に備えられた軸受124によりケーシング114に回転可能に支承される。駆動軸128は、ケーシング114の吐出エルボ110の吐出方向とは反対方向に備えられた駆動軸軸受129により回転可能に支承される。
【0046】
吐出エルボ110の管内には、回転軸126が管外から貫通孔119を通して挿入されている。回転軸126の下端部は、電気をかけることで生じる場(ここでは一例として電場)の作用で、粘性が変化する粘性流体を内蔵したトルク伝達装置に接続している。ここでいうトルク伝達装置とは、例えば前述の図1に示した装置である。ここで、入力軸101の表面と、出力軸102の表面を電気的絶縁材で覆ったり、電気的絶縁被膜を形成させたりしてもよい。図1を例にすれば、回転軸126の下端部は、図1に示したトルク伝達装置125の入力軸101に接続している。
【0047】
トルク伝達装置の出力軸102は、図示しない羽根車を端部に連結された回転軸136と接続する。回転軸136の回転により羽根車(図示せず)は回転する。羽根車の回転により、吸込水槽の水を、揚水管、羽根車ケーシングおよび吸込ベルが一体的に懸垂配設された管路を通して、吐出エルボ110から吐出側に吐出させることができる。
【0048】
ポンプ装置100は、図1に示すようにトルク伝達装置125の出力軸102にはプラス電極T1が、入力軸101にはマイナス電極T2が備え、図2Aに示すように、これらプラス電極T1とマイナス電極T2に電圧をかける電源141を備える。
【0049】
電源141のプラス端子とマイナス端子はそれぞれ、吐出エルボ110の管外部から貫入された管137を通る配線を介して、トルク伝達装置125のプラス電極T1とマイナス電極T2に接続している。
【0050】
電源141は、直流の電圧または電流または印加時間と不印加時間の長さを可変にしてトルク伝達装置125に電気を供給でき、トルク伝達装置125のプラス電極T1とマイナス電極T2に電気を供給する。これにより、収容空間内に収容された粘性流体の粘性が、電気を供給することによって生じた場(ここでは一例として電場)の作用により変化するようになっている。なお、電源141は、電源からトルク伝達装置に単位時間当たりの電気を供給する時間の長さを可変にできる直流電源に限らず、電圧または電流の出力を可変にする直流電源であってもよい。
【0051】
<ポンプの運転例>
次に、ポンプの運転例を述べる。駆動装置120の回転駆動力を伝達する駆動軸128が回転すると、その駆動力は、歯車Zから歯車Aを介して、回転軸126に伝達される。
【0052】
電源141から、トルク伝達装置125のプラス電極T1とマイナス電極T2に電気(電圧)が加えられていない状態では、回転軸126とトルク伝達装置の入力軸101は回転するだけで、その回転トルクは、トルク伝達装置の出力軸102に伝わらず、したがって、回転軸136は回転しない。
すなわち、トルク伝達装置125に内蔵された粘性流体の粘性は最小で、粘性流体の攪拌は行われるが、その時に散逸するエネルギーは小さくほぼゼロである。そのため、粘性流体の温度上昇はほとんど生じない。
【0053】
しかしながら、徐々に電気をかけていくと、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体に場が生じ、場の強さに応じて粘性流体に含まれる固体粒子が、生成された場の方向にクラスタを形成する。そして、粘性流体の粘性は、固体粒子のクラスタの成長に応じて大きくなる。このため、ディスク121とヨーク123に作用するトルクは徐々に増大し、入力軸101のトルクが徐々に出力軸102に伝達される。それに伴い、入力軸101の回転数に対する出力軸102の回転数が徐々に増加していく。出力軸102の回転に伴い回転軸136が回転し、回転軸136に備えられた羽根車の回転により、吸込水槽の水が吐出エルボ110を通って吐出側に吐出される。
【0054】
ところで、入力軸101のトルクよりも出力軸102のトルクが小さい状態で運転する場合は、入力軸101の回転エネルギーを出力軸102の回転エネルギーに100%変換せずに、一部を、粘性流体への散逸エネルギーとして排出させる運転である。
【0055】
このため、粘性流体の温度が上昇することになるが、本実施形態においては、そのような発熱があっても、トルク伝達装置125がポンプのケーシング内にあるので、ポンプの羽根車の回転によってケーシング内に水が満たされれば、トルク伝達装置125の外周を水が通過する際に、トルク伝達装置125を冷却するので特別な冷却装置をポンプとは別置する必要がない。この場合、トルク伝達装置の入力軸101の表面と、出力軸102の表面を電気的絶縁材で覆うか、または電気的絶縁被膜を形成すればよい。これにより、水がトルク伝達装置の外周を通過しても、水中を通した電気的な短絡を回避して、電気を加えることによってディスク121とヨーク123の間の粘性流体に場を効果的に生じさせることができる。
