(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】シートの貼着装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2021019393
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 良典
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-22555(JP,A)
【文献】特開2014-3195(JP,A)
【文献】特許第6302765(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0214084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周の所定の位置に切り欠きを備える環状フレームに、該環状フレームの開口を塞ぐシートを貼着し、該開口に該シートを介して被加工物を固定するシート貼着装置であって、
該環状フレームが重なって収容されるフレームストック部と、該フレームストック部から該環状フレームを搬出するフレーム搬出ユニットと、該環状フレームと該被加工物に該シートを貼着するシート貼着ユニットと、を備え、
該フレームストック部は、
該環状フレームが重なって載置される支持台と、
該支持台の周囲に立設して該環状フレームの側面が突き当たり、該支持台の所定の位置に該環状フレームを位置決めする突き当て部と、
該支持台の側方で、該支持台と該突き当て部とを収容する領域を仕切る開閉扉と、
該開閉扉が閉鎖されている事を検出するセンサと、
該開閉扉の開閉動作と連動して、該支持台に載置された該環状フレームの該切り欠きに向かって進退する侵入部材と、
各構成要素を制御する制御部と、を備え、
該侵入部材は、
該支持台に所定の向きで載置された該環状フレームの該切り欠きに侵入すると該開閉扉が閉鎖できるように設置され、
該制御部は、
該開閉扉の閉鎖が該センサで検知されると、該環状フレームが所定の向きに載置されたと判定し、該フレーム搬出ユニットによる該フレームストック部からの該環状フレームの搬出を許容するシートの貼着装置。
【請求項2】
該支持台は、昇降ユニットに固定され、重ねて載置された最上段の該環状フレームが所定の高さに位置づけられ、該侵入部材が該切り欠きに侵入した状態で該環状フレームが搬出される請求項1に記載のシートの貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスが形成されたウェーハ基板、ガラス基板、セラミックス基板など各種板状の被加工物を分割したり研削したり加工する際に、搬送作業を容易にしたり、バラバラのチップにならないよう、環状フレームの開口にシート(粘着テープ等)で被加工物を固定しフレームユニットを形成する技術が広く使われている。環状フレームに被加工物を粘着テープで固定するシート貼着装置(例えば、特許文献1参照)も広く使われている。シート貼着装置は、環状フレームをストックするフレームストック部が、通常複数のピンを開口に通すようにして所定の位置に重ねて固定するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フレームストック部がピンを通してストックすると、環状フレームの出し入れはピンの上から抜き差しする方向に限定され、多数のフレームを一気に収容する際に、ピンの上まで持ち上げる重労働となっている。
【0005】
また、環状フレームには所定の向きに所定の切り欠きが形成されており、環状フレームの向きを判別出来る。これを利用し、環状フレームの向きと被加工物の向きを対応させて固定し、加工中も被加工物の向きを容易に位置合わせできるようにしている。そのため、シート貼着装置に環状フレームをストックする際も、所定の向きに環状フレームをストックして、所望の向きの環状フレームにシートを貼着する必要がある。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の向きの環状フレームにシートを貼着することができるシートの貼着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のシートの貼着装置は、外周の所定の位置に切り欠きを備える環状フレームに、該環状フレームの開口を塞ぐシートを貼着し、該開口に該シートを介して被加工物を固定するシート貼着装置であって、該環状フレームが重なって収容されるフレームストック部と、該フレームストック部から該環状フレームを搬出するフレーム搬出ユニットと、該環状フレームと該被加工物に該シートを貼着するシート貼着ユニットと、を備え、該フレームストック部は、該環状フレームが重なって載置される支持台と、該支持台の周囲に立設して該環状フレームの側面が突き当たり、該支持台の所定の位置に該環状フレームを位置決めする突き当て部と、該支持台の側方で、該支持台と該突き当て部とを収容する領域を仕切る開閉扉と、該開閉扉が閉鎖されている事を検出するセンサと、該開閉扉の開閉動作と連動して、該支持台に載置された該環状フレームの該切り欠きに向かって進退する侵入部材と、各構成要素を制御する制御部と、を備え、該侵入部材は、該支持台に所定の向きで載置された該環状フレームの該切り欠きに侵入すると該開閉扉が閉鎖できるように設置され、該制御部は、該開閉扉の閉鎖が該センサで検知されると、該環状フレームが所定の向きに載置されたと判定し、該フレーム搬出ユニットによる該フレームストック部からの該環状フレームの搬出を許容することを特徴とする。
【0008】
前記シートの貼着装置において、該支持台は、昇降ユニットに固定され、重ねて載置された最上段の該環状フレームが所定の高さに位置づけられ、該侵入部材が該切り欠きに侵入した状態で該環状フレームが搬出されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、所望の向きの環状フレームにシートを貼着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るシートの貼着装置の構成例を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたシートの貼着装置によりシートが貼着された被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたフレームストック部を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部に環状フレームを収容して開閉扉を閉める状態の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されたフレームストック部の開閉扉を閉めた状態の一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部に環状フレームを収容して開閉扉を閉める状態の他の例を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示されたフレームストック部の開閉扉を閉めた状態の他の例を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図6に示されたフレームストック部を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示されたフレームストック部の突き当て部が環状フレームを位置決めした状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示されたフレームストック部の昇降ユニットが環状フレームを上昇させた状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図12】
図12は、
図11に示されたフレームストック部の支持台に載置された最上段の環状フレームをフレーム搬出ユニットが搬出する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るシートの貼着装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るシートの貼着装置の構成例を模式的に一部断面で示す側面図である。
図2は、
図1に示されたシートの貼着装置によりシートが貼着された被加工物の一例を示す斜視図である。
図3は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部を模式的に示す平面図である。
図4は、
図3に示されたフレームストック部を模式的に一部断面で示す側面図である。
【0013】
実施形態1に係る
図1にシートの貼着装置1は、シート200を
図2に示す被加工物201および環状フレーム202を貼着する装置である。実施形態1に係るシートの貼着装置1によりシート200が貼着される被加工物201は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。
【0014】
被加工物201は、
図2に示すように、交差する複数の分割予定ライン210で区画された表面203の各領域それぞれにデバイス204が形成されている。デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。また、本発明では、被加工物201は、ウェーハに限らず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0015】
