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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ポリシラザン化合物含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/16 20060101AFI20241119BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20241119BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20241119BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241119BHJP
   C01B 21/082 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C08L83/16
C08K5/1545
C08K5/544
C08K5/17
C01B21/082 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020172562
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064056
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】齊川 誠
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155525(JP,A)
【文献】特開2021-167369(JP,A)
【文献】特開平08-176511(JP,A)
【文献】特開2000-219869(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054522(WO,A1)
【文献】特表2008-525627(JP,A)
【文献】特表2008-525626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C08G 77/00- 77/62
H01L 21/00- 23/66
C01B 21/00- 21/50
C01B 33/00- 33/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシラザン化合物含有組成物であって、
(A)ポリシラザン化合物、
(B)下記式(B-1)、または下記式(B-2)で示されるキサンテン系色素、
【化1】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、Rは互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは塩化物イオンまたは過塩素酸イオンである。)
【化2】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、Rは水素原子、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、イソチオシアネート基、マレイミド基、セミカルバジド基またはチオセミカルバジド基である。)
(C)有機溶剤、及び
(D)鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物
を含み、前記鎖状脂肪族アミノ基は、1価又は2価の鎖状脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基であって、
1価の鎖状脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基は、トリアルコキシシリル基変性の炭素数2~6のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
2価の鎖状脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基は、炭素数3~8の直鎖アルキレン基で連結された2つのアミノ基であることを特徴とするポリシラザン化合物含有組成物。
【請求項2】
前記(A)成分がペルヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載のポリシラザン化合物含有組成物。
【請求項3】
前記(D)成分の配合量が、前記(A)成分100質量部に対して、1~10質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリシラザン化合物含有組成物。
【請求項4】
前記ポリシラザン化合物含有組成物が、さらに(E)無機充填材を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリシラザン化合物含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシラザン化合物含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシラザン化合物は硬化により良質なシリカ質ガラス膜を形成することから、優れたガスバリア性や耐熱性、絶縁性を示す。電子部品は高温環境下での使用において高い信頼性が求められるので、上記シリカ質ガラス膜は電子部品への水分や腐食性ガスの侵入を防ぐ保護膜として有用である。特許文献1では、有機EL素子の封止を目的とした樹脂シートの表面に、ポリシラザン化合物を塗布してシリカ質ガラス膜を形成させることで、樹脂シートの水蒸気透過量を低くできることが報告されている。この結果はポリシラザン化合物が防湿被膜の形成に有用であることを示している。
