IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノントッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図1
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図2
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図3
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図4
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図5
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図6
  • 特許-スパッタ装置及び成膜方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】スパッタ装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C23C14/34 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020154624
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048667
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094548(JP,A)
【文献】特表2006-521468(JP,A)
【文献】特開2013-234375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによって、スパッタリング時に回転する円筒状のターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成するスパッタ装置であって、
前記基板が配されるチャンバと、
前記チャンバ内において、前記ターゲットを前記基板と対向する対向領域と前記基板と対向しない非対向領域とに移動させる移動機構と、
前記非対向領域と前記対向領域とを隔てる隔壁と、
前記隔壁を介して前記対向領域と反対側の前記非対向領域に配され、かつ、前記ターゲットが前記非対向領域に移動した状態で、前記ターゲットに堆積された異物を除去する除去部材と、
を備えることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項2】
前記ターゲットは、前記ターゲットにおける回転中心軸線方向に並ぶように設けられる複数のターゲット片を備えており、
前記除去部材は、前記複数のターゲット片における隣り合うターゲット片同士の隙間に堆積する異物を除去する補助除去部を備えることを特徴とする請求項に記載のスパッタ装置。
【請求項3】
スパッタリングによって、スパッタリング時に回転する円筒状のターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成するスパッタ装置であって、
前記基板が配されるチャンバと、
前記チャンバ内において、前記ターゲットを前記基板と対向する対向領域と前記基板と対向しない非対向領域とに移動させる移動機構と、
前記ターゲットが前記非対向領域に移動した状態で、前記ターゲットに堆積された異物を除去する除去部材と、
を備え、
前記ターゲットは、前記ターゲットにおける回転中心軸線方向に並ぶように設けられる複数のターゲット片を備えており、
前記除去部材は、前記複数のターゲット片における隣り合うターゲット片同士の隙間に堆積する異物を除去する補助除去部を備えることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項4】
異物除去時には、前記ターゲットが回転した状態で、前記除去部材が前記ターゲットに接触していることを特徴とする請求項1,2または3に記載のスパッタ装置。
【請求項5】
前記除去部材は、前記ターゲットの回転に従動回転するローラであることを特徴とする請求項に記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記除去部材を前記ターゲットに対して接離させる接離機構を備ることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタ装置。
【請求項7】
前記ターゲットにおける回転中心軸線方向の両端が非エロージョン部となっており、異物除去時には、前記除去部材が両端の前記非エロージョン部に接触していることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のスパッタ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載のスパッタ装置を使って、
スパッタリングによって、スパッタリング時に回転する円筒状のターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成する成膜方法であって、
チャンバ内で、前記ターゲットを前記基板と対向する対向領域内で移動させながらスパッタリングを行う工程と、
前記チャンバ内で、前記ターゲットを前記基板と対向しない非対向領域に移動させる工程と、