また、被加工物201は、基板の結晶方位を示す異形状部205が設けられている。実施形態1では、被加工物201の異形状部205は、基板の外縁の一部分を切り欠いた格好のノッチである。
【0016】
実施形態1において、被加工物201は、表面203の裏側の裏面206に円板状のシート200が貼着され、シート200の外縁部に環状フレーム202が貼着される。実施形態1において、シート200は、可撓性を有する樹脂により形成され、帯状の剥離シート211に仮接着され、剥離シート211から剥離され被加工物201の裏面206及び環状フレーム202に貼着される。実施形態1では、帯状の剥離シート211に円形のシート200が仮接着されており、
図1に示すシート貼着ユニット2の押圧板6によって剥離シート211が折り返されると剥離シート211からシート200が剥がれ、押圧ローラ7で被加工物201と環状フレーム202に貼着される。
【0017】
実施形態1において、シート200は、非粘着性の樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性の樹脂で構成されて、被加工物201の裏面206及び環状フレーム202に貼着される粘着層とを備える。
【0018】
環状フレーム202は、硬質な樹脂又は金属で構成され、内側に開口207を設けた円環状に形成されている。環状フレーム202の内径は、被加工物201の外径よりも大きい。また、環状フレーム202は、外周である外縁208に複数の円弧状の円弧部208-1と、円弧部208-1に連なる複数の直線状の直線部208-2と、一部分を切り欠いた格好の切り欠き209が形成されている。即ち、環状フレーム202は、外縁の所定の位置に切り欠き209を備えている。
【0019】
環状フレーム202は、開口207が被加工物201の裏面206に貼着したシート200により塞がれて、開口207の内側にシート200を介して被加工物201を固定する。また、環状フレーム202は、切り欠き209の異形状部205に対する相対的な向きが予め定められた所望の向きとなるように、被加工物201の裏面206に貼着したシート200の外縁部が貼着される。
【0020】
また、実施形態1において、環状フレーム202は、互いに外径の異なる大径環状フレーム202-1と、小径環状フレーム202-2とが用いられる。大径環状フレーム202-1は、小径環状フレーム202-2よりも外径が大きい。以下、本明細書では、これらを区別する際には、大径環状フレーム202-1及び小径環状フレーム202-2と記し、区別しない際には、単に、環状フレーム202と記す。
【0021】
実施形態1に係るシートの貼着装置1は、外縁208の所定の位置に切り欠き209を備える環状フレーム202に、環状フレーム202の開口207を塞ぐシート200を貼着し、開口207にシート200を介して被加工物201を固定する装置である。また、実施形態1に係るシートの貼着装置1は、切り欠き209の異形状部205との相対的な向きが前述した所望の向きとなるように、被加工物201及び環状フレーム202にシート200を貼着する装置でもある。
【0022】
シートの貼着装置1は、
図1に示すように、環状フレーム202と被加工物201にシート200を貼着するシート貼着ユニット2と、環状フレーム202が重なって収容されるフレームストック部10と、フレームストック部10から環状フレーム202を搬出するとともに、フレームストック部10から搬出した環状フレーム202をシート貼着ユニット2に搬入するフレーム搬出ユニット70とを備える。
【0023】
シート貼着ユニット2は、
図1に示すように、チャックテーブル3と、巻き取り部4と、貼着部5と、図示しない相対移動部とを備える。
【0024】
チャックテーブル3は、被加工物201及び環状フレーム202を保持するものである。チャックテーブル3は、上面にフレーム搬出ユニット70により搬入された環状フレーム202と、被加工物搬送ユニットにより搬入された被加工物201とが載置されて、これらを保持する。チャックテーブル3は、上面に載置された被加工物201に対して、所望の向きとなる位置に環状フレーム202が載置される。
【0025】
また、実施形態1において、チャックテーブル3は、被加工物201の裏面206と環状フレーム202の上面とを同一平面上に位置付ける。
【0026】
巻き取り部4は、シート200が仮接着された剥離シート211を外周に巻き付けて回転自在に設けられた図示しないシートロールから剥離シート211をチャックテーブル3上に繰り出すものである。巻き取り部4は、軸心を中心に回転自在に設けられ、外周面に剥離シート211の先端側を巻回する。巻き取り部4は、図示しないモータにより外周面に剥離シート211を巻き取る方向に回転する。巻き取り部4は、図示しないモータにより外周面に剥離シート211を巻き取る方向に回転することで、テープロールから剥離シート211を繰り出す。