【0056】
したがって、電源から供給する電気の、電圧の高さあるいは電流の大きさを変えることによってディスク121とヨーク123の間の粘性流体に生じる場の強さを変えることができ、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体の粘性を変えることができるので、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合を任意に決めて運転することが可能である。
【0057】
すなわち、従来の立軸ポンプの減速装置が機械式であれば、小型化をするには限界があり、可変速でありながら小型化することはさらに困難で、さらに、歯車を用いるため、定期的にメインテナンスを行う必要があった。それに対して、本実施形態によれば、電気をかけることで生じる場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させる粘性流体を用いたトルク伝達装置125を採用することにより、破損もしく摩耗を抑制しつつ回転軸の回転数を変更可能で、メンテナンスに係る労力を抑制するとともに、ポンプ機場の設備の大型化を抑制することができる。
【0058】
<効率的な運転方法>
次に、効率的な運転方法の一例について説明する。粘性流体に生じる場の強さが一定以上になると、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合は、ほぼ100%となる。その場合には、粘性流体への散逸エネルギーはほぼゼロとなり、あたかも入力軸101と出力軸102が一体化したようになる。これまで述べてきたことを、粘性流体への散逸エネルギーの状態でみると、粘性流体への散逸エネルギーは、粘性流体に生じる場の強さがゼロの場合と、粘性流体に生じる場の強さが一定以上の場合には、粘性流体に生じる場の強さが両者の中間の場合に比べて、小さくなる。
【0059】
本実施形態では、この性質を利用して、以下の運転方法を行うことにより、粘性流体への散逸エネルギーを低減する。
例えば、入力軸101の回転エネルギーのX%(0≦X≦100)を出力軸102の回転エネルギーに変換させる場合、ある単位時間(あるいは、ある一定時間)Tσにおいて、入力軸から出力軸の回転エネルギーの伝達割合が100%となるように粘性流体に生じる場の強さを一定以上とする時間をT100とし、また、入力軸から出力軸の回転エネルギーの伝達割合が0%となるように粘性流体に生じる場の強さをゼロとする時間をT0とし、
Tσ=T100+T0
であって、かつ
100/Tσ×100=X%
とする運転方法である。
【0060】
すなわち、単位時間Tσのうち、X%の時間(T100)で、入力軸から出力軸への回転エネルギーの伝達割合が100%である。すなわち、粘性流体への散逸エネルギーはほぼゼロの状態の運転である。また、単位時間Tσのうち、残りの時間はすべて入力軸101から出力軸102の回転エネルギーの伝達割合が0%となるように粘性流体に生じる場の強さをゼロとする時間をT0なので、同じく粘性流体への散逸エネルギーはほぼゼロの状態の運転である。
【0061】
しかし、単位時間Tσ(=T100+T0)あたりでは、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達がX%になる。よって、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達がX%になるように、時間T0と時間T100が設定されている。
【0062】
このように、単位時間Tσのうち、電源141から、入力軸101から出力軸102の回転エネルギーの伝達割合が100%(あるいは最高割合)となるように粘性流体に生じさせる場の強さを一定以上とする電気を供給する時間T100と、単位時間Tσのうち、残りの時間を入力軸から出力軸の回転エネルギーの伝達割合が0%(あるいは最低割合)となるように粘性流体に生じる場の強さをゼロとする(すなわち電気をかけない)時間T0に設定する。
【0063】
以上、本実施形態に係る、電気をかけることで生じる場の作用で粘性が変化する粘性流体を、入力軸から出力軸までのトルクの伝達経路に内蔵するトルク伝達装置の運転方法は、単位時間のうち、ある時間に、前記粘性流体に作用する場を生じさせるように電気をかける工程と、単位時間のうち、残りの時間に、前記粘性流体に作用する場が生じないように電気をかけないようにする工程と、を有する。電気をかける時間と電気をかけない時間の割合を可変にすることによって、トルク伝達装置125の入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合を可変にする。なお、単位時間とは毎秒単位でも良いし、入力軸が1回転する時間あたりでもよい。