前記非対向領域で、前記チャンバ内に設けられた除去部材によって、前記ターゲットに堆積された異物を除去する工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記ターゲットを回転させながら前記除去部材を前記ターゲットに接触させることで、異物を除去することを特徴とする請求項に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングにより基板に薄膜を形成するスパッタ装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ装置において、スパッタリング時に回転する円筒状のターゲット(ロータリーカソードとも呼ばれる)を用いてスパッタリングを行う技術が知られている。このような技術においては、ターゲットのうち、スパッタリングに寄与されない部分(通常、両端)である非エロージョン部に経時的に異物が堆積する。このような異物は、異常放電や成膜部に異物が混入してしまうなどの原因となるため、チャンバを開放して、手作業などにより除去する必要がある。従って、異物を取り除く作業に手間と時間を費やしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-234375号公報
【文献】特開2019-94548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ターゲットから異物を取り除く作業性を向上させ、かつ、除去時間の短縮化を図ることを可能とするスパッタ装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のスパッタ装置は、
スパッタリングによって、スパッタリング時に回転する円筒状のターゲットの構成原子による薄膜を基板上に形成するスパッタ装置であって、
前記基板が配されるチャンバと、
前記チャンバ内において、前記ターゲットを前記基板と対向する対向領域と前記基板と対向しない非対向領域とに移動させる移動機構と、
前記非対向領域と前記対向領域とを隔てる隔壁と、
前記隔壁を介して前記対向領域と反対側の前記非対向領域に配され、かつ、前記ターゲットが前記非対向領域に移動した状態で、前記ターゲットに堆積された異物を除去する除去部材と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、除去部材によって、ターゲットに堆積された異物が除去されるので、チャンバを開放することなく、異物の除去が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、ターゲットから異物を取り除く作業性を向上させ、かつ、除去時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係るスパッタ装置の内部構成を上方から見た概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図である。
図3】本発明の実施例1に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図である。
図4】本発明の実施例1に係るターゲットユニットの概略構成図である。
図5】本発明の実施例2に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図のうち特徴的な構成を中心に示した図である。
図6】本発明の実施例3に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図のうち特徴的な構成を中心に示した図である。
図7】電子デバイスの一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
図1図4を参照して、本発明の実施例1に係るスパッタ装置及び成膜方法について説明する。図1は本発明の実施例1に係るスパッタ装置の内部構成を上方から見た概略構成図である。図2は、図1において、矢印V1方向に見た断面図である。図3は、図1において、矢印V2方向に見た断面図である。図4は本発明の実施例1に係るターゲットユニットの概略構成図であり、同図(a)はターゲットユニットの付近を正面から見た概略構成図であり、同図(b)は同図(a)中のAA断面図である。
【0011】
<スパッタ装置の全体構成>
図1図3を参照して、本実施例に係るスパッタ装置の全体構成について説明する。本実施例に係るスパッタ装置1は、内部が真空雰囲気となるチャンバ10と、チャンバ10内に備えられるターゲットユニット100と、ターゲットユニット100を移動させる移動機構230を有する駆動装置200とを備えている。
【0012】
チャンバ10内には、基板Pを保持する基板保持機構11と、マスクMを保持するマスク保持機構12が備えられている。これらの保持機構により、基板PとマスクMは、成膜動作中(スパッタリング動作中)は静止した状態が保たれる。チャンバ10は気密容器であり、排気ポンプ20によって、その内部は真空状態(又は減圧状態)に維持される。ガス供給弁30を開き、チャンバ10内にガスを供給することで、処理に対する適切なガス雰囲気(又は圧力帯)に適宜変更ができる。チャンバ10全体は接地回路40により電気的に接地されている。
【0013】