【0027】
貼着部5は、巻き取り部4が繰り出した剥離シート211からシート200をチャックテーブル3に固定された被加工物201及び環状フレーム202に貼着するものである。貼着部5は、巻き取り部4の側方に配置され、テーパ状の先端部でシート200が折り返される押圧板6と、押圧板6の隣りに配置された押圧ローラ7と、図示しない相対移動部とを備える。
【0028】
押圧板6は、シートロールから離れた側の先端部を下方に位置付けるように水平方向に対して傾斜した板状に形成されている。押圧板6の先端部は、シートロールから離れるのにしたがって徐々に薄くなっている。押圧板6の幅は、シート200の幅より大きい。押圧板6は、先端部上で折り返すシート200の粘着層をチャックテーブル3に固定された環状フレーム202及び被加工物201に送り出す。
【0029】
押圧ローラ7は、軸心がシートロール及び巻き取り部4の軸心と平行に配置され、軸心回りに回転自在に支持されている。押圧ローラ7は、押圧板6により環状フレーム202及び被加工物201に送り出されたシート200を環状フレーム202及び被加工物201に更に押圧する。
【0030】
相対移動部は、チャックテーブル3と貼着部5とをチャックテーブル3の上面に沿って相対的に移動するものである。実施形態1では、相対移動部は、チャックテーブル3を上面に沿って移動させる。
【0031】
貼着部5は、押圧板6の先端部上で折り返されたシート200を環状フレーム202の巻き取り部4から離れた側の端部に押圧した位置から、チャックテーブル3を巻き取り部4から離れる方向に上面に沿って移動させることで、巻き取り部4が繰り出したシート200を被加工物201及び環状フレーム202に貼着する。
【0032】
フレームストック部10は、
図1及び
図3に示すように、基台11と、支持台12と、昇降ユニット20と、突き当て部30と、突き当て部スライド機構31(
図1のみに示す)と、開閉扉40と、センサ42と、侵入部材50と、リンク機構53と、制御部100とを備える。基台11は、上面及び下面が水平方向に沿って平坦な平板状に形成されている。
【0033】
支持台12は、基台11の上面の中央に配置され、環状フレーム202が複数重なって載置されるものである。支持台12は、上面及び下面が水平方向に沿って平坦な円板状に形成され、外縁部に突き当て部30が侵入可能な切り欠き13が形成されている。なお、実施形態1では、支持台12は、直線部208-2が突き当て部30と対面する向きで環状フレーム202が載置される。
【0034】
昇降ユニット20は、支持台12を基台11及び支持台12の上下面に対して直交する方向に昇降するものである。昇降ユニット20は、図示しないモータと、モータにより軸心回りに回転するねじ軸と、ねじ軸が軸心回りに回転すると昇降するとともに支持台12に固定された昇降ブロック21とを備えている。昇降ユニット20は、支持台12に固定された昇降ブロックを備えることで、昇降ユニット20に固定されている。
【0035】
突き当て部30は、支持台12の周囲に立設して、支持台12上に載置される環状フレーム202の側面である外縁208の直線部208-2が突き当たり、支持台12の所定の位置に環状フレーム202を位置決めするものである。突き当て部30は、基台11から立設した柱状に形成され、基台11上の支持台12の周囲に複数配置されている。実施形態1では、基台11の昇降ユニット20の昇降ブロック21寄りに設けられた突き当て部30と、互いに支持台12の中心を挟んで対面しかつ
図1に示すように、フレームストック部10の正面からみて昇降ブロック21寄りの突き当て部30を互いの間に位置付ける2つの突き当て部30(以下、符号30-1で示す)とが設けられて、突き当て部30は、合計3つ設けられている。なお、本明細書では、突き当て部30を区別しない場合には、符号30で示し、2つの突き当て部30-1を他と区別する場合には、符号30-1で示す。
【0036】
突き当て部30は、突き当て部スライド機構31により基台11及び支持台12の上下面と平行でかつ支持台12の径方向に沿って移動される。複数の突き当て部30は、突き当て部スライド機構31により同時に同方向に支持台12の径方向に沿って移動される。複数の突き当て部30は、支持台12の中心に向かって移動されると、環状フレーム202の外縁208の直線部208-2に突き当たり、環状フレーム202の外縁208の直線部208-2を押圧して、環状フレーム202を支持台12の所定の位置に位置決めする。
【0037】
突き当て部スライド機構31は、全ての突き当て部30を支持台12の径方向の同方向に移動させるものである。突き当て部スライド機構31は、