【0003】
また、ポリシラザン化合物から形成されるシリカ質膜は本質的に無色で透明性に優れることがさらなる特徴として挙げられる。しかし、その特徴ゆえに目視にて保護膜の存在を視認することが極めて困難である。この理由からポリシラザン化合物の塗布プロセスを含む製品製造工程の合理化を妨げることがある。このような膜を視認するためには、膜が可視光波長領域の光吸収を持つ、または可視光波長領域の発光を示すことが必要である。光吸収由来の着色は自然光下において膜を視認可能にする直接的かつ簡便な手段である。一方で、塗布基材からの光反射が弱い場合や暗所下においては光吸収由来の着色は膜の視認に対して無意味になる。このような場合には特定の波長の光照射で膜が発光することで膜の視認が可能になる。膜を形成した基材の使用環境や視認条件は使用者が置かれる環境によって様々であるので、上記の2つの視認方法のどちらが優れているとは断言できない。したがって同一配合の組成物で両方の視認方法を適用できるようにすることが課題となる。この解決策の一つとして、ポリシラザン化合物含有組成物に対して可視光領域に吸収を持ち、かつ発光性を示す色素化合物を添加することが挙げられる。
【0004】
膜の膜厚が小さいときは視認に寄与する色素化合物の絶対量が減る。その結果として膜の視認性が低下する。絶対量の不足を補うために組成物に添加する色素化合物を増やすことが考えられるが、この操作は本来の膜組成との乖離をもたらすため好ましくなく、そもそも色素化合物の溶解度には限界がある。したがって、少ない添加量で効率よく着色させることが必要である。
【0005】
以上のことから、少ない色素添加量でも効率よく着色し、さらに発光することで、着色と発光の両方の観点からシリカ質膜の存在を視認できるようにする技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/174116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ポリシラザン化合物により形成されるそのままでは本質的に無色透明で視認性に劣るシリカ質膜の視認性を向上させるポリシラザン化合物含有組成物であって、自然光下でシリカ質膜の存在を視認でき、かつ、光照射によって暗所であってもシリカ質膜の存在を視認できる硬化膜を与え、さらに硬化性にも優れるポリシラザン化合物含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、下記に示すような特徴を示すポリシラザン化合物含有組成物を提供するものである。
【0009】
即ち、ポリシラザン化合物含有組成物であって、
(A)ポリシラザン化合物、
(B)下記式(B-1)、または下記式(B-2)で示されるキサンテン系色素、
【化1】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、Rは互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは塩化物イオンまたは過塩素酸イオンである。)
【化2】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、Rは水素原子、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、イソチオシアネート基、マレイミド基、セミカルバジド基またはチオセミカルバジド基である。)
(C)有機溶剤、及び
(D)鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物、
を含むことを特徴とするポリシラザン化合物含有組成物を提供する。
【0010】
このようなポリシラザン化合物含有組成物であれば、ポリシラザン化合物により形成されるそのままでは本質的に無色透明で視認性に劣るシリカ質膜の視認性を向上させるポリシラザン化合物含有組成物であって、自然光下でシリカ質膜の存在を視認でき、かつ、光照射によって暗所であってもシリカ質膜の存在を視認できる硬化膜を与え、さらに硬化性にも優れるポリシラザン化合物含有組成物となる。
【0011】
また、本発明では、前記(A)成分がペルヒドロポリシラザンであることが好ましい。
【0012】
このようなポリシラザン化合物含有組成物であれば、本発明の効果を向上させることができる。
【0013】
また、本発明では、前記(D)成分の配合量が、前記(A)成分100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。
【0014】
このようなポリシラザン化合物含有組成物であれば、その硬化性と硬化膜の視認性をより好適なものとすることができる。
【0015】
また、本発明では、前記ポリシラザン化合物含有組成物が、さらに(E)無機充填材を含むことができる。
【0016】
このようなポリシラザン化合物含有組成物であれば、得られる硬化膜の特性(強度、耐熱性、絶縁性など)を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、好ましい構造を有するキサンテン系色素および特定のアミン化合物を含むポリシラザン化合物含有組成物は、硬化性に優れ、ポリシラザン化合物硬化膜の可視光領域における吸収が増大し、さらに、例えば365nmの光線照射によって発光することで、着色と発光の両方の観点から視認可能な硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、視認性を向上できるようなポリシラザン化合物含有組成物の開発が求められていた。
【0019】