【0064】
この構成によれば、電気を供給する時間T100と電気をかけない時間T0の割合を変えることで、入力軸101から出力軸102までのトルクの伝達経路(具体的には例えばディスク121とヨーク123の間)に電気的な場が生じる時間割合を変え、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合を任意に決めて運転することが可能である。この場合、電源141は、必ずしも電圧あるいは電流の大きさや強さを変える可変機能を備えていないものでもよい。
【0065】
このような運転をすることで、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体の発熱を冷却する装置を、より小型化あるいは不要とすることもできる。
【0066】
以上述べたように、本実施形態によれば、電気を供給することで生ずる場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させる粘性流体を用いたトルク伝達装置を、ポンプ内部に配置するので、従来の減速装置を用いた場合に比べ、装置全体のサイズを小型化することができる。
【0067】
またトルク伝達装置125は、回転軸126で且つ立軸ポンプPがポンピングする揚水に晒される位置に設けられている。これにより、ポンピングする揚水でトルク伝達装置125が冷却されるので、粘性流体の発熱を容易に冷却できる。
なお、トルク伝達装置125は、歯車を用いていないので、定期的なメンテナンスがほぼ不要となるため、ポンプ内部に配置しても問題はない。
【0068】
従来は駆動機が電動機である場合にのみ、電動機に供給する電源を、特殊仕様で、かつ大型で高価なインバータを介して回転数を制御していた。それに対して、本実施形態によれば、電動機であっても電動機以外のエンジンなどの任意の駆動機であっても、そのようなインバータに比べてずっと小型で汎用であり、電圧または電流の出力を可変にする直流電源、あるいは電源からトルク伝達装置に単位時間当たりの電気を供給する時間の長さを可変にできる直流電源を用いることで、ポンプの回転数を可変にすることができる。
【0069】
また、単位時間のうち、ある時間に、粘性流体に作用する電気的な場を生じさせるようにトルク伝達装置に電気をかけ、また、単位時間のうち、残りの時間に、粘性流体に作用する電気的な場が生じないように電気をかけないようにして、電気をかける時間と電気をかけない時間の割合を可変にする。そうすることで、トルク伝達装置125の入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合を可変にすることができる。このようにすることで、粘性流体の発熱をより低く抑えることができる。
特に、電気をかける時間には、トルク伝達装置125の入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合が100%(あるいは、最高割合)となるように、粘性流体に生じる場の強さを一定以上とするように電気をかけると、粘性流体の発熱が最低レベルに抑えられる。このため、粘性流体の冷却装置を小型化、あるいは不要とすることができる。
【0070】
<第2の実施形態>
図2Bは、第2の実施形態に係るポンプ装置の模式断面図である。図2Cは、羽根車部の詳細を示す模式断面図である。図2Cに示すようにポンプの揚水が、本実施形態に係るトルク伝達装置125の外周を流れることでトルク伝達装置125を冷却するようになっている。
【0071】
図2Bは、ポンプ装置10は、構造物99に固定される固定パイプ20と、固定パイプ20内に出し入れ可能に収納されるポンプ本体30を備える。ポンプ装置10の運転時には固定パイプ20内にポンプ本体30が収容され、点検時にはポンプ本体30が固定パイプ20から引き出されるようにして取り扱われる。
【0072】
固定パイプ20は、ポンプ本体30を主に収容するコラムパイプ21と、吸込管25とを有している。コラムパイプ21は、ポンプ本体30を覆うことができる長さを有し、円筒状に形成され、鋼製又は鋳鉄製である。コラムパイプ21は、軸線が鉛直になるように配置されて構造物99に固定される。コラムパイプ21には、収容されたポンプ本体30の上端よりも所定の高さ以上の上方に、水平方向に延びる枝管21pが設けられている。枝管21pは、揚水した水の流路を形成する。コラムパイプ21は、上端に上部フランジ21aが設けられ、下端 に下部フランジ21bが設けられている。上部フランジ21aには、取り外し可能なコラム蓋22が気密に取り付けられている。下部フランジ21bには、吸込管25の吸込管フランジ25fと取り付けられている。