図1に示すように、図示しないモータと、基台11の上面の中央でかつ支持台12の下方に配置されてモータにより軸心回りに回転する円板部材32と、突き当て部30と1対1で対応して設けられかつ支持台12の径方向と平行であるとともに支持台12に固定されたレール33と、突き当て部30と1対1で対応して設けられかつレール33に移動自在に支持されているとともに対応する突き当て部30が固定されたスライドブロック34と、各スライドブロック34と円板部材32とに両端部が連結したリンク35とを備えている。突き当て部スライド機構31は、モータが円板部材32を軸心回りに回転することで、スライドブロック34即ち突き当て部30を支持台12の径方向に沿って同時に同方向に移動させる。
【0038】
また、フレームストック部10は、2つの突き当て部30-1のうち一方の近傍に基台11から立設した支持板14(
図3に示す)を備えている。
【0039】
開閉扉40は、支持台12の側方に配置され、支持台12と突き当て部30とを収容する領域を外部から仕切るものである。支持台12と突き当て部30とを収容する領域は、支持台12の上面上に領域であって、複数の突き当て部30で囲まれる領域である。開閉扉40は、両表面が鉛直方向に沿って平坦に形成され、
図3及び
図4に示すように、幅方向の一端を中心に支持板14に図示しないヒンジにより回転自在に支持されている。
【0040】
開閉扉40は、
図3に点線で示す基台11の外縁に沿いかつ2つの突き当て部30-1間を閉鎖する位置と、基台11の外縁に対して交差しかつ2つの突き当て部30-1間を開放する位置とに亘って、幅方向の一端を中心に回転する。以下、開閉扉40の幅方向の一端を中心とした回転動作を、開閉扉40の開閉動作と記載する。
【0041】
開閉扉40は、2つの突き当て部30-1間を閉鎖すると、外部から支持台12上に環状フレーム202が載置されることを規制することとに、支持台12上の環状フレーム202を外部に取り出すことを規制する。また、開閉扉40は、2つの突き当て部30-1間を開放すると、外部から支持台12上に環状フレーム202が載置されることを許容することとに、支持台12上の環状フレーム202を外部に取り出すことを許容する。
【0042】
こうして、フレームストック部10は、環状フレーム202を支持台12に位置決めする突き当て部30及び開閉扉40を上面に環状フレーム202を載置する支持台12の側方に配置することで、側方から支持台12上への環状フレーム202の載置を可能としているとともに、側方から支持台12上の環状フレーム202を外部に取り出すことを可能としている。また、実施形態1において、開閉扉40は、オペレータが把持可能な取っ手41を設けている。
【0043】
センサ42は、開閉扉40が閉鎖されていることを検出し、検出結果を制御部100に出力するものである。実施形態1では、センサ42は、例えば、2つの突き当て部30間を閉鎖した開閉扉40を検出する近接センサ等が用いられる。
【0044】
侵入部材50は、リンク機構53により開閉扉40の開閉動作と連動して、支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209に向かって進退するものである。
【0045】
侵入部材50は、
図3に示すように、支持台12の周囲に一つ配置され、かつ基台11に支持台12の径方向に移動自在に設けられたスライド基台51から立設した円柱状に形成されている。侵入部材50の長手方向は、支持台12の上下面に対して直交している、即ち、支持台12に複数の環状フレーム202が重ねられる方向と平行である。スライド基台51は、基台11上のスライド支持基台52(
図4に示す)により、支持台12の径方向にスライド自在に支持されている。
【0046】
侵入部材50は、シート貼着ユニット2によりシート200に貼着される際に所望の向きとなる所定の向きで環状フレーム202が支持台12上に載置されると、環状フレーム202の切り欠き209と相対する。
【0047】
リンク機構53は、開閉扉40の開閉動作と、侵入部材50の支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209への進退動作とを連動させるものである。リンク機構53は、開閉扉40が2つの突き当て部30間を開放すると、スライド基台51を支持台12の径方向の外側に移動させて侵入部材50を支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209から離すとともに、開閉扉40が2つの突き当て部30間を閉鎖すると、スライド基台51を支持台12の径方向の内側に移動させて侵入部材50を支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209に向かって移動させる。
【0048】
実施形態1では、リンク機構53は、