駆動装置200は、大気ボックス210と、大気ボックス210の移動方向を案内する一対のガイドレール221,222と、大気ボックス210を移動させる移動機構230と、大気ボックス210の移動に伴って従動する大気アーム240とを備えている。大気ボックス210は、その内部が空洞により構成されており、大気アーム240の内部を通じて、チャンバ10の外部と連通するように構成されている。そのため、大気ボックス210の内部は大気に曝された状態となっている。このような構成が採用されることで、チャンバ10の外部に設けられた電源50に接続された配線51,52をターゲットユニット100に接続することができる。なお、ターゲットユニット100は、大気ボックス210に固定されている。
【0014】
大気ボックス210は、移動機構230によって、一対のガイドレール221,222に沿って、往復移動するように構成されている。移動機構230は、ボールねじ機構を採用しており、ボールねじ231と、ボールねじ231を回転させるモータなどの駆動源232とを備えている。ただし、大気ボックス210を往復移動させるための駆動機構については、ボールねじ機構に限定されることはなく、ラックアンドピニオン機構など、各種
公知技術を採用し得る。移動機構230にラックアンドピニオン機構を採用する場合は、搬送ガイド部分に設けることができる。
【0015】
大気アーム240は、移動する大気ボックス210の空洞内に、チャンバ10の外部に設けられた電源50に接続された配線51,52を配するために設けられている。すなわち、大気アーム240は、その内部が空洞により構成され、かつ、大気ボックス210の移動に追随して動作するように構成されている。より具体的には、大気アーム240は、第1アーム241と第2アーム242とを備えている。第1アーム241は、その一端がチャンバ10の底板に対して回動自在に構成されている。そして、第2アーム242は、その一端が第1アーム241の他端に対して回動自在に軸支され、その他端が大気ボックス210に対して回動自在に軸支されている。
【0016】
以上のように構成される駆動装置200により、大気ボックス210に固定されたターゲットユニット100を、大気ボックス210と共に往復移動させることが可能となる。これにより、往路及び復路のうちの少なくともいずれか一方の移動中に、ターゲットユニット100を稼働させることによって、基板Pに対して、成膜動作(スパッタリング)を行わすことができる。従って、大型の基板Pに成膜を形成する場合であっても、駆動装置200により、ターゲットユニット100を移動させながら成膜動作を行わせることで、基板Pの一端側から他端側に向かって連続的に薄膜を形成することができる。
【0017】
<ターゲットユニット>
図4を参照して、本実施例に係るスパッタ装置1に適用可能なターゲットユニット100の一例を説明する。ターゲットユニット100は、ターゲット110と、ターゲット110の両端を支持するサポートブロック120及びエンドブロック130とを備えている。なお、本実施例においては、ターゲット110は、2本設けられており、これら2本のターゲット110の両端を支持するサポートブロック120及びエンドブロック130も、2本のターゲット110にそれぞれ一つずつ設けられている。ただし、本発明に係るスパッタ装置においては、ターゲットの個数が限定されることはない。ターゲット110は、スパッタリング時に回転する円筒状の部材であり、ロータリーカソードとも呼ばれる。サポートブロック120及びエンドブロック130は、大気ボックス210の上面に固定されている。ターゲット110は、円筒状のターゲット本体111と、その内周に配される電極であるカソード112とを備えている。また、ターゲット110は、サポートブロック120及びエンドブロック130により回転自在に支持されており、エンドブロック130内に備えられた不図示のモータなどの駆動源により、スパッタリング時に回転するように構成されている。なお、マグネトロンスパッタリング方式のスパッタ装置の場合には、ターゲット110と基板Pとの間に磁場(漏洩磁場)を発生させるために、カソード112の内部に磁石が設けられる。
【0018】
以上のように構成されるターゲットユニット100においては、ターゲット110とアノードであるチャンバ10との間に一定以上の電圧を印加することにより、これらの間にプラズマが発生する。そして、プラズマ中の陽イオンがターゲット110に衝突することで、ターゲット110(ターゲット本体111)からターゲット材料の粒子が放出される。ターゲット110から放出された粒子は、衝突を繰り返しながら、放出された粒子のうちターゲット物質の中性の原子が基板Pに堆積していく。これにより、基板Pには、ターゲット110の構成原子による薄膜が形成される。また、マグネトロンスパッタリング方式の場合には、上記の漏えい磁場によって、ターゲット110と基板Pとの間の所定領域にプラズマを集中させることができる。これにより、効率的にスパッタリングが行われるため、基板Pへのターゲット物質の堆積速度を向上させることができる。更に、本実施例に係るターゲットユニット100においては、スパッタリングの最中にターゲット110が回転するように構成されている。これにより、ターゲット110の消耗領域(エロ―ジ
ョンによる浸食領域)が一部に集中することはなく、ターゲット110の利用効率を高めることができる。
【0019】
以上のように構成されるターゲット110を備えるターゲットユニット100は、大気ボックス210と共に、移動機構230を備える駆動装置200により搬送される。図1中、範囲S0は、ターゲット110の移動範囲を示しており、ターゲット110は、チャンバ10内において、基板Pと対向する対向領域S2から基板Pと対向しない非対向領域S1に至るまで移動するように構成されている。スパッタリングは、ターゲット110が対向領域S2を移動中に行われる。なお、非対向領域S1と対向領域S2との境界付近に、例えば、図2に示すように、隔壁60を設けることで、ターゲット110の移動範囲を長くしなくても、非対向領域S1においてターゲット110と基板Pとが対向しないようにすることができる。つまり、ターゲット110が非対向領域S1に位置している間は、基板Pに薄膜が形成されないようにすることができる。