特に、上述のようなシリカ質膜の特徴を最大限に発揮させるには、可視化のために添加する色素の量を低減しかつ効率的に着色かつ発光させることが必要である。そこで本発明者らは、添加される色素および、その色素による視認性を向上させる効果を底上げする添加剤の配合組成を探索することに想到した。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、適切な組み合わせのキサンテン系色素およびアミン化合物を含むポリシラザン化合物含有組成物は、ポリシラザン化合物硬化膜の可視光領域における吸収が増大し、さらに例えば365nmの光線照射によって発光することで、着色と発光の両方の観点から視認可能な硬化物を与え、さらにその硬化膜は硬化性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、ポリシラザン化合物含有組成物であって、
(A)ポリシラザン化合物
(B)下記式(B-1)、または下記式(B-2)で示されるキサンテン系色素
【化3】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、Rは互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは塩化物イオンまたは過塩素酸イオンである。)
【化4】
(式中、Rは互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、Rは水素原子、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、イソチオシアネート基、マレイミド基、セミカルバジド基またはチオセミカルバジド基である。)
(C)有機溶剤、及び
(D)鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物
を含むことを特徴とするポリシラザン化合物含有組成物である。
【0022】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これは例示的に示されるもので、本発明はこれらに限定されず種々の変形が可能なことは言うまでもない。
【0023】
<(A)ポリシラザン化合物>
本発明のポリシラザン化合物含有組成物を構成する(A)ポリシラザン化合物は、硬化することによってガラス質の硬化膜を形成するものである。前記ポリシラザン化合物としては、特に限定されないが、例えば無機ポリシラザンであるペルヒドロポリシラザン、もしくは有機ポリシラザンであるメチルポリシラザン、ジメチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ビニルポリシラザンなどの変性ポリシラザン、ポリシラザンと化学的に反応し架橋構造を生成するヒドロキシル基、ビニル基、アミノ基、シリル基などの反応基を有する炭化水素化合物、環状飽和炭化水素化合物、環状不飽和炭化水素化合物、飽和複素環化合物、不飽和複素環化合物およびシリコーン化合物などの化合物で化学的に架橋された架橋ポリシラザンなどが挙げられる。前記ポリシラザン化合物は、1種単独、もしくは2種以上の中から選定されたポリシラザン混合物、あるいは2種以上のポリシラザン構造からなるポリシラザン共重合体から任意に選択して使用でき、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも1つ以上含むことが好ましく、ペルヒドロポリシラザンがより好ましい。
【0024】
また、ポリシラザン化合物は(C)成分である有機溶剤への溶解性や塗布時の作業性の観点から重量平均分子量が100~100,000,000、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは2,000~500,000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が100以上だと揮発性が低く、有機溶剤の揮発および硬化工程時にポリシラザン化合物そのものが揮発することで塗膜の膜質が劣化する恐れがないため好ましく、100,000,000以下だと、有機溶剤に対する溶解性が高いため好ましい。
【0025】
なお、本明細書中で言及する重量平均分子量は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質として得られた値を指す。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器
カラム:TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-M
TSKgel SuperMultipore HZ-M
(4.6mmI.D.×15cm,4μm×4)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0026】
<(B)キサンテン系色素>
(B)キサンテン系色素は、本発明のポリシラザン化合物含有組成物に添加することで硬化膜の視認性を向上させるものである。ポリシラザン化合物から得られるシリカ質膜を視認するためには、上述したように、膜が可視光波長領域の光吸収を持つか、または可視光波長領域の発光を示すことが必要である。すなわち、可視光波長領域が一般に380~780nmであることを勘案すると、用いられるキサンテン系色素は380~780nmの波長領域において光吸収を持つまたは発光を示さなければならない。
【0027】
また、これらのキサンテン系色素の発光は特定波長の光線を吸収することで引き起こされる。照射される光線の波長はキサンテン系色素の分子を電子励起させるものであり、200~1,000nmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