図4に示すように、第1の引っ張りコイルばね54と、第2の引っ張りコイルばね55とを備えている。第1の引っ張りコイルばね54は、スライド基台51と、開閉扉40とに両端が取り付けられてこれらを互いに近づく方向に付勢する。第2の引っ張りコイルばね55は、基台11から立設しかつスライド基台51よりも支持台12の径方向の内側に設けられた立設柱15と、スライド基台51とに両端が取り付けられてこれらを互いに近づく方向に付勢する。
【0049】
こうして、リンク機構53は、開閉扉40が開放されると、第1の引っ張りコイルばね54がスライド基台51を支持台12の径方向の外側に引っ張って侵入部材50を支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209から離す。リンク機構53は、開閉扉40が閉鎖されると、第2の引っ張りコイルばね55がスライド基台51を支持台12の径方向の内側に引っ張って侵入部材50を支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209に向かって移動させる。
【0050】
リンク機構53は、開閉扉40が閉鎖すると、支持台12に所定の向きで載置された環状フレーム202の切り欠き209内に侵入部材50を侵入させる。また、リンク機構53は、支持台12に載置された環状フレーム202のうち少なくとも一つが所定の向きと異なる向きに載置されていると、開閉扉40を閉鎖しようとしても侵入部材50がこの少なくとも一つの環状フレーム202の外縁208の円弧部208-1に接触して、切り欠き209内に侵入することができない。
【0051】
リンク機構53は、
図3に示すように、閉鎖許容規制部56を備える。閉鎖許容規制部56は、支持台12に載置された環状フレーム202の全ての切り欠き209内に侵入部材50が侵入すると、開閉扉40が閉鎖することを許容し、支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209内に侵入部材50が侵入しないと、開閉扉40が閉鎖することを規制するものである。実施形態1では、閉鎖許容規制部56は、スライド基台51から開閉扉40に向かって延びて形成されている。閉鎖許容規制部56は、支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209内に侵入部材50が侵入しないと開閉扉40に干渉して、開閉扉40が閉鎖することを規制し、支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209内に侵入部材50が侵入すると開閉扉40に干渉せずに、開閉扉40が閉鎖することを許容する。
【0052】
こうして、侵入部材50は、リンク機構53により、支持台12に所定の向きで載置された環状フレーム202の切り欠き209に侵入すると開閉扉40が閉鎖できるように設置されている。また、侵入部材50は、リンク機構53により、支持台12に少なくとも一つが所定の向きと異なる向きで載置された環状フレーム202の切り欠き209に侵入しないと開閉扉40が閉鎖することを規制するように設置されている。
【0053】
また、実施形態1に係るフレームストック部10は、
図1及び
図3に示すように、支持台12に重ねて載置された複数の環状フレーム202のうちの最上方に位置する最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置づけられたことを検出する検出センサ60を備える。なお、実施形態1では、所定の高さとは、複数の突き当て部30の上端と同一平面上となる高さである。検出センサ60は、最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置づけられたことを検出し、検出結果を制御部100に出力する。
【0054】
制御部100は、フレームストック部10を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。また、実施形態1において、制御部100は、シートの貼着装置1を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物201及び環状フレーム202に対するシート200の貼着動作をシートの貼着装置1に実行させるものである。制御部100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0055】
制御部100の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、フレームストック部10及びシートの貼着装置1を制御するための制御信号を生成する。制御部100の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インターフェース装置を介してフレームストック部10及びシートの貼着装置1の各構成要素に出力する。