【0073】
吸込管25は、コラムパイプ21の内径よりも小さな径の開口25hが形成された吸込管フランジ25fの下方に異径管25pが取り付けられて一体に形成された部材である。異径管25pは、吸込管フランジ25fから下方に向かって、一旦徐々に径がすぼまった後に、下端付近でコラムパイプ21の径と同程度まで急激に径が広がるベルマウス形状に形成されている。
【0074】
ポンプ本体30は、回転軸32を備えた電動機33と、その下方に、ポンプ軸の先端に取り付けられたオープン型の羽根車31とを有している。電動機33は乾式モータであり、内部を外部から封止密閉し、水中で運転される際に水が内部に侵入しないように、モータケーシング337で全体が囲われている。モータケーシング337の下部には、電動機33の回転軸32の貫通部があり、この貫通部には軸封装置としてのメカニカルシール336が設けられている。
メカニカルシール336を通して延出した回転軸32は、これまですでに説明したトルク伝達装置の入力軸101に接続する。トルク伝達装置の出力軸102にはポンプ軸が接続する。トルク伝達装置には、図示しないが従前に説明した直流電源が接続され電気(電圧または電流)が可変的に供給できるようになっている。
【0075】
メカニカルシール336とモータケーシング337とで密封された内部には、回転軸32に固着された回転子332、回転子332と僅かな隙間をもってその外周に配置された 固定子333及び回転軸32を回転可能に支持する下部軸受334と上部軸受335が収納されている。固定子333は、モータケーシング337に固定されている。モータケーシング337の上部からは、駆動用の電源ケーブル33cが引き出されている。ケーブル引き出し部は水がモータの内部に侵入しないようにシールされている。
【0076】
ポンプ本体30は、さらに、羽根車31の側面周囲(回転方向周り)を覆うように囲む 羽根車ケーシング34を有している。また、羽根車31の吐出側にはガイドベーン35が配設されている。羽根車ケーシング34は、羽根車31に加えてガイドベーン35をも側面周囲で覆うように囲む長さを有している。羽根車ケーシング34は、下端の内径が吸込管フランジ25fの開口25h(異径管25pの内径)と略同じ大きさに形成され、上端の外径がコラムパイプ21の内径よりも僅かに小さく形成されている。羽根車ケーシング34は、下端から上端に向かって径が徐々に広がるように形成されている。
【0077】
羽根車ケーシング34の外周には、円環状の嵌合座34sが形成されている。他方、コラムパイプ21の内面には、円環状の受け座23が形成されている。受け座23と嵌合座 34sとは、そこを水が漏洩しないように密着する構成となっている。受け座23と嵌合座34sとが嵌合することにより、コラムパイプ21にポンプ本体30が載置され、ポンプ本体30がコラムパイプ21に収容される。
【0078】
図2Cに示すように、モータケーシング337には、羽根車31の揚水の一部をトルク伝達装置125の外周に導入する流入口と、トルク伝達装置125の外周を流れた揚水の一部をガイドベーン35に流出する流出口を備えている。この構造により、羽根車31の揚水の一部が、トルク伝達装置125の外周に導かれて流れるときに、トルク伝達装置125で発生する熱を冷却することができる。
【0079】
次にポンプ装置10の運転の一例を説明する。雨水の流入により水槽内の水位が上昇し、水位 A1よりも低い状態で、トルク伝達装置に電気の供給をゼロの状態で電動機33を始動し始める。トルク伝達装置に電気の供給をゼロの状態であるので、出力軸102には入力軸101のトルクが伝達せず、したがってポンプ軸は回転しない。
水位がさらに上昇し、羽根車31の下端部分の水位SLWLに到達すると、羽根車31は水を吸い込み可能となる。そこで、トルク伝達装置に電気の供給を徐々に増加することで、入力軸101のトルクを出力軸102に徐々に伝達していくことができ、ポンプ軸は徐々に回転数を増加するようになる。水位が定常運転水位RWLまで上昇する間に、入力軸101のトルクを出力軸102に100%伝達するように、トルク伝達装置125に電気を供給する。
【0080】
逆に、水位が最高水位HWLの状態から、徐々に水位が低下し、定常運転水位RWLを下回ると、トルク伝達装置に電気の供給を徐々に減少することで、入力軸101から出力軸102へのトルクの伝達を徐々に低減していくことができ、ポンプ軸は徐々に回転数を減少する。水位がSRWL以下になると、入力軸101のトルクを出力軸102に伝達しないように、トルク伝達装置への電気の供給を停止する。このように、始動、停止時の水位が過渡的な状況に応じて、回転軸や、電動機本体に等に急激な負荷や過剰な電流のかからない運転が可能である。
【0081】
<第3の実施形態>