前記キサンテン系色素の具体例としては、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン590塩化物、ローダミン6G過塩素酸塩などのローダミン化合物、フルオレセイン、2’,7’-クロロフルオレセイン、4’,5’-ジブロモフルオレセイン、テトラヨードフルオレセイン、5-アミノフルオレセイン、6-アミノフルオレセイン、5-ニトロフルオレセイン、6-ニトロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネート、フルオレセイン-5-マレイミド、フルオレセイン-6-マレイミド、フルオレセイン-5-セミカルバジド、フルオレセイン-6-セミカルバジド、フルオレセイン-5-チオセミカルバジド、フルオレセイン-6-チオセミカルバジドなどのフルオレセイン化合物などが挙げられ、中でもローダミンBまたはフルオレセインが好ましい。
【0029】
前記のキサンテン系色素はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
(B)成分のキサンテン系色素の添加量は、(A)ポリシラザン化合物100質量部に対して、1~3質量部が好ましい。
【0031】
これらのキサンテン系色素は、一般に開環型構造とラクトン型構造とで平衡状態になっている。前記式(B-1)及び(B-2)の場合を以下に示す。
【化5】
【0032】
また、具体例として、ローダミンB、及びフルオレセインの場合を下に示す。
【化6】
【0033】
キサンテン系色素において、ラクトン型構造は分子全体に共役が広がっていないが、開環型構造では分子全体に共役が広がっているため、開環型構造が可視光波長領域に吸収および発光を示す。同量のキサンテン系色素を用いても、開環型構造の割合が多い方が、視認性の向上に対してより大きく寄与するため好ましい。また、後述する(D)成分を加えることで開環型構造の割合が増加する。これにより可視光波長領域における吸収が増強され、発光量が増加するので、本発明のポリシラザン化合物含有組成物は、視認性に優れたシリカ質膜を与える。即ち、ポリシラザン化合物により形成されるそのままでは本質的に無色透明で視認性に劣るシリカ質膜が、自然光下でその存在を視認でき、かつ、光照射によって暗所であってもその存在を視認できるようになる。さらに、後述するように、(D)成分は(A)成分の硬化反応を促進するため、本発明のポリシラザン化合物含有組成物は、硬化性にも優れる。
【0034】
キサンテン系色素を用いる利点として、光吸収、発光強度が大きい点の他、耐光性に優れている点、生体毒性が少ない点、他の有機色素に比べて高い水溶性を有す点などが挙げられる。
【0035】
<(C)有機溶剤>
本発明で用いる前記ポリシラザン化合物は、塗布時の作業性や保存安定性を改善することを目的として、有機溶剤で希釈して用いられる。前記有機溶剤としては、前記(A)ポリシラザン化合物および(B)キサンテン系色素を溶解する有機溶剤であれば特に限定されない。例えば、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカンなどの飽和脂肪族炭化水素、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、β-ミルセンなどの不飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの飽和脂環式炭化水素、シクロヘキセンなどの不飽和脂環式炭化水素、p-メンタン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテンなどのテルペン化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコールなどのケトン化合物、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルなどのアルキルエーテル化合物、アニソール、ジフェニルエーテルなどのアリールエーテル化合物、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、ビス(2-エトキシエチル)エーテル、ビス(2-ブトキシエチル)エーテルなどのグリコールエーテル化合物などが挙げられる。
【0036】
塗布時の作業性やポリシラザン化合物の保存安定性の観点から、希釈比率は(A)ポリシラザン化合物100質量部に対して(C)有機溶剤が100~100,000質量部の範囲内であることが好ましく、400~10,000質量部であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明のポリシラザン化合物含有組成物に含まれる水分量は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。水分量が500ppm以下であれば、ポリシラザンと含有水分とが反応しないため、発熱したり、水素ガスやアンモニアガスが発生したりする恐れがなく、また、増粘、ゲル化などを引き起こす恐れもないので好ましい。従って、(C)有機溶剤中の水分量は、本発明のポリシラザン化合物含有組成物に含まれる水分量が上記範囲となるように制御されていることが好ましい。
【0038】
<(D)鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物>
(D)鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物は、上述したように(B)成分の平衡構造において開環型構造の割合を増加させ、可視光波長領域における(B)成分の吸収と発光を増強する効果を持つ。その効果に加えてさらに(A)成分の硬化反応を促進する効果も兼ね備える。
【0039】