【0056】
また、制御部100は、貼着動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0057】
次に、シートの貼着装置1のシート200の貼着動作の一例を説明する。
図5は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部に環状フレームを収容して開閉扉を閉める状態の一例を模式的に示す平面図である。
図6は、
図5に示されたフレームストック部の開閉扉を閉めた状態の一例を模式的に示す平面図である。
図7は、
図1に示されたシートの貼着装置のフレームストック部に環状フレームを収容して開閉扉を閉める状態の他の例を模式的に示す平面図である。
図8は、
図5に示されたフレームストック部の開閉扉を閉めた状態の他の例を模式的に示す平面図である。
図9は、
図6に示されたフレームストック部を模式的に一部断面で示す側面図である。
図10は、
図9に示されたフレームストック部の突き当て部が環状フレームを位置決めした状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図11は、
図10に示されたフレームストック部の昇降ユニットが環状フレームを上昇させた状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図12は、
図11に示されたフレームストック部の支持台に載置された最上段の環状フレームをフレーム搬出ユニットが搬出する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【0058】
まず、シートの貼着装置1は、フレームストック部10の開閉扉40が開放されて、フレームストック部10の側方から2つの突き当て部30-1間に通されて、昇降ユニット20側の突き当て部30に環状フレーム202の外縁208の直線部208-2を突き当て、
図5に示すように、支持台12上に環状フレーム202が少なくとも1枚以上載置される。シートの貼着装置1は、フレームストック部10に所定枚数の環状フレーム202が収容されると、
図5に示すように、オペレータにより開閉扉40が2つの突き当て部30間を閉鎖する方向に回転する。
【0059】
このとき、全ての環状フレーム202が所定の向きに支持台12上に載置されていると、
図6に示すように、侵入部材50が、全ての環状フレーム202の切り欠き209内に侵入して、開閉扉40が2つの突き当て部30-1間を閉鎖する。また、少なくとも1枚の環状フレーム202が所定の向きと異なる向きに支持台12上に載置されていると、
図7に示すように、侵入部材50が、全ての環状フレーム202の切り欠き209内に侵入できずに、閉鎖許容規制部56により開閉扉40の閉鎖が規制される。
【0060】
図7に示すように、開閉扉40を閉鎖できない場合には、シートの貼着装置1は、オペレータによりフレームストック部10内の環状フレーム202の向きが確認、変更されて、全ての環状フレーム202が所定の向きで支持台12上に載置される。なお、
図5、
図6及び
図7は、支持台12に大径環状フレーム202-1が複数枚載置される状態を示している。
【0061】
また、シートの貼着装置1は、フレームストック部10の支持台12上に小径環状フレーム202-2が載置され、全ての小径環状フレーム202-2が所定の向きに支持台12上に載置されていると、
図8に示すように、侵入部材50が、全ての小径環状フレーム202-2の切り欠き209内に侵入して、開閉扉40が2つの突き当て部30-1間を閉鎖する。
【0062】
このように、シートの貼着装置1は、
図9に示すように、フレームストック部10の侵入部材50が支持台12上の環状フレーム202の切り欠き209内に侵入すると、開閉扉40が閉鎖する。シートの貼着装置1は、センサ42が開閉扉40が閉鎖されていること(即ち、支持台12上の全ての環状フレーム202が所定の向きであること)を検出し、検出結果を制御部100に出力する。
【0063】
シートの貼着装置1は、制御部100がセンサ42から開閉扉40が閉鎖されていることを示す情報が入力すると、突き当て部スライド機構31によりすべての突き当て部30を支持台12の径方向に沿って支持台12の中心に向かって移動する。シートの貼着装置1は、
図10に示すように、複数の突き当て部30が環状フレーム202の外縁208の直線部208-2に突き当たり、環状フレーム202の外縁208の直線部208-2を押圧して、環状フレーム202を支持台12の所定の位置に位置決めする。
【0064】