【0020】
そして、本実施例に係るスパッタ装置1においては、チャンバ10内に、ターゲット110におけるスパッタに寄与しない非エロージョン部に堆積された異物を除去する除去装置300が設けられている。この除去装置300は、モータなどを備える駆動源310と、駆動源310により一定範囲内で回転するように構成される保持部材320と、保持部材320により回転自在に軸支される除去部材としての異物除去ローラ331,332とを備えている。異物除去ローラ331,332の材料としては、PEEK、セラミック材料、バイトン等のゴム材料、アクリル系の粘着剤などを好適な例として挙げることができる。
【0021】
以上のように構成される除去装置300によって、ターゲット110が非対向領域S1に配された状態で、異物除去ローラ331,332によって、ターゲット110における非エロージョン部に堆積された異物を除去することができる。より具体的には、異物除去時には、2本のターゲット110がそれぞれ回転した状態で、駆動源310によって保持部材320が回転し、異物除去ローラ331,332が2本のターゲット110のうちの一方と他方にそれぞれ接触する。異物除去ローラ331,332は、それぞれのターゲット110の回転に従動回転するように構成されており、ターゲット110と異物除去ローラ331,332との接触部分で、ターゲット110に堆積された異物がそぎ落とされる。
【0022】
なお、異物除去ローラ331,332は、ターゲット110の回転から少し遅れて(少し遅い回転速度で)従動回転するように構成することで、異物除去ローラ331,332の表面とターゲット110の表面との間で摩擦を生じさせることができ、効果的に異物を除去することができる。また、異物除去ローラ331,332については、ターゲット110の回転に従動させるのではなく、モータなどを用いて、能動的に回転させる構成を採用することもできる。この場合、ターゲット110と異物除去ローラ331,332との接触部分において、ターゲット110が移動する方向と異物除去ローラ331,332が移動する方向が逆になるようにすることで、異物除去効果を高めることができる。更に、異物除去ローラ331,332の表面に複数の凹凸を設けることで、異物除去効果を高めることもできる。
【0023】
異物除去動作後は、駆動源310によって保持部材320が逆方向に回転して、異物除去ローラ331,332は2本のターゲット110から離れた状態となる。このように、除去装置300は、異物除去ローラ331,332をターゲット110に対して接離させる接離機構を備える装置である。なお、図1,2においては、ターゲット110と異物除去ローラ331,332について、両者が離間した状態を実線で示し、両者が接した状態を点線にて示している。
【0024】
本実施例に係るターゲット110においては、その回転中心軸線方向の両端が非エロージョン部となっている。異物除去時には、異物除去ローラ331,332が両端の非エロージョン部に接触することで、これら両端の非エロージョン部に堆積された異物が除去される。
【0025】
<成膜方法>
スパッタ装置1による成膜方法(スパッタリング)について工程順に説明する。まず、チャンバ10内で、駆動装置200によって、ターゲット110を対向領域S2内で移動させながらスパッタリングが行われる。そして、異物を除去する際には、駆動装置200によって、ターゲット110を非対向領域S1に移動させる。その後、非対向領域S1で、チャンバ10内に配された除去装置300に設けられた異物除去ローラ331,332によって、2本のターゲット110におけるスパッタに寄与しない非エロージョン部に堆積された異物が除去される。なお、一連の動作は、スパッタ装置1の動作を制御する制御装置(不図示)により行われる。ただし、除去装置300における保持部材320を回転させる動作等については、チャンバ10の外部から作業者が手動で行うように構成することもできる。また、異物の除去は、ターゲット110が1往復する度に行うようにしてもよいし、所定回数往復する度に行うようにしてもよいし、除去を行う頻度は適宜設定することができる。
【0026】
本実施例に係るスパッタ装置1によれば、除去部材としての異物除去ローラ331,332によって、ターゲット110における非エロージョン部に堆積された異物が除去される。これにより、チャンバ10を開放することなく、異物の除去が可能となる。従って、ターゲット110から異物を取り除く作業性を向上させ、かつ、除去時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
(実施例2)
図5には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、ターゲット及び除去装置の構成が上記実施例1とは異なる構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0028】
図5は本発明の実施例2に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図のうち特徴的な構成を中心に示した図であり、実施例1と異なる構成を中心に示し、実施例1と同一の構成については、一部の構成を除き、省略して示している。