(D)成分のアミン系化合物は、鎖状の脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基(鎖状脂肪族アミノ基)を有していれば特に限定されず、脂肪族炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、窒素原子同士が脂肪族炭化水素基を介して連結されていてもよく、さらに、酸素原子などの窒素原子以外のヘテロ原子で置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基は、1価の場合は好ましくはトリアルコキシシリル基変性のアルキル基であり、更に好ましくはトリアルコキシシリル基変性の炭素数2~6のアルキル基であり、2価の場合は好ましくは直鎖アルキレン基であり、更に好ましくは炭素数3~8の直鎖アルキレン基である。
【0040】
本発明で用いるアミン系化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、2-ペンチルアミン、3-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、1,2-ジアミノエタン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’,N’-1,2-テトラメチルジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-1,3-テトラメチルジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-1,4-テトラメチルジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ジメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N,N’,N’-1,5-テトラメチルジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)アミン、N,N-ビス[3-(メチルアミノ)プロピル]アミン、N,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N-メチル-N,N-ビス(3-アミノプロピル)アミン、N-メチル-N,N-ビス[3-(メチルアミノ)プロピル]アミン、N-メチル-N,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(メチルアミノ)プロピル]エチレンアミン、N,N’-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]エチレンアミンなどの脂肪族アミン類、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有脂肪族アミン類、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミン、N-ベンジルエタノールアミン、N,N-ジベンジルエタノールアミン、ジエチレングリコールアミンなどの脂肪族アミノアルコール類、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、2-n-プロポキシエチルアミン、2-イソプロポキシエチルアミン、2-n-ブトキシエチルアミン、2-メトキシプロピルアミン、2-エトキシプロピルアミン、2-n-プロポキシプロピルアミン、2-イソプロポキシプロピルアミン、2-n-ブトキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-n-プロポキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-n-ブトキシプロピルアミン、2-メトキシブチルアミン、2-エトキシブチルアミン、2-n-プロポキシブチルアミン、2-イソプロポキシブチルアミン、2-n-ブトキシブチルアミン、3-メトキシブチルアミン、3-エトキシブチルアミン、3-n-プロポキシブチルアミン、3-イソプロポキシブチルアミン、3-n-ブトキシブチルアミン、4-メトキシブチルアミン、4-エトキシブチルアミン、4-n-プロポキシブチルアミン、4-イソプロポキシブチルアミン、4-n-ブトキシブチルアミン、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(4-アミノブチル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(2-アミノエチル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(4-アミノブチル)エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロポキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(4-アミノブトキシ)エチル]エーテル、トリエチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(4-アミノブチル)エーテルなどの脂肪族アミノエーテル類などが挙げられる。
【0041】
(D)成分のアミン系化合物の添加量は、(A)ポリシラザン化合物100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、5~10質量部がより好ましい。
【0042】
<(E)無機充填材>
本発明のポリシラザン化合物含有組成物には無機充填材を添加してもよい。前記無機充填材としては特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0043】
このような無機充填材を添加することにより、得られる硬化膜の特性(強度、耐熱性、絶縁性など)が向上する。