図3は、第3の実施形態に係るポンプ装置の一部を示す模式断面図である。図2Aの第1の実施形態で説明したのと同じように、吐出エルボ110の管外で、鉛直下方から吐出エルボ110の貫通孔119を貫通して上方に伸びる回転軸126と、吐出エルボ110の吐出方向とは反対方向から伸びて、駆動装置120の回転駆動力を伝達する駆動軸128が、回転軸126に備えられた歯車Aと、駆動軸128に備えられた歯車Zが互いにかみ合うように配置されている。もちろん歯車Aと歯車Zに、さらに別の歯車等を介してもよい。回転軸126と駆動軸128と吐出エルボ110との位置関係は、ケーシング114を介すことで決められ互いに配設されている。
【0082】
吐出エルボ110は、回転軸126の軸芯位置に軸方向に貫通孔119が穿設されており、回転軸126は、貫通孔119において、軸封装置132により軸封される。
【0083】
ケーシング114内の第一の歯車と第二の歯車は、任意の歯車比であり、回転軸126は、ケーシング114の上部に備えられた軸受122と、ケーシング114の上部に備えられた軸受124によりケーシング114に回転可能に支承され。駆動軸128は、ケーシング114の吐出エルボ110の吐出方向とは反対方向に備えられた駆動軸軸受により回転可能に支承される。
【0084】
吐出エルボ110の管内には、回転軸126が管外から貫通孔119を通して挿入され、図示しない端部に備えた羽根車と接続する。回転軸126の回転により羽根車は回転する。羽根車の回転により、吸込水槽の水を、揚水管、羽根車ケーシングおよび吸込ベルが一体的に懸垂配設された管路を通して、吐出エルボ110から吐出側に吐出させることができる。
【0085】
駆動軸28の、それに備えられた歯車Zとは反対側の端部は、電気をかけることで生じる場の作用で、粘性が変化する粘性流体を内蔵したトルク伝達装置に接続している。ここでいうトルク伝達装置125とは、例えば前述の図1に示した装置でよい。図3における態様では、図2Aと異なり、入力軸101の表面と、出力軸102の表面を電気的絶縁材で覆ったり、電気的絶縁被膜を形成させたりしなくてもよい。図1を例にすれば、駆動軸128の歯車Zとは反対側の端部は、図1に示した装置の出力軸102に接続している。
【0086】
トルク伝達装置125の入力軸101は、駆動装置120による回転駆動力を伝達する駆動軸138と接続している。駆動装置120の回転により駆動軸138は回転され、それに接続するトルク伝達装置125の入力軸101が回転する。
【0087】
トルク伝達装置125の出力軸102にはプラス電極T1が、入力軸101にはマイナス電極T2が備えられ、またポンプ装置101bは、これらプラス電極T1とマイナス電極T2に電圧を供給する電源141を備える。
【0088】
電源141は直流の電圧または電流の出力を可変、あるいは単位時間当たりの電気の供給時間を可変にして供給でき、トルク伝達装置125のプラス電極T1とマイナス電極T2に電気を供給すると、収容空間内に収容された粘性流体の粘性が、電気の供給によって生じた場の作用により変化するようになっている。
【0089】
駆動軸138には、軸周辺の空気を軸方向に送風するファン151が設けられている。このため、駆動装置120が回転すると、駆動軸138に備えられたファン151も回転して、軸周辺の空気を軸方向に送風を開始する。このため、トルク伝達装置の外表面にも空気の流れが生じ、トルク伝達装置に生じた熱を冷却することができる。駆動軸38に設けられたファン151により軸方向に生じる空気の流れは、トルク伝達装置125方向に向けても良いし、逆方向に向けても良い。
【0090】
また、駆動軸128にも一例として同じく軸周辺の空気を軸方向に送風するファン152が設けられていている。その場合はトルク伝達装置125により、駆動軸128にトルクが伝達され、駆動軸28が回転すると、駆動軸28に備えられたファン152も回転して、軸周辺の空気を軸方向に送風を開始する。駆動軸128に備えられたファン152により生じさせる空気の流れは、駆動軸138に備えられたファン152により生じさせる空気の流れの方向と同じ方向とするのが、冷却効果を高める上で好ましい。
【0091】
次に、ポンプの運転例を説明する。駆動装置120の回転駆動力を伝達する駆動軸138が回転すると、その駆動力は、トルク伝達装置125を介して、駆動軸28に伝達される。
【0092】
電源141から、トルク伝達装置125のプラス電極T1とマイナス電極T2に電気が供給されていない状態では、回転軸126とトルク伝達装置の入力軸101は回転するだけで、その回転トルクは、トルク伝達装置の出力軸102に伝わらず、したがって、駆動軸128は回転しない。
【0093】