シートの貼着装置1は、制御部100が突き当て部スライド機構31によりすべての突き当て部30を支持台12の径方向に沿って支持台12の外周に向かって移動する。シートの貼着装置1は、制御部100が昇降ユニット20により支持台12及び支持台12上の環状フレーム202を上昇させる。検出センサ60が、最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置付けられたことを検出すると、制御部100に最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置付けられたことを示す情報を出力する。
【0065】
シートの貼着装置1は、制御部100が検出センサ60から最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置付けられたことを示す情報が入力すると、昇降ユニット20の支持台12の上昇を停止する。シートの貼着装置1は、制御部100がフレーム搬出ユニット70を図示しない移動機構によりフレームストック部10の上方まで移動させた後、フレームストック部10に向かって下降させて、
図11に示すように、フレーム搬出ユニット70の吸引保持部71を最上段の環状フレーム202に接触させる。
【0066】
シートの貼着装置1は、フレーム搬出ユニット70の吸引保持部71に最上段の環状フレーム202を吸引保持し、
図12に示すように、制御部100が図示しない移動機構によりフレームストック部10を、吸引保持した環状フレーム202が突き当て部30の上方まで上昇させる。シートの貼着装置1は、制御部100が図示しない移動機構により環状フレーム202を吸引保持したフレームストック部10をシート貼着ユニット2まで移動させて、環状フレーム202をシート貼着ユニット2のチャックテーブル3の上面に搬入する。
【0067】
その後、シートの貼着装置1は、シート貼着ユニット2により被加工物201及び環状フレーム202にシート200を貼着する。なお、
図9、
図10、
図11及び
図12は、支持台12に大径環状フレーム202-1が複数枚載置される状態を示している。また、シートの貼着装置1は、開閉扉40が閉鎖された後、侵入部材50が支持台12に載置された環状フレーム202の切り欠き209に侵入し続ける。このように、支持台12は、重ねて載置された最上段の環状フレーム202が所定の高さに位置づけられ、侵入部材50が切り欠き209に侵入した状態で環状フレーム202が搬出される。
【0068】
また、シートの貼着装置1の制御部100は、開閉扉40の閉鎖がセンサ42で検出されると、前述した
図9、
図10、
図11及び
図12に示すように各構成要素を制御する。このために、シートの貼着装置1の制御部100は、開閉扉40の閉鎖がセンサ42で検出されると、環状フレーム202が所定の向きに載置されたと判定し、フレーム搬出ユニット70によるフレームストック部10からの環状フレーム202の搬出を許容することとなる。
【0069】
以上説明した実施形態1に係るシートの貼着装置1は、フレームストック部10が支持台12上に載置された環状フレーム202の切り欠き209に侵入する侵入部材50と、侵入部材50が切り欠き209に侵入しないと開閉扉40の閉鎖を規制する閉鎖許容規制部56と、開閉扉40が閉鎖されていることを検出するセンサ42等を備えるので、開閉扉40が閉まらなければ環状フレーム202の向きが揃っていないと判定出来る。このため、シートの貼着装置1は、環状フレーム202の向きが誤った状態でシート200が貼着されない。その結果、実施形態1に係るシートの貼着装置1は、所望の向きの環状フレーム202にシート200を貼着することができるという効果を奏する。
【0070】
また、実施形態1に係るシートの貼着装置1は、従来のフレームストック部のピンによる環状フレーム202の位置合わせから、フレームストック部10が環状フレーム202の外縁208の直線部208-2に突き当たる突き当て部30を備えるので、側方から環状フレーム202をフレームストック部10の支持台12に載置でき、オペレータが環状フレーム202を上げ下げする作業を抑制することができる。
【0071】
また、実施形態1に係るシートの貼着装置1は、開閉扉40に通常設けるセンサ42を利用して、開閉扉40が閉鎖されることを検出するため、環状フレーム202の向きを検出するために新たにセンサを設ける必要が無いという効果もある。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本発明では、シート200は、粘着層の無い、熱可塑性樹脂からなる基材層のみのシートでも良い。
【符号の説明】
【0073】
1 シートの貼着装置
2 シート貼着ユニット
10 フレームストック部
12 支持台
30 突き当て部
40 開閉扉
42 センサ
50 侵入部材
70 フレーム搬出ユニット
100 制御部
200 シート
201 被加工物
202 環状フレーム
207 開口
208 外縁(側面)
209 切り欠き