【0044】
(E)無機充填材の添加量としては、特に制限はないが、(A)成分100質量部に対して、0.1~400質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましい。
【0045】
<ポリシラザン化合物含有組成物の製造方法>
本発明のポリシラザン化合物含有組成物は、その製造方法に制限はなく、例えば、(A)成分と(C)成分とを混合した溶液に(B)成分と(D)成分、及び場合により(E)成分を加えて、例えば、超音波を当てながら撹拌することで得ることができる。このようにして、キサンテン系色素が好適に分散されたポリシラザン化合物含有組成物を得ることができる。
その他、本発明の組成物には目的に応じ、これら以外の添加材を添加することができる。
【0046】
<硬化膜の形成方法>
本発明のポリシラザン化合物含有組成物を用いた硬化膜を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、前記ポリシラザン化合物含有組成物を基材に塗布する塗布工程、次いで、基材に塗布した塗工膜から有機溶剤を揮発・除去する溶剤揮発工程、さらにキサンテン系色素含有ポリシラザン化合物を硬化する硬化工程を経る方法が挙げられる。
【0047】
(塗布工程)
基材に対して本発明のポリシラザン化合物含有組成物を塗布する方法としては例えば、ダイレクトグラビアコータ、チャンバードクターコータ、オフセットグラビアコータ、リバースキスコータ、リバースロールコータ、スロットダイ、リップコータ、エアードクターコータ、一本ロールキスコータ、正回転ロールコータ、ブレードコータ、含浸コータ、MBコータ、MBリバースコータ、ナイフコータ、バーコータなどのロールコート法やスピンコート法、ディスペンス法、ディップ法、スプレー法、転写法、スリットコート法などが挙げられる。
【0048】
塗膜の厚さは硬化膜の使用目的などにより異なるが、硬化膜厚で10~100,000nmであることが好ましく、100~10,000nmであることがさらに好ましい。
【0049】
ポリシラザン化合物含有組成物を塗布する前に基材に対して表面改質処理を行っても良い。表面改質処理は主に基材とポリシラザン化合物との密着性を向上させる目的で行われ、基材表面に付着した有機物の分解除去や、基材表面に化学反応点を形成することで実現される。表面改質処理方法としては例えば、アルゴンプラズマ処理、酸素プラズマ処理、オゾン処理、UV照射処理、キセノンエキシマ光照射処理などが挙げられ、基材の種類などにより使い分けられる。
【0050】
(溶剤揮発工程)
前記塗布工程に次いで、基材上に形成された塗工膜から有機溶剤を揮発させる溶剤揮発工程に移行する。前記溶剤揮発工程は20~300℃で行うことが好ましく、25~200℃がより好ましい。この範囲内であれば有機溶剤が速やかに揮発し硬化工程に移行できる。溶剤揮発工程の温度が300℃以下だと発光性物質(キサンテン系色素)が分解したり、揮発した溶剤が発火したりする恐れがないため好ましい。また、有機溶剤の沸点が、ポリシラザンが硬化する温度より十分低い場合には、溶剤揮発工程の温度を適切にすることで、ポリシラザンの硬化反応が同時に起こらないため、有機溶剤が硬化膜内に残存せず、変色の原因とならない。
【0051】
上記の理由により、本発明で用いる(C)有機溶剤の沸点は、大気圧下(1013hPa)において25~300℃であることが好ましく、25~150℃であることがより好ましい。この範囲内であれば、有機溶剤が硬化膜内に残存することもなく、ハンドリング性も良好である。
【0052】
(硬化工程)
溶剤揮発工程の後はキサンテン系色素含有ポリシラザン化合物を硬化する工程に移行する。キサンテン系色素含有ポリシラザン化合物の硬化処理は硬化反応が進行する方法であれば特に制約はないが、基材を変質させない方法より適宜選択される必要がある。硬化処理方法としては例えば、加熱処理、水蒸気加熱処理、大気圧プラズマ処理、低温プラズマ処理、UV処理、エキシマ光処理などが挙げられる。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。なお、重量平均分子量は、上記条件でGPCにより測定した値である。
【0054】
(A)ポリシラザン化合物
(合成例)
ポリシラザン化合物(A)の合成
窒素雰囲気下で脱水ピリジン(4,500g)を-10℃まで冷却し、ジクロロシラン(64L)を吹き込んだ後-10℃で1時間撹拌した。アンモニア(216L)を吹き込み、25℃に戻しながら12時間撹拌した。生じた固体をろ別し、ろ液にn-ジブチルエーテル(1,000g)を加えた。液中のピリジンをn-ジブチルエーテルと共沸させながら減圧留去し、留出液が4,500gに達した時点で、n-ジブチルエーテル(1,000g)をさらに加えた。続けてピリジンをn-ジブチルエーテルと共沸させながら減圧留去することでペルヒドロポリシラザンのn-ジブチルエーテル溶液を得た。なお、このペルヒドロポリシラザンの重量平均分子量は6,100であった。その後、溶液全体を100質量部としたときにポリシラザン化合物が20質量部となるようにn-ジブチルエーテルを添加した。以下の実施例、比較例では、この溶液を(A)成分としてペルヒドロポリシラザン20質量部、(C-1)成分としてn-ジブチルエーテル80質量部を含有するものとみなして使用した。
【0055】
(B)キサンテン系色素
(B-1)ローダミンB(Alfa Aesar製)
(B-2)フルオレセイン(富士フィルム和光純薬製)
(比較色素)
(B-3)テトラフェニルエチレン(東京化成工業製)
(B-4)1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニル-1H-シロール(SIGMA-ALDRICH製)
【0056】