しかしながら、電源から徐々に電気を供給していくと、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体に場が生じ、場の強さに応じて粘性流体に含まれる固体粒子が場の方向にクラスタを形成する。そして、粘性流体の粘性は、固体粒子のクラスタの成長に応じて大きくなる。このため、ディスク121とヨーク123に作用するトルクは徐々に増大し、入力軸101のトルクが徐々に出力軸102に伝達される。それに伴い、駆動軸128が回転し、駆動軸128のもう一方の端部に備えられた歯車Zを回転させる。
【0094】
駆動軸128に備えられた歯車Zから、回転軸126に備えられた歯車Aまで、互いの歯車が直接にかみ合って、あるいは、歯車Zから歯車Aまでの間をそれらとは別の歯車等を介してかみ合うようにして、最終的に駆動軸128のトルクは回転軸126に伝達され、回転軸126に備えられた羽根車が回転することにより、吸込水槽の水が吐出エルボ110を通って吐出側に吐出される。
【0095】
ここで、入力軸101のトルクよりも出力軸102に伝達されるトルクが小さい状態で運転する場合は、入力軸101の回転エネルギーを出力軸102の回転エネルギーに100%変換せずに、一部が、粘性流体への散逸エネルギーとして排出させる運転である。
【0096】
このため、粘性流体の温度が上昇するが、本実施形態においては、そのような発熱があっても、トルク伝達装置の入力軸101と接続する駆動軸138に備えられたファン151が回転してトルク伝達装置周辺に空気流を生じさせ、その空気流にトルク伝達装置125に生じた熱が伝達されるので、トルク伝達装置は冷却される。また、トルク伝達装置の出力軸102に接続する駆動軸128にファン152が備えられていれば、駆動軸128に備えられたファンも回転して、トルク伝達装置周辺に空気流を生じさせ、さらにトルク伝達装置に生じた熱を冷却することができる。
【0097】
このように、駆動装置の回転駆動力を伝達する駆動軸138にファン151を備えて、駆動軸138の回転でファン151により生成される空気流がトルク伝達装置125の外周を通過する際に、トルク伝達装置125を冷却するので、特別な冷却装置を通常配置される機器に加えて別置する必要がない。
【0098】
したがって、電源からの電気の供給の程度を変えて、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体に生じる場の強さを変えることで、入力軸101から出力軸102への回転エネルギーの伝達割合を任意に決めて運転することが可能である。
【0099】
<第3の実施形態に係るトルク伝達装置の変形例1>
なお、第3の実施形態に係るトルク伝達装置の構成は、次の図4の構成であってもよい。図4は、図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたトルク伝達装置の縦断面図である。図4に示すように、トルク伝達装置125bは、図1のトルク伝達装置125に比べて、トルク伝達装置125bの外周(具体的にはヨーク123の外周)に接続しているフィン106を備える点が異なっている。これにより、図1の形状に比べて空気と接触するトルク伝達装置の外周面積が増加する。トルク伝達装置125bで生じた熱は、フィンを熱伝導してフィンの全面に拡散し、フィン表面に接する空気に熱伝達して放熱する。トルク伝達装置の出力軸102が回転すると、トルク伝達装置125bの外周に接続するフィン周辺の空気がかく乱され、フィン106からの放熱は促進する。
【0100】
特に、図4のトルク伝達装置125bを第3の実施形態に適用すれば、トルク伝達装置の出力軸102の回転により、トルク伝達装置の外周に接続したフィン106が、駆動軸128方向に主に空気流の流れを生じさせる。これにより、前述の駆動軸38や駆動軸28に備えたファン151,152と相乗的な空気流れによる冷却効果を奏することが可能である。
【0101】
<第3の実施形態に係るトルク伝達装置の変形例2>
図5Aは、図4とは別の態様で、図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたことを示すトルク伝達装置の縦断面図である。図5Bは、図5Aのトルク伝達装置の横断面図である。
【0102】
図4と同じように、図5A図5Bではフィン106bがトルク伝達装置の外周に接続しており、図5A図5Bのフィン106bは直方体の板材の一辺を軸方向に、他の一辺を径方向に伸ばした状態でトルク伝達装置の外周に配置されている。図4のフィン106と同じように、空気と接触するトルク伝達装置125cの外周面積が図1の形態より増加している。そしてトルク伝達装置125cで生じた熱は、フィン106bを熱伝導してフィン106bの全面に拡散し、フィン106b表面に接する空気に熱伝達して放熱する。トルク伝達装置125の出力軸102が回転すると、トルク伝達装置125の外周に接続するフィン106b周辺の空気がかく乱され、フィン106bからの放熱は促進する。