【0029】
本実施例に係るスパッタ装置1Aにおいては、ターゲットユニット100Aを構成するターゲット110Aは、その回転中心軸線方向に並ぶように設けられる複数のターゲット片111Aを備えている。
【0030】
そして、本実施例に係る除去装置300Aは、モータなどを備える駆動源310Aと、駆動源310Aにより一定範囲内で回転するように構成される保持部材320Aと、保持部材320Aにより回転自在に軸支される除去部材としての異物除去ローラ330Aとを備えている。異物除去ローラ330Aは、ターゲット110Aの回転中心軸線方向の両端の非エロージョン部に堆積された異物を除去する除去部331Aと、複数のターゲット片111Aにおける隣り合うターゲット片111A同士の隙間112Aに堆積する異物を除去する補助除去部332Aを備えている。
【0031】
以上のように、複数のターゲット片111Aを備えるターゲット110Aが採用される場合には、本実施例で示した異物除去ローラ330Aを採用することで、隣り合うターゲ
ット片111A同士の隙間112Aに堆積する異物も除去することができる。なお、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果が得られる。
【0032】
(実施例3)
図6には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、除去装置の構成が上記実施例1とは異なる構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0033】
図6は本発明の実施例3に係るスパッタ装置の内部構成を断面的に見た概略構成図のうち特徴的な構成を中心に示した図であり、実施例1と異なる構成を中心に示し、実施例1と同一の構成については、一部の構成を除き、省略して示している。
【0034】
上記実施例においては、除去装置300が、ターゲット110の移動範囲S0の外側に配されて、異物除去ローラ331,332を保持する保持部材320は、ターゲット110の回転中心軸線と平行な軸を中心に回転するように構成される場合を示した。これに対して、本実施例に係るスパッタ装置1Bにおいては、除去装置300Bは、ターゲット110が非対向領域S1に位置した状態で、ターゲット110の両側の位置に設けられるように構成されている。本実施例に係る除去装置300Bにおいても、モータなどを備える駆動源310Bと、駆動源310Bにより一定範囲内で回転するように構成される保持部材320Bと、保持部材320Bにより回転自在に軸支される除去部材としての異物除去ローラ330Bとを備えている。本実施例に係る保持部材320Bは、ターゲット110の往復移動方向と平行な軸を中心に回転するように構成されている。
【0035】
このように構成される除去装置300Bを採用した場合においても、上記実施例1と同様の効果が得られる。
【0036】
<電子デバイスの製造装置>
上記各実施例で示したスパッタ装置1,1A,1Bは、電子デバイスを製造するための製造装置として利用可能である。以下、電子デバイスの製造装置、及び、電子デバイスの製造装置により製造される電子デバイスについて、図7を参照して説明する。スパッタ装置1,1A,1Bは、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造において基板P上(基板Pの表面に積層体が形成されているものも含む)に薄膜(有機膜、金属膜、金属酸化物膜など)を堆積形成するために用いることができる。より具体的には、スパッタ装置1,1A,1Bは、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの製造において好ましく用いられる。中でも、本実施例に係るスパッタ装置1,1A,1Bは、有機EL(ElectroLuminescence)素子などの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造において特に好ましく適用可能である。なお、電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0037】
電子デバイスの製造装置により製造される有機EL素子の一例を図7に示している。図示の有機EL素子は、基板P上に、陽極F1、正孔注入層F2、正孔輸送層F3、有機発光層F4、電子輸送層F5、電子注入層F6、陰極F7の順番に成膜されている。本実施例に係るスパッタ装置1,1A,1Bは、特に、有機膜上に、スパッタリングによって、電子注入層や電極(陰極や陽極)に用いられる金属膜や金属酸化物等の積層被膜を成膜する際に好適に用いられる。また、有機膜上への成膜に限定されず、金属材料や酸化物材料等のスパッタで成膜可能な材料の組み合わせであれば、多様な面に積層成膜が可能である。
【0038】
(その他)
上記各実施例においては、異物を除去する除去部材が異物除去ローラの場合を示した。しかしながら、本発明に係る除去部材は、異物除去ローラに限らず、ブラシ状の部材など、各種の構成を採用し得る。
【符号の説明】
【0039】
1 スパッタ装置
10 チャンバ
100 ターゲットユニット
110 ターゲット
200 駆動装置
230 移動機構
300 除去装置
331,332 異物除去ローラ
S1 非対向領域
S2 対向領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7