(C)有機溶剤
(C-1)ジ-n-ブチルエーテル(関東化学製)
(C-2)アセトン(富士フィルム和光純薬製)
【0057】
(D)アミン系化合物
(D-1)3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製KBE-903)
(D-2)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM-603)
(D-3)N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(東京化成工業製)
(比較アミン系化合物)
(D-4)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(東京化成工業製)
【0058】
(E)無機充填材
溶融シリカ(トクヤマ製エクセリカSE-8)
【0059】
[実施例1~18、比較例1~13]
(1)塗布性の評価
表1、2に示す割合で、前記合成例で調製した(A)成分と(C-1)成分とを混合した溶液に(B)成分および(D)成分、さらに場合により(C-2)成分または(E)成分を加えて、超音波洗浄機を用いて超音波(38kHz)を当てながら5分間撹拌することでポリシラザン化合物含有組成物の調製を行った。得られたポリシラザン化合物含有組成物をそれぞれポリカーボネート基材にスピンコート(回転速度500rpm、回転時間30秒)した。この工程によって、目視にて均一な膜を作製できたものは○、工程途中で組成物がゲル化して均一な膜を作製できなかったものは×を表1、2に示した。
【0060】
(2)発光性の評価
溶剤揮発工程
上記にて塗布したポリシラザン化合物含有組成物のうち、塗布性が○のものを25℃で15分静置して溶剤を揮発させた。
【0061】
硬化工程
上記にて溶剤を揮発させたキサンテン系色素含有ポリシラザン化合物を120℃の乾燥機で1時間加熱することでポリカーボネート基材の表面に硬化膜を作製した。
【0062】
上記にて形成した硬化膜に、暗所にて波長365nmのUV-LED(アイグラフィックス製)をピーク強度130mW/cmにて照射し、(D)成分を含まない比較例と蛍光灯下にて外観を目視で比較した。比較例1からの外観の変化、つまり発光している様子が観察されたものは○、観察されなかったものは×を表1、2に示した。
【0063】
(3)着色性の評価
分光光度計(日立ハイテク製)を用いて、(2)の評価にて作製した硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。選択した波長での吸光度をA値、顕微分光膜厚計(大塚電子製)を用いて測定した膜厚値(単位nm)をB値として、A値をB値で除した値を着色性を示す数値として表1、2に示した。ただし、この時選択する波長は(B-1)使用時は558nm、(B-2)使用時は491nm、および、(B-3)または(B-4)使用時は390nmとした。表1、2における着色性の値が大きいほど、視認性が向上していることを示す。
【0064】
(4)硬化性の評価
フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製)を用いて、(2)の評価にて形成した硬化膜のFT-IRスペクトル(ATR法)を測定した。残存しているSi-H結合の伸縮振動に帰属される2175cm-1のピークの吸光度を表1、2に示した。Si-H結合がより多く架橋に関与して消費されるほど、Si-H結合由来のピーク強度は小さくなるので、表1、2における硬化性の値が小さいほど、硬化性に優れていることを示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
本発明におけるキサンテン系色素ではない(B-3)または(B-4)成分を用いた比較例10から13では、発光性は○だったものの、実施例1から18と比較すると着色性の値が小さかったことから自然光下での視認性向上の効果が劣っていた。
(B-1)成分を用いた場合、(D)成分が鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物ではない(D-4)成分を用いた比較例5では、組成物の安定性が低く、均一な膜を作製することができなかった。(D)成分が鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物ではない(D-4)成分を用いた比較例3と4は、塗布性と発光性は良好だったが、実施例1から15と比較すると、着色性と硬化性の少なくともどちらか一方が劣っていた。(D)成分が含まれていない比較例1と2は、塗布性と発光性は良好だったが、実施例1から15と比較すると、着色性と硬化性の少なくともどちらか一方が劣っていた。
(B-2)成分を用いた場合、(D)成分が鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物ではない(D-4)成分を用いた比較例9では、組成物の安定性が低く、均一な膜を作製することができなかった。(D)成分が含まれていない比較例6では、発光性が×だったので、硬化膜の視認性向上は果たせなかった。(D)成分が鎖状脂肪族アミノ基を有するアミン系化合物ではない(D-4)成分を用いた比較例7と8は、塗布性と発光性は良好だったが、実施例16から18と比較すると、着色性と硬化性の両方が劣っていた。
【0068】
[産業上の利用可能性]
本発明のポリシラザン含有組成物は、硬化性に優れ、目視で着色して見え、例えば365nmの光線照射によって発光するシリカ質膜を形成することができるので、基材がシリカ質膜によって適切に被膜されているかを簡便に判断するのに有用である。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。