【0103】
但し、図5A図5Bに示したフィン106bは、図4に示したフィン106と異なり、トルク伝達装置125の出力軸102の回転により、矢印に示すように、出力軸102に平行な軸方向からフィンに空気が流入し、トルク伝達装置の外周方向に空気流の流れが放射状に拡散する。このような空気流れでも、前述の駆動軸138や駆動軸128に備えたファン151、152がそれぞれ、トルク伝達装置125の方向へ空気を流すようにすれば、相乗的な空気流れによる冷却効果を奏することが可能である。
【0104】
<第3の実施形態に係るトルク伝達装置の変形例3>
図6は、図4図5A図5Bと同じく、図1で示したトルク伝達装置の外周に、フィンを備えたことを示す縦断面図である。図6のフィン106cは、図5A図5Bに示したフィンと同様の形状をしている。
【0105】
但し図6では、ヨーク123には、入力軸101の複数のディスク121の外周と径方向で相対するヨーク123の内壁からフィン106cの内部まで貫通する三つの流路107(第1の流路ともいう)が形成されている。トルク伝達装置125dの外周に備えられたフィン106cには、フィン106cに沿って出力軸102と平行な方向に延びる流路108(第2の流路ともいう)が形成されている。流路108は、三つの流路107と連通している。
【0106】
また、入力軸101の端部側で、ディスク121の軸方向で相対するヨーク123の入力軸101に近い内壁から、トルク伝達装置125dの外周に備えられたフィン106cの内部まで貫通する流路109(第3の流路ともいう)が形成されている。この流路109は、流路108と連通している。このように、三つの流路107及び流路109は、流路108を介して連通している。このように、粘性流体がヨーク123の内部及びフィン106cの内部を循環する流路が設けられている。
【0107】
このような構成にすることで、出力軸102が回転している場合には、図4図5A図5Bで説明したような熱伝達により、トルク伝達装置の外周に備えられたフィン106cの放熱作用でトルク伝達装置125dが冷却できる。それととともに、出力軸102が回転していない場合で入力軸101が回転している場合であっても、入力軸101の複数のディスク121が回転することに伴う遠心力の作用で、ディスク121とヨーク123の間の粘性流体が、ディスク121の外周と径方向で相対するヨーク123の内壁から、トルク伝達装置125dの外周に備えられたフィン106cの内部まで貫通する流路107を通過して、フィン106cに形成された流路108を通過する。このため、トルク伝達装置の内部の熱は粘性流体に伴ってフィン106cに形成された流路108まで伝えられ、さらに、フィン106cを経由して周囲の空気に放熱する。
【0108】
放熱して冷却された粘性流体は、トルク伝達装置の外周に備えられたフィン106cに沿って設けられた流路108を通る。そして、入力軸101の端部側で、ディスク121の軸方向で相対するヨーク123の入力軸101に近い内壁から、トルク伝達装置の外周に備えられたフィン106cに向けてヨーク123を貫通する流路109を介して、再びディスク121を収容する収容空間に戻される。
ここで、流路109のヨーク123の内壁側の端の位置は、流路107のヨーク123の内壁側の端の位置より、入力軸101の回転軸芯に近い。これにより、冷却された粘性流体が戻される位置は、収容空間から粘性流体が流出する位置よりも相対的に入力軸101の回転軸芯に近いので、それに伴い粘性流体にかかる遠心力が小さい。この遠心力の差により、粘性流体が循環する力が生じる。
【0109】
以上述べたように、図6の態様においては、出力軸102が回転していない場合で入力軸101が回転している場合であっても、トルク伝達装置の熱を効率よく冷却することが可能である。
【0110】
なお、図6の例では、粘性流体がヨークの内部及びフィンの内部を循環する流路が形成されたが、これに限らず、粘性流体がヨークの内部だけを循環する流路が形成されていてもよく、その場合、フィンがあってもなくてもよい。
【0111】
以上、図3に係る構成について、図4乃至図6の変形例も含めて説明したが、図3に係る構成のトルク伝達装置の効率的な運転方法に関しては、上述した第1の実施形態に記載の運転方法が同じく本実施態様にも適用できる。
なお、図4乃至図6の変形例に係るトルク伝達装置を、第1の実施形態または第2の実施形態に適用してもよい。
【0112】
<各実施形態に係るトルク伝達装置の変形例>
各実施形態に係るトルク伝達装置の変形例について、図7を用いて説明する。図7は、図1に示したトルク伝達装置とは別の態様のトルク伝達装置の縦断面図である。図7のトルク伝達装置125eは、図1のトルク伝達装置125と同じく、入力軸101と、出力軸102とを有している。入力軸101の出力軸102側の端部付近には、複数のディスク121が互いに間隔をおいて設けられており、出力軸102の一部であるヨーク123には、ディスク121のそれぞれを収容する収容空間が形成されている。
【0113】
収容空間の両端部には、気密シール104Aが設けられており、シールされた収容空間内には潤滑油などの液媒体に固体粒子を含んだ粘性流体105が封入されている。ヨーク123内部であって収容空間の側方にはコイル103が設けられている。コイル103に電流を通電することにより、コイル103から生じ、ディスク121周辺の収容空間に液媒体に固体粒子に作用する磁場131が形成される。粘性流体105の固体粒子は、磁場131の強さに応じてクラスタを形成する。クラスタを介してディスク121から収容空間の壁面へトルクが伝達され、入力軸101と出力軸102とが連結される。
【0114】
電流の大きさによってコイル103から生じる磁場の状態は異なる。電流がコイルに通電していない状態では、粘性流体105に作用する磁場が生じないので、ディスク121とヨーク123の間には、粘性流体105の液媒体の粘性によって生じるわずかな力しか作用しか生じないので、入力軸101が回転しても、入力軸101のトルクは出力軸102に伝達されず、出力軸102は回転しない。
【0115】
しかし、徐々に電流を大きくしていくと、それに応じて、コイル103からディスク121とヨーク123の間に磁場が形成され、これにより、粘性流体105の固体粒子が磁場の強さに応じてクラスタを形成する。そして、粘性流体105の粘性は固体粒子のクラスタの成長に応じて大きくなる。このため、ディスク121とヨーク123に作用するトルクは徐々に増大し、入力軸101のトルクが出力軸102に伝達される。
【0116】
そして、粘性流体105に作用する場の強さが一定以上になると、入力軸101のトルクが、ほとんど100%出力軸102に伝達され、あたかも入力軸101と出力軸102が一体化したようになる。
【0117】
以上述べたように、図7に係るトルク伝達装置125eを図1で説明したトルク伝達装置125の代わりに用いることができ、各実施形態で代わりに用いることができる。
【0118】
なお、各実施形態において、トルク伝達装置は、駆動軸の途中もしくは回転軸の途中に設けられているとして説明したが、これに限らず、駆動軸と回転軸の間に設けられていてもよい。
【0119】
以上、各実施形態に係るポンプ装置は、羽根車が連結された回転軸を有する立軸ポンプPと、立軸ポンプの回転軸を回転させるように駆動軸を回転させる駆動装置と、入力軸と出力軸とを有し、電気をかけることで生じる場(例えば、電場または磁場)の作用で粘性が変化する粘性流体を、当該入力軸から当該出力軸までのトルクの伝達経路に内蔵するトルク伝達装置と、を備える。このトルク伝達装置は、駆動軸と回転軸の間、前記駆動軸の途中、または前記回転軸の途中に設けられている。
【0120】
この構成によれば、電気をかけることで生じる場の大きさにより潤滑油の粘性を変化させる粘性流体を用いたトルク伝達装置を採用することにより、破損もしく摩耗を抑制しつつ回転軸の回転数を変更可能で、メンテナンスに係る労力を抑制するとともに、ポンプ機場の設備の大型化を抑制することができる。
【0121】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0122】
10 ポンプ装置
100 ポンプ装置
101 入力軸
102 出力軸
104 気密シール
105 粘性流体
106b、106c フィン
110 吐出エルボ
114 ケーシング
119 貫通孔
120 駆動装置
121 ディスク
122 軸受
123 ヨーク
124 軸受
125、125b、125c、125d、125e トルク伝達装置
126 回転軸
128 駆動軸
129 駆動軸軸受
131 磁場
132 軸封装置
136 回転軸
137 管
138 駆動軸
141 電源
151、152 ファン
20 固定パイプ
21 コラムパイプ
21a 上部フランジ
21b 下部フランジ
21p 枝管
22 コラム蓋
23 受け座
25 吸込管
25f 吸込管フランジ
25h 開口
25p 異径管
26 ポンプ回転軸
30 ポンプ本体
31 羽根車
32 回転軸
33 電動機
332 回転子
333 固定子
334 下部軸受
335 上部軸受
336 メカニカルシール
337 モータケーシング
33c 電源ケーブル
34 羽根車ケーシング
34s 合座
35 ガイドベーン
99 構造物
P 立軸ポンプ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9